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見せかけだった土地改良区の「住民同意要求」 喜多方市で土壌汚染と地下水汚染を引き起こしている昭和電工(現レゾナック)は、会津北部土地改良区が管理する用水路への「処理水」排出を強行しようとしている。同社は同土地改良区と排水時の約束を定めた「覚書」を作成し、住民にも同意を迫っていたが、難航すると分かると同意を得ずに流そうとしている。同土地改良区の顔を潰したうえ、住民軽視の姿勢が明らかとなった。 昭和電工喜多方事業所の敷地内では、2020年に土壌汚染対策法の基準値を上回るフッ素、シアン、ヒ素、ホウ素による土壌・地下水汚染が発覚した。フッ素の測定値は最大で基準値の120倍。汚染は敷地外にも及んでいた。県が周辺住民の井戸水を調査すると、フッ素やホウ素で基準値超が見られた。フッ素は最大で基準値の4倍。一帯では汚染発覚から2年以上経った今も、ウオーターサーバーで飲料水を賄っている世帯がある。 原因は同事業所がアルミニウムを製錬していた40年以上前に有害物質を含む残渣を敷地内に埋めていたからだ。同事業所がこれまでに行った調査では、敷地内の土壌から生産過程で使用した履歴がないシアン、水銀、セレン、ヒ素が検出された。いずれも基準値を超えている。 対策として昭和電工は、 ①地下水を汲み上げて水位を下げ、汚染源が流れ込むのを防止 ②敷地を遮水壁で囲んで敷地外に汚染水が広がるのを防止 ③地下水から主な汚染物質であるフッ素を除去し、基準値内に収まった「処理水」を下水道や用水路に流す という三つを挙げている。「処理水」は昨年3月から市の下水道に流しており、1日当たり最大で300立方㍍。一方、用水路への排出量は計画段階で同1500立方㍍だから、主な排水経路は後者になる。 この用水路は会津北部土地改良区が管理する松野左岸用水路(別図)で、その水は農地約260㌶に供給している。同事業所は通常操業で出る水をここに流してきた。 周辺住民や地権者らは処理水排出に反対している。毎年、大雨で用水路があふれ、水田に濁流が流れ込むため、汚染土壌の流入を懸念しているのだ。昨年1月に希硫酸が用水路に流出し、同事業所から迅速かつ十分な報告がなかったことも、昭和電工の管理能力の無さを浮き彫りにした。以降、住民の反対姿勢は明確になった。 昭和電工はなぜ、反対を押しのけてまで用水路への排出を急ぐのか。考え...
昭和電工は2023年1月に「レゾナック」に社名変更する。高品質のアルミニウム素材を生産する喜多方事業所は研究施設も備えることから、いまだ重要な位置を占めるが、グループ再編でアルミニウム部門は消え、イノベーション材料部門の一つになる。土壌・地下水汚染対策に起因する2021年12月期の特別損失約90億円がグループ全体の足を引っ張っている。井戸水を汚染された周辺住民は全有害物質の検査を望むが、費用がかさむからか応じてはくれない。だが、不誠実な対応は今に始まったことではない。事業所は約80年前から「水郷・喜多方」の湧水枯渇の要因になっていた。 「昭和電工」から「昭和」の名が消える。2023年1月に「レゾナック」に社名変更するからだ。2020年に日立製作所の主要子会社・日立化成を買収。世界での半導体事業と電気自動車の成長を見据え、エレクトロニクスとモビリティ部門を今後の中核事業に位置付けている。社名変更は事業再編に伴うものだ。 新社名レゾナック(RESONAC)の由来は、同社ホームページによると、英語の「RESONATE:共鳴する、響き渡る」と「CHEMISTRY:化学」の「C」を組み合せて生まれたという。「グループの先端材料技術と、パートナーの持つさまざまな技術力と発想が強くつながり大きな『共鳴』を起こし、その響きが広がることでさらに新しいパートナーと出会い、社会を変える大きな動きを創り出していきたいという強い想いを込めています」とのこと。 新会社は「化学の力で社会を変える」を存在意義としているが、少なくとも喜多方事業所周辺の環境は悪い方に変えている。現在問題となっている、主にフッ素による地下水汚染は1982(昭和57)年まで行っていたアルミニウム製錬で出た有害物質を含む残渣を敷地内に埋め、それが土壌から地下水に漏れ出したのが原因だ。 同事業所の正門前には球体に座った男の子の像が立つ=写真。名前は「アルミ太郎」。地元の彫刻家佐藤恒三氏がアルミで制作し、1954(昭和29)年6月1日に除幕式が行われた。式当日の写真を見ると、着物を着たおかっぱの女の子が白い布に付いた紐を引っ張りお披露目。工場長や従業員とその家族、来賓者約50人がアルミ太郎と一緒に笑顔で写真に納まっていた。アルミニウム産業の明るい未来を予想させる。 2018年の同事業所CSRサイトレポートによると「...
