Category

菅家一郎

  • 【菅家一郎】衆議院議員インタビュー

    【菅家一郎】衆議院議員インタビュー

     かんけ・いちろう 1955年生まれ。会津高校、早稲田大学社会科学部卒。会津若松市議、福島県議、会津若松市長を経て2012年の衆院選で初当選。環境大臣政務官、復興副大臣などを歴任。  衆議院小選挙区の区割り改定で、本県は5議席から4議席に減った。会津地方と県南地方は新3区に再編され、自民党の新3区支部長には会津地方を地盤とする菅家一郎衆院議員(67、4期、比例東北)が就任。地元の範囲が広がり、有権者の声をどのように受け止め国政に届けていくのか、菅家氏に地方創生の在り方を聞いた。  ――衆議院小選挙区の区割り改定に伴う候補者調整の末、本県新3区の支部長に就任しました。経緯と選挙戦略についてうかがいます。 「本県は五つの選挙区から四つの選挙区に1議席減る結果となりました。旧第4選挙区は新たに県南を含めた第3選挙区に区割りが決まり、会津地方を中心に取り組んできた私と県南を中心に活動してきた上杉謙太郎先生との調整が党本部で慎重に検討されてきた経緯があります。 私は会津若松市長時代には大震災・原発事故が起こり、被災者の受け入れ、衆議院議員になってからはJR只見線の復旧、会津縦貫北道路、甲子道路の全線開通など地元の要望の実現に一つ一つ取り組んできました。その実績を評価していただいたのだと捉えています。今までの選挙結果は僅差で対立候補に力及ばなかったことは重く受け止めていますが、党本部が総合的に判断して、私を新3区の支部長として決定した責任を果たしていこうと思います。 上杉先生は、旧第3選挙区では地盤の県南地方で毎回票を積み上げ、前回衆院選では対立候補である玄葉光一郎氏を上回りました。有権者からの支持を党本部が評価し、比例代表の支部長として、名簿の上位に位置付けしました。新3区の市町村をまとめると、県内では最も広い面積です。上杉先生のお力をいただいて、私も上杉先生のために働いて連携を図っていきます。 地元の範囲が県内最大となりますが、有権者の皆様の声を一つ一つ受け止め、地方政治の最前線にいる市町村長と市町村議、県会議員のご助言も得て、それを与党議員として国政に届ければ、有権者からの応援という結果は付いてくると思います」 ――県南地方を地盤とする上杉謙太郎代議士は県衆院比例区支部長として比例東北で優遇措置となる運びですが、今後どのような協力関係を築いていきますか。 「自民党所属の県議の先生方は、会津地方には6人、県南地方には3人います。選挙区の面積は広くなりますが、上杉先生、9人の県議などあらゆる政治家とこれまで以上に密接な関係が築けます。一緒に選挙に臨めるのは心強いです。 次の選挙に関しては、私と上杉先生が積み上げてきた与党議員の経験を生かせるように2人とも議席を維持することが福島県のためになると思います。私自身に言い聞かせているのですが、『お任せ』ではだめだと。私は県南で上杉先生のお力を借りながら自分なりのネットワークを構築するのはもちろん、上杉先生には私の会津の知り合いを積極的に紹介し、つないでいきます。県内の声を政治に生かすという共通目標のために、小選挙区、比例区ともに票を上積みしていきたいです」 ――5月8日から新型コロナウイルス感染症の感染症法の位置付けが5類相当に引き下げられます。政府の対応の評価並びに、「ウィズコロナ」を見据えた経済対策についてどう取り組むべきですか。 「ワクチン接種をはじめ感染対策が浸透し、感染者は減少傾向です。現状に合うように法律を見直すのは必要だと思います。基礎疾患を抱える方、高齢の方が感染しないように医療機関や福祉施設での感染拡大を防いだ上で、感染症法の位置付けを引き下げるのは妥当だと考えます。 コロナ禍で飲食店、観光が大きなダメージを受け、それが長引きました。国も補償などで対応してきました。この間、感染者数は減少傾向が続いていましたが、感染拡大からの3年間は『日常生活を取り戻す』という気分に国民はなれなかったと思います。5類への引き下げで、職場の歓送迎会、地域住民の方々が懇親会などを臆することなく開けるようになったのは大きいです。自然と、地域経済が活性化へ向けて息を吹き返していくのではないでしょうか。 会津地方は県内でも有数の観光地です。海外からのインバウンドを増やし、交流人口を増やしていくことが、人口減少時代の地方創生の形だと思います。