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  • 【磐城国道事務所】原田洋平所長インタビュー

    【磐城国道事務所】原田洋平所長インタビュー

     はらだ・ようへい 1982年12月生まれ。広島市出身。東大工学部卒。2005年に国土交通省入省。北海道開発局のほか総合政策局、内閣官房IT総合戦略室、道路局企画課評価室を経て今年4月から現職。  磐城国道事務所長に国土交通省道路局から原田洋平氏が4月に就任してから半年が過ぎた。3月の福島県沖地震で被害を受けた国道6号の復旧に始まり、東日本大震災・原発事故からの復興や防災に重要な国道の整備を指揮している。交通拠点の施策に取り組んできた経歴を生かして、浜通りの地域づくりを支援したいと意気込む。  ――4月に所長に就任されました。率直な感想と抱負をうかがいます。 「東北地方への赴任は初めてになります。福島県に来る時に最初に思い浮かんだのはやはり東日本大震災と原発事故でした。着任してすぐに地震・津波・原発の被害を実際に見て勉強しないといけないと思い、東日本大震災・原子力災害伝承館などのアーカイブ施設を一通り回りました。廃炉作業中の福島第一原子力発電所も視察しました。 着任するまで、震災と原発事故を当事者というよりは一歩引いて見ていたと思います。あの日から11年経ちました。被害はまだ残っている部分があること、同じ被災地でも復興のペースには違いがあることをまざまざと感じました。双葉町のように帰還がようやく始まった場所もあります。震災・原発事故の被災地にある国道事務所の所長として、どのように復興の手伝いができるか真剣に考えていきます。 前職の道路局で交通拠点を整備する施策を担当してきた経験を生かして、多方面から地域づくりに貢献していきたいです」 ――今年3月に発生した福島県沖地震で相馬地域には甚大な被害が発生しました。管内への影響をお聞きします。 「管轄の国道6号について述べたいと思います。相馬市内と新地町を通る相馬バイパスで一部道路が沈下して通行止めとなりました。応急復旧をして通行止めはすぐに解除できました。ただ、通行規制とならないまでも路面や橋の境目などに段差ができるなどあちこちが傷んだのでアスファルトの舗装を直しました。大きな被害までは至らなかったのは幸いでした」  ――ふくしま復興再生道路として整備が進められている国道399号「十文字工区」のバイパス道路が9月17日に開通しました。開通までの経緯と効果についてうかがいます。 「いわき市と川内村を結ぶ国道399号は『補助国道』に位置付けられ、福島県が管理をしています。補助とはいえ、復興再生道路に指定され重要な道路であることには変わりません。開通した十文字工区はぐねぐねした道と急な坂道ばかりでした。車のすれ違いは厳しく『酷道』と形容される類でした。 改良しようにも開発が難しい地形のため、トンネルを掘らざるを得ませんでした。穴を掘る際に水が出るなど困難もあり、トンネル区間は国が代行して整備をしました。十文字工区全体は6㌔で、うち2875㍍のトンネルを含む3㌔の区間を国道事務所で担当しました。工事は順調に終わり、昨年9月には県に引き渡しました。県がトンネル以外の部分を整備したうえで今年の9月に開通した次第です。 開通は通勤通学と救急搬送に大きな役割を果たします。川内村の住民は高校や職場があるいわき市に通いやすくなり、救急車も搬送時間を20分ほど短縮できます。国道399号は、今までは救急車が走行するのは困難でした。今までは川内村からいわき市への搬送は、富岡町に東進して常磐道を南下していました。 生活だけでなく、観光にもプラスになります。阿武隈高地の中央部に位置する川内村は豊かな自然を背景にワインや蕎麦などの観光資源に恵まれています。双葉郡といわき地域が行き来しやすくなったことで、交流が盛んになり被災が深刻だった地域への観光にもつながります。復興再生に寄与するように願っています」 ――国道6号の勿来バイパス事業の進捗状況についてうかがいます。 「いわき市と北茨城市をつなぐ国道6号のバイパス道路です。今までの道路は勿来地区では海のすぐ横を通っており、津波で浸水するおそれがありました。また沿道には店舗が並んでいるにもかかわらず、片側1車線のままなので渋滞を引き起こしています。