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星北斗

  • 【星北斗】参議院議員インタビュー(2024.2)

    【星北斗】参議院議員インタビュー(2024.2)

     ほし・ほくと 1964年郡山市生まれ。安積高校、東邦大学医学部卒。医師。医系技官として旧厚生省に入省。退官後の現在、星総合病院理事長。2022年の参院選で初当選。  派閥の政治資金パーティー問題で大揺れの自民党。国民の視線が厳しさを増す中、岸田文雄総裁を先頭にどこまで改革が進むのか注目されるが、そうした状況を本県選挙区選出で無派閥の星北斗参院議員(59)=1期=はどう見ているのか。政治不信を解消する方策と合わせ、自身が今後とるべき行動を率直に語っていただいた。  ――初当選から約1年半が経過しましたが、この間を振り返って。  「昨年の通常国会では何度も質問に立たせていただきました。いくつか印象に残っているのは、感染症関連の法案審議で、私が経験したコロナ対応などをベースに質問を行い、それが制度に反映されたことと、福島復興再生特措法関連の審議で、特定帰還居住区域に帰ってきた被災者が農業を生業としている場合、農地だけでなく水路、取り付け道路、周辺山林の一部も農業に必要であれば除染の対象になるという明確な答弁をいただけたことです。これらの質問は医療従事者や被災者など現場から寄せられた声がヒントになりました。県議や県幹部の皆さんに相談したり、情報をいただけたりしたことで中身の濃い質問にすることもできました。一回生ではありますが、県民のお役に立つ仕事ができて嬉しく思っています。  一方、昨年の臨時国会では厚生労働委員会理事として、野党の先生方との交渉の一端を担わせていただきました。人脈が広がった点では非常に良い経験でしたが、半面、ほとんど質問できなかったので、1月26日から始まる通常国会ではあらためて質問に立ちたいと考えています」  ――派閥の政治資金パーティー問題に国民は憤っています。無派閥の星議員はどう見ていますか。  「私は派閥のプラス面とマイナス面を見極めたいと考え、入会のお誘いはいただいたもののこの間、無派閥の立場をとってきました。そうした中で今回の問題が起こり、現在は無派閥の先輩議員や一回生議員らと『無派閥や一回生だからこそできること・やるべきことがあるのではないか』と議論を重ねています。  派閥と聞いて真っ先に思い浮かぶのはパーティーですが、大臣や副大臣など人事の推薦が行われたり、内規で定めている定年制が有名無実化されているといった報道も見聞きします。そうした中で、私のような一回生が口を挟んで大丈夫なのかと心配する声もあれば、黙って見過ごすのか、無派閥だからこそはっきり物を言うべきではないかという声もいただいています。私は県民に選んでいただき、県民の負託にこたえるため参院議員になりました。であるならば、言うべきことは言わなければならないという立場から、今の自分に何ができるのか先輩議員らと具体的な行動に移すための準備を進めているところです。  私は社会人として三十数年過ごし、その間にはグループに属したり、今現在グループを率いる立場にもいます。とかく政治の世界は特別と言われますが、だからこそ国民が政治から離れていっている面は否めないと思います。私は政治家の保守本流ではありませんが、長く社会人として過ごしてきた自分をベースに、投票してくださる皆さんの立場に立った行動をとっていきたい」  ――何に手を付け、それによってどう変わったかがはっきり見えないと国民は納得しないと思います。  「岸田総裁はパーティーや人事推薦制度をやめる方針を示していますが、派閥そのものをなくすべきという意見もあります。一方で政策集団としての派閥は必要という声もあります。私は参議院なので普段、衆議院の先生方と会うことがなく、厚生労働委員会以外の先生方と接する機会も少ない。