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福島市役所に勤めていた会計年度任用職員の男性が、上司から大声で怒鳴られるなどの対応を取られたことで精神的ストレスを抱え、任期を迎える前に自主退職した。男性は「同市役所のパワハラ対策には欠陥がある」と訴える。 救済策で差を付けられる非正規職員 福島市で上司からパワハラを受けたと訴えるのは三条徹さん(仮名、44)。奥羽大卒。民間企業を経て、警察官を目指したものの叶わなかったため、国や県の非正規職員として働いてきた。福島市には2年前に会計年度任用職員として採用され、農業振興課生産振興係で勤務していた。 仕事内容は正規職員の事務補助。1年目に課長から頼まれてチラシの新しい整理方法を導入したところ、市長賞を受賞しやりがいを感じた。食堂、売店などが整備されていて働きやすかった。そのため2年目も継続して働くことにした。 ところが、その直後から、直属の上司である係長の態度が急変した。 他の職員とは冗談を言いながら話すときもあるのに、三条さん相手となると、不機嫌そうな表情を浮かべる。仕事の報告・面談時間の確認に対し、「そんなこと俺知らねえし」、「面談でも何でも結構でございますけどー」などと返された。 毎年実施している作業や、他の正規職員から頼まれた作業に従事しているときも、「なぜそんな無駄なことをやっているのか」、「そんな作業は他に仕事がないときにやってください!」と三条さんだけ怒鳴られた。次第に三条さんは係長と話すことに恐怖心を抱くようになった。 「私の仕事ぶりがダメで、つい注意してしまうというなら、いっそ1年目が終わった時点で契約を打ち切ってほしかった」(三条さん) この係長は特定の職員に厳しく当たる癖があり、前年まで三条さんはその姿を他人事のように見ていた。 例えば別部署に異動した後も残務処理のため、たびたび農業振興課に訪れていた職員がいた。係長は顔を合わせるたび「まずあんたのことが信用できない。どうやったら私に信用してもらえるか考えないと」と繰り返し注意していた。「それだけ言われるということは仕事が遅い人なのだな。ダメな人だな」と思っていた。 しばらくすると、別の若手職員が連日注意されるようになった。「何でやってないの!? 君の言うことは信用できないし、聞くに値しない!」と怒鳴る声が、部署の端にいる三条さんにも聞こえて来た。若手職員は新年度、別の部署に異動していった。「大変だな」と見ていたが、まさか次は自分が厳しく言われる側に回るとは考えていなかった。 「自分が至らないから係長にこれだけ怒られるのだ」と言い聞かせて仕事を続けていた三条さんだったが、昨年12月ごろになると、毎日のように理不尽な理由で怒られるようになった。精神的に限界を迎えた三条さんは人事課に駆け込み相談した。改善につながることを期待したが、そうしている間に、三条さんにとって決定的な出来事が起きた。 三条さんの始業時間は9時15分。毎朝、始業時間の少し前に出勤し、カウンターをアルコールで拭き、鉢植えの花に水をあげ、周りを雑巾で拭いてから、新聞のスクラップをするのがルーチンワークだった。 ところが、その日に限って係長が始業時間前に三条さんを呼び止め、「新聞のスクラップは終わったのか!?」と尋ねた。「私の始業時間は9時15分からでは……」と恐る恐る答えると、嫌みを込めたトーンで「それは大変申し訳ありませんでした」と言われた。 勤怠状況を管理しているのは係長で、始業時間を知らないはずはない。連日さまざまな理由で怒鳴られていたが、ついに始業開始前から始まるルーチンワークにまでイチャモンを付けられるようになったのか――。心が折れた三条さんは課長に抗議の意味を込めて辞表を提出した。 当初、課長は係長のパワハラについて「気付かなかった」として、「有休を使って休んでいる間に考えよう」と退職を考え直すよう言ってくれた。だが、1月に入ると態度を一変。「辞表は受理してしまったし、気に入らないことがあると辞表を出す人間だと課に知れ渡ってしまった。課のみんなもどう接していいか分からない」と突き放された。 やむなく正式に退職の事務手続きを進めるため、人事課を訪ねると、前回相談した職員が顔を出し、「すみません、あの後、コロナになっちゃって」と謝ってきた。精神的に限界を迎えて相談したにもかかわらず、他の職員への引き継ぎも行われず、放置されたままになっていたのだ。 「せめて一言連絡しようとは考えなかったのか、不思議でなりません」(三条さん) あらためて同市の形式にのっとった辞表を提出するよう求められ、人事課職員に言われた通り、退職理由を「一身上の都合により」と書いて提出。結局、1月末で退職した。 離職後、失業保険の手続きや転職先探しのためにハローワークに行った三条さんは退職理由の詳細を聞かれて、素直に「パワハラを受けたから」と答えた。退職理由を書き換えるための申立書を渡されたので、係長にパワハラを受けたこと、人事課に相談に乗ってもらえなかったことを書いて市に送った。市からの返事は、所属長である農業振興課長による「パワハラではなく『指導』の範囲内だった」というものだった。 「パワハラについて『気付かなかった』と話していた課長がなぜ『指導の範囲内だった』と言えるのでしょうか。辞表提出後、課長は『今回の件で俺の評定も下がっただろう』とも話していたが、『指導の範囲内』なら評定が下がるわけがありませんよね。いろいろ矛盾しているんです」(三条さん) 周知不足の相談窓口 福島市役所 実は福島市役所内にはパワハラなどのハラスメントの被害に遭った職員の相談を受ける窓口があった。 一つは公平委員会。地方公務員法第7条に基づき、職員の利益保護と公正な人事権の行使を保護するための第三者機関として設置されている。主な業務は①勤務条件に関する措置の要求、②不利益処分についての審査請求、③苦情相談。福島市の場合、総務課が担当課になっている。苦情を申し立てれば、双方に事情を聞くなどの対応を取ってもらえたはずだ。 だが、三条さんは在職時に公平委員会の存在を知らず、人事課の担当者に相談した際も紹介されることはなかった。 市では3年ほど前から、パワハラ被害などに悩む市職員に、弁護士を紹介する取り組みも始めている。ところが、ポスターなどで周知されているわけではなく、正規職員に支給されるパソコンでのみ表示される仕組みになっていた。会計年度任用職員には、個別のパソコンを支給されていない。そのため、三条さんはそんな制度があることすら知らなかった。退職後に制度を利用させてほしいと頼んだが、「もう職員じゃないので難しい」と断られた。 福島市役所職員労働組合は正規職員により構成されているが、会計年度任用職員からの相談も受け付けている。ただ、三条さんは市職労に相談しようと思いつきもしなかった。 パワハラ自体の問題に加え、相談窓口が十分に周知されていない問題もあることが分かる。 「このままでは自分と同じような目に遭う職員が出る」。三条さんは木幡浩市長宛てに再発防止策を講じるよう手紙を出したほか、市総務課に公益通報したが、何の回答もなかった。労働基準監督署や県労働委員会に行って、「もし福島市職員からパワハラ相談があったら、相談窓口があることを教えてください」と伝えた。マスコミにもメールで情報提供したが、動きは鈍かった。 木幡浩市長 ちなみに本誌にもメールを送ったそうだが、システムのトラブルなのかメールは届いていなかった。唯一月刊タクティクス7月号で報じられたが、大きな話題になることはなく、あらためて本誌に情報提供したという経緯だった。 元会計年度任用職員の訴えを市はどう受け止めるのか。人事課の担当者はこのように話す。 「当事者(三条さん)から相談を受けた後、所属長である農業振興課長が係長に聞き取りしたが、本人は発言の内容をはっきり覚えていませんでした。多少大きな声で指導したのかもしれませんが、捉え方は人によって異なるし、それが果たしてパワハラに当たるのかどうか。人事課では農業振興課長と面談し対策を講じようとしていたが、(三条さんが)辞表を提出した。展開が早くて、弁護士の制度を紹介したり、パワハラの有無を調査する間もなかった、というのが正直なところです。パワハラがあったかどうかは、市としても顧問弁護士などと相談して検討する話。双方にしっかり話を聞くなど、調査を行わずに断言はできません」 パワハラの事実を認めないばかりか、人事課で相談を放置していたことを棚に上げ、「調査する前に退職したのでパワハラの有無は分からない」と主張しているわけ。 ちなみに人事課への相談が放置されていた件に関しては「人事に関する相談はデリケートな問題なので、一つの案件を一人で継続して担当するようにしている。そうした中でうまく引き継ぐことができなかった」と他人事のように話した。 「誰にでも大声を出していた」 一方でこの担当者はこのようにも説明した。 「農業振興課長の報告によると、係長は興奮すると誰にでも大きな声を出して熱くなることがあった。その人だけに嫌がらせをしていたわけではないという意味で、パワハラと言い切れるのだろうか、と。そういう点からも、市としては、『一連の対応はパワハラではなく業務上の範囲内だった』という認識ですが、態度によってはパワハラと受け取られる可能性があるということで、あらためて農業振興課長が係長に指導を行いました」 三条さんだけでなく、誰にでも大声で怒鳴ることがある職員だったのでパワハラには当たらない、というのだ。厚生労働省によると、パワハラの定義は「職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えるまたは職場環境を悪化させる行為」。市の解釈だと、特定の人物に対してでなければ、どれだけ精神的苦痛を与えてもパワハラには当てはまらないことになる。 人事課担当者は「管理職を対象としたハラスメント研修を定期的に実施している」と話すが、この間のやり取りを踏まえると、正しい知識のもとで行われているか疑問だ。 気になったのは、人事課の担当者が、三条さんが退職した経緯についてこのように述べたことだ。 「(三条さんは)係長への抗議的な意味合いで辞表を出したようですが、同じ部署で働きづらい部分もあるし、もうやめるしかないんじゃないか、という流れで退職に至ったと聞いています」 前述の通り、三条さんは課長から「辞表は受理してしまったし、気に入らないことがあると辞表を出す人間だと課に知れ渡ってしまった」と言われ、退職を促された、と主張していた。三条さんの見解とは違う形で報告されていることが分かる。 ちなみに課長、係長はともに今春の人事異動で農業振興課から異動になっており、どちらも降格などにはなっていなかった。 三条さんがいなくなった後の農業振興課ではどんなことが起きていたか共有され、再発防止策は講じられているのか。4月に赴任した長島晴司課長に確認したところ、「当然共有されています。ああいったことがあると、職場の雰囲気は悪くなるし、係の職員も疲弊する。そうした雰囲気の改善に努めており、併せてパワハラと受け取られるような指導はしないようにあらためて気を付けています」と話した。 厚労省指針は守られているのか 地方公務員の職場実態に詳しい立教大学コミュニティ福祉学部の上林陽治特任教授によると、「厚労省の指針では職場におけるハラスメントに関する相談窓口を設置して労働者に周知するよう定められている」という。 上林特任教授が執筆を担当した『コンシェルジュデスク地方公務員法』では公務員のハラスメント対策について、次のように記されている。 《部下は、パワーハラスメントを受けていても、上司に対してパワーハラスメントであることを伝えることは難しい。とりわけ、非正規職員のような有期雇用職員は、次年度以降の雇用の任命権者が直属の上司の場合が多いため、なおさら相談しにくい。したがって、上司以外の信頼できる職場の同僚、知人等の身近な人やより上位の人事当局、相談窓口等に相談することが必須となる》 《相談窓口・相談機関は、事業主の雇用管理上講ずべき措置の内容の中では重要な位置取りをしめ、厚生労働省のパワハラ防止指針では、相談への対応のための窓口をあらかじめ定め、労働者に周知することとし、相談窓口担当者は、①相談に対し、その内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること、②相談窓口については、職場におけるパワーハラスメントが現実に生じているだけでなく、その発生のおそれがある場合や、職場におけるパワーハラスメントに該当するか否か微妙な場合であっても、広く相談に対応し、適切な対応を行うようにすることが求められているとしている》 昨年、市が公表した「福島市人事行政の運営等の状況について」という文書によると、2021年度における公平委員会の業務状況は、不利益処分に関する不服申立1件、職員の苦情の申立1件のみ。 職員からの苦情がない快適な職場なのか、それとも公平委員会の存在自体を知らない人が多いだけか。いずれにしても厚労省通知に定められている労働者への周知が行われているとは言い難い印象を受ける。 もっというと、会計年度任用職員にはパソコンが支給されていなかったので、弁護士相談制度に触れられなかったというのは、結果的に正規職員と非正規職員で相談窓口の案内に差が出た形になる。同じ中核市である郡山市、いわき市にも確認したが、そのような差はなかった。すぐに解消すべきではないか。 現在は福島市内の別の場所で働いている三条さん。「私のような思いをする人がこれ以上出てほしくない。いまさら謝罪や責任追及を求めているわけではない。市役所は閉鎖的でおそらく自浄作用はない。だからこそ、報道を通していかに福島市のパワハラ対応がダメか、多くの人に知ってもらい、少しでも体制改善につながればと思っている」と訴えた。福島市はまずパワハラ対策の周知から始めるべきだ。
大玉村議会は9月4日、改選後初の臨時会を開き、議長に押山義則氏(75)、副議長に武田悦子氏(64)を新任したが、押山氏をめぐっては村民から「議長にふさわしくない」との声が寄せられている。 議長選で一派の2人が白票 正副議長選は議員12人による無記名投票で行われ、このうち議長選は押山氏5票、本多保夫氏(71)4票、白票3票という結果だった。白票が25%を占めるのは異例だが、本来であれば押山氏はもっと得票してもおかしくなかったという。 「順当なら7票、上手くいけば9票入ったかもしれないのに、蓋を開けたら5票。押山氏の信用の低さが露呈した形です」(ある議会通) 押山氏はいわゆる村長派で、現在3期目の押山利一村長(73)が初当選後につくられた「大玉創生会」の副会長として活動してきた。同会は県議会や市議会に見られるような会派ではなく、勉強会という位置付けになっているが、議会内に支持基盤がなかった押山村長を支える目的で発足したため、メンバーは自然と村長派に色分けされる。 発足から8年が過ぎ、8月6日投開票の村議選を経てメンバーが入れ替わった大玉創生会は、別掲の7人で引き続き押山村長を支えていくことになる。 これに倣えば、押山氏は議長選で7票獲得してもいいはずなのに、実際はそれより2票少ない5票だったため「信用が低い」と見なされたわけ。 「新人の3氏は全員押山氏に投票したが、投票前には『本当に押山氏でいいのか』とかなり悩んだ人もいたそうだから、場合によっては5票も取れずに〝落選〟していた可能性もあった」(同) 押山氏は大玉村出身。郡山工業高校(現、郡山高校)卒。設計事務所や同村役場勤務などを経て村内と郡山市内に飲食店を開業したが、新型コロナの影響で閉店。改選前は副議長を務めていた。 押山氏の信用の低さはどこから来ているのか。 複数の村民によると、村議選前、押山氏にまつわる二つのウワサが急浮上した。一つは昔の出来事、もう一つは最近の出来事だが(真偽不明のため、この稿で取り上げるのは控える)、そのウワサが影響して、もともと選挙は強くないが陣営の予想より得票数が減ったのではないかと訳知り顔で話す村民もいた。 「要するに大玉創生会のメンバーは、議長選で押山氏に投票すれば支持者から『なぜ、あいつに入れたんだ』と突き上げを食らうことを恐れたのでしょう」(同) だからメンバーは、普段は同じ村長派でも、議長選では投票しなかった、あるいは投票したけどかなり悩んだというわけ。 筆者はある新人議員に取材を申し込んだが「遠慮させてほしい」とのことだった。 「大玉村は『財界ふくしま』が詳報した『山ろく交流センター』の建設をめぐる問題で混乱し、今回の村議選では押山村長に近い新人を複数当選させることで議会の安定を図ろうとした。そして実際、そういう議会構成になったのに、村長派の筆頭である押山氏に対しては『議長にふさわしくない』との判断が働いた。議長は村長と連携を密にし、スムーズな議会運営を行う役割があるが、各議員が押山議長の言うことをどこまで聞くか気掛かりです」(同) 前述の通り議長選では白票が3票あったが、このうちの2票は共産党の須藤軍蔵氏(78)と前出・武田氏であることが分かっている。 須藤氏に話を聞いた。 「私は押山氏も本多氏も議長にふさわしくないと思ったから白票を入れた。ただそれだけです」 現在10期目の須藤氏だが、正副議長選で白票が3票を数えたことは記憶にないという。 須藤氏は自宅のすぐ近くで進められた「山ろく交流センター」の建設に賛成し、本多氏は反対していたため、本多氏を議長には推せないと判断したが、押山氏をふさわしくないと思った理由は何だったのか。 押山氏にまつわる二つのウワサは須藤氏も村議選の期間中、何度も耳にしたというが、 「ウワサが本当かどうかは確かめようがないので、それに基づいて押山氏を評価したりはしない。ただ議長選前には、押山氏が議長にふさわしくないと思う私なりの理由を本人に直接伝え『だから私はあなたには投票できない』とハッキリ言いましたよ」(同) 須藤氏は「私なりの理由」を明言しようとはしなかったが、村民の間からは 「日常生活に苦労する村民が少なくない中、押山氏は『自分は(お金に)余裕がある』みたいな、村民に寄り添っていない発言が目に付いて……。そういう他人の痛みを分からない人が、議会を代表する議長に就くなんてとんでもない」 と、議員としての資質を疑う声が聞かれた。二つのウワサだけが押山氏の信用を低下させている理由ではないことがうかがえる。 「私の生き様は他人と違う」 押山義則議長 実は、共産党の2議員は執行部に是々非々の立場を取っているが、押山村政に反発することはほとんどないため、実質村長派という見方をされている。そうなると、議長選では押山氏に投票しても不思議ではないのだが、実際は白票だった、と。冒頭で議会通が「9票の可能性もあった」と言ったのは、大玉創生会(7票)と共産党(2票)を合わせた数を指している。 押山氏本人は議長選の結果をどのように受け止めているのか。 「私の生き様は少々他人と違っているので、いろいろ言われてしまうのは致し方ないと思っています。大玉創生会をベースに考えれば、議長選では私に7票入ってしかるべきだが、前の正副議長選でも〝造反〟というか同じようなことが起きているので、特段気にしていません」 議長選の直前には共産党の2議員にも自分への投票を呼びかけたが、断られたという。 「私は自分から議長になりたいとは一言も言っていない。各議員の期数や副議長を務めた立場から『今回は押山さんじゃないか』となり、そう言っていただいた以上は議長選で勝てるよう最善を尽くしただけ。その結果、5票には感謝しているし、白票の3票も、もし本多氏に入っていたら計7票で私は負けていたわけだから、感謝しています」(同) 押山氏は自身の議員活動を振り返り、今まで一般質問を欠かしたことがないこと、村議会基本条例の策定に奔走したこと、議員定数削減を強く主張したこと等々を話した。 「そんな私の活動を『目立とうとしている』とか『定数削減なんて余計なことを言うな』とか、よく思わない議員がいたのは事実でしょう。設計事務所や飲食店での仕事ぶりを見て眉をひそめる人もいたかもしれません。しかし、私としてはどれも必死にやったことなので、後悔は一切ありません」(同) 大玉村をめぐっては、かつて万引き犯の汚名を着せられた議長や学歴が正確ではないと指摘された議員を本誌で取り上げたことがある。当時の村長が村民に訴えられた、いわゆる「ヤマツツジ訴訟」をリポートしたこともある。今回の出来事を見るにつけ、同村は定期的に騒動が起きている印象を受ける。 ともかく、押山氏が村民や議員から「議長にふさわしい」との評価を得られるかは、これからの振る舞いや発言にかかっている。
受給対象ではない住居手当を7年8カ月にわたり受け取っていたとして、矢吹町の30代男性職員が戒告の懲戒処分を受けた。 報道や関係者の情報によると、この男性職員は2013年2月から賃貸物件を契約し、住居手当1カ月2万6700円を受給していた。 2015年10月に賃貸物件を引き払い、実家に住むようになったが、住居手当の変更手続きを怠り、同年11月から今年6月までの7年8カ月分、245万6000円を受給していた。職員は届け出を「失念していた」と話している。また、町もこの間、支給要件を満たしているかどうかの確認をしていなかった。 本人の届け出により発覚し、不適切受給した分は全額返還された。 同町総務課によると、毎月渡される給与明細に住居手当の金額は記されている。それを確認せず7年もの間手当をもらい続けたということになる。本当に故意ではなかったのか、それとも住居手当のルール自体よく理解せずもらっていたのか。 懲戒処分は免職、停職、減給(6月以内)、戒告の4段階がある。町は職員に故意や悪質性はなかったとして、懲戒処分の中で最も軽い戒告処分、監督する立場だった管理職の50代男性2人を口頭注意とした。処分は9月15日付。 町内在住の年配男性は「結構重大な問題だと思うけど、ずいぶん軽い処分だったので呆れました」と語る。 というのも、9月11日、群馬県富岡市の職員が住宅手当235万円を不正に受け取っていたとして、停職6カ月の懲戒処分となったことが先行して報じられていたからだ。 富岡市の榎本義法市長は「公務員としてあるまじき行為。誠に遺憾であり深くおわび申し上げる。綱紀粛正の徹底と再発防止を図る」(上毛新聞ウェブ版9月12日付配信)とコメントしている。 「金額的には富岡市より矢吹町の方が大きいが、軽い処分で乗り切ろうとしている。蛭田泰昭町長は来年1月任期満了を迎える町長選に再選を目指し立候補する意向を示している。不祥事という印象が付くのを避けようとしたのかもしれません」(町内在住の年配男性) 気になったのは、住居手当として2万6700円もの金額を毎月受け取っていた、ということだ。 町によると、住居手当はアパートなどの賃貸物件が対象で、マイホームに住む場合は支払われない。補助割合は家賃の半額分で、上限額は2万8000円。矢吹町で家賃5万6000円のアパートとなれば、比較的広い部屋で暮らせそうだ。 ちなみに、県市町村行政課によると、上限2万8000円は県・市町村共通の金額とのこと。 厚生労働省「令和2年就労条件総合調査」によると、民間企業で住居(住宅)手当が支払われている割合は47・2%。金額は平均1万7800円。同調査は常用労働者30人以上を雇用する企業6400社が対象で、零細企業は含まれていない。住居手当がない企業もあるだろうから、実態は割合・金額ともにもっと低いと思われる。 本誌ではこの間、「民間準拠と言われている公務員の給与水準だが、実際には大きくかけ離れている」と指摘し、記事でそのカラクリを解き明かしているが、住居手当一つとっても民間準拠ではないことが分かる。そういう意味で、さまざまな背景が読み取れる住居手当の不適切受給だったと言える。
さめじま・ひろし 京都大学法学部を卒業し1994年に朝日新聞入社。99年に政治部に着任し、菅直人、竹中平蔵、古賀誠、与謝野馨、町村信孝ら与野党政治家を担当。2010年に39歳で政治部デスクに抜擢される。13年に「手抜き除染」報道で新聞協会賞受賞。21年に独立して「SAMEJIMA TIMES」を創刊。ユーチューブやウェブサイトで政治解説動画・記事を公開し、サンデー毎日やABEMA、プレジデントオンラインなどにも出演・寄稿している。著書に『朝日新聞政治部』(2022年、講談社)、『政治はケンカだ~明石市長の12年』(泉房穂氏と共著、2023年、講談社)。 新聞社が埋もれた事実を自力で掘り起こし、自らの責任で権力者を追及する「調査報道」がめっきり減った。そればかりか、週刊誌が報じた「疑惑」に世間の耳目が集まっても、何事もなかったようにやり過ごす光景が繰り返されている。 芸能界に君臨したジャニー喜多川氏の性加害問題、岸田文雄首相の最側近である木原誠二官房副長官の妻が元夫の不審死事件の重要参考人として事情聴取されながら捜査が不自然に打ち切られた疑惑……。具体例は枚挙にいとまがない。 警察や検察が捜査に動かない限り、行政が発表しない限り、当事者が不正を自ら認めて謝罪しない限り、「疑惑報道」に踏み切って抗議を受けるリスクを背負うことは避ける。それが主要メディアのたしなみであると言わんばかりに、新聞は振る舞っている。各紙が示し合わせたかのように疑惑を「なかったこと」として片付ける様子は業界談合そのものだ。 新聞がこれほど不甲斐なくなったのはいつからだろう。 福島第一原発の事故直後、現場で事故対応を指揮した吉田昌郎所長の証言録「吉田調書」を朝日新聞が独自入手してスクープしたのは、安倍政権下の2014年5月だった。政府が伏せ続けてきた歴史的証言録を白日の下にさらす大キャンペーンを手掛けたのは、記者クラブを主要拠点とする政治部や社会部ではなく、調査報道に専従する特別報道部だった。私はその取材班を率いるデスクを務めていた。 安倍政権は報道当初、「吉田調書」の公表を拒否し、他紙も「なかったこと」として黙殺した。約3カ月後、第一報のタイトルや文中表現に対してネット上に批判が広がると、安倍政権は一転して「吉田調書」を公表して反撃を開始し、他紙は安倍政権の主張に沿って「朝日批判」に一斉に踏み切った。 朝日新聞の経営陣は2014年7月時点で「吉田調書」報道を高く評価し、新聞協会賞に申請していたのに、安倍政権や他紙から集中砲火を浴びると持ち堪えられず、9月になって記事全文を「誤報」として取り消し、社長の引責辞任に加え、デスク(私)や取材記者を懲戒処分にすると表明したのである。 第一報のタイトルや文中表現の是非について見解が割れるとしても、意図的な捏造報道でもないのに記事全文を抹消し、歴史的スクープを丸ごと「なかったこと」にしてしまったのは、組織防衛を優先した過剰対応だったと言うほかない。朝日新聞が編集責任を負う立場にある管理職にとどまらず、「吉田調書」を独自入手した取材記者まで懲戒処分にしたことは、ジャーナリズムの自殺行為であった。取材記者はネット上で「捏造記者」「売国奴」などと罵詈雑言を浴び、バッシングの矛先は家族にも向けられたが、朝日新聞はこの事態を放置し、取材記者を守らなかった。 詳細な経緯は拙著『朝日新聞政治部』(講談社)に記したが、「吉田調書」事件は、調査報道を仕掛けた朝日新聞が国家権力の反撃に屈服した事件としてメディア史に刻まれたのである。 朝日新聞政治部posted with ヨメレバ鮫島 浩 講談社 2022年05月27日頃 楽天ブックス楽天koboAmazonKindle 朝日新聞に限らず新聞業界全体に「権力批判」に対する怯えが広がった。警察や検察が立件したり、行政が発表したり、当事者が不正を認めたりするまではリスクを冒して報じることを避ける「保身文化」が蔓延したのである。 朝日新聞は「吉田調書」事件後、特別報道部を縮小し、2021年春には廃止した。私は同年春に退社して「SAMEJIMA TIMES」を創刊し、ウェブサイトやユーチューブで政治解説を中心に発信している。政府広報紙と化した現在の新聞の不甲斐なさを目の当たりにするたびに、「吉田調書」事件は新聞ジャーナリズムが凋落した転換点だったと思わずにいられない。当事者として結果責任を痛感している。 朝日新聞特別報道部は当時、福島第一原発事故を題材にした長期連載「プロメテウスの罠」と「手抜き除染」のスクープ報道で、新聞協会賞を2年連続で受賞して勢いに乗っていた。私は同部の立ち上げから深くかかわってきたが、政治部、経済部、社会部などから引き抜いたエース記者と、他社から引き抜いた腕利き記者が切磋琢磨する異色の組織だった。 なかでも「プロメテウスの罠」のデスク役を務めた依光隆明記者(高知新聞)、「手抜き除染」のメインライターだった青木美希記者(北海道新聞)、大阪地検による証拠改竄をスクープした板橋洋佳記者(下野新聞)ら地方紙出身の記者の活躍はめざましく、朝日新聞に新たな息吹を吹き込んでいた。永田町・霞が関で国家権力に肉薄してきた記者と、全国各地で地道な調査報道を重ねてきた記者の個性が融合し、新基軸の調査報道集団が生まれつつあった。 私は特別報道部次長として「地方紙と連携した調査報道」に可能性を感じ、ある原発立地県の地方紙幹部と水面下で交渉を重ね、「共同調査報道」の合意寸前までこぎつけていた。東京を拠点とする全国紙は中央省庁との結び付きが強く、国家権力追及に及び腰になる傾向がある。一方、地方紙は県庁や県警に加えて、電力会社など地域の看板企業に弱い。双方の弱点を補い合うため「原発利権」をテーマに共同取材班を立ち上げ、双方の紙面で同時キャンペーンを展開しようと考えたのだ。 これらの構想も「吉田調書」事件ですべて吹き飛んでしまった。 地元メディアと政治家の関係性 政治はケンカだ! 明石市長の12年posted with ヨメレバ泉 房穂/鮫島 浩 講談社 2023年05月01日 楽天ブックスAmazonKindle 今年5月に上梓した泉房穂・前明石市長と私の共著『政治はケンカだ!~明石市長の12年』で印象に残ったのは、泉市長と神戸新聞との緊張関係だった。 泉氏は2011年4月の市長選で自民、民主、公明が相乗りして兵庫県知事が全面支援する元知事室長との一騎打ちを69票差で制した。全政党、全業界を敵に回して当初はマスコミに泡沫候補扱いされたが、市民の草の根の応援だけを頼りに激戦を勝ち抜いたのである。就任当初は市役所にも市議会にも味方がいない四面楚歌の状態だった。 それにも増して手を焼いたのは神戸新聞との関係だった。泉氏は市の税金が購読料や広告費などとして神戸新聞やグループ企業に流れ込んできたことを知り、「税金で番組を買わなくても普通に報じてもらえばいい」と指示し、予算を削減した。これが神戸新聞上層部の逆鱗に触れ、泉市政を糾弾する記事が急増したのだという。 地元で圧倒的シェアを誇る地元紙を敵に回すことは、知事や市長に大打撃を与えかねない。他方、県や市の予算を収入源の大きな柱とする地元紙は、国の批判にはためらいがなくても、地元自治体の追及には及び腰になりがちだ。この「持ちつ持たれつの関係」が崩れたのが明石市だった。初当選から12年、泉市長と神戸新聞の関係はぎくしゃくし続け、市役所や市議会からのリーク情報とみられる記事が繰り返し掲載された。 地元メディアとの関係に苦労する政治家 泉房穂・前明石市長 こうした事態を避けるため、大概の知事や市長は地元紙と良好な関係を維持し、「権力とジャーナリズムの緊張関係」は希薄になる傾向がある。 さらに露骨なケースもある。香川県立高松高校で私と同級生だった立憲民主党の小川淳也衆院議員は「香川1区」で自民党の平井卓也衆院議員と熾烈な戦いを繰り広げてきたが、最も頭を悩ませてきたのは、香川県内でシェア6割を誇り、系列テレビ局もあわせ持つ四国新聞を「平井一族」が経営していたことだった。 小川淳也衆院議員 最近では石川県の馳浩知事と地元紙の北國新聞との関係が注目された。馳知事は石川テレビが制作したドキュメンタリー映画「裸のムラ」に自身や県職員の映像が許可なく使用されたことに抗議し、定例記者会見の開催を拒否。県政記者クラブ(14社加盟)は総会を開いて早期再開の申し入れを協議したが、北國新聞とテレビ金沢は賛同せず、全国紙などの有志で申入書を提出することになった。地元メディアと知事の濃密な関係をうかがわせる事態である。 北國新聞は地元の大物政治家・森喜朗元首相のインタビューを継続的に掲載している。最近では自民党安倍派の会長を争う5人衆(松野博一官房長官、高木毅国会対策委員長、世耕弘成参院幹事長、西村康稔経済産業相、萩生田光一政調会長)の人物評を言い募り、萩生田氏だけを絶賛する森氏のインタビューが永田町の話題をさらった。一連のインタビューについては「地元の大物政治家と地元紙の密接な関係」を疑問視する声がある一方、「全国紙では引き出せない森氏の本音を報じた意義は大きい」と評価する声もある。 仮に石川県内の報道機関が北國新聞だけならば、大物政治家との密接な関係はマスコミの権力監視機能を低下させ、看過できない。一方、複数の報道機関が存在する場合は、権力者との近さも含めてそれぞれが独自性を発揮し、相互批判を通じて健全性を維持できるという考え方も成り立つであろう。 最も危険なのは、報道各社が行政に忖度した報道を横並びで展開することだ。地方政治と地方有力紙の癒着は、全国紙や他の地方メディアが徹底追及して牽制すればよい。地方有力紙に対抗するメディアが地域から消滅し、メディアの相互監視機能が失われることだけは絶対に避けなければならない。 報道の多様性は、ジャーナリズムの生命線である。 地方紙に期待される役割 福島民報 福島民友新聞 東京では全国紙や在京テレビ局と国家権力中枢の癒着が、地方紙と知事や市長との関係よりも深刻な問題として存在する。 先述した朝日新聞特別報道部は、政治部と首相官邸、経済部と財務省、社会部と警察・検察といった癒着構造から解き放たれ、記者クラブを離れてしがらみなく国家権力の疑惑に切り込めるところに最大の強みがあったが、その分、各部との関係は緊張して社内的に孤立する場面が多かった。現在では週刊文春など雑誌メディアが全国紙と国家権力の癒着に風穴を開ける役割を果たしているが、私は同様の役割を地方紙に期待したいと考えている。 私は1999年に朝日新聞政治部に着任し、官邸記者クラブや与党記者クラブに長く在籍した。有力地方紙はここに若干数の記者を常駐させている。それぞれの地方紙の将来を担う精鋭たちだ。 なかでも記憶に残っているのは、森喜朗氏が首相に就任してまもない2000年5月に「日本は天皇を中心とする神の国」と発言して批判を浴びた時、西日本新聞が放ったスクープだった。 西日本新聞の記者は官邸記者室のコピー機付近で、神の国発言をめぐって記者会見で厳しい追及を受けることが予想されていた森首相に対して「質問をはぐらかす言い方で切り抜けるしかありません」などと指南する内容の文書を拾った。内々に取材を進め、この「指南書」を書いたのはNHK記者であると確信して報じたのだ。 報道機関の政治部記者が首相に対し、記者会見の「切り抜け方」を指南していた――。政治家の番記者としてオフレコ取材を重ね、濃密な関係を作り上げていく全国紙の政治部記者たちからは決して生まれないスクープだった。官邸記者クラブに常駐しながら権力中枢とは一線を画している地方紙だからこそ、躊躇なく取材し、覚悟を決めて報道に踏み切ることができたと言えるだろう。 必要な「全体としての健全性」維持 どんな相手にも臆することなく、厳しく追及して闇を暴く。それがジャーナリズムの理想である。だが、いつ何時もその姿勢を貫く完璧な報道機関や記者は多くない。どんなに立派な記者も間違うことはあるし、怯むこともある。だからこそ、ジャーナリズムは多様性を守り、誰かがどこかで追及し続けるという「全体としての健全性」を維持することが絶対に必要なのだ。 地方紙は知事や市長、県警に弱いかもしれないが、中央省庁には気兼ねなく切り込める。全国紙はその逆だ。闇を暴くのはいつも同じ報道機関や同じ記者である必要はない。それぞれがそれぞれの強みを発揮し、それぞれの弱みをカバーしあえばよい。全国紙と地方紙はそのような補完関係にあると私は思う。 地方紙は活動領域を地域テーマに限定させる必要はない。もっと広げればよい。ネット時代は世界に向けて発信することも可能だからだ。 朝日新聞政治部の後輩である南彰記者が今秋に退社し、沖縄に拠点を移して地方紙記者として活動するという。近年は新聞労連委員長を務め、SNSでも積極的に発信し、政治報道のあり方を批判する著書も上梓した。ところが、朝日新聞は「吉田調書」事件以降、記者の社外活動を厳しく制約するようになっている。南記者が新聞労連から政治部に復帰した後も風当たりは強く、まもなく人事異動になった。社内の管理統制を強める朝日新聞の将来に限界を感じ、新天地として沖縄を選んだのであろう。朝日新聞が地方紙から腕利き記者を引き抜いたのは今は昔。閉塞感が漂う全国紙から地方紙へ転身する新たな動きとして注目したい。
任期満了に伴う石川町議選が9月3日に投開票され、新議員14人が決まった。同町議選をめぐっては、県議選との兼ね合いから、石川郡内の他町村の関係者も注目していた。注目人物の今後に迫る。 今秋県議選への立候補は明確に否定 選挙結果は別掲の通り。現職10人、新人6人の計16人が立候補し、現職8人、新人6人が当選した。投票率は67・46%で、前回を2・11ポイント下回り、過去最低(補選は除く)だったという。 選 挙 結 果(9月3日投開票、投票率67・46%)当 820 乾 初 美 (37) 無現当 712 近 内 雅 洋 (69) 無現当 701 迎 茂 城 (52) 無新当 676 星 恵 子 (64) 無新当 630 瀬 谷 寿 一 (70) 無現当 568 増 子 美知夫 (73) 無現当 557 小 木 芳 郎 (70) 無現当 547 鈴 木 義 延 (64) 無新当 534 瀬 谷 京 子 (79) 無現当 445 金 沢 和 則 (64) 無新当 443 根 本 重 泰 (64) 無現当 376 菊 池 美知男 (69) 無現当 342 角 田 保 寿 (70) 無新当 331 水野谷 常 子 (60) 無新 207 関 根 信 次 (84) 無現 161 藤 島 一 浩 (60) 無現 この結果に、石川郡内の住民はこんな疑問を口にした。 「乾初美さんが町議選に出たということは、県議選に出る可能性はなくなったと見ていいのか?」 乾氏は前回(2019年)の町議選で1040票を獲得し、トップで初当選を果たした。唯一の4桁得票で、同町民によると「この町の議員選挙で1000票オーバーはそうそうあることではない」という。 本人のSNSに掲載されたプロフィールによると、「学法石川高校卒業後、大学でカウンセリングを学び、震災後、地元石川での子育てを決意し石川町に戻る。2015~2017年まで、政治団体の秘書・事務局として働く」とある。 最初の選挙時は、33歳の若さと女性候補であることなどから、「そうそうあることではない」ほどの得票を得た。今回は女性候補者が4人いたこともあり、前回から200票ほど減らしたが、今後のキャリアアップを期待する声は少なくない。 そんな中で浮上していたのが「県議転身説」だ。一部関係者から「乾氏を県議選に立ててはどうか」と推す声が出ており、その話が広まって前述した石川郡内の住民の疑問につながっている。 県議選は11月2日告示、12日投開票で行われる。石川郡選挙区は定数1で、現在の現職は円谷健市氏(69)。東白川農商(現・修明)高校卒。石川町議を3期務めた後、2011年11月の県議選で初当選した。現在3期目。立憲民主党所属(県議会の会派は県民連合)。 円谷氏は7月、今期限りでの引退を表明した。その場に、会社役員の山田真太郎氏(39)が同席し、県議選に無所属で立候補することを表明した。円谷氏の後継者ということになる。山田氏は石川町出身。日体大体育学部卒。石川町商工会青年部副部長。同町の自動車整備工場で専務を務める。 これより1カ月前、6月には自民党県連職員の武田務氏(42)が自民党公認で立候補することを表明した。武田氏は石川町出身。安積高卒。郡山市の民間企業勤務を経て、2014年8月から同党県連職員を務めている。 現状、この2人による選挙戦が濃厚だが、前出の石川町民によると、「選挙まで2カ月を切ったが、県議選が話題になることはほとんどない。そのくらい、盛り上がり、話題性に欠ける」という。 そうしたこともあり、「乾氏が県議選に立候補すれば面白いのではないか」といった声が余計に広がっていった。 「石川町議として頑張る」 乾初美氏(議会のホームページより) もっとも、本人に県議選に立候補する意思があったら、9月の石川町議選に出るとは思えない。わずか2カ月後に辞職して鞍替えするとなれば、投票してくれた有権者に対して失礼に当たるからだ。 町内の事情通も、「その可能性はないと言っていい」という。 その根拠の1つに上げたのが、前述した「わずか2カ月後に辞職して鞍替えしたら有権者に失礼」ということ。加えて、「乾氏は改選後に副議長に立候補・就任した。すぐにポストを捨てるくらいなら、最初から副議長に立候補しないだろう。そこからしても、今回の県議選に立候補する考えはないと見ていい。一部の外野の人が勝手に言っているだけ」というのだ。 石川町では9月15日に改選後初となる臨時議会が開かれ、正副議長選挙が行われた。乾氏は副議長に立候補した。そのほか、菊池美知男氏と増子美知夫氏が立候補し、無記名投票の結果、乾氏6票、菊池氏2票、増子氏6票で、乾氏と増子氏が同数で並び、くじ引きの結果、乾氏が副議長に選ばれた。ちなみに、議長選は、近内雅洋氏、瀬谷寿一氏、小木芳郎氏の3人が立候補し、近内氏6票、瀬谷氏5票、小木氏3票で、近内氏が議長に選ばれた。 こうした背景から、乾氏の県議転身はないというのだ。 乾氏に「県議選に……という話が出ているが」と聞くと、次のように答えた。 「それは明確に否定します。石川町議として、町のために頑張っていきます」 これが、冒頭の石川郡内の住民の「乾さんが町議選に出たということは、県議選に出る可能性はなくなったと見ていいのか?」との疑問の答えだ。 前出・町内の事情通はこう話す。 「乾氏は、副議長選で同数得票のくじ引きで当選したように運にも恵まれ、それは大事な要素だと思います。ただ、これからもっと上のステージを目指すとしても、もう1、2期、町議をやってからでも遅くはないでしょう。仮にあと2期(8年)やったとしても、まだ45歳ですからね。そもそも、将来的に楽しみな部分はあるかもしれないが、現状は、『フレッシュな女性議員』というだけですから」 乾氏が町議として実績を積み、期待感を持たせてくれるような存在になれば、「もっと活躍の場を広げられるステージに挑戦してはどうか」といった話になるのかもしれないが、少なくとも、まだそのときではないということだろう。
