し尿処理浄化槽清掃事業者に訴えられた田村市

し尿処理浄化槽清掃事業者に訴えられた田村市

田村市が発注するし尿処理収集運搬と浄化槽清掃を請け負う団体が、契約した請負代金を市から支払ってもらえず未払いがあるとして、昨年12月、市を相手取り未払い分2769万円の支払いを求める訴えを地裁郡山支部に起こした。なぜ市は、正式に契約した請負代金を支払わないのか。取材を進めると、市の顧問弁護士が話をこじらせ「無用な裁判」に発展させた疑いが見えてきた。(佐藤仁)

市長に背き調停を不成立にさせた滝田弁護士

意向に背いた疑いがある滝田三良弁護士
意向に背いた疑いがある滝田三良弁護士

田村市が現在の形でし尿処理収集運搬と浄化槽清掃を行うようになった背景には複雑な歴史がある。

市は田村郡の三春町、小野町と田村広域行政組合をつくり、同組合で田村地方全域のし尿処理やごみ処理などの生活衛生業務を行っていた。

その後、田村広域行政組合が稼働させていた二つのごみ焼却施設を一つに集約する案をめぐり田村市、小野町と三春町の間で意見の隔たりが浮上。田村市議会と小野町議会は集約案に賛成したが、三春町議会は集約に伴う運搬費の負担割合や使われなくなる施設の解体費などについて議論が尽くされていないとして、2018年1月と同年12月の二度にわたり継続審査とした経緯がある。

こうした状況に不快感を露わにしたのが、田村広域行政組合の代表理事を務めていた本田仁一・田村市長(当時)だった。本田市長は「田村市と小野町の理解に対する背反で、三春町と将来にわたる協調を探るのは困難」として、2019年に開かれた同市議会の3月定例会に同組合から脱退する議案を提出した。

三春町と小野町は「田村市が脱退したら組合は行き詰まり、住民生活に影響が及ぶ」と再考を促したが、本田市長は聞き入れず、同市議会の大勢も「脱退やむなし」だった。

田村市議会は2019年3月の臨時会で脱退に関する議案を可決。田村広域行政組合は4年の猶予を経て2023年3月31日で解散することが決まった(※)

※解散の詳しい経緯は本誌2019年4月号「田村広域行政組合『解散騒動』を追う 三春憎しで脱退を口走った本田・田村市長」を参照されたい。

田村広域行政組合で担っていた生活衛生業務は2023年4月から田村市、小野町、三春町でそれぞれ行うことになった。3市町は必要な資格・技術を持つ民間事業者に各業務を委託した。

こうした中で、田村市のし尿処理収集運搬と浄化槽清掃を請け負ったのが田村・片曽根特定事業共同企業体(田村市船引町。以下、田村・片曽根企業体と略)という団体だ。

生活衛生業務が田村広域行政組合から民間事業者に切り替わることを見越し、地元の設備業者や建設業者が集まって一般社団法人田村環境整備(田村市船引町、本田平佐代表理事=三立設備社長)と片曽根環境企業組合(田村市船引町、安瀬亨代表理事=伸和商会社長)という二つの団体が設立されたが、請負に向けた準備は田村環境整備の方が進んでいた。しかし、市は「両団体で協力して請け負ってほしい」と要請。背景には、どちらか一方に委託すれば請け負えなかったもう一方の準備が無駄になり、双方の間に軋轢が生じるのを避けたかったからとみられる。

両団体は市からの要請に応えるべく2022年12月に田村・片曽根企業体を設立。代表理事には田村環境整備代表理事の本田平佐氏が就き、同企業体で請け負う準備を進めた。

2023年1月23日、田村・片曽根企業体は市と正式に委託契約を交わした。契約期間は2023年4月1日から2026年3月31日までの3年間。委託料は消費税込みで3億3924万円。1年当たり1億1308万円の計算だ。

「とはいえ、我々は必要な資格や技術は有しているが、作業に必要な車両や器具は持っていなかった」

そう話すのは田村・片曽根企業体の本田代表だ。

「請負に当たっては、田村地方衛生処理センターの施設(事務所、車庫、休憩所、駐車場など)と、同センターが保有する車両や器具を無償で借りる契約になっていた」(同)

その代わり、市からは田村広域行政組合の解散により職を失う技能系職員や会計年度任用職員など14人の積極雇用を求められた。もともと現場で働いていた職員で必要な知識や技術を備えていたので、田村・片曽根企業体にとっても、職を失う職員たちにとっても、再就職先を世話しなければならなかった市にとっても〝三方よし〟の契約となった。

こうして民間事業者によるし尿処理収集運搬と浄化槽清掃は始まったが、業務開始から間もなく、思わぬトラブルが発生する。

「契約初年度(2023年4月1日~2024年3月31日まで)に市から払われたのは、委託料より少ない1億0169万円だった」(同)

前述の通り、契約では1年当たり1億1308万円が支払われることになっていたので、差し引き1139万円が支払われていないことになる。なぜか。

「業務が始まって最初(2023年4月分)の委託料を翌月に請求したら、市から『職員の実働は〇日なので、それに基づいた金額しか払わない』と言われたのです」(同)