昨年11月下旬、南会津町の福島県南会津合同庁舎で県職員とみられる中年男性が死亡していたという。同庁舎で何が起きていたのか、一部の町民の間でウワサになっている。 町民の話を総合すると、職員が亡くなっていたのは11月22~23日で、朝、出勤した職員が発見した。「中年男性が土壌などを調べる部屋で倒れていた」、「パトカーや救急車が出入りして車を囲んでいた」、「現場の状況から判断する限り、自ら命を絶った可能性が高い」という。 同庁舎には南会津地方振興局、南会津農林事務所、南会津建設事務所、南会津教育事務所が入っている。同庁舎を管理している振興局に確認したところ、「(亡くなった職員がいるという)話があったのは事実」と認めたものの、年齢や性別、所属部署、死因については「職員や遺族のプライバシーを尊重する観点」から詳細な説明を避けた。 「仮に何らかの事故で亡くなっていたり、殺人事件などに巻き込まれたとしたら、周りの住民は不安になる。行政機関として、ある程度は公表する義務があるのではないか」とただしたところ、「今回は公表する事例には当たらないと判断した」と話した。こうした回答から判断する限り、自ら命を絶った可能性が高い。 職場を最期の場所に選んだのには、どんな背景があったのか。組織として改善すべき問題があった可能性も考えられるが、同振興局は口を閉ざし、詳細も報道されていない。
【戦力外110kgおじさん】福島県内在住おじさんユーチューバーの素顔 テレビ離れが進む昨今、ユーチューブの全世代の利用率は9割だ。本誌の読者層であるシニア世代も、パソコンやスマートフォンで毎日のようにユーチューブを見ている人は多いはず。数あるチャンネルの中には、県内で活動するユーチューバーも多数存在する。その中に、異色のジャンル「車中泊&グルメ」系で人気を誇る「戦力外110kgおじさん(43歳)」がいる。なぜ視聴者はこのチャンネルにハマるのか、本人へのインタビューをもとに、その謎に迫ってみたい。 週末夜のキャンプ場。辺り一面、真っ暗の中、ポツンと明かりが灯る1台のプリウス。その車の後部座席で、一人焼肉をしながらチューハイ「ストロングゼロ」をキメる――。そんな様子をユーチューブに配信している男性がいる。男性の名は「戦力外110kgおじさん」(以下、戦力外さんと表記)。戦力外さんのユーチューブのチャンネル登録者数は10・5万人。1つの動画が配信されれば20万回再生するのは当たり前で、中にはミリオン(100万回再生)に届きそうな動画も複数ある。 / 「110kg」という名の通りの巨漢が、決して広いとは言えないセダンタイプのプリウスの後部座席で、好きなものをたらふく食べ、大酒を飲む。そんな動画がなぜ多くの人に見られ、そして見続けられるのか。 戦力外さんの動画はチャンネルを開設してすぐに〝バズった〟(人気が出た)わけではない。 戦力外さんがユーチューブに動画を配信し始めたのは2020年2月。当初は釣りの動画を配信していたが、再生回数は数十回程度で、チャンネル登録者数も伸びなかった。 浮上のきっかけとなったのは「顔出し」だった。 戦力外さんは「正直なところ、40代である自分らの世代ってネットで顔出しするなんて気が狂っているというか、抵抗があったんですよね」と話す。今の40代は、匿名性の高い「2ちゃんねる」などを見てきた世代であり、「インターネットでは絶対に顔を出すな」と言われてきた世代でもある。それでも、戦力外さんは再生回数を伸ばしたい一心で顔出しを決意した。 「顔出ししたら登録者が100人を超えたんですよ。ユーチューブには『チャンネル登録者数100人の壁』というのがあります。そこを自力で超えられると、収益化の条件である『チャンネル登録者数1000人・総再生時...
介護業界の人手不足が招いた悲劇 小野町の特別養護老人ホーム「つつじの里」に入所していた植田タミ子さん(94)を暴行・殺害したとして田村署小野分庁舎は12月7日、同施設の介護福祉士・冨沢伸一容疑者(41)を逮捕した。内情を知る人物によると、同施設では以前から容疑者に関する問題点が上司に告げられていたが、きちんとした対応が行われていなかったようだ。事件を受けて行われた県と同町の特別監査でも、運営状況に問題が見つかった。 *脱稿時点で冨沢容疑者は起訴されていないため、 この稿では「容疑者」と表記する 「つつじの里」は2019年9月に開所。全室個室・ユニット型で定員29床。同施設を運営するのは社会福祉法人かがやき福祉会(小野町谷津作、山田正昭理事長)。 事件は容疑者逮捕の2カ月前に起きていた。 昨年10月9日、個室のベッドで植田さんが亡くなっているのを冨沢容疑者が発見し、同施設の看護師に連絡した。嘱託で勤務する主治医の診断で、死因は「老衰」とされた。しかし、不審に思った施設関係者が翌日、警察に通報。警察は遺族から遺体を引き取り、11日に司法解剖を行った結果、下腹部などに複数のあざや皮下出血が見つかった。死因は一転して「外傷性の出血性ショック」に変わった。 第一発見者の冨沢容疑者は10月8日夜から9日朝にかけ、同僚と2人で夜勤をしていた。警察は10日の通報で、冨沢容疑者による暴行の可能性を告げられたため、本人や職員を任意で事情聴取したり、防犯カメラの映像を解析するなど慎重に捜査を進めていた。同施設は事件後、冨沢容疑者を自宅待機させていた。 冨沢容疑者は任意の事情聴取では事件への関与を否定。しかし、逮捕後の取り調べでは「被害者を寝付かせようとしたが、なかなか寝ずイライラした」「排泄を促すため下腹部を圧迫したが殺そうとはしていない」(朝日新聞県版12月10日付)と暴行を一部認めつつ殺意は否認した。 「殺意はなかった? じゃあ、体中にあざができていた理由はどう説明するのか。殺意がなければ、あれほどのあざはできない」 そう憤るのは、亡くなった植田タミ子さんの長男で須賀川市の会社役員・植田芳松さん(65)。芳松さんによると、遺体が自宅に戻った際、首元にあざを見つけ不審に思ったが、直後に警察が引き取っていったため体の状態を詳しく見ることができなかった。司法解剖を終え、あら...