コロナの5類引き下げに合うタイミングで、只見線は昨年の10月に全線再開通し、観光路線として大いに賑わっています。 県南については、国道289号の甲子トンネルは首都圏から県への玄関口である白河市、西郷村と大内宿がある下郷町をつなぎます。県外からの観光客は戻りつつあり、観光に関しては県南と会津地方が結びついて相乗効果が見込めるのではないでしょうか」 ――自身が代表を務める「首都直下型地震対策バックヤード構想推進研究会」におけるこれまでの活動と今後の展開についてうかがいます。 「東京への人口・政府機能の過度な集中と、今後30年間で起きる可能性が高い首都直下型地震への対応を考えた政策です。国会の委員会が、首都圏が災害や有事で打撃を受けた時に代わりに機能を担う場、つまり『バックヤード』の最有力候補地の一つに挙げたのが福島県でした。 緊急事態下の首都圏を支えるには、安全で高速な交通網が整備されていなければなりません。バックヤードの一つである本県では、東北新幹線と上越新幹線のミッシングリンク(分断された路線)が磐越西線です。ここが高速鉄道でつながれば、環状新幹線となり、平時は東京から地方への分散の受け皿、緊急時は物資の供給や避難者の受け入れに役立ちます。研究会の活動が実り、国会で『地域公共交通の活性化及び再生に関する法律』の改正につながりました。 構想で特に重要なのが政府の司令塔機能の移転です。これはまだ明確に示されていないので、今夏には国土交通省の国土形成計画に取りまとめる予定です。政府機能の分散は政府自体がその方針を示すべきではないのか、そのような思いで私たち研究会は提言をまとめ、昨年12月に国土交通大臣と国土強靱化担当大臣に要望しました。我々研究会の意見を政策に生かせるようにさらに継続して活動していきます」 ――有権者へのメッセージをお願いします。 「新3区の支部長に就任させていただいたことに深く感謝申し上げます。厳しい選挙にもかかわらず応援していただいたおかげだと思っています。県南、会津地方と広い地域にまたがる選挙区の支部長ですが、その重みをひしひしと感じています。 全国で人口減少が進んでいますが、会津地方は特に影響が著しい地域です。高齢の方々が手厚い支援で健やかに暮らせるようにするのはもちろん、若い人が居心地の良い故郷にもう1回戻って、そこで安心して安全に仕事や子育てができるような環境を整えるよう尽力していきたいです。県南地方は、首都圏からの玄関口に当たり、地方分散の受け皿として重要です。両地方で、若い人たちが夢と希望を持って住み続けられるよう全力で取り組んでいきます」 【菅家一郎】衆議院議員のホームページ 掲載号:政経東北【2023年5月号】

  • 区割り改定に揺れる福島県内衆院議員

    区割り改定に揺れる福島県内衆院議員

     選挙区の変更に翻弄されたり、陰で「もう辞めるべきだ」と囁かれている県内衆院議員たち。その最新動向を追った。 新3区支部長は菅家氏、上杉氏は比例単独へ 森山氏と並んで取材に応じる菅家氏(右)と上杉氏(左)=3月21日の党県連大会  衆院区割り改定を受け、県南地方の一部(旧3区)と会津全域(旧4区)が一つになった新3区。この新しい選挙区で自民党から立候補を目指していたのが、旧3区で活動する上杉謙太郎氏(47)=2期、比例東北=と、旧4区を地盤とする菅家一郎氏(67)=4期、比例東北=だ。 次期衆院選の公認候補予定者となる新3区の支部長について、党本部は「勝てる候補者を擁立する」という方針のもと、上杉氏と菅家氏が共に比例復活当選だったこと、県内の意向調査で両氏を推す声が交錯していたことなどを理由に選定を先延ばししてきた。一方、中央筋から伝わっていたのは、党本部は上杉氏を据えたい意向だが、両氏が所属する派閥(清和政策研究会)は菅家氏を推しているというものだった。 選定の行方が注目されていた中、党本部は3月14日、新3区の支部長に菅家氏を選び、上杉氏は県衆院比例区支部長として次期衆院選の比例東北で名簿上位の優遇措置が取られることが決まった。 森山裕選対委員長は、菅家氏を選んだ理由を「主な地盤が会津だったから」と説明した。県南と比べ会津の方が有権者数が多いことが判断基準になったという。 本誌は1月号の記事で、上杉氏は新3区から立候補したいが菅家氏に遠慮していると指摘。併せて「菅家氏は会津若松市長を3期務めたのに小熊慎司氏に選挙区で負けており、支部長に相応しくない」という上杉支持者の声を紹介した。 