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澁川惠男

  • 【会津若松商工会議所】澁川惠男会頭インタビュー(2024.1)

    【会津若松商工会議所】澁川惠男会頭インタビュー(2024.1)

     しぶかわ・ともお 1947年生まれ。会津高、日大商学部卒。澁川問屋会長。会津若松商工会議所副会頭などを経て、2016年から現職。現在3期目。  会津若松市は城下町の強みをインバウンドにつなげる一方、小中学校と地元企業をつなぐマッチングサービスや地域発キャッシュレス決済の導入でデジタル技術の恩恵を地方に還元するなど歴史と進取を両立している。国際競争力の高いスノーリゾートにも選定され、宿泊拠点の役割も期待されている。会津若松商工会議所の澁川惠男会頭に経済飛躍の鍵を聞いた。 民間の力こそが地域の未来を拓く。  ――新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが引き下げられて7カ月以上になりました。  「コロナ禍により老舗料亭や観光ホテルの経営破綻があり、管内はダメージを受けました。感染収束後の消費回復を期待していましたが、物価高の影響は大きいです。当商工会議所の退会理由のトップは『廃業』です。中小企業の経営者は高齢の方も多く、後継者がいないというのが主な理由です。コロナ禍からの回復が十分でないうちに物価高が追い打ちをかけて廃業が加速していくのを懸念しています。  明るい兆しはあります。行動制限のない忘新年会シーズンを迎え、飲食業界は予約が相次いでいるようです。感染拡大前の水準に戻りつつある事業所もあります」  ――昨年7月から市内の小中学校と企業をつなぐマッチングサービス「まちスク会津」を用いた実証実験が始まっています。  「まちスク会津は教育支援と地域活性化を両立します。子どもたちにとっては、地域企業・人材と触れ合う機会を増やすことで、企業の認知度向上や地域への理解、魅力発見などにつながります。教育支援を希望する登録企業が増え、本サービスを通して学校と企業の新たなマッチングが生まれており好評です。  今後は当商工会議所で実施している『ジュニアインターンシップ(職場体験)』との連携に加え、サービス充実のために、地域企業・人材の参画を広く呼び掛けます。会津の次代を担う子どもたちが地域を深く知り、将来は地元への就職やUターンにつながってほしいです」  ――観光庁の「国際競争力の高いスノーリゾート形成促進事業」に会津若松市、磐梯町、北塩原村が会津磐梯地域として県内で唯一選ばれました。  「冬季の誘客は会津地方の長年の課題でした。今シーズンは磐梯町と北塩原村のスキー場が連結し、国内最大級のスノーリゾートが誕生しました。南半球のスキーヤー・スノーボーダーが良質な雪を求めて裏磐梯を訪れてきましたが、この流れが会津地方に波及するでしょう。  インバウンドが集中する東京・京阪神間を『ゴールデンルート』と呼びます。東北は対抗軸の『ダイヤモンドルート』を掲げ各自治体や経済団体が盛り上げてきました。今こそ、それを再燃させる時です。  スノーリゾートでは、会津若松は魅力ある宿泊や飲食を提供するベースタウンの役割があります。観光客は国・地域によって食事や宗教、生活様式がさまざまです。違いに対応し、受け入れのレベルを上げる必要があります。当商工会議所はこれまでにも訪日客への対応を学ぶ各種セミナーを開いてきました。会員事業所には観光、旅客、宿泊の事業者がいます。意見を聞きながら今後は業種に特化したセミナーにするなどしてより充実させます。  今年度、会津大学の留学生を対象に市内の観光スポットを巡るモニターツアーを実施しました。鶴ヶ城登閣、弓道や抹茶、赤べこの絵付けなどの体験型コンテンツを通じて会津の魅力を聞きました。素材は十分に魅力的ですが、多言語表記が少ないなどの課題が浮き彫りになりました。改善策を行政に提案し、訪れる全ての方に優しい環境につなげます」  ――「会津コイン」を用いたデジタル商品券事業が始まりました。  「会津コインは会津若松市が進める『スマートシティ』の取り組みの一環です。国は2025年6月までにキャッシュレス決済比率を4割程度にする目標を掲げています。キャッシュレスは増加傾向ですが、既存のキャッシュレス決済はお金の他、マーケティングに活用できる利用者情報などが地域を出てしまうのが課題でした。