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  • 白河市南湖SC計画停滞で膨らむ「道の駅待望論」

    白河市南湖SC計画停滞で膨らむ「道の駅待望論」

     本誌昨年6月号で、白河市の南湖公園周辺のパチンコ店跡地で大型ショッピングセンター(SC)の開発計画が進んでいることを報じた。  予定地は国道289号沿いで、隣接地には業務スーパー白河店やファミリーマート南湖店などが立ち並ぶ。白河ラーメンの人気店にも近い。  予定地の地権者によると、開発業者はアクティブワン(白河市、鈴木俊雄社長)。白河市をはじめ、県内7カ所で大型商業施設「メガステージ」を展開しているデベロッパーだ。資本金1000万円。民間信用調査機関によると、2023年3月期の売上高16億5100万円、当期純利益2億0300万円。  昨年6月号の取材段階では、市内の経済人や地権者から「鈴木社長が周囲に開発する方針を明言している。すでに地質調査なども始まっている」、「テナントはヨークベニマルをはじめ、ユニクロや無印良品などを予定している」と聞いていた。  ところがそこから1年以上経っても開発が進む気配がない。計画は頓挫したのか。  前出・予定地の地権者に尋ねたところ、「アクティブワンからは半年前、『ウクライナ情勢の悪化により資材価格が高騰しているので、しばらく様子を見させてほしい』と言われています。加えてテナントとして候補に上がっていた無印良品などとの交渉がうまくいかず、別の店舗を探しているとも聞いています」と説明したうえで、こう話した。  「他の商業施設にも土地を貸しているが、計画が浮上してから1年半も放置される事例はあまりない。地代は払われているが、地目はすでに宅地に変更されているので、固定資産税も上がっている。怒っている地権者はいると思いますよ」  そうした中、市内では「商業施設計画がうまく進まないのならば、いっそその場所を利用して道の駅を作ればいいのではないか」という声も上がっているようだ。 大型SCの開発予定地  同市では現時点で道の駅を整備する計画はなく、過去に市議会で整備を提言された際には、鈴木和夫市長が「国道294号白河バイパスの完成を視野に入れながら、長期的に考えていく問題」と慎重な姿勢を見せていた。  ただ、2月に国道294号白河バイパス、南湖トンネルが完成。今年1月には、市議会の市民産業常任委員会が佐賀県鹿島市を視察した際、道の駅むなかたを訪れるなど、にわかに道の駅に注目が集まっている。そんな中、大型SC計画が停滞していることが分かったため、道の駅待望論が浮上したようだ。  前出・地権者は「目玉となるテナントが集められないぐらいなら、道の駅の方が集客を期待できそう」と歓迎するが、市内の経済人からは「道の駅候補地はほかにもある」という声も聞かれた。  アクティブワンの鈴木社長に見通しを尋ねたが「今の段階では何とも言えない」と話すに留まった。交通アクセスが良くなり観光客の往来が増えている南湖公園周辺。大型SCがさらなる同市の観光・商業振興の起爆剤になれるか。道の駅整備の行方と併せて、その動向が注目される。