本誌昨年2月号に「棄却された田村バイオマス住民訴訟 控訴審、裁判外で『訴え』続ける住民団体」という記事を掲載した。田村市大越町に建設されたバイオマス発電所に関連して、周辺の住民グループが起こした住民訴訟で昨年1月25日に地裁判決が言い渡され、住民側の請求が棄却されたことなどを伝えたもの。 その後、住民グループは昨年2月4日付で控訴し、6月17日には1回目の控訴審口頭弁論が行われた。裁判での住民側の主張は「事業者はバグフィルターとHEPAフィルターの二重の安全対策を講じると説明しており、それに基づいて市は補助金を支出している。しかし、安全確保の面でのHEPAフィルター設置には疑問があり、市の補助金支出は不当」というものだが、原告側からすると「一審ではそれらが十分に検証されなかった」との思いが強い。 ただ、二審では少し様子が違ったようだ。 「一審では、実地検証や本田仁一市長(当時)の証人喚問を求めたが、いずれも却下された。バグフィルターとHEPAフィルターがきちんと機能しているかを確認するため、詳細な設計図を出してほしいと言っても、市側は守秘義務がある等々で出さなかった。フィルター交換のチェック手順などの基礎資料も示されなかった。結局、二重のフィルターが本当に機能しているのか分からずじまいで、HEPAフィルターに至っては、本当に付いているのかも確認できなかった。にもかかわらず、判決では『安全対策は機能している』として、請求が棄却された。ただ、控訴審では、裁判長が『HEPAフィルターの内容がはっきりしない。具体的資料を出すように』と要求した」(住民グループ関係者) そのため、住民グループは「二審では、その辺を明らかにしてくれそうで、今後に期待が持てた」と話していた。 その後、8月26日に2回目、11月18日に3回目の口頭弁論が開かれた。3回目の口頭弁論で、同期日までに提出された書類を確認した後、裁判長は「これまでに提出された資料から、この事件の判決を書くことが可能だと思う。控訴人から出されている証人尋問申請、検証申立、文書提出命令申立、調査嘱託申立は、必要がないと考えるので却下する。本日で結審する」と宣言した。 原告(住民グループ)の関係者はこう話す。 「被告はわれわれの様々な指摘に『否認する』と主張するだけで、何ら具体的な説明をせず、データや資料なども出...
【大内彩加】飯舘村出身女優が語る性被害告発の真相 飯舘村出身の俳優・大内彩加さん(29)が、所属する劇団の主宰者、谷賢一氏(40)から性行為を強要されたとして損害賠償を求めて提訴している。谷氏は「事実無根」と法廷で争う方針だが姿を見せず「無実」の説明もしていない。谷氏は原発事故後に帰還が進む双葉町に単身移住。浜通りを拠点に演劇の上演や指導を計画していた。大内さんは、「劇団員にしてきたように福島でも性暴力を起こすのではないか」と恐れ、被害公表に踏み切った。(小池航) 谷氏から性被害を受けたと大内さんがネットで公表したのは昨年12月15日。翌16日からは谷氏の新作劇が南相馬市で上演される予定だったが、被害の告発を重く見た主催者は中止を決定。谷氏は自身のブログで、大内さんの主張は「事実無根および悪意のある誇張」とし、司法の場で争う方針を示している。 谷賢一氏はどのような人物か。本人のブログなどによると、郡山市生まれで、小学校入学前までを石川町で過ごし、千葉県柏市で育った。明治大学で演劇学を専攻し、英国に留学。2005年に劇団「DULL-COLORED POP(ダルカラードポップ)」を旗揚げした。大内さんが所属しているのがこの劇団だ。 自身のルーツが福島県で、父親は技術者として東京電力福島第一原発で働いていたという縁。さらに、原発の在り方に疑問を抱いていたことから、作品化を目指して2016年夏から取材を始めた。事故を起こした福島第一原発がある双葉町などを訪れ、2年の執筆と稽古を重ねて福島県と原発の歴史をテーマにした一連の舞台「福島三部作」に仕上げた。 作品は2019年に東京や大阪、いわき市で一挙上演。連日満員で、小劇場作品としては異例の1万人を動員した。その戯曲は20年に鶴屋南北戯曲賞と岸田國士戯曲賞を同時受賞した。谷氏が昨年10月に双葉町に移住したのは、何度も訪れるうちに愛着が湧き、放っておけなくなったからという。 性被害を受けた大内彩加さんは、飯舘村出身。南相馬市の原町高校2年生の時に東日本大震災・原発事故を経験した。放送部に所属し、避難先の群馬県の高校では朗読の全国大会に出場。卒業後は上京して芝居を学び、イベントの司会や舞台で活躍してきた。2015年からは故郷・飯館村をPRする「までい大使」を務めている。 大内さんが東京で活動しているころ、谷氏が福島三部作に出演...
福島県内ワーストは会津若松市「北柳原交差点」 一般社団法人・日本損害保険協会は昨年10月26日、最新の「全国交通事故多発交差点マップ」を公表した。同マップには都道府県別に人身事故が多い交差点ワースト5が掲載されている。それを基に、県内ワーストとなった交差点での人身事故のケースなどを検証すると同時に、あらためて事故防止のためにどういったことを心がければいいか考えていきたい。 一般社団法人・日本損害保険協会の広報担当者によると、「全国交通事故多発交差点マップ」は、交差点・交差点付近での交通事故防止・軽減を目的に、各都道府県の地方紙(記者)の協力を得て作成したという。データは2021年のもので、毎年、同時期に更新されている。同マップでは、都道府県別に人身事故が多い交差点ワースト5が掲載され、人身事故のケースや交差点の特徴、予防策などが紹介されている。 マップとともに掲載されたリポートによると、福島県全体の過去5年の人身事故件数、死傷者数の推移は別表の通り。人身事故の発生件数、死傷者数ともに年々減少傾向にあることが分かる。 一方で、2021年の人身事故2997件のうち、1653件(55・2%)が交差点とその付近で発生している。こうして見ても、やはり交差点とその付近はより注意が必要であることが分かっていただけよう。 では、実際にどこの交差点での人身事故が多かったのか。 ワースト1は、会津若松市一箕町の「北柳原交差点」だった。国道49号と国道118号が交差するところだ。さらに、そこから600㍍ほど東側に行ったところにある「郷之原交差点」がワースト2タイになっている(地図参照)。 もっとも、ワースト1の「北柳原交差点」とその付近で起きた人身事故は5件、ワースト2タイの「郷之原交差点」とその付近は4件だったから、びっくりするほど多いというわけではない。 ちなみに、そのほかのワースト2タイは、いわき市常磐の「下船尾交差点」、同市小名浜の「御代坂交差点」、郡山市横塚の「横塚三丁目交差点」喜多方市一本木上の「塗物町交差点」、福島市渡利の「渡利弁天山交差点」、同市仲間町の「仲間町交差点」の計6カ所。 その中から、今回はワースト1の会津若松市一箕町の「北柳原交差点」と、そのすぐ近くにある「郷之原交差点」について検証してみる。 まず「北柳原交差点」だが、国道49号と国道118号...
