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山本幸一郎

  • 悪評絶えない山本幸一郎【浪江町】副議長

    悪評絶えない山本幸一郎【浪江町】副議長

     本誌2022年8月号に掲載したのは「山本幸一郎浪江町副議長に怪文書 家業の建設会社急成長に疑惑の目」という記事。内容は編集部宛てに届いた山本氏への批判メールの内容を検証し、本人に直撃したもの。 議員の資質が問われる〝傍若無人ぶり〟  公職選挙法第92条の2では、自治体議員がその自治体から仕事を請け負う会社の役員に就くことを禁じている(兼業禁止)。そのため、山本氏は家業の建設会社・平成建設の役員から退いている。ただ、実際は副議長の立場を利用して多くの仕事を得ており、会社は急成長している。7月の町長選で新町長となった元県議・吉田栄光氏とは仲が良く、その威光もあって、ゼネコンの下請けに入っている――。以上がメールの概要だ。 実際、平成建設はここ数年業績を伸ばしている(別表参照)。震災・原発事故前の売上高は1億2000万円前後だったが、近年は数億円規模となっており、2020年12月期には売上高14億0400万円、当期純利益1億1600万円を計上。安藤・間が元請けの農地除染や被災建物解体工事に下請けとして入っているほか、町発注の農業用施設保全整備工事を元請けで受注していた。  山本氏はどう受け止めるのか。本人を直撃すると、「議員の立場を利用して入札情報を得たわけではなく、誰でも入手できる形で情報を得たに過ぎない」と主張した。 そのほかメールで指摘されていた点については、「大手ゼネコンから浪江町復興事業協同組合に打診があり、複数社で請け負っている」、「事情が分からない役場職員に対しては、怒ってしまうというかつい大きな声でやり取りしてしまう」、「町長選では吉田栄光氏の選対幹事長を務めた。町長選も意識して送信されたメールかもしれない」と話していた。 そのため、記事では、「町内で存在感を増す山本氏に対し、敵意を抱く人物がメールを送ったのではないか」と書いた。 ところが、その後、過去に取材したことのある複数の浪江町民や浜通りの建設業界関係者から「山本氏は役場職員だけでなく、同業者に対しても乱暴な言動を見せたり、強引に仕事を取ることがあるので嫌われている。何件もトラブルになっている」と指摘が入ったのだ。 ある町民はこう話す。 「いま、この地域には復興関連で大手ゼネコンをはじめ、他地区からさまざまな業者が入っているが、地域の実情を知らない人は、『議員』『副議長』という肩書きを持つ山本氏を信用して近づいてくる。山本氏(平成建設)はそれでパイプを作り、大手ゼネコンの復興事業の下請けに入って、かなりの仕事を得たのは間違いない。本人はそのつもりはないかもしれないが、『議員』『副議長』という肩書きがなければそれは叶わなかったでしょう。南相馬市内の飲み屋で、山本氏と大手ゼネコンの現地所長クラスが飲み歩いている姿を何度も見かけた。そういう意味では、『議員』『副議長』の肩書きを使って、平成建設の営業活動をしていると捉えられても仕方がないでしょうね」 同業者から多数の〝被害〟報告  一方、浜通りの建設業界関係者は次のように証言する。 「記事にあったように、山本氏は気性や口調が荒く、同業者に対しても義理を欠く対応を取ることがある。それでも、町内では相応の影響力があり、今回、親しい吉田栄光氏が町長になったことで、さらに力を持つことになった。皆、それぞれの仕事や生活があるから、不満に思っていてもなかなか言い出せないのです。だから、『政経東北』に告発した人に対しては、匿名とはいえ、『勇気あるな』『よく言ってくれた』という人が多かったのです」 平成建設の事務所  平成建設と過去に仕事をしたことがある複数の建設業界関係者に当たったところ、「詳細に記すと誰が言ったか分かり、仕事の上で不利益になることが予想されるため、記事で具体的に書かないでほしい」という人がほとんどだった。 ただ、彼らの話を統合すると、「この仕事を手伝ってほしい」とか、「あそこの現場に何人か人を出してほしい」ということがあり、正式に契約書を交わさずに仕事に入った後、トラブルに巻き込まれたケースが多々あったようだ。 「最初に言っていた条件と違うとか、最初に話していた以上の仕事をやらされることになったとか、そういった事例がよく知られている。近隣の土建業者はみな直接的に関わるのを避け、陰で愚痴を言い合っている」(建設業界関係者) 8月上旬には編集部宛てに新たな匿名投書も寄せられた。 《記事では山本氏が「父が半年前に倒れてからは私が金勘定を担当するようになった」と話していたが、実際はその前からすべての実権を握っている。仕事の打ち合わせから段取りなどすべて行っていた》 《山本氏は役場、業界関係者に対し、気に入らないことがあればすぐに声を荒げて恫喝し詰め寄ってくるので、関係者の間では山本氏に会わないようにするのが基本。会社に乗り込み暴言、恫喝等、日常的に行っている》 まるで〝被害者の会〟でも組織されたような勢いで本誌に寄せられる山本氏関連の情報の数々。要するに、「町内で存在感を増している山本氏」に敵意を抱いて怪文書メールが送られたわけではなく、もともと評判が悪い人物だったわけ。 山本氏は1968年4月生まれ。浪江町出身で、大堀小学校、浪江中学校、双葉高校卒。2007年に平成建設社長に就任。2009年、浪江町議選で初当選したのに伴い社長を退任。山本氏の妻・博美氏が社長を務め、山本氏は同社社員となっている。もっとも、山本氏が経営を取り仕切っているのは周知の事実だ。 山本氏の父親・幸男氏は山本牧場(同町末森地区=原発事故で帰還困難区域に指定)を経営するかたわら、同町議を8期務め、議長経験もある。 町内のある議員経験者は山本親子をこう評価する。 