そこで地域のみで流通する通貨を導入して情報が地域に残るようにしたのが会津コインです。  商品券はこれまで紙ベースでしたが、今回初めてスマホを使ったデジタル形式にしています。当商工会議所やスマートシティAiCTに入居する企業でつくる『AiCTコンソーシアム』などで構成する実行委員会が事業を行っています。当初会津コインが使えるのは6店舗だけでしたが、プレミアムポイント事業の実施で400店舗を超えました。ただ、店舗の加盟申請や消費者の利用設定の手順が複雑な点は否めず、特に高齢の方からさまざまな意見を頂戴しました。市と決済事業者と共に対応を検討したいです。  プレミアム事業が終了した後、どこまで会津コインを利用してもらえるか、事業所に継続していただけるか不安な点はあります。利用者情報を個人が特定されない形に処理して会津コイン参加店舗に提供し、経営に生かしてもらうなどの仕組みづくりが急務です。再生可能エネルギーへのポイント付与構想など、持続可能な開発を進めるインセンティブも有効でしょう。商店街や飲食店業種単位でイベントに活用するなど様々なアイデアに挑戦することで利用が増えていくと思います」 急務の再開発  ――市街地の再開発について。  「中心市街地から大型店が撤退したままの現状に非常に危機感を持っています。都市の活況のバロメーターと言える地価公示や路線価は、昨年は福島、郡山、いわきの県内主要都市の商業地は軒並み前年比プラスになっている一方、会津若松はマイナスに沈んでいます。  当商工会議所は昨年度、再開発に向けた意見を取りまとめ、神明通りや駅前周辺、旧県立病院跡地などの利活用について市に提言しました。多くの利害関係があること、市の財政的な課題もあり、一足飛びに実現しない現状は理解しています。ただ、その中でも中心市街地の再開発は早急に取り組むべきです。まちのシンボルである神明通りはその最たるもの。個性豊かな店を集積したり、インフラなど不足する要素を分析して早めに手立てを考えていきたいです」  ――抱負を教えてください。  「地方は人口減少に伴う縮む経済に直面しています。地域の活力を維持し、若者が住み続けたい、また多くの観光客が訪れたいまちにできるかどうかはここ数年で決まってしまうのではないかと危機感を持っています。会頭就任以来、民間の挑戦こそが地域の未来を切り拓いていく大きな力になると訴えています。危機的な状況だからこそ、この思いを新たにし、徹底した事業所支援を通じて足腰の強い会津若松経済の実現に向けて取り組んでいきます」

  • 【会津商工会議所】澁川惠男会頭インタビュー

    【会津若松商工会議所】澁川惠男会頭インタビュー

     しぶかわ・ともお 1947年生まれ。会津高、日大商学部卒。澁川問屋会長。会津若松商工会議所副会頭などを経て、2016年から現職。現在3期目。    澁川問屋会長の澁川惠男氏が会津若松商工会議所の会頭に再任され、3期目が始動した。経済は新型コロナウイルスによる打撃から回復傾向にあるが、円安、物価高、燃料高騰が企業の経営を圧迫。澁川氏は「全国旅行支援」の効果をより高めるため、観光のオフシーズンにも実施することを提言する。  ――会頭職3期目を迎えました。これまでを振り返っての感想をお聞かせください。  「2016年に初めて会頭に選任いただいた時から、長期的視野による『持続可能な地域の創生』をテーマに掲げ、2500会員の負託に応えるべく、地域経済発展の牽引役として全力で取り組んでまいりました。若者が暮らして楽しいまちづくりを目指す『市街地再開発事業』をはじめ、行政とともに実施した『プレミアム商品券事業』、国のコロナ対策に合わせた『独自の事業者支援制度』、正常な企業活動再開に向けた『コロナワクチン職域接種事業』など、数々のコロナ対策事業を実践し、これらの事業展開が会員の皆様から大きな支持を得ることにつながって、今回3期目の職責をお任せいただくことになったと受け止めております。気を引き締めて負託に応えられるよう努めてまいります」  ――新型コロナウイルスの第8波が到来しています。管内の経済状況を教えてください。  「日本商工会議所の11月調査によると、新型コロナによる経営への影響は、『続いている』とした回答がようやく6割を下回りました。インバウンド復活や全国旅行支援により活動回復が進み、業界は改善傾向にあります。ただ、感染拡大の兆候から消費マインドの低下を懸念する声もあります。  コロナ禍での忘年会シーズンは3度目となります。