「職の選択肢少なくキャリアも積めない」 人口減少が加速する本県。昨年11月現在の推計人口は178万8873人で、ついに180万人を切った。その背景には若い女性が進学・就職を機に県外に転出し、出生数が減っていることがある。本県から女性が去っていく背景には何があるのか、さまざまな女性の〝本音〟に耳を傾けた。 昨年10月9日付けの福島民報に衝撃的な記事が掲載された。転出者が転入者を上回る「転出超過」により、女性が直近10年間でどの程度減少したか全国で比較したところ、本県が最多だったというのだ。 総務省の住民基本台帳人口移動報告によると、2012年から21年までの本県転出超過総数は6万3528人。内訳は男性2万2245人、女性4万1283人。 本県以外で女性の転出超過が多かったのは北海道、長崎県、新潟県、岐阜県など。大都市圏から遠い、もしくは本県同様、大都市圏に近かったり交通面で移動しやすい県が目立つ。逆に東京都をはじめ首都圏は女性の転入超過となっている。 第一の原因として考えられるのは、震災・原発事故の影響だ。3・11以降、避難指示区域はもちろん、区域外でも放射能汚染を懸念して、県外に母子避難する人が相次いだ。 転出超過は2011年3万1381人(男性1万3798人、女性1万7583人)、12年1万3843人(男性5714人、女性8129人)に上った。その後、公共工事の復興需要などを背景に男性は14、15の両年、転入超過となったが、女性は転出超過が続いている。直近21年の3572人は全国2位の多さだ。 2021年の女性の転出超過の内訳をみると、15~19歳27%(977人)、20~24歳62%(2216人)と、若い世代が全体の9割近くを占める。進学・就職で県外に転出していると思われる。 若い女性が県内から減れば出生数も減っていく。2020年の出生数は1万1215人。10年は1万6126人。10年間で約5000人減った。それに伴い人口減少も加速しており、180万人を切っている。 東北活性化研究センターは2020年、東北出身の女性2300人にインターネット調査を実施した。その結果、東京圏に住み続ける女性は「『選択肢が多くて希望の進学先がある』という理由で東京の教育機関に進学し、『希望の職種の求人が多い』という理由で東京圏で就職した」という傾向がみられ...
内部文書で判明した「刑務官の異変放置」 2022年3月25日、福島刑務所(福島市)の6人が収容された1室で、60歳の男性受刑者が意識不明の状態で見つかった。受刑者は病院に搬送され、3日後に死亡。同室の複数人から日常的に殴る蹴るの暴行を受けていた。傷害の罪に問われた3人の裁判では、脳梗塞の影響で失禁を繰り返していた被害者にいら立ち、標的にしていたことが判明。刑務官が事態を放置していたことも内部文書で明らかになり、同刑務所の管理体制が問われている。(敬称略) 福島刑務所は、執行刑期が10年未満で犯罪傾向が進んでいる(B指標)か、外国人(F指標)の男性受刑者が収容される。2022年3月25日付の同刑務所「処遇日報」によると、定員は1655人で、898人を収容していた(収容率54・3%)。 集団暴行が繰り返されていたのは、3舎2階にある52室。けがや病気などで身体に障害を抱えた男性受刑者6人が入室していた。被害者はタカサカシンイチ。福島民友2020年11月25日付によると、同名の「高坂進一」が郡山市内で乗用車を盗んだとして逮捕されている。タカサカは2022年2月21日に52室に転室した。 タカサカは、先に入室していた受刑者たちから頭や顔、胸腹部などを殴られ、打撲や肋骨骨折などのけがを負った。暴行を受けて死亡しているため傷害致死の疑いも残るが、加害者3人が裁かれたのは傷害罪のみ。主犯は小林久(ひろし)(47)=本籍郡山市、従犯は佐々木潤(49)=同京都市、菊池巧(35)=同矢祭町。全員前科がある累犯者で、小林と菊池は窃盗、佐々木は強制わいせつの罪で懲役刑を受け服役していた。従犯2人は罪を認め、福島地裁は10月19日に懲役1年(求刑懲役1年2月)を言い渡した。主犯の小林は共謀を認めておらず、審理が続いている。 公判での証言から、52室で日常化していた集団暴行をたどる。 主犯の小林は2022年1月5日、F受刑者と一緒に転室してきた。佐々木が翌6日、S受刑者が同31日、最後にタカサカと菊池が2月21日に転室した。全員、身体が不自由だった。裁判では加害者3人が車椅子に乗って入廷し、証言台に立つのも刑務官2人に支えられていた。加えて、死亡したタカサカは脳梗塞の後遺症で失禁を繰り返していたという。 同室者たちは、そんなタカサカと悪臭にいら立っていた。「寝ている時にトイレに行けばいい...