山側にバイパスを整備してこれらを解消する狙いです。 2015年度に事業に着手し、19年度に着工しました。県をまたぐ事業であり、茨城県側は常陸河川国道事務所が事業を進めています。当事務所は、福島県側の2・5㌔区間を担っています。800㍍弱の勿来トンネルがあり、昨年度末から掘削を始めています。掘削作業が今まさに山場です」 ――国道49号の北好間改良事業の進捗状況についてうかがいます。 「国道49号はいわき市から郡山市、会津若松市へ抜ける道路です。事業実施地は常磐道のいわき中央ICから郡山方面に2㌔ほどの区間に当たります。勾配の急な坂道が多く、半径100㍍前後のきついカーブが連続しています。郡山方面から来ると長くて急な坂を下ったところに同ICの交差点があり、事故が発生しやすい個所となっています。交通安全と渋滞改善を図るためバイパスにします。 現在、用地確保を進めていて、整ったところについて測量、工事を順次進めています。なお、当該事業に隣接して、雨量による事前通行規制区間があり、大雨時には広域迂回が発生していることから、今後はこちらの対策も必要と考えています」 ――双葉地区の交通安全対策事業について。 「国道6号のJR双葉駅の東側から北に向かって2㌔ぐらいの区間に付加車線と歩道を整備します。伝承館や復興祈念公園の入口にあたるため一定の人通りが見込まれ、また、大型車両が多く行き交う地域でもあるため、事故防止と渋滞解消のために当事業を進めています。昨年度に事業着手し、今年度から工事が始まっています」 ――結びに、地域とどう向き合っていきたいですか。 「何をするにも地域を深く知らなくてはならないといつも思っています。また、行政が良かれと思って一方的に行っては意味がありません。地域の方々が何を望まれているのか、何がしたいのか、寄り添って、声を聞きながら、我々の役割は何かを考えて地域づくりを手伝っていきたいです。そのために自治体や商工団体をはじめ、幅広い方々からご意見をお伺いしたいです。道路は地域の構成要素の一つであり、渋滞や事故、防災等の交通課題にも着実に取り組みつつ、道路を起点として地域づくりにどう関わっていけるかを柔軟な発想で考えたいと思います」 磐城国道事務所ホームページ 政経東北【2022年11月号】

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     はらだ・ようへい 1982年12月生まれ。広島市出身。東大工学部卒。2005年に国土交通省入省。北海道開発局のほか総合政策局、内閣官房IT総合戦略室、道路局企画課評価室を経て今年4月から現職。  磐城国道事務所長に国土交通省道路局から原田洋平氏が4月に就任してから半年が過ぎた。3月の福島県沖地震で被害を受けた国道6号の復旧に始まり、東日本大震災・原発事故からの復興や防災に重要な国道の整備を指揮している。交通拠点の施策に取り組んできた経歴を生かして、浜通りの地域づくりを支援したいと意気込む。  ――4月に所長に就任されました。率直な感想と抱負をうかがいます。 「東北地方への赴任は初めてになります。福島県に来る時に最初に思い浮かんだのはやはり東日本大震災と原発事故でした。着任してすぐに地震・津波・原発の被害を実際に見て勉強しないといけないと思い、東日本大震災・原子力災害伝承館などのアーカイブ施設を一通り回りました。廃炉作業中の福島第一原子力発電所も視察しました。 着任するまで、震災と原発事故を当事者というよりは一歩引いて見ていたと思います。あの日から11年経ちました。被害はまだ残っている部分があること、同じ被災地でも復興のペースには違いがあることをまざまざと感じました。双葉町のように帰還がようやく始まった場所もあります。震災・原発事故の被災地にある国道事務所の所長として、どのように復興の手伝いができるか真剣に考えていきます。 前職の道路局で交通拠点を整備する施策を担当してきた経験を生かして、多方面から地域づくりに貢献していきたいです」 ――今年3月に発生した福島県沖地震で相馬地域には甚大な被害が発生しました。管内への影響をお聞きします。 「管轄の国道6号について述べたいと思います。相馬市内と新地町を通る相馬バイパスで一部道路が沈下して通行止めとなりました。応急復旧をして通行止めはすぐに解除できました。