「幸男さんは3回も議長不信任案が出されるなど、議会のトラブルメーカー的存在として取り沙汰されることが多かった。幸一郎くんはそこまで目立ってはいないが、〝瞬間湯沸かし器〟で、納得できないことがあるとすぐ大声を出す。〝ヤンチャ〟な武勇伝も知られています」 山本氏が毎年参加している相馬野馬追の騎馬会や、大手ゼネコン事務所などでも大声を出し机をひっくり返して暴れていた――という目撃談も複数の町民から得られた。 「よく知られているのは、町内某企業の創立記念パーティーの二次会で、知人に暴力を振るった事件です。周囲に人がいる中だったのでウワサになり、『月刊タクティクス』に匿名で書かれました」(ある町民) 町議4期目。副議長を務めるベテラン議員だが、同僚町議からは「議員という立場をわきまえない言動が多くて敬遠されている」、「政治的行動を共にする同士はいない」という本音が聞かれる。 農地取得と競走馬施設の関係  そんな山本氏にとって強い味方となっているのが吉田栄光氏だ。子どものころから親密で、町長選では山本氏が吉田氏の選対幹事長を務めた。2人の関係を象徴すると言われているのが、同町末森・大堀地区で整備が計画されている競走馬施設(本誌9月号既報)だ。 民間事業者主体の計画とされているが、吉田氏が誘致に前向きだったとされており、「吉田町長の息子らが経営するランドビルドという会社が運営に携わるらしい」(前出・ある町民)と言われている。 一方、山本氏は帰還困難区域の末森地区や大堀地区などで営農意思がない農家から農地を取得している(本誌8月号既報)。そのため「吉田氏を通して施設が整備されることを知った山本氏が、周辺施設なども想定して土地を先行取得しているのだろう」という見方が広まっているのだ。 吉田氏に事実関係を確認したところ、「競走馬施設の計画が浮上しているのは事実であり、とても期待している。ただ具体的な段階ではないし、(吉田氏の子どもの会社は)運営に携わるというものではなく、お手伝いした程度」とコメントした。 ランドビルドの吉田学人氏にコメントを求めるとこう話した。 「私が乗馬を趣味としていることを知って、先方から相談を受けたのです。地域のためになる事業と感じたので、ほかの人を紹介するなどしてお手伝いしましたが、運営などに携わる予定はありません。そのようなウワサが出ているのは承知していましたが、事業主は全く別の方なので、どう対応すればいいか困惑していました」 山本氏に話があったのかどうかは判然としないが、競走馬施設の計画と山本氏の農地取得、タイミングが良すぎるのは事実だ。 10月下旬、再び山本氏を直撃し悪評が相次いでいることに対し、意見を聞いた。 まず大手ゼネコンの現地所長クラスと飲み歩いている点についてはこう話した。 「年に数回飲みに行く友達グループの中に、大手ゼネコンの現地所長経験者がいるのは事実。ただ、いまはそのゼネコンの下請けに入っているわけではないし、自分が直接的に酒席に招くことはない」 同業者とのトラブルに関しては、「そうしたトラブルになった記憶はない。特に思い当たらない」と語った。複数の業界関係者から話を聞いているが、事実ではないということか、それともより詳細に話せば記憶がよみがえることもあるのか。 騎馬会や大手ゼネコン事務所で大暴れした――という話に関しては次のように答えた。 「騎馬会の〝役付け〟をめぐり、声を荒げて異議を唱えるのはみんなやっていたこと。自分だけがことさら取り上げられるのは違和感がある。それに机をひっくり返して大暴れした記憶はない。誰かと勘違いしているのではないか」 「大手ゼネコンに関しては除染漏れの個所があったので、呼びつけて怒鳴ったことが何度かある。事務所で大暴れした記憶はない」 ウワサを否定する山本氏だが、町内某企業の創立記念パーティーの二次会で、知人に暴力を振るった点は「本当にあったことです」とあっさり認めた。 「酒癖の悪い知人を諫める目的で叩いたらもみ合いになり、周りに止められた。事件化はしなかったが、議員という立場にありながら手を出したことを反省しています」(山本氏) 競走馬施設用地の先行取得に関しては「同施設の計画が浮上したのは半年ほど前。うちの父親(幸男氏)が山本牧場付近の農地を取得し始めたのが3年前。計画に合わせて先行取得したわけではありません」とウワサを否定した。 一方で、「計画地は山麓線(県道35号いわき浪江線)から1㌔ほど山側に入っていったところになる見込み。実はそちらにもわずかですが私の所有地が含まれています」と自ら明かした。競走馬施設に合わせて土地を先行取得したわけではないが、偶然所有地の一部が計画地に入っていた――山本氏はそう主張したいようだ。そう言いつつも計画地はしっかり把握していたわけで、意識はしていたのではないか。 「酒飲みに出かけるのはやめる」 山本幸一郎氏(浪江町議会HPより)  一通り話を聞いた後、山本氏は「自分が認めていないウワサまで誌面で紹介されるのは違和感がある」と語った。それならば、本人にとって都合のいい情報しか記事には書けないことになる。真面目に活動している議員であれば、これほどヘンなウワサが流れることはないだろう。怪文書が送られてきたという記事に対し、同業者から「勇気あるな」「よく言ってくれた」という声が上がるのはよほどのことだ。 言葉の端々からいかにも相馬野馬追出場者らしい熱い性格で、仲間への面倒見のよさが伝わってくる。業界関係者もそのことは認める。しかし、それ以上に公人らしからぬ傍若無人ぶりが際立っている。 「議員なのに建設会社の社長のようにふるまい、ゼネコンの現地所長と堂々と飲み歩く。そのことを指摘されれば〝いまは仕事をしていないゼネコン〟とうそぶく。公禄をはむ〝公人〟という自覚に欠けているのではないか」(建設業界関係者) 山本氏に関する情報は現在進行形で寄せられている。一つは山本牧場の件だ。