そういう意味では、派閥は人の輪を広げるのに有効だし、政治家としての心構えなど先輩議員から教えていただけることも多々あるので、まずはお金の問題を決着させ、人事推薦制度を改めるなどしてから今後の派閥のあり方を考えるべきだと思います。個人的には派閥=悪という考えは持っていません」  ――自民党の支持率が下がるのは当然ですが、野党の支持率も上がっていません。国民の政治そのものに対する不信を政治家は深刻に受け止めるべきだと思います。  「正直〝場外乱闘〟が多すぎると思います。Xやユーチューブで『説明不足だ』『無知だ』といった発信をよく見かけますが、非常に子どもっぽく感じるし、多くの国民は呆れているのではないでしょうか。  政治家が議論を闘わせる場は国会であり〝場外乱闘〟は慎むべきです。議論の中身も週刊誌報道をあげつらうのではなく、この法律・予算をどうしていくのか国民生活に資することを論じるべきです。さらにテレビ中継が入る予算委員会も国民受けを狙ったパフォーマンスではなく、その名の通り予算をめぐる真摯な議論に努めるべきです。ただ誤解されては困りますが、皆さんが見る機会の少ない各種委員会では専門性の高い議論が行われていることを付言したいと思います。  もう一つ大切なのは、質問や議論の中身を国民に知っていただく努力を国会議員自らがすることです。例えば、ネットで私の名前を検索すれば質問している場面が動画で全て出てきます。過去の議事録も検索できます。それを全ての国民に見ていただくことは不可能だが、国会議員がぜひご覧くださいと積極的に発信すれば、興味のある国民は見ると思うのです。私も、そうやって見ていただいた医療従事者から『いい質問をしてくれてありがとう』『動画を見るまでどんな活動をしているか分からなかった』と言っていただき、一定の手ごたえを感じています。マスコミに報じていただく場合もありますが、切り取られた報じ方をされると無用な誤解を招くことがありますからね。  国政報告も、大勢集めて派手なパーティーを開くのではなく、十数人のミニ集会を各地で行えば、私の考えを理解していただけると同時に、皆さんの思いに直接触れることができます。お互いの絆も深まります。政治を身近に感じていただかないことには信頼回復にはつながらないと思います」  ――新型コロナが収束してきた中で、今後はコロナで得られた知見を新たな感染症対策に生かす取り組みが求められます。  「例えば今回の能登半島地震でも避難所に感染症チームが派遣され、コロナの知見を生かした取り組みが展開されています。医療機関も次に何かが起きた時、自身の役割を都道府県と事前に協議することが法律に明記されました。  さらに感染症の専門家が不足した経験から、県独自に必要な予算を確保し、昨年9月から感染症に特化した看護師の育成事業が県主導のもと民間病院で始まっています。福島方式とも呼べるこの取り組みは、全国から注目を集めています」  ――最後に県民にメッセージを。  「私のモットーは、特定の誰かのためではなく、私を国政に送り出してくださった県民の皆さんを思いながら議員活動するということです。そうした姿を知っていただくためにも、これから多くの皆さんと対話をさせていただきたいと思います」

  • 【星北斗】参議院議員

    【星北斗】参議院議員インタビュー

    ほし・ほくと 1964年郡山市生まれ。安積高、東邦大医学部卒。医師。医系技官として旧厚生省に入省。退官後の現在、星総合病院理事長、県医師会副会長を務める。  昨年7月の参議院選挙福島県選挙区で初当選した星北斗氏(58、自民)は医師であり、病院経営者である立場から新型コロナウイルスの出口戦略を描き、政策に反映させようと奔走している。だが、内閣支持率は低迷しているのが現状だ。岸田文雄政権に苦難が待ち構える中、与党の一員として政権運営をどう捉えるのか。単刀直入に聞いた。  ――あらためて、初当選を果たした選挙戦を振り返ってどのような思いですか。 「大きく感じたことが三つあります。一つ目は『福島県は本当に広いんだなあ』ということ。