それだけに上杉支持者は今回の選定に落胆しているかと思ったが、意外にも冷静な分析をしていた。 「有権者数を比べれば、県南(白河市、西白河郡、東白川郡)より会津の方が多いので、菅家氏が選ばれるのは妥当です。上杉氏がいきなり会津に行っても得票できないでしょうからね」(ある支持者) そう話す支持者が見据えていたのは、負ける確率が高い「次」ではなく「次の次」だった。 「菅家氏は次の衆院選で相当苦戦するでしょう。小熊氏と毎回接戦を演じているところに、県南の一部が入ることで玄葉光一郎氏の応援がプラスされる。今回の選定は、党本部が『菅家氏が選挙区で負けても、上杉氏が比例で当選すれば御の字』と考えた結果と捉えています」(同) そこまで言い切る理由は、両氏に対し、一方が小選挙区、もう一方が比例単独で立候補し、次の選挙では立場を入れ替えるコスタリカ方式を導入しなかったことにある。 「コスタリカを組むと、選挙区に回った候補者が負けた場合、比例に回った候補者は『オマエが一生懸命やらなかったから(選挙区の候補者が)負けた』と厳しく批判され、次に選挙区から出る際のマイナス材料になってしまう」(同) 上杉氏は次の衆院選で、菅家氏のために一生懸命汗をかくことになるが、その結果、菅家氏が負けてもコスタリカを組んでいないので批判の矛先は向きにくい。一方、汗をかいた見返りに、これまで未開の地だった会津に立ち入ることができる。すなわちそれは、次の衆院選を菅家氏のために戦いながら、次の次の衆院選を見据えた自分の戦いにつながることを意味する。 「もし菅家氏が負ければ、既に2回比例復活当選しているので支部長には就けないから、次の次は上杉氏の出番になる。上杉氏はその時を見越して(比例当選で)バッジをつけながら選挙区で勝つための準備を進めればいい、と」(同) もちろん、このシナリオは菅家氏が負けることが前提になっており、もし菅家氏が勝てば、今度は上杉氏が比例東北で2回連続優遇とはいかないだろうから、途端に行き場を失う恐れがある。前出・森山選対委員長は上杉氏に「次の次は支部長」と密かに約束したとの話も漏れ伝わっているが、これだってカラ手形に終わる可能性がある。 いずれにしても「選挙はやってみなければ分からない」ので、今回の選定が両氏にとって吉と出るか凶と出るかは判然としない。 党本部のやり方に拗ねる馬場氏 馬場雄基氏  馬場雄基氏(30)=1期、比例東北=が3月15日に行ったツイッターへの投稿が波紋を生んでいる。 《質問終え、新聞見て、目を疑いました。事実確認のために、常任幹事会の議事録見て、本当と知ってショックが大きすぎます。県連常任幹事会で話したことは正しく伝わっているのでしょうか。本人の知らないところで、こうやって決まっていくのですね。気持ちの整理がつきません》 https://twitter.com/yuki_8ba/status/1635848039670882309  真に言いたいことは分からないが、立憲民主党本部が行った「何らかの決定」にショックを受け、不満を露わにしている様子は伝わってくる。 投稿にある「新聞」とは、3月15日付の地元紙を指す。そこには党本部が、次期衆院選の公認候補予定者となる支部長について、新1区は金子恵美氏、新3区は小熊慎司氏を選任したという記事が載っていた。 実は、馬場氏も冒頭の投稿に福島民友の記事写真を掲載したが、同記事には馬場氏に関する記載がなかったため、尚更「何にショックを受けたのか」と憶測を呼んだのだ。 党県連幹事長の髙橋秀樹県議に思い当たることがあるか尋ねると、次のように話した。 「私も支持者から『あの投稿はどういう意味?』と聞かれたが、彼の言わんとすることは分かりません。県連で話したことが党本部に正しく伝わっていないと不満をのぞかせている印象だが、県連の方針は党本部にきちんと伝えてあります」 馬場氏をめぐる県連の方針とは、元外相玄葉光一郎氏(58)=10期、旧3区=とのコスタリカだ。 衆院区割り改定を受け、玄葉氏は新2区から立候補する考えを示したが、旧2区で活動する馬場氏も玄葉氏に配慮し明言は避けつつも、新2区からの立候補に意欲をにじませていた。これを受け県連は2月27日、両氏を対象にコスタリカ方式を導入することを党本部に上申した。 この時の馬場氏と玄葉氏のコメントが読売新聞県版の電子版(3月1日付)に載っている。 