ここ最近、内堀雅雄知事(59)を悩ませていたのがジャニーズ事務所の性加害問題と、東京電力福島第一原発の敷地内に溜まる汚染水(ALPS処理水)の海洋放出だ。二つの問題は現在進行形だが、ジャニーズ問題は県としての対応を発表し、海洋放出は国・東電が実行に踏み切ったことで、県の手を離れたかのような雰囲気が漂っている。 ジャニーズ問題、汚染水放出にどう対応したか 世間を大きく揺るがすジャニーズ事務所の性加害問題。所属タレントはこれまで多くのメディアを席巻してきたが、前社長による若手タレントへの複数の性加害を、同事務所があったと認め謝罪すると、大企業を中心に所属タレントのCM起用を見合わせる動きが一斉に広まった。 こうした中で注目を集めたのが福島県の動向だった。 県は震災翌年の2012年度からジャニーズ事務所のアイドルグループ「TOKIO」と連携し、県産農林水産物のPR活動などを展開してきた。TOKIOが震災前から頻繁に県内を訪れ、DASH村などの番組づくりをしてきた縁でメンバーが風評払拭などの取り組みに積極的に関わってきた。震災から12年経ち、メンバーが5人から3人になってもTOKIOの「福島を応援したい」という姿勢は変わらず、県は現在も県産農林水産物のCMやポスターにメンバーを起用している。 2021年度からはTOKIOとの連携がさらに深まり、県は風評・風化戦略室内にTOKIOとの窓口となるバーチャル課「TOKIO課」を設置。昨年5月には西郷村内に福島の自然を生かした交流施設「TOKIO―BA」が設けられ、メンバーが不定期に訪れて来場者と接するなど活動範囲は広がりを見せていた。 前社長による性加害問題は、そんなTOKIOと福島県の結び付きに水を差すものだった。 「所属タレントの起用はチャイルド・アビューズ(子どもへの虐待)を認めることになる」 「被害者への救済策が示されると同時に、事務所運営の抜本的是正が認められなければ取引を続けることはできない」 という厳しい声のもと、経済界のジャニーズ離れが加速していく中、県はTOKIOとの連携を継続するのか、それとも解消するのか――9月15日に発表された「県の正式な考え方」とする談話は次のようなものだった。 《大前提として、いかなる性加害も絶対に許されるものではない。性加害は、被害者の尊厳を踏みにじる極めて悪質な行為》《ジャニーズ事務所においては、人権を尊重し、被害者救済や再発防止策など、社会的責任をしっかり果たすべき》《TOKIOの皆さんは、震災と原発事故後、私たちが風評被害などで最も悩み苦しんでいた時も、福島に寄り添い続け、県民を勇気づけていただいた。長年にわたり、県産農林水産物のPRなどに協力いただくなど、福島を全力で応援し続けていただいていることに心から感謝している》《TOKIOの皆さんには、今後も変わらず福島県を応援していただきたい》 県はTOKIOとの連携を継続すると明言したのだ。この2日前、農林水産省がメンバーの城島茂さんについて、広報大使としての起用を取りやめると発表した際は「国がやめれば県も従うのではないか」と囁かれたが、予想に反して連携解消には向かわなかった。同じく所属タレントの起用を控えると発表した小池百合子東京都知事や大村秀章愛知県知事と比べても、福島県は独自の判断を下したことが見て取れる。 県の判断は概ね好意的に受け止められている。ネット上では「TOKIOとの縁が切れずによかった」「彼らはずっと福島に寄り添い続けてくれた。連携継続は当然だ」と評価され、福島民報と福島テレビが共同で行った県民世論調査でも「連携継続に賛成」と答えた人は73・9%に上った(福島民報9月25日付)。 上辺だけの付き合いしかしてこなかった大企業と異なり、福島県は長い時間をかけてTOKIOとの絆を構築し、県民はメンバーの活動する姿を間近で見続けてきた。県民が寄せる彼らへの尊敬と信頼は絶大。そう考えると、7割以上の人が賛成という結果は驚きでも何でもなく、ごく自然なことと言える。 そうした事実を踏まえた上で、しかし、冷静に判断するための材料をここに提示したい。 ジャニーズ事務所の関連会社として2020年7月22日に設立された㈱TOKIOは、同事務所と同じ東京都港区赤坂九丁目6―35に本店を置く。資本金1000万円。 事業目的は①芸能人・文化人等のマネジメント、②イベント・コンサート・講演会等の企画、制作および運営、③本・グッズ・CD・DVD等の商品の企画、制作および製造販売、④映画・テレビ番組等の企画、制作および運営、⑤著作権・著作隣接権等の管理、⑥広告の制作、代理店業、⑦不動産の管理および運営。 役員は代表取締役藤島ジュリー景子、取締役城島茂、國分太一、松岡昌宏の各氏。 ジャニーズ資本の会社 TOKIOを起用した「ふくしまの米」をPRするポスター ㈱TOKIOは対外的に「社長」は城島さん、「副社長」は國分さんと松岡さんと発表しているが、3氏は代表権を持っておらず、創業者一族である藤島氏がオーナーとして君臨しているのである。県は「㈱TOKIOとは付き合いがあるが、ジャニーズ事務所と契約しているわけではない」と説明するが、両社が同じ場所に事務所を構えていることは知っているはずで、詭弁に過ぎない。 こうした状況を、ジャニーズ問題で人権侵害とともに叫ばれているコンプライアンス(法令順守)の視点から考えてみたい。 企業が事件を起こした時、取引先は一斉に契約を解除し、場合によっては違約金を請求することもある。担当社員は優秀で仕事ができる。好感度も高い。本音はその社員と今後も付き合いを継続していきたい。しかし、所属する企業が問題を起こした以上、コンプライアンスの観点から契約を解除せざるを得ない――こうした考え方のもと、県は企業と取引してきたはずだ。 「所属タレントに罪はなく彼らも被害者」と擁護する人もいるが、だったら事件を起こした一般企業の社員も同じように擁護されなければ不公平だ。「TOKIOは他とは別」と言い切るのも、コンプライアンスのなし崩しにつながってしまう。 どこまで行ってもジャニーズ事務所の影がチラつく限り、㈱TOKIOとの連携はどこかスッキリしない感覚に陥るのだ。 しかし、TOKIOとの連携はこれからも是非継続したいということなら、人権尊重とコンプライアンスを担保するためにも、㈱TOKIOがジャニーズ事務所の資本から離脱し、本店も移して独立採算制に移行した方がいい、というのが本誌の見解である。 実際、先の県民世論調査でも「連携継続に反対」は13・2%、「分からない」は12・8%に上った。この3割の人たちも、TOKIOのこれまでの活動に感謝しているはずだが、一方で人権尊重やコンプライアンスの視点は欠くべきではないと考えているのではないか。そういう意味では、TOKIOへの感情移入だけで答えていない冷静な人たちと言えるのかもしれない。 人権尊重に対する認識は、一昔前とは大きく変わっているが、世界標準と比べると日本はまだまだ遅れている。海外では有名な映画監督や大物プロデューサーがかつての性加害行為で追及されると、スポンサー契約を打ち切られ、会社を追われるだけでなく、その会社は生き残るために社名を変更して出直す事態が頻繁に起こっている。社会全体が「性加害は絶対に許さない」という考え方で一致している。 誤解されては困るが、本誌はTOKIOとの連携継続に反対しているわけではない。今まで福島県を応援し続けてくれたことには素直に感謝している。しかし、所属事務所に忌まわしい事件が起きてしまった以上は、モヤモヤ感が残ったまま応援してもらうより、㈱TOKIOにジャニーズ事務所との資本関係を見直してもらい、あらためて結び付きを深めていった方がいいのではないか。 この問題に限らず、内堀知事は難しい問題について踏み込んだ発言を一切しないので、関係見直しを提案することは考えにくいが、人権尊重とコンプライアンスの考えを持ち合わせているなら、先の「県の正式な考え方」を発表して終わるのではなく、県民が素直に歓迎できるよう、TOKIOとのスッキリした新しい関係を構築していくべきだ。 知事の責任を問う神山県議 神山悦子県議 県議会9月定例会は9月11日に開会し、13、14日に代表質問、19、20日に一般質問が行われた。代表質問は共産党の神山悦子議員、自民党の小林昭一議員、県民連合の亀岡義尚議員が質問台に立ち、それぞれが汚染水(ALPS処理水)の海洋放出に関する質問を行った。一般質問でも、質問した10人中3人がこの問題に触れた。 初日の代表質問について、地元紙は14日付紙面で伝えたが、海洋放出関連の質問・答弁は、福島民報では全く触れられておらず、福島民友では小さく扱われただけだった。 複数議員がこの問題を取り上げた中でも、神山悦子議員は「漁業者をはじめ、県民の合意がないまま海洋放出を強行した国と東京電力に強く抗議し、撤回中止を求めるべき」と迫った。 神山議員は「国、東京電力は県漁連と2015年8月に交わした『関係者の理解なしにいかなる処分も行わない』との約束を反故にした」、「知事はまるで他人事のように、『国が責任を持って対応すべきもの』と述べ、国に責任を丸投げしている。県民を代表する首長としてはいかがなものか」などと述べた。 そのうえで、「東京電力は先日、初回分の7788立方㍍の放出が完了したと発表し、設備の点検のため、現段階では放出を停止しています。海洋放出後に発生したこの間の国内外における様々な問題を見ても、このまま中止することが解決の確かな道ではないでしょうか? 漁業者との約束を反故にし、漁業者をはじめ、県民の合意がないまま海洋放出を強行した国と東京電力に強く抗議し、撤回中止を求めるべきと思いますが、知事の考えをうかがいます」として、内堀知事の見解を問うた。 これに対し、内堀知事はこう答弁した。 「海洋放出に当たっては、廃炉等を進めるうえで、やむを得ないとする意見がある一方で、海洋放出に反対する意見や、新たな風評を懸念する声など、様々な意見が示されています。処理水の海洋放出は、長期間にわたる取り組みが必要であり、安全の確保や新たな風評を生じさせないなど、万全な対策を徹底的に講じることが重要です。このため、8月22日に経済産業大臣に対し、あらためて安全確保の徹底や国内外への正確な情報発信、万全な風評対策に取り組むことに加え、特に水産業については、漁業関係者が風評の発生を強く懸念していることから、復興の取り組みを妨げることなく、将来にわたってなりわいを継続し、次世代へ確実につないでいけるよう、必要な対策を徹底的に講じることを強く求めました。処理水の問題は、福島県だけではなく、日本全体の問題です。引き続き、国に対し、国が前面に立ち、政府一丸となって、万全な対策を講じ、最後まで全責任を全うするよう求めていきます」 神山議員が再質問を行う。 「8月から福島復興共同センターが緊急に署名運動に取り組みました。これは海洋放出を強行しないことを求める緊急署名です。8月31日に7万1617人分の署名を国に提出しています。現時点でオンライン署名は約14万6000人分、紙ベース署名は約5600人分ですから合計約15万1600人分です。さらに、今回の海洋放出決定後に放出差し止め訴訟が福島地裁に提起されました。ここには漁業関係者も入っています。この間、こうした県民運動がいろいろありました」 「知事は2015年の県漁連と国、東京電力が交わした約束について何も触れていませんが、私はこれは重要な約束だったと思うんです。この約束が本当に守られているかどうか、私は客観的に見て破られたと思いますよ。いま、(1回目の海洋放出を終え、設備点検のために)止まっていますから、海洋放出をしないこの状態を県として、知事として国、東京電力に求めることが様々な問題を解決することになり、そういう立場だと思いますから、知事もう一度お答えいただけませんか」 内堀知事の答弁はこうだ。 「ALPS処理水の海洋放出について、県漁連は『ALPS処理水の放出事業が進み、廃炉が完遂した時点で、福島の漁業がなりわいとして継続していれば、約束は果たされたこととしたい』と述べられました。国、東京電力は、こうした漁業者の皆さんの思いをしっかり胸に刻み、新たな風評を生じさせないという決意のもと、漁業者の皆さんが将来にわたり漁業を継続していけるよう万全の対策を講じるなど、最後まで全責任を持って取り組むべきであると考えています」 最後に、神山議員は「そんな先の約束より、いまに注視して、それで皆さんの声を聞いていく、と。知事はそのくらいの立場に立つべきだと思います。いまちょうど(海洋放出が)止まっていますから、そういった声を聞いて判断すべきだと思いますので、中止という立場も踏まえてご答弁をお願いします」と訴えた。 内堀知事は次のように答弁した。 「ALPS処理水の海洋放出について、漁業者の皆さんからは風評被害などに対する不安や懸念、県産魚介類の販路拡大の支援などを求める意見とともに、我々の願いは漁業を続けていくというその一点であるといった切実な声を示されています。国、東京電力は、そうした漁業者の皆さんの思いを真摯に受け止め、新たな風評を生じさせないという決意のもと、漁業者の皆さんが将来にわたり漁業を継続していけるよう万全の対策を講じるなど、最後まで責任を持って取り組むべきであると考えています」 内堀知事はこれまで通り、「国の責任で」という姿勢に終始した。 国に従順な内堀知事 内堀雅雄知事 この間、本誌で何度も指摘してきたように、内堀知事は官僚出身ということもあってか「国に従順」との評価が定着している。その代表例として言われているのが、原発事故直後、国から県に寄せられたスピーディ(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)の情報を、当時副知事だった内堀氏の判断で公表しなかったとされる問題。「国がスピーディの情報を公表していないのに、県が先駆けて公表するわけにはいかない」といった官僚気質がそうした事態を招いたと言われている。 ほかにもコロナ対策について、本誌では「基本は外出自粛などの徹底と、国民の生活保障、自粛に伴う事業者への減収補償のセットでなければならない。幸い福島県(県民、県内企業など)は原発賠償の経験から『補償』に関する知識があるから先行事例になれる。それを生かして、福島県が率先して事業者への減収補償を行えばいい。福島県がそれをやれば他地域に広がり、コロナ対策が実のあるものとなる」と指摘した。その一方で、「国が『休業補償はしない』という中で、国に従順な内堀知事がそれをやるとは思えないが……」とも書いた。 今回の問題も同様で、国への従順姿勢から海洋放出を黙認し、「国が責任を持って対応すべき」との見解しか示さない。福島県民の代表として役割を果たしているとは言い難い。
取材日を11月5、6日に設定。3日の夕方に全候補者(12人)の事務所に電話をして、「5、6日のいずれかで、街頭演説や個人集会などの予定があれば教えてほしい。その様子を取材させてもらったうえで、終了後に5分くらい、次の予定があるならもっと短くてもいいので、候補者への個別取材の時間を設けてほしい。両日に街頭演説や個人集会などの予定がなければ、事務所で取材させてほしい」ということを依頼した。 その時点で、街頭演説や個人集会などの予定が把握できた、あるいは事務所での取材のアポイントが取れたのが10人。計ったように5日と6日で半々(5人ずつ)に分散した。もっとも、時間が被っていた人もいたので、その場合は手分けして取材に当たった。 残りの2人は流動的だったが、どちらも「お昼(12時から13時)は一度事務所に戻ると思う」とのことだったので、「5日から6日のお昼を目安に事務所に行くか電話をする」旨を伝えた。 こうして取材をスタート。2日間かけて、比較的、スムーズに全候補者に会うことができた。 担当:末永 補佐:本田 福島県議選【郡山市】編 https://youtu.be/H3LrOAB1K0E?t=1756 【福島県議選】投票前日!【選挙漫遊】総括 投票の判断材料に!福島・郡山・いわき・会津若松郡山市の解説は29:16~ 定数10 立候補者12 告示日:2023年11月2日 投票日:2023年11月12日 立候補届出状況↓ https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/601621.pdf 選挙公報↓ https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/601654.pdf 届け出順、敬称略。 あわせて読みたい 【福島市】選挙漫遊(県議選) 【いわき市】選挙漫遊(県議選) 【会津若松市】選挙漫遊(県議選) 今井久敏 https://www.youtube.com/watch?v=G6hR6C2WpO4 ――真っ先に取り組むべき県政の課題は。 「物価高騰対策と防災・減災ということに尽きると思います。それを徹底してやっていきます」 ――そのほかでは? 「原発処理水の問題を含めた復興の加速です。われわれが提案したイノベーション・コースト構想がしっかりと実を結ぶように取り組んでいきます」 一言メモ 公明党・山口那津男代表が応援に駆けつけたこともあり、演説会場の郡山駅前広場には多くの聴衆が集まった。警察・警備でかなりの厳戒態勢。その中で、動き回って写真撮影をしていたため、おそらく筆者は「注意人物」扱いだった。(末永) 山田平四郎 https://www.youtube.com/watch?v=F0pB6JNMgzE ――この選挙戦での有権者の反応は。 「私の地元は田村町で、4年前の台風被害で選挙ムードではない部分がありました。それから見ると、地元では支援の輪が広がっていることを感じる一方、『いつ選挙ですか』と聞かれることもあり、関心という部分では分からない点もあります」 ――県政の課題は。 「内堀知事も大きな課題に挙げていますが、人口減少問題です。郡山市は微減にとどまっていますが、郡山市で育った子どもが大学進学等で都市部に出て、なかなか戻ってこない実態があります。事業承継の問題も含めて、魅力ある郡山市にしていかなければならないと思っています。東日本大震災、原発事故、令和元年東日本台風、昨年・一昨年の福島県沖地震がありましたが、災害に負けないまちづくりをしていかなければなりません。国会議員の先生方と一緒に、郡山市の地区ごとの課題を踏まえながら、まちづくりをしていかなければなりません」 一言メモ 事前連絡では「基本的には昼には事務所に戻る」とのことだったが、6日昼前に事務所に確認すると、「今日は昼は戻ってこない」という。ただ、「〇〇町の〇〇という食堂で昼食をとる予定だから、12時過ぎに行けば会える」とのこと。教えてもらった場所に行くと、事前に事務所から候補者に連絡があったようで、すんなり取材できた。(末永) 佐藤徹哉 https://www.youtube.com/watch?v=t1NCu14mPiw ――この選挙戦で住民の声をどう受け止めているか。 「若者が活躍できる環境をつくることと、子育て世代の仲間からは、教育の充実、子育て支援の充実を求める声を数多くいただいています」 ――県議会では、県立高校の空き校舎の問題について質問を行っていた。 「空き校舎は、上手く活用することで地域の発展に寄与できるものだと思っています。受け入れる自治体がどう扱うか。郡山市は安積高校御館校が対象で、立地的に人が集まる場所ではありません。逆に、大きな音を出しても問題なければ、楽団の練習、夜間の合唱の練習に使わせてもらいたい、といった要望はあります。決定権は郡山市にあるので、市にどう訴えていくかが今後の課題です」 一言メモ 本誌の問い合わせに対して、候補者本人から「事務所で取材を受けます。事務所の雰囲気も見てほしいので」と連絡があった。実際、事務所を訪ねると、若い人が多いのが目に付いた。(末永) 高橋翔 https://www.youtube.com/watch?v=TnGRnB_Q_-M ――今回の選挙の位置付けは? 「郡山市は当初、無投票が予想されていました。人材不足が顕著で、現職が後継者を育てられてない。同じ顔ぶれで、選挙公報を見ても言っていることも同じ。そのレベルなんですよ。そもそも、この4年間で『県議ってどこで何をしているの?』という声が結構多かったので、そこを改善するために、民間人・有権者側の立場で立候補することにしました」 ――今回は選挙区である郡山市だけでなく、県内全域を回っているそうだが。 「郡山選挙区から立候補したから、ほかは関係ないという考え方は危険だと思います。それは僕からしたら当たり前のこと。若い人は、そういうスケールの小さい考えの人の方が少ない。いまはそういう若い人は選挙に行かないかもしれない。でも、いずれ選挙に関わるようになったときに履歴がない。30代で立候補する人はほとんどいないから。若手が本当の意味での無所属で立候補した場合、どれだけ求められているか。僕がその履歴をつくる意味もあります」 一言メモ 演説内容を聞いても、個別取材でも、1人だけ「異質」で、フラットな視点で見るならば、最も興味深い人物。もちろん、それが良いか悪いかは有権者の判断による。(末永) 佐藤憲保 https://www.youtube.com/watch?v=W6F8KQenANs ――地域の課題は。 「郡山市は、他地域に比べて若い世帯が多いが、少子高齢化が迫っている流れは同じ。県の中心である郡山市がもっと経済中心地にならなければなりませんが、まだまだそうはなっていません。郡山市を経済中心地として発展させていく必要があります。震災後は、逢瀬ワイナリーや医療機器開発支援センター、三春町の環境創造センターの誘致を行い、これらを郡山市ならびに周辺地域の経済発展の核にしていきたいと思っていましたが、リンクした民間企業の貼り付けがなかなか進んでいないのが課題です。機能的、有機的に連携して民間企業の誘致を進めていきたい」 ――県全体の課題は。 「やはり震災復興。東日本大震災の復興は一定の形になってきたが、原発事故・廃炉を抱える県にとって、廃炉が終了するまでは課題として対応していく」 一言メモ 事務所での取材とは別に、JR舞木駅での街頭演説(11月6日13時55分から)を取材。平日にも関わらず約20名の群衆がおり、固定支持者層の厚さを見た。在任期間が長く人脈も広い。コロナ対応の話などに聞き入った。(本田) 二瓶陽一 https://www.youtube.com/watch?v=tdYBBR3r0GM ――立候補の経緯は。 「郡山市を良くしようと8月の郡山市議選に立候補しましたが、落選したため実現できませんでした。私も71歳ですから、4年後の市議選を目指すよりも、元気なうちにやりたいことをやらなければならないと思い、今回の県議選への立候補を決めました」 ――ズバリ、県政の課題は。 「県議のこの4年間の任期は、あまり活躍の場が見られなかった。コロナで、そういう場に恵まれなかったのかもしれませんが、あまりにもないので、このままでいいのか、と。そうした中で、私はインバウンド計画、英語オンライン教育推進などに取り組みたいと思っています」 一言メモ 市議選では「日本維新の会」から立候補。ただ、「政策的に合わない部分もある」と今回は無所属に。政党などに縛られない自由な視点・発想を売りにしている。(末永) 神山悦子 https://www.youtube.com/watch?v=JxtEHjADPrw ――県政の課題は。 「多数あるが、まずは暮らしを守ること。県内の86%が学校給食費を無料にしており、県が半分補助すれば県内全市町村が給食費半額になります。そういった資金を出せるだけの財源もあります。『子育て日本一』と謳っている福島県であり、国でも検討を始めたいまだからこそ、県として実施すれば全国トップクラスになると思います。 震災後、18歳以下の医療費無料を公約で掲げて実現しました。これも全国でいち早い取り組みでした。県民が原発事故や様々な災害に苦しんでいる中でも、まずは子どもを守る。教育費の負担軽減を県が率先してやるべきです。 県は『健康長寿県』も謳っているが、であれば高齢者のバス代無料化やタクシー補助を行うべき。どちらも県内自治体では実施しているところが多く、県が率先し全県で進めるべき。 医療面でも、医師不足が続いており、震災によってさらに大変になっています。そういった部分に優先して予算を回すべきです。 中には、『年を越せるのか』と不安視している事業者もいます。そのような県民の暮らしの痛みを感じて、そういった方々の暮らしを守るために予算を投じることを、知事の判断でやるべきです。そうなっていないのが県政の一番の課題だと思います」 一言メモ 住宅地での街頭演説。群衆はそれほど多くないが、花束を持って応援に来る支持者もおり、アットホームな雰囲気。給食費無料化や高齢者向けのタクシー補助など、訴える内容も生活に寄り添った事柄が多かった。(本田) 鈴木優樹 https://www.youtube.com/watch?v=whtXAY6sn9E ――県政の課題は。 「復興と、人口減対策ですね。特に、復興の部分は浜通りが多い。それは当然ですが、中通り、会津も含めたオールふくしまでやっていかなければならないと思います」 ――有権者から何を求められていると感じるか。 「政治に対する不満があるのだと思いますが、訴えたことに対する跳ね返り、それは声だけでなく顔(表情)を含めて、厳しいなと感じています。政治への不信感を払拭して、参加しよう、自分たちの意思表示をしようと思ってもらえるようにしなければなりません。ただ、われわれはすべての方に接触はできない。ですから、こういうところ(個人演説会に来てくれた人)から広めてもらう。われわれも発信していくような地道な作業が必要だと思います」 一言メモ 安原地区での個人演説会を取材。広い郡山市内でも、本来の地盤ではないところで、自発的(地元町会主導)に後援会がつくられたという。地元住民は「地元選出の市議会議員とのタッグでの活躍を期待している」と話していた。(末永) 佐久間俊男 https://www.youtube.com/watch?v=_ZpgUSpL-OA ――今日で告示から5日目になりますが、有権者の声をどう捉えていますか。 「人口減少の現状をしっかりと捉えて選挙戦に臨んでほしいという声が多いですね。もう1つは、もっともっと魅力ある郡山にして、若者の県外流出を抑制できるようにしてほしい、と。これは私も同じ思いです」 ――それを踏まえ、県政ではどういった活動をしていくか。 「選挙でいただいた意見を県政に伝えていくわけですが、限られた予算の中で、県民生活に直結する部分への予算配分にもっと重きを置くべき。そういったことを訴えていきたいと思います」 一言メモ 馬場雄基衆議院議員らが応援演説に駆けつける。下校途中の中学生から「頑張れー」と声をかけられていた。(末永) 長尾トモ子 https://www.youtube.com/watch?v=1WvkS95D9gY ――県政の一番の課題は。 「少子高齢化の問題に加え、震災・原発事故から12年7カ月が経ち、浜通り、双葉地区の人口減少が進んでいる中、新しいふくしまの産業を充実させていかなければなりません。国、国際研究機構と連携しながら、地元の人たちが活躍できるような場をつくっていくことが課題だと思います。もう1つは、会津地方をはじめ、県内広域で農業が衰退しているので、農業のあり方を変えながら、素晴らしい福島県の農産物を継承できるような仕組みをつくっていなかればなりません」 ――地元・郡山としてはどうでしょうか。 「私は県議会議員ですから、郡山だけでなく、会津も、いわきも、広い視点で福島県を見ていきたい。その中でも、私は45年間、幼稚園・保育園の園長をしてきましたから、子どもたちがどういうふうに育っていくのか、社会でどんな活躍をするのか、自分をどう表現するのか、その機会をつくることが得意とする分野ですので、そのための活動をしていきたい」 一言メモ 選挙期間中は毎日、平日の朝8時から郡山駅前で街頭演説をしているという。取材日は、障がいを持つ子どもの母親、障がい者支援団体の関係者らが応援に駆けつけ、マイクを握った。(末永) 椎根健雄 https://www.youtube.com/watch?v=ULAyLeT9vFQ ――今日の演説で強調していたコロナ後の対策、物価高対策について具体的には。 「県では石油・ガスの支援を行っており、それを拡大させるべく、今後の補正予算や、2月には当初予算審議が行われますので、しっかりと会派として執行部に訴えていきたい」 ――そのほかの課題は? 「少子高齢化が進んでおり、限られた財源の中で、いかに子育て世代に財源を持っていくかということと、医療・福祉・介護の問題にしっかりと取り組んでいきたい」 一言メモ 佐藤雄平前知事、玄葉光一郎衆院議員らが駆けつけるなど、個人演説会は盛況。(末永) 山口信雄 https://www.youtube.com/watch?v=ixAEI6CI8hk ――選挙戦で有権者の思いをどのように受け止めているか。 「コロナがあり、事業に対する不安の声などが多く聞かれました。コロナからの経済復活のため、郡山市から県に、県から国に伝えていかなければならないと思っています」 ――県全体の課題は。 「一番は人口減少、流出です。あとは復興に関する部分ですが、エフレイ(福島国際研究教育機構)との連携、効果を浜通りだけでなく、全県に広げていけるようにしていかなければならないと思います」 一言メモ 安積地区での集会を取材。安積町は令和元年東日本台風の被害が大きく、支持者の中にも被災者がいた。山口候補自身、防災士の資格を持っており、県議として水害対応や防災を望む声が多かった。(本田)
「勝手に連動企画『政経東北』でも選挙漫遊をやってみた」。 11月2日告示、12日投開票の福島県議選。福島市、郡山市、いわき市、会津若松市各選挙区の立候補者39人を本誌スタッフ総出で取材し、選挙漫遊(街頭演説などに足を運んで選挙を積極的に楽しむ)を実践しようというもの。 11月5日(日)、6日(月)の2日間、街頭演説会場に足を運び、その様子を写真と動画で記録。併せてインタビュー取材も実施した。現職には「県政・県土の課題は?」、新人には「立候補した理由は?」などについて質問した。立候補者はどのような選挙活動を展開し、どんな事を話したのか。 担当:志賀 補佐:荻野 福島県議選【いわき市】編 https://youtu.be/H3LrOAB1K0E?t=3730 【福島県議選】投票前日!【選挙漫遊】総括 投票の判断材料に!福島・郡山・いわき・会津若松いわき市の解説は1:02:10~ 定数10 立候補者13 告示日:2023年11月2日 投票日:2023年11月12日 立候補届出状況↓ https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/601557.pdf 選挙公報↓ https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/601653.pdf 届け出順、敬称略。 あわせて読みたい 【福島市】選挙漫遊(県議選) 【会津若松市】選挙漫遊(県議選) 【郡山市】選挙漫遊(県議選) 安田成一 https://www.youtube.com/watch?v=47YD6DvqYVs ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。 「いわき市に関しては、水害被害が起きたことを考えると、防災対策、災害に強いまちづくりをしっかり進めることが最大の課題と考えています。令和元年東日本台風のときは市議だったが、河川改修を早く進めてもらいたいという要望を受けても、市としてなかなか対応できない面があった。その時のもどかしい思いから県議会への立候補を決意した。 3年経って二級河川の改修工事が進められたが、支流の方が進んでいない。先月には線状降水帯の影響による水害も発生した。いわき市とタッグを組んで予算をつけ、できる限り早く改修工事を進めることで安心して暮らせるまちづくりを実現したいと思っています。 エフレイとの連携も必要だと思っています。福島高専、東日本国際大学と人材育成の面で協定も結んでいるので、新産業をいわき市、福島県に根付かせて、そこで雇用創出につながれば人口減少の予測も変わってくるのではないかと考えています。優秀な人材がいわき市、福島県に留まってもらう取り組み、戻ってきてもらう取り組みを強力に進めて貰えればと考えています」 一言メモ ロードバイクで駆け付けた支持者がちらほら(趣味仲間?)。演説に耳を傾けていたのは40~50代の子育て世代が中心で、女性もほかの陣営より見受けられた。今回回った中で一番支持者の幅が広いと感じた。新人候補だがもともといわき市議だったこともあって、知名度も高いのだろうか。(荻野) 鳥居作弥 https://www.youtube.com/watch?v=B4cQKb5wLJk ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。 「僕は今回の選挙では、単純に子育てと教育と福祉というところしか訴えていません。特に子育て支援と高齢者福祉は近いものだと考えていて、2つを組み合わせて対策を講じることが重要だと考えています。例えば特定の地域のみで働ける『地域限定保育士』という制度があるので、それを活用して、高齢者の皆さんが働けるようにしてもいい。その方法を考えるのは政治の役割です」 ――日本維新の会から県議選に立候補した理由について。 「分かりにくい政治にジレンマがあった。例えばALPS処理水についても、反対するのはいいが、その後どうするの?ってなってしまう。そういう意味で、日本維新の会が掲げる政策ははっきりしていて分かりやすい。ALPS処理水について、私は『全国各地で分担して捨てましょう。そうすれば早く放出できて、福島県への負担も最小限で抑えられる』と訴えています。人間関係で選挙をやるのではなく、分かりやすい政策を的確な言葉で伝えられるという点で日本維新の会はいい政党だと感じます」 一言メモ 演説会場のイオンモールいわき小名浜前は、目の前が「ツール・ド・いわき」ゴール地点になっており、イベントの音声がガンガン流れてくるトホホな環境。ただ、車や歩道橋から手を振る人もおり、着実に支持が広まっている様子も感じた。汚染水(ALPS処理水)放出について、「福島から30年以上も海洋放出したら負担が大きくなる。日本全国から放出したら数年で終わるはず」と主張。その是非はともかく、選挙という場で、独自性のある意見を主張していく姿勢は歓迎したい。(志賀) 吉田英策 https://www.youtube.com/watch?v=1scL7EG_A4k ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。 「福島県の財政力は全国3位だが、復興と称した大型開発や道路整備にばかりお金が使われていると感じています。県民の暮らしを応援するという視点から、教育や子育てなどに予算を割くべきです。特にいわきは医師数が少ないので医療機関の充実に充実させるべきだと思います」 ――今年2月の一般質問で会計年度任用職員の雇い止めについて質問していました。是正はされたでしょうか。 「1年契約ではあるもののボーナスを支給するということだったが、実際は労働時間が短縮されただけだったりして総額が増えているわけではない。一般の職員の待遇に改善することが必要だと思います」 一言メモ 共産党独自のしきたりなのか、本人到着までに支持者が歩道に横並びで〝戦争やめろ!〟などのコールを行っていた場面が印象的。支持者の方々と触れ合う写真を撮ろうとしたが、場所が郵便局の真向かいであまり長居できる場所ではなかったため、演説が終わると即時撤収。ある意味場馴れしているというか、統率が取れている感じを抱いた。(荻野) 真山祐一 https://www.youtube.com/watch?v=qVYED1Pb2Zc ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。 「課題はたくさんあります。中でも水害対策に関しては、流域治水をしっかり進めていくべきだと訴えています。『防災減災を社会の主流にしていくべきだ』というのは公明党がここ数年来主張していることです」 ――令和5年6月議会の一般質問では、「金属スクラップヤードでの事故を防ぐために許可制にして指導監視を強化しては」と指摘していました。県執行部は質問を受けて何か具体的に動いたでしょうか。 「『不適切な事例があれば県としての指導監視を図っていく』という答弁でしたが、具体的に条例ができたり、変化が起きているというところには至っていません。そういう意味ではまだこれからの課題だと思います」 一言メモ JRいわき駅前で、山口那津男公明党代表が応援に来る街頭演説会を実施。駅前のペデストリアンデッキ、ラトブ前が多くの公明党支持者で埋めつくされ、お祭り・フェスのような熱気。市外からも応援に来ていた模様。山口代表が繰り返していた「ネットワーク」の強さをあらためて実感した次第。