二つ目は自分が身を置く医療界というのは、数ある業界の中の一つに過ぎないのだということ。農林水産業、商工業含めてあらゆる方々が苦心されているのを目の当たりにして感じました。三つ目は希望の持てる発見ですが、小さな町村の首長が元気で積極的ということ。それぞれの地域が独自性を打ち出し、魅力的な場所にしようと努力されています。広い県内を回り、そのことを強く認識しました。 参議院議員としてさまざまな立場の声を聞き、国政に反映させる責任は非常に重いですが、同時にやりがいを感じています」 ――新型コロナウイルス感染拡大が依然収束しませんが、今後の対応と出口戦略についてうかがいます。 「新型コロナウイルスはBA・5に変異が進み非常に感染しやすくなっています。ただ、ワクチン接種と治療薬の環境は整ってきています。あとは重症化対応のために医療をどう集約するかでしょう。政治判断や法の整備が必要になると思います。一般医療への影響を防ぐためにどうするか、出口戦略を今年度中に見いださなくてはなりません。 感染拡大の真っ只中に出口戦略を大々的に訴えるのはいかがなものかとの指摘もありますが、今真剣に考えておかなければなりません。感染が落ち着いてからだと、どうしても希望的観測が頭をよぎるからです。 2類相当から5類に変える場合には、国が一方的に決めるだけではだめです。国民が『これならいける』と納得する安心領域に入らないといけません。経済との天秤にかけるのではなく、自分の生活の中で新型コロナを5類の感染症として受け入れられるかどうか。そうでなければ出口は見えないと思います。 一般医療に感染を持ち込まないため、既にある発熱外来のような仕組みは5類になったとしても続けていく必要があるでしょう。新型コロナへの感染が疑われたら医療にアクセスできる仕組みはできています。環境が整っていれば『インフルエンザと同等』とあえて強弁しなくてもいいのではと思います。 5類になれば新型コロナの治療費や検査費が自己負担になることについては『自分を守るための出費』という考えが国民の間に一定程度浸透していると思います。例えばインフルエンザのワクチンは、重症化のリスクがある高齢者や子ども、あるいはエッセンシャルワーカーの方は接種するという考え方が定着しています。新型コロナのワクチンも全国民ということではなく、必要な方が必要に応じて接種する方向に徐々に変わっていくと見ています。 一方、自己負担についても全額負担してもらうのか、国が一部を補助するのかという方法論は検討の余地があります。補助の割合も半額なのか、2、3割なのかといった議論が必要で、国民の納得が得られる形にしなければなりません。治療費の補助は上限を決めるが、薬は無料といった柔軟策もあり得るでしょう。丁寧な議論を経ず、単に2類相当から5類に下げるだけではハレーションは大きくなると思います。国として丁寧な制度設計と準備、広報が必要です」 ――東京電力福島第一原発で増え続けるトリチウムなどを含んだALPS処理水の海洋放出をめぐり、安全性への懸念や風評被害を心配する声が未だに後を絶ちません。 「私は、科学的安全性に対する懸念はないと思っています。ただし、風評はどこまで行ってもなくなりません。漁業者らのために買い上げや基金を整えるほかに、多くの方々の意識を変えていく取り組みが必須です。そのためには、多くの方に福島第一原発を訪れてほしいと思います。敷地内に林立する大量の処理水タンクは、帰還が進む地域に暗い影を落としています。タンクの撤去なくして復興はないと思います。これだけのタンクをこのままにしておいていいのかという視点が必要です。 少なくとも、科学的安全性を私たち県民が受け入れなければ海外の人たちが納得しません。安全性だけで物事が動くとは思いませんし、漁業者の方々の心配する気持ちも分かります。ただ、自信を持って県産品を輸出するためには、国は手間と時間を惜しんではいけないと思います」 ――岸田内閣の支持率が低迷しています。とりわけ昨年末に浮上した防衛戦略と、それに伴う増税の考え方には多くの批判が上がりました。 