  • 【白河市】合併で生じた「議員空白地帯」

    【白河市】合併で生じた「議員空白地帯」

     2000年代を中心に進められた「平成の大合併」により、旧市町村単独の時代と比較すると、合併自治体の議員数は大きく減少している。とりわけ、核となる市があり、そこと合併した町村では「地元議員大幅減少」の傾向が強い。それに伴い、行政とのパイプが細くなっていると推察されるが、実際の影響はどうなのか。今年7月に市議選が行われた白河市の状況をリポートする。(末永) 住民の声が届きにくくなった旧3村 大信庁舎(旧大信村役場) 表郷庁舎(旧表郷村役場)  白河市は2005年11月に、旧白河市と西白河郡の表郷、大信、東の3村が合併して誕生した。以降、市議会議員選挙は2007年、2011年、2015年、2019年、今年と計5回行われた。2007年は4月に市議選が行われたが、2011年は東日本大震災・福島第一原発事故の影響で、選挙時期を7月に繰り延べた。それ以来、7月に市議選が実施されている。なお、合併後最初の市長選は2005年12月に行われたが、初代市長を務めた成井英夫氏が2007年6月に病気のため急逝。同年7月に、市議選と同じ日程で市長選が行われ、以降は同時選となっている。  今回の市議選は7月9日に投開票された。現職22人、元職2人、新人6人の計30人が立候補し、現職20人、元職1人、新人3人の計24人が当選した。投票率は56・25%で、前回を3・02ポイント下回り、合併後最低となった。結果は次頁の通り。 選挙結果(7月9日投開票、投票率56・25%) 当1521室井 伸一(58)公現(旧市内)当1518大木 絵理(36)無現(旧市内)当1374水野谷正則(59)無現(東)当1252菅原 修一(72)無現(旧市内)当1246永山  均(56)無新(大信)当1194高畠  裕(58)無現(旧市内)当1145根本 建一(59)無現(表郷)当1089藤田 文夫(68)無現(表郷)当1023緑川 摂生(64)無現(表郷)当999深谷  弘(69)共現(旧市内)当936吉見優一郎(38)無現(旧市内)当924筒井 孝充(66)無現(旧市内)当906大竹 功一(59)無現(旧市内)当859遠藤 公彦(61)無新(東)当859戸倉 宏一(69)無現(大信)当842佐川 京子(62)無現(旧市内)当816佐川 琴次(67)無元(東)当795植村 美洋(66)無新(旧市内)当790柴原 隆夫(74)無現(旧市内)当772高橋 光雄(75)無現(旧市内)当739石名 国光(75)無現(旧市内)当735北野 唯道(83)無現(大信)当726大花  務(73)無現(旧市内)当692鈴木 裕哉(51)無現(旧市内)686須藤 博之(69)無現601阿部 克弘(65)無元557山口 耕治(69)無現553市川  勤(50)無新471大森  仁(62)無新382大花 恵子(55)無新  当選者は旧市村のどこに住所があるかを併記した。選挙ではやはり、旧市内の候補者は旧市内を中心に、旧表郷村の候補者は旧表郷村内を中心に……といった具合に、遊説を行ったようだ。  「例えば、旧東村に住まいがある候補者が旧表郷村に、あるいはその逆というのは、多少はあるんでしょうけど、大部分はそれぞれの地元で選挙カーを走らせていたように感じます」(旧東村の住民)  普段の活動でも、やはり地元中心になるという。  「住民の中にも、まだ旧村の意識は残っており、議員もそうだと思います。近年は災害が相次いでいますが、例えば、市内で旧表郷村だけが局所的に被害を受けたということであれば、旧市内や旧他村の議員も集中して当該地区に来るでしょう。ただ、市内全域で被害を受けたとなれば、やはり議員は地元の状況を見て回って、必要なことがあれば市に伝える、といった活動になっていると感じます」(旧表郷村の住民)  別表は合併時と現在(今回の改選後)の旧市村の人口と議員数をまとめたもの。旧3村では、合併時12〜14人の議員がいたが、現在はそれぞれ3人となっている。 合併前、現在の人口と議員数 合併前(2005年)現在旧白河市4万8000人4万3000人24人15人旧表郷村7100人5700人14人3人旧大信村4800人3600人12人3人旧東村6000人4700人14人3人(上段が人口、下段が議員数)  旧村単位で「議員空白地帯」は発生していないが、旧表郷村には25行政区、旧大信村には26行政区、旧東村には30行政区あり、かつては2行政区に1人くらいの割合で議員がいた。それが現在は8〜10行政区に1人くらいの割合になっている。旧村内の行政区レベルで見ると、「議員空白地帯」が生じていることになる。  ここで問題になるのは、旧3村は市政(市役所)が物理的(距離的)に遠くなっているということ。そのうえ、議員もいない(少ない)となると、さらに「遠い存在」になってしまう。  合併前はほぼ毎回議員を輩出していたという行政区の住民は、「役場の業務などについて、『あの件はどうなったか』、『今度、村でこういう事業をやると聞いたが、具体的にはどういった形になるのか』等々、比較的気軽に(行政区内から出ている議員に)聞くことができたが、いまは(行政区内に議員がいないため)なかなかそうもいかない」という。  一方、合併当時の旧村の役場関係者はこう話す。  「合併議論の中で、最初のうちはこの地区(旧市村)は何人という具合に割り当て制にすべき、といった意見もありましたが、そこまでしなくても、落ち着くところに落ち着くだろうということで、そうしなかった。結果的には当初想定したような形になっていると思います」 旧東村は1人から3人に 東庁舎(旧東村役場)  人口比率で言うと、旧市内は約2800人に1人、旧3村は約1200〜約1900人に1人の割合で議員がいることになる。人口比率で言うと、旧3村の方が議員が多い格好だ。  前段で今回の市議選の投票率は56・25%と書いたが、旧市村別に見ると、旧市内が約52%、旧3村は約66〜約70%となっている。旧3村の住民はそれぞれ地元の候補者に投票する、と仮定すると、旧市村別の投票率の差がこの結果になっていると言えよう。  実は今回の改選前、旧東村は水野谷正則議員1人しかいなかった。つまりは、水野谷議員1人で、旧東村約4700人の声を市政に届ける役割を担っていたのだ。  水野谷議員に話を聞いた。  「執行部はやりやすかったかもしれません。同地区(旧村)内に議員が複数いたら、(限られた予算で地区内の課題解決に向けた事業を行う中で)『オレはこれを優先すべき』、『私はそれよりもこっちを優先すべき』といった具合に、それぞれが考えを持っているでしょうから。住民からしたら、選択肢が広がると言いますか、相談したり、市政情報を聞くことができる人は多い方がいいでしょうね。私自身、この地区の代表として、地元のために活動していますから。もっとも、白河市では、道路の補修や側溝に蓋をしてほしいなどのちょっとした事案については、町内会長や行政区長などを通して、市役所に話ができるようなシステムができていますから、議員を通して市につなぐということを求められることはあまりありません」  旧東村の住民によると、「今回の市議選では、何とか議員を増やそうという動きがあり、その結果、旧東村からは3人の議員が当選した。まだ任期がスタートしたばかりで、何が変わったということはないが、少なくとも、1人のときより地元の声を届けやすい環境になったのは間違いないと思います」という。  逆に言うと、それだけ「このままではわれわれ(旧東村)の声が届かなくなってしまうのではないか」との危機感があったということだろう。もっとも、議員が少ないことで、明確に「こうした不利益を被った」という事例は聞かれなかったが。  強いて言うなら、前段で災害時の議員の対応についてのコメントを紹介したが、「水害があった際、市に一度見に来てほしいとお願いしても、なかなか来てくれなかった。そこで、議員にお願いしたところ、ようやく来てもらった。まあ、被害が広範囲に渡ったから、なかなか細部までは見て回れない、人が足りない、ということだったんでしょうけど」との話が聞かれたくらいか。 商工団体は協議会を組織 白河商工会議所  このほか、かつて十数人いたのが3人になり、「何となくですが、商工業関係ならこの議員、農業関係ならこの議員というように、役割分担ができているように思う」(旧表郷村の住民)との声も。  もっとも、商工団体の関係者によると、白河商工会議所、表郷商工会、ひがし商工会、大信商工会の4団体で連絡協議会を立ち上げ、定期的に情報交換をしたり、市に要望活動などを行っているという。その点では、少なくとも商工関係者は、かつての旧村内に十数人いた議員が3人ほどになっても、大きな支障は出ていないようだ。  一方で、前出・合併当時の旧村の役場関係者はこう話す。  「合併協議の中で、旧自治体の区割りは『地域自治区』と位置付けられ、旧村役場は総合支所方式(旧役場の名称はそれぞれ表郷庁舎、東庁舎、大信庁舎)が採用されました。大規模なものでなければ、各総合支所の権限で予算を執行できたのです。ただ、合併から4年でその制度は役目を終えたということでなくなりました。ですから、住民は(旧役場の予算執行権がなくなったことで)市役所が物理的にも、気持ちの面でも遠くなったと感じていると思います」  合併に伴う議員減少、それによって、住民の声が行政に反映されにくくなることは、合併前から想定されていたことだ。とはいえ、実際、議員数は大きく減っているが、現状ではそれに起因する「大きな問題」は発生していない。  旧東村のように、一時(今改選前)は1人まで減ったが、住民の動きによって3人まで増やした(戻した)事例もある。当然、その分、議員に求められることは多くなる。  もっとも、議員が多ければ地域の課題が解決するかと言うと、そうではなかろう。とりわけ、同市の旧3村に限らず、核となる市があり、そこと合併した町村では、人口減少などの衰退が進んでいる、といった問題に直面しているケースが多く、それはまた別の問題と言えよう。  河村和徳・東北大学准教授(政治情報学)はこう話す。  「合併によって単独自治体時代と比較して議員数が減るということは当選のハードルが上がるということです。最初のうちは『オラが地域から何とか議員を出そう』と一生懸命支援します。ただ、後が続かない。選挙自体も、かつての(旧村の)ノウハウが通用しなくなり、なり手不足が加速していきます。全国的には旧町村単位で空白ができているところもあります。そうなると、地域の声を行政に伝えていけなくなってしまいます」  こうした状況をどう是正していくかが問われている。 議員のあり方 白河市役所  最後に、これからの議員のあり方についても述べておこう。白河市の議会の会期は60〜70日程度。町村議会だと30〜40日程度。議員からすると「一般質問の準備など、それ以外の活動も多い」というだろうが、少なくとも公式な議会活動はそのくらいにとどまる。  本誌は以前から、地方議員は仕事を持つべき、と主張してきた。なぜなら、落選したら収入がなくなるため、何よりも再選を優先させる恐れがあるからだ。結果、執行部(この場合は市長)から、次の選挙で刺客を立てられ、落選させられることがないような振る舞いになり、執行部に厳しい目を向ける姿勢が弱くなる。それは、議会全体の活力低下につながる。  そういう意味で、仕事を持ちながら議員を務めるのが本来あるべき姿。前述した実働日数を加味してもそれができないはずがない。  ちなみに、同市議会のホームページに掲載された議員名簿には、職業が出ているが「市議会議員」となっているのは3分の1の8人。ほかは「農業」が6人、「会社役員」が4人、「呉服店」、「旅行業」、「理容業」、「自営業」、「政党役員」、「行政書士」が各1人。普通の会社勤めの人はいないようだが、議員の期間は休職扱いにするとか、何らかの対応により可能になるのではないか。  関係者の中には、議員報酬だけでは食っていけないから、なり手がいないという人もいる。同市の議員報酬は月額38万5000円、副議長は同40万6000円、議長は同46万3000円。そのほか、年2回の期末手当がある。  一方で、同市議会の会期は前述の通り。その点で言うと、議会の開催日時を工夫するなどして、会社勤めをしている人でも議員になれるような取り組みが必要だろう。そうなれば「議員報酬だけでは食っていけない」という話にはならない。  もう1つ付け加えると、いま多くの議会では定数削減の流れにある。人口が減少しているから、それに見合った議員定数に、ということだが、本誌はむしろ、議会費(議員報酬の総額)はそのままで定数をできるだけ多くした方がいいと考える。議員の数が多ければ、それだけ住民の意向を反映させることができるからだ。当然、そのためには、前述したように会社勤めの人でも議員活動ができるような工夫が必要になる。  議会進行などにしても、いまの地方議会は「無駄に大仰なもの」になっているが、「形式」にこだわりすぎではないか。もっとフランクな形にした方が馴染みやすいだろうし、いい議論ができるのではないか。