山本氏の父親・幸男氏が病気で倒れ、山本牧場において研究名目で飼われていた牛が殺処分された。それらの死体について、「家畜保健所に届け出せず牧場敷地内に埋めたのではないか」とウワサになった。 山本牧場  ただ、家畜保健所に確認したところ、原発事故により指定された旧警戒区域において、原発事故発生当時生きていた牛は殺処分して敷地内に埋設するよう方針が示されており、それに基づいていたので問題がないことが分かった。「家畜保健所担当者の立ち合いのもと、埋めました」(山本氏)。 このほか、下請け会社から出向している社員について、雇用の〝グレーさ〟を指摘する声もあった。 山本氏は記者に対し「酒飲みは好きだが、友達グループと酒飲みに出かけるのはやめる。前回記事を受けて、職員に対し大声を出すのもやめた」と語った。どこまで真剣かは分からないが、周囲からは自分が想像している以上に冷ややかな目で見られていることを意識すべきだ。 あわせて読みたい 【吉田栄光町長の側近】山本幸一郎【浪江町】副議長に怪文書

  • 【吉田栄光町長の側近】山本幸一郎【浪江町】副議長に怪文書

    【吉田栄光町長の側近】山本幸一郎【浪江町】副議長に怪文書

     2022年6月中旬、浪江町副議長の山本幸一郎氏(54、4期)に関する疑惑を綴ったメールが本誌編集部に寄せられた。山本氏が町議の立場を利用して、家業の建設会社の仕事を得ている――とする内容。山本氏に真偽のほどを聞いてみた。 家業の建設会社〝急成長〟に疑惑の目 怪文書メール  メールは匿名で送られてきた。受信日時は6月18日。ポイントは以下のようなもの。  〇浪江町議会副議長の山本幸一郎氏は、妻が平成建設の社長を務めているが、本人がいまも実質的な社長業を行っている。 〇町役場内で議員の立場を利用し、町工事や復興事業関係の入札情報を入手して仕事を得ている。 〇大手ゼネコンの下請に無理やり入り、好条件の請負金をせしめる行為が目立っている。 〇業界の鼻つまみ者だが、副議長であることや、浪江町長選で当選確実の吉田栄光氏(※編集部注・7月10日投開票の同町長選で6339票を獲得して初当選した)の威光もあり、大手ゼネコンのJVなどは仕方なく下請に入れている。 〇役場内で職員を恫喝し、次長課長クラスには必要な情報を出すようすり寄っている。復興事業で突然成金になった輩が「もっと金儲けさせろ」と守銭奴のごとく迫っているようで気持ち悪さがある。 〇浪江町にはいかがわしい議員がほかにもいる。町の政治をクリーンで適切なものとするため、こうした勘違い議員をただしていく必要があるのではないか。 公職選挙法第92条の2では、自治体議員がその自治体から仕事を請け負う会社の役員に就くことを禁じている(兼業禁止)。山本氏は家業の建設会社の役員から退いたものの、実際は副議長の立場を利用して多くの仕事を得ており、会社は急成長を遂げている――と指摘しているわけ。  山本氏は1968年4月生まれ。双葉高卒。2007年に平成建設社長に就任。2009年、浪江町議選に初当選したのに伴い社長を退任し、現在は同社社員として勤務。2021年4月の改選で4選を果たし、副議長を務める。山本氏の父・幸男氏も、同町議を8期務め、議長経験もある。 平成建設は1989年3月設立。資本金1000万円。従業員数24人(役員4人含む)。もともと牧場を経営していた幸男氏が立ち上げた(初代社長は幸男氏夫人のシヅ子氏)。所在地は、同町末森(すえのもり)地区だったが、原発事故で帰還困難区域に指定されたため、拠点を南相馬市原町区に移し、2018年に同町小野田地区に再移転した。 大手ゼネコンの下請として浪江町内の戸建て住宅建築や建物の解体工事、除染作業を手掛けているほか、一般顧客の整地工事や個人住宅の造成工事なども請け負っている。 役員は、代表取締役社長が山本氏の妻・山本博美氏。取締役が山本シヅ子氏、山本正幸氏、監査役が川村香代子氏。 民間信用調査機関によると、業績は別表の通り。震災・原発事故前の売上高は1億2000万円前後だったが、近年は数億円規模になり、2020年12月期には1億円超の当期純利益を計上した。  メールによると、町議の立場を利用して浪江町発注工事や復興事業に関係する入札情報を入手し、大手ゼネコンの下請に入っている、という。 相双建設事務所で同社の工事経歴書を閲覧したところ、業績が一気にアップした2019年から2021年にかけて、確かに大手ゼネコンが手掛ける被災建物の解体撤去工事や除染工事の下請に入っていた。 例えば2021年は安藤・間が元請の農地除染(請負金3億2470万円)と被災建物解体工事(同4500万円)を受注していた。 また、町発注工事に関しても、2020年に農業用施設保全整備(同1億2200万円)、2021年に小野田取水場造成工事(同1億7800万円)を元請で受注していた。 町議の立場を利用したかどうかは分からないが、復興事業や町発注工事を受注していたのは確かなようだ。 「業界の鼻つまみ者」、「大手ゼネコンのJVなどは仕方なく下請に入れている」という点が事実かどうかは確認できなかったが、「役場内で職員を恫喝し、次長課長クラスには必要な情報を出すようすり寄っている」という記述に関しては、町役場に出入りしている人物が次のように証言した。 「役場内で職員に大声で質問しているところを何度も見かけた。別のフロアにいてもその声が聞こえてきたほど。少なくとも第三者からは怒って話しているように見えました」 町内の事情通がこう解説する。 「〝導火線〟が短いタイプで、担当者などの回答が要領を得ないと大声になり、言葉遣いもすぐ荒くなる。いまの役場職員は震災・原発事故後に入庁したり、国・他市町村から応援で入っている人が大半で、地域事情をよく理解していないことが多いので、そうなりやすいのかもしれません。議会でも執行部とのやり取りの中で言葉遣いが荒くなり、何度か注意を受けていると聞いた。