Category

会津商工会議所

  • 【会津若松商工会議所】澁川惠男会頭インタビュー(2024.1)

    【会津若松商工会議所】澁川惠男会頭インタビュー(2024.1)

     しぶかわ・ともお 1947年生まれ。会津高、日大商学部卒。澁川問屋会長。会津若松商工会議所副会頭などを経て、2016年から現職。現在3期目。  会津若松市は城下町の強みをインバウンドにつなげる一方、小中学校と地元企業をつなぐマッチングサービスや地域発キャッシュレス決済の導入でデジタル技術の恩恵を地方に還元するなど歴史と進取を両立している。国際競争力の高いスノーリゾートにも選定され、宿泊拠点の役割も期待されている。会津若松商工会議所の澁川惠男会頭に経済飛躍の鍵を聞いた。 民間の力こそが地域の未来を拓く。  ――新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが引き下げられて7カ月以上になりました。  「コロナ禍により老舗料亭や観光ホテルの経営破綻があり、管内はダメージを受けました。感染収束後の消費回復を期待していましたが、物価高の影響は大きいです。当商工会議所の退会理由のトップは『廃業』です。中小企業の経営者は高齢の方も多く、後継者がいないというのが主な理由です。コロナ禍からの回復が十分でないうちに物価高が追い打ちをかけて廃業が加速していくのを懸念しています。  明るい兆しはあります。行動制限のない忘新年会シーズンを迎え、飲食業界は予約が相次いでいるようです。感染拡大前の水準に戻りつつある事業所もあります」  ――昨年7月から市内の小中学校と企業をつなぐマッチングサービス「まちスク会津」を用いた実証実験が始まっています。  「まちスク会津は教育支援と地域活性化を両立します。子どもたちにとっては、地域企業・人材と触れ合う機会を増やすことで、企業の認知度向上や地域への理解、魅力発見などにつながります。教育支援を希望する登録企業が増え、本サービスを通して学校と企業の新たなマッチングが生まれており好評です。  今後は当商工会議所で実施している『ジュニアインターンシップ(職場体験)』との連携に加え、サービス充実のために、地域企業・人材の参画を広く呼び掛けます。会津の次代を担う子どもたちが地域を深く知り、将来は地元への就職やUターンにつながってほしいです」  ――観光庁の「国際競争力の高いスノーリゾート形成促進事業」に会津若松市、磐梯町、北塩原村が会津磐梯地域として県内で唯一選ばれました。  「冬季の誘客は会津地方の長年の課題でした。今シーズンは磐梯町と北塩原村のスキー場が連結し、国内最大級のスノーリゾートが誕生しました。南半球のスキーヤー・スノーボーダーが良質な雪を求めて裏磐梯を訪れてきましたが、この流れが会津地方に波及するでしょう。  インバウンドが集中する東京・京阪神間を『ゴールデンルート』と呼びます。東北は対抗軸の『ダイヤモンドルート』を掲げ各自治体や経済団体が盛り上げてきました。今こそ、それを再燃させる時です。  スノーリゾートでは、会津若松は魅力ある宿泊や飲食を提供するベースタウンの役割があります。観光客は国・地域によって食事や宗教、生活様式がさまざまです。違いに対応し、受け入れのレベルを上げる必要があります。当商工会議所はこれまでにも訪日客への対応を学ぶ各種セミナーを開いてきました。会員事業所には観光、旅客、宿泊の事業者がいます。