  • 【白河市】鈴木和夫市長インタビュー

    【白河市】鈴木和夫市長インタビュー

    すずき・かずお 1949年生まれ。早稲田大法学部卒。県相双地方振興局長、県企業局長などを経て、2007年の白河市長選で初当選。今年7月に5選を果たす。  ――7月に行われた市長選挙で5選を果たしました。  「多くの市民の皆様の信任を賜り、5期目となる市政の舵取りを担わせていただくこととなりました。その重責に、あらためて身の引き締まる思いです。市民の声に耳を傾け、対話を重ね、信頼関係を築き、市政運営を進めるという初心を忘れず、子どもたちの明るい未来を築くため、直面する課題に一つひとつ丁寧に取り組んでいく考えです。  特に、想定をはるかに上回るスピードで進む人口減少への対応はまったなしの状況です。『少子化』が最大の要因であり、この状況を反転させるには、子育て環境の充実、経済的負担の軽減、さらには急増する未婚の解消など、様々な政策を組み合わせ、総合的に進めていかなければなりません。  中でも、未婚者の増加は大きな課題と考えています。わが国の婚姻の件数は、令和3年は50万組と約50年前の半分となり、戦後最少を更新しました。また、50歳時の未婚割合を示す『生涯未婚率』も令和2年には男性が28・3%、女性が17・8%と、女性より男性の方が高い傾向が続いており、40年で10倍に急上昇しています。こうした中、個人の価値観を尊重しつつ、結婚を希望する人には縁談のお世話をするような機運を社会全体で醸成していく必要があると考えています。市では、新たに『良縁めぐりあわせ応援窓口』を設置し、サポーターが悩み相談や相手の紹介など、かつての仲人のように婚活を支援する事業をスタートしました。  将来を担う若者の流出も、地方都市共通の悩みです。それを解決するには、安定した収入が見込め、将来の生活設計を描ける雇用の場が必要です。このため、地域に根を張る企業を支援することに加え、成長が見込める企業の誘致にも取り組み、地域の産業力を高めていく考えです。また、若者の中でも、特に女性の転出が多いことが大きな課題です。福島県は、昨年の転出超過が約6700人と全国ワースト3位でしたが、そのうち女性が約3900人でワースト2位でした。  県南地域は、県内の他地域と比較して製造業が非常に強い地域ですが、IT関連や研究開発型の成長産業の企業誘致を図るなど、進学等で一度白河を離れた若者が戻ってこられるような多彩な職場環境を整えることが重要になってくると考えています。加えて、女性が働きやすい環境づくりも大切です。日本はジェンダーギャップ指数が146カ国中125位と大変低く、特に地方では、『男は働き、女性は家を守る』という暗黙の役割分担が未だに根強く残っているように感じます。これが『女性の目に見えない障壁』として、女性の社会活躍を妨げる要因となっていると考えられるため、男女雇用機会均等法をはじめ諸制度を社会全体が理解し、機運を高め、その障壁を取り払っていくことが求められています。  そのためには、男女共同参画社会に対する認識を深め、定着させていく必要があり、市では、子育て時期の男性などを対象としたセミナーを実施するなど、ジェンダーギャップの解消に向けた取り組みを推進する考えです」観光ステーションの効果  ――国道294号白河バイパスが2月に全線開通しました。  「本市を南北に縦断する国道294号白河バイパスの開通により、白河中央スマートインターチェンジ、国道4号、国道289号が一直線に結ばれました。多くの市民の皆様から通勤・通学時間が短くなった、スーパーへ行きやすくなったなど、バイパス開通を喜ぶ声が寄せられており、市民生活の利便性は格段に向上したと感じています。  また、物流や救急医療、観光誘客など各方面にわたり大きな効果が生まれており、白河のみならず県南地域の広域的な社会経済活動を支えています。特に、本市のシンボルである小峰城、南湖公園へのアクセスが良くなったことで、今後より一層多くの観光客が訪れるものと期待しています。このため、小峰城、南湖公園の持つ歴史的価値やポテンシャルをより一層引き出し、賑わいを創出していきたいと考えています」  ――観光面では4月、JR白河駅近くにしらかわ観光ステーションがオープンしました。  「本市には、南湖公園、白河関跡、関山や権太倉山、里山のすそ野に広がる田園風景など、四季折々の情緒漂う豊かな自然、さらには美肌の湯として有名なきつねうち温泉など、魅力あふれる観光資源が数多くあります。また、JR白河駅の周辺には、小峰城、旧城下町の街並みを残す中心市街地、明治天皇が宿泊された旧脇本陣柳家旅館蔵座敷など、歴史を感じさせる観光スポットが点在しています。こうした白河の魅力を伝え、リピーターになっていただけるよう、新たな観光拠点として、JR白河駅隣に『しらかわ観光ステーション』をゴールデンウイークの初めに開所しました。オープン以来、多くの観光客の皆様にお越しいただいていますが、白河ならではのおもてなしを提供できるよう日々努めています。  中でも、味や麺の種類など自分好みの白河ラーメンの店舗とその道筋にある観光資源を組み合わせた周遊プランを提案する『ラーメンデータベース』は、テレビなどでも取り上げられ、大変好評です。また、市内の事業者や店舗と連携し、様々な地元産品や地酒などを展示・販売しており、来場者にお買い求めいただいています。  今後は、『旅の始まりは観光ステーションから』をキーワードに、白河市から県南地域、さらには県境を越えて栃木県北地域の観光スポットを広域的に訪れていただけるよう、近隣の自治体などと連携を図りながら新たな仕掛けを講じていく考えです」  ――今後の抱負。  「少子高齢化・人口減少が急速に進む中、激動する世界情勢、食料の安全保障、エネルギー問題、情報通信技術の発達など、目まぐるしく時代は変化しています。さらに、コロナ禍により、首都圏に集中する人や企業の地方分散に向けた機運が生まれ、政府は『デジタル田園都市構想』を推進するなど、従来の東京一極集中から地方が主役となる時代への大きな転換期でもあります。だからこそ、首都圏からの近接性や交通の利便性、豊かな歴史や文化、自然環境など、足元にある恵まれた条件を生かし、さらには、DXやGXも推進しながら、産業、教育、子育て、医療に加え、文化芸術・スポーツなどバランスのとれた『誰もが身近な幸せ(Well-being)を実感し、〝自分らしく、いきいきと〟暮らしていけるまちづくり』を着実に進め、市民の皆様とともに、確かな未来を築いていきたいと考えています」