(志賀) 西丸武進 https://www.youtube.com/watch?v=_ssuXAFt_nI ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。 「1つは震災・原発事故からの復興です。復旧工事は行われていますが〝創生〟には至っていないので、そういう視点で復興を進めるべきです。2つはコロナ対応。まだ安心できない状況なので、いま受け皿対策や公衆衛生の管理の充実を徹底していく必要があります。3つは〝汚染水〟海洋投棄の問題です。投棄が完了するまで30年以上かかるとされることを踏まえ、県民の命を守るというスタンスで、問題が風化することない監視体制を構築する必要があります。環境、教育、福祉の充実・強化にもしっかり努めていきます」 ――昨年12月議会の代表質問で、JRの赤字路線への県の対応について質問していました。人口減少で鉄道維持が容易でなくなる中、県がどのように支援していくべきだと考えますか。 「県内の赤字路線では、まず地域住民の組織を作り、問題意識を共有化してから、行政が住民組織の提言を取りまとめ、財源の作り方を考えていく、という流れになっています。そういう意味では、まず地域ごと、駅ごとにまとまって組織を作っていけるかが重要になると思います。その道筋は行政側が責任を持って提供するべきです」 一言メモ 19時開始の個人演説会だけあって、力が入った長尺の演説。前段の後援会長のあいさつも力が入っていた。7期のベテラン議員だが、今回立候補した新人4人のうち2人は元いわき市議、ほか2人もそれぞれ維新公認、れいわ推薦を受けていることもあって、かなり警戒してる様子が見られた(荻野) 宮川絵美子 https://www.youtube.com/watch?v=467NOJKf-lw ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。 「県執行部には県民の生の声を聞いてほしい。給料はなかなか上がらないし、世論調査では教育費の負担を軽くしてほしいという声も多い。高校入学時のタブレット購入費を生徒が負担しているのは、東北では福島県だけです。高齢者の足の確保など高齢者支援も問題です。県議会ではその都度質問しています」 ――質問をすることで県執行部の対応は変わっていますか。 「問題提起をすると少し変わってくる。学校給食の無料化を訴えていたら、県内市町村が導入するようになった。子どもの医療費の無料化についても主張していたら、12年前の県議選の後に無料化が実現した。選挙は世論を喚起するチャンスであり、ずっと運動を続けてきたことに焦点が当たって、選挙の節目で変わっていくことも多いので、主張を続けることに意義があると考えています」 一言メモ イオンモールいわき小名浜前の道路沿いで、施設に向かって演説する宮川候補。買い物客は足を止めることなく施設に入っていった。定数10に対し13人が立候補する激戦区だが、有権者の盛り上がりは今ひとつ……という状況を象徴する光景だった。(志賀) 矢吹貢一 動画撮れず。 取材に応じず。 一言メモ 事前に事務所に確認したところ、「事務所の方針で街角演説をする考えはありません。市内で一日選挙カーを走らせて、20時ごろ事務所に戻る予定です」とのこと。やむなく20時前に事務所に訪れ、スタッフとともに戻ってきた選挙カーを出迎えた。降りてきた矢吹候補に「政経東北です。ちょっとお話しお聞かせいただけないですか」と話しかけると、あからさまに苦笑いを浮かべ、無言で手を横に振りながら事務所内に入っていった。 しばらく外で待っていると、スタッフが出てきて「すみません、これから打ち合わせなので……。明日も街頭演説の予定はなく、戻ってきた後も時間が取れません。せっかく来ていただいたのにすみません」と謝られた。街頭演説もせずマスコミ取材にも応じないということは、自分の意見を広く知ってもらえる機会を放棄しているようなもの。矢吹陣営としては、新たな票の開拓は必要なく、既存の支持者を対象とした演説会で余裕で当選できるという判断なのだろう。 翌朝8時過ぎ、宿泊したいわき駅前のホテルで仕事をしていたら、矢吹候補の選挙カーの声が聞こえてきた。急いで窓から外を眺めたが見つけられず、そのまま声は小さくなっていった。(志賀) 安部泰男 https://www.youtube.com/watch?v=lhjMYDQJjt0 ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。 「これまで信念として取り組んできたのは、住民が安全に暮らせる環境を作るということであり、防災・減災に対する思いは強いです」 ――9月議会の一般質問ではパートナーシップ・ファミリーシップ制度の導入について質問していました。県執行部は質問を受けて何か具体的に動きましたか。 「LGBT当事者の方から直接相談を受けて質問したものです。男女共同参画社会を築くために差別のない社会を築く、という県の方針を示したうえで、総括質疑では導入に向けてやっていくと答弁していました。県内市町村で導入の動きが加速しているのに県が何もやらないわけにはいかないと思います」 一言メモ 山口那津男公明党代表が応援に来ることもあって、エブリア北側駐車場の一角に公明党支持者100~200人が集結。SP・警察も多数。そのにぎわいに圧倒される。「いわき市に免許センターがないので、免許証がすぐにもらえない。県内で最も人口が多いのに。改善すべきだ」という主張はこの地域に住んでいなければ分からない視点で、ハッとさせられた。これこそ選挙漫遊の魅力。(志賀) 古市三久 https://www.youtube.com/watch?v=YV0IrOHy6O0 ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。 「人口減少、少子高齢化で地域が衰退していることです。中山間地では草刈りをする人も減っており、自分で買い物に行くのも難しいという人が現実にいる。もし当選できたら総括質疑という形でなく、一般質問で問題提起したい」 ――ALPS処理水の海洋放出反対のスタンスを取っており、県議会でも陸上保管すべきと主張していたが、県は国の海洋放出方針に追随する形になりました。 「内堀雅雄知事が県民を代表して反対の声明を出すべきだったと考えています。これは新聞社などのアンケートにも書いている点です」 一言メモ 処理水海洋放出、原発事故収束作業に正面から疑問を呈するスタンス。海に面するいわき市選挙区でも意外とこういう演説は少ない。平日ということもあってか聴衆は2、3人だった。(志賀) 鈴木智 https://www.youtube.com/watch?v=CCwk0J33tMs ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。 「いわきにおいては水害対応だと考えています。自民党県連の動きと連動して、発災翌日から内堀雅雄知事に現地視察に入ってもらい、被害状況や地域の皆さんの声を聞いてもらいました」 ――令和5年9月議会の一般質問で、ドライバー不足が小名浜港の貨物に与える影響について質問していました。 「小名浜港に影響が出るのであれば質問しなければならないと考えた次第です。問題が可視化されるのに加え、県執行部も私も理解も深まるので、こうした質問をするのは意義があることだと考えています」 一言メモ 3連休最終日に予定されていた鹿島公民館での個人演説会。前回選挙では8位当選(定数10)だったこともあってか、応援弁士や陣営幹部からは気を引き締めるよう求める発言が続出。坂本竜太郎氏の県議選立候補見合わせで、逆に混乱している印象だった。(志賀) 青木稔 https://www.youtube.com/watch?v=Y0yiCo0MrsU ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。 「演説でも触れたが、やっぱり一番のポイントは人口減少。安心して働ける企業を誘致できるかが重要になると思う。そういう意味で注目しているのが福島イノベーション・コースト構想であり、エフレイ(福島国際研究教育機構)です。実現すれば必ず有力企業が来るので、いかにいわきの方につなげられるかが重要になります。そのために私も自民党県連としての立場でできる限りのことに取り組む考えです」 ――現在9期目で、演説では当初立候補を見合わせる方針だったという話もありました。 「年齢も年齢なので家族と相談して立候補を見合わせる決意をして、周囲にも伝えていましたが、さまざまな方から要請を受け、再び立候補することを決意しました」 一言メモ 地元・中央台の公民館で個人演説会を開催。参加者は約30人でほとんどが年配の方々。自民党県連いわき支部の重鎮ということもあって、森雅子参院議員のほか、今後の動向が注目される坂本竜太郎県議、市議らが応援演説に駆けつけた。1945(昭和20)年生まれで、いわき市議時代を含め議員生活は40年以上に上る。最後は10選に向けてガンバロー三唱。パワフルさでは誰にも負けていない。(志賀) 木村謙一郎 https://www.youtube.com/watch?v=ZVBagsrdRFQ ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。 「河川整備を進めて水害の減災・防災に努めるのも必要だし、一次産業の後継者不足も深刻です。一番大きいのは人口減少ですね。都市部、山間部、それぞれ事情が異なるので、しっかり議論して解決していかなければならないと思います」 ――立候補を決意した理由は。 「11年にわたり市議会議員として活動してきましたが、市議会議員では解決できない問題にたびたび直面してきました。たとえば医療問題などは県にイニシアチブを発揮してもらわなければ改善は難しい。加えて現役世代として声を聞いてほしいという思いや、いわき市の中心部から外れた久之浜地域を代表する立場から県議会で意見を述べていきたいと思いがあり、立候補を決意しました」 一言メモ 昼前の時間帯にしては人の集まりがまばらだった。支持者は子育て世代と高齢者の人が中心の印象。演説でも触れていたように「久之浜地区から県議を!」という気概が非常に強く、地元での遊説の様子も気になるところ。(荻野) 山口洋太 https://www.youtube.com/watch?v=fX1X0UkWfaM ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。 「演説でお話しした通り、現役医師としていわき市で働くようになって医療体制に課題を感じ、そこを改善すべきだと考えたので立候補を決意しました」 ――れいわ新選組の推薦を受けていますが、無所属で立候補した理由は。 「基本的には特定の政党に属さず、市民から聞いた話を基に政策を打ち出していきたいと考えています。これまで1万8000軒を超えるお宅にお邪魔して話を聞いてきました」 一言メモ 演説予定場所の商業施設前に、ピンク色の選挙カーがさっそうと登場。聴衆は支持者と思われる高齢者が数人。車内から手を振るドライバーも。「この間1万8000軒以上を訪問した」という言葉は伊達じゃないということか。33歳という若さ、現役医師が医師不足解消を訴える点も支持拡大につながっている様子。(志賀)
「勝手に連動企画『政経東北』でも選挙漫遊をやってみた」。 11月2日告示、12日投開票の福島県議選。福島市、郡山市、いわき市、会津若松市各選挙区の立候補者39人を本誌スタッフ総出で取材し、選挙漫遊(街頭演説などに足を運んで選挙を積極的に楽しむ)を実践しようというもの。 11月5日(日)、6日(月)の2日間、街頭演説会場に足を運び、その様子を写真と動画で記録。併せてインタビュー取材も実施した。現職には「県政・県土の課題は?」、新人には「立候補した理由は?」などについて質問した。立候補者はどのような選挙活動を展開し、どんな事を話したのか。 担当 佐藤仁 福島県議選【会津若松市】編 https://youtu.be/H3LrOAB1K0E?t=5569 【福島県議選】投票前日!【選挙漫遊】総括 投票の判断材料に!福島・郡山・いわき・会津若松会津若松市の解説は1:32:49~ 定数4 立候補者5 告示日:2023年11月2日 投票日:2023年11月12日 立候補届出状況↓ https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/601555.pdf 選挙公報↓ https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/601647.pdf 届け出順、敬称略。 あわせて読みたい 【福島市】選挙漫遊(県議選) 【いわき市】選挙漫遊(県議選) 【郡山市】選挙漫遊(県議選) 水野さち子 https://www.youtube.com/watch?v=b3Eu3Gw4XPk 候補者のコメント 私は7月の会津若松市長選に立候補しましたが、あれだけ票を離されれば(※4選された室井照平氏が2万3231票に対し、水野氏は1万3738票)、市民の皆さんは現状維持を望んだのだろうと思います。県議を2期務め、2019年の参院選に落選した後、4年間の浪人生活を経て臨んだ市長選だったので、いったんは全ての電話も解約して区切りをつける考えでした。しかし、支援者への挨拶回りをする中で「これで終わってもらっては困る」「議員として働いてほしい」というたくさんの声をいただき、私自身も「自分の人生、これで終わっていいのか」と8月いっぱい熟慮した結果、3期目を目指して県議選に挑むことを決断しました。「市長選に出たのは県議選を見越して」という見方があるのは承知していますが、身近な人ほど私の真意を理解してくれていると思っています。 まずは会津若松市が先頭に立って会津の基幹産業である観光の再興を成し遂げることが大切です。そうすることで交流人口、関係人口が増加し、地域経済が活性化していくと考えます。只見線が注目を集める中、二次交通の整備や飲食、お土産、宿泊など県の立場でできること、県と会津17市町村が連携してやるべきこと、国にお願いすべきこと等々、でき得る施策はあるんだろうと思います。また、0~2歳児の保育料を所得制限なしで無償化することや、デジタル田園都市国家構想を生かして認知症の早期発見・治療を可能とするシステムをつくるなど、県独自では難しい施策を国と連携しながら実現を目指したい。 私は無所属で活動しています。他の政党からお声がけがあったのは事実ですし、今回も山口和之さん(日本維新の会所属の元参院議員)からため書きをいただきましたが、無所属なので「来るもの拒まず」のスタンスをとっています。 一言メモ 街頭演説は国道49号の大きな交差点で行ったため、足を止める人は皆無。ただ、車から手を振る人は数人いた。事務所は女性スタッフばかり。水野候補は「意識したわけではないが、支えてくれる人が集まったらこうなった」と話す。(佐藤仁) 佐藤義憲 https://www.youtube.com/watch?v=ywda67vOQQ4 候補者のコメント 今、福島県の課題は大きく二つあります。一つは人口減少、もう一つは次世代を育てる教育です。 大変残念なことですが、福島県では教員の不祥事が後を絶ちません。内堀雅雄知事も何とかしなければならないと悩んでおられますが、教員の質を上げると当時に教育の質も上げることが非常に重要と考えます。教員の働き方改革を進め、スリム化すべきところはスリム化する。そうやって教員の質を上げれば教育の質も上がっていくので、そこは現場に言うべきことを言っていきたいと思います。 その上で人口減少を考えた時、移住・定住をするにはその地域の教育レベルも一つの選択肢になるので、そこをしっかりやらないと、福島県は移住先の選択肢の中に入っていかないんだろうと思います。 一言メモ メガドンキの前で街頭演説を行ったこともあり、若い買い物客数人が立ち止まって聞いていた。中学生くらいの男子2人も近くで演説を聞いていた。この場所を選んだのは、メガドンキ内に期日前投票所が設けられているため、投票を棄権しないように呼びかけることと、投票するなら自分の名前を書いてもらおうという狙いがあったようだ。 応援弁士として広瀬めぐみ参院議員(岩手選挙区)が駆け付ける。大竹俊哉市議、長谷川純一市議の姿もあった。(佐藤仁) 佐藤郁雄 https://www.youtube.com/watch?v=W9DUoKJU6NA 取材に応じず。 一言メモ 当初は取材に応じるとしていたが、当日になって事務所から「現在当落線上におり、大変厳しい選挙となっている。1人でも多くの有権者と接するには5分でも10分でも時間が惜しい。大変勝手を言って申し訳ないが、取材は遠慮させてほしい」という断わりの連絡が入る。 街頭演説には広瀬めぐみ参院議員(岩手選挙区)が駆け付ける。スタッフ10人弱、支持者10人弱と多くはなく、立ち止まって演説を聞く人は皆無だったが、佐藤氏を支持する人が集まったこともあり、一定の熱量は感じられた。 一方、当落線上にいることは本人も実感しているのか、少し落ち着かない様子も見られ、街頭演説の開始は14時半からなのに、14時25分ごろに「もう始めてもいいかな」と言い、支持者から「慌てるな。あと5分あるぞ」とたしなめられるシーンもあった。(佐藤仁) 渡部優生 https://www.youtube.com/watch?v=0X2lJQhc2MY 候補者のコメント まずは災害に強い県土づくりが大切です。毎年のように大きな災害が発生し、県民の命に関わる状況が起きているので、早急に対応する必要があります。建物や橋などの耐震強化や河道掘削など、県が取り組むべきことはたくさんあると思います。 震災・原発事故からの復興も大切です。令和7年度で「第2期復興・創生期間」が切れますが、県内を見渡すと復興はまだまだ道半ばです。第3期への計画延長と、その裏付けとなる予算をどう確保するかは福島県にとって喫緊の課題です。 急速に進む人口減少にどう対応するかも問題です。人口流出をいかに食い止めるか、そして流入を促すために魅力的な雇用の場を生み出せるか。企業誘致と産業基盤強化は私が最も訴えている政策の一つです。 どうも今の福島県はイノベーション・コースト構想やロボット、水素や廃炉など、浜通りに設置した次世代産業に目を向けがちですが、現実的には自動車や半導体など、国が注力している産業やサプライチェーンにもっと注目してもいいのではないかと考えます。 会津ならではの産業、具体的には観光、農林業、酒や漆器に代表される地場産業、さらには会津大学と地元資源の掘り起こしや磨き上げも必要なんだろうと感じています。 一言メモ 前日に事務所に問い合わせた際、街頭演説は「18時半からリオン・ドール会津アピオ店前」と伝えられていたが、実際はそれより1時間も早い17時半から始まっていた。おかげで渡部候補の街頭演説の動画を収録できなかった。現場にいた事務所スタッフに「予定では18時半からではなかったか」と尋ねると「変更になったことを連絡しようと思っていたが忘れていた」とのこと。スタッフの対応の良し悪しは候補者の評判に直結するので、注意されてはいかがだろうか。 演説には小熊慎司衆院議員と馬場雄基衆院議員が駆け付ける。夕方で辺りは暗く、足を止めて演説を聞く人は皆無。ただ、10人近い支持者が集まり、拍手と声援を送っていた。(佐藤仁) 宮下雅志 https://www.youtube.com/watch?v=HHc1ct7vu14 候補者のコメント 人口減少が一番の課題だと思います。選挙戦では、今やらないと間に合わない、そこに真正面から取り組むべきだと強く訴えています。 それと同時に、安心・安全な暮らしを送れるよう雇用の創出や景気対策、医療・福祉や災害対応などを進めていくことが大切です。こうした取り組みが地域の魅力を高め、ここに住み続けたいと思う、あるいは他の地域から移住したいと思う条件になると考えます。併せて、そこに高い文化力も備わってくればワクワクした地域となり、自然とそこに住みたい、住み続けたいという気持ちが芽生えてくるのではないか。 会津には「ならぬものはならぬ」という考え方があります。それを地場のものづくりに照らし、若者を中心としたごまかしの利かない、真面目なものづくり産地を構築していけば人間力の向上にもつながると思います。文化力と人間力で地域の魅力を高める、これが私の持論です。 正直、こうした取り組みは非常に長くかかるし、すぐに結果が出るわけではなりません。しかし、人口減少が急速に進む中、今始めないと間に合わなくなるというのが今回の私の最大の主張です。 人口減少は何か一つやれば解決するものではありません。ただ、これまでと同じことをやっていては意味がなく、子育て支援についても今までの常識にとらわれない大胆な財政出動等をする必要があるんだろうと思います。県独自でやれることはきちんとやりつつ、国に求めることはしっかり求めていく。それをスピード感を持って、他県に先駆けてやらないと福島県としての特色は出せないと思います。 一言メモ 個人演説会は19時から一箕公民館で。用意した30席に対し25人くらい集まる。演説の後は出席者から鋭い質問も寄せられ、宮下候補が答える場面もあった。集まったのは熱心な支持者ということもあり、それなりの熱が感じられた。 小熊慎司衆院議員が応援弁士を務め、馬場雄基衆院議員が来賓として出席していた。(佐藤仁)
マスコミが伝えない候補者の人柄 月刊「政経東北」11月号に、本誌に連載していただいている畠山理仁さんの映画「NO選挙,NO LIFE」公開を記念したインタビュー記事を掲載した。畠山さん、前田亜紀監督、大島新プロデューサーに映画の見どころや選挙の魅力について語ってもらったもの。 詳細は誌面で読んでいただきたいが、選挙取材にかける畠山さんの情熱に触れて、本誌記者は居ても立っても居られなくなり、このたび新たな企画に挑戦することになった。 その名も「勝手に連動企画『政経東北』でも選挙漫遊をやってみた」。 11月2日告示、12日投開票の福島県議選。福島市、郡山市、いわき市、会津若松市各選挙区の立候補者39人を本誌スタッフ総出で取材し、選挙漫遊(街頭演説などに足を運んで選挙を積極的に楽しむ)を実践しようというもの。 11月5日(日)、6日(月)の2日間、街頭演説会場に足を運び、その様子を写真と動画で記録。併せてインタビュー取材も実施した。現職には「県政・県土の課題は?」、新人には「立候補した理由は?」などについて質問した。立候補者はどのような選挙活動を展開し、どんな事を話したのか。 担当 佐藤大 補佐 佐々木 福島県議選【福島市】編 https://youtu.be/H3LrOAB1K0E?t=597 【福島県議選】投票前日!【選挙漫遊】総括 投票の判断材料に!福島・郡山・いわき・会津若松福島市の解説は9:57~ 定数8 立候補者9 告示日:2023年11月2日 投票日:2023年11月12日 立候補届出状況↓ https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/601554.pdf 選挙公報↓ https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/601651.pdf 届け出順、敬称略。 あわせて読みたい 【会津若松市】選挙漫遊(県議選) 【いわき市】選挙漫遊(県議選) 【郡山市】選挙漫遊(県議選) 誉田憲孝 https://www.youtube.com/watch?v=mRf88TnrX5o ――県政、県土の課題は? 「回っていて一番言われるのはやっぱり物価高です。家計のやりくりが厳しくなっているという方が現実的に多いですね。家庭の収入を上げていくためには、中小企業へのテコ入れが必要でしょう。 農業についても、いろんな資材費用などが高くなっているので、それをいかに価格に乗せていくかが課題だと思います。 ほかにも、『今年はリンゴの色づきがすごく悪い』などの話も聞きました。そういった気候変動に対する農業の手当なども大事になってくると思います」 ――立候補した理由は? 「市議を8年務め、いろんな政策を立案してきましたが、市の財政状況が厳しいという現実があり、市議会だけではどうしようもない部分がありました。そういったものを解決していくためには、予算なども含め県のテコ入れが必要だろうと感じていたので、自分が市と県の繋ぎ役になりたいと考えました」 一言メモ 街頭演説の場所も相まってか「アットホーム」を感じる選挙活動に思えた。4年前の雪辱を晴らすため、新人ならではの「必死さ」も感じ取れ、取材にも快く応じていただき、好印象だった。事務所から取材を終えて帰るときに「お見送り」までする徹底っぷり。 根っからの明るさや笑顔がひしひしと伝わってきたので、「人前に出るってことは、こういうことを自然にできる人」なんだなと感じた。(佐藤大) 佐藤雅裕 https://www.youtube.com/watch?v=SICPZdOyuhk ――県政・県土の課題は。 「街頭演説でも話した通り、人口減少に尽きます。①事業者の人手不足、後継者不足、②地域活動の担い手不足、③マーケットの縮小などの影響が出ると考えられ、進行すれば地域が維持できなくなるので、早急に対策を講じる必要があります。地域の魅力づくり、産業振興など、総合的に底上げしていかないと解決しない問題だと思うので、たとえ商工業についての質問・意見を出す際も、必ず人口減少を踏まえた形で行うようにしています」 ――令和3年2月議会で、相馬福島道路霊山インターチェンジと福島市中心部のアクセスを良くするため、県道山口渡利線を整備すべき、と質問していました。その後、整備状況に変化はありましたか。 「実現するとなれば、県単独ではなく、福島市や地元経済界、国も巻き込んだ大きな事業になります。県の担当職員などとやり取りする中で質問したもので、整備に向けたコンセンサスは形成されつつあると思います」 一言メモ 選挙スタッフに取材をお願いし、「忙しいところ申し訳ないが、取材可否の折り返しの電話をいただきたい」と伝えたが、折り返しがなかった。 翌日、「取材の件はどうなりましたか?」と選挙スタッフに問い合わせをすると、選挙スタッフが「あれ? 奥様から折り返しの電話いってないですか?」と言われ、私は「来てません」と伝えた。 その後、街頭演説の写真と動画の撮影をしに行った際、佐藤候補に直接「2,3分、取材をよろしいでしょうか」と尋ねると、佐藤候補は「すぐ出るから、申し訳ないけど、、」と言われたので、私が「そうですよね、忙しいところすみません。明日は事務所にいる時間ありますでしょうか?」と尋ねたら、佐藤候補が「選挙中だから」と言って立ち去った。 その後、選挙スタッフに電話をして、「ほかの候補者が取材を受けている中、2,3分の時間もとれないんですか」と伝えて電話を切った。 それから2日後、選挙スタッフから「今日の夜の8時だったら時間をとれます」と言われたので、私は「伺います」と伝えたが、もうすでに気持ちが冷めていたので、記者の志賀に取材を託した。 これが畠山さんだったら、新聞社だったら、取材をすんなり受けたか受けていないか。 故・佐藤剛男衆院議員の娘婿として県議になりたてのころは「謙虚さ」がみられたが、4期目を目指すともなるとこうも変わるのだろうか。 佐藤候補は、目の前の1票を捨てた。政経東北が福島市に会社があり、スタッフの多くが福島市の有権者だということも想定できないのだろうか。 「絶対に投票しない唯一の1人」確定となった。(佐藤大) 記者の志賀が取材を終えて↓ 「スケジュールが詰まっていて2、3分取るのも難しい。こういう取材をしたいなら事前に言ってもらわないと。今日は何とか時間を確保した」。陣営ごとの〝塩対応〟〝神対応〟を体験できるのも選挙漫遊の魅力だ。(志賀) 大場秀樹 https://www.youtube.com/watch?v=rfJWeMjUUx8 ――県政、県土の課題についてどう認識しているか。 「短期的課題としては原発の処理水放出問題。農水産物や観光業に風評被害の影響がまだ顕著にはなっていないが、それをどう防いでいくか。長期的課題としては超少子高齢化社会の中でいかに地域を守っていくか、また高齢者が安心した生活が送れるかが大きな問題と認識しています」 ――その課題解決に向け、どのような議会活動や取り組みを展開してきたか。 「処理水放出問題としては、SNSやテレビCM等による安全性について首都圏のみならず関西圏も含めて積極的に訴えていくべきと議会で発言しています。あわせて超少子高齢化問題については、交通弱者対策の一環であるバス路線の維持、不登校児童に対する積極的な支援についても訴えかけています」 ――県執行部の動きはいかがですか。 「風評被害対策については、補正予算を組むなど積極的に向き合っていると感じていますし、評価しています。また、不登校児童やさまざまな事情を抱える子ども達に対しても、NPO法人との連携強化、相談体制の充実を図ってきており、さらに進めていくべきと考えます」 ――県議会においては、令和5年6月議会にて「フルーツラインの整備状況」について質問されました。その後の県執行部の反応はいかがですか。 「福島市にはすばらしい温泉、自慢できる果物など魅力にあふれていますが、『点』の観光のままなのは残念。フルーツラインは『点』と『点』を『線』で結び、ひいては面的な観光振興における重要な道路です。ハード面としては、通行に難がある『天戸橋(あまとばし)』の整備について、議会ではしつこく質問しています。この間、予算の執行など目に見えて動きが進んでいると感じます」 一言メモ 聴衆の大半は男性高齢者であったがみな真剣に演説を聞いていた印象。一方でそれなりの熱気は感じた。(佐々木) 高橋秀樹 https://www.youtube.com/watch?v=cDO9Ommjau8 ――県政、県土の課題は? 「物価高と燃料費高騰というのは喫緊の課題だと思っています」 ――その課題を解決するためにどのように行動しましたか? 「経済支援について、県独自の施策について要望を知事の方にさせていただきましたが、多少なりともその要望に対して実現した部分はありました。 また今、国の方では所得税の軽減についても議論されているようですが、やはりそれだければ賄いきれないだろうところがありますので、さらなる要請もしていきたいですし、県独自の新たな政策を、経済状況を見ながら、求めていきたいなと思ってます」 ――令和5年2月の代表質問で「移住定住に向けテレワーク導入に対する施策を要望」していますが。 「もうひとつの課題は人口減少です。また、それに伴う労働人口の減少が課題です。県も二地域居住などを、移住促進計画として提唱していますが、さらにメスを入れていって改善できればと考えています。相談窓口を東京の日本橋に設けて、そういった取り組みに関して厚みが出てきているとは感じています」 一言メモ 朝早い中、快く取材に応じていただき、かなり好印象。時間と場所を決めた街頭演説を予定せず、30分毎ほどに立ち止まって遊説するスタイルが印象的だった。事務所スタッフの方々も丁寧に対応してくれて、そこも好印象。いくら候補者がよくても事務所スタッフの質が微妙だと、うまくいく選挙もうまくいかないと感じた。(佐藤大) 宮本しづえ https://www.youtube.com/watch?v=E_OWLVbFn_A ――県政、県土の課題は? 「この物価高ですから、どう政治がきちんと対策をとっていくのかってことが最大の課題だと思います。 例えば、物価高で何やるかって言ったときに真っ先にやるべきなのは消費税の減税です。しかし、県の執行部は『国が決めることです』としか答えません。国が決めることだったら『国で決めてくれ』と働きかけることが大事だと思うんです。 『今の県民の暮らしどうすんのよ』っていうのはなかなか具体的には見えてこないですね」 ――令和5年9月の統括審査会の質問で「ALPS処理水について、県漁連と国・東電との約束が破られていないと県が判断した理由」を尋ねていますが。 「約束が守られないということは、民主主義に関わる重要な問題です。一つ一つの約束事が破られていったら、廃炉の安全性に対する信頼そのものに関わる問題になります。 約束事を守らせるということをしっかりやらせないと、県民が安心して暮らせるかどうかっていうことにも関わってきます」 一言メモ 聴衆のほとんどが女性だったのが印象的だった。写真撮影をするスタッフもおり、共産党というのは組織的に動ける集団なんだなと感じた。 選挙カーについて。ほかの候補者のほとんどがボックスカーをレンタカーしている中、宮本候補は共産党が自前でもっている車を使用しているのも印象に残った。 政策は給食費無料というパンチ力と分かりやすさ。 宮本候補はJR福島駅西口のイトーヨーカドー福島店前の道路で演説をしたのだが、その後、東口のこむこむで伊藤達也候補の大観衆を見たこともあり、公明党と共産党の「力の差」をまざまざと見せつけられたことが印象的だった。 取材での宮本候補の印象はとても温和な方で話しやすかった。 (佐藤大) 半沢雄助 https://www.youtube.com/watch?v=aYqbfb6CN2g ――県議選立候補を決意した理由。 「先ほどの決意表明でお示しした通り。この間、医療従事者として勤務するとともに、労働組合活動にも注力してきた。このたび紺野長人県議の後継者に指名され、重責ではあるが責任を果たすべく、地盤(議席)をしっかり守ることが私の使命と考える」 ――県政、県土の課題について。 「人口流出問題が大きな課題と考える。解決に向け克服すべき点は多岐にわたるが、本県の維持・発展のためにも人口流出を防いでいる自治体を参考にしながら鋭意取り組む必要がある。また、医療従事者の経験から、また子を持つ親として『命と暮らし』を守りながら、次世代が住んで良かったと思えるような地域づくりや政策が重要と考える」 聴衆の大半は高齢者であったが、女性の割合が多い印象だった。新人候補ということもあり半沢候補者の初々しさもときおり感じた。(佐々木) 伊藤達也 https://www.youtube.com/watch?v=x4EDhiMTiyI ――県政、県土の課題は? 「喫緊の課題は人口減少です。また経済面では、航空宇宙産業のモノづくり人材の育成を推進していきます。開発企業と連携して『下町ロケット』ようになっていければと思っています」 ――令和5年9月の一般質問で「公衆衛生獣医師の確保」について質問していますが。 「動物愛護施策を進める上で、獣医師の確保はとても重要です。ただ、全国的に獣医師不足で取り合いとなっており、本県も職員が不足しています。動物愛護だけではなく産業用の獣医師も必要ですし、鳥インフルなどの脅威も踏まえて、県としての獣医師確保が課題となっております。 私が県に働きかけたことで、修学資金の新しい制度をつくらせていただき、獣医学生研修として『福島県家保研修』と『獣医学生福島体験』を実施しています。引き続き県への働きかけを進めていきます」 一言メモ 30分前に会場に着いたのだが、公明党の山口代表も応援に駆けつけることもあってか、既に警察が40人ほど、公明党スタッフが30人ほど居た。メディアも毎日新聞、共同通信、福島テレビ、ほかにも居た。 聴衆がいなかったので「聴衆よりも多かったスタッフと警察」というタイトルや筋書きを考えたが、開始前に聴衆があっという間に150人ほどとなり、「公明党のネットワーク力恐るべし」と感じた。 伊藤候補の政策も「ワンイシュー」に目を向けており、動物愛護の「アニマル伊藤」、航空宇宙産業に強い「スカイ伊藤」と、わかりやすかった。 私は創価学会員ではないが、公明党のように何か物事を遂行していくためにはパワーやネットワークが必要なのかもしれないと感じた。佐藤優氏の著書『創価学会と平和主義』を読んでいたこともあり、創価学会への偏見が薄れていたのも大きい。(佐藤大) 渡辺哲也 https://www.youtube.com/watch?v=8lMxuSzHznA ――県政、県土の課題は? 「人口減が喫緊の課題だと思っています。子育て支援や教育に注力しながら、20年、30年のスパンで、シニアの方にも元気で活躍してもらうような『まちづくり』をすすめて、次の世代につなげていくことが大事です。 高齢者の方々が元気に働ける環境を作っていくことが、人口減対策につながると思っています」 ――令和4年2月の一般質問で「市町村における犯罪被害者等支援条例制定に向け、どのように支援するか」質問しましたが。 「闇バイト事件を含めて、いつ誰がどこで巻き込まれるかわからない、そういった時代じゃないですか。 県には『安全で安心な県づくりの推進に関する条例』というものがあります。犯罪被害者支援についての文言が一文だけあったんですが、先進県や先進市町村では、見舞金の支給や加害者に代わって被害者にお金を寄付するような仕組みもあり、県は遅れをとっていました。県に『このまま何もしなければ、最後になりますよ』と訴えたら、改善に向けて動き始めました。県が動いたことで、市町村もそれに続いてくれており、要望したことが実現している実感があります」 一言メモ 飯坂温泉駅での街頭演説ということもあって、誉田候補と同様「アットホーム感」があった。 取材で事務所を訪れると、多くのスタッフが和やかにしており、雰囲気も良かった。 取材を受ける受けないでひと悶着あったのもあり、渡辺候補を勝手に「気難しい人」と決めつけていたが、会ってみるととても気さくで接しやすい方で、思い込みはいけないと感じた次第。 政策に関しても県議1期目らしい「ワンイシュー」に目を向けており、人口減や物価高などの大きな課題よりも現実的に見えて、よい印象を受けた。(佐藤大) 西山尚利 https://www.youtube.com/watch?v=jB8cE0t0Oww ――県政、県土の課題は? 「令和5年2月の代表質問で『入札の地域の守り手育成型方式』について質問しました。入札不正の一方で、地元の建設業に災害対策をしてもらわなければなりません。あらゆるものに対する備えと発信が必要だと思っています」 一言メモ 取材を受ける受けないで事務所スタッフと揉めたが、走行ルートの集合場所に行って西山候補に話を振ると「今ここで話すよ」と気さくに応じてくれた。人柄的に「飾らず、オープン」という感じで話しやすかった。街頭演説はせず選挙カーを走らせるだけのスタイルのため、動画が短くなっている。 取材の可否のほか、走行ルートを選挙スタッフに尋ねたが、間違った情報を伝えられた。ボランティアで働いている人もいるのだろうから、企業並みの対応を期待するのは間違っているのかもしれないが、「なんだかな」と感じた。(佐藤大)