大半の飲食業にとって12月は最も売り上げが伸びる書き入れ時です。第8波の影響は懸念されますが、行動制限が緩和されていますので、客足回復の兆しが見られています。『コロナ禍前にはほど遠いが、前年よりは増えている』といった状況だと思います」  ――円安、物価高、燃料高騰が続いていますが、管内への影響について教えてください。  「物価高で仕入価格が上昇し、利幅が小さくなっていることに加え、電気代やガス代などの光熱費も上昇し、経営を圧迫しています。深刻なのは『儲けが出ない』ということです。全業種的にB tо Bにおけるコスト増加分の価格転嫁についても、なかなか進んでおりません。価格転嫁できた企業は1割にも満たず、約2割の企業では協議すらできていない状況です。  そのような中、公的資金のゼロゼロ融資が終了した一方、元本返済の据え置き期間が終わり、コロナ融資の返済が本格的に始まりました。金融機関では柔軟な対応をしていただいているようですが、資金繰りは厳しい見通しとなっています。  経済活動は正常化に向かっておりますが、経営課題は山積している状況ですので、政府の経済対策等をいち早く管内事業者に周知しながら、徹底した事業所支援を行っていきます」  ――10月より全国旅行支援が始まりました。観光業への影響はどうですか。  「確かに客足が回復する後押しになったと思います。ただ、その効果を問われると何と言っていいのか分かりません。もともと秋は観光シーズンであり、紅葉とJR只見線の再開通で、地元・東山温泉の予約状況は好調でした。そこに全国旅行支援が重なり、いわゆる予約の付け替え作業が発生しました。また、コロナ禍による感染防止対策として、食事会場へのパーテーション設置や入場人数の制限などにより、全体のキャパシティーが縮小している上、人手不足が深刻で、予約を受けきれないという売り上げ機会を逃す状況となっています。  支援は延長されるようですが、繁忙期ではなく、降雪後のパタッと客足が落ちる閑散期にこそ実施すべき施策だと思っています。  また、経済活動が正常化に向かう中、人手不足を訴える声は観光業以外にも多く聞かれます。解決策の一つとして、外国人の雇用が再び注目されていますので、会員向けの勉強会を開催していくことにしています」  ――JR只見線が全線再開通しました。反響はどうですか。  「只見線は鉄道と自然が織り成す風景が独特で、景色の良さを競うローカル線の人気投票で常に上位にランクインしています。そのため外国人観光客にとても人気で、特に台湾や中国、ベトナム、タイから多く来訪がありました。再開通は昨年10月1日でしたが、話題性に加え、紅葉や全国旅行支援などが重なり、座れないほどの混雑となりました。JR東日本は臨時列車の運行と増車を行っています。  只見町では、宿泊施設や飲食店の予約が取れないほどの活況ぶりで、金山、三島両町を流れる只見川での観光用渡し舟『霧幻峡の渡し』も予約でいっぱい、11月中旬になってようやく落ち着いたと聞きました。  沿線への波及効果に確かな手応えを感じています。ただ便数と乗車時間の関係からツアー商品がつくりにくい、冬はどうしても閑散期となってしまうなどおもてなしにロスが出ている実情があります。インバウンドに関しては、冬景色と只見線の競演で、日本らしい観光が提供できると期待しています。観光入込の平準化のためにも、県、沿線自治体、観光関係者が知恵を出し合いながら対策の検討を進めるしかないと思っています。  会津若松は只見線の起点であり、会津観光の玄関口です。日光、仙台、新潟からお越しになるケースも多く、これらの都市との連携は非常に重要であると思います。新潟県佐渡市が世界遺産登録を目指していることもあり、行政では相互誘客や広域的な観光周遊ルートの構築を目指しておりますので、商工会議所としても民間ならではの交流を進めていきたいと思っています」  ――今後の抱負をお聞かせください。  「市街地再開発事業への取り組みをより進めます。2020年に実施した市民アンケートの結果をもとに有識者による検討委員会を立ち上げ、市内5つの主要な土地の有効活用についてまとめました。昨年は『街なか再開発構想』として行政に提言しましたので、今年は実現に向けて不退転の決意で臨んでいきます。  事業所の変化を後押しします。ポストコロナ時代だからこそ、チャレンジが必要で、新たな事業計画策定などの支援業務が重要になってきます。管内商工業に明るい展望が見えるよう、意識改革を促しながら経済を牽引していく所存です」 会津商工会議所のホームページ 掲載号:政経東北【2023年1月号】