  • 渡辺義信県議会議長に「白河市長」待望論!?

    渡辺義信県議会議長に「白河市長」待望論!?

     白河市長4期目の鈴木和夫氏(73)が2023年7月28日に任期満了を迎える。市長選まで1年を切ったが、現職の動向を含め、まだ目立った動きは見えない。  鈴木氏は早稲田大卒。県商工労働部政策監、相双地方振興局長、県企業局長などを経て、2007年の市長選で初当選を果たした。  県職員時代の経験を生かし、財政再建や企業誘致、歴史まちづくり、中心市街地活性化を進めてきた行政手腕は高く評価されている。初当選時こそ次点の桜井和朋氏と約4000票差の約1万6000票だったが、2回目以降は2万票以上を獲得し、次点に1万票以上の差をつけ、当選を重ねてきた。  とはいえ、さすがに5選ともなると、「多選」のイメージが強くなり、弊害を懸念する声も出てくる。それを見越して、市内では〝後釜〟探しが水面下で進んでいるようだ。  市内の経済人によると、「『県議会議長の渡辺義信氏(59、4期、白河市・西白河郡、自民党)をぜひ次期市長に』という声が同県議の地元である旧東村で上がっている」という。 鈴木和夫氏(上)と渡辺義信氏  渡辺氏は日大東北高卒。自民党県連幹事長などを歴任し、2021年10月、県議会議長に就任した。白河青年会議所理事長、ひがし商工会副会長などを務めた経験から、応援する経済人も多いようだ。  2023年秋には県議の改選が控える。前回2019年の県議選での渡辺氏の得票数は1万0362票。現職・鈴木氏との一騎打ちとなれば勝ち目はなさそうだが、誰も成り手がいないのなら渡辺氏が適任ではないか――こうした〝待望論〟が支持者などから出てきているわけ。  もっとも、身内であるはずの自民党関係者は冷ややかな反応を示す。  「渡辺氏は国政選挙などがあっても真面目に応援してくれない。閣僚が応援演説に来た際も数人しか集められず、慌てて他地区から動員したことがあった。仮に市長選に出ても、(自民党支持者が)一丸となって応援する構図は考えづらい」  こうした声が出る背景には、白河市・西白河郡選挙から満山喜一氏(71、5期、自民党)も選出されており、市内の自民党支持者が二分されている事情もあるのだろう。  渡辺氏本人は周囲に「立候補はしない」と明言しているようだが、渡辺氏の動きを警戒する鈴木氏の後援会関係者からは「鈴木氏にもう1期頑張ってほしい」という声が上がっているようだ。鈴木氏本人も「多選批判」を意識しているだろうが、周囲から立候補を強く要請されれば状況が変わる可能性もある。  市内の選挙通は鈴木氏の立候補について、「市周辺の幹線道路を結ぶ『国道294号白河バイパス』が全線開通間近で、市役所隣接地には複合施設を整備する計画も進んでいる。筋道を立て、その完成を見届けてから引退したい思いが強いのではないか」と見立てを語る。  複合施設は鈴木氏が市長選の公約として掲げていた「旧市民会館跡地の活用」の一環として行われるもので、健康・子育て・防災・生きがいづくり・中央公民館などの機能を備える(本誌2021年6月号参照)。  現在基本設計に着手しているところで、2023年3月に策定し、2026(令和8)年度以降に工事完了予定だ。概算事業費は約35~45億円の見込み。前回市長選の公約に掲げるほど、事業にかける思いは強い。  一方で、同施設に関しては、資材高騰の影響から設計案の見直し(コンパクト化)が進められており、一部で先行きを心配する声も出ている。  そうした問題への対応も含め、鈴木氏の今後の動向が注目される。おそらく年明けに動きが本格化するのではないか。 白河市のホームページ あわせて読みたい 【高額報酬】存在感が希薄な福島県議会