元町長に大差をつけた渡部裕太氏 町の課題を語る渡部裕太氏 本誌2019年6月号に「南会津町議選 湯田芳博氏当選で嵐の予感」という記事を掲載した。 4年前の南会津町議選に、元町長の湯田芳博氏が立候補し、2位当選者の倍近い得票数(1466票)でぶっちぎりのトップ当選を果たしたことを報じたもの。 湯田氏は昨年4月の南会津町長選にも立候補したが、元副町長の渡部正義氏との対決に敗れ、4度連続の町長選落選となった。すると、今年4月の町議選に立候補した。 今回も圧倒的な票数でトップ当選するのかと思いきや、湯田氏と同じ田島地区の新人候補がその座を奪い取った(別掲参照)。 選挙結果(4月23日投開票、投票率77・74%)当1538渡部 裕太 (31)無新当836湯田 芳博 (72)無元当755渡部 訓正 (69)無現当626丸山 陽子 (68)公現当575古川 晃 (62)無新当543芳賀 正義 (75)無新当540山内 政 (70)無現当499楠 正次 (68)無現当449湯田 哲 (66)無現当446森 秀一 (72)無元当434川島 進 (68)無現当430室井 英雄 (66)無現当422酒井 幸司 (65)無新当392高野 精一 (73)無現当328星 和孝 (57)無新当297湯田 剛正 (62)無新275馬場 浩 (61)無現 「若い議員は少ないので、トップ当選を目指し、できる限り多くの方に得票してもらいたいと考えて全力で活動していました」 こう語るのは31歳で町議となった渡部裕太氏だ。今回の当選者では最年少となる。 会津高卒。「地域医療に携わりたい」と自治医大入学を目指し、予備校に通いながら浪人生活を続けている中で、2019年、父親の渡部英明氏が県議選に立候補することになり、手伝いのため同町にUターン。結局、父親は選挙戦で敗れたが、そのまま町内の企業に就職した。 こうした活動中に驚かされたのが、若い世代の選挙への関心のなさだ。 「民間企業だと退職するぐらいの年齢の人が議員を務めており、接点も親近感もない」という意見が聞かれた。それならば、若者が1人でも議員になることで、思いが伝えやすくなり、政治参加もするようになるのではないか――。 渡部氏は地元に戻って以来、地域のスポーツ活動、山岳救助消防団など、さまざまな活動に参加していた。多くの人の話を聞く機会がある自分が若い世代の受け皿になろうと考えた。その結果、多くの票を得て町議に当選したのだから、期待している人が多いということだろう。 会社員との兼務生活 経営者の理解を得て、地元の建材店に勤めながら、議員活動に取り組む。ちなみに地方自治法では町の事業を請け負う企業の役員が地方議員を兼ねることが禁じられているが、渡部氏は役員にはなっていない。議会の会期中は閉会後に会社に戻って仕事をこなす。「正直、当選後は休みがありません」と笑う。 公約には空き家の活用、体験型観光資源の創出、地域の魅力発掘などを掲げた。6月定例会では、早速空き家対策について執行部にただした。 「現場に行って話を聞いて初めて分かることも多い。例えば、移住者を増やすための施策が行われているが、『移住者のニーズとはかみ合っていない』という声が聞かれる。町への窓口、つなぎ役としての役割を果たしていきながら、公約実現を目指していきたい。特に空き家問題については、いま会社で不動産部門を担当しており、現場でその実態を知っているという強みがあるので、積極的に取り組んでいきたいですね」 11月に父親の渡部英明氏が県議選に再び立候補することについては「もし当選させてもらえば、相互に連携して県・町のパイプ役として機能できると思います」と語る。 地域を問わず入れてもらった多くの票は若き立候補者への期待の表れ。後は行動で示すだけだ。
地域おこしで移住した長友海夢氏 猪苗代町は、6月に町長選が行われ、そこに佐瀬誠氏、佐藤悦男氏の2人が議員を辞職して立候補したほか、二瓶隆雄氏が在職中の2021年4月に亡くなったことで欠員3となっていた。 そのため、町長選と同時日程(6月13日告示、18日投開票)で議員補欠選挙が行われた。町議補選には、長友海夢氏(27)、山内浩二氏(68)、松江克氏(68)の3人が立候補し、無投票での当選が決まった。ちなみに、町長選は前述の佐瀬氏、佐藤氏のほか、二瓶盛一氏、高橋翔氏の新人4人が立候補し、二瓶氏が当選を果たした。 議員任期は来年2月までで、今年6月の町議補選で当選しても、任期は約8カ月しかない。そんな事情もあり、町内では「この時期の補選では、なかなか立候補しようという人が出てこない」と言われていた。 実は、4年前の町長選の際も、現職町議が町長選に立候補したことと、現職議員の死去によって欠員2が生じ、町議補選が行われた。ただ、事前の立候補予定者説明会では出席者がゼロで、告示日当日になっても、「立候補者が出てこず、欠員のままになるのではないか」と囁かれていたほど。最終的には急遽2人が立候補し、無投票で当選が決まったが、なり手不足を嘆く町民は少なくなかった。 今回の町議補選前も、「時期(残任期が短い)的なこともあり、なかなかなり手がいない」と言われていたが、選挙戦にはならなかったものの、欠員3を埋めることができた。 その中で注目されるのが長友氏だ。選挙時は27歳で、県内最年少議員になる。 長友氏はどんな人物なのか。町内複数人に聞いてみたが、「分からない」という人がほとんど。知っている人でも「地域おこし協力隊でこっちに来た人のようだね」という程度で、「それ以上のことは分からない」とのこと。 経歴と移住の経緯 ひし駆除(採取)の様子=長友氏提供 長友氏に話を聞いた。 1995年8月生まれ。現在28歳(選挙時は27歳)。栃木県出身だが、アルペンスキーをやっており、猪苗代町を練習拠点にしていた。小学5、6年生のときは同町内の小学校に通っていた。 その後、中学校は地元栃木県の学校に通い、高校は日大山形高校、大学は日大体育学科でスキーを続けた。競技者としては大学までで一区切りとし、卒業後は通信系の会社に就職した。 そこで3年ほど働いたが、ひたすら自社の利益だけを求められる環境だったようで、「収入(高収入を得ること)よりも、人や地域の役に立つ仕事がしたい」と思うようになったという。 そんな折、猪苗代町で地域おこし協力隊員を募集していることを知り、「思い入れのある猪苗代町で、地域のために仕事がしたい」と応募、2020年4月から3年間の任期で地域おこし協力隊員(※総務省HPに掲載されている地域おこし協力隊の概要を別掲)になり、移住した。 地域おこし協力隊は、都市地域から過疎地域等の条件不利地域に住民票を異動し、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこし支援や、農林水産業への従事、住民支援などの「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を図る取り組みです。隊員は各自治体の委嘱を受け、任期はおおむね1年から3年です。 具体的な活動内容や条件、待遇等は各自治体により様々ですが、総務省では、地域おこし協力隊員の活動に要する経費に対して隊員1人あたり480万円を上限として財政措置を行っています。また、任期中は、サポートデスクやOB・OGネットワーク等による日々の相談、隊員向けの各種研修等様々なサポートを受けることができます。任期終了後の起業・事業継承に向けた支援もあります。 令和4年度で6447名の隊員が全国で活動していますが、地方への新たな人の流れを創出するため、総務省ではこの隊員数を令和8年度までに1万人とする目標を掲げており、目標の達成に向けて地域おこし協力隊の取り組みを更に推進することとしています。 長友氏は、その任期中の昨年7月に㈱いなびしを設立した。 「猪苗代湖の水質環境保全事業を行っているのですが、毎年、夏になると大量の『ひし』(水草)が発生します。それを放っておくと腐敗してヘドロになるなど、水質汚濁の原因となってしまいます。そのため、ひしの駆除を行うのですが、それを有効活用する目的で設立したのが『いなびし』です」(長友氏) ひし駆除(採取)の様子=長友氏提供 社名は、地名(猪苗代)とひしから取ったもの。ひしは湖にとって厄介者で、行政が船を出すなどして駆除し、それを運搬・処分していた。当然そのための費用がかかる。長友氏(いなびし)は、その厄介者を資源にできないかと考え、「猪苗代湖産ひし茶」として商品化した。本誌記者も取材中にいただいたが、味はそば茶と似ている。 猪苗代湖産ひし茶=長友氏提供 「現在は、道の駅猪苗代で販売しているほか、町内のカフェや旅館、アクティビティー施設などで使ってもらっています。クセがなく飲みやすいので、食事、特に和食に合うと思います。商品の売り上げの一部は水質環境保全事業に寄付しています」(同) 今後は海外への販売も視野に入れている。ひしの実は、乾燥するとかなりの硬度になり、古くは忍者が敵の足元に撒き、動きを鈍らせるための道具「マキビシ」の元になっていたとも言われているという。ひしを撒くから「マキビシ」というわけ。 「どの国に、どんな形で売り出すかはまだこれからですが、海外で忍者人気は高いですから、マキビシエピソードと絡めて『ニンジャティー』といった形で売り出せば、海外の人にも興味を持ってもらえるのではないかと考えています」(同) このほか、郡山市の猪苗代湖畔に畑を借り、ひしの実を肥料化する取り組みも進めている。また、町内新町の空き店舗を借りて事務所兼店舗にしており、ひし茶の製造のほか、教育旅行・ツアー等の体験コンテンツ提供、そば店、そば打ち体験、夏季の日曜日限定のかき氷販売などを行っている。 これら事業は、新しいビジネスへの挑戦や、地域課題の解決に取り組むビジネスプランを表彰する「ふくしまベンチャーアワード2022」で優秀賞に輝いた。 議員になったきっかけ ひしの実 こうした事業を営むかたわら、議員に立候補しようと思ったきっかけは何だったのか。 「会社勤めをしていた時に、取引先企業の担当者が政財界とつながりがあり、私もそうした場に行くことがありました。その時は、議員になろうとかではなく、それまで縁遠かった議員について認識することができました。その後、会社を辞めて、地域おこし協力隊に応募した際、役場の課長さんの面接があったのですが、その時に『ここで、地域のためになる仕事がしたい』、『いずれは起業したいし、議員として地域のために働きたいと考えている』ということを伝えました。今年3月に地域おこし協力隊の任期が終わり、この機会だと思って立候補しました」 長友氏によると、県内他地域では地域おこし協力隊で移住し、後に起業するという事例が、もっと活発に行われているところもあるという。そのため、「議員として、地域おこし協力隊のさらなる活性化に加えて、自分が空き店舗を借りて事務所兼店舗にした経験から、空き家・空き店舗の有効活用、移住促進、統廃合によって空いた学校の有効活用などに取り組みたい」と意気込む。 9月は議員になって初めての定例会が行われる。そこで、一般質問デビューを果たすべく、いま(本誌取材時の8月下旬)は、数ある課題の中から何を取り上げるか、限られた時間で効率よく質問するためにはどうするか等々を思案中という。
新人でトップ当選を果たした深谷勝仁氏 本誌6月号に「須賀川市議選 異例の連続無投票が現実味」という記事を掲載した。任期満了に伴う須賀川市議選は、7月30日告示、8月6日投開票で行われたが、事前情報(6月号記事掲載時点)では、「無投票の可能性が高い」と言われていた。 前回(2019年8月)は、同市にとって、1954年の市制施行以来、初めての無投票で、市民からは「連続無投票は避けなければならない」、「無投票になった次は多くの候補者が出そうなものだが、そうならないのが問題だ」といった声が出ていた。 その後、7月3日に立候補予定者説明会が開かれ、それまで立候補の動きがなかった新人3陣営が出席。このうちの1人が正式に立候補表明したことから、定数24に25人(現職19人、新人6人)が立候補し、8年ぶりの選挙戦となった。 結果は別掲の通り。現職19人、新人5人の計24人が当選した。投票率は45・28%で、過去最低だった前々回の55・89%を10・61ポイント下回り、過去最低を更新した。 選挙結果(8月6日投開票、投票率45・28%)当 3141 深谷 勝仁 (39)無新当 1914 松川 勇治 (45)無新当 1640 鈴木 正勝 (70)公現当 1380 大河内和彦 (56)無現当 1334 深谷 政憲 (66)無現当 1278 大寺 正晃 (61)無現当 1206 溝井 光夫 (62)無現当 1203 佐藤 暸二 (67)無現当 1159 横田 洋子 (64)共現当 1078 鈴木 洋二 (64)無現当 1078 本田 勝善 (58)無現当 1072 浜尾 一美 (51)無現当 1067 五十嵐 伸 (60)無現当 1039 堂脇 明奈 (40)共現当 1016 大内 康司 (83)自現当 891 古川 達也 (50)無新当 881 市村 喜雄 (66)無現当 881 関根 篤志 (47)無新当 768 斉藤 秀幸 (47)無現当 767 石堂 正章 (65)無現当 722 柏村 修吾 (66)無新当 588 大柿 貞夫 (71)無現当 573 熊谷 勝幸 (52)無現当 516 小野 裕史 (54)無現 513 桜井 誠 (37)無新 この中で目に付くのが、新人でトップ当選を果たした深谷勝仁氏(39)。今回の当選者では最年少になる。 選挙戦となった直近3回の最多得票は2015年が2098票、2011年が2005票、2007年が2472票といずれも2000票から2500票の間。今回の深谷氏は3141票で、それらを大きく上回っている。今回2番目に得票が多かったのは新人の松川勇治氏(45)で1914票だから、2位に約1200票差を付けている。過去のトップ当選者との比較に加えて、今回の低投票率を考えると、深谷氏の得票がいかに多いかがうかがえよう。 深谷氏はどんな人物なのか。 本人のSNSなどに掲載されたプロフィールによると、1984年生まれ。須賀川高校(現・須賀川創英館)、東北文化学園大学医療福祉学部卒。2007年に市社会福祉協議会の職員となり、今年3月まで勤務した。 年度末に社協を辞め、4月以降は市議選の準備をしてきた格好だ。 過去に仕事上の付き合いがあったという市民はこう話す。 「深谷氏は、福祉を必要とする高齢者や障がい者、その家族などからの信頼が厚く、彼のことを悪く言う人は聞いたことがありませんね。そのくらい、誠実で人柄がいい。それに加えて『若さと実行力』というキャッチフレースが有権者に響いたのだと思います。社協職員の経験から、『社会的に弱い立場の人への支援』といったことも訴えており、それも共感を得たのでしょうね」 さらにある市民はこう語る。 「深谷氏の実家は、栄町にある『深谷石材店』で、そこは深谷氏の実兄が継いでおり、深谷氏自身もその近くに住んでいます。今回の選挙では、これまで栄町には議員がいなかったことから、『この地区から議員を出そう』と、町内会がかなり支援したようです(※編集部注・深谷氏の自宅は市内中山だが、栄町、中山などを含む複数大字の地区が新栄町町内会に該当する)。また、深谷氏は学生のころから熱心に野球に取り組んでおり、いまも『市町村対抗福島県軟式野球大会』に出場するなど、野球繋がりの支援も多かった。加えて、社協職員時代に、高齢者や障がい者、その家族などの評判も良かったから、そういった層も深谷氏に投票したと思われます。その結果、断トツの得票数になったものと思われます」 一方で、ある議員経験者は「ちょっと勝ち過ぎの感もある」と話す。 「表立っては言わなくても、深谷氏があれだけ票を取ったことで、自分の票が減ったとか、そういう思いを抱いている人もいると思う。もちろん、それはその人(票を減らした人)の問題なんですが、どうしても、こういう世界は、妬み嫉みがありますからね。まさか、議員活動を妨害されるようなことはないとは思いますが、ちょっとしたことで揚げ足を取られるようなこともあるかもしれない。深谷氏にはそういったことに気を付けつつ、萎縮することなく頑張ってほしいですね」 深谷氏に聞く 深谷氏に話を聞いた。なお、本誌が取材したのは8月22日で、議員任期がスタートする前だった。 ――議員を目指したきっかけは? 「社会福祉協議会に勤務していた時の最初のころは高齢者福祉、後半は障がい者福祉を担当していました。その中で、高齢者福祉、障がい者福祉ともに、まだまだ課題があると感じており、『福祉の充実』を図りたいというのが、議員を目指した一番の要因です」 ――3000票オーバーという得票についてはどう捉えているか。 「正直、驚いています。喜びと同時に責任を感じます」 ――本誌取材では、若い世代、高齢者・障がい者福祉を必要としている人、その家族などに支持が広がったと聞いている。 「確かに、新聞等では『若い世代の票が入った』と書かれていましたが、実際にどうだったかは分析が追いついていません。ただ、私自身、小学生の娘が2人いますから、子育て世代や、高齢者・障がい者福祉を必要としている人たちの思いは受け止められると思っていますし、(任期スタート後は)そのための活動をしていきたいと思っています」 ――もう1つは、町内会の支援が大きかったとも聞いた。 「新栄町町内会では、(議員が誕生するのは)40年ぶりくらいだそうです。この地区では、JR須賀川駅西口開発(※深谷氏の地元は須賀川駅西側に当たり、須賀川駅は西側から駅に出入りすることができないため、西側に出入り口と駅前広場をつくる計画が進められている)などの動きもありますから、そういった点からも、町内会の皆様に応援していただけたのだと思います。そのほか、同級生、先輩・後輩にも支えていただきました」 ――当然、議会の常任委員会は、福祉関係を所管する委員会に所属したい? 「その辺はどうなんでしょうか。市議会は会派制ですから、会派で誰がどの委員会になるかということだと思います」 ――就任後すぐに9月定例会(※通常は9月中に行われるが、選挙があった年は9月末から10月にかけて行われる)が開かれることになるが、早速、一般質問をするか。 「その辺も、会派の構成などが決まってからですかね」 議員の任期は9月4日からスタートする。「若さと実行力」を売りにする深谷氏の今後に注目したい。
県発注工事を巡る贈収賄事件は8月、県中流域下水道建設事務所元職員と須賀川市の土木会社「赤羽組」元社長に執行猶予付きの有罪判決が言い渡された。9月13日には、公契約関係競売入札妨害罪に問われている大熊町の法面業者「東日本緑化工業」元社長に判決が下される。県警による贈収賄事件の検挙は、昨年9月に田村市の元職員らを逮捕したのを皮切りに市内の業者に及び、さらにその下請けに入っていた東日本緑化工業の元社長へと至った。業界関係者は、県警が「一罰百戒」の目的を達成したとして、捜査は一区切りを迎えたとみている。 「一罰百戒」芋づる式検挙の舞台裏 須賀川市にある赤羽組の事務所 郡山市にある東日本緑化工業の事務所 贈賄罪に問われた赤羽組(須賀川市)元社長の赤羽隆氏(69)には懲役1年、執行猶予3年の有罪判決。受託収賄罪などに問われた県中流域下水道建設事務所元職員の遠藤英司氏(60)には懲役2年、執行猶予4年の他、現金10万円の没収と追徴金約18万円が言い渡された。公契約関係競売入札妨害罪に問われている東日本緑化工業(大熊町)元社長の坂田紀幸氏(53)の裁判は、検察側が懲役1年を求刑し、9月13日に福島地裁で判決が言い渡される予定。 本誌は昨年から、田村市や県の職員が関わった贈収賄事件を業界関係者の話や裁判で明かされた証拠をもとにリポートしてきた。時系列を追うと、今回の県発注工事に絡む贈収賄事件の摘発は、田村市で昨年発覚した贈収賄事件の延長にあった。 福島県の発注工事では、入札予定価格と設計金額は同額に設定されている。一連の贈収賄事件の発端は設計金額を積算するソフトを作る会社の営業活動だった。積算ソフト会社は自社製品の精度向上に日々励んでいるが、各社とも高精度のため製品に大差はない。それゆえ、各自治体が発注工事の設計金額の積算に使う非公表の資材単価表は、自社製品を優位にするために「喉から手が出るほど欲しい情報」だ。 2021年6月、宮城県川崎町発注の工事に関連して謝礼の授受があったとして、同町建設水道課の男性職員(49)、同町内の建設業「丹野土木」の男性役員(50)、そして仙台市青葉区の積算ソフト会社「コンピュータシステム研究所」の男性社員(45)が宮城県警に逮捕された(河北新報同7月1日付より。年齢、役職は当時、紙面では実名)。町職員と丹野土木役員は親戚だった。 同紙の同年12月28日付の記事によると、この3人は受託収賄や贈賄の罪で起訴され、仙台地裁から有罪判決を受けた。判決では、同研究所の社員が丹野土木の役員と共謀し、町職員に単価表の情報提供を依頼、見返りに6回に渡って商品券計12万円分を渡したと認定された。1回当たり2万円の計算だ。 同紙によると、宮城県警が川崎町の贈収賄事件を本格捜査し始めたのは2021年5月。田村市で同種の贈収賄事件(詳細は本誌昨年12月号参照)が摘発されたのは、それから1年以上経った翌22年9月だった。 福島県警が、田村市内の土木会社「三和工業」役員のA氏(48)と、同年3月に同市を退職し民間企業に勤めていたB氏(47)をそれぞれ贈賄と受託収賄の疑いで逮捕した(年齢、肩書きは当時)。2人は中学時代の同級生だった。同研究所の営業担当社員S氏が「上司から入手するよう指示された単価表情報を手に入れられなくて困っている」とA氏に打ち明け、A氏がB氏に情報提供を働きかけた。 川崎町の事件と違い、同研究所社員は贈賄罪に問われていない。しかし、同研究所が交際費として渡した見返りが商品券で、1回当たり2万円だったように手口は全く同じだ。 裁判でB氏は、任意捜査が始まったのは2022年の5月24日と述べた。出勤のため家を出た時、警察官2人に呼び止められ、商品券を受け取ったかどうか聞かれたという。警察が同研究所を取り調べ、似たような事件が他でも起きていないか捜査の範囲を広げたと考えるのが自然だろう。 ある業界関係者は「県警は田村市の元職員を検挙し、元職員とつながりのあった業者、さらにその先の業者というように芋づる式に捜査の手を伸ばしたのだろう」とみている。 どういうことか。鍵を握るのは、田村市の贈収賄事件と、今回の県発注工事に絡む事件のどちらにも登場する市内の土木会社「秀和建設」である。 田村市の一連の贈収賄は、三和工業が贈賄側になった事件と、秀和建設が贈賄側になった事件があった。秀和建設のC社長(当時)は、市発注の除染除去物質端末輸送業務に関し、2019年6~9月に行われた入札で、当時市職員だったB氏に設計金額を教えてもらい、見返りに飲食接待したと裁判所に認定された(詳細は本誌1月号と2月号を参照)。 県発注工事をめぐる今回の事件では、県中流域下水道建設事務所職員(当時)の遠藤氏から設計金額を聞き出し元請け業者に教えたとして、東日本緑化工業社長(当時)の坂田氏が公契約関係競売入札妨害罪に問われている。その東日本緑化工業が設計金額を教えた元請け業者が秀和建設だった。 秀和建設は坂田氏を通じて設計金額=予定価格を知り、目当ての工事を確実に落札する。坂田氏が社長を務めていた東日本緑化工業は、その下請けに入り法面工事の仕事を得るという仕組みだ。 坂田氏と秀和建設のつながりは、氏が以前勤めていた郡山市の「福島グリーン開発」が資金繰りに困っていた時、秀和建設が援助したことから始まった。福島グリーン開発は2003年に破産宣告を受けたが、坂田氏は東日本緑化工業に転職した後、秀和建設との関係を引き継いだ。 坂田氏は今年8月に行われた初公判で「取り調べを受けてから1年近くになる」と述べているので、坂田氏に任意の捜査が入ったのは昨年8月辺り。田村市元職員のB氏が秀和建設のC氏から見返りに接待を受けたとして逮捕されたのが昨年9月、C氏が在宅起訴されたのが同10月だから、秀和建設と下請けの東日本緑化工業の捜査は呼応して行われていたと考えられる。 捜査はさらに県職員と赤羽組に波及する。坂田氏と県中流域下水道建設事務所職員だった遠藤氏、赤羽組元社長の赤羽氏は3人で会食する仲だった。警察が坂田氏を取り調べる中で、遠藤氏と赤羽氏の関係が浮上したと本誌は考える。裁判では、遠藤氏の取り調べが始まったのが今年3月と明かされたので、秀和建設→坂田氏→遠藤氏・赤羽氏の順に捜査が及んだのだろう。 杓子定規の「綱紀粛正」に迷惑 芋づる式検挙をみると、不正は氷山の一角に過ぎず、さらに摘発が進むのではと、入札不正に心当たりのあるベテラン公務員と業者は戦々恐々している様が想像できるが、前出の業界関係者は「『一罰百戒』の効果は十分にあった。県警本部長と捜査2課長も今年7〜8月に代わったので、継続性を考えると捜査は一段落したのではないか」とみる。 とりわけ、県に与えた効果は絶大だったようだ。「綱紀粛正」が杓子定規に進められ、業者からは県に対しての不満が漏れている。 「県土木部の出先機関に打ち合わせに出向くと職員から『部屋に入らないで』『挨拶はしないで』と言われる。疑いを招くような行動は全て排除しようとしているのだろうが、おかげで十分なコミュニケーションが取れず、良い仕事ができない。現場の職員が判断するべき些細な内容もいちいち上司に諮るので、1週間で終わる仕事が2週間かかり、労力も時間も倍だ。急を要する災害復旧工事が出たら、一体どうなるのか」(前出の業界関係者) この1年間で、県土木部では出先機関の職員2人が贈収賄事件に絡み有罪判決を受けた。県職員はまさに羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹いている。県は不祥事防止対策として、警察官や教員を除く職員約5500人に「啓発リーフレット」を配り、コンプライアンス順守を周知するハンドブックを必携させたが、効果は未知数だ。 実際、いま管理職に就く世代は、業者との関係性が曖昧だった。60歳の遠藤氏は「入庁当初の1990年ごろは、県職員が受注業者と私的に飲むのは厳しく制限されていなかった」と法廷で振り返っていた。赤羽氏が「後継者を見つけてほしい」との趣旨で退職を控える遠藤氏に現金10万円を渡していたことからも、県職員が昵懇の業者に入札に関わる非公開情報を教える関係は代々受け継がれていたようだ。 ただ遠藤氏も、見境なく設計金額を教えていたわけではない。「設計金額を教えてほしい」と単刀直入に聞きに来る一見の業者がいたが、「初対面で教えろとは常識がない。何を言っているんだ」と思い断ったという。 では逆に、教えていた赤羽組と東日本緑化工業は遠藤氏にとってどのような業者だったのか。遠藤氏は、自身が入札を歪めたことは許されることではないとしつつ、「手抜き工事が横行していた時代に、信頼と実績のある業者に頼むようになった」と法廷で理由を語った。 遠藤氏と9歳年上の赤羽氏は、熱心で優秀な仕事ぶりから初対面で互いに好印象を持ち、兄弟のような関係を築いた。東日本緑化工業の坂田氏とは、前述のように赤羽氏を交えて会食する仲であり、遠藤氏は坂田氏に有能な人物との印象を抱いていた。 東日本緑化工業のオーナー家である千葉幸生社長(坂田氏が社長を辞任したのに伴い会長から就任。現在大熊町議5期)は、浜通り以外でも営業を拡大しようと、2003年に破産宣告を受けた福島グリーン開発から坂田氏を引き取り、郡山支店で営業に据えた。おかげで中通り、会津地方でも売り上げが増えたという。同社の破産手続きを一人で完遂した坂田氏の手腕も評価していた。坂田氏を代表取締役社長にしたのは、事業承継を考えてのことだった。 見せしめの効果は想像以上 公務員だった遠藤氏は、丁寧な仕事ぶりと人柄を熟知する赤羽氏、坂田氏に「良い工事をしてもらいたいから」と便宜を図ったのか。それとも、赤羽氏から接待を受けていることに引け目を感じた見返りだったのか。何が非公開情報を教えるきっかけになったかは分からない。言えるのは、事件の時点では、清算できないほど親密な関係になっていたということだ。 今回の摘発は、コンプライアンス重視が叫ばれる昨今、捜査の目が厳しくなり、県・市職員と受注業者の近すぎる関係にメスが入ったということだろう。 公務員は摘発を恐れ、仕事が円滑に進まないくらいに「綱紀粛正」に励んでいる。一方、業者は有罪判決を受けた結果、公共工事の入札で指名停止となり、最悪廃業となるのを恐れている。公務員と業者、双方への見せしめ効果は想像以上に大きかった。前出の業界関係者が「一罰百戒」と形容し、警察・検察が十分目的を果たしたと考える所以だ。 あわせて読みたい 裁判で分かった福島県工事贈収賄事件の動機【赤羽組】【東日本緑化工業】 収まらない福島県職員贈収賄事件【赤羽組】【東日本緑化工業】
南会津郡選挙区(定数1)では現職引退に伴い、新人同士の選挙戦になる見通し。前回選挙で現職に数十票差まで迫った野党系候補のほか、立憲民主党から鞍替えした自民党推薦候補が名乗りを上げている。 自治労出身候補者との新人対決 渡部英明氏 大桃英樹氏 南会津郡選挙区は定数1。対象となる町村は下郷町、南会津町、只見町、檜枝岐村。6月1日現在の選挙人名簿登録者数は2万0854人。 同選挙区の現職は星公正氏(70、3期)。南会津町の建設会社・星組(現在は大富士土建工業、福南建設と合併し、「南総建」となっている)の元社長で、自民党所属。今年2月に今期限りでの引退を表明した。 現時点で立候補を表明しているのは2人。 1人目は、前回2019年の県議選に立候補し、星氏に74票差(8263票)で敗れた新人の渡部英明氏(56)だ。 南会津町出身、会津高卒。田島町(南会津町)役場に勤めながら、自治労福島県本部書記次長、連合福島南会津地区連合会議長を歴任。早期退職し、立憲民主党、国民民主党、社民党の推薦を受け県議選に挑んだ。 落選後は次期県議選でのリベンジに向け準備しつつ、同町田島地区の自宅に行政書士事務所を立ち上げた。 4人の子どものうち、3人が同町内の企業に勤める。4月には、その1人で長男の渡部裕太氏(31)が南会津町議選に立候補し、得票数1538票でトップ当選を果たした(88頁からの記事参照)。自宅近くに設けた選挙事務所はそのまま父親の選挙事務所として使われる予定だ。 「親子で議員職を独占し、互いの選挙活動を応援し合う姿勢を見て、シラける人も増えそうだ」(町内の経営者)と懸念する向きもあるが、渡部英明氏は「支持者からネガティブな声は聞こえていない。息子と二馬力で地域を盛り上げたい」と意気込みを示す。 2人目は、新人で元南会津町議の大桃英樹氏(48)だ。 南会津町出身。喜多方高卒、米テンプル大学JAPAN(=日本校)中退。旧南郷村職員(南会津町職員)を経て、2011年に36歳で南会津町議選初当選、連続3期務めた。今年4月の町議選立候補を見送り、星氏引退に伴い自民党南会津総支部が実施した県議選公認候補の公募に応募。同党から推薦を受ける形で、7月に立候補を表明した。 同選挙区内で話題になっているのがこの大桃氏の経歴だ。 実は大桃氏、4年前の町議選に国民民主党から立候補し、その後は立憲民主党党員として活動してきた人物なのだ。特に旧福島4区選出の小熊慎司衆院議員(55、4期、立憲民主党)を応援し、行動を共にしてきた。それが一転して自民党推薦候補となったため、与野党双方から反発の声が上がっている。 「町内の立憲民主党関係者は〝裏切り行為〟に呆れているし、自民党南会津総支部の各地区の責任者からも『応援する気になれない』という声が漏れ聞こえる」(会津地方の選挙事情に詳しいジャーナリスト) 大桃氏に関しては、南会津町長選にも立候補の意思を示して翻すなど、周囲を翻弄するような言動が目立ち、公私ともにさまざまなウワサが流れていた。自民党南会津総支部内で反発の声が上がった背景にはそうした事情もあるのだろう。 「自民党南会津総支部で会合をやったとき、座長を務めていた菅家一郎衆院議員(68、4期、自民党)が『自民党員が誰も出ないっていうんだから大桃君でいいんじゃないか』と詳しい事情も知らないのに話した。さすがに各地区の責任者が激怒して、一斉に帰ってしまったらしい」(同) そんな声を吹き飛ばすように、大桃氏は8月6日、SNSに菅家氏とのツーショット写真をアップ。お盆期間には菅家氏と共に新盆の支持者宅をあいさつ回りするなど、支持拡大に奔走している。 なぜ立憲民主党を離党して自民党から立候補しようと考えたのか。本誌取材に対し大桃氏はこう語った。 「前回、今回と県議選立候補を希望し、小熊さんに相談して調整してもらっていたが、渡辺英明氏が連合福島の推薦で立候補する関係上、立憲民主党から『(県議選での立候補は)あきらめてください』と言われていた。やむなく2月末ごろに離党し、無所属でも立候補する覚悟を決めていたところ、自民党関係者を通じて星氏からお声がけいただき、公募に申し込んだのです」 小熊氏に相談しても立候補の道が開けず、失意の離党をした直後に自民党からスカウトされた、と。 評価下げた菅家氏と小熊氏 菅家一郎氏 小熊慎司氏 大桃氏は渡部恒三氏が唱えていた二大政党制の実現を目指し、小熊氏と行動してきたが、ここ数年は立憲民主党が打ち出す野党共闘路線に違和感を抱いていたという。同党所属のまま人口減少・少子高齢化が急速に進む南会津地域を振興していけるのか不安を抱いているタイミングで県議選立候補の断念要請が重なり、離党を決意した。 大桃氏によると、地元自民党支持者の反応は「応援の声も多くいただいているが、『俺は認めないよ』という方もいる」。同町内では以前から「与党県議がいれば大規模公共事業を南会津地域に持ってくる可能性が高まる。星氏の後継者を探すべきだ」という声が聞かれていた。与党支持者の受け皿としてそれなりに支持が広まっていくかもしれない。 なお県内の国民民主党関係者によると、大桃氏をめぐっては、「小熊氏のアイデアで、まずは無所属で立候補し、後から国民民主党入りする動きがあった。国民民主党の役員らは本気で準備していたが、ふたを開けてみたら小熊氏は全く動いておらず、本人にも話が届いていなかった。自民党に公募を出していた話を知って愕然とした」という話があったとか。振り回された格好の国民民主党関係者は小熊氏に強い不信感を抱き、周囲に不満を漏らしている。前出・菅家氏といい、小熊氏といい、今回の県議選でそろって評価を落とした格好だ。 同選挙区の課題は人口減少と少子高齢化、産業振興に尽きる。コロナ禍と原油・物価高騰はあらゆる業界に打撃を与えており、民間企業は青息吐息の状態。こうした中、地域活性化の道筋を付けるべく、県執行部にさまざまな意見を出して改善を促す県議が求められる。 渡部氏、大桃氏ともにインフラ整備や観光振興、人口減対策などを訴えるが、どこまで実現できるのか。 渡部氏、大桃氏とも大票田である南会津町田島地区在住。 渡部氏は前回の県議選で只見町と檜枝岐村で苦戦した。星氏が社長を務めていた星組との結び付きが強いエリアだったためとみられ、ここをどう攻略できるかが渡部氏にとって鍵になる。一方の大桃氏は父親が南会津地方広域市町村圏組合消防本部で消防長を務め、出身は旧南郷村という点がプラスに働きそう。 元役場職員同士の対決となる見通しだが、今後さらなる新人が立候補する可能性もある。支持が入り乱れる激戦を制するのは誰か。
須賀川市・岩瀬郡選挙区(定数3)は、立憲民主党の現職宗方保氏が引退し、その後継者と、自民党の現職2人、共産党候補の4人で争う構図が予想され、激戦区と言える。 「共産候補も侮れない」との声も 渡辺康平氏 水野透氏 現在、同選挙区の現職は、宗方保氏(県民連合、6期)、水野透氏、渡辺康平氏(ともに自民党、1期)の3人。前回(2019年11月10日投開票)は、それまで5期務めていた自民党の重鎮・斎藤健治氏が引退したこともあり、6人が立候補する激戦だった。斎藤氏の引退を受け、自民党は新人2人の公認候補を擁立したが、同選挙区で自民公認候補が2人になるのは初めてだった。そのため、「宗方氏は安泰としても、自民党公認候補の2人がどれだけ得票できるか、場合によっては他候補が〝漁夫の利〟を得る可能性もあるのでは」との見方もあった。 ただ、結果は宗方氏と自民党公認の新人2人が当選した(前回の投票結果は別掲の通り)。 今回は、早い段階で現職の水野氏と渡辺氏が自民党公認での立候補が決まり、共産党も前回選挙に立候補した丸本由美子氏を擁立することを決めていた。 一方、宗方氏は「今期限りで引退する可能性が高い」(ある関係者)と言われていたものの確定的な情報はなかった。ただ、ある陣営の関係者は、5月ごろの時点で「宗方氏が出るにしても、引退するにしても、玄葉光一郎衆院議員の意向を汲んだ人が出てくるのは間違いない。ですから、すでに立候補を決めている自民党の現職2人と共産党の丸本氏、そこに宗方氏、もしくはその後継者(玄葉衆院議員の意向を汲んだ人)を加えた4人の争いになると思って準備をしている」との見方だった。 その後、宗方氏は6月4日に会見を開き、今期限りで引退する意向を表明した。地元紙報道によると「自分にできることを全うし、東奔西走の毎日だった。今後は一市民として発想力と行動力を持って地域貢献したい」(福島民友6月5日付より)と述べたという。 宗方氏の後継者については、当初から玄葉氏の秘書・吉田誠氏の名前が挙がっており、宗方氏の引退表明から約2週間後の6月19日に、立憲民主党公認で立候補することを表明した。 吉田氏について、須賀川市・岩瀬郡の有権者はこう話す。 「宗方氏が須賀川市のまちなか(旧市内)出身なのに対し、吉田氏は旧市内より人口が少ない東部地区出身だから、その辺がどうか。一方で、自民党の水野氏と地盤がかぶるところもあるから、その影響も気になるところです」(須賀川市民) 「人柄はいいと思うが、知名度としてはそこまでではないと思う。まあ、玄葉さんとその支持者が本気になってやるでしょうから、有力であるのは間違いないでしょうけど」(岩瀬郡の住民) 大方の見方では、「自民党の現職2人と吉田氏の3人が有力だろう」とのこと。ただ、「共産党の丸本氏も、昨夏の参院選に比例で立候補し落選したものの、(同じく比例で立候補して当選した)岩渕友氏とタッグを組んで顔と名前を売った。処理水放出など、自民党にとっては逆風もあるから、丸本氏も侮れないと思う」と見る向きもある。 吉田氏が宗方氏のごとく強さを発揮するのか、自民党は2議席を維持できるのか、共産党の議席奪取はあるのか等々が見どころだ。