  • 【会津若松商工会議所】澁川惠男会頭インタビュー(2024.1)

     しぶかわ・ともお 1947年生まれ。会津高、日大商学部卒。澁川問屋会長。会津若松商工会議所副会頭などを経て、2016年から現職。現在3期目。  会津若松市は城下町の強みをインバウンドにつなげる一方、小中学校と地元企業をつなぐマッチングサービスや地域発キャッシュレス決済の導入でデジタル技術の恩恵を地方に還元するなど歴史と進取を両立している。国際競争力の高いスノーリゾートにも選定され、宿泊拠点の役割も期待されている。会津若松商工会議所の澁川惠男会頭に経済飛躍の鍵を聞いた。 民間の力こそが地域の未来を拓く。  ――新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが引き下げられて7カ月以上になりました。  「コロナ禍により老舗料亭や観光ホテルの経営破綻があり、管内はダメージを受けました。感染収束後の消費回復を期待していましたが、物価高の影響は大きいです。当商工会議所の退会理由のトップは『廃業』です。中小企業の経営者は高齢の方も多く、後継者がいないというのが主な理由です。コロナ禍からの回復が十分でないうちに物価高が追い打ちをかけて廃業が加速していくのを懸念しています。  明るい兆しはあります。行動制限のない忘新年会シーズンを迎え、飲食業界は予約が相次いでいるようです。感染拡大前の水準に戻りつつある事業所もあります」  ――昨年7月から市内の小中学校と企業をつなぐマッチングサービス「まちスク会津」を用いた実証実験が始まっています。  「まちスク会津は教育支援と地域活性化を両立します。子どもたちにとっては、地域企業・人材と触れ合う機会を増やすことで、企業の認知度向上や地域への理解、魅力発見などにつながります。教育支援を希望する登録企業が増え、本サービスを通して学校と企業の新たなマッチングが生まれており好評です。  今後は当商工会議所で実施している『ジュニアインターンシップ(職場体験)』との連携に加え、サービス充実のために、地域企業・人材の参画を広く呼び掛けます。会津の次代を担う子どもたちが地域を深く知り、将来は地元への就職やUターンにつながってほしいです」  ――観光庁の「国際競争力の高いスノーリゾート形成促進事業」に会津若松市、磐梯町、北塩原村が会津磐梯地域として県内で唯一選ばれました。  「冬季の誘客は会津地方の長年の課題でした。今シーズンは磐梯町と北塩原村のスキー場が連結し、国内最大級のスノーリゾートが誕生しました。南半球のスキーヤー・スノーボーダーが良質な雪を求めて裏磐梯を訪れてきましたが、この流れが会津地方に波及するでしょう。  インバウンドが集中する東京・京阪神間を『ゴールデンルート』と呼びます。東北は対抗軸の『ダイヤモンドルート』を掲げ各自治体や経済団体が盛り上げてきました。今こそ、それを再燃させる時です。  スノーリゾートでは、会津若松は魅力ある宿泊や飲食を提供するベースタウンの役割があります。観光客は国・地域によって食事や宗教、生活様式がさまざまです。違いに対応し、受け入れのレベルを上げる必要があります。当商工会議所はこれまでにも訪日客への対応を学ぶ各種セミナーを開いてきました。会員事業所には観光、旅客、宿泊の事業者がいます。意見を聞きながら今後は業種に特化したセミナーにするなどしてより充実させます。  今年度、会津大学の留学生を対象に市内の観光スポットを巡るモニターツアーを実施しました。鶴ヶ城登閣、弓道や抹茶、赤べこの絵付けなどの体験型コンテンツを通じて会津の魅力を聞きました。素材は十分に魅力的ですが、多言語表記が少ないなどの課題が浮き彫りになりました。改善策を行政に提案し、訪れる全ての方に優しい環境につなげます」  ――「会津コイン」を用いたデジタル商品券事業が始まりました。  「会津コインは会津若松市が進める『スマートシティ』の取り組みの一環です。国は2025年6月までにキャッシュレス決済比率を4割程度にする目標を掲げています。キャッシュレスは増加傾向ですが、既存のキャッシュレス決済はお金の他、マーケティングに活用できる利用者情報などが地域を出てしまうのが課題でした。そこで地域のみで流通する通貨を導入して情報が地域に残るようにしたのが会津コインです。  