本人は自覚がないかもしれませんが、周りの受け止め方は違う」 いささか厳しい批判メールについて、当の本人はどう受け止めるのか。7月下旬、山本氏の自宅敷地内にある同社を訪ね、直接話を聞いた。 山本氏を直撃 山本幸一郎氏(浪江町議会HPより)  ――平成建設の実質的な社長業を山本氏が務めていると記されていた。 「厳密に言えば、この間実質的に経営を担ってきたのは私の父です。ただ、半年前に脳梗塞で倒れてしまったので、いまは私が〝金勘定〟を担当しています。もちろん、(公選法で禁じられているので)役員には就いていません」 ――議員の立場を利用し、町工事や復興事業に関係する入札情報を入手して仕事を得ているのでは、という指摘をどう受け止めますか。 「議員活動をしていれば、確かに予算策定の段階で次年度の事業について情報を得やすい。ただ、それらの情報は広報されており、誰でも入手できるもの。そもそも近年出ている町発注工事は規模が大きいものばかりで、入札参加資格がB、Cクラスのうちが応札できるものは少ない。(前出の)小野田取水場造成工事はうちの近所で、何としても取りたかったので、かなり〝叩いた〟金額で応札して取れましたけどね」 ――「大手ゼネコンの下請に無理やり入り、好条件の請負金をせしめている」という一文もあった。 「実際は大手ゼネコンから浪江町復興事業協同組合に打診があり、複数社で請け負っています。うちの会社が立地していた末森地区は特定復興再生拠点区域となっており、除染や建物解体工事が行われるということで、そこの下請には入れていただきました。地の利を生かせるということで、少し多めに(担当エリアを)配分していただいたと思いますし、危険手当分なども加味されているので割高な請負金になっています。ただ事情を知らない人には、議員の立場を使って仕事を取り、好条件な請負金を受け取っているように見えるかもしれません」 ――「議員として役場内で職員を恫喝している」という意見については、第三者からも証言を得ている。 「農業委員など地域のさまざまな役職を務めているので、2日に1度は役場に足を運び、担当課の職員と話をしています。ただ、事情が分からない職員も多く、怒ってしまうというか、つい大きな声でやり取りしてしまうのは事実です。建設課には町発注工事を受注している関係で確認のため訪ねることがありますが、それ以外で行くことはないです」 ――差出人に思い当たる節は。 「関係あるかどうかは分かりませんが、少し前に業界関係者とちょっとしたトラブルになったことがあり、(メールの内容と)同じようなことを指摘されたことがありました」 ――吉田栄光氏との関係にも触れられているが、これについては。 「父と付き合いがあり、私は中学生のときから何かとお世話になっているので、『他社より仕事を多くもらえているのではないか』とよく揶揄されていますが、さすがに県議の立場の方がそんなことはしません。町長選では吉田栄光氏の選対幹事長を務めました。町長選も意識して送信したのかもしれませんね」 疑惑のメールに対し、事実と異なる部分を丁寧に訂正し、同社の役員から退いているので公選法には抵触しない、と主張したが、「職員を恫喝」という指摘に関しては、そう疑われる行為をしていたと自ら認めた格好だ。町職員が町議から厳しい態度で詰められれば、立場の強さを利用したパワハラと受け取られかねない。まずは職員に対する姿勢を見直すべきだろう。 なお、町建設課にも確認したところ、「議員活動の一環として、事業の進捗状況などについて問い合わせがあれば説明することもあるが、未確定の情報について教えるようなことはない」と説明した。 言動を改めるべき  それにしても、誰がどんな目的でこのようなメールを送ったのか。 考えられるのは、年々町内での存在感を増す山本氏に対し敵意を抱く人物だろう。町議会副議長に就任し、家業の平成建設は復興需要で業績を伸ばしている。親密な関係の吉田栄光氏は新町長に就任する。そんな山本氏を疎ましく思う人物が悪評を綴ったのではないか。 そもそも山本氏の父・幸男氏からして、3回も議長不信任案が出されるなど議会のトラブルメーカー的存在だった。 本誌では2008年5月号に「違法墓地経営の浪江町議会議長に産廃不法投棄の仰天事実!!」という記事を掲載している。 県の相双地方振興局に「平成建設が山林に大量の建設廃棄物を不法投棄している」と通報が入った。現地を確認すると、建設廃棄物が野積みされ、埋められたものも確認できたため、同社に改善指導を行っていた。 2000年に建設廃棄物の分別解体と再資源化を義務付けた建設リサイクル法が定められていたが、当時同社の社長を務めていた山本氏らは同振興局に対し、「リサイクル法を知らなかった」と答えたという。 当時の本誌取材に幸男氏は「廃棄物は現在のように廃掃法が厳しくなる以前のもの」、「息子(山本氏)は『土の中から出て来た廃棄物は昔に埋めたもので、今は法律に基づいて適正に処理している』と説明した」、「掘り起こした廃棄物は(廃掃法の対象になるので)県の改善指導を受けて適正に処理した」と答えていた。 複数の町民によると、町長選には当初議長の佐々木恵寿氏(6期)が意欲を示していたが、「対立候補が出たとき、割れる可能性がある」という判断から候補者を調整し、議会を挙げて吉田栄光氏に頼み込んで、立候補を決意させた。その調整役を担ったのが山本氏とされる。 前述の通り、吉田氏は6339票を獲得し、会社社長の高橋翔氏に5895票差を付けて初当選を果たした。選対幹事長を務めた山本氏の存在感はますます大きくなると思われるが、それに伴い、過去の〝しくじり〟や職員への言動が蒸し返される機会が増えそう。「大堀地区で土地を取得し始めたが、何をするつもりなのか」(ある町民)など新たなウワサも聞こえてくるが、これまで以上に周囲の目を意識した言動を心がけなければ、再び同じような批判メールが出回ることになろう。 あわせて読みたい 悪評絶えない山本幸一郎【浪江町】副議長