「言葉を選ばずに言うと、私は自民党・岸田内閣に対する期待の大きさの裏返しと捉えています。事実、自民党の支持率自体は下がっていません。ウクライナ侵攻や台湾有事への懸念などを受け、防衛費増加の考え方は国民的コンセンサスが得られつつありました。そうした中で浮上した増税について、まだまだ国民の理解が進んでいないのであれば、それは説明不足だったという批判は真摯に受け入れなければなりません。ただ旧統一教会問題に関しても、熱心に野党との協議を重ね、100点とは言えなくてもスピーディーに解決への道筋を付けました。国会の短期決戦の中で岸田首相は並々ならぬ決意があったと思います。その過程で避けては通れぬ増税の話が出たので、期待がマイナスに変わったのではないでしょうか。 防衛費のために国債を発行し、将来世代にツケを回すのは正しい判断ではありません。それをしないための増税です。復興特別所得税の一部が充てられる点についても、内実は復興の財源が減るわけでなく『切り捨て』ではありません。説明を尽くしていくしかないでしょう。おそらく、衆院選後に発表するのは国民を欺くようで、岸田首相はできなかったのだと思います。真面目さの表れと捉えています」 ――今後の抱負を。 「5年半後の参院選で圧倒的に勝つ、これに尽きます。勝つことが目的ではありません。得票数・得票率は選んでくれた方に対する責任をどう果たしたかが表れる指標になるからです。有権者の方から『星北斗にもう一回やらしてみっぺ』と言われるように、何ができるかを常に考えていきます。  自民党は水平な組織です。1期生だろうが参議院議員だろうが、現場の実情に詳しく、アイデアがあれば政策に反映してくれます。そういう党の環境を最大限活用します。任期の6年間は第2期復興・創生期間の折り返しです。震災・原発事故で避難された皆さんが帰ってこられるまち、住みよいまちにするため首長や地元の方々と取り組んでいきます。次の選挙で相手陣営に『あいつには勝てない』と言われるような、替えの利かない国会議員を目指します」 星北斗参議院議員のホームページ 掲載号:政経東北【2023年2月号】

  • 【星北斗】参議院議員インタビュー(2024.2)

     ほし・ほくと 1964年郡山市生まれ。安積高校、東邦大学医学部卒。医師。医系技官として旧厚生省に入省。退官後の現在、星総合病院理事長。2022年の参院選で初当選。  派閥の政治資金パーティー問題で大揺れの自民党。国民の視線が厳しさを増す中、岸田文雄総裁を先頭にどこまで改革が進むのか注目されるが、そうした状況を本県選挙区選出で無派閥の星北斗参院議員(59)=1期=はどう見ているのか。政治不信を解消する方策と合わせ、自身が今後とるべき行動を率直に語っていただいた。  ――初当選から約1年半が経過しましたが、この間を振り返って。  「昨年の通常国会では何度も質問に立たせていただきました。いくつか印象に残っているのは、感染症関連の法案審議で、私が経験したコロナ対応などをベースに質問を行い、それが制度に反映されたことと、福島復興再生特措法関連の審議で、特定帰還居住区域に帰ってきた被災者が農業を生業としている場合、農地だけでなく水路、取り付け道路、周辺山林の一部も農業に必要であれば除染の対象になるという明確な答弁をいただけたことです。これらの質問は医療従事者や被災者など現場から寄せられた声がヒントになりました。県議や県幹部の皆さんに相談したり、情報をいただけたりしたことで中身の濃い質問にすることもできました。一回生ではありますが、県民のお役に立つ仕事ができて嬉しく思っています。  一方、昨年の臨時国会では厚生労働委員会理事として、野党の先生方との交渉の一端を担わせていただきました。人脈が広がった点では非常に良い経験でしたが、半面、ほとんど質問できなかったので、1月26日から始まる通常国会ではあらためて質問に立ちたいと考えています」  ――派閥の政治資金パーティー問題に国民は憤っています。無派閥の星議員はどう見ていますか。  