  • 白河市南湖SC計画停滞で膨らむ「道の駅待望論」

     本誌昨年6月号で、白河市の南湖公園周辺のパチンコ店跡地で大型ショッピングセンター(SC)の開発計画が進んでいることを報じた。  予定地は国道289号沿いで、隣接地には業務スーパー白河店やファミリーマート南湖店などが立ち並ぶ。白河ラーメンの人気店にも近い。  予定地の地権者によると、開発業者はアクティブワン(白河市、鈴木俊雄社長)。白河市をはじめ、県内7カ所で大型商業施設「メガステージ」を展開しているデベロッパーだ。資本金1000万円。民間信用調査機関によると、2023年3月期の売上高16億5100万円、当期純利益2億0300万円。  昨年6月号の取材段階では、市内の経済人や地権者から「鈴木社長が周囲に開発する方針を明言している。すでに地質調査なども始まっている」、「テナントはヨークベニマルをはじめ、ユニクロや無印良品などを予定している」と聞いていた。  ところがそこから1年以上経っても開発が進む気配がない。計画は頓挫したのか。  前出・予定地の地権者に尋ねたところ、「アクティブワンからは半年前、『ウクライナ情勢の悪化により資材価格が高騰しているので、しばらく様子を見させてほしい』と言われています。加えてテナントとして候補に上がっていた無印良品などとの交渉がうまくいかず、別の店舗を探しているとも聞いています」と説明したうえで、こう話した。  「他の商業施設にも土地を貸しているが、計画が浮上してから1年半も放置される事例はあまりない。地代は払われているが、地目はすでに宅地に変更されているので、固定資産税も上がっている。怒っている地権者はいると思いますよ」  そうした中、市内では「商業施設計画がうまく進まないのならば、いっそその場所を利用して道の駅を作ればいいのではないか」という声も上がっているようだ。 大型SCの開発予定地  同市では現時点で道の駅を整備する計画はなく、過去に市議会で整備を提言された際には、鈴木和夫市長が「国道294号白河バイパスの完成を視野に入れながら、長期的に考えていく問題」と慎重な姿勢を見せていた。  ただ、2月に国道294号白河バイパス、南湖トンネルが完成。今年1月には、市議会の市民産業常任委員会が佐賀県鹿島市を視察した際、道の駅むなかたを訪れるなど、にわかに道の駅に注目が集まっている。そんな中、大型SC計画が停滞していることが分かったため、道の駅待望論が浮上したようだ。  前出・地権者は「目玉となるテナントが集められないぐらいなら、道の駅の方が集客を期待できそう」と歓迎するが、市内の経済人からは「道の駅候補地はほかにもある」という声も聞かれた。  アクティブワンの鈴木社長に見通しを尋ねたが「今の段階では何とも言えない」と話すに留まった。交通アクセスが良くなり観光客の往来が増えている南湖公園周辺。大型SCがさらなる同市の観光・商業振興の起爆剤になれるか。道の駅整備の行方と併せて、その動向が注目される。