意見を聞きながら今後は業種に特化したセミナーにするなどしてより充実させます。  今年度、会津大学の留学生を対象に市内の観光スポットを巡るモニターツアーを実施しました。鶴ヶ城登閣、弓道や抹茶、赤べこの絵付けなどの体験型コンテンツを通じて会津の魅力を聞きました。素材は十分に魅力的ですが、多言語表記が少ないなどの課題が浮き彫りになりました。改善策を行政に提案し、訪れる全ての方に優しい環境につなげます」  ――「会津コイン」を用いたデジタル商品券事業が始まりました。  「会津コインは会津若松市が進める『スマートシティ』の取り組みの一環です。国は2025年6月までにキャッシュレス決済比率を4割程度にする目標を掲げています。キャッシュレスは増加傾向ですが、既存のキャッシュレス決済はお金の他、マーケティングに活用できる利用者情報などが地域を出てしまうのが課題でした。そこで地域のみで流通する通貨を導入して情報が地域に残るようにしたのが会津コインです。  商品券はこれまで紙ベースでしたが、今回初めてスマホを使ったデジタル形式にしています。当商工会議所やスマートシティAiCTに入居する企業でつくる『AiCTコンソーシアム』などで構成する実行委員会が事業を行っています。当初会津コインが使えるのは6店舗だけでしたが、プレミアムポイント事業の実施で400店舗を超えました。ただ、店舗の加盟申請や消費者の利用設定の手順が複雑な点は否めず、特に高齢の方からさまざまな意見を頂戴しました。市と決済事業者と共に対応を検討したいです。  プレミアム事業が終了した後、どこまで会津コインを利用してもらえるか、事業所に継続していただけるか不安な点はあります。利用者情報を個人が特定されない形に処理して会津コイン参加店舗に提供し、経営に生かしてもらうなどの仕組みづくりが急務です。再生可能エネルギーへのポイント付与構想など、持続可能な開発を進めるインセンティブも有効でしょう。商店街や飲食店業種単位でイベントに活用するなど様々なアイデアに挑戦することで利用が増えていくと思います」 急務の再開発  ――市街地の再開発について。  「中心市街地から大型店が撤退したままの現状に非常に危機感を持っています。都市の活況のバロメーターと言える地価公示や路線価は、昨年は福島、郡山、いわきの県内主要都市の商業地は軒並み前年比プラスになっている一方、会津若松はマイナスに沈んでいます。  当商工会議所は昨年度、再開発に向けた意見を取りまとめ、神明通りや駅前周辺、旧県立病院跡地などの利活用について市に提言しました。多くの利害関係があること、市の財政的な課題もあり、一足飛びに実現しない現状は理解しています。ただ、その中でも中心市街地の再開発は早急に取り組むべきです。まちのシンボルである神明通りはその最たるもの。個性豊かな店を集積したり、インフラなど不足する要素を分析して早めに手立てを考えていきたいです」  ――抱負を教えてください。  「地方は人口減少に伴う縮む経済に直面しています。地域の活力を維持し、若者が住み続けたい、また多くの観光客が訪れたいまちにできるかどうかはここ数年で決まってしまうのではないかと危機感を持っています。会頭就任以来、民間の挑戦こそが地域の未来を切り拓いていく大きな力になると訴えています。危機的な状況だからこそ、この思いを新たにし、徹底した事業所支援を通じて足腰の強い会津若松経済の実現に向けて取り組んでいきます」