「私は派閥のプラス面とマイナス面を見極めたいと考え、入会のお誘いはいただいたもののこの間、無派閥の立場をとってきました。そうした中で今回の問題が起こり、現在は無派閥の先輩議員や一回生議員らと『無派閥や一回生だからこそできること・やるべきことがあるのではないか』と議論を重ねています。  派閥と聞いて真っ先に思い浮かぶのはパーティーですが、大臣や副大臣など人事の推薦が行われたり、内規で定めている定年制が有名無実化されているといった報道も見聞きします。そうした中で、私のような一回生が口を挟んで大丈夫なのかと心配する声もあれば、黙って見過ごすのか、無派閥だからこそはっきり物を言うべきではないかという声もいただいています。私は県民に選んでいただき、県民の負託にこたえるため参院議員になりました。であるならば、言うべきことは言わなければならないという立場から、今の自分に何ができるのか先輩議員らと具体的な行動に移すための準備を進めているところです。  私は社会人として三十数年過ごし、その間にはグループに属したり、今現在グループを率いる立場にもいます。とかく政治の世界は特別と言われますが、だからこそ国民が政治から離れていっている面は否めないと思います。私は政治家の保守本流ではありませんが、長く社会人として過ごしてきた自分をベースに、投票してくださる皆さんの立場に立った行動をとっていきたい」  ――何に手を付け、それによってどう変わったかがはっきり見えないと国民は納得しないと思います。  「岸田総裁はパーティーや人事推薦制度をやめる方針を示していますが、派閥そのものをなくすべきという意見もあります。一方で政策集団としての派閥は必要という声もあります。私は参議院なので普段、衆議院の先生方と会うことがなく、厚生労働委員会以外の先生方と接する機会も少ない。そういう意味では、派閥は人の輪を広げるのに有効だし、政治家としての心構えなど先輩議員から教えていただけることも多々あるので、まずはお金の問題を決着させ、人事推薦制度を改めるなどしてから今後の派閥のあり方を考えるべきだと思います。個人的には派閥=悪という考えは持っていません」  ――自民党の支持率が下がるのは当然ですが、野党の支持率も上がっていません。国民の政治そのものに対する不信を政治家は深刻に受け止めるべきだと思います。  「正直〝場外乱闘〟が多すぎると思います。Xやユーチューブで『説明不足だ』『無知だ』といった発信をよく見かけますが、非常に子どもっぽく感じるし、多くの国民は呆れているのではないでしょうか。  政治家が議論を闘わせる場は国会であり〝場外乱闘〟は慎むべきです。議論の中身も週刊誌報道をあげつらうのではなく、この法律・予算をどうしていくのか国民生活に資することを論じるべきです。さらにテレビ中継が入る予算委員会も国民受けを狙ったパフォーマンスではなく、その名の通り予算をめぐる真摯な議論に努めるべきです。ただ誤解されては困りますが、皆さんが見る機会の少ない各種委員会では専門性の高い議論が行われていることを付言したいと思います。  もう一つ大切なのは、質問や議論の中身を国民に知っていただく努力を国会議員自らがすることです。例えば、ネットで私の名前を検索すれば質問している場面が動画で全て出てきます。過去の議事録も検索できます。それを全ての国民に見ていただくことは不可能だが、国会議員がぜひご覧くださいと積極的に発信すれば、興味のある国民は見ると思うのです。私も、そうやって見ていただいた医療従事者から『いい質問をしてくれてありがとう』『動画を見るまでどんな活動をしているか分からなかった』と言っていただき、一定の手ごたえを感じています。マスコミに報じていただく場合もありますが、切り取られた報じ方をされると無用な誤解を招くことがありますからね。  国政報告も、大勢集めて派手なパーティーを開くのではなく、十数人のミニ集会を各地で行えば、私の考えを理解していただけると同時に、皆さんの思いに直接触れることができます。