《記者会見で、馬場氏はコスタリカ方式の要請について、「現職同士が重なる苦しい状況を打開し、党本部の決定を促すためだ」と強調。「その部分が決定してから様々なことが決まる」と述べた。玄葉氏は「活動基盤を新2区にしていく。私にとっては大きな試練だ」とし、「比例に回った方が優遇される環境が前提だが、私の場合、小選挙区で出る前提で準備を進める」とも述べた》 馬場氏は玄葉氏とのコスタリカを認めるよう党本部に強く迫り、それが決まらないうちは他の部分は決まらないと強調したのだ。 ただ党本部は、コスタリカで比例区に転出する候補者(馬場氏)は名簿上位で優遇する必要があり、他県と調整しなければならないため、3月10日に大串博志選対委員長が「統一地方選前の決定はあり得ない」との見解を示していた。 そして4日後の同14日、党本部は前述の通り金子氏を新1区、小熊氏を新3区の支部長とし、新2区については判断を持ち越したため、馬場氏はショックのあまりツイッターに思いを吐露したとみられる。 進退にも関わることなので馬場氏の気持ちは分からなくもないが、前出・高橋県議は至って冷静だ。 「もしコスタリカを導入すれば立憲民主党にとっては初の試みで、比例名簿の上位登載は他県の候補者との兼ね合いもあるため、簡単に『やる』とは発表できない。調整に時間がかかるという党本部の説明は理解できます」(高橋県議) 要するに今回の出来事は、多方面と調整しなければ結論を出せない党本部の苦労を理解せずに、馬場氏が拗ねてツイッターに投稿した、ということらしい。 馬場事務所に投稿の真意を尋ねると、馬場氏本人から次のようなコメントが返ってきた。 「多くの方々に支えられて議員として活動させていただいていることに誇りと責任を持って行動していきます。難しい状況だからこそ、より応援の輪を広げていけるよう精進して参ります」 ここからも真意は読み取れない。 前述の上杉・菅家両氏といい、馬場氏といい、衆院区割り改定に翻弄される人たちは心身が休まることがないということだろう。 健康不安の吉野氏に引退を求める声 吉野正芳氏  選定が難航する区もあれば、すんなり決まった区もある。そのうちの一つ、自民党の新4区支部長には昨年12月、現職の吉野正芳氏(74)=8期、旧5区=が選任された。 選挙の実績で言えば、支部長選任は順当。ただ周知の通り、吉野氏は健康問題を抱え、このまま議員を続けても満足な政治活動は難しいという見方が大勢を占めている。 復興大臣を2018年に退任後、脳梗塞を発症。療養を経て現場復帰したが、身体に不自由を来し、移動は車椅子に頼っているほか、喋りもスムーズではない状態にある。 「正直、会話にはならない。吉野先生から返ってくる言葉も、こもった話し方で『〇くん、ありがとね』という具合ですから」(ある議員) 要するに今の吉野氏は、国会・委員会での質問や聴衆を前にした演説など、衆院議員として当たり前の仕事ができずにいるのだ。3月21日に開かれた党県連の定期大会さえも欠席(秘書が代理出席)している。 ここで難しいのは、政治家の出処進退は自分で決めるということだ。周りがいくら「辞めるべき」と思っても、本人が「やる」と言えば認めざるを得ない。 ただ、吉野氏の場合は前回(2021年10月)の衆院選も同様の健康状態で挑み、この時は周囲も「あと1期やったら流石に引退だろう」と割り切って支援した経緯があった。ところが今回、新4区支部長に選任され、本人も事務所も「まだまだやれる」とふれ回っているため、地元では「いい加減にしてほしい」と思いつつ、首に鈴をつける人がいない状況なのだ。 写真は3月21日の党県連定期大会を欠席した吉野氏が会場に宛てた祝電  「吉野氏の後釜を狙う坂本竜太郎県議は内心、『まだやるつもりか』と不満に思っているだろうが、ここで波風を立てれば自分に出番が回ってこないことを恐れ、ひたすら沈黙を貫いています」(ある選挙通) 旧5区、そして新たに移行する新4区は強力な野党候補が不在の状態が続いている。それが、満足な政治活動ができない吉野氏でも容易に当選できてしまう要因になっている。ただ、いつまでも当選できるからといって「議員であり続けること」に固執するのは有権者に失礼だ。 それでなくても新4区は原発被災地が広がるエリアで、復興の途上にある。元復興大臣という肩書きを笠に着て、行動力に期待が持てない議員に課題山積の新4区を任せるのは違和感がある。 あわせて読みたい 【福島県】衆議院区割り改定に翻弄される若手議員 【福島県】自民・新3区支部長をめぐる綱引き