  • 悪評絶えない山本幸一郎【浪江町】副議長

     本誌2022年8月号に掲載したのは「山本幸一郎浪江町副議長に怪文書 家業の建設会社急成長に疑惑の目」という記事。内容は編集部宛てに届いた山本氏への批判メールの内容を検証し、本人に直撃したもの。 議員の資質が問われる〝傍若無人ぶり〟  公職選挙法第92条の2では、自治体議員がその自治体から仕事を請け負う会社の役員に就くことを禁じている(兼業禁止)。そのため、山本氏は家業の建設会社・平成建設の役員から退いている。ただ、実際は副議長の立場を利用して多くの仕事を得ており、会社は急成長している。7月の町長選で新町長となった元県議・吉田栄光氏とは仲が良く、その威光もあって、ゼネコンの下請けに入っている――。以上がメールの概要だ。 実際、平成建設はここ数年業績を伸ばしている(別表参照)。震災・原発事故前の売上高は1億2000万円前後だったが、近年は数億円規模となっており、2020年12月期には売上高14億0400万円、当期純利益1億1600万円を計上。安藤・間が元請けの農地除染や被災建物解体工事に下請けとして入っているほか、町発注の農業用施設保全整備工事を元請けで受注していた。  山本氏はどう受け止めるのか。本人を直撃すると、「議員の立場を利用して入札情報を得たわけではなく、誰でも入手できる形で情報を得たに過ぎない」と主張した。 そのほかメールで指摘されていた点については、「大手ゼネコンから浪江町復興事業協同組合に打診があり、複数社で請け負っている」、「事情が分からない役場職員に対しては、怒ってしまうというかつい大きな声でやり取りしてしまう」、「町長選では吉田栄光氏の選対幹事長を務めた。町長選も意識して送信されたメールかもしれない」と話していた。 そのため、記事では、「町内で存在感を増す山本氏に対し、敵意を抱く人物がメールを送ったのではないか」と書いた。 ところが、その後、過去に取材したことのある複数の浪江町民や浜通りの建設業界関係者から「山本氏は役場職員だけでなく、同業者に対しても乱暴な言動を見せたり、強引に仕事を取ることがあるので嫌われている。何件もトラブルになっている」と指摘が入ったのだ。 ある町民はこう話す。 「いま、この地域には復興関連で大手ゼネコンをはじめ、他地区からさまざまな業者が入っているが、地域の実情を知らない人は、『議員』『副議長』という肩書きを持つ山本氏を信用して近づいてくる。山本氏(平成建設)はそれでパイプを作り、大手ゼネコンの復興事業の下請けに入って、かなりの仕事を得たのは間違いない。本人はそのつもりはないかもしれないが、『議員』『副議長』という肩書きがなければそれは叶わなかったでしょう。南相馬市内の飲み屋で、山本氏と大手ゼネコンの現地所長クラスが飲み歩いている姿を何度も見かけた。そういう意味では、『議員』『副議長』の肩書きを使って、平成建設の営業活動をしていると捉えられても仕方がないでしょうね」 同業者から多数の〝被害〟報告  一方、浜通りの建設業界関係者は次のように証言する。 「記事にあったように、山本氏は気性や口調が荒く、同業者に対しても義理を欠く対応を取ることがある。それでも、町内では相応の影響力があり、今回、親しい吉田栄光氏が町長になったことで、さらに力を持つことになった。皆、それぞれの仕事や生活があるから、不満に思っていてもなかなか言い出せないのです。だから、『政経東北』に告発した人に対しては、匿名とはいえ、『勇気あるな』『よく言ってくれた』という人が多かったのです」 平成建設の事務所  平成建設と過去に仕事をしたことがある複数の建設業界関係者に当たったところ、「詳細に記すと誰が言ったか分かり、仕事の上で不利益になることが予想されるため、記事で具体的に書かないでほしい」という人がほとんどだった。 ただ、彼らの話を統合すると、「この仕事を手伝ってほしい」とか、「あそこの現場に何人か人を出してほしい」ということがあり、正式に契約書を交わさずに仕事に入った後、トラブルに巻き込まれたケースが多々あったようだ。 「最初に言っていた条件と違うとか、最初に話していた以上の仕事をやらされることになったとか、そういった事例がよく知られている。近隣の土建業者はみな直接的に関わるのを避け、陰で愚痴を言い合っている」(建設業界関係者) 8月上旬には編集部宛てに新たな匿名投書も寄せられた。 《記事では山本氏が「父が半年前に倒れてからは私が金勘定を担当するようになった」と話していたが、実際はその前からすべての実権を握っている。仕事の打ち合わせから段取りなどすべて行っていた》 《山本氏は役場、業界関係者に対し、気に入らないことがあればすぐに声を荒げて恫喝し詰め寄ってくるので、関係者の間では山本氏に会わないようにするのが基本。会社に乗り込み暴言、恫喝等、日常的に行っている》 まるで〝被害者の会〟でも組織されたような勢いで本誌に寄せられる山本氏関連の情報の数々。要するに、「町内で存在感を増している山本氏」に敵意を抱いて怪文書メールが送られたわけではなく、もともと評判が悪い人物だったわけ。 山本氏は1968年4月生まれ。浪江町出身で、大堀小学校、浪江中学校、双葉高校卒。2007年に平成建設社長に就任。2009年、浪江町議選で初当選したのに伴い社長を退任。山本氏の妻・博美氏が社長を務め、山本氏は同社社員となっている。もっとも、山本氏が経営を取り仕切っているのは周知の事実だ。 山本氏の父親・幸男氏は山本牧場(同町末森地区=原発事故で帰還困難区域に指定)を経営するかたわら、同町議を8期務め、議長経験もある。 町内のある議員経験者は山本親子をこう評価する。 