お互いの絆も深まります。政治を身近に感じていただかないことには信頼回復にはつながらないと思います」  ――新型コロナが収束してきた中で、今後はコロナで得られた知見を新たな感染症対策に生かす取り組みが求められます。  「例えば今回の能登半島地震でも避難所に感染症チームが派遣され、コロナの知見を生かした取り組みが展開されています。医療機関も次に何かが起きた時、自身の役割を都道府県と事前に協議することが法律に明記されました。  さらに感染症の専門家が不足した経験から、県独自に必要な予算を確保し、昨年9月から感染症に特化した看護師の育成事業が県主導のもと民間病院で始まっています。福島方式とも呼べるこの取り組みは、全国から注目を集めています」  ――最後に県民にメッセージを。  「私のモットーは、特定の誰かのためではなく、私を国政に送り出してくださった県民の皆さんを思いながら議員活動するということです。そうした姿を知っていただくためにも、これから多くの皆さんと対話をさせていただきたいと思います」

  • 【星北斗】参議院議員インタビュー

    ほし・ほくと 1964年郡山市生まれ。安積高、東邦大医学部卒。医師。医系技官として旧厚生省に入省。退官後の現在、星総合病院理事長、県医師会副会長を務める。  昨年7月の参議院選挙福島県選挙区で初当選した星北斗氏(58、自民)は医師であり、病院経営者である立場から新型コロナウイルスの出口戦略を描き、政策に反映させようと奔走している。だが、内閣支持率は低迷しているのが現状だ。岸田文雄政権に苦難が待ち構える中、与党の一員として政権運営をどう捉えるのか。単刀直入に聞いた。  ――あらためて、初当選を果たした選挙戦を振り返ってどのような思いですか。 「大きく感じたことが三つあります。一つ目は『福島県は本当に広いんだなあ』ということ。二つ目は自分が身を置く医療界というのは、数ある業界の中の一つに過ぎないのだということ。農林水産業、商工業含めてあらゆる方々が苦心されているのを目の当たりにして感じました。三つ目は希望の持てる発見ですが、小さな町村の首長が元気で積極的ということ。それぞれの地域が独自性を打ち出し、魅力的な場所にしようと努力されています。広い県内を回り、そのことを強く認識しました。 参議院議員としてさまざまな立場の声を聞き、国政に反映させる責任は非常に重いですが、同時にやりがいを感じています」 ――新型コロナウイルス感染拡大が依然収束しませんが、今後の対応と出口戦略についてうかがいます。 「新型コロナウイルスはBA・5に変異が進み非常に感染しやすくなっています。ただ、ワクチン接種と治療薬の環境は整ってきています。あとは重症化対応のために医療をどう集約するかでしょう。政治判断や法の整備が必要になると思います。一般医療への影響を防ぐためにどうするか、出口戦略を今年度中に見いださなくてはなりません。 感染拡大の真っ只中に出口戦略を大々的に訴えるのはいかがなものかとの指摘もありますが、今真剣に考えておかなければなりません。感染が落ち着いてからだと、どうしても希望的観測が頭をよぎるからです。 2類相当から5類に変える場合には、国が一方的に決めるだけではだめです。国民が『これならいける』と納得する安心領域に入らないといけません。経済との天秤にかけるのではなく、自分の生活の中で新型コロナを5類の感染症として受け入れられるかどうか。そうでなければ出口は見えないと思います。 一般医療に感染を持ち込まないため、既にある発熱外来のような仕組みは5類になったとしても続けていく必要があるでしょう。新型コロナへの感染が疑われたら医療にアクセスできる仕組みはできています。環境が整っていれば『インフルエンザと同等』とあえて強弁しなくてもいいのではと思います。 5類になれば新型コロナの治療費や検査費が自己負担になることについては『自分を守るための出費』という考えが国民の間に一定程度浸透していると思います。