  • 【白河市】合併で生じた「議員空白地帯」

     2000年代を中心に進められた「平成の大合併」により、旧市町村単独の時代と比較すると、合併自治体の議員数は大きく減少している。とりわけ、核となる市があり、そこと合併した町村では「地元議員大幅減少」の傾向が強い。それに伴い、行政とのパイプが細くなっていると推察されるが、実際の影響はどうなのか。今年7月に市議選が行われた白河市の状況をリポートする。(末永) 住民の声が届きにくくなった旧3村 大信庁舎(旧大信村役場) 表郷庁舎(旧表郷村役場)  白河市は2005年11月に、旧白河市と西白河郡の表郷、大信、東の3村が合併して誕生した。以降、市議会議員選挙は2007年、2011年、2015年、2019年、今年と計5回行われた。2007年は4月に市議選が行われたが、2011年は東日本大震災・福島第一原発事故の影響で、選挙時期を7月に繰り延べた。それ以来、7月に市議選が実施されている。なお、合併後最初の市長選は2005年12月に行われたが、初代市長を務めた成井英夫氏が2007年6月に病気のため急逝。同年7月に、市議選と同じ日程で市長選が行われ、以降は同時選となっている。  今回の市議選は7月9日に投開票された。現職22人、元職2人、新人6人の計30人が立候補し、現職20人、元職1人、新人3人の計24人が当選した。投票率は56・25%で、前回を3・02ポイント下回り、合併後最低となった。結果は次頁の通り。 選挙結果(7月9日投開票、投票率56・25%) 当1521室井 伸一(58)公現(旧市内)当1518大木 絵理(36)無現(旧市内)当1374水野谷正則(59)無現(東)当1252菅原 修一(72)無現(旧市内)当1246永山  均(56)無新(大信)当1194高畠  裕(58)無現(旧市内)当1145根本 建一(59)無現(表郷)当1089藤田 文夫(68)無現(表郷)当1023緑川 摂生(64)無現(表郷)当999深谷  弘(69)共現(旧市内)当936吉見優一郎(38)無現(旧市内)当924筒井 孝充(66)無現(旧市内)当906大竹 功一(59)無現(旧市内)当859遠藤 公彦(61)無新(東)当859戸倉 宏一(69)無現(大信)当842佐川 京子(62)無現(旧市内)当816佐川 琴次(67)無元(東)当795植村 美洋(66)無新(旧市内)当790柴原 隆夫(74)無現(旧市内)当772高橋 光雄(75)無現(旧市内)当739石名 国光(75)無現(旧市内)当735北野 唯道(83)無現(大信)当726大花  務(73)無現(旧市内)当692鈴木 裕哉(51)無現(旧市内)686須藤 博之(69)無現601阿部 克弘(65)無元557山口 耕治(69)無現553市川  勤(50)無新471大森  仁(62)無新382大花 恵子(55)無新  当選者は旧市村のどこに住所があるかを併記した。選挙ではやはり、旧市内の候補者は旧市内を中心に、旧表郷村の候補者は旧表郷村内を中心に……といった具合に、遊説を行ったようだ。  「例えば、旧東村に住まいがある候補者が旧表郷村に、あるいはその逆というのは、多少はあるんでしょうけど、大部分はそれぞれの地元で選挙カーを走らせていたように感じます」(旧東村の住民)  普段の活動でも、やはり地元中心になるという。  「住民の中にも、まだ旧村の意識は残っており、議員もそうだと思います。近年は災害が相次いでいますが、例えば、市内で旧表郷村だけが局所的に被害を受けたということであれば、旧市内や旧他村の議員も集中して当該地区に来るでしょう。ただ、市内全域で被害を受けたとなれば、やはり議員は地元の状況を見て回って、必要なことがあれば市に伝える、といった活動になっていると感じます」(旧表郷村の住民)  別表は合併時と現在(今回の改選後)の旧市村の人口と議員数をまとめたもの。旧3村では、合併時12〜14人の議員がいたが、現在はそれぞれ3人となっている。 合併前、現在の人口と議員数 合併前(2005年)現在旧白河市4万8000人4万3000人24人15人旧表郷村7100人5700人14人3人旧大信村4800人3600人12人3人旧東村6000人4700人14人3人(上段が人口、下段が議員数)  旧村単位で「議員空白地帯」は発生していないが、旧表郷村には25行政区、旧大信村には26行政区、旧東村には30行政区あり、かつては2行政区に1人くらいの割合で議員がいた。それが現在は8〜10行政区に1人くらいの割合になっている。旧村内の行政区レベルで見ると、「議員空白地帯」が生じていることになる。  ここで問題になるのは、旧3村は市政(市役所)が物理的(距離的)に遠くなっているということ。そのうえ、議員もいない(少ない)となると、さらに「遠い存在」になってしまう。  合併前はほぼ毎回議員を輩出していたという行政区の住民は、「役場の業務などについて、『あの件はどうなったか』、『今度、村でこういう事業をやると聞いたが、具体的にはどういった形になるのか』等々、比較的気軽に(行政区内から出ている議員に)聞くことができたが、いまは(行政区内に議員がいないため)なかなかそうもいかない」という。  一方、合併当時の旧村の役場関係者はこう話す。  「合併議論の中で、最初のうちはこの地区(旧市村)は何人という具合に割り当て制にすべき、といった意見もありましたが、そこまでしなくても、落ち着くところに落ち着くだろうということで、そうしなかった。結果的には当初想定したような形になっていると思います」 旧東村は1人から3人に 東庁舎(旧東村役場)  人口比率で言うと、旧市内は約2800人に1人、旧3村は約1200〜約1900人に1人の割合で議員がいることになる。人口比率で言うと、旧3村の方が議員が多い格好だ。  前段で今回の市議選の投票率は56・25%と書いたが、旧市村別に見ると、旧市内が約52%、旧3村は約66〜約70%となっている。旧3村の住民はそれぞれ地元の候補者に投票する、と仮定すると、旧市村別の投票率の差がこの結果になっていると言えよう。  実は今回の改選前、旧東村は水野谷正則議員1人しかいなかった。つまりは、水野谷議員1人で、旧東村約4700人の声を市政に届ける役割を担っていたのだ。  水野谷議員に話を聞いた。  「執行部はやりやすかったかもしれません。同地区(旧村)内に議員が複数いたら、(限られた予算で地区内の課題解決に向けた事業を行う中で)『オレはこれを優先すべき』、『私はそれよりもこっちを優先すべき』といった具合に、それぞれが考えを持っているでしょうから。住民からしたら、選択肢が広がると言いますか、相談したり、市政情報を聞くことができる人は多い方がいいでしょうね。私自身、この地区の代表として、地元のために活動していますから。もっとも、白河市では、道路の補修や側溝に蓋をしてほしいなどのちょっとした事案については、町内会長や行政区長などを通して、市役所に話ができるようなシステムができていますから、議員を通して市につなぐということを求められることはあまりありません」  旧東村の住民によると、「今回の市議選では、何とか議員を増やそうという動きがあり、その結果、旧東村からは3人の議員が当選した。まだ任期がスタートしたばかりで、何が変わったということはないが、少なくとも、1人のときより地元の声を届けやすい環境になったのは間違いないと思います」という。  逆に言うと、それだけ「このままではわれわれ(旧東村)の声が届かなくなってしまうのではないか」との危機感があったということだろう。もっとも、議員が少ないことで、明確に「こうした不利益を被った」という事例は聞かれなかったが。  強いて言うなら、前段で災害時の議員の対応についてのコメントを紹介したが、「水害があった際、市に一度見に来てほしいとお願いしても、なかなか来てくれなかった。そこで、議員にお願いしたところ、ようやく来てもらった。まあ、被害が広範囲に渡ったから、なかなか細部までは見て回れない、人が足りない、ということだったんでしょうけど」との話が聞かれたくらいか。 商工団体は協議会を組織 白河商工会議所  このほか、かつて十数人いたのが3人になり、「何となくですが、商工業関係ならこの議員、農業関係ならこの議員というように、役割分担ができているように思う」(旧表郷村の住民)との声も。  もっとも、商工団体の関係者によると、白河商工会議所、表郷商工会、ひがし商工会、大信商工会の4団体で連絡協議会を立ち上げ、定期的に情報交換をしたり、市に要望活動などを行っているという。その点では、少なくとも商工関係者は、かつての旧村内に十数人いた議員が3人ほどになっても、大きな支障は出ていないようだ。  一方で、前出・合併当時の旧村の役場関係者はこう話す。  「合併協議の中で、旧自治体の区割りは『地域自治区』と位置付けられ、旧村役場は総合支所方式(旧役場の名称はそれぞれ表郷庁舎、東庁舎、大信庁舎)が採用されました。大規模なものでなければ、各総合支所の権限で予算を執行できたのです。ただ、合併から4年でその制度は役目を終えたということでなくなりました。ですから、住民は(旧役場の予算執行権がなくなったことで)市役所が物理的にも、気持ちの面でも遠くなったと感じていると思います」  合併に伴う議員減少、それによって、住民の声が行政に反映されにくくなることは、合併前から想定されていたことだ。とはいえ、実際、議員数は大きく減っているが、現状ではそれに起因する「大きな問題」は発生していない。  旧東村のように、一時(今改選前)は1人まで減ったが、住民の動きによって3人まで増やした(戻した)事例もある。当然、その分、議員に求められることは多くなる。  もっとも、議員が多ければ地域の課題が解決するかと言うと、そうではなかろう。とりわけ、同市の旧3村に限らず、核となる市があり、そこと合併した町村では、人口減少などの衰退が進んでいる、といった問題に直面しているケースが多く、それはまた別の問題と言えよう。  河村和徳・東北大学准教授(政治情報学)はこう話す。  「合併によって単独自治体時代と比較して議員数が減るということは当選のハードルが上がるということです。最初のうちは『オラが地域から何とか議員を出そう』と一生懸命支援します。ただ、後が続かない。選挙自体も、かつての(旧村の)ノウハウが通用しなくなり、なり手不足が加速していきます。全国的には旧町村単位で空白ができているところもあります。そうなると、地域の声を行政に伝えていけなくなってしまいます」  こうした状況をどう是正していくかが問われている。 議員のあり方 白河市役所  最後に、これからの議員のあり方についても述べておこう。白河市の議会の会期は60〜70日程度。町村議会だと30〜40日程度。議員からすると「一般質問の準備など、それ以外の活動も多い」というだろうが、少なくとも公式な議会活動はそのくらいにとどまる。  本誌は以前から、地方議員は仕事を持つべき、と主張してきた。なぜなら、落選したら収入がなくなるため、何よりも再選を優先させる恐れがあるからだ。結果、執行部(この場合は市長)から、次の選挙で刺客を立てられ、落選させられることがないような振る舞いになり、執行部に厳しい目を向ける姿勢が弱くなる。それは、議会全体の活力低下につながる。  そういう意味で、仕事を持ちながら議員を務めるのが本来あるべき姿。前述した実働日数を加味してもそれができないはずがない。  ちなみに、同市議会のホームページに掲載された議員名簿には、職業が出ているが「市議会議員」となっているのは3分の1の8人。ほかは「農業」が6人、「会社役員」が4人、「呉服店」、「旅行業」、「理容業」、「自営業」、「政党役員」、「行政書士」が各1人。普通の会社勤めの人はいないようだが、議員の期間は休職扱いにするとか、何らかの対応により可能になるのではないか。  関係者の中には、議員報酬だけでは食っていけないから、なり手がいないという人もいる。同市の議員報酬は月額38万5000円、副議長は同40万6000円、議長は同46万3000円。そのほか、年2回の期末手当がある。  一方で、同市議会の会期は前述の通り。その点で言うと、議会の開催日時を工夫するなどして、会社勤めをしている人でも議員になれるような取り組みが必要だろう。そうなれば「議員報酬だけでは食っていけない」という話にはならない。  もう1つ付け加えると、いま多くの議会では定数削減の流れにある。人口が減少しているから、それに見合った議員定数に、ということだが、本誌はむしろ、議会費(議員報酬の総額)はそのままで定数をできるだけ多くした方がいいと考える。議員の数が多ければ、それだけ住民の意向を反映させることができるからだ。当然、そのためには、前述したように会社勤めの人でも議員活動ができるような工夫が必要になる。  議会進行などにしても、いまの地方議会は「無駄に大仰なもの」になっているが、「形式」にこだわりすぎではないか。もっとフランクな形にした方が馴染みやすいだろうし、いい議論ができるのではないか。