見せかけだった土地改良区の「住民同意要求」 喜多方市で土壌汚染と地下水汚染を引き起こしている昭和電工(現レゾナック)は、会津北部土地改良区が管理する用水路への「処理水」排出を強行しようとしている。同社は同土地改良区と排水時の約束を定めた「覚書」を作成し、住民にも同意を迫っていたが、難航すると分かると同意を得ずに流そうとしている。同土地改良区の顔を潰したうえ、住民軽視の姿勢が明らかとなった。 昭和電工喜多方事業所の敷地内では、2020年に土壌汚染対策法の基準値を上回るフッ素、シアン、ヒ素、ホウ素による土壌・地下水汚染が発覚した。フッ素の測定値は最大で基準値の120倍。汚染は敷地外にも及んでいた。県が周辺住民の井戸水を調査すると、フッ素やホウ素で基準値超が見られた。フッ素は最大で基準値の4倍。一帯では汚染発覚から2年以上経った今も、ウオーターサーバーで飲料水を賄っている世帯がある。 原因は同事業所がアルミニウムを製錬していた40年以上前に有害物質を含む残渣を敷地内に埋めていたからだ。同事業所がこれまでに行った調査では、敷地内の土壌から生産過程で使用した履歴がないシアン、水銀、セレン、ヒ素が検出された。いずれも基準値を超えている。 対策として昭和電工は、 ①地下水を汲み上げて水位を下げ、汚染源が流れ込むのを防止 ②敷地を遮水壁で囲んで敷地外に汚染水が広がるのを防止 ③地下水から主な汚染物質であるフッ素を除去し、基準値内に収まった「処理水」を下水道や用水路に流す という三つを挙げている。「処理水」は昨年3月から市の下水道に流しており、1日当たり最大で300立方㍍。一方、用水路への排出量は計画段階で同1500立方㍍だから、主な排水経路は後者になる。 この用水路は会津北部土地改良区が管理する松野左岸用水路(別図)で、その水は農地約260㌶に供給している。同事業所は通常操業で出る水をここに流してきた。 周辺住民や地権者らは処理水排出に反対している。毎年、大雨で用水路があふれ、水田に濁流が流れ込むため、汚染土壌の流入を懸念しているのだ。昨年1月に希硫酸が用水路に流出し、同事業所から迅速かつ十分な報告がなかったことも、昭和電工の管理能力の無さを浮き彫りにした。以降、住民の反対姿勢は明確になった。 昭和電工はなぜ、反対を押しのけてまで用水路への排出を急ぐのか。考え...
昭和電工は2023年1月に「レゾナック」に社名変更する。高品質のアルミニウム素材を生産する喜多方事業所は研究施設も備えることから、いまだ重要な位置を占めるが、グループ再編でアルミニウム部門は消え、イノベーション材料部門の一つになる。土壌・地下水汚染対策に起因する2021年12月期の特別損失約90億円がグループ全体の足を引っ張っている。井戸水を汚染された周辺住民は全有害物質の検査を望むが、費用がかさむからか応じてはくれない。だが、不誠実な対応は今に始まったことではない。事業所は約80年前から「水郷・喜多方」の湧水枯渇の要因になっていた。 「昭和電工」から「昭和」の名が消える。2023年1月に「レゾナック」に社名変更するからだ。2020年に日立製作所の主要子会社・日立化成を買収。世界での半導体事業と電気自動車の成長を見据え、エレクトロニクスとモビリティ部門を今後の中核事業に位置付けている。社名変更は事業再編に伴うものだ。 新社名レゾナック(RESONAC)の由来は、同社ホームページによると、英語の「RESONATE:共鳴する、響き渡る」と「CHEMISTRY:化学」の「C」を組み合せて生まれたという。「グループの先端材料技術と、パートナーの持つさまざまな技術力と発想が強くつながり大きな『共鳴』を起こし、その響きが広がることでさらに新しいパートナーと出会い、社会を変える大きな動きを創り出していきたいという強い想いを込めています」とのこと。 新会社は「化学の力で社会を変える」を存在意義としているが、少なくとも喜多方事業所周辺の環境は悪い方に変えている。現在問題となっている、主にフッ素による地下水汚染は1982(昭和57)年まで行っていたアルミニウム製錬で出た有害物質を含む残渣を敷地内に埋め、それが土壌から地下水に漏れ出したのが原因だ。 同事業所の正門前には球体に座った男の子の像が立つ=写真。名前は「アルミ太郎」。地元の彫刻家佐藤恒三氏がアルミで制作し、1954(昭和29)年6月1日に除幕式が行われた。式当日の写真を見ると、着物を着たおかっぱの女の子が白い布に付いた紐を引っ張りお披露目。工場長や従業員とその家族、来賓者約50人がアルミ太郎と一緒に笑顔で写真に納まっていた。アルミニウム産業の明るい未来を予想させる。 2018年の同事業所CSRサイトレポートによると「...