商品券はこれまで紙ベースでしたが、今回初めてスマホを使ったデジタル形式にしています。当商工会議所やスマートシティAiCTに入居する企業でつくる『AiCTコンソーシアム』などで構成する実行委員会が事業を行っています。当初会津コインが使えるのは6店舗だけでしたが、プレミアムポイント事業の実施で400店舗を超えました。ただ、店舗の加盟申請や消費者の利用設定の手順が複雑な点は否めず、特に高齢の方からさまざまな意見を頂戴しました。市と決済事業者と共に対応を検討したいです。  プレミアム事業が終了した後、どこまで会津コインを利用してもらえるか、事業所に継続していただけるか不安な点はあります。利用者情報を個人が特定されない形に処理して会津コイン参加店舗に提供し、経営に生かしてもらうなどの仕組みづくりが急務です。再生可能エネルギーへのポイント付与構想など、持続可能な開発を進めるインセンティブも有効でしょう。商店街や飲食店業種単位でイベントに活用するなど様々なアイデアに挑戦することで利用が増えていくと思います」 急務の再開発  ――市街地の再開発について。  「中心市街地から大型店が撤退したままの現状に非常に危機感を持っています。都市の活況のバロメーターと言える地価公示や路線価は、昨年は福島、郡山、いわきの県内主要都市の商業地は軒並み前年比プラスになっている一方、会津若松はマイナスに沈んでいます。  当商工会議所は昨年度、再開発に向けた意見を取りまとめ、神明通りや駅前周辺、旧県立病院跡地などの利活用について市に提言しました。多くの利害関係があること、市の財政的な課題もあり、一足飛びに実現しない現状は理解しています。ただ、その中でも中心市街地の再開発は早急に取り組むべきです。まちのシンボルである神明通りはその最たるもの。個性豊かな店を集積したり、インフラなど不足する要素を分析して早めに手立てを考えていきたいです」  ――抱負を教えてください。  「地方は人口減少に伴う縮む経済に直面しています。地域の活力を維持し、若者が住み続けたい、また多くの観光客が訪れたいまちにできるかどうかはここ数年で決まってしまうのではないかと危機感を持っています。会頭就任以来、民間の挑戦こそが地域の未来を切り拓いていく大きな力になると訴えています。危機的な状況だからこそ、この思いを新たにし、徹底した事業所支援を通じて足腰の強い会津若松経済の実現に向けて取り組んでいきます」

  • 【会津若松商工会議所】澁川惠男会頭インタビュー

     しぶかわ・ともお 1947年生まれ。会津高、日大商学部卒。澁川問屋会長。会津若松商工会議所副会頭などを経て、2016年から現職。現在3期目。    澁川問屋会長の澁川惠男氏が会津若松商工会議所の会頭に再任され、3期目が始動した。経済は新型コロナウイルスによる打撃から回復傾向にあるが、円安、物価高、燃料高騰が企業の経営を圧迫。澁川氏は「全国旅行支援」の効果をより高めるため、観光のオフシーズンにも実施することを提言する。  ――会頭職3期目を迎えました。これまでを振り返っての感想をお聞かせください。  「2016年に初めて会頭に選任いただいた時から、長期的視野による『持続可能な地域の創生』をテーマに掲げ、2500会員の負託に応えるべく、地域経済発展の牽引役として全力で取り組んでまいりました。若者が暮らして楽しいまちづくりを目指す『市街地再開発事業』をはじめ、行政とともに実施した『プレミアム商品券事業』、国のコロナ対策に合わせた『独自の事業者支援制度』、正常な企業活動再開に向けた『コロナワクチン職域接種事業』など、数々のコロナ対策事業を実践し、これらの事業展開が会員の皆様から大きな支持を得ることにつながって、今回3期目の職責をお任せいただくことになったと受け止めております。気を引き締めて負託に応えられるよう努めてまいります」  ――新型コロナウイルスの第8波が到来しています。管内の経済状況を教えてください。  「日本商工会議所の11月調査によると、新型コロナによる経営への影響は、『続いている』とした回答がようやく6割を下回りました。インバウンド復活や全国旅行支援により活動回復が進み、業界は改善傾向にあります。ただ、感染拡大の兆候から消費マインドの低下を懸念する声もあります。  コロナ禍での忘年会シーズンは3度目となります。大半の飲食業にとって12月は最も売り上げが伸びる書き入れ時です。