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郡山商工会議所

  • 【郡山商工会議所】滝田康雄会頭インタビュー【2023.11】

    【郡山商工会議所】滝田康雄会頭インタビュー【2023.11】

    たきた・やすお 1944年生まれ。郡山市出身。安積高、学習院大法学部卒。東北アルフレッサ㈱最高顧問。郡山青年会議所理事長、郡山商工会議所青年部会長などを歴任。現在、会頭3期目。  新型コロナは収束していないが、経済活動はコロナ禍前の動きに戻りつつある。一方、円安や物価高の影響は深刻で、人手不足や後継者問題も解消に向かう気配は見えない。こうした中、商都・郡山の経済は今どういう状況にあるのか。郡山商工会議所の滝田康雄会頭に、管内情勢や会員事業所の様子、将来ビジョンなどを聞いた。  ――新型コロナウイルスが感染症法上の5類に移行され、管内でも7月にビール祭、8月にはうねめまつりが通常開催されるなどコロナ禍前の活気が戻りつつあると感じますが、滝田会頭は現状をどのように捉えていますか。  「『サマーフェスタ IN KORIYAMA・ビール祭』は7月下旬に3日間開催し、約5万9000人の人出がありました。ようやくイベントを楽しめるという雰囲気が会場にいた皆さんから感じ取ることができたと思います。出店者の方々は、地元の食材を扱う市内の飲食店でしたので、地域経済の活性化と地産地消につながりました。  また、今年のビール祭が成功した背景は、昨年に引き続いて街なかで開催したことにあると思います。昨年、コロナ拡大のリスクを理由に開催に否定的な意見もありましたが、私は感染対策をすれば問題ないと判断し、開催に踏み切りました。今思い返せば、停滞していた経済に大きな刺激になったのではないでしょうか。また、他の地域でも『郡山がやるならウチもやろう』というきっかけになったと聞いており、そういう意味でも、大きな意義があったと考えています。  翌週の8月上旬には、3日間にわたって『郡山うねめまつり』を開催し、約11万5000人の人出がありました。多くの参加団体も、それぞれが盛り上げようと意欲的に取り組んでくれました。市民の方々から、そして地域事業所などからは『開催してもらって大変良かった』と多くの声をいただき、コロナ禍前の日常を皆さんが求めているということを実感しました。  最後に、付言させていただきますが、忘れてならないのは実行委員会をはじめとする関係者の方々の頑張りです。開催準備はもちろん交通整理など、猛暑の中、それぞれの役割を果たしてくれたことが成功の一因であると言えます」  ――円安と物価高が深刻な問題となっています。人手不足や後継者問題も深刻です。事業者からはどんな声が聞かれていますか。  「円安基調が続く中、資材・エネルギー価格の高騰など構造的な物価高は多くの中小企業に悪影響を及ぼしています。  人手不足については、特に建設業や製造業及びホテル、祭事といったサービス業で、コロナの影響による労働者の転職が起こりましたが、これら業種の需要が回復しても人手が戻らず困惑しているようです。他業種においても、求人に応募がほとんどないようです。一方で従業員については、賃上げでつなぎ止めている状況もあると聞いています。  また、後継者問題では、経営者の多くが高齢になる中、苦しい経営環境に置かれている中小企業では、廃業や清算を余儀なくされるケースも増えています。  これらを解決するためには、原材料の値上げや人件費の増加分を事業者間の取引等において適切に価格転嫁することが重要でありますが、交渉すること自体が難しいという事業者の声も聞かれます」  ――国や県にはどのような対策を望みますか。  「円安や物価高は構造的な問題であり、多くの事業者が苦労しています。国や県には、人材不足の解消と生産性の向上、さらに適正な価格転嫁が図れるよう、現状をしっかりと検証して政策の展開を図ってほしいと思います。  特にDX化については、具体的にどこに課題があるか、といったことまで踏み込んで対応することが大切で、しっかりと事業者の意見を聞いて、IT人材の活用施策や助成金の拡充など支援体制に繋げてほしいと思います。  そして、中小企業の稼ぐ力が強化されることを望みたいです。