  • 【菅家一郎】衆議院議員インタビュー

     かんけ・いちろう 1955年生まれ。会津高校、早稲田大学社会科学部卒。会津若松市議、福島県議、会津若松市長を経て2012年の衆院選で初当選。環境大臣政務官、復興副大臣などを歴任。  衆議院小選挙区の区割り改定で、本県は5議席から4議席に減った。会津地方と県南地方は新3区に再編され、自民党の新3区支部長には会津地方を地盤とする菅家一郎衆院議員(67、4期、比例東北)が就任。地元の範囲が広がり、有権者の声をどのように受け止め国政に届けていくのか、菅家氏に地方創生の在り方を聞いた。  ――衆議院小選挙区の区割り改定に伴う候補者調整の末、本県新3区の支部長に就任しました。経緯と選挙戦略についてうかがいます。 「本県は五つの選挙区から四つの選挙区に1議席減る結果となりました。旧第4選挙区は新たに県南を含めた第3選挙区に区割りが決まり、会津地方を中心に取り組んできた私と県南を中心に活動してきた上杉謙太郎先生との調整が党本部で慎重に検討されてきた経緯があります。 私は会津若松市長時代には大震災・原発事故が起こり、被災者の受け入れ、衆議院議員になってからはJR只見線の復旧、会津縦貫北道路、甲子道路の全線開通など地元の要望の実現に一つ一つ取り組んできました。その実績を評価していただいたのだと捉えています。今までの選挙結果は僅差で対立候補に力及ばなかったことは重く受け止めていますが、党本部が総合的に判断して、私を新3区の支部長として決定した責任を果たしていこうと思います。 上杉先生は、旧第3選挙区では地盤の県南地方で毎回票を積み上げ、前回衆院選では対立候補である玄葉光一郎氏を上回りました。有権者からの支持を党本部が評価し、比例代表の支部長として、名簿の上位に位置付けしました。新3区の市町村をまとめると、県内では最も広い面積です。上杉先生のお力をいただいて、私も上杉先生のために働いて連携を図っていきます。 地元の範囲が県内最大となりますが、有権者の皆様の声を一つ一つ受け止め、地方政治の最前線にいる市町村長と市町村議、県会議員のご助言も得て、それを与党議員として国政に届ければ、有権者からの応援という結果は付いてくると思います」 ――県南地方を地盤とする上杉謙太郎代議士は県衆院比例区支部長として比例東北で優遇措置となる運びですが、今後どのような協力関係を築いていきますか。 「自民党所属の県議の先生方は、会津地方には6人、県南地方には3人います。選挙区の面積は広くなりますが、上杉先生、9人の県議などあらゆる政治家とこれまで以上に密接な関係が築けます。一緒に選挙に臨めるのは心強いです。 次の選挙に関しては、私と上杉先生が積み上げてきた与党議員の経験を生かせるように2人とも議席を維持することが福島県のためになると思います。私自身に言い聞かせているのですが、『お任せ』ではだめだと。私は県南で上杉先生のお力を借りながら自分なりのネットワークを構築するのはもちろん、上杉先生には私の会津の知り合いを積極的に紹介し、つないでいきます。県内の声を政治に生かすという共通目標のために、小選挙区、比例区ともに票を上積みしていきたいです」 ――5月8日から新型コロナウイルス感染症の感染症法の位置付けが5類相当に引き下げられます。政府の対応の評価並びに、「ウィズコロナ」を見据えた経済対策についてどう取り組むべきですか。 「ワクチン接種をはじめ感染対策が浸透し、感染者は減少傾向です。現状に合うように法律を見直すのは必要だと思います。基礎疾患を抱える方、高齢の方が感染しないように医療機関や福祉施設での感染拡大を防いだ上で、感染症法の位置付けを引き下げるのは妥当だと考えます。 コロナ禍で飲食店、観光が大きなダメージを受け、それが長引きました。国も補償などで対応してきました。この間、感染者数は減少傾向が続いていましたが、感染拡大からの3年間は『日常生活を取り戻す』という気分に国民はなれなかったと思います。5類への引き下げで、職場の歓送迎会、地域住民の方々が懇親会などを臆することなく開けるようになったのは大きいです。自然と、地域経済が活性化へ向けて息を吹き返していくのではないでしょうか。 会津地方は県内でも有数の観光地です。海外からのインバウンドを増やし、交流人口を増やしていくことが、人口減少時代の地方創生の形だと思います。