第8波の影響は懸念されますが、行動制限が緩和されていますので、客足回復の兆しが見られています。『コロナ禍前にはほど遠いが、前年よりは増えている』といった状況だと思います」  ――円安、物価高、燃料高騰が続いていますが、管内への影響について教えてください。  「物価高で仕入価格が上昇し、利幅が小さくなっていることに加え、電気代やガス代などの光熱費も上昇し、経営を圧迫しています。深刻なのは『儲けが出ない』ということです。全業種的にB tо Bにおけるコスト増加分の価格転嫁についても、なかなか進んでおりません。価格転嫁できた企業は1割にも満たず、約2割の企業では協議すらできていない状況です。  そのような中、公的資金のゼロゼロ融資が終了した一方、元本返済の据え置き期間が終わり、コロナ融資の返済が本格的に始まりました。金融機関では柔軟な対応をしていただいているようですが、資金繰りは厳しい見通しとなっています。  経済活動は正常化に向かっておりますが、経営課題は山積している状況ですので、政府の経済対策等をいち早く管内事業者に周知しながら、徹底した事業所支援を行っていきます」  ――10月より全国旅行支援が始まりました。観光業への影響はどうですか。  「確かに客足が回復する後押しになったと思います。ただ、その効果を問われると何と言っていいのか分かりません。もともと秋は観光シーズンであり、紅葉とJR只見線の再開通で、地元・東山温泉の予約状況は好調でした。そこに全国旅行支援が重なり、いわゆる予約の付け替え作業が発生しました。また、コロナ禍による感染防止対策として、食事会場へのパーテーション設置や入場人数の制限などにより、全体のキャパシティーが縮小している上、人手不足が深刻で、予約を受けきれないという売り上げ機会を逃す状況となっています。  支援は延長されるようですが、繁忙期ではなく、降雪後のパタッと客足が落ちる閑散期にこそ実施すべき施策だと思っています。  また、経済活動が正常化に向かう中、人手不足を訴える声は観光業以外にも多く聞かれます。解決策の一つとして、外国人の雇用が再び注目されていますので、会員向けの勉強会を開催していくことにしています」  ――JR只見線が全線再開通しました。反響はどうですか。  「只見線は鉄道と自然が織り成す風景が独特で、景色の良さを競うローカル線の人気投票で常に上位にランクインしています。そのため外国人観光客にとても人気で、特に台湾や中国、ベトナム、タイから多く来訪がありました。再開通は昨年10月1日でしたが、話題性に加え、紅葉や全国旅行支援などが重なり、座れないほどの混雑となりました。JR東日本は臨時列車の運行と増車を行っています。  只見町では、宿泊施設や飲食店の予約が取れないほどの活況ぶりで、金山、三島両町を流れる只見川での観光用渡し舟『霧幻峡の渡し』も予約でいっぱい、11月中旬になってようやく落ち着いたと聞きました。  沿線への波及効果に確かな手応えを感じています。ただ便数と乗車時間の関係からツアー商品がつくりにくい、冬はどうしても閑散期となってしまうなどおもてなしにロスが出ている実情があります。インバウンドに関しては、冬景色と只見線の競演で、日本らしい観光が提供できると期待しています。観光入込の平準化のためにも、県、沿線自治体、観光関係者が知恵を出し合いながら対策の検討を進めるしかないと思っています。  会津若松は只見線の起点であり、会津観光の玄関口です。日光、仙台、新潟からお越しになるケースも多く、これらの都市との連携は非常に重要であると思います。新潟県佐渡市が世界遺産登録を目指していることもあり、行政では相互誘客や広域的な観光周遊ルートの構築を目指しておりますので、商工会議所としても民間ならではの交流を進めていきたいと思っています」  ――今後の抱負をお聞かせください。  「市街地再開発事業への取り組みをより進めます。2020年に実施した市民アンケートの結果をもとに有識者による検討委員会を立ち上げ、市内5つの主要な土地の有効活用についてまとめました。昨年は『街なか再開発構想』として行政に提言しましたので、今年は実現に向けて不退転の決意で臨んでいきます。  事業所の変化を後押しします。ポストコロナ時代だからこそ、チャレンジが必要で、新たな事業計画策定などの支援業務が重要になってきます。管内商工業に明るい展望が見えるよう、意識改革を促しながら経済を牽引していく所存です」 会津商工会議所のホームページ 掲載号:政経東北【2023年1月号】