例えばインフルエンザのワクチンは、重症化のリスクがある高齢者や子ども、あるいはエッセンシャルワーカーの方は接種するという考え方が定着しています。新型コロナのワクチンも全国民ということではなく、必要な方が必要に応じて接種する方向に徐々に変わっていくと見ています。 一方、自己負担についても全額負担してもらうのか、国が一部を補助するのかという方法論は検討の余地があります。補助の割合も半額なのか、2、3割なのかといった議論が必要で、国民の納得が得られる形にしなければなりません。治療費の補助は上限を決めるが、薬は無料といった柔軟策もあり得るでしょう。丁寧な議論を経ず、単に2類相当から5類に下げるだけではハレーションは大きくなると思います。国として丁寧な制度設計と準備、広報が必要です」 ――東京電力福島第一原発で増え続けるトリチウムなどを含んだALPS処理水の海洋放出をめぐり、安全性への懸念や風評被害を心配する声が未だに後を絶ちません。 「私は、科学的安全性に対する懸念はないと思っています。ただし、風評はどこまで行ってもなくなりません。漁業者らのために買い上げや基金を整えるほかに、多くの方々の意識を変えていく取り組みが必須です。そのためには、多くの方に福島第一原発を訪れてほしいと思います。敷地内に林立する大量の処理水タンクは、帰還が進む地域に暗い影を落としています。タンクの撤去なくして復興はないと思います。これだけのタンクをこのままにしておいていいのかという視点が必要です。 少なくとも、科学的安全性を私たち県民が受け入れなければ海外の人たちが納得しません。安全性だけで物事が動くとは思いませんし、漁業者の方々の心配する気持ちも分かります。ただ、自信を持って県産品を輸出するためには、国は手間と時間を惜しんではいけないと思います」 ――岸田内閣の支持率が低迷しています。とりわけ昨年末に浮上した防衛戦略と、それに伴う増税の考え方には多くの批判が上がりました。 「言葉を選ばずに言うと、私は自民党・岸田内閣に対する期待の大きさの裏返しと捉えています。事実、自民党の支持率自体は下がっていません。ウクライナ侵攻や台湾有事への懸念などを受け、防衛費増加の考え方は国民的コンセンサスが得られつつありました。そうした中で浮上した増税について、まだまだ国民の理解が進んでいないのであれば、それは説明不足だったという批判は真摯に受け入れなければなりません。ただ旧統一教会問題に関しても、熱心に野党との協議を重ね、100点とは言えなくてもスピーディーに解決への道筋を付けました。国会の短期決戦の中で岸田首相は並々ならぬ決意があったと思います。その過程で避けては通れぬ増税の話が出たので、期待がマイナスに変わったのではないでしょうか。 防衛費のために国債を発行し、将来世代にツケを回すのは正しい判断ではありません。それをしないための増税です。復興特別所得税の一部が充てられる点についても、内実は復興の財源が減るわけでなく『切り捨て』ではありません。説明を尽くしていくしかないでしょう。おそらく、衆院選後に発表するのは国民を欺くようで、岸田首相はできなかったのだと思います。真面目さの表れと捉えています」 ――今後の抱負を。 「5年半後の参院選で圧倒的に勝つ、これに尽きます。勝つことが目的ではありません。得票数・得票率は選んでくれた方に対する責任をどう果たしたかが表れる指標になるからです。有権者の方から『星北斗にもう一回やらしてみっぺ』と言われるように、何ができるかを常に考えていきます。  自民党は水平な組織です。1期生だろうが参議院議員だろうが、現場の実情に詳しく、アイデアがあれば政策に反映してくれます。そういう党の環境を最大限活用します。任期の6年間は第2期復興・創生期間の折り返しです。震災・原発事故で避難された皆さんが帰ってこられるまち、住みよいまちにするため首長や地元の方々と取り組んでいきます。次の選挙で相手陣営に『あいつには勝てない』と言われるような、替えの利かない国会議員を目指します」 星北斗参議院議員のホームページ 掲載号:政経東北【2023年2月号】