  • 【白河市】鈴木和夫市長インタビュー

    すずき・かずお 1949年生まれ。早稲田大法学部卒。県相双地方振興局長、県企業局長などを経て、2007年の白河市長選で初当選。今年7月に5選を果たす。  ――7月に行われた市長選挙で5選を果たしました。  「多くの市民の皆様の信任を賜り、5期目となる市政の舵取りを担わせていただくこととなりました。その重責に、あらためて身の引き締まる思いです。市民の声に耳を傾け、対話を重ね、信頼関係を築き、市政運営を進めるという初心を忘れず、子どもたちの明るい未来を築くため、直面する課題に一つひとつ丁寧に取り組んでいく考えです。  特に、想定をはるかに上回るスピードで進む人口減少への対応はまったなしの状況です。『少子化』が最大の要因であり、この状況を反転させるには、子育て環境の充実、経済的負担の軽減、さらには急増する未婚の解消など、様々な政策を組み合わせ、総合的に進めていかなければなりません。  中でも、未婚者の増加は大きな課題と考えています。わが国の婚姻の件数は、令和3年は50万組と約50年前の半分となり、戦後最少を更新しました。また、50歳時の未婚割合を示す『生涯未婚率』も令和2年には男性が28・3%、女性が17・8%と、女性より男性の方が高い傾向が続いており、40年で10倍に急上昇しています。こうした中、個人の価値観を尊重しつつ、結婚を希望する人には縁談のお世話をするような機運を社会全体で醸成していく必要があると考えています。市では、新たに『良縁めぐりあわせ応援窓口』を設置し、サポーターが悩み相談や相手の紹介など、かつての仲人のように婚活を支援する事業をスタートしました。  将来を担う若者の流出も、地方都市共通の悩みです。それを解決するには、安定した収入が見込め、将来の生活設計を描ける雇用の場が必要です。このため、地域に根を張る企業を支援することに加え、成長が見込める企業の誘致にも取り組み、地域の産業力を高めていく考えです。また、若者の中でも、特に女性の転出が多いことが大きな課題です。福島県は、昨年の転出超過が約6700人と全国ワースト3位でしたが、そのうち女性が約3900人でワースト2位でした。  県南地域は、県内の他地域と比較して製造業が非常に強い地域ですが、IT関連や研究開発型の成長産業の企業誘致を図るなど、進学等で一度白河を離れた若者が戻ってこられるような多彩な職場環境を整えることが重要になってくると考えています。加えて、女性が働きやすい環境づくりも大切です。日本はジェンダーギャップ指数が146カ国中125位と大変低く、特に地方では、『男は働き、女性は家を守る』という暗黙の役割分担が未だに根強く残っているように感じます。これが『女性の目に見えない障壁』として、女性の社会活躍を妨げる要因となっていると考えられるため、男女雇用機会均等法をはじめ諸制度を社会全体が理解し、機運を高め、その障壁を取り払っていくことが求められています。  そのためには、男女共同参画社会に対する認識を深め、定着させていく必要があり、市では、子育て時期の男性などを対象としたセミナーを実施するなど、ジェンダーギャップの解消に向けた取り組みを推進する考えです」観光ステーションの効果  ――国道294号白河バイパスが2月に全線開通しました。  「本市を南北に縦断する国道294号白河バイパスの開通により、白河中央スマートインターチェンジ、国道4号、国道289号が一直線に結ばれました。多くの市民の皆様から通勤・通学時間が短くなった、スーパーへ行きやすくなったなど、バイパス開通を喜ぶ声が寄せられており、市民生活の利便性は格段に向上したと感じています。  また、物流や救急医療、観光誘客など各方面にわたり大きな効果が生まれており、白河のみならず県南地域の広域的な社会経済活動を支えています。特に、本市のシンボルである小峰城、南湖公園へのアクセスが良くなったことで、今後より一層多くの観光客が訪れるものと期待しています。このため、小峰城、南湖公園の持つ歴史的価値やポテンシャルをより一層引き出し、賑わいを創出していきたいと考えています」  ――観光面では4月、JR白河駅近くにしらかわ観光ステーションがオープンしました。  「本市には、南湖公園、白河関跡、関山や権太倉山、里山のすそ野に広がる田園風景など、四季折々の情緒漂う豊かな自然、さらには美肌の湯として有名なきつねうち温泉など、魅力あふれる観光資源が数多くあります。また、JR白河駅の周辺には、小峰城、旧城下町の街並みを残す中心市街地、明治天皇が宿泊された旧脇本陣柳家旅館蔵座敷など、歴史を感じさせる観光スポットが点在しています。こうした白河の魅力を伝え、リピーターになっていただけるよう、新たな観光拠点として、JR白河駅隣に『しらかわ観光ステーション』をゴールデンウイークの初めに開所しました。オープン以来、多くの観光客の皆様にお越しいただいていますが、白河ならではのおもてなしを提供できるよう日々努めています。  中でも、味や麺の種類など自分好みの白河ラーメンの店舗とその道筋にある観光資源を組み合わせた周遊プランを提案する『ラーメンデータベース』は、テレビなどでも取り上げられ、大変好評です。また、市内の事業者や店舗と連携し、様々な地元産品や地酒などを展示・販売しており、来場者にお買い求めいただいています。  今後は、『旅の始まりは観光ステーションから』をキーワードに、白河市から県南地域、さらには県境を越えて栃木県北地域の観光スポットを広域的に訪れていただけるよう、近隣の自治体などと連携を図りながら新たな仕掛けを講じていく考えです」  ――今後の抱負。  「少子高齢化・人口減少が急速に進む中、激動する世界情勢、食料の安全保障、エネルギー問題、情報通信技術の発達など、目まぐるしく時代は変化しています。さらに、コロナ禍により、首都圏に集中する人や企業の地方分散に向けた機運が生まれ、政府は『デジタル田園都市構想』を推進するなど、従来の東京一極集中から地方が主役となる時代への大きな転換期でもあります。だからこそ、首都圏からの近接性や交通の利便性、豊かな歴史や文化、自然環境など、足元にある恵まれた条件を生かし、さらには、DXやGXも推進しながら、産業、教育、子育て、医療に加え、文化芸術・スポーツなどバランスのとれた『誰もが身近な幸せ(Well-being)を実感し、〝自分らしく、いきいきと〟暮らしていけるまちづくり』を着実に進め、市民の皆様とともに、確かな未来を築いていきたいと考えています」