  • 【会津若松商工会議所】澁川惠男会頭インタビュー(2024.1)

     しぶかわ・ともお 1947年生まれ。会津高、日大商学部卒。澁川問屋会長。会津若松商工会議所副会頭などを経て、2016年から現職。現在3期目。  会津若松市は城下町の強みをインバウンドにつなげる一方、小中学校と地元企業をつなぐマッチングサービスや地域発キャッシュレス決済の導入でデジタル技術の恩恵を地方に還元するなど歴史と進取を両立している。国際競争力の高いスノーリゾートにも選定され、宿泊拠点の役割も期待されている。会津若松商工会議所の澁川惠男会頭に経済飛躍の鍵を聞いた。 民間の力こそが地域の未来を拓く。  ――新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが引き下げられて7カ月以上になりました。  「コロナ禍により老舗料亭や観光ホテルの経営破綻があり、管内はダメージを受けました。感染収束後の消費回復を期待していましたが、物価高の影響は大きいです。当商工会議所の退会理由のトップは『廃業』です。中小企業の経営者は高齢の方も多く、後継者がいないというのが主な理由です。コロナ禍からの回復が十分でないうちに物価高が追い打ちをかけて廃業が加速していくのを懸念しています。  明るい兆しはあります。行動制限のない忘新年会シーズンを迎え、飲食業界は予約が相次いでいるようです。感染拡大前の水準に戻りつつある事業所もあります」  ――昨年7月から市内の小中学校と企業をつなぐマッチングサービス「まちスク会津」を用いた実証実験が始まっています。  「まちスク会津は教育支援と地域活性化を両立します。子どもたちにとっては、地域企業・人材と触れ合う機会を増やすことで、企業の認知度向上や地域への理解、魅力発見などにつながります。教育支援を希望する登録企業が増え、本サービスを通して学校と企業の新たなマッチングが生まれており好評です。  今後は当商工会議所で実施している『ジュニアインターンシップ(職場体験)』との連携に加え、サービス充実のために、地域企業・人材の参画を広く呼び掛けます。会津の次代を担う子どもたちが地域を深く知り、将来は地元への就職やUターンにつながってほしいです」  ――観光庁の「国際競争力の高いスノーリゾート形成促進事業」に会津若松市、磐梯町、北塩原村が会津磐梯地域として県内で唯一選ばれました。  「冬季の誘客は会津地方の長年の課題でした。今シーズンは磐梯町と北塩原村のスキー場が連結し、国内最大級のスノーリゾートが誕生しました。南半球のスキーヤー・スノーボーダーが良質な雪を求めて裏磐梯を訪れてきましたが、この流れが会津地方に波及するでしょう。  インバウンドが集中する東京・京阪神間を『ゴールデンルート』と呼びます。東北は対抗軸の『ダイヤモンドルート』を掲げ各自治体や経済団体が盛り上げてきました。今こそ、それを再燃させる時です。  スノーリゾートでは、会津若松は魅力ある宿泊や飲食を提供するベースタウンの役割があります。観光客は国・地域によって食事や宗教、生活様式がさまざまです。違いに対応し、受け入れのレベルを上げる必要があります。当商工会議所はこれまでにも訪日客への対応を学ぶ各種セミナーを開いてきました。会員事業所には観光、旅客、宿泊の事業者がいます。意見を聞きながら今後は業種に特化したセミナーにするなどしてより充実させます。  今年度、会津大学の留学生を対象に市内の観光スポットを巡るモニターツアーを実施しました。鶴ヶ城登閣、弓道や抹茶、赤べこの絵付けなどの体験型コンテンツを通じて会津の魅力を聞きました。素材は十分に魅力的ですが、多言語表記が少ないなどの課題が浮き彫りになりました。改善策を行政に提案し、訪れる全ての方に優しい環境につなげます」  ――「会津コイン」を用いたデジタル商品券事業が始まりました。  「会津コインは会津若松市が進める『スマートシティ』の取り組みの一環です。国は2025年6月までにキャッシュレス決済比率を4割程度にする目標を掲げています。キャッシュレスは増加傾向ですが、既存のキャッシュレス決済はお金の他、マーケティングに活用できる利用者情報などが地域を出てしまうのが課題でした。そこで地域のみで流通する通貨を導入して情報が地域に残るようにしたのが会津コインです。  商品券はこれまで紙ベースでしたが、今回初めてスマホを使ったデジタル形式にしています。当商工会議所やスマートシティAiCTに入居する企業でつくる『AiCTコンソーシアム』などで構成する実行委員会が事業を行っています。当初会津コインが使えるのは6店舗だけでしたが、プレミアムポイント事業の実施で400店舗を超えました。ただ、店舗の加盟申請や消費者の利用設定の手順が複雑な点は否めず、特に高齢の方からさまざまな意見を頂戴しました。市と決済事業者と共に対応を検討したいです。  プレミアム事業が終了した後、どこまで会津コインを利用してもらえるか、事業所に継続していただけるか不安な点はあります。利用者情報を個人が特定されない形に処理して会津コイン参加店舗に提供し、経営に生かしてもらうなどの仕組みづくりが急務です。再生可能エネルギーへのポイント付与構想など、持続可能な開発を進めるインセンティブも有効でしょう。商店街や飲食店業種単位でイベントに活用するなど様々なアイデアに挑戦することで利用が増えていくと思います」 急務の再開発  ――市街地の再開発について。  「中心市街地から大型店が撤退したままの現状に非常に危機感を持っています。都市の活況のバロメーターと言える地価公示や路線価は、昨年は福島、郡山、いわきの県内主要都市の商業地は軒並み前年比プラスになっている一方、会津若松はマイナスに沈んでいます。  当商工会議所は昨年度、再開発に向けた意見を取りまとめ、神明通りや駅前周辺、旧県立病院跡地などの利活用について市に提言しました。多くの利害関係があること、市の財政的な課題もあり、一足飛びに実現しない現状は理解しています。ただ、その中でも中心市街地の再開発は早急に取り組むべきです。まちのシンボルである神明通りはその最たるもの。個性豊かな店を集積したり、インフラなど不足する要素を分析して早めに手立てを考えていきたいです」  ――抱負を教えてください。  「地方は人口減少に伴う縮む経済に直面しています。地域の活力を維持し、若者が住み続けたい、また多くの観光客が訪れたいまちにできるかどうかはここ数年で決まってしまうのではないかと危機感を持っています。会頭就任以来、民間の挑戦こそが地域の未来を切り拓いていく大きな力になると訴えています。危機的な状況だからこそ、この思いを新たにし、徹底した事業所支援を通じて足腰の強い会津若松経済の実現に向けて取り組んでいきます」