ただ、通行規制とならないまでも路面や橋の境目などに段差ができるなどあちこちが傷んだのでアスファルトの舗装を直しました。大きな被害までは至らなかったのは幸いでした」  ――ふくしま復興再生道路として整備が進められている国道399号「十文字工区」のバイパス道路が9月17日に開通しました。開通までの経緯と効果についてうかがいます。 「いわき市と川内村を結ぶ国道399号は『補助国道』に位置付けられ、福島県が管理をしています。補助とはいえ、復興再生道路に指定され重要な道路であることには変わりません。開通した十文字工区はぐねぐねした道と急な坂道ばかりでした。車のすれ違いは厳しく『酷道』と形容される類でした。 改良しようにも開発が難しい地形のため、トンネルを掘らざるを得ませんでした。穴を掘る際に水が出るなど困難もあり、トンネル区間は国が代行して整備をしました。十文字工区全体は6㌔で、うち2875㍍のトンネルを含む3㌔の区間を国道事務所で担当しました。工事は順調に終わり、昨年9月には県に引き渡しました。県がトンネル以外の部分を整備したうえで今年の9月に開通した次第です。 開通は通勤通学と救急搬送に大きな役割を果たします。川内村の住民は高校や職場があるいわき市に通いやすくなり、救急車も搬送時間を20分ほど短縮できます。国道399号は、今までは救急車が走行するのは困難でした。今までは川内村からいわき市への搬送は、富岡町に東進して常磐道を南下していました。 生活だけでなく、観光にもプラスになります。阿武隈高地の中央部に位置する川内村は豊かな自然を背景にワインや蕎麦などの観光資源に恵まれています。双葉郡といわき地域が行き来しやすくなったことで、交流が盛んになり被災が深刻だった地域への観光にもつながります。復興再生に寄与するように願っています」 ――国道6号の勿来バイパス事業の進捗状況についてうかがいます。 「いわき市と北茨城市をつなぐ国道6号のバイパス道路です。今までの道路は勿来地区では海のすぐ横を通っており、津波で浸水するおそれがありました。また沿道には店舗が並んでいるにもかかわらず、片側1車線のままなので渋滞を引き起こしています。山側にバイパスを整備してこれらを解消する狙いです。 2015年度に事業に着手し、19年度に着工しました。県をまたぐ事業であり、茨城県側は常陸河川国道事務所が事業を進めています。当事務所は、福島県側の2・5㌔区間を担っています。800㍍弱の勿来トンネルがあり、昨年度末から掘削を始めています。掘削作業が今まさに山場です」 ――国道49号の北好間改良事業の進捗状況についてうかがいます。 「国道49号はいわき市から郡山市、会津若松市へ抜ける道路です。事業実施地は常磐道のいわき中央ICから郡山方面に2㌔ほどの区間に当たります。勾配の急な坂道が多く、半径100㍍前後のきついカーブが連続しています。郡山方面から来ると長くて急な坂を下ったところに同ICの交差点があり、事故が発生しやすい個所となっています。交通安全と渋滞改善を図るためバイパスにします。 現在、用地確保を進めていて、整ったところについて測量、工事を順次進めています。なお、当該事業に隣接して、雨量による事前通行規制区間があり、大雨時には広域迂回が発生していることから、今後はこちらの対策も必要と考えています」 ――双葉地区の交通安全対策事業について。 「国道6号のJR双葉駅の東側から北に向かって2㌔ぐらいの区間に付加車線と歩道を整備します。伝承館や復興祈念公園の入口にあたるため一定の人通りが見込まれ、また、大型車両が多く行き交う地域でもあるため、事故防止と渋滞解消のために当事業を進めています。昨年度に事業着手し、今年度から工事が始まっています」 ――結びに、地域とどう向き合っていきたいですか。 「何をするにも地域を深く知らなくてはならないといつも思っています。また、行政が良かれと思って一方的に行っては意味がありません。地域の方々が何を望まれているのか、何がしたいのか、寄り添って、声を聞きながら、我々の役割は何かを考えて地域づくりを手伝っていきたいです。そのために自治体や商工団体をはじめ、幅広い方々からご意見をお伺いしたいです。道路は地域の構成要素の一つであり、渋滞や事故、防災等の交通課題にも着実に取り組みつつ、道路を起点として地域づくりにどう関わっていけるかを柔軟な発想で考えたいと思います」 磐城国道事務所ホームページ 政経東北【2022年11月号】