昨年11月下旬、南会津町の福島県南会津合同庁舎で県職員とみられる中年男性が死亡していたという。同庁舎で何が起きていたのか、一部の町民の間でウワサになっている。 町民の話を総合すると、職員が亡くなっていたのは11月22~23日で、朝、出勤した職員が発見した。「中年男性が土壌などを調べる部屋で倒れていた」、「パトカーや救急車が出入りして車を囲んでいた」、「現場の状況から判断する限り、自ら命を絶った可能性が高い」という。 同庁舎には南会津地方振興局、南会津農林事務所、南会津建設事務所、南会津教育事務所が入っている。同庁舎を管理している振興局に確認したところ、「(亡くなった職員がいるという)話があったのは事実」と認めたものの、年齢や性別、所属部署、死因については「職員や遺族のプライバシーを尊重する観点」から詳細な説明を避けた。 「仮に何らかの事故で亡くなっていたり、殺人事件などに巻き込まれたとしたら、周りの住民は不安になる。行政機関として、ある程度は公表する義務があるのではないか」とただしたところ、「今回は公表する事例には当たらないと判断した」と話した。こうした回答から判断する限り、自ら命を絶った可能性が高い。 職場を最期の場所に選んだのには、どんな背景があったのか。組織として改善すべき問題があった可能性も考えられるが、同振興局は口を閉ざし、詳細も報道されていない。
【戦力外110kgおじさん】福島県内在住おじさんユーチューバーの素顔 テレビ離れが進む昨今、ユーチューブの全世代の利用率は9割だ。本誌の読者層であるシニア世代も、パソコンやスマートフォンで毎日のようにユーチューブを見ている人は多いはず。数あるチャンネルの中には、県内で活動するユーチューバーも多数存在する。その中に、異色のジャンル「車中泊&グルメ」系で人気を誇る「戦力外110kgおじさん(43歳)」がいる。なぜ視聴者はこのチャンネルにハマるのか、本人へのインタビューをもとに、その謎に迫ってみたい。 週末夜のキャンプ場。辺り一面、真っ暗の中、ポツンと明かりが灯る1台のプリウス。その車の後部座席で、一人焼肉をしながらチューハイ「ストロングゼロ」をキメる――。そんな様子をユーチューブに配信している男性がいる。男性の名は「戦力外110kgおじさん」(以下、戦力外さんと表記)。戦力外さんのユーチューブのチャンネル登録者数は10・5万人。1つの動画が配信されれば20万回再生するのは当たり前で、中にはミリオン(100万回再生)に届きそうな動画も複数ある。 / 「110kg」という名の通りの巨漢が、決して広いとは言えないセダンタイプのプリウスの後部座席で、好きなものをたらふく食べ、大酒を飲む。そんな動画がなぜ多くの人に見られ、そして見続けられるのか。 戦力外さんの動画はチャンネルを開設してすぐに〝バズった〟(人気が出た)わけではない。 戦力外さんがユーチューブに動画を配信し始めたのは2020年2月。当初は釣りの動画を配信していたが、再生回数は数十回程度で、チャンネル登録者数も伸びなかった。 浮上のきっかけとなったのは「顔出し」だった。 戦力外さんは「正直なところ、40代である自分らの世代ってネットで顔出しするなんて気が狂っているというか、抵抗があったんですよね」と話す。今の40代は、匿名性の高い「2ちゃんねる」などを見てきた世代であり、「インターネットでは絶対に顔を出すな」と言われてきた世代でもある。それでも、戦力外さんは再生回数を伸ばしたい一心で顔出しを決意した。 「顔出ししたら登録者が100人を超えたんですよ。ユーチューブには『チャンネル登録者数100人の壁』というのがあります。そこを自力で超えられると、収益化の条件である『チャンネル登録者数1000人・総再生時...
介護業界の人手不足が招いた悲劇 小野町の特別養護老人ホーム「つつじの里」に入所していた植田タミ子さん(94)を暴行・殺害したとして田村署小野分庁舎は12月7日、同施設の介護福祉士・冨沢伸一容疑者(41)を逮捕した。内情を知る人物によると、同施設では以前から容疑者に関する問題点が上司に告げられていたが、きちんとした対応が行われていなかったようだ。事件を受けて行われた県と同町の特別監査でも、運営状況に問題が見つかった。 *脱稿時点で冨沢容疑者は起訴されていないため、 この稿では「容疑者」と表記する 「つつじの里」は2019年9月に開所。全室個室・ユニット型で定員29床。同施設を運営するのは社会福祉法人かがやき福祉会(小野町谷津作、山田正昭理事長)。 事件は容疑者逮捕の2カ月前に起きていた。 昨年10月9日、個室のベッドで植田さんが亡くなっているのを冨沢容疑者が発見し、同施設の看護師に連絡した。嘱託で勤務する主治医の診断で、死因は「老衰」とされた。しかし、不審に思った施設関係者が翌日、警察に通報。警察は遺族から遺体を引き取り、11日に司法解剖を行った結果、下腹部などに複数のあざや皮下出血が見つかった。死因は一転して「外傷性の出血性ショック」に変わった。 第一発見者の冨沢容疑者は10月8日夜から9日朝にかけ、同僚と2人で夜勤をしていた。警察は10日の通報で、冨沢容疑者による暴行の可能性を告げられたため、本人や職員を任意で事情聴取したり、防犯カメラの映像を解析するなど慎重に捜査を進めていた。同施設は事件後、冨沢容疑者を自宅待機させていた。 冨沢容疑者は任意の事情聴取では事件への関与を否定。しかし、逮捕後の取り調べでは「被害者を寝付かせようとしたが、なかなか寝ずイライラした」「排泄を促すため下腹部を圧迫したが殺そうとはしていない」(朝日新聞県版12月10日付)と暴行を一部認めつつ殺意は否認した。 「殺意はなかった? じゃあ、体中にあざができていた理由はどう説明するのか。殺意がなければ、あれほどのあざはできない」 そう憤るのは、亡くなった植田タミ子さんの長男で須賀川市の会社役員・植田芳松さん(65)。芳松さんによると、遺体が自宅に戻った際、首元にあざを見つけ不審に思ったが、直後に警察が引き取っていったため体の状態を詳しく見ることができなかった。司法解剖を終え、あら...