コロナの5類引き下げに合うタイミングで、只見線は昨年の10月に全線再開通し、観光路線として大いに賑わっています。 県南については、国道289号の甲子トンネルは首都圏から県への玄関口である白河市、西郷村と大内宿がある下郷町をつなぎます。県外からの観光客は戻りつつあり、観光に関しては県南と会津地方が結びついて相乗効果が見込めるのではないでしょうか」 ――自身が代表を務める「首都直下型地震対策バックヤード構想推進研究会」におけるこれまでの活動と今後の展開についてうかがいます。 「東京への人口・政府機能の過度な集中と、今後30年間で起きる可能性が高い首都直下型地震への対応を考えた政策です。国会の委員会が、首都圏が災害や有事で打撃を受けた時に代わりに機能を担う場、つまり『バックヤード』の最有力候補地の一つに挙げたのが福島県でした。 緊急事態下の首都圏を支えるには、安全で高速な交通網が整備されていなければなりません。バックヤードの一つである本県では、東北新幹線と上越新幹線のミッシングリンク(分断された路線)が磐越西線です。ここが高速鉄道でつながれば、環状新幹線となり、平時は東京から地方への分散の受け皿、緊急時は物資の供給や避難者の受け入れに役立ちます。研究会の活動が実り、国会で『地域公共交通の活性化及び再生に関する法律』の改正につながりました。 構想で特に重要なのが政府の司令塔機能の移転です。これはまだ明確に示されていないので、今夏には国土交通省の国土形成計画に取りまとめる予定です。政府機能の分散は政府自体がその方針を示すべきではないのか、そのような思いで私たち研究会は提言をまとめ、昨年12月に国土交通大臣と国土強靱化担当大臣に要望しました。我々研究会の意見を政策に生かせるようにさらに継続して活動していきます」 ――有権者へのメッセージをお願いします。 「新3区の支部長に就任させていただいたことに深く感謝申し上げます。厳しい選挙にもかかわらず応援していただいたおかげだと思っています。県南、会津地方と広い地域にまたがる選挙区の支部長ですが、その重みをひしひしと感じています。 全国で人口減少が進んでいますが、会津地方は特に影響が著しい地域です。高齢の方々が手厚い支援で健やかに暮らせるようにするのはもちろん、若い人が居心地の良い故郷にもう1回戻って、そこで安心して安全に仕事や子育てができるような環境を整えるよう尽力していきたいです。県南地方は、首都圏からの玄関口に当たり、地方分散の受け皿として重要です。両地方で、若い人たちが夢と希望を持って住み続けられるよう全力で取り組んでいきます」 【菅家一郎】衆議院議員のホームページ 掲載号:政経東北【2023年5月号】

  • 区割り改定に揺れる福島県内衆院議員

     選挙区の変更に翻弄されたり、陰で「もう辞めるべきだ」と囁かれている県内衆院議員たち。その最新動向を追った。 新3区支部長は菅家氏、上杉氏は比例単独へ 森山氏と並んで取材に応じる菅家氏(右)と上杉氏(左)=3月21日の党県連大会  衆院区割り改定を受け、県南地方の一部(旧3区)と会津全域(旧4区)が一つになった新3区。この新しい選挙区で自民党から立候補を目指していたのが、旧3区で活動する上杉謙太郎氏(47)=2期、比例東北=と、旧4区を地盤とする菅家一郎氏(67)=4期、比例東北=だ。 次期衆院選の公認候補予定者となる新3区の支部長について、党本部は「勝てる候補者を擁立する」という方針のもと、上杉氏と菅家氏が共に比例復活当選だったこと、県内の意向調査で両氏を推す声が交錯していたことなどを理由に選定を先延ばししてきた。一方、中央筋から伝わっていたのは、党本部は上杉氏を据えたい意向だが、両氏が所属する派閥(清和政策研究会)は菅家氏を推しているというものだった。 選定の行方が注目されていた中、党本部は3月14日、新3区の支部長に菅家氏を選び、上杉氏は県衆院比例区支部長として次期衆院選の比例東北で名簿上位の優遇措置が取られることが決まった。 森山裕選対委員長は、菅家氏を選んだ理由を「主な地盤が会津だったから」と説明した。県南と比べ会津の方が有権者数が多いことが判断基準になったという。 本誌は1月号の記事で、上杉氏は新3区から立候補したいが菅家氏に遠慮していると指摘。併せて「菅家氏は会津若松市長を3期務めたのに小熊慎司氏に選挙区で負けており、支部長に相応しくない」という上杉支持者の声を紹介した。 