「幸男さんは3回も議長不信任案が出されるなど、議会のトラブルメーカー的存在として取り沙汰されることが多かった。幸一郎くんはそこまで目立ってはいないが、〝瞬間湯沸かし器〟で、納得できないことがあるとすぐ大声を出す。〝ヤンチャ〟な武勇伝も知られています」 山本氏が毎年参加している相馬野馬追の騎馬会や、大手ゼネコン事務所などでも大声を出し机をひっくり返して暴れていた――という目撃談も複数の町民から得られた。 「よく知られているのは、町内某企業の創立記念パーティーの二次会で、知人に暴力を振るった事件です。周囲に人がいる中だったのでウワサになり、『月刊タクティクス』に匿名で書かれました」(ある町民) 町議4期目。副議長を務めるベテラン議員だが、同僚町議からは「議員という立場をわきまえない言動が多くて敬遠されている」、「政治的行動を共にする同士はいない」という本音が聞かれる。 農地取得と競走馬施設の関係  そんな山本氏にとって強い味方となっているのが吉田栄光氏だ。子どものころから親密で、町長選では山本氏が吉田氏の選対幹事長を務めた。2人の関係を象徴すると言われているのが、同町末森・大堀地区で整備が計画されている競走馬施設(本誌9月号既報)だ。 民間事業者主体の計画とされているが、吉田氏が誘致に前向きだったとされており、「吉田町長の息子らが経営するランドビルドという会社が運営に携わるらしい」(前出・ある町民)と言われている。 一方、山本氏は帰還困難区域の末森地区や大堀地区などで営農意思がない農家から農地を取得している(本誌8月号既報)。そのため「吉田氏を通して施設が整備されることを知った山本氏が、周辺施設なども想定して土地を先行取得しているのだろう」という見方が広まっているのだ。 吉田氏に事実関係を確認したところ、「競走馬施設の計画が浮上しているのは事実であり、とても期待している。ただ具体的な段階ではないし、(吉田氏の子どもの会社は)運営に携わるというものではなく、お手伝いした程度」とコメントした。 ランドビルドの吉田学人氏にコメントを求めるとこう話した。 「私が乗馬を趣味としていることを知って、先方から相談を受けたのです。地域のためになる事業と感じたので、ほかの人を紹介するなどしてお手伝いしましたが、運営などに携わる予定はありません。そのようなウワサが出ているのは承知していましたが、事業主は全く別の方なので、どう対応すればいいか困惑していました」 山本氏に話があったのかどうかは判然としないが、競走馬施設の計画と山本氏の農地取得、タイミングが良すぎるのは事実だ。 10月下旬、再び山本氏を直撃し悪評が相次いでいることに対し、意見を聞いた。 まず大手ゼネコンの現地所長クラスと飲み歩いている点についてはこう話した。 「年に数回飲みに行く友達グループの中に、大手ゼネコンの現地所長経験者がいるのは事実。ただ、いまはそのゼネコンの下請けに入っているわけではないし、自分が直接的に酒席に招くことはない」 同業者とのトラブルに関しては、「そうしたトラブルになった記憶はない。特に思い当たらない」と語った。複数の業界関係者から話を聞いているが、事実ではないということか、それともより詳細に話せば記憶がよみがえることもあるのか。 騎馬会や大手ゼネコン事務所で大暴れした――という話に関しては次のように答えた。 「騎馬会の〝役付け〟をめぐり、声を荒げて異議を唱えるのはみんなやっていたこと。自分だけがことさら取り上げられるのは違和感がある。それに机をひっくり返して大暴れした記憶はない。誰かと勘違いしているのではないか」 「大手ゼネコンに関しては除染漏れの個所があったので、呼びつけて怒鳴ったことが何度かある。事務所で大暴れした記憶はない」 ウワサを否定する山本氏だが、町内某企業の創立記念パーティーの二次会で、知人に暴力を振るった点は「本当にあったことです」とあっさり認めた。 「酒癖の悪い知人を諫める目的で叩いたらもみ合いになり、周りに止められた。事件化はしなかったが、議員という立場にありながら手を出したことを反省しています」(山本氏) 競走馬施設用地の先行取得に関しては「同施設の計画が浮上したのは半年ほど前。うちの父親(幸男氏)が山本牧場付近の農地を取得し始めたのが3年前。計画に合わせて先行取得したわけではありません」とウワサを否定した。 一方で、「計画地は山麓線(県道35号いわき浪江線)から1㌔ほど山側に入っていったところになる見込み。実はそちらにもわずかですが私の所有地が含まれています」と自ら明かした。競走馬施設に合わせて土地を先行取得したわけではないが、偶然所有地の一部が計画地に入っていた――山本氏はそう主張したいようだ。そう言いつつも計画地はしっかり把握していたわけで、意識はしていたのではないか。 「酒飲みに出かけるのはやめる」 山本幸一郎氏(浪江町議会HPより)  一通り話を聞いた後、山本氏は「自分が認めていないウワサまで誌面で紹介されるのは違和感がある」と語った。それならば、本人にとって都合のいい情報しか記事には書けないことになる。真面目に活動している議員であれば、これほどヘンなウワサが流れることはないだろう。怪文書が送られてきたという記事に対し、同業者から「勇気あるな」「よく言ってくれた」という声が上がるのはよほどのことだ。 言葉の端々からいかにも相馬野馬追出場者らしい熱い性格で、仲間への面倒見のよさが伝わってくる。業界関係者もそのことは認める。しかし、それ以上に公人らしからぬ傍若無人ぶりが際立っている。 「議員なのに建設会社の社長のようにふるまい、ゼネコンの現地所長と堂々と飲み歩く。そのことを指摘されれば〝いまは仕事をしていないゼネコン〟とうそぶく。公禄をはむ〝公人〟という自覚に欠けているのではないか」(建設業界関係者) 山本氏に関する情報は現在進行形で寄せられている。一つは山本牧場の件だ。山本氏の父親・幸男氏が病気で倒れ、山本牧場において研究名目で飼われていた牛が殺処分された。