事業者が生産性向上や価格転嫁による適正な利益が得られれば、賃上げや雇用の確保につながり、ひいては経済の好循環につながりますので」  ――ゼビオが宇都宮市への本社移転を発表したり、うすいから高級ブランドが撤退したり、日和田ショッピングモールが改装による長期休業に入ったり、来年5月にはイトーヨーカドー郡山店の閉店が発表されるなど、管内は目まぐるしい情勢にあります。それら企業で働く従業員はもちろん、消費者も一定の影響を受ける状況にありますが、会議所ではどのような対応をしていきたいと考えていますか。  「近年の消費動向を見ると、Eコマース(電子商取引)などの進展により、従来の商取引の形態が大きく様変わりしています。  今回、転出した個々の企業が生き残りをかけて新しい取り組みを選択されたと思いますので、その経営判断は尊重せざるを得ませんが、地元の発展にご尽力いただいた企業が郡山を離れることは、まちづくりにおいても地域経済においても大きな痛手です。行政には新たな発展の機会となる計画づくりを進めてほしいと思います。  また、撤退や建て替えまでの期間については地元雇用が失われないよう、各社とも改善策をしっかり講じてほしいと思います。会議所としては、できる限りの協力をしていきたいと考えています」  ――滝田会頭が就任以来掲げている、郡山の未来像を考える取り組み「グランドデザインプロジェクト」について、その進捗と手ごたえをお聞かせください。 「平成30年11月に開かれた常議員会で承認されたグランドデザインプロジェクト構想は、コロナ禍の影響もありましたが、令和3年には路線バス(福島交通)のバスロケーションシステムが導入され、また安積高校の併設型公立中高一貫校については、要望した後に検討する旨のお答えをいただき、令和7年開校が示されるなど、徐々に形になりつつあります。 その一助になったのは、地元で暮らす若者たちの斬新な発想にあると思っています。20年後、30年後の郡山を支えるのは今を生きる若者です。彼らが郡山の将来を考えなければ、住みよいまちは実現しません。若者が考えや意見を出し合い、私たちベテランはそれをサポートする。そういう姿が未来の郡山を形づくっていくのだと思います。 グランドデザインプロジェクトを通じて、提案だけにとどまるのではなく、一つでも具現化していくことを目指していきたいです」

  • 【郡山商工会議所】滝田康雄会頭インタビュー

    【郡山商工会議所】滝田康雄会頭インタビュー

     たきた・やすお 1944年生まれ。郡山市出身。安積高、学習院大法学部卒。東北アルフレッサ最高顧問。郡山青年会議所理事長、郡山商議所青年部会長などを歴任。  滝田康雄氏が郡山商工会議所会頭に再任され、3期目の任期がスタートした。1期目は震災・原発事故からの復興、2期目は新型コロナ禍への対応と10年、20年後を見据えた民間発想のまちづくり「郡山グランドデザイン」の具現化にまい進し、3期目は、中小企業の活力強化と地域経済の活性化についても取り組む。滝田氏に今後の方針と取り組みについて聞いた。  ――3期目の任期がスタートしました。抱負をお聞きします。 「これまでは、1期目(2016年11月)当時に東日本大震災・東電福島第一原発事故からの復旧・復興を念頭に『会員事業所の皆様がこの街に希望が持てるようにする』との姿勢で事業を推進してきました。3期目は『中小企業の活力強化』と『地域経済の活性化』をスローガンに掲げます。中小企業の活力強化については、業績の向上が課題です。そのために経営者の意識改革、専門人材の育成、補助金の活用促進に当会議所は『伴走型支援』で臨みます。 地域経済の活性化については、企業・団体が主体となって開催する大規模セミナーや国際会議、展示会などのビジネスイベントの誘致や広域連携を軸とした観光振興に取り組みます」 ――新型コロナが収束しない中、会員事業所からはどのような声が寄せられていますか。現状と郡山商議所の取り組みを教えてください。 「一般論として、内需拡大には至っていません。地域経済は、いまだ需要の回復途上にありますので、企業は、自助努力だけでは対応できない厳しい経営環境にあります。実質無担保無保証人の融資(ゼロゼロ融資)を活用し、緊急事態を耐えた事業所が多く、返済も厳しい状況にあると聞きます。 当会議所はウィズコロナの中、いかに事業を進めていくかを考えています。