それだけに上杉支持者は今回の選定に落胆しているかと思ったが、意外にも冷静な分析をしていた。 「有権者数を比べれば、県南(白河市、西白河郡、東白川郡)より会津の方が多いので、菅家氏が選ばれるのは妥当です。上杉氏がいきなり会津に行っても得票できないでしょうからね」(ある支持者) そう話す支持者が見据えていたのは、負ける確率が高い「次」ではなく「次の次」だった。 「菅家氏は次の衆院選で相当苦戦するでしょう。小熊氏と毎回接戦を演じているところに、県南の一部が入ることで玄葉光一郎氏の応援がプラスされる。今回の選定は、党本部が『菅家氏が選挙区で負けても、上杉氏が比例で当選すれば御の字』と考えた結果と捉えています」(同) そこまで言い切る理由は、両氏に対し、一方が小選挙区、もう一方が比例単独で立候補し、次の選挙では立場を入れ替えるコスタリカ方式を導入しなかったことにある。 「コスタリカを組むと、選挙区に回った候補者が負けた場合、比例に回った候補者は『オマエが一生懸命やらなかったから(選挙区の候補者が)負けた』と厳しく批判され、次に選挙区から出る際のマイナス材料になってしまう」(同) 上杉氏は次の衆院選で、菅家氏のために一生懸命汗をかくことになるが、その結果、菅家氏が負けてもコスタリカを組んでいないので批判の矛先は向きにくい。一方、汗をかいた見返りに、これまで未開の地だった会津に立ち入ることができる。すなわちそれは、次の衆院選を菅家氏のために戦いながら、次の次の衆院選を見据えた自分の戦いにつながることを意味する。 「もし菅家氏が負ければ、既に2回比例復活当選しているので支部長には就けないから、次の次は上杉氏の出番になる。上杉氏はその時を見越して(比例当選で)バッジをつけながら選挙区で勝つための準備を進めればいい、と」(同) もちろん、このシナリオは菅家氏が負けることが前提になっており、もし菅家氏が勝てば、今度は上杉氏が比例東北で2回連続優遇とはいかないだろうから、途端に行き場を失う恐れがある。前出・森山選対委員長は上杉氏に「次の次は支部長」と密かに約束したとの話も漏れ伝わっているが、これだってカラ手形に終わる可能性がある。 いずれにしても「選挙はやってみなければ分からない」ので、今回の選定が両氏にとって吉と出るか凶と出るかは判然としない。 党本部のやり方に拗ねる馬場氏 馬場雄基氏  馬場雄基氏(30)=1期、比例東北=が3月15日に行ったツイッターへの投稿が波紋を生んでいる。 《質問終え、新聞見て、目を疑いました。事実確認のために、常任幹事会の議事録見て、本当と知ってショックが大きすぎます。県連常任幹事会で話したことは正しく伝わっているのでしょうか。本人の知らないところで、こうやって決まっていくのですね。気持ちの整理がつきません》 https://twitter.com/yuki_8ba/status/1635848039670882309  真に言いたいことは分からないが、立憲民主党本部が行った「何らかの決定」にショックを受け、不満を露わにしている様子は伝わってくる。 投稿にある「新聞」とは、3月15日付の地元紙を指す。そこには党本部が、次期衆院選の公認候補予定者となる支部長について、新1区は金子恵美氏、新3区は小熊慎司氏を選任したという記事が載っていた。 実は、馬場氏も冒頭の投稿に福島民友の記事写真を掲載したが、同記事には馬場氏に関する記載がなかったため、尚更「何にショックを受けたのか」と憶測を呼んだのだ。 党県連幹事長の髙橋秀樹県議に思い当たることがあるか尋ねると、次のように話した。 「私も支持者から『あの投稿はどういう意味?』と聞かれたが、彼の言わんとすることは分かりません。県連で話したことが党本部に正しく伝わっていないと不満をのぞかせている印象だが、県連の方針は党本部にきちんと伝えてあります」 馬場氏をめぐる県連の方針とは、元外相玄葉光一郎氏(58)=10期、旧3区=とのコスタリカだ。 衆院区割り改定を受け、玄葉氏は新2区から立候補する考えを示したが、旧2区で活動する馬場氏も玄葉氏に配慮し明言は避けつつも、新2区からの立候補に意欲をにじませていた。これを受け県連は2月27日、両氏を対象にコスタリカ方式を導入することを党本部に上申した。 この時の馬場氏と玄葉氏のコメントが読売新聞県版の電子版(3月1日付)に載っている。 《記者会見で、馬場氏はコスタリカ方式の要請について、「現職同士が重なる苦しい状況を打開し、党本部の決定を促すためだ」と強調。