昨年に引き続き、今年も始まった県のクリエイター育成事業。国内トップクリエイターが師範、地元クリエイターが塾生となる道場「誇心館」では、クリエイティブ力の強化を目指した稽古が今年度いっぱい行われる。ただ、昨年度の成果発表はよく分からないうちに終わり、成果品はウェブや県庁の一角などで発表されたものの、税金を使って地元クリエイターを育成するという名目を踏まえると、事業の成果と反省点が見えにくいのは解せない。 塾生の生の声を反省材料にすべき 内堀雅雄知事 箭内道彦氏(誇心館HPより) 公式ホームページによると、誇心館の狙いは《県内クリエイターのクリエイティブ力を強化し、様々なコンテンツを連携して制作するとともに、それらを活用して情報発信を行うことで、本県の魅力や正確な情報を県内外に広く発信し、風評払拭・風化防止や本県のブランド力向上を図るため、県内クリエイターを育成する》というもの。 昨年度から始まった誇心館の館長は「福島県クリエイティブディレクター」の箭内道彦氏で、その下に国内の著名なクリエイター4人が師範として就いている(別掲)。公募により塾生に選ばれた県内在住クリエイター26人(10~70代)が各師範のもと来年1月まで月1回程度の講義や実習に取り組む。2月には修了式と成果発表が予定されている。 氏名主な仕事など館長箭内道彦(郡山市出身)クリエイティブディレクタータワーレコード「NO MUSIC,NO LIFE.」など。県クリエイティブディレクター師範石井麻木写真家写真展「3.11からの手紙/音の声」を開催。県「来て。」ポスター審査員師範小杉幸一アートディレクター、クリエイティブディレクター県「ふくしまプライド。」「来て。」NHK「ちむどんどん」ロゴなど師範並河進コピーライター、クリエイティブディレクター電通ソーシャル・デザイン・エンジン代表。県「ふくしま 知らなかった大使」など師範半沢健フォトグラファー、ムービーカメラマン東京を拠点に幅広いジャンルで活躍中。県「ふくしまプライド。」TVCMカメラマン敬称略 昨年度は師範6人、塾生62人(稽古を全て受講し、修了書を受け取ったのは49人)だったので、それと比べると今年度は規模が小さくなった印象を受ける。しかし、公表されている情報や、本誌が情報開示請求で県から入手した昨年度事業の公文書を見ていくと、予算規模は昨年度が5530万円、その後、1200万円増額されて計6730万円。今年度は6820万円。つまり、今年度は昨年度より師範、塾生とも減ったのに、予算は増えている、と。同事業の受託者は昨年度、今年度とも山川印刷所(福島市)。 今年度の誇心館は、8月9日に入塾式と初稽古があった。 《入塾式では、箭内さんが「福島で生きる皆さんだからこそ乗せられるものがある。福島だからこそのうれしいこと、楽しいことなどを発信していくことが大切だ」とあいさつし、内堀雅雄知事が「多様性のある福島は一言では言い表せない。どのように伝えれば心に響くかを学んでほしい」と激励した。 各師範のあいさつに続き、塾生代表の石井浩一さんが「仕事への向き合い方、心構えなどを誇心館で学びたい」と決意を述べた》(福島民友8月10日付) 内堀知事がわざわざ出席するくらいだから、県の力の入れようが伝わってくる。それもそのはず、誇心館は地元クリエイターの育成という側面のほかに、内堀氏が副知事時代から箭内氏と親しく付き合い、前回知事選の地元紙取材では「尊敬する人物」に箭内氏を挙げたほど、両氏の関係性が色濃く表れている。 「震災の風評払拭や福島の現状を知ってもらうため、内堀知事が箭内氏を頼るのは理解できる。ただ、両氏が親しい関係にあることを知る人は『二人の距離が近いからこそ始まった事業』とか『そもそも地元クリエイターの育成って税金を使ってやることなのか』と冷めた見方をしている」(某広告代理店の営業マン) とりわけ営業マンが驚いたと話すのが、前述の通り、誇心館の昨年度予算が5530万円から年度途中で1200万円増額され、計6730万円になったことだ。 「広報系予算が年度途中で増えるのは異例。少なくとも、私は経験したことがないし聞いたこともない。誇心館の県の窓口は知事直轄の広報課なので、内堀知事がOKすれば簡単に増額できる、ということなんでしょうか」(同) 県広報課によると、予算増額の理由は「作品の制作と情報発信にかかる費用を増やす必要があった」。足りなくなったからと簡単に増やせてしまうのは、両氏の関係性があるからこそと勘繰らずにはいられない。 本誌が情報開示請求で入手した昨年度事業の公文書に「収支報告書」があり、それを見ると、師範1人当たりの謝金は1回当たり2万5545円となっていた。 「昨年度の師範6人も国内トップクリエイターだったので、2万5000円が事実とすれば激安だ。6人は普段から箭内氏と一緒に仕事をしている〝箭内組〟の面々なので、箭内氏の頼みならと破格の謝金で引き受けたのか、それとも別途謝金を受け取っていたのか」(同) 営業マンによると、この手の事業では項目によって余裕を持たせた予算取りをするので、そこから別途謝金を捻出することは可能というが、県の事業でそのようなテクニックが使えるかは定かではないという。 今年度の謝金がいくらかは事業が全て終わらないと分からないが、昨年度より安いとは想像しにくい。もし高くなっていたら、昨年度は破格過ぎたということだろう。 ダブルスタンダード https://fukushima-creators-dojo.jp/achieve.html 昨年度と今年度の違いで言うと、前出・福島民友の記事にもあるように塾生(代表)の名前を最初から公開していることが挙げられる。 実は、情報開示請求で入手した昨年度事業の公文書では、塾生の名前が全て黒塗り(非開示)になっていた。入塾式と修了式で代表あいさつした塾生の名前も黒塗りだった。 ところが、誇心館の公式ホームページを見ると「2022年度の成果発表」という項目に、塾生の名前と顔写真、それぞれの感想が載っているのである。開示した公文書では名前を全て黒塗りにしておいて、ホームページでは名前だけでなく顔写真まで公開しているのは明らかなダブルスタンダードだ。 県広報課に、本誌に開示した公文書では塾生の名前を黒塗りにした理由を尋ねると、 「公文書は個人情報保護の観点から非開示にした。ホームページは本人の了承を得て開示している」 なんだか解せない。 昨年度の修了式は今年3月6日に行われ、成果品の展示会は同日と翌7日に福島市内で開かれたが、一般の人が見学する機会はほとんどなかったという。 「展示会初日は内堀知事が訪れ、マスコミ対象の公開が優先されたため、一般の人は夕方しか会場に入れなかった。翌日も半日しか開かれなかったので、いつの間にか始まり、いつの間にか終わった印象」(同) 展示会自体は閉鎖的に済ませてしまった感があるが、成果品はウェブで公開したり、新聞、ラジオ、各地の大型ビジョン、デジタル広告、県の公式SNSなどを通じて広く情報発信された。県庁の一角でも期間限定で展示が行われた。ただ、ユーチューブのように再生回数が表示されるならともかく、CMやラジオを見たり聞いたりした人がどれくらいいて、それによってどのような成果が得られたかは正直分かりにくい。 「注目を集めたのは、県が開発したイチゴのオリジナル品種『ゆうやけベリー』のパッケージを塾生が手がけたことくらい。各師範のもとでユニークな取り組みが行われたとは思うが、せっかく箭内氏が館長なのだから、全体で統一テーマを設定し、それに沿って各師範のもとで動画やCMなどを制作して発信すれば、費用対効果も上がり、多くの人の印象に残るPRができたのでは」(同) 県内の某クリエイティブディレクター(CD)も、誇心館の取り組みにこんな指摘をしている。 「クリエイターは自分のつくった作品を多くの人に見てもらうのが仕事。だから、多くのクリエイターが一堂に会し、共同で学びながら作品をつくり上げていく誇心館のやり方はちょっと……と本音を漏らす塾生も中にはいました」 某CDによると、塾生はプロ、学生、素人が入り混じり、年齢層も幅広かったため、能力やスキルに差が見られた。全員が塾生として純粋に講義を受けるだけならそれでも構わなかったが、連携して作品をつくるとなった時、携わる塾生が限られる現象が起きたという。 「誇心館はプロ志向に寄せて始まったので、作品づくりに携わる塾生も次第にプロが中心になっていったようです。ただ、彼らは自分の仕事をしながら塾生として作品づくりに臨み、しかも、講義の一環なので無報酬だったため『自分は何のためにやっているのか』と愚痴をこぼす塾生もいました」(同) それなら同業者(クリエイター)を集めて連携させるのではなく、メーカーや広告代理店などと引き合わせ、作品づくり=仕事に結び付けた方が、クリエイターにとってはありがたかったのかもしれない。 「クリエイターは自分の感性を大切にするので、他者と連携して作品をつくるのが不得手。だったら、自分の作品を世に出せるチャンスを与え、そこに競争性を持たせた方が地元クリエイターの育成につながるだろうし、多くのクライアントも関心を向けるのではないか」(同) 昨年度から始まった誇心館を進化させるには、塾生の生の声を生かすことが欠かせない。例えば全ての講義が終了後、塾生にアンケートを行い、良かった点を次年度に引き継ぐ一方、悪かった点を反省材料にすれば誇心館の取り組みもブラッシュアップされるはずだ。 成果を検証する気なし 福島県庁 ところが、当然やっているものと思われた塾生へのアンケートを、県広報課では「やっていない」というのである。県は6000万円以上の税金を使っておきながら、事業の成果を検証する気がないらしい。 本誌は、昨年度の塾生とコンタクトを取り、体験したからこそ感じた良かった点・悪かった点を聞かせてもらおうと考えた。ところが、何人かの塾生にメール等で取材を申し込んだものの、取材に応じる・応じない以前に、返事すら戻ってこないケースが相次いだ。返事は戻ってきたが「県を通した取材なら応じる」という塾生もいた。 そうした中、本誌の質問に答えてくれた塾生は、 「雲の上の存在のようなトップクリエイターと実際に意見を交わせるのは魅力的で、講師陣の感性や考え方に触れられたのは勉強になった」 と良かった点を語る一方、 「福島県の魅力が伝わるものを、それぞれの班の個性を生かしてつくり発表するというテーマ設定がなされたが、成果物へのイメージが見えにくく、アイデアを出すのに苦戦した。主催者側で具体的なテーマや課題を設けた方が、それぞれの塾生の特技を生かしたり、活発な意見のやりとりができたのではないか」 と改善点を挙げてくれた。「主催者側によるテーマ設定」の必要性は前出・営業マンも指摘していた。表面的な「勉強になった」という感想ではなく、厳しくてもためになる生の声を大切にしないと事業が進化することはないだろう。 2年目の誇心館がどんな成果をもたらし、地元クリエイターにどう評価されるのか。内堀知事と箭内氏の関係ばかりがクローズアップされるのではなく、多くの県民が「福島県にとって有益な事業」と実感できなければ、やる意味はない。 あわせて読みたい 【箭内道彦】福島県クリエイター育成事業「誇心館」が冷視されるワケ 「尊敬する人」に箭内道彦氏を挙げた内堀知事 箭内道彦氏の〝功罪〟
二本松市の本多俊昭市議(63、4期)が所有地に廃棄物を運び込んで一部を焼却処分したとして、市の担当課から注意されていたことが分かった。本多市議は反省の意を示しているが、近隣住民はこの間の言動も含めてその対応に不信感を募らせており、議員辞職を求めている。 議員辞職を宣言もあっさり「撤回」 本多市議は福島農蚕高卒。同市南部の舘野原(杉田地区)在住で、農業に従事している。2022年6月の二本松市議選(定数22)では1470票を獲得して4位当選。令和創生の会に所属し、執行部(三保市政)を厳しく監視・追及するスタンスを貫いているが、ここ2年は1年に1回代表質問で登壇するだけで、一般質問はしていない。 そんな本多市議について、「所有地に廃棄物を不法投棄し、野焼きしていたとして近隣住民とトラブルになっている」とウワサが流れている。 真相を確認するため、市内で聞き込みをしたところ、本多市議とトラブルになっている近隣住民Aさんにたどり着いた。 Aさんはこのように明かす。 「同市箕輪の人通りのない場所に、本田市議が所有する農地がある。昨年6月ごろ、その場所に選挙で使った腕章や布団などを捨て始めた。隣接する私の土地にも侵入していたため、撤去を求めたのですが、少し場所をずらしただけで、その後も放置されたままになっていました」 しばらくすると、近くにあるAさんの自宅にスズメバチが飛んで来るようになった。「廃棄物に巣を作られてはたまらない」とAさんは3度にわたり市に「本多市議に撤去させてほしい」と相談。市が指導に入り、1カ月ほど経ったころ、その場でそれらの一部を燃やし始めたという。 布団などが仮置きされた本多市議の所有地 焼却している様子 「近隣に住む私に何の連絡もなく焼却し始めたので驚きました。幸い周辺の木には延焼しませんでしたが、危ない行為でした」(Aさん) 廃棄物処理法第5条では「土地又は建物の占有者は、その占有し、又は管理する土地又は建物の清潔を保つように努めなければならない」と定められており、行政機関では「廃棄物の一時保管」と称して廃棄物を放置したままにしないように呼びかけている。 また、同法第16条の2では、悪臭やダイオキシン類の発生原因となることから、災害ゴミの処分やどんど焼きなどの例外を除いて野外焼却を禁止している。市が配布しているチラシでも「地面の上で直接ゴミを燃やすこと」について「次のような焼却行為は法律に違反しますので罰せられることがあります」と注意を呼び掛けている。 本多市議は公職に就いているにもかかわらず、こうした違反行為を平然と行っていたわけ。なお、焼却されたのは一部で、残りは本多市議の別の所有地に移動されたという。 Aさんによると、本多市議は当初、誤りを認め、深く反省しているとして、市議会3月定例会終了後に議員辞職する考えを明かしていた。Aさんはトラブル防止のため、会話の様子を「秘密録音」し、記録に残していることを明かす。 「ところが、3月定例会終了後に電話すると『弁護士に相談したら不法投棄に当たらないし、議員を辞職する必要はないと言われたので、議員活動を続ける』と、あっさり前言撤回したから呆れました。こういう人物の言うことは信用できないし、議員にはふさわしくないと思いますよ」(Aさん) 本多市議を直撃 本多市議は近隣住民のこうした声をどのように受け止めているのか。舘野原の自宅を訪ねたところ、本人が取材に応じた。 ――自分の所有地に廃棄物を捨て、その場で燃やしていたと聞いた。 「廃棄物ではなく、自宅の片付けで出た不要物をごみに出す前に〝仮置き〟していた。ただ、一部を所有地で燃やしたのは事実だ」 ――廃棄物処理法で野焼きが禁止されていることを知らなかったのか。 「ちょっとした判断ミスで、深く認識せずにやった。反省して、弁護士の先生に相談したところ、『そこまでのアレじゃないし、深く考えない方がいい』とアドバイスされた。県の人権擁護委員会の先生、法徳寺の住職にも相談したが、『議員を辞めるまでには至らない』との意見をもらったので、議員活動を続けることにした」 ――いま思うことは。 「議員という立場上、その行動がいろいろな人に見られていることをあらためて自覚したうえで、引き続き議員活動に取り組んでいく」 同市生活環境課によると、Aさんからの連絡を受けて後日、同課職員が現地を確認し、本多市議に厳重注意を行ったという。そもそもごみに出す予定で〝野ざらし〟で農地に置いておいた不要物を「仮置きしていた」という言い分は苦しい。 現地は細い農道を通ってしか入れない場所にあり、ほとんど人通りがない。そんな土地で、公職に就く人が近隣住民に声もかけず自宅の不要物を焼却するのは、客観的に見ても異様に映る。「人の目がないところで何か不都合なものを処分しようとしているのではないか」、「所有地をごみ捨て場代わりに使っていたのではないか」と疑われても仕方ないだろう。 複数の関係者によると、狭い地域の話がウワサとなって市内に広まった背景には▽地縁団体などに推されない形で当選した本多市議と一部の地元住民との確執、▽議会で三保市政の批判を続けており、三保市長の支持者から敵視されている――といった事情も影響しているという。 本多市議とAさんは、土地境界線をめぐって以前からもめているようで、今回のトラブル発生後、逆にAさんが誤って本多市議の所有地の木を無断伐採していたことも発覚したという。そうした経緯もあってか、互いに感情的になっているように見える。 Aさんは廃棄物の撤去を求め、同市生活環境課と二本松署に連絡したが、動きは鈍く、現場を確認した様子は見られなかったという(※)。早い段階で行政機関が対応しなかったことが、結果的に事態を悪化させたとも考えられる。 本多市議は「近所付き合いもあるし、大ごとになればこちらも主張しなければならないことが出てくる。記事にはしてほしくない」と言うが、Aさんは逆に「この事実を多くの人に知ってほしい」と話している。議員として地元住民と良好な関係を築いていくことが求められるが、関係修復は容易でなさそうだ。 ※市生活環境課は「Aさんから通報を受けたので後日当事者(本多市議)に電話して注意した。所有地における廃棄物の捉え方については、グレーな面がある」、二本松署は「個別の案件についてはお答えできない」と回答している。
数年前から突如として囁かれるようになった玄葉光一郎衆院議員(59)の「知事転身説」。背景には野党暮らしが長くなり、このまま期数を重ねても出世の見込みが薄いため「政治家として新たなステージを目指すべきだ」という支持者の思いがある。内堀雅雄知事(59)の3期目の任期満了日は2026年11月11日。次の知事選まで3年余り、玄葉氏はいかに行動するのだろうか。本人に真意を聞いた。 首相になれない状況を悲嘆する支持者 玄葉氏の知事転身説を耳にするようになったのは、内堀氏が再選を果たした2018年の知事選が終わってからだろうか。 「内堀知事は2期目で復興の道筋をつけ、3期目を目指す気はないようだ」 こう訳知り顔で話す人に、筆者は何人も会ったが、では、その人たちが何か根拠があって話していたのかというとそうではない。政治談議は時に、あれこれ言い合うから盛り上がるわけで「誰かが『2期で終わるんじゃないか』と言っていた」「オレもそう思う」などと話しているうちにそれがウワサとなって広まり、いつの間にか「定説」として落ち着くのはよくあることだ。 ならば、内堀知事が2期8年で引退するとして「次の知事は誰?」となった時、多くの人が真っ先に思い浮かべたのが玄葉氏だったと推測される。 なぜか。 一般的に「次の市町村長は誰?」となれば、大抵は副市町村長、市町村議会議長、地元選出県議などの名前が挙がる。同じように「次の知事は誰?」となれば、副知事、官僚、国会議員などが有力候補になる。 消去法で見ていこう。 現在の鈴木正晃、佐藤宏隆両副知事は、総務部長などを歴任したプロパーで、優秀なのかもしれないが知名度はない。 官僚は、探せばいくらでも見つかるし、政治家転身への意欲を持つ官僚もいるが、内堀氏が総務省出身であることを踏まえると、2代続けて〝官僚知事〟は抵抗がある。 内堀雅雄知事 残る国会議員は元参院議員の増子輝彦氏(75)や荒井広幸氏(65)の名前を挙げる人もいたが、民間人としてすっかり定着し、年齢も加味すると現実的ではない。 というわけで現職の国会議員を見渡した時、多くの人が「最適」と考えたのが玄葉氏だったのだろう(誤解されては困るが、本誌は玄葉氏が知事に「適任」と言っているのではない。多くの人が「最適」と考える理由を探っているだけである)。 理由を探る前に、玄葉氏の政治家としてのルーツを辿る。 玄葉光一郎衆院議員 1964年、田村郡船引町(現田村市)に生まれた玄葉氏は、父方の祖父が鏡石町長、母方の祖父が船引町長、のちに結婚する妻は当時の佐藤栄佐久知事の二女と、幼少のころから政治と縁の深い家庭環境に身を置いてきた。 安積高校、上智大学法学部を卒業後は政治家を志し、松下政経塾に入塾(8期生)。4年間の研修・実践活動を経て1991年の福島県議選に立候補し、県政史上最年少の26歳で初当選を果たす。県議会では自民党に所属したが、わずか2年で県議を辞職。その年(93年)の衆院選に福島2区(中選挙区、定数5)から無所属で立候補し、並み居る候補者を退け3位で議員バッジを手にした。 当選後は自民党を離党、新党さきがけに所属した。以降は旧民主党、民主党、民進党、無所属(社会保障を立て直す国民会議)、立憲民主党と連続当選10回の議員歴は、民主党が一度は政権交代を果たし、玄葉氏も外務大臣や内閣府特命担当大臣、党政策調査会長などの要職を務めたものの、野党に身を置く期間が9割近くを占める。 それでも、選挙では無類の強さを発揮してきた。初めて小選挙区比例代表並立制が導入された1996年の衆院選こそ選挙区で荒井広幸氏に敗れ、比例復活当選に救われたが、次の衆院選で荒井氏とコスタリカを組む穂積良行氏を破り、次の次の衆院選で荒井氏も退けると、以降は対立候補を大差で退けてきた。もちろん玄葉氏の背後に、当時絶大な権勢を誇った岳父・佐藤栄佐久知事の存在があったことは言うまでもない。 しかし、栄佐久氏が県政汚職事件で失脚し、前々回、前回の衆院選では自民党の上杉謙太郎氏(48、2期、比例東北)に追い上げられたことからも分かるように、かつてのいかに得票数を増やすかという攻めの選挙から、近年はいかに得票数を減らさないかという守りの選挙に変わっていった。それもこれも野党議員では政府への陳情が通りにくい中、久しぶりに誕生した与党議員(上杉氏)に期待する有権者が増えていた証拠だろう。 旧福島3区では、選挙区は玄葉氏の名前を書くが、比例区は自民党に投票する、あるいは県議選や市町村議選は自民系の候補者を推すという〝ねじれ現象〟が長く続いている。原因は玄葉氏の政治家としての出発点が自民党で、佐藤栄佐久氏も同党参院議員を務めていたから。野党暮らしが長いとはいえ、支持者たちも元はと言えば自民党なのである。 そうした中で聞こえるのが「新党さきがけに行かず、自民党に留まっていれば……」と落胆する声だ。今の玄葉氏は、野党に身を置いたからこそ存在するわけで「たられば」の話をしても仕方ないのだが、根っこが自民党だけに残念がる人が多いのは理解できる。 なぜなら、仮に自民党で連続10回当選を重ねれば、主要閣僚はもちろん総理大臣に就いている可能性もあったからだ。来年還暦の玄葉氏はその若さも魅力になったはず。 ただ如何せん野党の身では、総理大臣は夢のまた夢。ならば政権交代を成し遂げるしかないが、政策の一致点が見いだせない野党はまとまる気配がない。玄葉氏が所属する立憲民主党も支持率が低迷し、野党第一党の座も危うい。選挙でも上杉氏に徐々に迫られている。 だから、支持者からは「このまま野党議員を続けていても展望が開けない」という本音が漏れるようになっていたし、それが次第に「いっそのこと、政治家として新たなステージを目指した方がいい」という期待へと変わっていったのだろう。 陳情受け付けに消極的 とはいえ、もし玄葉氏が知事選に立候補するとなった時、衆院議員としてどのような実績を残したかは冷静に見極める必要がある。 震災・原発事故当時、玄葉氏は外務大臣をはじめ民主党政権の中枢にいたが、地盤の旧3区をはじめ福島県に何をもたらしたか。玄葉氏はもともと、陳情をおねだりと評し「そういうことは避けた方がいい」と語っていた(※)。昔からの支持者も「玄葉君は若いころから(陳情の受け付けに)消極的だった」と認めている。 ※河北新報(2008年3月17日付)のインタビューで 「おねだり主義」という言葉を使っている。 上杉氏の支持者からはこんな皮肉も聞こえてくる。 「旧3区内を通る国道4号は片側1車線の個所が未だに残っている。それさえ解消できていない人が知事と言われても……」 旧3区の石川郡の政治関係者は、同郡が新2区に組み込まれたことでこんな体験をしたという。 「新2区から立候補を予定する自民党の根本匠衆院議員(72、9期)に『この道路をこうしてほしい』『あの課題を何とかしたい』とお願いしたら、その場から担当省庁に電話し即解決への道筋が示されたのです。実力者に陳情すればこんなに早く解決するのかと驚いたと同時に、根本氏も『石川郡はこんな些細な課題も積み残されているのか』と嘆いていました」 陳情を受け付けることは選挙区への我田引水ではなく、県民生活を良くするための手段だ。玄葉氏が知事になれば県民にとってプラスと感じられなければ、地元有権者の「衆院議員から知事になっても変わらないんじゃない?」との見方は払拭できないのではないか。 こうしたミクロの視点と同時にマクロの視点で言うと、東北大学大学院情報科学研究科(政治学)の河村和徳准教授は本誌昨年10月号の中でこのように語っていた。 「問題は玄葉氏が知事選に出るとなった時、自公政権と正面から交渉できるかどうかです。政権はおそらく、玄葉氏が知事選に出たら『野党系の玄葉氏とは交渉できない』とネガティブキャンペーンを展開するでしょう」 政権に近い内堀知事が、原発事故の海洋放出問題で国を一切批判しないのは周知の通り。野党系の玄葉氏が知事になった時、自公政権に言うべきことは言いつつ、福島県にとって有意義な予算や政策を引き出せるかどうかは、知事としての評価ポイントになる。 「次の展望」 結局、内堀氏は2022年の知事選で3回目の当選を果たしたが、既にこのころには玄葉氏の知事転身説は頻繁に聞かれるようになっていた。 本誌2021年12月号でもこのように書いている。 《玄葉氏をめぐっては、このまま野党議員を続けても展望がなく、衆院区割り改定で福島県が現在の5から4に減れば3区が再編対象となる可能性が高いため、「次の知事選に挑むのではないか」というウワサがまことしやかに囁かれている。 「玄葉は内堀雅雄知事の誕生に中心的役割を果たした。その内堀氏を押し退け、自分が知事選に出ることはあり得ない」(玄葉事務所)》 玄葉氏が内堀氏の知事選擁立に中心的役割を果たしたのは事実だ。内堀氏が初当選した2014年の知事選の出陣式ではこう挨拶している。 「内堀雅雄候補と私は14年来の付き合いであり、この間、内堀さんの安心感と信頼感を与える仕事ぶりを見てきた。3・11以降、内堀候補は副知事として最も適切なタイミングで最も適切な対応をとってきた。県職員、市町村長からも絶大な信頼を受けている。県民総参加で県政トップに内堀雅雄候補を推し上げ、復興を成し遂げてもらいたい」 これほど強いフレーズで支持を呼びかけた内堀氏を自ら押し退けて知事に就くことは、玄葉事務所も述べているように確かにあり得ない。 ただ、内堀氏が今期で引退するとなれば話は別だ。政治家が自らの進退を早々に第三者に告げることは考えにくいが、内堀氏と玄葉氏は共に1964年生まれの同級生であり、玄葉氏が「14年来の付き合い」と語っているように両者が親しい関係にあるなら、阿吽の呼吸で「私の次はあなた」「あなたの次は私」と意思疎通が図られても不思議ではない。 実際、玄葉氏が知事選立候補を決意したのではないかと思わせる出来事もあった。 「10増10減」で福島県の定数が4に減った 馬場雄基衆院議員 衆院小選挙区定数「10増10減」で福島県の定数が4に減ったことを受け、旧3区選出の玄葉氏は次の衆院選では新2区から立憲民主党公認で立候補する予定。しかしその前段には、旧2区を地盤とする馬場雄基衆院議員(30、1期、比例東北)との候補者調整が難航した経緯がある。 立憲民主党県連は党本部に対し、現職の両者を共に当選させる狙いから、同党では前例のないコスタリカ方式を採用するよう打診した。しかし、党本部はこれを見送り、玄葉氏を選挙区、馬場氏を比例東北ブロックの名簿1位で擁立する方針を決定したが、玄葉氏が一度はコスタリカを受け入れたことに、選挙通の間ではある憶測が広まった。 あらためてコスタリカ方式とは、同じ選挙区に候補者が2人(A氏、B氏)いた場合、A氏が選挙区、B氏が比例区で立候補したら、次の衆院選ではB氏が選挙区、A氏が比例区に交代で回る方式である。ただ、比例区は政党名での投票で、全国的な著名人でもない限り顔と名前を覚えてもらえないため、コスタリカの当事者たちは必ず、自分の名前を書いてもらえる選挙区からの立候補を強く望む。 前述・自民党の荒井広幸氏と穂積良行氏がコスタリカを組み、玄葉氏にことごとく敗れたのは、名前を書いてもらえない比例区に回っている間に、玄葉氏が顔と名前を有権者に浸透させたことが影響している。 そんなコスタリカ方式の弊害を身を持って知る玄葉氏が、馬場氏との間で受け入れたとなったから、選挙通たちは「玄葉氏は最初に選挙区から立候補し、あとは知事選に挑むので、結局、比例区から立候補する状況にならない。だからコスタリカを受け入れたのではないか」と深読みし、知事転身説がより色濃くなったのである。 当の玄葉氏はどのように考えているのか。本誌は衆院解散もあり得るとされていた6月上旬、本人に質問し、次のようなコメントを得た。 「確かに皆さんのところを回っていると『首相になれないなら知事選に』と言われます。ただ、今後どうしていくかはこれからの話。いずれにしても、まずは次の総選挙です。選挙区で勝たないと、自分にとっての『次の展望』はない。選挙区で必ず勝つ。そうでないと『次の展望』もないと思っています」 「私たちの政権が続いたり、現政権がブレる可能性があれば逆に(知事転身を)言われないのかもしれませんね。今はそういう政局じゃないから(知事選と)言われるのかな。ま、なんて言ったらいいのか。うーん、それ以上のことは触れない方がいいかもしれませんね。はい、これからしっかり考えます」 含みを持たせるような発言だが、周囲から知事転身を勧められていることは認めつつ、自ら「目指す」とは言わなかった。 新2区でも〝ねじれ現象〟 ちなみに本誌には、支持者や立憲民主党関係者から「本人から『知事を目指す』と挨拶された」「いや、本人が『目指す』と言ったことは一度もない」という話が度々伝わってくるが、真偽は定かではない。 「選挙区で必ず勝つ」と発言している通り、玄葉氏は今、新2区の中心都市である郡山市内を精力的に歩いている。さまざまなイベントや会合に顔を出し、各種団体や事業所からも「×回目の訪問を受けた」との話を頻繁に聞く。玄葉氏自身も「当選がおぼつかなかった初期の選挙時並みに選挙区回りをしている」と語っている。 玄葉氏は郡山市(旧2区)に縁がないわけではない。母校は安積高校なので同級生や先輩・後輩は大勢いる。佐藤栄佐久氏も同市出身で政界を離れて17年経つが、今も存在する支持者が玄葉氏を推すとみられる。経済人の中にも旧3区時代から支えてきた人たちが一定数いる。 同じく新2区から立候補を予定する根本匠氏はそうした状況に強い危機感を抱いており、同区は与野党の大臣経験者が直接対決する全国屈指の激戦区として注目されるのは確実だ。玄葉氏が本気で知事を目指すなら次の衆院選は負けられないが、根本氏も息子の拓氏にスムーズに地盤を引き継ぐため絶対に負けられない戦いとなる。 根本匠衆院議員 ある建設業者からはこんな本音も聞かれる。 「今までは無条件で根本先生を支持してきた。ウチの事務所にも根本先生のポスターが張ってあるしね。でも、玄葉氏が出るとなれば話は変わってくる。国政レベルで考えれば与党の根本先生を推した方が断然得策。しかし玄葉氏は、今は野党だが将来、知事になる可能性がある。いざ『玄葉知事』が誕生した時、あの時の衆院選で玄葉氏を応援しなかったとなるのは避けたいので、次の衆院選は、表向きは根本先生を支持しつつ玄葉氏への保険もかけておきたいという業者は多いと思う」 旧3区で見られる〝ねじれ現象〟が新2区でも起こりつつある。知事転身説の余波と言えよう。 あわせて読みたい 【玄葉光一郎】衆議院議員インタビュー 区割り改定に揺れる福島県内衆院議員
3自治体議員選に候補者擁立 福島市議選(定数35)は7月9日に投開票が行われ、現職29人、新人6人が当選した。46人(新人13人)が立候補したが、投票率は41・97%で過去2番目に低かった。 同市議選に合わせて、春ごろから市内でポスターやのぼりでの広報活動を強化していたのが参政党だ。 2020年設立。①子供の教育、②食と健康、環境保全、③国のまもり――の3つを重点政策に掲げる。ユーチューブ動画でファンを増やし、2022年の参院選比例代表で1議席を獲得。副代表兼事務局長の神谷宗幣氏(元吹田市議)が当選し、公職選挙法などで定められている政党要件を満たした。 コロナワクチンの効果に疑問を呈しているほか、「一部の勢力が世界を牛耳っている」とする陰謀論的な話もタブーにすることなく発信し、支持を集める。昨年の時点で党員・サポーターは10万人以上に達し、野党第一党の立憲民主党と肩を並べる。 福島市議選には元東邦銀行行員の渡辺学氏(49)を擁立し、7月1日には同市中心部のまちなか広場で街頭演説会を実施。神谷氏も駆けつけ、支持者など約120人が耳を傾けた。 3歳ぐらいの子どもを連れて会場に訪れた女性は「子どもに関する情報が欲しくて、教育や食の安全、健康などについて、ネットで調べていたところ、参政党の動画に行きついた。自分でもいろいろなことに疑問を持って調べるようになり、昨年の参院選前、党員になった」と話した。「友人から紹介され足を運んだ」という人もおり、口コミで支持者を増やしている様子もうかがえた。 本誌で連載中のジャーナリスト・畠山理仁さんはこう解説する。 「『入れたい政党がないから自分たちでつくる』というのが参政党の基本理念です。既存の政党には満足していなかった人、これまで政治との接点があまりなかった人からの支持を集めているのが特徴で、ボランティアの人たちが積極的に参加しています。街頭演説では候補者だけでなくボランティアの人たちもマイクを持って演説しています。かなり極端な主張も展開していますが、従来の政治が中心課題に据えてこなかった『食と健康』を柱にし、女性党員の比率が高いのも従来の政党とは一味違うところです。これまで社会において疎外感を覚えてきた人たち、居場所をなかなか見つけられなかった人たちが『参政党なら自由に言いたいことが言える』、『言いにくいことを言えるのは参政党だけ』と信じて集まってきているようです」 演説を終えた神谷氏に拡大戦略について尋ねたところ、「ネットでの支持者増加はひと段落し、いまは地域ごとに広まっている。予算的に多くの候補者を擁立できないので、都市部に候補者を固め比例区で当選を目指す戦略を取っている。その上で重要になるのが、全国の地方議員なんです」とあけっぴろげに語った。 福島市議選投開票の結果、渡辺氏の得票数は1548票で落選したが、最下位当選の三浦由美子氏の得票数は1617票だったので、わずか69票差だったことになる。 街頭演説途中、プラカードを掲げた男性が現れ、郡山市議選立候補予定者に対し、意見を述べるシーンがあったが、神谷氏はじめ、関係者が慌てる様子はなく、演説で「組織が拡大していく過程の中で文句を言われることも多い」と自らネタにした。ただ、今後深刻な問題に発展するケースも出てくるかもしれない。 参政党では7月30日投開票の西郷村議選、8月6日投開票の郡山市議選にも候補者を擁立。本稿を執筆している時点でこれら選挙の結果は分からないが、県内の選挙戦で姿を見る機会が増えそうだ。
福島市役所に勤めていた会計年度任用職員の男性が、上司から大声で怒鳴られるなどの対応を取られたことで精神的ストレスを抱え、任期を迎える前に自主退職した。男性は「同市役所のパワハラ対策には欠陥がある」と訴える。 救済策で差を付けられる非正規職員 福島市で上司からパワハラを受けたと訴えるのは三条徹さん(仮名、44)。奥羽大卒。民間企業を経て、警察官を目指したものの叶わなかったため、国や県の非正規職員として働いてきた。福島市には2年前に会計年度任用職員として採用され、農業振興課生産振興係で勤務していた。 仕事内容は正規職員の事務補助。1年目に課長から頼まれてチラシの新しい整理方法を導入したところ、市長賞を受賞しやりがいを感じた。食堂、売店などが整備されていて働きやすかった。そのため2年目も継続して働くことにした。 ところが、その直後から、直属の上司である係長の態度が急変した。 他の職員とは冗談を言いながら話すときもあるのに、三条さん相手となると、不機嫌そうな表情を浮かべる。仕事の報告・面談時間の確認に対し、「そんなこと俺知らねえし」、「面談でも何でも結構でございますけどー」などと返された。 毎年実施している作業や、他の正規職員から頼まれた作業に従事しているときも、「なぜそんな無駄なことをやっているのか」、「そんな作業は他に仕事がないときにやってください!」と三条さんだけ怒鳴られた。次第に三条さんは係長と話すことに恐怖心を抱くようになった。 「私の仕事ぶりがダメで、つい注意してしまうというなら、いっそ1年目が終わった時点で契約を打ち切ってほしかった」(三条さん) この係長は特定の職員に厳しく当たる癖があり、前年まで三条さんはその姿を他人事のように見ていた。 例えば別部署に異動した後も残務処理のため、たびたび農業振興課に訪れていた職員がいた。係長は顔を合わせるたび「まずあんたのことが信用できない。どうやったら私に信用してもらえるか考えないと」と繰り返し注意していた。「それだけ言われるということは仕事が遅い人なのだな。ダメな人だな」と思っていた。 しばらくすると、別の若手職員が連日注意されるようになった。「何でやってないの!? 君の言うことは信用できないし、聞くに値しない!」と怒鳴る声が、部署の端にいる三条さんにも聞こえて来た。若手職員は新年度、別の部署に異動していった。「大変だな」と見ていたが、まさか次は自分が厳しく言われる側に回るとは考えていなかった。 「自分が至らないから係長にこれだけ怒られるのだ」と言い聞かせて仕事を続けていた三条さんだったが、昨年12月ごろになると、毎日のように理不尽な理由で怒られるようになった。精神的に限界を迎えた三条さんは人事課に駆け込み相談した。改善につながることを期待したが、そうしている間に、三条さんにとって決定的な出来事が起きた。 三条さんの始業時間は9時15分。毎朝、始業時間の少し前に出勤し、カウンターをアルコールで拭き、鉢植えの花に水をあげ、周りを雑巾で拭いてから、新聞のスクラップをするのがルーチンワークだった。 ところが、その日に限って係長が始業時間前に三条さんを呼び止め、「新聞のスクラップは終わったのか!?」と尋ねた。「私の始業時間は9時15分からでは……」と恐る恐る答えると、嫌みを込めたトーンで「それは大変申し訳ありませんでした」と言われた。 勤怠状況を管理しているのは係長で、始業時間を知らないはずはない。連日さまざまな理由で怒鳴られていたが、ついに始業開始前から始まるルーチンワークにまでイチャモンを付けられるようになったのか――。心が折れた三条さんは課長に抗議の意味を込めて辞表を提出した。 当初、課長は係長のパワハラについて「気付かなかった」として、「有休を使って休んでいる間に考えよう」と退職を考え直すよう言ってくれた。だが、1月に入ると態度を一変。「辞表は受理してしまったし、気に入らないことがあると辞表を出す人間だと課に知れ渡ってしまった。課のみんなもどう接していいか分からない」と突き放された。 やむなく正式に退職の事務手続きを進めるため、人事課を訪ねると、前回相談した職員が顔を出し、「すみません、あの後、コロナになっちゃって」と謝ってきた。精神的に限界を迎えて相談したにもかかわらず、他の職員への引き継ぎも行われず、放置されたままになっていたのだ。 「せめて一言連絡しようとは考えなかったのか、不思議でなりません」(三条さん) あらためて同市の形式にのっとった辞表を提出するよう求められ、人事課職員に言われた通り、退職理由を「一身上の都合により」と書いて提出。結局、1月末で退職した。 離職後、失業保険の手続きや転職先探しのためにハローワークに行った三条さんは退職理由の詳細を聞かれて、素直に「パワハラを受けたから」と答えた。退職理由を書き換えるための申立書を渡されたので、係長にパワハラを受けたこと、人事課に相談に乗ってもらえなかったことを書いて市に送った。市からの返事は、所属長である農業振興課長による「パワハラではなく『指導』の範囲内だった」というものだった。 「パワハラについて『気付かなかった』と話していた課長がなぜ『指導の範囲内だった』と言えるのでしょうか。辞表提出後、課長は『今回の件で俺の評定も下がっただろう』とも話していたが、『指導の範囲内』なら評定が下がるわけがありませんよね。いろいろ矛盾しているんです」(三条さん) 周知不足の相談窓口 福島市役所 実は福島市役所内にはパワハラなどのハラスメントの被害に遭った職員の相談を受ける窓口があった。 一つは公平委員会。地方公務員法第7条に基づき、職員の利益保護と公正な人事権の行使を保護するための第三者機関として設置されている。主な業務は①勤務条件に関する措置の要求、②不利益処分についての審査請求、③苦情相談。福島市の場合、総務課が担当課になっている。苦情を申し立てれば、双方に事情を聞くなどの対応を取ってもらえたはずだ。 だが、三条さんは在職時に公平委員会の存在を知らず、人事課の担当者に相談した際も紹介されることはなかった。 市では3年ほど前から、パワハラ被害などに悩む市職員に、弁護士を紹介する取り組みも始めている。ところが、ポスターなどで周知されているわけではなく、正規職員に支給されるパソコンでのみ表示される仕組みになっていた。会計年度任用職員には、個別のパソコンを支給されていない。そのため、三条さんはそんな制度があることすら知らなかった。退職後に制度を利用させてほしいと頼んだが、「もう職員じゃないので難しい」と断られた。 福島市役所職員労働組合は正規職員により構成されているが、会計年度任用職員からの相談も受け付けている。ただ、三条さんは市職労に相談しようと思いつきもしなかった。 パワハラ自体の問題に加え、相談窓口が十分に周知されていない問題もあることが分かる。 「このままでは自分と同じような目に遭う職員が出る」。三条さんは木幡浩市長宛てに再発防止策を講じるよう手紙を出したほか、市総務課に公益通報したが、何の回答もなかった。労働基準監督署や県労働委員会に行って、「もし福島市職員からパワハラ相談があったら、相談窓口があることを教えてください」と伝えた。マスコミにもメールで情報提供したが、動きは鈍かった。 木幡浩市長 ちなみに本誌にもメールを送ったそうだが、システムのトラブルなのかメールは届いていなかった。