職員には、『コロナ禍だからだめ』なのではなく『コロナ禍だからこそこうしたい』と考えを転換せねばと訴えています。ビール祭も開催に対する懸念の声が寄せられました。中小企業の状態、飲食業、観光業を見るとこのままにしてはおけない。地域経済再生に向けて行動を起こそうという思いがあり、感染拡大防止策を入念にし、開催にこぎ着けました。 閉塞感が漂っていた中、開催したことで、『よくやってくれた』と市民の皆様や各業界から、大きな賞賛をいただきました。タクシーの運転手さんから『今までは商売にならなかったのに、フル回転で体がいくつあっても足りない』と聞いた時は嬉しかったです。会議所にわざわざお礼を言いに来てくださった方もいます。開催に向け奮闘した職員にも私からねぎらいの言葉を掛けたい。 今冬はイルミネーションを規模を拡大して取り組みます。新酒まつりと組み合わせて、イベントを計画しています。若い職員たちが考えてくれました。柔軟性がある企画で若者たちを頼りにしています。 もちろん、感染防止対策は大前提です。気を抜かずに、コロナ禍での地域経済活性化に取り組んでいきます」 ――昨年2月、今年3月と続いた福島県沖地震の影響も深刻です。管内への影響はどうですか。郡山商議所の取り組みについても教えてください。 「当会議所では、早くから国のグループ補助金活用に動き、会議所グループとして、46社約12億円の被害に対して8億6000万円の補助申請を支援しました。その他の被災事業者に対しては、事業継続力の強化を支援するためにBCP計画(企業継続計画)の策定に向けて、中小企業診断士・税理士などの専門家派遣や、福島県よろず支援拠点などと連携し、個別支援事業を実施しています」 ――円安と物価高騰も深刻な問題となっています。また、政府や県、市への要望がありましたら教えてください。 「中小企業は原材料の輸入割合が高いため、円安はデメリットの面が強いです。加えて、原油・原材料の高騰を価格に転嫁できていないようです。そのような中、最低賃金の引き上げや消費税インボイス制度の実施が求められています。必要性は理解できますが、運用面、技術面を含めて小規模事業者への負担が大きいです。政府や県、郡山市にはこれらの運用支援に加え、物価高対策と経営基盤の強化支援の必要性を訴えたいです。 また、適正な利益の確保・価格転嫁の円滑化が進められる制度の必要性を感じます。増加している新規開業の相談については、経営指導員による相談体制を強化して事業計画づくりを支援しておりますが、補助制度・フォローアップ事業等支援メニューの充実を求めたいです」   ――滝田会頭が就任以来掲げていた「若い世代のまちづくりへの参加」について、進展したことをお聞かせください。 「10年後、20年後の郡山をどうしたいかの観点から、当会議所では2018年に民間発の『グランドデザインプロジェクト』を打ち出しました。未来を担う若者の考えを重視しています。交通の中枢である郡山と近隣市町村のそれぞれの持ち味を生かして企業誘致を図ったり、行き来をしやすくするための鉄道利用の構想が盛り込まれるなど、魅力的な地域にすること、そして、人を集め、活性化を進めることを目的としています。 『夢のような話』に聞こえるかもしれませんが、まず理想を掲げなければ実現には至りません。理想の街をこれからの世代の視点で描き、そのために交通、企業、住環境を行政などと一緒に整えていきたいです。 若者の意見の具現化については、一歩ずつ進んでいます。バスロケーションシステムが実施されました。福島交通の路線バスにおいて、スマホアプリを活用することで簡単にバスの位置を把握でき、利便性が向上しました。 教育環境でも大きな進展がありました。安積高校が2025年度に中高一貫校になるとの決定がありました。県立の中高一貫校は会津地区の会津学鳳、浜通り地区のふたば未来学園に続き、安積は県内3校目で、県中地区では初となります。新しく設置される中学校では、高い学力や志を持った子どもたちの育成に力を注ぐことで次世代のリーダーを育成する拠点校となるよう、期待をしています。 歩きやすい道路については県が昨年度から事業に着手しています。歩いて暮らせるまちづくり実現のために今後の推移を見守りたいです。 時間はかかりますが、実現すればエリアバランスが取れた日本一魅力のあるまちになるでしょう。3期目は積極的にまちづくりにシフトしたいと考えています」 郡山商工会議所ホームページ 政経東北【2022年11月号】