  • 渡辺義信県議会議長に「白河市長」待望論!?

     白河市長4期目の鈴木和夫氏(73)が2023年7月28日に任期満了を迎える。市長選まで1年を切ったが、現職の動向を含め、まだ目立った動きは見えない。  鈴木氏は早稲田大卒。県商工労働部政策監、相双地方振興局長、県企業局長などを経て、2007年の市長選で初当選を果たした。  県職員時代の経験を生かし、財政再建や企業誘致、歴史まちづくり、中心市街地活性化を進めてきた行政手腕は高く評価されている。初当選時こそ次点の桜井和朋氏と約4000票差の約1万6000票だったが、2回目以降は2万票以上を獲得し、次点に1万票以上の差をつけ、当選を重ねてきた。  とはいえ、さすがに5選ともなると、「多選」のイメージが強くなり、弊害を懸念する声も出てくる。それを見越して、市内では〝後釜〟探しが水面下で進んでいるようだ。  市内の経済人によると、「『県議会議長の渡辺義信氏(59、4期、白河市・西白河郡、自民党)をぜひ次期市長に』という声が同県議の地元である旧東村で上がっている」という。 鈴木和夫氏(上)と渡辺義信氏  渡辺氏は日大東北高卒。自民党県連幹事長などを歴任し、2021年10月、県議会議長に就任した。白河青年会議所理事長、ひがし商工会副会長などを務めた経験から、応援する経済人も多いようだ。  2023年秋には県議の改選が控える。前回2019年の県議選での渡辺氏の得票数は1万0362票。現職・鈴木氏との一騎打ちとなれば勝ち目はなさそうだが、誰も成り手がいないのなら渡辺氏が適任ではないか――こうした〝待望論〟が支持者などから出てきているわけ。  もっとも、身内であるはずの自民党関係者は冷ややかな反応を示す。  「渡辺氏は国政選挙などがあっても真面目に応援してくれない。閣僚が応援演説に来た際も数人しか集められず、慌てて他地区から動員したことがあった。仮に市長選に出ても、(自民党支持者が)一丸となって応援する構図は考えづらい」  こうした声が出る背景には、白河市・西白河郡選挙から満山喜一氏(71、5期、自民党)も選出されており、市内の自民党支持者が二分されている事情もあるのだろう。  渡辺氏本人は周囲に「立候補はしない」と明言しているようだが、渡辺氏の動きを警戒する鈴木氏の後援会関係者からは「鈴木氏にもう1期頑張ってほしい」という声が上がっているようだ。鈴木氏本人も「多選批判」を意識しているだろうが、周囲から立候補を強く要請されれば状況が変わる可能性もある。  市内の選挙通は鈴木氏の立候補について、「市周辺の幹線道路を結ぶ『国道294号白河バイパス』が全線開通間近で、市役所隣接地には複合施設を整備する計画も進んでいる。筋道を立て、その完成を見届けてから引退したい思いが強いのではないか」と見立てを語る。  複合施設は鈴木氏が市長選の公約として掲げていた「旧市民会館跡地の活用」の一環として行われるもので、健康・子育て・防災・生きがいづくり・中央公民館などの機能を備える(本誌2021年6月号参照)。  現在基本設計に着手しているところで、2023年3月に策定し、2026(令和8)年度以降に工事完了予定だ。概算事業費は約35~45億円の見込み。前回市長選の公約に掲げるほど、事業にかける思いは強い。  一方で、同施設に関しては、資材高騰の影響から設計案の見直し(コンパクト化)が進められており、一部で先行きを心配する声も出ている。  そうした問題への対応も含め、鈴木氏の今後の動向が注目される。おそらく年明けに動きが本格化するのではないか。 白河市のホームページ あわせて読みたい 【高額報酬】存在感が希薄な福島県議会