本誌昨年2月号に「棄却された田村バイオマス住民訴訟 控訴審、裁判外で『訴え』続ける住民団体」という記事を掲載した。田村市大越町に建設されたバイオマス発電所に関連して、周辺の住民グループが起こした住民訴訟で昨年1月25日に地裁判決が言い渡され、住民側の請求が棄却されたことなどを伝えたもの。 その後、住民グループは昨年2月4日付で控訴し、6月17日には1回目の控訴審口頭弁論が行われた。裁判での住民側の主張は「事業者はバグフィルターとHEPAフィルターの二重の安全対策を講じると説明しており、それに基づいて市は補助金を支出している。しかし、安全確保の面でのHEPAフィルター設置には疑問があり、市の補助金支出は不当」というものだが、原告側からすると「一審ではそれらが十分に検証されなかった」との思いが強い。 ただ、二審では少し様子が違ったようだ。 「一審では、実地検証や本田仁一市長(当時)の証人喚問を求めたが、いずれも却下された。バグフィルターとHEPAフィルターがきちんと機能しているかを確認するため、詳細な設計図を出してほしいと言っても、市側は守秘義務がある等々で出さなかった。フィルター交換のチェック手順などの基礎資料も示されなかった。結局、二重のフィルターが本当に機能しているのか分からずじまいで、HEPAフィルターに至っては、本当に付いているのかも確認できなかった。にもかかわらず、判決では『安全対策は機能している』として、請求が棄却された。ただ、控訴審では、裁判長が『HEPAフィルターの内容がはっきりしない。具体的資料を出すように』と要求した」(住民グループ関係者) そのため、住民グループは「二審では、その辺を明らかにしてくれそうで、今後に期待が持てた」と話していた。 その後、8月26日に2回目、11月18日に3回目の口頭弁論が開かれた。3回目の口頭弁論で、同期日までに提出された書類を確認した後、裁判長は「これまでに提出された資料から、この事件の判決を書くことが可能だと思う。控訴人から出されている証人尋問申請、検証申立、文書提出命令申立、調査嘱託申立は、必要がないと考えるので却下する。本日で結審する」と宣言した。 原告(住民グループ)の関係者はこう話す。 「被告はわれわれの様々な指摘に『否認する』と主張するだけで、何ら具体的な説明をせず、データや資料なども出...
【大内彩加】飯舘村出身女優が語る性被害告発の真相 飯舘村出身の俳優・大内彩加さん(29)が、所属する劇団の主宰者、谷賢一氏(40)から性行為を強要されたとして損害賠償を求めて提訴している。谷氏は「事実無根」と法廷で争う方針だが姿を見せず「無実」の説明もしていない。谷氏は原発事故後に帰還が進む双葉町に単身移住。浜通りを拠点に演劇の上演や指導を計画していた。大内さんは、「劇団員にしてきたように福島でも性暴力を起こすのではないか」と恐れ、被害公表に踏み切った。(小池航) 谷氏から性被害を受けたと大内さんがネットで公表したのは昨年12月15日。翌16日からは谷氏の新作劇が南相馬市で上演される予定だったが、被害の告発を重く見た主催者は中止を決定。谷氏は自身のブログで、大内さんの主張は「事実無根および悪意のある誇張」とし、司法の場で争う方針を示している。 谷賢一氏はどのような人物か。本人のブログなどによると、郡山市生まれで、小学校入学前までを石川町で過ごし、千葉県柏市で育った。明治大学で演劇学を専攻し、英国に留学。2005年に劇団「DULL-COLORED POP(ダルカラードポップ)」を旗揚げした。大内さんが所属しているのがこの劇団だ。 自身のルーツが福島県で、父親は技術者として東京電力福島第一原発で働いていたという縁。さらに、原発の在り方に疑問を抱いていたことから、作品化を目指して2016年夏から取材を始めた。事故を起こした福島第一原発がある双葉町などを訪れ、2年の執筆と稽古を重ねて福島県と原発の歴史をテーマにした一連の舞台「福島三部作」に仕上げた。 作品は2019年に東京や大阪、いわき市で一挙上演。連日満員で、小劇場作品としては異例の1万人を動員した。その戯曲は20年に鶴屋南北戯曲賞と岸田國士戯曲賞を同時受賞した。谷氏が昨年10月に双葉町に移住したのは、何度も訪れるうちに愛着が湧き、放っておけなくなったからという。 性被害を受けた大内彩加さんは、飯舘村出身。南相馬市の原町高校2年生の時に東日本大震災・原発事故を経験した。放送部に所属し、避難先の群馬県の高校では朗読の全国大会に出場。卒業後は上京して芝居を学び、イベントの司会や舞台で活躍してきた。2015年からは故郷・飯館村をPRする「までい大使」を務めている。 大内さんが東京で活動しているころ、谷氏が福島三部作に出演...
福島県内ワーストは会津若松市「北柳原交差点」 一般社団法人・日本損害保険協会は昨年10月26日、最新の「全国交通事故多発交差点マップ」を公表した。同マップには都道府県別に人身事故が多い交差点ワースト5が掲載されている。それを基に、県内ワーストとなった交差点での人身事故のケースなどを検証すると同時に、あらためて事故防止のためにどういったことを心がければいいか考えていきたい。 一般社団法人・日本損害保険協会の広報担当者によると、「全国交通事故多発交差点マップ」は、交差点・交差点付近での交通事故防止・軽減を目的に、各都道府県の地方紙(記者)の協力を得て作成したという。データは2021年のもので、毎年、同時期に更新されている。同マップでは、都道府県別に人身事故が多い交差点ワースト5が掲載され、人身事故のケースや交差点の特徴、予防策などが紹介されている。 マップとともに掲載されたリポートによると、福島県全体の過去5年の人身事故件数、死傷者数の推移は別表の通り。人身事故の発生件数、死傷者数ともに年々減少傾向にあることが分かる。 一方で、2021年の人身事故2997件のうち、1653件(55・2%)が交差点とその付近で発生している。こうして見ても、やはり交差点とその付近はより注意が必要であることが分かっていただけよう。 では、実際にどこの交差点での人身事故が多かったのか。 ワースト1は、会津若松市一箕町の「北柳原交差点」だった。国道49号と国道118号が交差するところだ。さらに、そこから600㍍ほど東側に行ったところにある「郷之原交差点」がワースト2タイになっている(地図参照)。 もっとも、ワースト1の「北柳原交差点」とその付近で起きた人身事故は5件、ワースト2タイの「郷之原交差点」とその付近は4件だったから、びっくりするほど多いというわけではない。 ちなみに、そのほかのワースト2タイは、いわき市常磐の「下船尾交差点」、同市小名浜の「御代坂交差点」、郡山市横塚の「横塚三丁目交差点」喜多方市一本木上の「塗物町交差点」、福島市渡利の「渡利弁天山交差点」、同市仲間町の「仲間町交差点」の計6カ所。 その中から、今回はワースト1の会津若松市一箕町の「北柳原交差点」と、そのすぐ近くにある「郷之原交差点」について検証してみる。 まず「北柳原交差点」だが、国道49号と国道118号...