それらの死体について、「家畜保健所に届け出せず牧場敷地内に埋めたのではないか」とウワサになった。 山本牧場  ただ、家畜保健所に確認したところ、原発事故により指定された旧警戒区域において、原発事故発生当時生きていた牛は殺処分して敷地内に埋設するよう方針が示されており、それに基づいていたので問題がないことが分かった。「家畜保健所担当者の立ち合いのもと、埋めました」(山本氏)。 このほか、下請け会社から出向している社員について、雇用の〝グレーさ〟を指摘する声もあった。 山本氏は記者に対し「酒飲みは好きだが、友達グループと酒飲みに出かけるのはやめる。前回記事を受けて、職員に対し大声を出すのもやめた」と語った。どこまで真剣かは分からないが、周囲からは自分が想像している以上に冷ややかな目で見られていることを意識すべきだ。 あわせて読みたい 【吉田栄光町長の側近】山本幸一郎【浪江町】副議長に怪文書

  • 【吉田栄光町長の側近】山本幸一郎【浪江町】副議長に怪文書

     2022年6月中旬、浪江町副議長の山本幸一郎氏(54、4期)に関する疑惑を綴ったメールが本誌編集部に寄せられた。山本氏が町議の立場を利用して、家業の建設会社の仕事を得ている――とする内容。山本氏に真偽のほどを聞いてみた。 家業の建設会社〝急成長〟に疑惑の目 怪文書メール  メールは匿名で送られてきた。受信日時は6月18日。ポイントは以下のようなもの。  〇浪江町議会副議長の山本幸一郎氏は、妻が平成建設の社長を務めているが、本人がいまも実質的な社長業を行っている。 〇町役場内で議員の立場を利用し、町工事や復興事業関係の入札情報を入手して仕事を得ている。 〇大手ゼネコンの下請に無理やり入り、好条件の請負金をせしめる行為が目立っている。 〇業界の鼻つまみ者だが、副議長であることや、浪江町長選で当選確実の吉田栄光氏(※編集部注・7月10日投開票の同町長選で6339票を獲得して初当選した)の威光もあり、大手ゼネコンのJVなどは仕方なく下請に入れている。 〇役場内で職員を恫喝し、次長課長クラスには必要な情報を出すようすり寄っている。復興事業で突然成金になった輩が「もっと金儲けさせろ」と守銭奴のごとく迫っているようで気持ち悪さがある。 〇浪江町にはいかがわしい議員がほかにもいる。町の政治をクリーンで適切なものとするため、こうした勘違い議員をただしていく必要があるのではないか。 公職選挙法第92条の2では、自治体議員がその自治体から仕事を請け負う会社の役員に就くことを禁じている(兼業禁止)。山本氏は家業の建設会社の役員から退いたものの、実際は副議長の立場を利用して多くの仕事を得ており、会社は急成長を遂げている――と指摘しているわけ。  山本氏は1968年4月生まれ。双葉高卒。2007年に平成建設社長に就任。2009年、浪江町議選に初当選したのに伴い社長を退任し、現在は同社社員として勤務。2021年4月の改選で4選を果たし、副議長を務める。山本氏の父・幸男氏も、同町議を8期務め、議長経験もある。 平成建設は1989年3月設立。資本金1000万円。従業員数24人(役員4人含む)。もともと牧場を経営していた幸男氏が立ち上げた(初代社長は幸男氏夫人のシヅ子氏)。所在地は、同町末森(すえのもり)地区だったが、原発事故で帰還困難区域に指定されたため、拠点を南相馬市原町区に移し、2018年に同町小野田地区に再移転した。 大手ゼネコンの下請として浪江町内の戸建て住宅建築や建物の解体工事、除染作業を手掛けているほか、一般顧客の整地工事や個人住宅の造成工事なども請け負っている。 役員は、代表取締役社長が山本氏の妻・山本博美氏。取締役が山本シヅ子氏、山本正幸氏、監査役が川村香代子氏。 民間信用調査機関によると、業績は別表の通り。震災・原発事故前の売上高は1億2000万円前後だったが、近年は数億円規模になり、2020年12月期には1億円超の当期純利益を計上した。  メールによると、町議の立場を利用して浪江町発注工事や復興事業に関係する入札情報を入手し、大手ゼネコンの下請に入っている、という。 相双建設事務所で同社の工事経歴書を閲覧したところ、業績が一気にアップした2019年から2021年にかけて、確かに大手ゼネコンが手掛ける被災建物の解体撤去工事や除染工事の下請に入っていた。 例えば2021年は安藤・間が元請の農地除染(請負金3億2470万円)と被災建物解体工事(同4500万円)を受注していた。 また、町発注工事に関しても、2020年に農業用施設保全整備(同1億2200万円)、2021年に小野田取水場造成工事(同1億7800万円)を元請で受注していた。 町議の立場を利用したかどうかは分からないが、復興事業や町発注工事を受注していたのは確かなようだ。 「業界の鼻つまみ者」、「大手ゼネコンのJVなどは仕方なく下請に入れている」という点が事実かどうかは確認できなかったが、「役場内で職員を恫喝し、次長課長クラスには必要な情報を出すようすり寄っている」という記述に関しては、町役場に出入りしている人物が次のように証言した。 「役場内で職員に大声で質問しているところを何度も見かけた。別のフロアにいてもその声が聞こえてきたほど。少なくとも第三者からは怒って話しているように見えました」 町内の事情通がこう解説する。 「〝導火線〟が短いタイプで、担当者などの回答が要領を得ないと大声になり、言葉遣いもすぐ荒くなる。いまの役場職員は震災・原発事故後に入庁したり、国・他市町村から応援で入っている人が大半で、地域事情をよく理解していないことが多いので、そうなりやすいのかもしれません。議会でも執行部とのやり取りの中で言葉遣いが荒くなり、何度か注意を受けていると聞いた。本人は自覚がないかもしれませんが、周りの受け止め方は違う」 いささか厳しい批判メールについて、当の本人はどう受け止めるのか。