今年、棚倉城築城400年を迎えたのを記念し、棚倉町では秋に記念式典や大名行列、「和」体験、歴史講演会などのイベントを開催する。多彩な催しを通して、棚倉町の歴史や魅力を発信する。
10月に記念イベント開催

棚倉城は、寛永2年(1625)、棚倉藩主・丹羽長重により築城された。棚倉城築城以前は、棚倉町内にあった赤館と呼ばれる山城で、佐竹氏と白河結城氏らによる攻防が繰り広げられ、最終的に佐竹氏が棚倉地方を支配した。やがて徳川氏の天下統一に伴い、佐竹氏が出羽国(秋田県)へ転封となった後、戦国時代屈指の猛将として知られる立花宗茂が棚倉の領主となった。
その後、江戸時代の元和8年(1622)、長重が棚倉藩主となり、平城である棚倉城を築いた。
棚倉城は、常陸国(茨城県)と接し、「奥羽地方の玄関口」という要衝の地を抑える役割を担っていたといわれている。長重は寛永4年(1627)に白河藩に移封となったが、その後を引き継いだ内藤信照によって、城下の整備が進められた。歴代城主には徳川譜代や親藩の家柄が相次いで任じられたが、幕末の戊辰戦争で落城した。
城の構造は、巨大な土塁と水堀で囲まれた長方形の本丸を中心に、二ノ丸、北西に位置する三ノ丸(林曲輪)で構成される。二ノ丸の西側崖部には石垣が築かれ、本丸の土塁上には二重隅櫓が4棟、一重櫓が1棟建てられていた。これらの櫓をつなぐ多門櫓は、東北地方の城郭の中で随一の規模を誇っていた。
棚倉城の別名「亀ケ城」は、堀にすむ大亀が水面に姿を現すと決まって城主が他国へ転封される――という言い伝えに由来する。城が完成しないまま丹羽長重が移封となり、城壁が荒土のままだったことから、当時は「新土城」とも呼ばれた。また、陸奥一宮近津明神を現在の同町馬場地区に遷した跡地に築かれたことから、「近津城」とも称された。
城跡は現在、亀ケ城公園として整備され、堀沿いの桜や土塁のツツジ、秋の紅葉など、四季を通して美しい景色が楽しめる。2019年には国の史跡に指定され、町のシンボルとなっている。
「あばれる君」が来町
棚倉城築城400年を記念し、棚倉町は秋に関連イベントを開催する。
①棚倉城築城400年記念イベント「上がる城 城熱 棚倉城フェスタ」
◇開催日時=10月25日(土)10時〜15時
◇開催場所=棚倉城跡内本丸エリア
◇主なイベント内容=「和」ゾーンでは、忍者体験や野点(屋外の風情を楽しみながらお茶を点てること)などを楽しめる。「飲食」ゾーンでは多数の出店やキッチンカーが並ぶ。和太鼓演奏や篠笛演奏などのステージイベントも行われる。
フェスタ開催に先立ち、棚倉城初代城主・丹羽長重の入城を再現した大名行列で華を添える。
②棚倉城御入城大名行列
◇開催日時=10月25日(土)11時〜12時30分
◇開催場所=JR磐城棚倉駅から棚倉城跡まで
◇主なイベント内容=大名行列では町内の小学生による鼓笛隊が演奏しながら先導し、丹羽長重役として、お笑い芸人の「あばれる君」、お姫様役として石川満里奈さん(ミス着物)が参加。JR磐城棚倉駅前では塙天領太鼓・封元による和太鼓演奏が行われる。
※現在、大名行列では、一般参加者を募集している。
③棚倉城築城400年記念式典・歴史講演会
◇開催日時=11月15日(土)
◇開催場所=棚倉町文化センター(倉美館)
◇主なイベント内容=記念式典では、宮川政夫町長ら関係者によるあいさつが行われる。
歴史講演会では、城郭考古学者として知られる千田嘉博氏が講師を務め、城の魅力を語る。棚倉藩歴代藩主の子孫によるトークセッション「棚倉城 噺」も予定されており、イベントのフィナーレには盛大に花火が打ち上げられる。
記念ロゴマークが完成

この間、棚倉城築城400年を記念したロゴマークも制作されている(図参照)。「亀ケ城」とも称される棚倉城の二ノ丸西面の石垣を亀の甲羅に見立ててデザインされている。数字の「400」には、城を彩る桜(ピンク)、町の花であるツツジ(赤)、築城以前から町を見守るケヤキ(緑)の色が用いられた。
東北の小京都
棚倉町は「東北の小京都」としても知られている。「小京都」とは、古い街並みや風情が京都に似ていることから名付けられたまちの総称。その起源は、室町時代以降に各地の大名が京都を模倣して街づくりを行った「都うつし」にあると言われる。
全国の「小京都」と呼ばれる自治体が加盟する「全国京都会議」という組織もある。京都とゆかりのある自治体が協力し、歴史や文化の魅力を発信して、観光誘客を図ることを狙いに、1985年、26市町と京都で結成された。昨年4月現在、38市町が名を連ねる。棚倉町は京都との縁が深いことから、2015年に承認されて一員となった。共同宣伝用のパンフレットやポスターの作成・配布など、広域的な観光キャンペーンを鋭意展開している。
棚倉城の歴史に触れ、築城400年を記念する多彩な事業を通じて、同町の魅力を再認識する絶好の機会となるだろう。ぜひこの節目のイベントを機に、棚倉町を訪れ、その歴史ロマンの奥行きを肌で感じてみてはいかがだろうか。
