  • 【郡山商工会議所】滝田康雄会頭インタビュー【2023.11】

    たきた・やすお 1944年生まれ。郡山市出身。安積高、学習院大法学部卒。東北アルフレッサ㈱最高顧問。郡山青年会議所理事長、郡山商工会議所青年部会長などを歴任。現在、会頭3期目。  新型コロナは収束していないが、経済活動はコロナ禍前の動きに戻りつつある。一方、円安や物価高の影響は深刻で、人手不足や後継者問題も解消に向かう気配は見えない。こうした中、商都・郡山の経済は今どういう状況にあるのか。郡山商工会議所の滝田康雄会頭に、管内情勢や会員事業所の様子、将来ビジョンなどを聞いた。  ――新型コロナウイルスが感染症法上の5類に移行され、管内でも7月にビール祭、8月にはうねめまつりが通常開催されるなどコロナ禍前の活気が戻りつつあると感じますが、滝田会頭は現状をどのように捉えていますか。  「『サマーフェスタ IN KORIYAMA・ビール祭』は7月下旬に3日間開催し、約5万9000人の人出がありました。ようやくイベントを楽しめるという雰囲気が会場にいた皆さんから感じ取ることができたと思います。出店者の方々は、地元の食材を扱う市内の飲食店でしたので、地域経済の活性化と地産地消につながりました。  また、今年のビール祭が成功した背景は、昨年に引き続いて街なかで開催したことにあると思います。昨年、コロナ拡大のリスクを理由に開催に否定的な意見もありましたが、私は感染対策をすれば問題ないと判断し、開催に踏み切りました。今思い返せば、停滞していた経済に大きな刺激になったのではないでしょうか。また、他の地域でも『郡山がやるならウチもやろう』というきっかけになったと聞いており、そういう意味でも、大きな意義があったと考えています。  翌週の8月上旬には、3日間にわたって『郡山うねめまつり』を開催し、約11万5000人の人出がありました。多くの参加団体も、それぞれが盛り上げようと意欲的に取り組んでくれました。市民の方々から、そして地域事業所などからは『開催してもらって大変良かった』と多くの声をいただき、コロナ禍前の日常を皆さんが求めているということを実感しました。  最後に、付言させていただきますが、忘れてならないのは実行委員会をはじめとする関係者の方々の頑張りです。開催準備はもちろん交通整理など、猛暑の中、それぞれの役割を果たしてくれたことが成功の一因であると言えます」  ――円安と物価高が深刻な問題となっています。人手不足や後継者問題も深刻です。事業者からはどんな声が聞かれていますか。  「円安基調が続く中、資材・エネルギー価格の高騰など構造的な物価高は多くの中小企業に悪影響を及ぼしています。  人手不足については、特に建設業や製造業及びホテル、祭事といったサービス業で、コロナの影響による労働者の転職が起こりましたが、これら業種の需要が回復しても人手が戻らず困惑しているようです。他業種においても、求人に応募がほとんどないようです。一方で従業員については、賃上げでつなぎ止めている状況もあると聞いています。  また、後継者問題では、経営者の多くが高齢になる中、苦しい経営環境に置かれている中小企業では、廃業や清算を余儀なくされるケースも増えています。  これらを解決するためには、原材料の値上げや人件費の増加分を事業者間の取引等において適切に価格転嫁することが重要でありますが、交渉すること自体が難しいという事業者の声も聞かれます」  ――国や県にはどのような対策を望みますか。  「円安や物価高は構造的な問題であり、多くの事業者が苦労しています。国や県には、人材不足の解消と生産性の向上、さらに適正な価格転嫁が図れるよう、現状をしっかりと検証して政策の展開を図ってほしいと思います。  特にDX化については、具体的にどこに課題があるか、といったことまで踏み込んで対応することが大切で、しっかりと事業者の意見を聞いて、IT人材の活用施策や助成金の拡充など支援体制に繋げてほしいと思います。  そして、中小企業の稼ぐ力が強化されることを望みたいです。