唯一月刊タクティクス7月号で報じられたが、大きな話題になることはなく、あらためて本誌に情報提供したという経緯だった。 元会計年度任用職員の訴えを市はどう受け止めるのか。人事課の担当者はこのように話す。 「当事者(三条さん)から相談を受けた後、所属長である農業振興課長が係長に聞き取りしたが、本人は発言の内容をはっきり覚えていませんでした。多少大きな声で指導したのかもしれませんが、捉え方は人によって異なるし、それが果たしてパワハラに当たるのかどうか。人事課では農業振興課長と面談し対策を講じようとしていたが、(三条さんが)辞表を提出した。展開が早くて、弁護士の制度を紹介したり、パワハラの有無を調査する間もなかった、というのが正直なところです。パワハラがあったかどうかは、市としても顧問弁護士などと相談して検討する話。双方にしっかり話を聞くなど、調査を行わずに断言はできません」 パワハラの事実を認めないばかりか、人事課で相談を放置していたことを棚に上げ、「調査する前に退職したのでパワハラの有無は分からない」と主張しているわけ。 ちなみに人事課への相談が放置されていた件に関しては「人事に関する相談はデリケートな問題なので、一つの案件を一人で継続して担当するようにしている。そうした中でうまく引き継ぐことができなかった」と他人事のように話した。 「誰にでも大声を出していた」 一方でこの担当者はこのようにも説明した。 「農業振興課長の報告によると、係長は興奮すると誰にでも大きな声を出して熱くなることがあった。その人だけに嫌がらせをしていたわけではないという意味で、パワハラと言い切れるのだろうか、と。そういう点からも、市としては、『一連の対応はパワハラではなく業務上の範囲内だった』という認識ですが、態度によってはパワハラと受け取られる可能性があるということで、あらためて農業振興課長が係長に指導を行いました」 三条さんだけでなく、誰にでも大声で怒鳴ることがある職員だったのでパワハラには当たらない、というのだ。厚生労働省によると、パワハラの定義は「職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えるまたは職場環境を悪化させる行為」。市の解釈だと、特定の人物に対してでなければ、どれだけ精神的苦痛を与えてもパワハラには当てはまらないことになる。 人事課担当者は「管理職を対象としたハラスメント研修を定期的に実施している」と話すが、この間のやり取りを踏まえると、正しい知識のもとで行われているか疑問だ。 気になったのは、人事課の担当者が、三条さんが退職した経緯についてこのように述べたことだ。 「(三条さんは)係長への抗議的な意味合いで辞表を出したようですが、同じ部署で働きづらい部分もあるし、もうやめるしかないんじゃないか、という流れで退職に至ったと聞いています」 前述の通り、三条さんは課長から「辞表は受理してしまったし、気に入らないことがあると辞表を出す人間だと課に知れ渡ってしまった」と言われ、退職を促された、と主張していた。三条さんの見解とは違う形で報告されていることが分かる。 ちなみに課長、係長はともに今春の人事異動で農業振興課から異動になっており、どちらも降格などにはなっていなかった。 三条さんがいなくなった後の農業振興課ではどんなことが起きていたか共有され、再発防止策は講じられているのか。4月に赴任した長島晴司課長に確認したところ、「当然共有されています。ああいったことがあると、職場の雰囲気は悪くなるし、係の職員も疲弊する。そうした雰囲気の改善に努めており、併せてパワハラと受け取られるような指導はしないようにあらためて気を付けています」と話した。 厚労省指針は守られているのか 地方公務員の職場実態に詳しい立教大学コミュニティ福祉学部の上林陽治特任教授によると、「厚労省の指針では職場におけるハラスメントに関する相談窓口を設置して労働者に周知するよう定められている」という。 上林特任教授が執筆を担当した『コンシェルジュデスク地方公務員法』では公務員のハラスメント対策について、次のように記されている。 《部下は、パワーハラスメントを受けていても、上司に対してパワーハラスメントであることを伝えることは難しい。とりわけ、非正規職員のような有期雇用職員は、次年度以降の雇用の任命権者が直属の上司の場合が多いため、なおさら相談しにくい。したがって、上司以外の信頼できる職場の同僚、知人等の身近な人やより上位の人事当局、相談窓口等に相談することが必須となる》 《相談窓口・相談機関は、事業主の雇用管理上講ずべき措置の内容の中では重要な位置取りをしめ、厚生労働省のパワハラ防止指針では、相談への対応のための窓口をあらかじめ定め、労働者に周知することとし、相談窓口担当者は、①相談に対し、その内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること、②相談窓口については、職場におけるパワーハラスメントが現実に生じているだけでなく、その発生のおそれがある場合や、職場におけるパワーハラスメントに該当するか否か微妙な場合であっても、広く相談に対応し、適切な対応を行うようにすることが求められているとしている》 昨年、市が公表した「福島市人事行政の運営等の状況について」という文書によると、2021年度における公平委員会の業務状況は、不利益処分に関する不服申立1件、職員の苦情の申立1件のみ。 職員からの苦情がない快適な職場なのか、それとも公平委員会の存在自体を知らない人が多いだけか。いずれにしても厚労省通知に定められている労働者への周知が行われているとは言い難い印象を受ける。 もっというと、会計年度任用職員にはパソコンが支給されていなかったので、弁護士相談制度に触れられなかったというのは、結果的に正規職員と非正規職員で相談窓口の案内に差が出た形になる。同じ中核市である郡山市、いわき市にも確認したが、そのような差はなかった。すぐに解消すべきではないか。 現在は福島市内の別の場所で働いている三条さん。「私のような思いをする人がこれ以上出てほしくない。いまさら謝罪や責任追及を求めているわけではない。市役所は閉鎖的でおそらく自浄作用はない。だからこそ、報道を通していかに福島市のパワハラ対応がダメか、多くの人に知ってもらい、少しでも体制改善につながればと思っている」と訴えた。福島市はまずパワハラ対策の周知から始めるべきだ。
大玉村議会は9月4日、改選後初の臨時会を開き、議長に押山義則氏(75)、副議長に武田悦子氏(64)を新任したが、押山氏をめぐっては村民から「議長にふさわしくない」との声が寄せられている。 議長選で一派の2人が白票 正副議長選は議員12人による無記名投票で行われ、このうち議長選は押山氏5票、本多保夫氏(71)4票、白票3票という結果だった。白票が25%を占めるのは異例だが、本来であれば押山氏はもっと得票してもおかしくなかったという。 「順当なら7票、上手くいけば9票入ったかもしれないのに、蓋を開けたら5票。押山氏の信用の低さが露呈した形です」(ある議会通) 押山氏はいわゆる村長派で、現在3期目の押山利一村長(73)が初当選後につくられた「大玉創生会」の副会長として活動してきた。同会は県議会や市議会に見られるような会派ではなく、勉強会という位置付けになっているが、議会内に支持基盤がなかった押山村長を支える目的で発足したため、メンバーは自然と村長派に色分けされる。 発足から8年が過ぎ、8月6日投開票の村議選を経てメンバーが入れ替わった大玉創生会は、別掲の7人で引き続き押山村長を支えていくことになる。 これに倣えば、押山氏は議長選で7票獲得してもいいはずなのに、実際はそれより2票少ない5票だったため「信用が低い」と見なされたわけ。 「新人の3氏は全員押山氏に投票したが、投票前には『本当に押山氏でいいのか』とかなり悩んだ人もいたそうだから、場合によっては5票も取れずに〝落選〟していた可能性もあった」(同) 押山氏は大玉村出身。郡山工業高校(現、郡山高校)卒。設計事務所や同村役場勤務などを経て村内と郡山市内に飲食店を開業したが、新型コロナの影響で閉店。改選前は副議長を務めていた。 押山氏の信用の低さはどこから来ているのか。 複数の村民によると、村議選前、押山氏にまつわる二つのウワサが急浮上した。一つは昔の出来事、もう一つは最近の出来事だが(真偽不明のため、この稿で取り上げるのは控える)、そのウワサが影響して、もともと選挙は強くないが陣営の予想より得票数が減ったのではないかと訳知り顔で話す村民もいた。 「要するに大玉創生会のメンバーは、議長選で押山氏に投票すれば支持者から『なぜ、あいつに入れたんだ』と突き上げを食らうことを恐れたのでしょう」(同) だからメンバーは、普段は同じ村長派でも、議長選では投票しなかった、あるいは投票したけどかなり悩んだというわけ。 筆者はある新人議員に取材を申し込んだが「遠慮させてほしい」とのことだった。 「大玉村は『財界ふくしま』が詳報した『山ろく交流センター』の建設をめぐる問題で混乱し、今回の村議選では押山村長に近い新人を複数当選させることで議会の安定を図ろうとした。そして実際、そういう議会構成になったのに、村長派の筆頭である押山氏に対しては『議長にふさわしくない』との判断が働いた。議長は村長と連携を密にし、スムーズな議会運営を行う役割があるが、各議員が押山議長の言うことをどこまで聞くか気掛かりです」(同) 前述の通り議長選では白票が3票あったが、このうちの2票は共産党の須藤軍蔵氏(78)と前出・武田氏であることが分かっている。 須藤氏に話を聞いた。 「私は押山氏も本多氏も議長にふさわしくないと思ったから白票を入れた。ただそれだけです」 現在10期目の須藤氏だが、正副議長選で白票が3票を数えたことは記憶にないという。 須藤氏は自宅のすぐ近くで進められた「山ろく交流センター」の建設に賛成し、本多氏は反対していたため、本多氏を議長には推せないと判断したが、押山氏をふさわしくないと思った理由は何だったのか。 押山氏にまつわる二つのウワサは須藤氏も村議選の期間中、何度も耳にしたというが、 「ウワサが本当かどうかは確かめようがないので、それに基づいて押山氏を評価したりはしない。ただ議長選前には、押山氏が議長にふさわしくないと思う私なりの理由を本人に直接伝え『だから私はあなたには投票できない』とハッキリ言いましたよ」(同) 須藤氏は「私なりの理由」を明言しようとはしなかったが、村民の間からは 「日常生活に苦労する村民が少なくない中、押山氏は『自分は(お金に)余裕がある』みたいな、村民に寄り添っていない発言が目に付いて……。そういう他人の痛みを分からない人が、議会を代表する議長に就くなんてとんでもない」 と、議員としての資質を疑う声が聞かれた。二つのウワサだけが押山氏の信用を低下させている理由ではないことがうかがえる。 「私の生き様は他人と違う」 押山義則議長 実は、共産党の2議員は執行部に是々非々の立場を取っているが、押山村政に反発することはほとんどないため、実質村長派という見方をされている。そうなると、議長選では押山氏に投票しても不思議ではないのだが、実際は白票だった、と。冒頭で議会通が「9票の可能性もあった」と言ったのは、大玉創生会(7票)と共産党(2票)を合わせた数を指している。 押山氏本人は議長選の結果をどのように受け止めているのか。 「私の生き様は少々他人と違っているので、いろいろ言われてしまうのは致し方ないと思っています。大玉創生会をベースに考えれば、議長選では私に7票入ってしかるべきだが、前の正副議長選でも〝造反〟というか同じようなことが起きているので、特段気にしていません」 議長選の直前には共産党の2議員にも自分への投票を呼びかけたが、断られたという。 「私は自分から議長になりたいとは一言も言っていない。各議員の期数や副議長を務めた立場から『今回は押山さんじゃないか』となり、そう言っていただいた以上は議長選で勝てるよう最善を尽くしただけ。その結果、5票には感謝しているし、白票の3票も、もし本多氏に入っていたら計7票で私は負けていたわけだから、感謝しています」(同) 押山氏は自身の議員活動を振り返り、今まで一般質問を欠かしたことがないこと、村議会基本条例の策定に奔走したこと、議員定数削減を強く主張したこと等々を話した。 「そんな私の活動を『目立とうとしている』とか『定数削減なんて余計なことを言うな』とか、よく思わない議員がいたのは事実でしょう。設計事務所や飲食店での仕事ぶりを見て眉をひそめる人もいたかもしれません。しかし、私としてはどれも必死にやったことなので、後悔は一切ありません」(同) 大玉村をめぐっては、かつて万引き犯の汚名を着せられた議長や学歴が正確ではないと指摘された議員を本誌で取り上げたことがある。当時の村長が村民に訴えられた、いわゆる「ヤマツツジ訴訟」をリポートしたこともある。今回の出来事を見るにつけ、同村は定期的に騒動が起きている印象を受ける。 ともかく、押山氏が村民や議員から「議長にふさわしい」との評価を得られるかは、これからの振る舞いや発言にかかっている。
受給対象ではない住居手当を7年8カ月にわたり受け取っていたとして、矢吹町の30代男性職員が戒告の懲戒処分を受けた。 報道や関係者の情報によると、この男性職員は2013年2月から賃貸物件を契約し、住居手当1カ月2万6700円を受給していた。 2015年10月に賃貸物件を引き払い、実家に住むようになったが、住居手当の変更手続きを怠り、同年11月から今年6月までの7年8カ月分、245万6000円を受給していた。職員は届け出を「失念していた」と話している。また、町もこの間、支給要件を満たしているかどうかの確認をしていなかった。 本人の届け出により発覚し、不適切受給した分は全額返還された。 同町総務課によると、毎月渡される給与明細に住居手当の金額は記されている。それを確認せず7年もの間手当をもらい続けたということになる。本当に故意ではなかったのか、それとも住居手当のルール自体よく理解せずもらっていたのか。 懲戒処分は免職、停職、減給(6月以内)、戒告の4段階がある。町は職員に故意や悪質性はなかったとして、懲戒処分の中で最も軽い戒告処分、監督する立場だった管理職の50代男性2人を口頭注意とした。処分は9月15日付。 町内在住の年配男性は「結構重大な問題だと思うけど、ずいぶん軽い処分だったので呆れました」と語る。 というのも、9月11日、群馬県富岡市の職員が住宅手当235万円を不正に受け取っていたとして、停職6カ月の懲戒処分となったことが先行して報じられていたからだ。 富岡市の榎本義法市長は「公務員としてあるまじき行為。誠に遺憾であり深くおわび申し上げる。綱紀粛正の徹底と再発防止を図る」(上毛新聞ウェブ版9月12日付配信)とコメントしている。 「金額的には富岡市より矢吹町の方が大きいが、軽い処分で乗り切ろうとしている。蛭田泰昭町長は来年1月任期満了を迎える町長選に再選を目指し立候補する意向を示している。不祥事という印象が付くのを避けようとしたのかもしれません」(町内在住の年配男性) 気になったのは、住居手当として2万6700円もの金額を毎月受け取っていた、ということだ。 町によると、住居手当はアパートなどの賃貸物件が対象で、マイホームに住む場合は支払われない。補助割合は家賃の半額分で、上限額は2万8000円。矢吹町で家賃5万6000円のアパートとなれば、比較的広い部屋で暮らせそうだ。 ちなみに、県市町村行政課によると、上限2万8000円は県・市町村共通の金額とのこと。 厚生労働省「令和2年就労条件総合調査」によると、民間企業で住居(住宅)手当が支払われている割合は47・2%。金額は平均1万7800円。同調査は常用労働者30人以上を雇用する企業6400社が対象で、零細企業は含まれていない。住居手当がない企業もあるだろうから、実態は割合・金額ともにもっと低いと思われる。 本誌ではこの間、「民間準拠と言われている公務員の給与水準だが、実際には大きくかけ離れている」と指摘し、記事でそのカラクリを解き明かしているが、住居手当一つとっても民間準拠ではないことが分かる。そういう意味で、さまざまな背景が読み取れる住居手当の不適切受給だったと言える。
さめじま・ひろし 京都大学法学部を卒業し1994年に朝日新聞入社。99年に政治部に着任し、菅直人、竹中平蔵、古賀誠、与謝野馨、町村信孝ら与野党政治家を担当。2010年に39歳で政治部デスクに抜擢される。13年に「手抜き除染」報道で新聞協会賞受賞。21年に独立して「SAMEJIMA TIMES」を創刊。ユーチューブやウェブサイトで政治解説動画・記事を公開し、サンデー毎日やABEMA、プレジデントオンラインなどにも出演・寄稿している。著書に『朝日新聞政治部』(2022年、講談社)、『政治はケンカだ~明石市長の12年』(泉房穂氏と共著、2023年、講談社)。 新聞社が埋もれた事実を自力で掘り起こし、自らの責任で権力者を追及する「調査報道」がめっきり減った。そればかりか、週刊誌が報じた「疑惑」に世間の耳目が集まっても、何事もなかったようにやり過ごす光景が繰り返されている。 芸能界に君臨したジャニー喜多川氏の性加害問題、岸田文雄首相の最側近である木原誠二官房副長官の妻が元夫の不審死事件の重要参考人として事情聴取されながら捜査が不自然に打ち切られた疑惑……。具体例は枚挙にいとまがない。 警察や検察が捜査に動かない限り、行政が発表しない限り、当事者が不正を自ら認めて謝罪しない限り、「疑惑報道」に踏み切って抗議を受けるリスクを背負うことは避ける。それが主要メディアのたしなみであると言わんばかりに、新聞は振る舞っている。各紙が示し合わせたかのように疑惑を「なかったこと」として片付ける様子は業界談合そのものだ。 新聞がこれほど不甲斐なくなったのはいつからだろう。 福島第一原発の事故直後、現場で事故対応を指揮した吉田昌郎所長の証言録「吉田調書」を朝日新聞が独自入手してスクープしたのは、安倍政権下の2014年5月だった。政府が伏せ続けてきた歴史的証言録を白日の下にさらす大キャンペーンを手掛けたのは、記者クラブを主要拠点とする政治部や社会部ではなく、調査報道に専従する特別報道部だった。私はその取材班を率いるデスクを務めていた。 安倍政権は報道当初、「吉田調書」の公表を拒否し、他紙も「なかったこと」として黙殺した。約3カ月後、第一報のタイトルや文中表現に対してネット上に批判が広がると、安倍政権は一転して「吉田調書」を公表して反撃を開始し、他紙は安倍政権の主張に沿って「朝日批判」に一斉に踏み切った。 朝日新聞の経営陣は2014年7月時点で「吉田調書」報道を高く評価し、新聞協会賞に申請していたのに、安倍政権や他紙から集中砲火を浴びると持ち堪えられず、9月になって記事全文を「誤報」として取り消し、社長の引責辞任に加え、デスク(私)や取材記者を懲戒処分にすると表明したのである。 第一報のタイトルや文中表現の是非について見解が割れるとしても、意図的な捏造報道でもないのに記事全文を抹消し、歴史的スクープを丸ごと「なかったこと」にしてしまったのは、組織防衛を優先した過剰対応だったと言うほかない。朝日新聞が編集責任を負う立場にある管理職にとどまらず、「吉田調書」を独自入手した取材記者まで懲戒処分にしたことは、ジャーナリズムの自殺行為であった。取材記者はネット上で「捏造記者」「売国奴」などと罵詈雑言を浴び、バッシングの矛先は家族にも向けられたが、朝日新聞はこの事態を放置し、取材記者を守らなかった。 詳細な経緯は拙著『朝日新聞政治部』(講談社)に記したが、「吉田調書」事件は、調査報道を仕掛けた朝日新聞が国家権力の反撃に屈服した事件としてメディア史に刻まれたのである。 朝日新聞政治部posted with ヨメレバ鮫島 浩 講談社 2022年05月27日頃 楽天ブックス楽天koboAmazonKindle 朝日新聞に限らず新聞業界全体に「権力批判」に対する怯えが広がった。警察や検察が立件したり、行政が発表したり、当事者が不正を認めたりするまではリスクを冒して報じることを避ける「保身文化」が蔓延したのである。 朝日新聞は「吉田調書」事件後、特別報道部を縮小し、2021年春には廃止した。私は同年春に退社して「SAMEJIMA TIMES」を創刊し、ウェブサイトやユーチューブで政治解説を中心に発信している。政府広報紙と化した現在の新聞の不甲斐なさを目の当たりにするたびに、「吉田調書」事件は新聞ジャーナリズムが凋落した転換点だったと思わずにいられない。当事者として結果責任を痛感している。 朝日新聞特別報道部は当時、福島第一原発事故を題材にした長期連載「プロメテウスの罠」と「手抜き除染」のスクープ報道で、新聞協会賞を2年連続で受賞して勢いに乗っていた。私は同部の立ち上げから深くかかわってきたが、政治部、経済部、社会部などから引き抜いたエース記者と、他社から引き抜いた腕利き記者が切磋琢磨する異色の組織だった。 なかでも「プロメテウスの罠」のデスク役を務めた依光隆明記者(高知新聞)、「手抜き除染」のメインライターだった青木美希記者(北海道新聞)、大阪地検による証拠改竄をスクープした板橋洋佳記者(下野新聞)ら地方紙出身の記者の活躍はめざましく、朝日新聞に新たな息吹を吹き込んでいた。永田町・霞が関で国家権力に肉薄してきた記者と、全国各地で地道な調査報道を重ねてきた記者の個性が融合し、新基軸の調査報道集団が生まれつつあった。 私は特別報道部次長として「地方紙と連携した調査報道」に可能性を感じ、ある原発立地県の地方紙幹部と水面下で交渉を重ね、「共同調査報道」の合意寸前までこぎつけていた。東京を拠点とする全国紙は中央省庁との結び付きが強く、国家権力追及に及び腰になる傾向がある。一方、地方紙は県庁や県警に加えて、電力会社など地域の看板企業に弱い。双方の弱点を補い合うため「原発利権」をテーマに共同取材班を立ち上げ、双方の紙面で同時キャンペーンを展開しようと考えたのだ。 これらの構想も「吉田調書」事件ですべて吹き飛んでしまった。 地元メディアと政治家の関係性 政治はケンカだ! 明石市長の12年posted with ヨメレバ泉 房穂/鮫島 浩 講談社 2023年05月01日 楽天ブックスAmazonKindle 今年5月に上梓した泉房穂・前明石市長と私の共著『政治はケンカだ!~明石市長の12年』で印象に残ったのは、泉市長と神戸新聞との緊張関係だった。 泉氏は2011年4月の市長選で自民、民主、公明が相乗りして兵庫県知事が全面支援する元知事室長との一騎打ちを69票差で制した。全政党、全業界を敵に回して当初はマスコミに泡沫候補扱いされたが、市民の草の根の応援だけを頼りに激戦を勝ち抜いたのである。就任当初は市役所にも市議会にも味方がいない四面楚歌の状態だった。 それにも増して手を焼いたのは神戸新聞との関係だった。泉氏は市の税金が購読料や広告費などとして神戸新聞やグループ企業に流れ込んできたことを知り、「税金で番組を買わなくても普通に報じてもらえばいい」と指示し、予算を削減した。これが神戸新聞上層部の逆鱗に触れ、泉市政を糾弾する記事が急増したのだという。 地元で圧倒的シェアを誇る地元紙を敵に回すことは、知事や市長に大打撃を与えかねない。他方、県や市の予算を収入源の大きな柱とする地元紙は、国の批判にはためらいがなくても、地元自治体の追及には及び腰になりがちだ。この「持ちつ持たれつの関係」が崩れたのが明石市だった。初当選から12年、泉市長と神戸新聞の関係はぎくしゃくし続け、市役所や市議会からのリーク情報とみられる記事が繰り返し掲載された。 地元メディアとの関係に苦労する政治家 泉房穂・前明石市長 こうした事態を避けるため、大概の知事や市長は地元紙と良好な関係を維持し、「権力とジャーナリズムの緊張関係」は希薄になる傾向がある。 さらに露骨なケースもある。香川県立高松高校で私と同級生だった立憲民主党の小川淳也衆院議員は「香川1区」で自民党の平井卓也衆院議員と熾烈な戦いを繰り広げてきたが、最も頭を悩ませてきたのは、香川県内でシェア6割を誇り、系列テレビ局もあわせ持つ四国新聞を「平井一族」が経営していたことだった。 小川淳也衆院議員 最近では石川県の馳浩知事と地元紙の北國新聞との関係が注目された。馳知事は石川テレビが制作したドキュメンタリー映画「裸のムラ」に自身や県職員の映像が許可なく使用されたことに抗議し、定例記者会見の開催を拒否。県政記者クラブ(14社加盟)は総会を開いて早期再開の申し入れを協議したが、北國新聞とテレビ金沢は賛同せず、全国紙などの有志で申入書を提出することになった。地元メディアと知事の濃密な関係をうかがわせる事態である。 北國新聞は地元の大物政治家・森喜朗元首相のインタビューを継続的に掲載している。最近では自民党安倍派の会長を争う5人衆(松野博一官房長官、高木毅国会対策委員長、世耕弘成参院幹事長、西村康稔経済産業相、萩生田光一政調会長)の人物評を言い募り、萩生田氏だけを絶賛する森氏のインタビューが永田町の話題をさらった。一連のインタビューについては「地元の大物政治家と地元紙の密接な関係」を疑問視する声がある一方、「全国紙では引き出せない森氏の本音を報じた意義は大きい」と評価する声もある。 仮に石川県内の報道機関が北國新聞だけならば、大物政治家との密接な関係はマスコミの権力監視機能を低下させ、看過できない。一方、複数の報道機関が存在する場合は、権力者との近さも含めてそれぞれが独自性を発揮し、相互批判を通じて健全性を維持できるという考え方も成り立つであろう。 最も危険なのは、報道各社が行政に忖度した報道を横並びで展開することだ。地方政治と地方有力紙の癒着は、全国紙や他の地方メディアが徹底追及して牽制すればよい。地方有力紙に対抗するメディアが地域から消滅し、メディアの相互監視機能が失われることだけは絶対に避けなければならない。 報道の多様性は、ジャーナリズムの生命線である。 地方紙に期待される役割 福島民報 福島民友新聞 東京では全国紙や在京テレビ局と国家権力中枢の癒着が、地方紙と知事や市長との関係よりも深刻な問題として存在する。 先述した朝日新聞特別報道部は、政治部と首相官邸、経済部と財務省、社会部と警察・検察といった癒着構造から解き放たれ、記者クラブを離れてしがらみなく国家権力の疑惑に切り込めるところに最大の強みがあったが、その分、各部との関係は緊張して社内的に孤立する場面が多かった。現在では週刊文春など雑誌メディアが全国紙と国家権力の癒着に風穴を開ける役割を果たしているが、私は同様の役割を地方紙に期待したいと考えている。 私は1999年に朝日新聞政治部に着任し、官邸記者クラブや与党記者クラブに長く在籍した。有力地方紙はここに若干数の記者を常駐させている。それぞれの地方紙の将来を担う精鋭たちだ。 なかでも記憶に残っているのは、森喜朗氏が首相に就任してまもない2000年5月に「日本は天皇を中心とする神の国」と発言して批判を浴びた時、西日本新聞が放ったスクープだった。 西日本新聞の記者は官邸記者室のコピー機付近で、神の国発言をめぐって記者会見で厳しい追及を受けることが予想されていた森首相に対して「質問をはぐらかす言い方で切り抜けるしかありません」などと指南する内容の文書を拾った。内々に取材を進め、この「指南書」を書いたのはNHK記者であると確信して報じたのだ。 報道機関の政治部記者が首相に対し、記者会見の「切り抜け方」を指南していた――。政治家の番記者としてオフレコ取材を重ね、濃密な関係を作り上げていく全国紙の政治部記者たちからは決して生まれないスクープだった。官邸記者クラブに常駐しながら権力中枢とは一線を画している地方紙だからこそ、躊躇なく取材し、覚悟を決めて報道に踏み切ることができたと言えるだろう。 必要な「全体としての健全性」維持 どんな相手にも臆することなく、厳しく追及して闇を暴く。それがジャーナリズムの理想である。だが、いつ何時もその姿勢を貫く完璧な報道機関や記者は多くない。どんなに立派な記者も間違うことはあるし、怯むこともある。だからこそ、ジャーナリズムは多様性を守り、誰かがどこかで追及し続けるという「全体としての健全性」を維持することが絶対に必要なのだ。 地方紙は知事や市長、県警に弱いかもしれないが、中央省庁には気兼ねなく切り込める。全国紙はその逆だ。闇を暴くのはいつも同じ報道機関や同じ記者である必要はない。それぞれがそれぞれの強みを発揮し、それぞれの弱みをカバーしあえばよい。全国紙と地方紙はそのような補完関係にあると私は思う。 地方紙は活動領域を地域テーマに限定させる必要はない。もっと広げればよい。ネット時代は世界に向けて発信することも可能だからだ。 朝日新聞政治部の後輩である南彰記者が今秋に退社し、沖縄に拠点を移して地方紙記者として活動するという。近年は新聞労連委員長を務め、SNSでも積極的に発信し、政治報道のあり方を批判する著書も上梓した。ところが、朝日新聞は「吉田調書」事件以降、記者の社外活動を厳しく制約するようになっている。南記者が新聞労連から政治部に復帰した後も風当たりは強く、まもなく人事異動になった。社内の管理統制を強める朝日新聞の将来に限界を感じ、新天地として沖縄を選んだのであろう。朝日新聞が地方紙から腕利き記者を引き抜いたのは今は昔。閉塞感が漂う全国紙から地方紙へ転身する新たな動きとして注目したい。
任期満了に伴う石川町議選が9月3日に投開票され、新議員14人が決まった。同町議選をめぐっては、県議選との兼ね合いから、石川郡内の他町村の関係者も注目していた。注目人物の今後に迫る。 今秋県議選への立候補は明確に否定 選挙結果は別掲の通り。現職10人、新人6人の計16人が立候補し、現職8人、新人6人が当選した。投票率は67・46%で、前回を2・11ポイント下回り、過去最低(補選は除く)だったという。 選 挙 結 果(9月3日投開票、投票率67・46%)当 820 乾 初 美 (37) 無現当 712 近 内 雅 洋 (69) 無現当 701 迎 茂 城 (52) 無新当 676 星 恵 子 (64) 無新当 630 瀬 谷 寿 一 (70) 無現当 568 増 子 美知夫 (73) 無現当 557 小 木 芳 郎 (70) 無現当 547 鈴 木 義 延 (64) 無新当 534 瀬 谷 京 子 (79) 無現当 445 金 沢 和 則 (64) 無新当 443 根 本 重 泰 (64) 無現当 376 菊 池 美知男 (69) 無現当 342 角 田 保 寿 (70) 無新当 331 水野谷 常 子 (60) 無新 207 関 根 信 次 (84) 無現 161 藤 島 一 浩 (60) 無現 この結果に、石川郡内の住民はこんな疑問を口にした。 「乾初美さんが町議選に出たということは、県議選に出る可能性はなくなったと見ていいのか?」 乾氏は前回(2019年)の町議選で1040票を獲得し、トップで初当選を果たした。唯一の4桁得票で、同町民によると「この町の議員選挙で1000票オーバーはそうそうあることではない」という。 本人のSNSに掲載されたプロフィールによると、「学法石川高校卒業後、大学でカウンセリングを学び、震災後、地元石川での子育てを決意し石川町に戻る。2015~2017年まで、政治団体の秘書・事務局として働く」とある。 最初の選挙時は、33歳の若さと女性候補であることなどから、「そうそうあることではない」ほどの得票を得た。今回は女性候補者が4人いたこともあり、前回から200票ほど減らしたが、今後のキャリアアップを期待する声は少なくない。 そんな中で浮上していたのが「県議転身説」だ。一部関係者から「乾氏を県議選に立ててはどうか」と推す声が出ており、その話が広まって前述した石川郡内の住民の疑問につながっている。 県議選は11月2日告示、12日投開票で行われる。石川郡選挙区は定数1で、現在の現職は円谷健市氏(69)。東白川農商(現・修明)高校卒。石川町議を3期務めた後、2011年11月の県議選で初当選した。現在3期目。立憲民主党所属(県議会の会派は県民連合)。 円谷氏は7月、今期限りでの引退を表明した。その場に、会社役員の山田真太郎氏(39)が同席し、県議選に無所属で立候補することを表明した。円谷氏の後継者ということになる。山田氏は石川町出身。日体大体育学部卒。石川町商工会青年部副部長。同町の自動車整備工場で専務を務める。 これより1カ月前、6月には自民党県連職員の武田務氏(42)が自民党公認で立候補することを表明した。武田氏は石川町出身。安積高卒。郡山市の民間企業勤務を経て、2014年8月から同党県連職員を務めている。 現状、この2人による選挙戦が濃厚だが、前出の石川町民によると、「選挙まで2カ月を切ったが、県議選が話題になることはほとんどない。そのくらい、盛り上がり、話題性に欠ける」という。 そうしたこともあり、「乾氏が県議選に立候補すれば面白いのではないか」といった声が余計に広がっていった。 「石川町議として頑張る」 乾初美氏(議会のホームページより) もっとも、本人に県議選に立候補する意思があったら、9月の石川町議選に出るとは思えない。わずか2カ月後に辞職して鞍替えするとなれば、投票してくれた有権者に対して失礼に当たるからだ。 町内の事情通も、「その可能性はないと言っていい」という。 その根拠の1つに上げたのが、前述した「わずか2カ月後に辞職して鞍替えしたら有権者に失礼」ということ。加えて、「乾氏は改選後に副議長に立候補・就任した。すぐにポストを捨てるくらいなら、最初から副議長に立候補しないだろう。そこからしても、今回の県議選に立候補する考えはないと見ていい。一部の外野の人が勝手に言っているだけ」というのだ。 石川町では9月15日に改選後初となる臨時議会が開かれ、正副議長選挙が行われた。乾氏は副議長に立候補した。そのほか、菊池美知男氏と増子美知夫氏が立候補し、無記名投票の結果、乾氏6票、菊池氏2票、増子氏6票で、乾氏と増子氏が同数で並び、くじ引きの結果、乾氏が副議長に選ばれた。ちなみに、議長選は、近内雅洋氏、瀬谷寿一氏、小木芳郎氏の3人が立候補し、近内氏6票、瀬谷氏5票、小木氏3票で、近内氏が議長に選ばれた。 こうした背景から、乾氏の県議転身はないというのだ。 乾氏に「県議選に……という話が出ているが」と聞くと、次のように答えた。 「それは明確に否定します。石川町議として、町のために頑張っていきます」 これが、冒頭の石川郡内の住民の「乾さんが町議選に出たということは、県議選に出る可能性はなくなったと見ていいのか?」との疑問の答えだ。 前出・町内の事情通はこう話す。 「乾氏は、副議長選で同数得票のくじ引きで当選したように運にも恵まれ、それは大事な要素だと思います。ただ、これからもっと上のステージを目指すとしても、もう1、2期、町議をやってからでも遅くはないでしょう。仮にあと2期(8年)やったとしても、まだ45歳ですからね。そもそも、将来的に楽しみな部分はあるかもしれないが、現状は、『フレッシュな女性議員』というだけですから」 乾氏が町議として実績を積み、期待感を持たせてくれるような存在になれば、「もっと活躍の場を広げられるステージに挑戦してはどうか」といった話になるのかもしれないが、少なくとも、まだそのときではないということだろう。