市はいきなり「人夫出し」「日給払い」の考え方を持ち出してきたのだという。

「契約には人夫出しや日給払いとは一切書かれていない。3年間の委託料を3億3924万円と定めているだけ。市には契約通り払ってほしいと再三言ったが、聞き入れられなかった」(同)

あらためて田村・片曽根企業体と市が交わした契約書を確認すると、確かに委託料は3年間で3億3924万円と書かれている。人夫出しや日給払いの文字はない。

契約書の第5条には「市は必要がある場合は契約の内容を変更、または一部を一時中止させることができる。この場合、業務委託料または履行期間を変更する必要があるときは市、企業体で協議し書面で定める」、第14条には「契約について疑義が生じた時、または契約に定めのない事項については市、企業体で協議して決める」とあるが、本田代表は「市と協議したこともなければ書面を交わしたこともない」と憤る。

穏便な解決を望んだ市長

白石高司市長
白石高司市長

本田代表の主張が事実なら、市が一方的に契約を無視し支払うべき委託料を支払っていないことになる。

「その後も契約通り払ってほしいと求めると、市の担当者は口頭ではあったが『年度末に調整し、契約額との差額を払う』と約束した」(同)

しかし、1年目の2023年度が終了し、同年度の会計を確定させる出納整理期間(2024年4月1日から5月31日まで)を過ぎても未払い分は支払われなかった。

本田代表は自身が社長を務める三立設備で三春町のし尿処理収集運搬と浄化槽清掃を請け負っている。契約期間は2023年4月1日から2026年3月31日まで、3年分の委託料は1億7400万円(その後、1億5800万円に減額)。契約の交わし方は田村市と同じだが、三春町は契約通りの委託料を支払ってくれているという。

「田村・片曽根企業体では田村広域行政組合の元職員を組合時代と変わらない条件で再雇用している。そういう雇用条件を我々に強いておいて、市は実働分しか払わないというのはおかしくないか」(同)

状況は2年目の2024年度に入っても変わらず、田村・片曽根企業体が毎月のように契約通りの委託料を請求しても、市は実働分しか支払わなかった。この年も市の担当者から「年度末に差額を払う」と言われたが、約束は再び反故にされた。

このままではラチが明かないと判断した本田代表は3年目が始まった2025年4月、市を相手取り2023年度の未払い分と2024年4月から2025年2月までの未払い分、計3140万円の支払いを求める調停を郡山簡易裁判所に申し立てた。双方の代理人は田村・片曽根企業体が高橋金一弁護士(郡山市)、市が顧問を務める滝田三良弁護士(同)。

市が契約をめぐり事業者から調停を起こされるのは珍しいが、白石高司市長はトラブルに発展するのを避けるよう担当職員に指示していたという。市内の事情通が解説する。

「白石市長は問題点があるなら是正し、穏便に解決することを望んでいた。しかし、担当職員の事業者に対する態度が高圧的だったため、事業者は心証を悪くした。白石市長は調停になることを望んでいなかったと聞いている」

この話が事実なら、担当職員は白石市長の意向に背き、事態をこじれさせた疑いがある。

事情通は、滝田弁護士の責任にも言及する。

「契約に関する問題なので、担当職員は滝田弁護士に最初から相談していたはず。顧問弁護士の役割は、市に不利益が生じないよう法律的なアドバイスすることだ。今回の契約で言うと、三春町や小野町は事業者に契約通りの委託料を払っているので、なぜ田村市が支払いを拒むのか不可解。滝田弁護士は市に未払い分を払うよう促すべきだったのに、契約にない実働払いを持ち出しトラブルを長期化させた。白石市長や担当職員は『そんなやり方が通るの?』と思っても、法律の素人なので強く言えなかったそうだ」(同)

滝田弁護士が顧問弁護士としての役割を果たしていれば、調停に突入することなく事態の解決が図られていたかもしれなかったわけ。

公文書偽造の疑い

白石市長は望まない調停になったことを受け、滝田弁護士に「穏便に解決してほしい」と直接要請したという。ところが、ここでも滝田弁護士は白石市長の要請に背く。

調停資料の中に本田代表が激しく憤る箇所がある。滝田弁護士が簡易裁判所に提出した「企業体は実績払いとすることを了承していた」とする証拠資料だ。滝田弁護士は2025年6月20日付の第一準備書面の2ページにこう記している。

《相手方(※田村市)は「事業の継続の中で調整をしていく」と説明した内容に関して、相手方〈市民部部長鎌田氏、市民部環境課課長根本氏(いずれも当時)〉は、令和5年10月3日、一般社団法人田村環境整備吉田栄一氏に対し、本件業務の委託料の支払いは、実績に基づくものである旨を説明した。そのうえで、吉田氏は、「委託料の支払いについては承知した。本田代表にもその旨を説明する」と述べた》

市は実績払いにすることを田村・片曽根企業体を構成する田村環境整備の吉田氏に伝え、吉田氏もこれを了承し「本田代表にも伝える」という言質を取った、と主張している。

本誌の手元に、準備書面に名前が出てきた鎌田部長や根本課長の印鑑が押された市の会議等結果報告書がある。令和5年10月3日に、同じく名前が出てくる吉田氏と打ち合わせをした際の議事録だ。出席者はこの3人のみで、次のようなやりとりが記されている。