7月下旬、山本氏の自宅敷地内にある同社を訪ね、直接話を聞いた。 山本氏を直撃 山本幸一郎氏(浪江町議会HPより)  ――平成建設の実質的な社長業を山本氏が務めていると記されていた。 「厳密に言えば、この間実質的に経営を担ってきたのは私の父です。ただ、半年前に脳梗塞で倒れてしまったので、いまは私が〝金勘定〟を担当しています。もちろん、(公選法で禁じられているので)役員には就いていません」 ――議員の立場を利用し、町工事や復興事業に関係する入札情報を入手して仕事を得ているのでは、という指摘をどう受け止めますか。 「議員活動をしていれば、確かに予算策定の段階で次年度の事業について情報を得やすい。ただ、それらの情報は広報されており、誰でも入手できるもの。そもそも近年出ている町発注工事は規模が大きいものばかりで、入札参加資格がB、Cクラスのうちが応札できるものは少ない。(前出の)小野田取水場造成工事はうちの近所で、何としても取りたかったので、かなり〝叩いた〟金額で応札して取れましたけどね」 ――「大手ゼネコンの下請に無理やり入り、好条件の請負金をせしめている」という一文もあった。 「実際は大手ゼネコンから浪江町復興事業協同組合に打診があり、複数社で請け負っています。うちの会社が立地していた末森地区は特定復興再生拠点区域となっており、除染や建物解体工事が行われるということで、そこの下請には入れていただきました。地の利を生かせるということで、少し多めに(担当エリアを)配分していただいたと思いますし、危険手当分なども加味されているので割高な請負金になっています。ただ事情を知らない人には、議員の立場を使って仕事を取り、好条件な請負金を受け取っているように見えるかもしれません」 ――「議員として役場内で職員を恫喝している」という意見については、第三者からも証言を得ている。 「農業委員など地域のさまざまな役職を務めているので、2日に1度は役場に足を運び、担当課の職員と話をしています。ただ、事情が分からない職員も多く、怒ってしまうというか、つい大きな声でやり取りしてしまうのは事実です。建設課には町発注工事を受注している関係で確認のため訪ねることがありますが、それ以外で行くことはないです」 ――差出人に思い当たる節は。 「関係あるかどうかは分かりませんが、少し前に業界関係者とちょっとしたトラブルになったことがあり、(メールの内容と)同じようなことを指摘されたことがありました」 ――吉田栄光氏との関係にも触れられているが、これについては。 「父と付き合いがあり、私は中学生のときから何かとお世話になっているので、『他社より仕事を多くもらえているのではないか』とよく揶揄されていますが、さすがに県議の立場の方がそんなことはしません。町長選では吉田栄光氏の選対幹事長を務めました。町長選も意識して送信したのかもしれませんね」 疑惑のメールに対し、事実と異なる部分を丁寧に訂正し、同社の役員から退いているので公選法には抵触しない、と主張したが、「職員を恫喝」という指摘に関しては、そう疑われる行為をしていたと自ら認めた格好だ。町職員が町議から厳しい態度で詰められれば、立場の強さを利用したパワハラと受け取られかねない。まずは職員に対する姿勢を見直すべきだろう。 なお、町建設課にも確認したところ、「議員活動の一環として、事業の進捗状況などについて問い合わせがあれば説明することもあるが、未確定の情報について教えるようなことはない」と説明した。 言動を改めるべき  それにしても、誰がどんな目的でこのようなメールを送ったのか。 考えられるのは、年々町内での存在感を増す山本氏に対し敵意を抱く人物だろう。町議会副議長に就任し、家業の平成建設は復興需要で業績を伸ばしている。親密な関係の吉田栄光氏は新町長に就任する。そんな山本氏を疎ましく思う人物が悪評を綴ったのではないか。 そもそも山本氏の父・幸男氏からして、3回も議長不信任案が出されるなど議会のトラブルメーカー的存在だった。 本誌では2008年5月号に「違法墓地経営の浪江町議会議長に産廃不法投棄の仰天事実!!」という記事を掲載している。 県の相双地方振興局に「平成建設が山林に大量の建設廃棄物を不法投棄している」と通報が入った。現地を確認すると、建設廃棄物が野積みされ、埋められたものも確認できたため、同社に改善指導を行っていた。 2000年に建設廃棄物の分別解体と再資源化を義務付けた建設リサイクル法が定められていたが、当時同社の社長を務めていた山本氏らは同振興局に対し、「リサイクル法を知らなかった」と答えたという。 当時の本誌取材に幸男氏は「廃棄物は現在のように廃掃法が厳しくなる以前のもの」、「息子(山本氏)は『土の中から出て来た廃棄物は昔に埋めたもので、今は法律に基づいて適正に処理している』と説明した」、「掘り起こした廃棄物は(廃掃法の対象になるので)県の改善指導を受けて適正に処理した」と答えていた。 複数の町民によると、町長選には当初議長の佐々木恵寿氏(6期)が意欲を示していたが、「対立候補が出たとき、割れる可能性がある」という判断から候補者を調整し、議会を挙げて吉田栄光氏に頼み込んで、立候補を決意させた。その調整役を担ったのが山本氏とされる。 前述の通り、吉田氏は6339票を獲得し、会社社長の高橋翔氏に5895票差を付けて初当選を果たした。選対幹事長を務めた山本氏の存在感はますます大きくなると思われるが、それに伴い、過去の〝しくじり〟や職員への言動が蒸し返される機会が増えそう。「大堀地区で土地を取得し始めたが、何をするつもりなのか」(ある町民)など新たなウワサも聞こえてくるが、これまで以上に周囲の目を意識した言動を心がけなければ、再び同じような批判メールが出回ることになろう。 あわせて読みたい 悪評絶えない山本幸一郎【浪江町】副議長