事業者が生産性向上や価格転嫁による適正な利益が得られれば、賃上げや雇用の確保につながり、ひいては経済の好循環につながりますので」  ――ゼビオが宇都宮市への本社移転を発表したり、うすいから高級ブランドが撤退したり、日和田ショッピングモールが改装による長期休業に入ったり、来年5月にはイトーヨーカドー郡山店の閉店が発表されるなど、管内は目まぐるしい情勢にあります。それら企業で働く従業員はもちろん、消費者も一定の影響を受ける状況にありますが、会議所ではどのような対応をしていきたいと考えていますか。  「近年の消費動向を見ると、Eコマース(電子商取引)などの進展により、従来の商取引の形態が大きく様変わりしています。  今回、転出した個々の企業が生き残りをかけて新しい取り組みを選択されたと思いますので、その経営判断は尊重せざるを得ませんが、地元の発展にご尽力いただいた企業が郡山を離れることは、まちづくりにおいても地域経済においても大きな痛手です。行政には新たな発展の機会となる計画づくりを進めてほしいと思います。  また、撤退や建て替えまでの期間については地元雇用が失われないよう、各社とも改善策をしっかり講じてほしいと思います。会議所としては、できる限りの協力をしていきたいと考えています」  ――滝田会頭が就任以来掲げている、郡山の未来像を考える取り組み「グランドデザインプロジェクト」について、その進捗と手ごたえをお聞かせください。 「平成30年11月に開かれた常議員会で承認されたグランドデザインプロジェクト構想は、コロナ禍の影響もありましたが、令和3年には路線バス(福島交通)のバスロケーションシステムが導入され、また安積高校の併設型公立中高一貫校については、要望した後に検討する旨のお答えをいただき、令和7年開校が示されるなど、徐々に形になりつつあります。 その一助になったのは、地元で暮らす若者たちの斬新な発想にあると思っています。20年後、30年後の郡山を支えるのは今を生きる若者です。彼らが郡山の将来を考えなければ、住みよいまちは実現しません。若者が考えや意見を出し合い、私たちベテランはそれをサポートする。そういう姿が未来の郡山を形づくっていくのだと思います。 グランドデザインプロジェクトを通じて、提案だけにとどまるのではなく、一つでも具現化していくことを目指していきたいです」

  • 【郡山商工会議所】滝田康雄会頭インタビュー

     たきた・やすお 1944年生まれ。郡山市出身。安積高、学習院大法学部卒。東北アルフレッサ最高顧問。郡山青年会議所理事長、郡山商議所青年部会長などを歴任。  滝田康雄氏が郡山商工会議所会頭に再任され、3期目の任期がスタートした。1期目は震災・原発事故からの復興、2期目は新型コロナ禍への対応と10年、20年後を見据えた民間発想のまちづくり「郡山グランドデザイン」の具現化にまい進し、3期目は、中小企業の活力強化と地域経済の活性化についても取り組む。滝田氏に今後の方針と取り組みについて聞いた。  ――3期目の任期がスタートしました。抱負をお聞きします。 「これまでは、1期目(2016年11月)当時に東日本大震災・東電福島第一原発事故からの復旧・復興を念頭に『会員事業所の皆様がこの街に希望が持てるようにする』との姿勢で事業を推進してきました。3期目は『中小企業の活力強化』と『地域経済の活性化』をスローガンに掲げます。中小企業の活力強化については、業績の向上が課題です。そのために経営者の意識改革、専門人材の育成、補助金の活用促進に当会議所は『伴走型支援』で臨みます。 地域経済の活性化については、企業・団体が主体となって開催する大規模セミナーや国際会議、展示会などのビジネスイベントの誘致や広域連携を軸とした観光振興に取り組みます」 ――新型コロナが収束しない中、会員事業所からはどのような声が寄せられていますか。現状と郡山商議所の取り組みを教えてください。 「一般論として、内需拡大には至っていません。地域経済は、いまだ需要の回復途上にありますので、企業は、自助努力だけでは対応できない厳しい経営環境にあります。実質無担保無保証人の融資(ゼロゼロ融資)を活用し、緊急事態を耐えた事業所が多く、返済も厳しい状況にあると聞きます。 当会議所はウィズコロナの中、いかに事業を進めていくかを考えています。職員には、『コロナ禍だからだめ』なのではなく『コロナ禍だからこそこうしたい』と考えを転換せねばと訴えています。