田村市「勤務実績による支払いについては1年程前にも話をさせていただいた。あくまで『人出し』のイメージである」

吉田代表「委託料の支払いの件については承知した。本田代表にもその旨説明する」

本田代表は言う。

「令和5年10月3日は業務1年目が始まって半年が経った頃。この時点で我々は実績払いに反発しているのに吉田氏が了承するはずがない。議事録には『本田代表に説明する』とあるが、吉田氏からそんな説明をされたこともない。そもそも吉田氏は、この議事録を見て『鎌田部長、根本課長とそんな話はしていない』と述べている。もしその場で『人出し』というキーワードが出たら反発していたとも言っていた」

要するに、滝田弁護士は発言していない内容が盛り込まれた〝偽造公文書〟を調停の証拠資料として提出した疑いがあるのだ。

「いくら委託料を払いたくないからといって公文書を偽造するのか。信じられない」(同)

滝田弁護士が市からどういう相談を受け、どういうアドバイスをしていたかは、市の情報公開制度に基づき、やりとりを記録した議事録などを開示するよう市に求めているところだ。詳細が分かれば続報する。

調停を決着させるために折れたのは田村・片曽根企業体の方だった。同企業体は市と契約を交わす前に作成した見積書の中で、1年間に発生する超過勤務手当を5人分×20日=280万円と見込んだ。しかし、実際は施設の稼働能力が不足し、超過勤務は発生しなかったため、超過勤務手当分に相当する年間300万円×3年分=900万円を委託料から差し引くことを市に提案した。

市(滝田弁護士)のゴネ得が通った格好で、市は「議会に諮る必要があるので、2025年9月定例会に関連議案を提出する」と受け入れる方針を示した。ところが、市はその後の庁内協議の結果、議会の同意を得られる見込みが薄いとして関連議案を提出しないことを決めた。

「市は委託料から900万円を差し引いてしまうと双方に利益供与、背任行為が疑われるリスクがあるなどと言い出して……」(同)

せっかく田村・片曽根企業体が歩み寄ったのに市が受け入れなかったため、調停は2025年11月に不成立となった。本田代表は本訴に切り替えることを決め、同年12月、市を相手取り2025年11月までの未払い分2769万円の支払いを求める訴えを地裁郡山支部に起こした。

無神経な市の仕事依頼

市は提訴されたことをどう受け止めているのか。事業の窓口になっている市市民部環境課に問い合わせたところ「係争中のためコメントできない」。白石市長にも取材を申し込んだが「法廷外で話すのは控えたい」と断られた。

今回のトラブルで明らかにしなければならないことは三つある。

一つは、担当職員が白石市長の意向に背いてトラブルを穏便に解決しなかったのはなぜか。担当職員は自分に都合の悪い情報を隠し、都合の良い情報だけを白石市長に報告していた可能性もある。委託料の支払いをめぐり、事業者とどんな話をしていたのか把握する必要がある。

二つは、滝田弁護士が白石市長の意向に背いて調停を不成立にし、訴訟に発展させたのはなぜか。前述の通り、滝田弁護士は顧問弁護士としての役割を果たしていない疑いがある。手数料や着手金を得たくて、無用な法廷闘争に持ち込んだ疑いすら浮上する。前述した市への情報開示請求で、どこまで見えてくるか。

三つは、白石市長が担当職員や滝田弁護士の暴走を止められなかったのはなぜか。白石市長が穏便な解決を望むなら担当職員、滝田弁護士に必要な指示をすべきだったのに、両者はその意向を無視した。見方を変えれば、部下や顧問弁護士に舐められた結果とも言える。トップとして事実関係を明らかにし、必要があれば処罰を科すべきだろう。

当面の課題も深刻だ。今年3月末で田村・片曽根企業体との3年契約が切れる。市は4月以降の委託先を探さなければならないが、地元で適格者を見つけるのは簡単ではない。そうした中、市は同企業団に「次年度も請け負ってほしい」と要請。裁判で争う相手方に「それはそれとして、仕事は引き続きやってくれないか」というのだ。

本田代表は呆れ返る。

「この3年間、ちゃんと委託料を払ってくれなかったのに、4月以降も頼むってどういう神経をしているのか。今のままだと、新たに契約を交わしても契約通り払ってくれない恐れがある。信用できない」

至極もっともな意見だが、もし自分たちが請け負わず、他に委託先が見つからなければ困るのは市民だ。再雇用した元職員も再び職を失う。本田代表の苦悩は深い。

発注者は、少々無理を言っても受注者は従うと思ったら大間違いだ。田村・片曽根企業体による提訴は、そのしっぺ返しと言っていい。

佐藤 仁

さとう・じん

1972(昭和47)年生まれ。栃木県出身。
新卒で東邦出版に入社。

【最近担当した主な記事】
ゼビオ「本社移転」の波紋
丸峰観光ホテル社長の呆れた経営感覚

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