ここ最近、内堀雅雄知事(59)を悩ませていたのがジャニーズ事務所の性加害問題と、東京電力福島第一原発の敷地内に溜まる汚染水(ALPS処理水)の海洋放出だ。二つの問題は現在進行形だが、ジャニーズ問題は県としての対応を発表し、海洋放出は国・東電が実行に踏み切ったことで、県の手を離れたかのような雰囲気が漂っている。 ジャニーズ問題、汚染水放出にどう対応したか 世間を大きく揺るがすジャニーズ事務所の性加害問題。所属タレントはこれまで多くのメディアを席巻してきたが、前社長による若手タレントへの複数の性加害を、同事務所があったと認め謝罪すると、大企業を中心に所属タレントのCM起用を見合わせる動きが一斉に広まった。 こうした中で注目を集めたのが福島県の動向だった。 県は震災翌年の2012年度からジャニーズ事務所のアイドルグループ「TOKIO」と連携し、県産農林水産物のPR活動などを展開してきた。TOKIOが震災前から頻繁に県内を訪れ、DASH村などの番組づくりをしてきた縁でメンバーが風評払拭などの取り組みに積極的に関わってきた。震災から12年経ち、メンバーが5人から3人になってもTOKIOの「福島を応援したい」という姿勢は変わらず、県は現在も県産農林水産物のCMやポスターにメンバーを起用している。 2021年度からはTOKIOとの連携がさらに深まり、県は風評・風化戦略室内にTOKIOとの窓口となるバーチャル課「TOKIO課」を設置。昨年5月には西郷村内に福島の自然を生かした交流施設「TOKIO―BA」が設けられ、メンバーが不定期に訪れて来場者と接するなど活動範囲は広がりを見せていた。 前社長による性加害問題は、そんなTOKIOと福島県の結び付きに水を差すものだった。 「所属タレントの起用はチャイルド・アビューズ(子どもへの虐待)を認めることになる」 「被害者への救済策が示されると同時に、事務所運営の抜本的是正が認められなければ取引を続けることはできない」 という厳しい声のもと、経済界のジャニーズ離れが加速していく中、県はTOKIOとの連携を継続するのか、それとも解消するのか――9月15日に発表された「県の正式な考え方」とする談話は次のようなものだった。 《大前提として、いかなる性加害も絶対に許されるものではない。性加害は、被害者の尊厳を踏みにじる極めて悪質な行為》《ジャニーズ事務所においては、人権を尊重し、被害者救済や再発防止策など、社会的責任をしっかり果たすべき》《TOKIOの皆さんは、震災と原発事故後、私たちが風評被害などで最も悩み苦しんでいた時も、福島に寄り添い続け、県民を勇気づけていただいた。長年にわたり、県産農林水産物のPRなどに協力いただくなど、福島を全力で応援し続けていただいていることに心から感謝している》《TOKIOの皆さんには、今後も変わらず福島県を応援していただきたい》 県はTOKIOとの連携を継続すると明言したのだ。この2日前、農林水産省がメンバーの城島茂さんについて、広報大使としての起用を取りやめると発表した際は「国がやめれば県も従うのではないか」と囁かれたが、予想に反して連携解消には向かわなかった。同じく所属タレントの起用を控えると発表した小池百合子東京都知事や大村秀章愛知県知事と比べても、福島県は独自の判断を下したことが見て取れる。 県の判断は概ね好意的に受け止められている。ネット上では「TOKIOとの縁が切れずによかった」「彼らはずっと福島に寄り添い続けてくれた。連携継続は当然だ」と評価され、福島民報と福島テレビが共同で行った県民世論調査でも「連携継続に賛成」と答えた人は73・9%に上った(福島民報9月25日付)。 上辺だけの付き合いしかしてこなかった大企業と異なり、福島県は長い時間をかけてTOKIOとの絆を構築し、県民はメンバーの活動する姿を間近で見続けてきた。県民が寄せる彼らへの尊敬と信頼は絶大。そう考えると、7割以上の人が賛成という結果は驚きでも何でもなく、ごく自然なことと言える。 そうした事実を踏まえた上で、しかし、冷静に判断するための材料をここに提示したい。 ジャニーズ事務所の関連会社として2020年7月22日に設立された㈱TOKIOは、同事務所と同じ東京都港区赤坂九丁目6―35に本店を置く。資本金1000万円。 事業目的は①芸能人・文化人等のマネジメント、②イベント・コンサート・講演会等の企画、制作および運営、③本・グッズ・CD・DVD等の商品の企画、制作および製造販売、④映画・テレビ番組等の企画、制作および運営、⑤著作権・著作隣接権等の管理、⑥広告の制作、代理店業、⑦不動産の管理および運営。 役員は代表取締役藤島ジュリー景子、取締役城島茂、國分太一、松岡昌宏の各氏。 ジャニーズ資本の会社 TOKIOを起用した「ふくしまの米」をPRするポスター ㈱TOKIOは対外的に「社長」は城島さん、「副社長」は國分さんと松岡さんと発表しているが、3氏は代表権を持っておらず、創業者一族である藤島氏がオーナーとして君臨しているのである。県は「㈱TOKIOとは付き合いがあるが、ジャニーズ事務所と契約しているわけではない」と説明するが、両社が同じ場所に事務所を構えていることは知っているはずで、詭弁に過ぎない。 こうした状況を、ジャニーズ問題で人権侵害とともに叫ばれているコンプライアンス(法令順守)の視点から考えてみたい。 企業が事件を起こした時、取引先は一斉に契約を解除し、場合によっては違約金を請求することもある。担当社員は優秀で仕事ができる。好感度も高い。本音はその社員と今後も付き合いを継続していきたい。しかし、所属する企業が問題を起こした以上、コンプライアンスの観点から契約を解除せざるを得ない――こうした考え方のもと、県は企業と取引してきたはずだ。 「所属タレントに罪はなく彼らも被害者」と擁護する人もいるが、だったら事件を起こした一般企業の社員も同じように擁護されなければ不公平だ。「TOKIOは他とは別」と言い切るのも、コンプライアンスのなし崩しにつながってしまう。 どこまで行ってもジャニーズ事務所の影がチラつく限り、㈱TOKIOとの連携はどこかスッキリしない感覚に陥るのだ。 しかし、TOKIOとの連携はこれからも是非継続したいということなら、人権尊重とコンプライアンスを担保するためにも、㈱TOKIOがジャニーズ事務所の資本から離脱し、本店も移して独立採算制に移行した方がいい、というのが本誌の見解である。 実際、先の県民世論調査でも「連携継続に反対」は13・2%、「分からない」は12・8%に上った。この3割の人たちも、TOKIOのこれまでの活動に感謝しているはずだが、一方で人権尊重やコンプライアンスの視点は欠くべきではないと考えているのではないか。そういう意味では、TOKIOへの感情移入だけで答えていない冷静な人たちと言えるのかもしれない。 人権尊重に対する認識は、一昔前とは大きく変わっているが、世界標準と比べると日本はまだまだ遅れている。海外では有名な映画監督や大物プロデューサーがかつての性加害行為で追及されると、スポンサー契約を打ち切られ、会社を追われるだけでなく、その会社は生き残るために社名を変更して出直す事態が頻繁に起こっている。社会全体が「性加害は絶対に許さない」という考え方で一致している。 誤解されては困るが、本誌はTOKIOとの連携継続に反対しているわけではない。今まで福島県を応援し続けてくれたことには素直に感謝している。しかし、所属事務所に忌まわしい事件が起きてしまった以上は、モヤモヤ感が残ったまま応援してもらうより、㈱TOKIOにジャニーズ事務所との資本関係を見直してもらい、あらためて結び付きを深めていった方がいいのではないか。 この問題に限らず、内堀知事は難しい問題について踏み込んだ発言を一切しないので、関係見直しを提案することは考えにくいが、人権尊重とコンプライアンスの考えを持ち合わせているなら、先の「県の正式な考え方」を発表して終わるのではなく、県民が素直に歓迎できるよう、TOKIOとのスッキリした新しい関係を構築していくべきだ。 知事の責任を問う神山県議 神山悦子県議 県議会9月定例会は9月11日に開会し、13、14日に代表質問、19、20日に一般質問が行われた。代表質問は共産党の神山悦子議員、自民党の小林昭一議員、県民連合の亀岡義尚議員が質問台に立ち、それぞれが汚染水(ALPS処理水)の海洋放出に関する質問を行った。一般質問でも、質問した10人中3人がこの問題に触れた。 初日の代表質問について、地元紙は14日付紙面で伝えたが、海洋放出関連の質問・答弁は、福島民報では全く触れられておらず、福島民友では小さく扱われただけだった。 複数議員がこの問題を取り上げた中でも、神山悦子議員は「漁業者をはじめ、県民の合意がないまま海洋放出を強行した国と東京電力に強く抗議し、撤回中止を求めるべき」と迫った。 神山議員は「国、東京電力は県漁連と2015年8月に交わした『関係者の理解なしにいかなる処分も行わない』との約束を反故にした」、「知事はまるで他人事のように、『国が責任を持って対応すべきもの』と述べ、国に責任を丸投げしている。県民を代表する首長としてはいかがなものか」などと述べた。 そのうえで、「東京電力は先日、初回分の7788立方㍍の放出が完了したと発表し、設備の点検のため、現段階では放出を停止しています。海洋放出後に発生したこの間の国内外における様々な問題を見ても、このまま中止することが解決の確かな道ではないでしょうか? 漁業者との約束を反故にし、漁業者をはじめ、県民の合意がないまま海洋放出を強行した国と東京電力に強く抗議し、撤回中止を求めるべきと思いますが、知事の考えをうかがいます」として、内堀知事の見解を問うた。 これに対し、内堀知事はこう答弁した。 「海洋放出に当たっては、廃炉等を進めるうえで、やむを得ないとする意見がある一方で、海洋放出に反対する意見や、新たな風評を懸念する声など、様々な意見が示されています。処理水の海洋放出は、長期間にわたる取り組みが必要であり、安全の確保や新たな風評を生じさせないなど、万全な対策を徹底的に講じることが重要です。このため、8月22日に経済産業大臣に対し、あらためて安全確保の徹底や国内外への正確な情報発信、万全な風評対策に取り組むことに加え、特に水産業については、漁業関係者が風評の発生を強く懸念していることから、復興の取り組みを妨げることなく、将来にわたってなりわいを継続し、次世代へ確実につないでいけるよう、必要な対策を徹底的に講じることを強く求めました。処理水の問題は、福島県だけではなく、日本全体の問題です。引き続き、国に対し、国が前面に立ち、政府一丸となって、万全な対策を講じ、最後まで全責任を全うするよう求めていきます」 神山議員が再質問を行う。 「8月から福島復興共同センターが緊急に署名運動に取り組みました。これは海洋放出を強行しないことを求める緊急署名です。8月31日に7万1617人分の署名を国に提出しています。現時点でオンライン署名は約14万6000人分、紙ベース署名は約5600人分ですから合計約15万1600人分です。さらに、今回の海洋放出決定後に放出差し止め訴訟が福島地裁に提起されました。ここには漁業関係者も入っています。この間、こうした県民運動がいろいろありました」 「知事は2015年の県漁連と国、東京電力が交わした約束について何も触れていませんが、私はこれは重要な約束だったと思うんです。この約束が本当に守られているかどうか、私は客観的に見て破られたと思いますよ。いま、(1回目の海洋放出を終え、設備点検のために)止まっていますから、海洋放出をしないこの状態を県として、知事として国、東京電力に求めることが様々な問題を解決することになり、そういう立場だと思いますから、知事もう一度お答えいただけませんか」 内堀知事の答弁はこうだ。 「ALPS処理水の海洋放出について、県漁連は『ALPS処理水の放出事業が進み、廃炉が完遂した時点で、福島の漁業がなりわいとして継続していれば、約束は果たされたこととしたい』と述べられました。国、東京電力は、こうした漁業者の皆さんの思いをしっかり胸に刻み、新たな風評を生じさせないという決意のもと、漁業者の皆さんが将来にわたり漁業を継続していけるよう万全の対策を講じるなど、最後まで全責任を持って取り組むべきであると考えています」 最後に、神山議員は「そんな先の約束より、いまに注視して、それで皆さんの声を聞いていく、と。知事はそのくらいの立場に立つべきだと思います。いまちょうど(海洋放出が)止まっていますから、そういった声を聞いて判断すべきだと思いますので、中止という立場も踏まえてご答弁をお願いします」と訴えた。 内堀知事は次のように答弁した。 「ALPS処理水の海洋放出について、漁業者の皆さんからは風評被害などに対する不安や懸念、県産魚介類の販路拡大の支援などを求める意見とともに、我々の願いは漁業を続けていくというその一点であるといった切実な声を示されています。国、東京電力は、そうした漁業者の皆さんの思いを真摯に受け止め、新たな風評を生じさせないという決意のもと、漁業者の皆さんが将来にわたり漁業を継続していけるよう万全の対策を講じるなど、最後まで責任を持って取り組むべきであると考えています」 内堀知事はこれまで通り、「国の責任で」という姿勢に終始した。 国に従順な内堀知事 内堀雅雄知事 この間、本誌で何度も指摘してきたように、内堀知事は官僚出身ということもあってか「国に従順」との評価が定着している。その代表例として言われているのが、原発事故直後、国から県に寄せられたスピーディ(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)の情報を、当時副知事だった内堀氏の判断で公表しなかったとされる問題。「国がスピーディの情報を公表していないのに、県が先駆けて公表するわけにはいかない」といった官僚気質がそうした事態を招いたと言われている。 ほかにもコロナ対策について、本誌では「基本は外出自粛などの徹底と、国民の生活保障、自粛に伴う事業者への減収補償のセットでなければならない。幸い福島県(県民、県内企業など)は原発賠償の経験から『補償』に関する知識があるから先行事例になれる。それを生かして、福島県が率先して事業者への減収補償を行えばいい。福島県がそれをやれば他地域に広がり、コロナ対策が実のあるものとなる」と指摘した。その一方で、「国が『休業補償はしない』という中で、国に従順な内堀知事がそれをやるとは思えないが……」とも書いた。 今回の問題も同様で、国への従順姿勢から海洋放出を黙認し、「国が責任を持って対応すべき」との見解しか示さない。福島県民の代表として役割を果たしているとは言い難い。
取材日を11月5、6日に設定。3日の夕方に全候補者(12人)の事務所に電話をして、「5、6日のいずれかで、街頭演説や個人集会などの予定があれば教えてほしい。その様子を取材させてもらったうえで、終了後に5分くらい、次の予定があるならもっと短くてもいいので、候補者への個別取材の時間を設けてほしい。両日に街頭演説や個人集会などの予定がなければ、事務所で取材させてほしい」ということを依頼した。 その時点で、街頭演説や個人集会などの予定が把握できた、あるいは事務所での取材のアポイントが取れたのが10人。計ったように5日と6日で半々(5人ずつ)に分散した。もっとも、時間が被っていた人もいたので、その場合は手分けして取材に当たった。 残りの2人は流動的だったが、どちらも「お昼(12時から13時)は一度事務所に戻ると思う」とのことだったので、「5日から6日のお昼を目安に事務所に行くか電話をする」旨を伝えた。 こうして取材をスタート。2日間かけて、比較的、スムーズに全候補者に会うことができた。 担当:末永 補佐:本田 福島県議選【郡山市】編 https://youtu.be/H3LrOAB1K0E?t=1756 【福島県議選】投票前日!【選挙漫遊】総括 投票の判断材料に!福島・郡山・いわき・会津若松郡山市の解説は29:16~ 定数10 立候補者12 告示日:2023年11月2日 投票日:2023年11月12日 立候補届出状況↓ https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/601621.pdf 選挙公報↓ https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/601654.pdf 届け出順、敬称略。 あわせて読みたい 【福島市】選挙漫遊(県議選) 【いわき市】選挙漫遊(県議選) 【会津若松市】選挙漫遊(県議選) 今井久敏 https://www.youtube.com/watch?v=G6hR6C2WpO4 ――真っ先に取り組むべき県政の課題は。 「物価高騰対策と防災・減災ということに尽きると思います。それを徹底してやっていきます」 ――そのほかでは? 「原発処理水の問題を含めた復興の加速です。われわれが提案したイノベーション・コースト構想がしっかりと実を結ぶように取り組んでいきます」 一言メモ 公明党・山口那津男代表が応援に駆けつけたこともあり、演説会場の郡山駅前広場には多くの聴衆が集まった。警察・警備でかなりの厳戒態勢。その中で、動き回って写真撮影をしていたため、おそらく筆者は「注意人物」扱いだった。(末永) 山田平四郎 https://www.youtube.com/watch?v=F0pB6JNMgzE ――この選挙戦での有権者の反応は。 「私の地元は田村町で、4年前の台風被害で選挙ムードではない部分がありました。それから見ると、地元では支援の輪が広がっていることを感じる一方、『いつ選挙ですか』と聞かれることもあり、関心という部分では分からない点もあります」 ――県政の課題は。 「内堀知事も大きな課題に挙げていますが、人口減少問題です。郡山市は微減にとどまっていますが、郡山市で育った子どもが大学進学等で都市部に出て、なかなか戻ってこない実態があります。事業承継の問題も含めて、魅力ある郡山市にしていかなければならないと思っています。東日本大震災、原発事故、令和元年東日本台風、昨年・一昨年の福島県沖地震がありましたが、災害に負けないまちづくりをしていかなければなりません。国会議員の先生方と一緒に、郡山市の地区ごとの課題を踏まえながら、まちづくりをしていかなければなりません」 一言メモ 事前連絡では「基本的には昼には事務所に戻る」とのことだったが、6日昼前に事務所に確認すると、「今日は昼は戻ってこない」という。ただ、「〇〇町の〇〇という食堂で昼食をとる予定だから、12時過ぎに行けば会える」とのこと。教えてもらった場所に行くと、事前に事務所から候補者に連絡があったようで、すんなり取材できた。(末永) 佐藤徹哉 https://www.youtube.com/watch?v=t1NCu14mPiw ――この選挙戦で住民の声をどう受け止めているか。 「若者が活躍できる環境をつくることと、子育て世代の仲間からは、教育の充実、子育て支援の充実を求める声を数多くいただいています」 ――県議会では、県立高校の空き校舎の問題について質問を行っていた。 「空き校舎は、上手く活用することで地域の発展に寄与できるものだと思っています。受け入れる自治体がどう扱うか。郡山市は安積高校御館校が対象で、立地的に人が集まる場所ではありません。逆に、大きな音を出しても問題なければ、楽団の練習、夜間の合唱の練習に使わせてもらいたい、といった要望はあります。決定権は郡山市にあるので、市にどう訴えていくかが今後の課題です」 一言メモ 本誌の問い合わせに対して、候補者本人から「事務所で取材を受けます。事務所の雰囲気も見てほしいので」と連絡があった。実際、事務所を訪ねると、若い人が多いのが目に付いた。(末永) 高橋翔 https://www.youtube.com/watch?v=TnGRnB_Q_-M ――今回の選挙の位置付けは? 「郡山市は当初、無投票が予想されていました。人材不足が顕著で、現職が後継者を育てられてない。同じ顔ぶれで、選挙公報を見ても言っていることも同じ。そのレベルなんですよ。そもそも、この4年間で『県議ってどこで何をしているの?』という声が結構多かったので、そこを改善するために、民間人・有権者側の立場で立候補することにしました」 ――今回は選挙区である郡山市だけでなく、県内全域を回っているそうだが。 「郡山選挙区から立候補したから、ほかは関係ないという考え方は危険だと思います。それは僕からしたら当たり前のこと。若い人は、そういうスケールの小さい考えの人の方が少ない。いまはそういう若い人は選挙に行かないかもしれない。でも、いずれ選挙に関わるようになったときに履歴がない。30代で立候補する人はほとんどいないから。若手が本当の意味での無所属で立候補した場合、どれだけ求められているか。僕がその履歴をつくる意味もあります」 一言メモ 演説内容を聞いても、個別取材でも、1人だけ「異質」で、フラットな視点で見るならば、最も興味深い人物。もちろん、それが良いか悪いかは有権者の判断による。(末永) 佐藤憲保 https://www.youtube.com/watch?v=W6F8KQenANs ――地域の課題は。 「郡山市は、他地域に比べて若い世帯が多いが、少子高齢化が迫っている流れは同じ。県の中心である郡山市がもっと経済中心地にならなければなりませんが、まだまだそうはなっていません。郡山市を経済中心地として発展させていく必要があります。震災後は、逢瀬ワイナリーや医療機器開発支援センター、三春町の環境創造センターの誘致を行い、これらを郡山市ならびに周辺地域の経済発展の核にしていきたいと思っていましたが、リンクした民間企業の貼り付けがなかなか進んでいないのが課題です。機能的、有機的に連携して民間企業の誘致を進めていきたい」 ――県全体の課題は。 「やはり震災復興。東日本大震災の復興は一定の形になってきたが、原発事故・廃炉を抱える県にとって、廃炉が終了するまでは課題として対応していく」 一言メモ 事務所での取材とは別に、JR舞木駅での街頭演説(11月6日13時55分から)を取材。平日にも関わらず約20名の群衆がおり、固定支持者層の厚さを見た。在任期間が長く人脈も広い。コロナ対応の話などに聞き入った。(本田) 二瓶陽一 https://www.youtube.com/watch?v=tdYBBR3r0GM ――立候補の経緯は。 「郡山市を良くしようと8月の郡山市議選に立候補しましたが、落選したため実現できませんでした。私も71歳ですから、4年後の市議選を目指すよりも、元気なうちにやりたいことをやらなければならないと思い、今回の県議選への立候補を決めました」 ――ズバリ、県政の課題は。 「県議のこの4年間の任期は、あまり活躍の場が見られなかった。コロナで、そういう場に恵まれなかったのかもしれませんが、あまりにもないので、このままでいいのか、と。そうした中で、私はインバウンド計画、英語オンライン教育推進などに取り組みたいと思っています」 一言メモ 市議選では「日本維新の会」から立候補。ただ、「政策的に合わない部分もある」と今回は無所属に。政党などに縛られない自由な視点・発想を売りにしている。(末永) 神山悦子 https://www.youtube.com/watch?v=JxtEHjADPrw ――県政の課題は。 「多数あるが、まずは暮らしを守ること。県内の86%が学校給食費を無料にしており、県が半分補助すれば県内全市町村が給食費半額になります。そういった資金を出せるだけの財源もあります。『子育て日本一』と謳っている福島県であり、国でも検討を始めたいまだからこそ、県として実施すれば全国トップクラスになると思います。 震災後、18歳以下の医療費無料を公約で掲げて実現しました。これも全国でいち早い取り組みでした。県民が原発事故や様々な災害に苦しんでいる中でも、まずは子どもを守る。教育費の負担軽減を県が率先してやるべきです。 県は『健康長寿県』も謳っているが、であれば高齢者のバス代無料化やタクシー補助を行うべき。どちらも県内自治体では実施しているところが多く、県が率先し全県で進めるべき。 医療面でも、医師不足が続いており、震災によってさらに大変になっています。そういった部分に優先して予算を回すべきです。 中には、『年を越せるのか』と不安視している事業者もいます。そのような県民の暮らしの痛みを感じて、そういった方々の暮らしを守るために予算を投じることを、知事の判断でやるべきです。そうなっていないのが県政の一番の課題だと思います」 一言メモ 住宅地での街頭演説。群衆はそれほど多くないが、花束を持って応援に来る支持者もおり、アットホームな雰囲気。給食費無料化や高齢者向けのタクシー補助など、訴える内容も生活に寄り添った事柄が多かった。(本田) 鈴木優樹 https://www.youtube.com/watch?v=whtXAY6sn9E ――県政の課題は。 「復興と、人口減対策ですね。特に、復興の部分は浜通りが多い。それは当然ですが、中通り、会津も含めたオールふくしまでやっていかなければならないと思います」 ――有権者から何を求められていると感じるか。 「政治に対する不満があるのだと思いますが、訴えたことに対する跳ね返り、それは声だけでなく顔(表情)を含めて、厳しいなと感じています。政治への不信感を払拭して、参加しよう、自分たちの意思表示をしようと思ってもらえるようにしなければなりません。ただ、われわれはすべての方に接触はできない。ですから、こういうところ(個人演説会に来てくれた人)から広めてもらう。われわれも発信していくような地道な作業が必要だと思います」 一言メモ 安原地区での個人演説会を取材。広い郡山市内でも、本来の地盤ではないところで、自発的(地元町会主導)に後援会がつくられたという。地元住民は「地元選出の市議会議員とのタッグでの活躍を期待している」と話していた。(末永) 佐久間俊男 https://www.youtube.com/watch?v=_ZpgUSpL-OA ――今日で告示から5日目になりますが、有権者の声をどう捉えていますか。 「人口減少の現状をしっかりと捉えて選挙戦に臨んでほしいという声が多いですね。もう1つは、もっともっと魅力ある郡山にして、若者の県外流出を抑制できるようにしてほしい、と。これは私も同じ思いです」 ――それを踏まえ、県政ではどういった活動をしていくか。 「選挙でいただいた意見を県政に伝えていくわけですが、限られた予算の中で、県民生活に直結する部分への予算配分にもっと重きを置くべき。そういったことを訴えていきたいと思います」 一言メモ 馬場雄基衆議院議員らが応援演説に駆けつける。下校途中の中学生から「頑張れー」と声をかけられていた。(末永) 長尾トモ子 https://www.youtube.com/watch?v=1WvkS95D9gY ――県政の一番の課題は。 「少子高齢化の問題に加え、震災・原発事故から12年7カ月が経ち、浜通り、双葉地区の人口減少が進んでいる中、新しいふくしまの産業を充実させていかなければなりません。国、国際研究機構と連携しながら、地元の人たちが活躍できるような場をつくっていくことが課題だと思います。もう1つは、会津地方をはじめ、県内広域で農業が衰退しているので、農業のあり方を変えながら、素晴らしい福島県の農産物を継承できるような仕組みをつくっていなかればなりません」 ――地元・郡山としてはどうでしょうか。 「私は県議会議員ですから、郡山だけでなく、会津も、いわきも、広い視点で福島県を見ていきたい。その中でも、私は45年間、幼稚園・保育園の園長をしてきましたから、子どもたちがどういうふうに育っていくのか、社会でどんな活躍をするのか、自分をどう表現するのか、その機会をつくることが得意とする分野ですので、そのための活動をしていきたい」 一言メモ 選挙期間中は毎日、平日の朝8時から郡山駅前で街頭演説をしているという。取材日は、障がいを持つ子どもの母親、障がい者支援団体の関係者らが応援に駆けつけ、マイクを握った。(末永) 椎根健雄 https://www.youtube.com/watch?v=ULAyLeT9vFQ ――今日の演説で強調していたコロナ後の対策、物価高対策について具体的には。 「県では石油・ガスの支援を行っており、それを拡大させるべく、今後の補正予算や、2月には当初予算審議が行われますので、しっかりと会派として執行部に訴えていきたい」 ――そのほかの課題は? 「少子高齢化が進んでおり、限られた財源の中で、いかに子育て世代に財源を持っていくかということと、医療・福祉・介護の問題にしっかりと取り組んでいきたい」 一言メモ 佐藤雄平前知事、玄葉光一郎衆院議員らが駆けつけるなど、個人演説会は盛況。(末永) 山口信雄 https://www.youtube.com/watch?v=ixAEI6CI8hk ――選挙戦で有権者の思いをどのように受け止めているか。 「コロナがあり、事業に対する不安の声などが多く聞かれました。コロナからの経済復活のため、郡山市から県に、県から国に伝えていかなければならないと思っています」 ――県全体の課題は。 「一番は人口減少、流出です。あとは復興に関する部分ですが、エフレイ(福島国際研究教育機構)との連携、効果を浜通りだけでなく、全県に広げていけるようにしていかなければならないと思います」 一言メモ 安積地区での集会を取材。安積町は令和元年東日本台風の被害が大きく、支持者の中にも被災者がいた。山口候補自身、防災士の資格を持っており、県議として水害対応や防災を望む声が多かった。(本田)
「勝手に連動企画『政経東北』でも選挙漫遊をやってみた」。 11月2日告示、12日投開票の福島県議選。福島市、郡山市、いわき市、会津若松市各選挙区の立候補者39人を本誌スタッフ総出で取材し、選挙漫遊(街頭演説などに足を運んで選挙を積極的に楽しむ)を実践しようというもの。 11月5日(日)、6日(月)の2日間、街頭演説会場に足を運び、その様子を写真と動画で記録。併せてインタビュー取材も実施した。現職には「県政・県土の課題は?」、新人には「立候補した理由は?」などについて質問した。立候補者はどのような選挙活動を展開し、どんな事を話したのか。 担当:志賀 補佐:荻野 福島県議選【いわき市】編 https://youtu.be/H3LrOAB1K0E?t=3730 【福島県議選】投票前日!【選挙漫遊】総括 投票の判断材料に!福島・郡山・いわき・会津若松いわき市の解説は1:02:10~ 定数10 立候補者13 告示日:2023年11月2日 投票日:2023年11月12日 立候補届出状況↓ https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/601557.pdf 選挙公報↓ https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/601653.pdf 届け出順、敬称略。 あわせて読みたい 【福島市】選挙漫遊(県議選) 【会津若松市】選挙漫遊(県議選) 【郡山市】選挙漫遊(県議選) 安田成一 https://www.youtube.com/watch?v=47YD6DvqYVs ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。 「いわき市に関しては、水害被害が起きたことを考えると、防災対策、災害に強いまちづくりをしっかり進めることが最大の課題と考えています。令和元年東日本台風のときは市議だったが、河川改修を早く進めてもらいたいという要望を受けても、市としてなかなか対応できない面があった。その時のもどかしい思いから県議会への立候補を決意した。 3年経って二級河川の改修工事が進められたが、支流の方が進んでいない。先月には線状降水帯の影響による水害も発生した。いわき市とタッグを組んで予算をつけ、できる限り早く改修工事を進めることで安心して暮らせるまちづくりを実現したいと思っています。 エフレイとの連携も必要だと思っています。福島高専、東日本国際大学と人材育成の面で協定も結んでいるので、新産業をいわき市、福島県に根付かせて、そこで雇用創出につながれば人口減少の予測も変わってくるのではないかと考えています。優秀な人材がいわき市、福島県に留まってもらう取り組み、戻ってきてもらう取り組みを強力に進めて貰えればと考えています」 一言メモ ロードバイクで駆け付けた支持者がちらほら(趣味仲間?)。演説に耳を傾けていたのは40~50代の子育て世代が中心で、女性もほかの陣営より見受けられた。今回回った中で一番支持者の幅が広いと感じた。新人候補だがもともといわき市議だったこともあって、知名度も高いのだろうか。(荻野) 鳥居作弥 https://www.youtube.com/watch?v=B4cQKb5wLJk ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。 「僕は今回の選挙では、単純に子育てと教育と福祉というところしか訴えていません。特に子育て支援と高齢者福祉は近いものだと考えていて、2つを組み合わせて対策を講じることが重要だと考えています。例えば特定の地域のみで働ける『地域限定保育士』という制度があるので、それを活用して、高齢者の皆さんが働けるようにしてもいい。その方法を考えるのは政治の役割です」 ――日本維新の会から県議選に立候補した理由について。 「分かりにくい政治にジレンマがあった。例えばALPS処理水についても、反対するのはいいが、その後どうするの?ってなってしまう。そういう意味で、日本維新の会が掲げる政策ははっきりしていて分かりやすい。ALPS処理水について、私は『全国各地で分担して捨てましょう。そうすれば早く放出できて、福島県への負担も最小限で抑えられる』と訴えています。人間関係で選挙をやるのではなく、分かりやすい政策を的確な言葉で伝えられるという点で日本維新の会はいい政党だと感じます」 一言メモ 演説会場のイオンモールいわき小名浜前は、目の前が「ツール・ド・いわき」ゴール地点になっており、イベントの音声がガンガン流れてくるトホホな環境。ただ、車や歩道橋から手を振る人もおり、着実に支持が広まっている様子も感じた。汚染水(ALPS処理水)放出について、「福島から30年以上も海洋放出したら負担が大きくなる。日本全国から放出したら数年で終わるはず」と主張。その是非はともかく、選挙という場で、独自性のある意見を主張していく姿勢は歓迎したい。(志賀) 吉田英策 https://www.youtube.com/watch?v=1scL7EG_A4k ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。 「福島県の財政力は全国3位だが、復興と称した大型開発や道路整備にばかりお金が使われていると感じています。県民の暮らしを応援するという視点から、教育や子育てなどに予算を割くべきです。特にいわきは医師数が少ないので医療機関の充実に充実させるべきだと思います」 ――今年2月の一般質問で会計年度任用職員の雇い止めについて質問していました。是正はされたでしょうか。 「1年契約ではあるもののボーナスを支給するということだったが、実際は労働時間が短縮されただけだったりして総額が増えているわけではない。一般の職員の待遇に改善することが必要だと思います」 一言メモ 共産党独自のしきたりなのか、本人到着までに支持者が歩道に横並びで〝戦争やめろ!〟などのコールを行っていた場面が印象的。支持者の方々と触れ合う写真を撮ろうとしたが、場所が郵便局の真向かいであまり長居できる場所ではなかったため、演説が終わると即時撤収。ある意味場馴れしているというか、統率が取れている感じを抱いた。(荻野) 真山祐一 https://www.youtube.com/watch?v=qVYED1Pb2Zc ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。 「課題はたくさんあります。中でも水害対策に関しては、流域治水をしっかり進めていくべきだと訴えています。『防災減災を社会の主流にしていくべきだ』というのは公明党がここ数年来主張していることです」 ――令和5年6月議会の一般質問では、「金属スクラップヤードでの事故を防ぐために許可制にして指導監視を強化しては」と指摘していました。県執行部は質問を受けて何か具体的に動いたでしょうか。 「『不適切な事例があれば県としての指導監視を図っていく』という答弁でしたが、具体的に条例ができたり、変化が起きているというところには至っていません。そういう意味ではまだこれからの課題だと思います」 一言メモ JRいわき駅前で、山口那津男公明党代表が応援に来る街頭演説会を実施。駅前のペデストリアンデッキ、ラトブ前が多くの公明党支持者で埋めつくされ、お祭り・フェスのような熱気。市外からも応援に来ていた模様。山口代表が繰り返していた「ネットワーク」の強さをあらためて実感した次第。(志賀) 西丸武進 https://www.youtube.com/watch?v=_ssuXAFt_nI ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。 「1つは震災・原発事故からの復興です。復旧工事は行われていますが〝創生〟には至っていないので、そういう視点で復興を進めるべきです。2つはコロナ対応。まだ安心できない状況なので、いま受け皿対策や公衆衛生の管理の充実を徹底していく必要があります。3つは〝汚染水〟海洋投棄の問題です。投棄が完了するまで30年以上かかるとされることを踏まえ、県民の命を守るというスタンスで、問題が風化することない監視体制を構築する必要があります。環境、教育、福祉の充実・強化にもしっかり努めていきます」 ――昨年12月議会の代表質問で、JRの赤字路線への県の対応について質問していました。人口減少で鉄道維持が容易でなくなる中、県がどのように支援していくべきだと考えますか。 「県内の赤字路線では、まず地域住民の組織を作り、問題意識を共有化してから、行政が住民組織の提言を取りまとめ、財源の作り方を考えていく、という流れになっています。そういう意味では、まず地域ごと、駅ごとにまとまって組織を作っていけるかが重要になると思います。その道筋は行政側が責任を持って提供するべきです」 一言メモ 19時開始の個人演説会だけあって、力が入った長尺の演説。前段の後援会長のあいさつも力が入っていた。7期のベテラン議員だが、今回立候補した新人4人のうち2人は元いわき市議、ほか2人もそれぞれ維新公認、れいわ推薦を受けていることもあって、かなり警戒してる様子が見られた(荻野) 宮川絵美子 https://www.youtube.com/watch?v=467NOJKf-lw ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。 「県執行部には県民の生の声を聞いてほしい。給料はなかなか上がらないし、世論調査では教育費の負担を軽くしてほしいという声も多い。高校入学時のタブレット購入費を生徒が負担しているのは、東北では福島県だけです。高齢者の足の確保など高齢者支援も問題です。県議会ではその都度質問しています」 ――質問をすることで県執行部の対応は変わっていますか。 「問題提起をすると少し変わってくる。学校給食の無料化を訴えていたら、県内市町村が導入するようになった。子どもの医療費の無料化についても主張していたら、12年前の県議選の後に無料化が実現した。選挙は世論を喚起するチャンスであり、ずっと運動を続けてきたことに焦点が当たって、選挙の節目で変わっていくことも多いので、主張を続けることに意義があると考えています」 一言メモ イオンモールいわき小名浜前の道路沿いで、施設に向かって演説する宮川候補。買い物客は足を止めることなく施設に入っていった。定数10に対し13人が立候補する激戦区だが、有権者の盛り上がりは今ひとつ……という状況を象徴する光景だった。(志賀) 矢吹貢一 動画撮れず。 取材に応じず。 一言メモ 事前に事務所に確認したところ、「事務所の方針で街角演説をする考えはありません。市内で一日選挙カーを走らせて、20時ごろ事務所に戻る予定です」とのこと。やむなく20時前に事務所に訪れ、スタッフとともに戻ってきた選挙カーを出迎えた。降りてきた矢吹候補に「政経東北です。ちょっとお話しお聞かせいただけないですか」と話しかけると、あからさまに苦笑いを浮かべ、無言で手を横に振りながら事務所内に入っていった。 しばらく外で待っていると、スタッフが出てきて「すみません、これから打ち合わせなので……。明日も街頭演説の予定はなく、戻ってきた後も時間が取れません。せっかく来ていただいたのにすみません」と謝られた。街頭演説もせずマスコミ取材にも応じないということは、自分の意見を広く知ってもらえる機会を放棄しているようなもの。矢吹陣営としては、新たな票の開拓は必要なく、既存の支持者を対象とした演説会で余裕で当選できるという判断なのだろう。 翌朝8時過ぎ、宿泊したいわき駅前のホテルで仕事をしていたら、矢吹候補の選挙カーの声が聞こえてきた。急いで窓から外を眺めたが見つけられず、そのまま声は小さくなっていった。(志賀) 安部泰男 https://www.youtube.com/watch?v=lhjMYDQJjt0 ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。 「これまで信念として取り組んできたのは、住民が安全に暮らせる環境を作るということであり、防災・減災に対する思いは強いです」 ――9月議会の一般質問ではパートナーシップ・ファミリーシップ制度の導入について質問していました。県執行部は質問を受けて何か具体的に動きましたか。 「LGBT当事者の方から直接相談を受けて質問したものです。男女共同参画社会を築くために差別のない社会を築く、という県の方針を示したうえで、総括質疑では導入に向けてやっていくと答弁していました。県内市町村で導入の動きが加速しているのに県が何もやらないわけにはいかないと思います」 一言メモ 山口那津男公明党代表が応援に来ることもあって、エブリア北側駐車場の一角に公明党支持者100~200人が集結。SP・警察も多数。そのにぎわいに圧倒される。「いわき市に免許センターがないので、免許証がすぐにもらえない。県内で最も人口が多いのに。改善すべきだ」という主張はこの地域に住んでいなければ分からない視点で、ハッとさせられた。これこそ選挙漫遊の魅力。(志賀) 古市三久 https://www.youtube.com/watch?v=YV0IrOHy6O0 ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。 「人口減少、少子高齢化で地域が衰退していることです。中山間地では草刈りをする人も減っており、自分で買い物に行くのも難しいという人が現実にいる。もし当選できたら総括質疑という形でなく、一般質問で問題提起したい」 ――ALPS処理水の海洋放出反対のスタンスを取っており、県議会でも陸上保管すべきと主張していたが、県は国の海洋放出方針に追随する形になりました。 「内堀雅雄知事が県民を代表して反対の声明を出すべきだったと考えています。これは新聞社などのアンケートにも書いている点です」 一言メモ 処理水海洋放出、原発事故収束作業に正面から疑問を呈するスタンス。海に面するいわき市選挙区でも意外とこういう演説は少ない。平日ということもあってか聴衆は2、3人だった。(志賀) 鈴木智 https://www.youtube.com/watch?v=CCwk0J33tMs ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。 「いわきにおいては水害対応だと考えています。自民党県連の動きと連動して、発災翌日から内堀雅雄知事に現地視察に入ってもらい、被害状況や地域の皆さんの声を聞いてもらいました」 ――令和5年9月議会の一般質問で、ドライバー不足が小名浜港の貨物に与える影響について質問していました。 「小名浜港に影響が出るのであれば質問しなければならないと考えた次第です。問題が可視化されるのに加え、県執行部も私も理解も深まるので、こうした質問をするのは意義があることだと考えています」 一言メモ 3連休最終日に予定されていた鹿島公民館での個人演説会。前回選挙では8位当選(定数10)だったこともあってか、応援弁士や陣営幹部からは気を引き締めるよう求める発言が続出。坂本竜太郎氏の県議選立候補見合わせで、逆に混乱している印象だった。(志賀) 青木稔 https://www.youtube.com/watch?v=Y0yiCo0MrsU ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。 「演説でも触れたが、やっぱり一番のポイントは人口減少。安心して働ける企業を誘致できるかが重要になると思う。そういう意味で注目しているのが福島イノベーション・コースト構想であり、エフレイ(福島国際研究教育機構)です。実現すれば必ず有力企業が来るので、いかにいわきの方につなげられるかが重要になります。そのために私も自民党県連としての立場でできる限りのことに取り組む考えです」 ――現在9期目で、演説では当初立候補を見合わせる方針だったという話もありました。 「年齢も年齢なので家族と相談して立候補を見合わせる決意をして、周囲にも伝えていましたが、さまざまな方から要請を受け、再び立候補することを決意しました」 一言メモ 地元・中央台の公民館で個人演説会を開催。参加者は約30人でほとんどが年配の方々。自民党県連いわき支部の重鎮ということもあって、森雅子参院議員のほか、今後の動向が注目される坂本竜太郎県議、市議らが応援演説に駆けつけた。1945(昭和20)年生まれで、いわき市議時代を含め議員生活は40年以上に上る。最後は10選に向けてガンバロー三唱。パワフルさでは誰にも負けていない。(志賀) 木村謙一郎 https://www.youtube.com/watch?v=ZVBagsrdRFQ ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。 「河川整備を進めて水害の減災・防災に努めるのも必要だし、一次産業の後継者不足も深刻です。一番大きいのは人口減少ですね。都市部、山間部、それぞれ事情が異なるので、しっかり議論して解決していかなければならないと思います」 ――立候補を決意した理由は。 「11年にわたり市議会議員として活動してきましたが、市議会議員では解決できない問題にたびたび直面してきました。たとえば医療問題などは県にイニシアチブを発揮してもらわなければ改善は難しい。加えて現役世代として声を聞いてほしいという思いや、いわき市の中心部から外れた久之浜地域を代表する立場から県議会で意見を述べていきたいと思いがあり、立候補を決意しました」 一言メモ 昼前の時間帯にしては人の集まりがまばらだった。支持者は子育て世代と高齢者の人が中心の印象。演説でも触れていたように「久之浜地区から県議を!」という気概が非常に強く、地元での遊説の様子も気になるところ。(荻野) 山口洋太 https://www.youtube.com/watch?v=fX1X0UkWfaM ――県政・県土の課題、いわきの課題と感じる点は。 「演説でお話しした通り、現役医師としていわき市で働くようになって医療体制に課題を感じ、そこを改善すべきだと考えたので立候補を決意しました」 ――れいわ新選組の推薦を受けていますが、無所属で立候補した理由は。 「基本的には特定の政党に属さず、市民から聞いた話を基に政策を打ち出していきたいと考えています。これまで1万8000軒を超えるお宅にお邪魔して話を聞いてきました」 一言メモ 演説予定場所の商業施設前に、ピンク色の選挙カーがさっそうと登場。聴衆は支持者と思われる高齢者が数人。車内から手を振るドライバーも。「この間1万8000軒以上を訪問した」という言葉は伊達じゃないということか。33歳という若さ、現役医師が医師不足解消を訴える点も支持拡大につながっている様子。(志賀)