「その部分が決定してから様々なことが決まる」と述べた。玄葉氏は「活動基盤を新2区にしていく。私にとっては大きな試練だ」とし、「比例に回った方が優遇される環境が前提だが、私の場合、小選挙区で出る前提で準備を進める」とも述べた》 馬場氏は玄葉氏とのコスタリカを認めるよう党本部に強く迫り、それが決まらないうちは他の部分は決まらないと強調したのだ。 ただ党本部は、コスタリカで比例区に転出する候補者(馬場氏)は名簿上位で優遇する必要があり、他県と調整しなければならないため、3月10日に大串博志選対委員長が「統一地方選前の決定はあり得ない」との見解を示していた。 そして4日後の同14日、党本部は前述の通り金子氏を新1区、小熊氏を新3区の支部長とし、新2区については判断を持ち越したため、馬場氏はショックのあまりツイッターに思いを吐露したとみられる。 進退にも関わることなので馬場氏の気持ちは分からなくもないが、前出・高橋県議は至って冷静だ。 「もしコスタリカを導入すれば立憲民主党にとっては初の試みで、比例名簿の上位登載は他県の候補者との兼ね合いもあるため、簡単に『やる』とは発表できない。調整に時間がかかるという党本部の説明は理解できます」(高橋県議) 要するに今回の出来事は、多方面と調整しなければ結論を出せない党本部の苦労を理解せずに、馬場氏が拗ねてツイッターに投稿した、ということらしい。 馬場事務所に投稿の真意を尋ねると、馬場氏本人から次のようなコメントが返ってきた。 「多くの方々に支えられて議員として活動させていただいていることに誇りと責任を持って行動していきます。難しい状況だからこそ、より応援の輪を広げていけるよう精進して参ります」 ここからも真意は読み取れない。 前述の上杉・菅家両氏といい、馬場氏といい、衆院区割り改定に翻弄される人たちは心身が休まることがないということだろう。 健康不安の吉野氏に引退を求める声 吉野正芳氏  選定が難航する区もあれば、すんなり決まった区もある。そのうちの一つ、自民党の新4区支部長には昨年12月、現職の吉野正芳氏(74)=8期、旧5区=が選任された。 選挙の実績で言えば、支部長選任は順当。ただ周知の通り、吉野氏は健康問題を抱え、このまま議員を続けても満足な政治活動は難しいという見方が大勢を占めている。 復興大臣を2018年に退任後、脳梗塞を発症。療養を経て現場復帰したが、身体に不自由を来し、移動は車椅子に頼っているほか、喋りもスムーズではない状態にある。 「正直、会話にはならない。吉野先生から返ってくる言葉も、こもった話し方で『〇くん、ありがとね』という具合ですから」(ある議員) 要するに今の吉野氏は、国会・委員会での質問や聴衆を前にした演説など、衆院議員として当たり前の仕事ができずにいるのだ。3月21日に開かれた党県連の定期大会さえも欠席(秘書が代理出席)している。 ここで難しいのは、政治家の出処進退は自分で決めるということだ。周りがいくら「辞めるべき」と思っても、本人が「やる」と言えば認めざるを得ない。 ただ、吉野氏の場合は前回(2021年10月)の衆院選も同様の健康状態で挑み、この時は周囲も「あと1期やったら流石に引退だろう」と割り切って支援した経緯があった。ところが今回、新4区支部長に選任され、本人も事務所も「まだまだやれる」とふれ回っているため、地元では「いい加減にしてほしい」と思いつつ、首に鈴をつける人がいない状況なのだ。 写真は3月21日の党県連定期大会を欠席した吉野氏が会場に宛てた祝電  「吉野氏の後釜を狙う坂本竜太郎県議は内心、『まだやるつもりか』と不満に思っているだろうが、ここで波風を立てれば自分に出番が回ってこないことを恐れ、ひたすら沈黙を貫いています」(ある選挙通) 旧5区、そして新たに移行する新4区は強力な野党候補が不在の状態が続いている。それが、満足な政治活動ができない吉野氏でも容易に当選できてしまう要因になっている。ただ、いつまでも当選できるからといって「議員であり続けること」に固執するのは有権者に失礼だ。 それでなくても新4区は原発被災地が広がるエリアで、復興の途上にある。元復興大臣という肩書きを笠に着て、行動力に期待が持てない議員に課題山積の新4区を任せるのは違和感がある。 あわせて読みたい 【福島県】衆議院区割り改定に翻弄される若手議員 【福島県】自民・新3区支部長をめぐる綱引き