「職の選択肢少なくキャリアも積めない」 人口減少が加速する本県。昨年11月現在の推計人口は178万8873人で、ついに180万人を切った。その背景には若い女性が進学・就職を機に県外に転出し、出生数が減っていることがある。本県から女性が去っていく背景には何があるのか、さまざまな女性の〝本音〟に耳を傾けた。 昨年10月9日付けの福島民報に衝撃的な記事が掲載された。転出者が転入者を上回る「転出超過」により、女性が直近10年間でどの程度減少したか全国で比較したところ、本県が最多だったというのだ。 総務省の住民基本台帳人口移動報告によると、2012年から21年までの本県転出超過総数は6万3528人。内訳は男性2万2245人、女性4万1283人。 本県以外で女性の転出超過が多かったのは北海道、長崎県、新潟県、岐阜県など。大都市圏から遠い、もしくは本県同様、大都市圏に近かったり交通面で移動しやすい県が目立つ。逆に東京都をはじめ首都圏は女性の転入超過となっている。 第一の原因として考えられるのは、震災・原発事故の影響だ。3・11以降、避難指示区域はもちろん、区域外でも放射能汚染を懸念して、県外に母子避難する人が相次いだ。 転出超過は2011年3万1381人(男性1万3798人、女性1万7583人)、12年1万3843人(男性5714人、女性8129人)に上った。その後、公共工事の復興需要などを背景に男性は14、15の両年、転入超過となったが、女性は転出超過が続いている。直近21年の3572人は全国2位の多さだ。 2021年の女性の転出超過の内訳をみると、15~19歳27%(977人)、20~24歳62%(2216人)と、若い世代が全体の9割近くを占める。進学・就職で県外に転出していると思われる。 若い女性が県内から減れば出生数も減っていく。2020年の出生数は1万1215人。10年は1万6126人。10年間で約5000人減った。それに伴い人口減少も加速しており、180万人を切っている。 東北活性化研究センターは2020年、東北出身の女性2300人にインターネット調査を実施した。その結果、東京圏に住み続ける女性は「『選択肢が多くて希望の進学先がある』という理由で東京の教育機関に進学し、『希望の職種の求人が多い』という理由で東京圏で就職した」という傾向がみられ...
内部文書で判明した「刑務官の異変放置」 2022年3月25日、福島刑務所(福島市)の6人が収容された1室で、60歳の男性受刑者が意識不明の状態で見つかった。受刑者は病院に搬送され、3日後に死亡。同室の複数人から日常的に殴る蹴るの暴行を受けていた。傷害の罪に問われた3人の裁判では、脳梗塞の影響で失禁を繰り返していた被害者にいら立ち、標的にしていたことが判明。刑務官が事態を放置していたことも内部文書で明らかになり、同刑務所の管理体制が問われている。(敬称略) 福島刑務所は、執行刑期が10年未満で犯罪傾向が進んでいる(B指標)か、外国人(F指標)の男性受刑者が収容される。2022年3月25日付の同刑務所「処遇日報」によると、定員は1655人で、898人を収容していた(収容率54・3%)。 集団暴行が繰り返されていたのは、3舎2階にある52室。けがや病気などで身体に障害を抱えた男性受刑者6人が入室していた。被害者はタカサカシンイチ。福島民友2020年11月25日付によると、同名の「高坂進一」が郡山市内で乗用車を盗んだとして逮捕されている。タカサカは2022年2月21日に52室に転室した。 タカサカは、先に入室していた受刑者たちから頭や顔、胸腹部などを殴られ、打撲や肋骨骨折などのけがを負った。暴行を受けて死亡しているため傷害致死の疑いも残るが、加害者3人が裁かれたのは傷害罪のみ。主犯は小林久(ひろし)(47)=本籍郡山市、従犯は佐々木潤(49)=同京都市、菊池巧(35)=同矢祭町。全員前科がある累犯者で、小林と菊池は窃盗、佐々木は強制わいせつの罪で懲役刑を受け服役していた。従犯2人は罪を認め、福島地裁は10月19日に懲役1年(求刑懲役1年2月)を言い渡した。主犯の小林は共謀を認めておらず、審理が続いている。 公判での証言から、52室で日常化していた集団暴行をたどる。 主犯の小林は2022年1月5日、F受刑者と一緒に転室してきた。佐々木が翌6日、S受刑者が同31日、最後にタカサカと菊池が2月21日に転室した。全員、身体が不自由だった。裁判では加害者3人が車椅子に乗って入廷し、証言台に立つのも刑務官2人に支えられていた。加えて、死亡したタカサカは脳梗塞の後遺症で失禁を繰り返していたという。 同室者たちは、そんなタカサカと悪臭にいら立っていた。「寝ている時にトイレに行けばいい...