ビール祭も開催に対する懸念の声が寄せられました。中小企業の状態、飲食業、観光業を見るとこのままにしてはおけない。地域経済再生に向けて行動を起こそうという思いがあり、感染拡大防止策を入念にし、開催にこぎ着けました。 閉塞感が漂っていた中、開催したことで、『よくやってくれた』と市民の皆様や各業界から、大きな賞賛をいただきました。タクシーの運転手さんから『今までは商売にならなかったのに、フル回転で体がいくつあっても足りない』と聞いた時は嬉しかったです。会議所にわざわざお礼を言いに来てくださった方もいます。開催に向け奮闘した職員にも私からねぎらいの言葉を掛けたい。 今冬はイルミネーションを規模を拡大して取り組みます。新酒まつりと組み合わせて、イベントを計画しています。若い職員たちが考えてくれました。柔軟性がある企画で若者たちを頼りにしています。 もちろん、感染防止対策は大前提です。気を抜かずに、コロナ禍での地域経済活性化に取り組んでいきます」 ――昨年2月、今年3月と続いた福島県沖地震の影響も深刻です。管内への影響はどうですか。郡山商議所の取り組みについても教えてください。 「当会議所では、早くから国のグループ補助金活用に動き、会議所グループとして、46社約12億円の被害に対して8億6000万円の補助申請を支援しました。その他の被災事業者に対しては、事業継続力の強化を支援するためにBCP計画(企業継続計画)の策定に向けて、中小企業診断士・税理士などの専門家派遣や、福島県よろず支援拠点などと連携し、個別支援事業を実施しています」 ――円安と物価高騰も深刻な問題となっています。また、政府や県、市への要望がありましたら教えてください。 「中小企業は原材料の輸入割合が高いため、円安はデメリットの面が強いです。加えて、原油・原材料の高騰を価格に転嫁できていないようです。そのような中、最低賃金の引き上げや消費税インボイス制度の実施が求められています。必要性は理解できますが、運用面、技術面を含めて小規模事業者への負担が大きいです。政府や県、郡山市にはこれらの運用支援に加え、物価高対策と経営基盤の強化支援の必要性を訴えたいです。 また、適正な利益の確保・価格転嫁の円滑化が進められる制度の必要性を感じます。増加している新規開業の相談については、経営指導員による相談体制を強化して事業計画づくりを支援しておりますが、補助制度・フォローアップ事業等支援メニューの充実を求めたいです」   ――滝田会頭が就任以来掲げていた「若い世代のまちづくりへの参加」について、進展したことをお聞かせください。 「10年後、20年後の郡山をどうしたいかの観点から、当会議所では2018年に民間発の『グランドデザインプロジェクト』を打ち出しました。未来を担う若者の考えを重視しています。交通の中枢である郡山と近隣市町村のそれぞれの持ち味を生かして企業誘致を図ったり、行き来をしやすくするための鉄道利用の構想が盛り込まれるなど、魅力的な地域にすること、そして、人を集め、活性化を進めることを目的としています。 『夢のような話』に聞こえるかもしれませんが、まず理想を掲げなければ実現には至りません。理想の街をこれからの世代の視点で描き、そのために交通、企業、住環境を行政などと一緒に整えていきたいです。 若者の意見の具現化については、一歩ずつ進んでいます。バスロケーションシステムが実施されました。福島交通の路線バスにおいて、スマホアプリを活用することで簡単にバスの位置を把握でき、利便性が向上しました。 教育環境でも大きな進展がありました。安積高校が2025年度に中高一貫校になるとの決定がありました。県立の中高一貫校は会津地区の会津学鳳、浜通り地区のふたば未来学園に続き、安積は県内3校目で、県中地区では初となります。新しく設置される中学校では、高い学力や志を持った子どもたちの育成に力を注ぐことで次世代のリーダーを育成する拠点校となるよう、期待をしています。 歩きやすい道路については県が昨年度から事業に着手しています。歩いて暮らせるまちづくり実現のために今後の推移を見守りたいです。 時間はかかりますが、実現すればエリアバランスが取れた日本一魅力のあるまちになるでしょう。3期目は積極的にまちづくりにシフトしたいと考えています」 郡山商工会議所ホームページ 政経東北【2022年11月号】