「勝手に連動企画『政経東北』でも選挙漫遊をやってみた」。 11月2日告示、12日投開票の福島県議選。福島市、郡山市、いわき市、会津若松市各選挙区の立候補者39人を本誌スタッフ総出で取材し、選挙漫遊(街頭演説などに足を運んで選挙を積極的に楽しむ)を実践しようというもの。 11月5日(日)、6日(月)の2日間、街頭演説会場に足を運び、その様子を写真と動画で記録。併せてインタビュー取材も実施した。現職には「県政・県土の課題は?」、新人には「立候補した理由は?」などについて質問した。立候補者はどのような選挙活動を展開し、どんな事を話したのか。 担当 佐藤仁 福島県議選【会津若松市】編 https://youtu.be/H3LrOAB1K0E?t=5569 【福島県議選】投票前日!【選挙漫遊】総括 投票の判断材料に!福島・郡山・いわき・会津若松会津若松市の解説は1:32:49~ 定数4 立候補者5 告示日:2023年11月2日 投票日:2023年11月12日 立候補届出状況↓ https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/601555.pdf 選挙公報↓ https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/601647.pdf 届け出順、敬称略。 あわせて読みたい 【福島市】選挙漫遊(県議選) 【いわき市】選挙漫遊(県議選) 【郡山市】選挙漫遊(県議選) 水野さち子 https://www.youtube.com/watch?v=b3Eu3Gw4XPk 候補者のコメント 私は7月の会津若松市長選に立候補しましたが、あれだけ票を離されれば(※4選された室井照平氏が2万3231票に対し、水野氏は1万3738票)、市民の皆さんは現状維持を望んだのだろうと思います。県議を2期務め、2019年の参院選に落選した後、4年間の浪人生活を経て臨んだ市長選だったので、いったんは全ての電話も解約して区切りをつける考えでした。しかし、支援者への挨拶回りをする中で「これで終わってもらっては困る」「議員として働いてほしい」というたくさんの声をいただき、私自身も「自分の人生、これで終わっていいのか」と8月いっぱい熟慮した結果、3期目を目指して県議選に挑むことを決断しました。「市長選に出たのは県議選を見越して」という見方があるのは承知していますが、身近な人ほど私の真意を理解してくれていると思っています。 まずは会津若松市が先頭に立って会津の基幹産業である観光の再興を成し遂げることが大切です。そうすることで交流人口、関係人口が増加し、地域経済が活性化していくと考えます。只見線が注目を集める中、二次交通の整備や飲食、お土産、宿泊など県の立場でできること、県と会津17市町村が連携してやるべきこと、国にお願いすべきこと等々、でき得る施策はあるんだろうと思います。また、0~2歳児の保育料を所得制限なしで無償化することや、デジタル田園都市国家構想を生かして認知症の早期発見・治療を可能とするシステムをつくるなど、県独自では難しい施策を国と連携しながら実現を目指したい。 私は無所属で活動しています。他の政党からお声がけがあったのは事実ですし、今回も山口和之さん(日本維新の会所属の元参院議員)からため書きをいただきましたが、無所属なので「来るもの拒まず」のスタンスをとっています。 一言メモ 街頭演説は国道49号の大きな交差点で行ったため、足を止める人は皆無。ただ、車から手を振る人は数人いた。事務所は女性スタッフばかり。水野候補は「意識したわけではないが、支えてくれる人が集まったらこうなった」と話す。(佐藤仁) 佐藤義憲 https://www.youtube.com/watch?v=ywda67vOQQ4 候補者のコメント 今、福島県の課題は大きく二つあります。一つは人口減少、もう一つは次世代を育てる教育です。 大変残念なことですが、福島県では教員の不祥事が後を絶ちません。内堀雅雄知事も何とかしなければならないと悩んでおられますが、教員の質を上げると当時に教育の質も上げることが非常に重要と考えます。教員の働き方改革を進め、スリム化すべきところはスリム化する。そうやって教員の質を上げれば教育の質も上がっていくので、そこは現場に言うべきことを言っていきたいと思います。 その上で人口減少を考えた時、移住・定住をするにはその地域の教育レベルも一つの選択肢になるので、そこをしっかりやらないと、福島県は移住先の選択肢の中に入っていかないんだろうと思います。 一言メモ メガドンキの前で街頭演説を行ったこともあり、若い買い物客数人が立ち止まって聞いていた。中学生くらいの男子2人も近くで演説を聞いていた。この場所を選んだのは、メガドンキ内に期日前投票所が設けられているため、投票を棄権しないように呼びかけることと、投票するなら自分の名前を書いてもらおうという狙いがあったようだ。 応援弁士として広瀬めぐみ参院議員(岩手選挙区)が駆け付ける。大竹俊哉市議、長谷川純一市議の姿もあった。(佐藤仁) 佐藤郁雄 https://www.youtube.com/watch?v=W9DUoKJU6NA 取材に応じず。 一言メモ 当初は取材に応じるとしていたが、当日になって事務所から「現在当落線上におり、大変厳しい選挙となっている。1人でも多くの有権者と接するには5分でも10分でも時間が惜しい。大変勝手を言って申し訳ないが、取材は遠慮させてほしい」という断わりの連絡が入る。 街頭演説には広瀬めぐみ参院議員(岩手選挙区)が駆け付ける。スタッフ10人弱、支持者10人弱と多くはなく、立ち止まって演説を聞く人は皆無だったが、佐藤氏を支持する人が集まったこともあり、一定の熱量は感じられた。 一方、当落線上にいることは本人も実感しているのか、少し落ち着かない様子も見られ、街頭演説の開始は14時半からなのに、14時25分ごろに「もう始めてもいいかな」と言い、支持者から「慌てるな。あと5分あるぞ」とたしなめられるシーンもあった。(佐藤仁) 渡部優生 https://www.youtube.com/watch?v=0X2lJQhc2MY 候補者のコメント まずは災害に強い県土づくりが大切です。毎年のように大きな災害が発生し、県民の命に関わる状況が起きているので、早急に対応する必要があります。建物や橋などの耐震強化や河道掘削など、県が取り組むべきことはたくさんあると思います。 震災・原発事故からの復興も大切です。令和7年度で「第2期復興・創生期間」が切れますが、県内を見渡すと復興はまだまだ道半ばです。第3期への計画延長と、その裏付けとなる予算をどう確保するかは福島県にとって喫緊の課題です。 急速に進む人口減少にどう対応するかも問題です。人口流出をいかに食い止めるか、そして流入を促すために魅力的な雇用の場を生み出せるか。企業誘致と産業基盤強化は私が最も訴えている政策の一つです。 どうも今の福島県はイノベーション・コースト構想やロボット、水素や廃炉など、浜通りに設置した次世代産業に目を向けがちですが、現実的には自動車や半導体など、国が注力している産業やサプライチェーンにもっと注目してもいいのではないかと考えます。 会津ならではの産業、具体的には観光、農林業、酒や漆器に代表される地場産業、さらには会津大学と地元資源の掘り起こしや磨き上げも必要なんだろうと感じています。 一言メモ 前日に事務所に問い合わせた際、街頭演説は「18時半からリオン・ドール会津アピオ店前」と伝えられていたが、実際はそれより1時間も早い17時半から始まっていた。おかげで渡部候補の街頭演説の動画を収録できなかった。現場にいた事務所スタッフに「予定では18時半からではなかったか」と尋ねると「変更になったことを連絡しようと思っていたが忘れていた」とのこと。スタッフの対応の良し悪しは候補者の評判に直結するので、注意されてはいかがだろうか。 演説には小熊慎司衆院議員と馬場雄基衆院議員が駆け付ける。夕方で辺りは暗く、足を止めて演説を聞く人は皆無。ただ、10人近い支持者が集まり、拍手と声援を送っていた。(佐藤仁) 宮下雅志 https://www.youtube.com/watch?v=HHc1ct7vu14 候補者のコメント 人口減少が一番の課題だと思います。選挙戦では、今やらないと間に合わない、そこに真正面から取り組むべきだと強く訴えています。 それと同時に、安心・安全な暮らしを送れるよう雇用の創出や景気対策、医療・福祉や災害対応などを進めていくことが大切です。こうした取り組みが地域の魅力を高め、ここに住み続けたいと思う、あるいは他の地域から移住したいと思う条件になると考えます。併せて、そこに高い文化力も備わってくればワクワクした地域となり、自然とそこに住みたい、住み続けたいという気持ちが芽生えてくるのではないか。 会津には「ならぬものはならぬ」という考え方があります。それを地場のものづくりに照らし、若者を中心としたごまかしの利かない、真面目なものづくり産地を構築していけば人間力の向上にもつながると思います。文化力と人間力で地域の魅力を高める、これが私の持論です。 正直、こうした取り組みは非常に長くかかるし、すぐに結果が出るわけではなりません。しかし、人口減少が急速に進む中、今始めないと間に合わなくなるというのが今回の私の最大の主張です。 人口減少は何か一つやれば解決するものではありません。ただ、これまでと同じことをやっていては意味がなく、子育て支援についても今までの常識にとらわれない大胆な財政出動等をする必要があるんだろうと思います。県独自でやれることはきちんとやりつつ、国に求めることはしっかり求めていく。それをスピード感を持って、他県に先駆けてやらないと福島県としての特色は出せないと思います。 一言メモ 個人演説会は19時から一箕公民館で。用意した30席に対し25人くらい集まる。演説の後は出席者から鋭い質問も寄せられ、宮下候補が答える場面もあった。集まったのは熱心な支持者ということもあり、それなりの熱が感じられた。 小熊慎司衆院議員が応援弁士を務め、馬場雄基衆院議員が来賓として出席していた。(佐藤仁)
マスコミが伝えない候補者の人柄 月刊「政経東北」11月号に、本誌に連載していただいている畠山理仁さんの映画「NO選挙,NO LIFE」公開を記念したインタビュー記事を掲載した。畠山さん、前田亜紀監督、大島新プロデューサーに映画の見どころや選挙の魅力について語ってもらったもの。 詳細は誌面で読んでいただきたいが、選挙取材にかける畠山さんの情熱に触れて、本誌記者は居ても立っても居られなくなり、このたび新たな企画に挑戦することになった。 その名も「勝手に連動企画『政経東北』でも選挙漫遊をやってみた」。 11月2日告示、12日投開票の福島県議選。福島市、郡山市、いわき市、会津若松市各選挙区の立候補者39人を本誌スタッフ総出で取材し、選挙漫遊(街頭演説などに足を運んで選挙を積極的に楽しむ)を実践しようというもの。 11月5日(日)、6日(月)の2日間、街頭演説会場に足を運び、その様子を写真と動画で記録。併せてインタビュー取材も実施した。現職には「県政・県土の課題は?」、新人には「立候補した理由は?」などについて質問した。立候補者はどのような選挙活動を展開し、どんな事を話したのか。 担当 佐藤大 補佐 佐々木 福島県議選【福島市】編 https://youtu.be/H3LrOAB1K0E?t=597 【福島県議選】投票前日!【選挙漫遊】総括 投票の判断材料に!福島・郡山・いわき・会津若松福島市の解説は9:57~ 定数8 立候補者9 告示日:2023年11月2日 投票日:2023年11月12日 立候補届出状況↓ https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/601554.pdf 選挙公報↓ https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/601651.pdf 届け出順、敬称略。 あわせて読みたい 【会津若松市】選挙漫遊(県議選) 【いわき市】選挙漫遊(県議選) 【郡山市】選挙漫遊(県議選) 誉田憲孝 https://www.youtube.com/watch?v=mRf88TnrX5o ――県政、県土の課題は? 「回っていて一番言われるのはやっぱり物価高です。家計のやりくりが厳しくなっているという方が現実的に多いですね。家庭の収入を上げていくためには、中小企業へのテコ入れが必要でしょう。 農業についても、いろんな資材費用などが高くなっているので、それをいかに価格に乗せていくかが課題だと思います。 ほかにも、『今年はリンゴの色づきがすごく悪い』などの話も聞きました。そういった気候変動に対する農業の手当なども大事になってくると思います」 ――立候補した理由は? 「市議を8年務め、いろんな政策を立案してきましたが、市の財政状況が厳しいという現実があり、市議会だけではどうしようもない部分がありました。そういったものを解決していくためには、予算なども含め県のテコ入れが必要だろうと感じていたので、自分が市と県の繋ぎ役になりたいと考えました」 一言メモ 街頭演説の場所も相まってか「アットホーム」を感じる選挙活動に思えた。4年前の雪辱を晴らすため、新人ならではの「必死さ」も感じ取れ、取材にも快く応じていただき、好印象だった。事務所から取材を終えて帰るときに「お見送り」までする徹底っぷり。 根っからの明るさや笑顔がひしひしと伝わってきたので、「人前に出るってことは、こういうことを自然にできる人」なんだなと感じた。(佐藤大) 佐藤雅裕 https://www.youtube.com/watch?v=SICPZdOyuhk ――県政・県土の課題は。 「街頭演説でも話した通り、人口減少に尽きます。①事業者の人手不足、後継者不足、②地域活動の担い手不足、③マーケットの縮小などの影響が出ると考えられ、進行すれば地域が維持できなくなるので、早急に対策を講じる必要があります。地域の魅力づくり、産業振興など、総合的に底上げしていかないと解決しない問題だと思うので、たとえ商工業についての質問・意見を出す際も、必ず人口減少を踏まえた形で行うようにしています」 ――令和3年2月議会で、相馬福島道路霊山インターチェンジと福島市中心部のアクセスを良くするため、県道山口渡利線を整備すべき、と質問していました。その後、整備状況に変化はありましたか。 「実現するとなれば、県単独ではなく、福島市や地元経済界、国も巻き込んだ大きな事業になります。県の担当職員などとやり取りする中で質問したもので、整備に向けたコンセンサスは形成されつつあると思います」 一言メモ 選挙スタッフに取材をお願いし、「忙しいところ申し訳ないが、取材可否の折り返しの電話をいただきたい」と伝えたが、折り返しがなかった。 翌日、「取材の件はどうなりましたか?」と選挙スタッフに問い合わせをすると、選挙スタッフが「あれ? 奥様から折り返しの電話いってないですか?」と言われ、私は「来てません」と伝えた。 その後、街頭演説の写真と動画の撮影をしに行った際、佐藤候補に直接「2,3分、取材をよろしいでしょうか」と尋ねると、佐藤候補は「すぐ出るから、申し訳ないけど、、」と言われたので、私が「そうですよね、忙しいところすみません。明日は事務所にいる時間ありますでしょうか?」と尋ねたら、佐藤候補が「選挙中だから」と言って立ち去った。 その後、選挙スタッフに電話をして、「ほかの候補者が取材を受けている中、2,3分の時間もとれないんですか」と伝えて電話を切った。 それから2日後、選挙スタッフから「今日の夜の8時だったら時間をとれます」と言われたので、私は「伺います」と伝えたが、もうすでに気持ちが冷めていたので、記者の志賀に取材を託した。 これが畠山さんだったら、新聞社だったら、取材をすんなり受けたか受けていないか。 故・佐藤剛男衆院議員の娘婿として県議になりたてのころは「謙虚さ」がみられたが、4期目を目指すともなるとこうも変わるのだろうか。 佐藤候補は、目の前の1票を捨てた。政経東北が福島市に会社があり、スタッフの多くが福島市の有権者だということも想定できないのだろうか。 「絶対に投票しない唯一の1人」確定となった。(佐藤大) 記者の志賀が取材を終えて↓ 「スケジュールが詰まっていて2、3分取るのも難しい。こういう取材をしたいなら事前に言ってもらわないと。今日は何とか時間を確保した」。陣営ごとの〝塩対応〟〝神対応〟を体験できるのも選挙漫遊の魅力だ。(志賀) 大場秀樹 https://www.youtube.com/watch?v=rfJWeMjUUx8 ――県政、県土の課題についてどう認識しているか。 「短期的課題としては原発の処理水放出問題。農水産物や観光業に風評被害の影響がまだ顕著にはなっていないが、それをどう防いでいくか。長期的課題としては超少子高齢化社会の中でいかに地域を守っていくか、また高齢者が安心した生活が送れるかが大きな問題と認識しています」 ――その課題解決に向け、どのような議会活動や取り組みを展開してきたか。 「処理水放出問題としては、SNSやテレビCM等による安全性について首都圏のみならず関西圏も含めて積極的に訴えていくべきと議会で発言しています。あわせて超少子高齢化問題については、交通弱者対策の一環であるバス路線の維持、不登校児童に対する積極的な支援についても訴えかけています」 ――県執行部の動きはいかがですか。 「風評被害対策については、補正予算を組むなど積極的に向き合っていると感じていますし、評価しています。また、不登校児童やさまざまな事情を抱える子ども達に対しても、NPO法人との連携強化、相談体制の充実を図ってきており、さらに進めていくべきと考えます」 ――県議会においては、令和5年6月議会にて「フルーツラインの整備状況」について質問されました。その後の県執行部の反応はいかがですか。 「福島市にはすばらしい温泉、自慢できる果物など魅力にあふれていますが、『点』の観光のままなのは残念。フルーツラインは『点』と『点』を『線』で結び、ひいては面的な観光振興における重要な道路です。ハード面としては、通行に難がある『天戸橋(あまとばし)』の整備について、議会ではしつこく質問しています。この間、予算の執行など目に見えて動きが進んでいると感じます」 一言メモ 聴衆の大半は男性高齢者であったがみな真剣に演説を聞いていた印象。一方でそれなりの熱気は感じた。(佐々木) 高橋秀樹 https://www.youtube.com/watch?v=cDO9Ommjau8 ――県政、県土の課題は? 「物価高と燃料費高騰というのは喫緊の課題だと思っています」 ――その課題を解決するためにどのように行動しましたか? 「経済支援について、県独自の施策について要望を知事の方にさせていただきましたが、多少なりともその要望に対して実現した部分はありました。 また今、国の方では所得税の軽減についても議論されているようですが、やはりそれだければ賄いきれないだろうところがありますので、さらなる要請もしていきたいですし、県独自の新たな政策を、経済状況を見ながら、求めていきたいなと思ってます」 ――令和5年2月の代表質問で「移住定住に向けテレワーク導入に対する施策を要望」していますが。 「もうひとつの課題は人口減少です。また、それに伴う労働人口の減少が課題です。県も二地域居住などを、移住促進計画として提唱していますが、さらにメスを入れていって改善できればと考えています。相談窓口を東京の日本橋に設けて、そういった取り組みに関して厚みが出てきているとは感じています」 一言メモ 朝早い中、快く取材に応じていただき、かなり好印象。時間と場所を決めた街頭演説を予定せず、30分毎ほどに立ち止まって遊説するスタイルが印象的だった。事務所スタッフの方々も丁寧に対応してくれて、そこも好印象。いくら候補者がよくても事務所スタッフの質が微妙だと、うまくいく選挙もうまくいかないと感じた。(佐藤大) 宮本しづえ https://www.youtube.com/watch?v=E_OWLVbFn_A ――県政、県土の課題は? 「この物価高ですから、どう政治がきちんと対策をとっていくのかってことが最大の課題だと思います。 例えば、物価高で何やるかって言ったときに真っ先にやるべきなのは消費税の減税です。しかし、県の執行部は『国が決めることです』としか答えません。国が決めることだったら『国で決めてくれ』と働きかけることが大事だと思うんです。 『今の県民の暮らしどうすんのよ』っていうのはなかなか具体的には見えてこないですね」 ――令和5年9月の統括審査会の質問で「ALPS処理水について、県漁連と国・東電との約束が破られていないと県が判断した理由」を尋ねていますが。 「約束が守られないということは、民主主義に関わる重要な問題です。一つ一つの約束事が破られていったら、廃炉の安全性に対する信頼そのものに関わる問題になります。 約束事を守らせるということをしっかりやらせないと、県民が安心して暮らせるかどうかっていうことにも関わってきます」 一言メモ 聴衆のほとんどが女性だったのが印象的だった。写真撮影をするスタッフもおり、共産党というのは組織的に動ける集団なんだなと感じた。 選挙カーについて。ほかの候補者のほとんどがボックスカーをレンタカーしている中、宮本候補は共産党が自前でもっている車を使用しているのも印象に残った。 政策は給食費無料というパンチ力と分かりやすさ。 宮本候補はJR福島駅西口のイトーヨーカドー福島店前の道路で演説をしたのだが、その後、東口のこむこむで伊藤達也候補の大観衆を見たこともあり、公明党と共産党の「力の差」をまざまざと見せつけられたことが印象的だった。 取材での宮本候補の印象はとても温和な方で話しやすかった。 (佐藤大) 半沢雄助 https://www.youtube.com/watch?v=aYqbfb6CN2g ――県議選立候補を決意した理由。 「先ほどの決意表明でお示しした通り。この間、医療従事者として勤務するとともに、労働組合活動にも注力してきた。このたび紺野長人県議の後継者に指名され、重責ではあるが責任を果たすべく、地盤(議席)をしっかり守ることが私の使命と考える」 ――県政、県土の課題について。 「人口流出問題が大きな課題と考える。解決に向け克服すべき点は多岐にわたるが、本県の維持・発展のためにも人口流出を防いでいる自治体を参考にしながら鋭意取り組む必要がある。また、医療従事者の経験から、また子を持つ親として『命と暮らし』を守りながら、次世代が住んで良かったと思えるような地域づくりや政策が重要と考える」 聴衆の大半は高齢者であったが、女性の割合が多い印象だった。新人候補ということもあり半沢候補者の初々しさもときおり感じた。(佐々木) 伊藤達也 https://www.youtube.com/watch?v=x4EDhiMTiyI ――県政、県土の課題は? 「喫緊の課題は人口減少です。また経済面では、航空宇宙産業のモノづくり人材の育成を推進していきます。開発企業と連携して『下町ロケット』ようになっていければと思っています」 ――令和5年9月の一般質問で「公衆衛生獣医師の確保」について質問していますが。 「動物愛護施策を進める上で、獣医師の確保はとても重要です。ただ、全国的に獣医師不足で取り合いとなっており、本県も職員が不足しています。動物愛護だけではなく産業用の獣医師も必要ですし、鳥インフルなどの脅威も踏まえて、県としての獣医師確保が課題となっております。 私が県に働きかけたことで、修学資金の新しい制度をつくらせていただき、獣医学生研修として『福島県家保研修』と『獣医学生福島体験』を実施しています。引き続き県への働きかけを進めていきます」 一言メモ 30分前に会場に着いたのだが、公明党の山口代表も応援に駆けつけることもあってか、既に警察が40人ほど、公明党スタッフが30人ほど居た。メディアも毎日新聞、共同通信、福島テレビ、ほかにも居た。 聴衆がいなかったので「聴衆よりも多かったスタッフと警察」というタイトルや筋書きを考えたが、開始前に聴衆があっという間に150人ほどとなり、「公明党のネットワーク力恐るべし」と感じた。 伊藤候補の政策も「ワンイシュー」に目を向けており、動物愛護の「アニマル伊藤」、航空宇宙産業に強い「スカイ伊藤」と、わかりやすかった。 私は創価学会員ではないが、公明党のように何か物事を遂行していくためにはパワーやネットワークが必要なのかもしれないと感じた。佐藤優氏の著書『創価学会と平和主義』を読んでいたこともあり、創価学会への偏見が薄れていたのも大きい。(佐藤大) 渡辺哲也 https://www.youtube.com/watch?v=8lMxuSzHznA ――県政、県土の課題は? 「人口減が喫緊の課題だと思っています。子育て支援や教育に注力しながら、20年、30年のスパンで、シニアの方にも元気で活躍してもらうような『まちづくり』をすすめて、次の世代につなげていくことが大事です。 高齢者の方々が元気に働ける環境を作っていくことが、人口減対策につながると思っています」 ――令和4年2月の一般質問で「市町村における犯罪被害者等支援条例制定に向け、どのように支援するか」質問しましたが。 「闇バイト事件を含めて、いつ誰がどこで巻き込まれるかわからない、そういった時代じゃないですか。 県には『安全で安心な県づくりの推進に関する条例』というものがあります。犯罪被害者支援についての文言が一文だけあったんですが、先進県や先進市町村では、見舞金の支給や加害者に代わって被害者にお金を寄付するような仕組みもあり、県は遅れをとっていました。県に『このまま何もしなければ、最後になりますよ』と訴えたら、改善に向けて動き始めました。県が動いたことで、市町村もそれに続いてくれており、要望したことが実現している実感があります」 一言メモ 飯坂温泉駅での街頭演説ということもあって、誉田候補と同様「アットホーム感」があった。 取材で事務所を訪れると、多くのスタッフが和やかにしており、雰囲気も良かった。 取材を受ける受けないでひと悶着あったのもあり、渡辺候補を勝手に「気難しい人」と決めつけていたが、会ってみるととても気さくで接しやすい方で、思い込みはいけないと感じた次第。 政策に関しても県議1期目らしい「ワンイシュー」に目を向けており、人口減や物価高などの大きな課題よりも現実的に見えて、よい印象を受けた。(佐藤大) 西山尚利 https://www.youtube.com/watch?v=jB8cE0t0Oww ――県政、県土の課題は? 「令和5年2月の代表質問で『入札の地域の守り手育成型方式』について質問しました。入札不正の一方で、地元の建設業に災害対策をしてもらわなければなりません。あらゆるものに対する備えと発信が必要だと思っています」 一言メモ 取材を受ける受けないで事務所スタッフと揉めたが、走行ルートの集合場所に行って西山候補に話を振ると「今ここで話すよ」と気さくに応じてくれた。人柄的に「飾らず、オープン」という感じで話しやすかった。街頭演説はせず選挙カーを走らせるだけのスタイルのため、動画が短くなっている。 取材の可否のほか、走行ルートを選挙スタッフに尋ねたが、間違った情報を伝えられた。ボランティアで働いている人もいるのだろうから、企業並みの対応を期待するのは間違っているのかもしれないが、「なんだかな」と感じた。(佐藤大)
元町長に大差をつけた渡部裕太氏 町の課題を語る渡部裕太氏 本誌2019年6月号に「南会津町議選 湯田芳博氏当選で嵐の予感」という記事を掲載した。 4年前の南会津町議選に、元町長の湯田芳博氏が立候補し、2位当選者の倍近い得票数(1466票)でぶっちぎりのトップ当選を果たしたことを報じたもの。 湯田氏は昨年4月の南会津町長選にも立候補したが、元副町長の渡部正義氏との対決に敗れ、4度連続の町長選落選となった。すると、今年4月の町議選に立候補した。 今回も圧倒的な票数でトップ当選するのかと思いきや、湯田氏と同じ田島地区の新人候補がその座を奪い取った(別掲参照)。 選挙結果(4月23日投開票、投票率77・74%)当1538渡部 裕太 (31)無新当836湯田 芳博 (72)無元当755渡部 訓正 (69)無現当626丸山 陽子 (68)公現当575古川 晃 (62)無新当543芳賀 正義 (75)無新当540山内 政 (70)無現当499楠 正次 (68)無現当449湯田 哲 (66)無現当446森 秀一 (72)無元当434川島 進 (68)無現当430室井 英雄 (66)無現当422酒井 幸司 (65)無新当392高野 精一 (73)無現当328星 和孝 (57)無新当297湯田 剛正 (62)無新275馬場 浩 (61)無現 「若い議員は少ないので、トップ当選を目指し、できる限り多くの方に得票してもらいたいと考えて全力で活動していました」 こう語るのは31歳で町議となった渡部裕太氏だ。今回の当選者では最年少となる。 会津高卒。「地域医療に携わりたい」と自治医大入学を目指し、予備校に通いながら浪人生活を続けている中で、2019年、父親の渡部英明氏が県議選に立候補することになり、手伝いのため同町にUターン。結局、父親は選挙戦で敗れたが、そのまま町内の企業に就職した。 こうした活動中に驚かされたのが、若い世代の選挙への関心のなさだ。 「民間企業だと退職するぐらいの年齢の人が議員を務めており、接点も親近感もない」という意見が聞かれた。それならば、若者が1人でも議員になることで、思いが伝えやすくなり、政治参加もするようになるのではないか――。 渡部氏は地元に戻って以来、地域のスポーツ活動、山岳救助消防団など、さまざまな活動に参加していた。多くの人の話を聞く機会がある自分が若い世代の受け皿になろうと考えた。その結果、多くの票を得て町議に当選したのだから、期待している人が多いということだろう。 会社員との兼務生活 経営者の理解を得て、地元の建材店に勤めながら、議員活動に取り組む。ちなみに地方自治法では町の事業を請け負う企業の役員が地方議員を兼ねることが禁じられているが、渡部氏は役員にはなっていない。議会の会期中は閉会後に会社に戻って仕事をこなす。「正直、当選後は休みがありません」と笑う。 公約には空き家の活用、体験型観光資源の創出、地域の魅力発掘などを掲げた。6月定例会では、早速空き家対策について執行部にただした。 「現場に行って話を聞いて初めて分かることも多い。例えば、移住者を増やすための施策が行われているが、『移住者のニーズとはかみ合っていない』という声が聞かれる。町への窓口、つなぎ役としての役割を果たしていきながら、公約実現を目指していきたい。特に空き家問題については、いま会社で不動産部門を担当しており、現場でその実態を知っているという強みがあるので、積極的に取り組んでいきたいですね」 11月に父親の渡部英明氏が県議選に再び立候補することについては「もし当選させてもらえば、相互に連携して県・町のパイプ役として機能できると思います」と語る。 地域を問わず入れてもらった多くの票は若き立候補者への期待の表れ。後は行動で示すだけだ。
地域おこしで移住した長友海夢氏 猪苗代町は、6月に町長選が行われ、そこに佐瀬誠氏、佐藤悦男氏の2人が議員を辞職して立候補したほか、二瓶隆雄氏が在職中の2021年4月に亡くなったことで欠員3となっていた。 そのため、町長選と同時日程(6月13日告示、18日投開票)で議員補欠選挙が行われた。町議補選には、長友海夢氏(27)、山内浩二氏(68)、松江克氏(68)の3人が立候補し、無投票での当選が決まった。ちなみに、町長選は前述の佐瀬氏、佐藤氏のほか、二瓶盛一氏、高橋翔氏の新人4人が立候補し、二瓶氏が当選を果たした。 議員任期は来年2月までで、今年6月の町議補選で当選しても、任期は約8カ月しかない。そんな事情もあり、町内では「この時期の補選では、なかなか立候補しようという人が出てこない」と言われていた。 実は、4年前の町長選の際も、現職町議が町長選に立候補したことと、現職議員の死去によって欠員2が生じ、町議補選が行われた。ただ、事前の立候補予定者説明会では出席者がゼロで、告示日当日になっても、「立候補者が出てこず、欠員のままになるのではないか」と囁かれていたほど。最終的には急遽2人が立候補し、無投票で当選が決まったが、なり手不足を嘆く町民は少なくなかった。 今回の町議補選前も、「時期(残任期が短い)的なこともあり、なかなかなり手がいない」と言われていたが、選挙戦にはならなかったものの、欠員3を埋めることができた。 その中で注目されるのが長友氏だ。選挙時は27歳で、県内最年少議員になる。 長友氏はどんな人物なのか。町内複数人に聞いてみたが、「分からない」という人がほとんど。知っている人でも「地域おこし協力隊でこっちに来た人のようだね」という程度で、「それ以上のことは分からない」とのこと。 経歴と移住の経緯 ひし駆除(採取)の様子=長友氏提供 長友氏に話を聞いた。 1995年8月生まれ。現在28歳(選挙時は27歳)。栃木県出身だが、アルペンスキーをやっており、猪苗代町を練習拠点にしていた。小学5、6年生のときは同町内の小学校に通っていた。 その後、中学校は地元栃木県の学校に通い、高校は日大山形高校、大学は日大体育学科でスキーを続けた。競技者としては大学までで一区切りとし、卒業後は通信系の会社に就職した。 そこで3年ほど働いたが、ひたすら自社の利益だけを求められる環境だったようで、「収入(高収入を得ること)よりも、人や地域の役に立つ仕事がしたい」と思うようになったという。 そんな折、猪苗代町で地域おこし協力隊員を募集していることを知り、「思い入れのある猪苗代町で、地域のために仕事がしたい」と応募、2020年4月から3年間の任期で地域おこし協力隊員(※総務省HPに掲載されている地域おこし協力隊の概要を別掲)になり、移住した。 地域おこし協力隊は、都市地域から過疎地域等の条件不利地域に住民票を異動し、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこし支援や、農林水産業への従事、住民支援などの「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を図る取り組みです。隊員は各自治体の委嘱を受け、任期はおおむね1年から3年です。 具体的な活動内容や条件、待遇等は各自治体により様々ですが、総務省では、地域おこし協力隊員の活動に要する経費に対して隊員1人あたり480万円を上限として財政措置を行っています。また、任期中は、サポートデスクやOB・OGネットワーク等による日々の相談、隊員向けの各種研修等様々なサポートを受けることができます。任期終了後の起業・事業継承に向けた支援もあります。 令和4年度で6447名の隊員が全国で活動していますが、地方への新たな人の流れを創出するため、総務省ではこの隊員数を令和8年度までに1万人とする目標を掲げており、目標の達成に向けて地域おこし協力隊の取り組みを更に推進することとしています。 長友氏は、その任期中の昨年7月に㈱いなびしを設立した。 「猪苗代湖の水質環境保全事業を行っているのですが、毎年、夏になると大量の『ひし』(水草)が発生します。それを放っておくと腐敗してヘドロになるなど、水質汚濁の原因となってしまいます。そのため、ひしの駆除を行うのですが、それを有効活用する目的で設立したのが『いなびし』です」(長友氏) ひし駆除(採取)の様子=長友氏提供 社名は、地名(猪苗代)とひしから取ったもの。ひしは湖にとって厄介者で、行政が船を出すなどして駆除し、それを運搬・処分していた。当然そのための費用がかかる。長友氏(いなびし)は、その厄介者を資源にできないかと考え、「猪苗代湖産ひし茶」として商品化した。本誌記者も取材中にいただいたが、味はそば茶と似ている。 猪苗代湖産ひし茶=長友氏提供 「現在は、道の駅猪苗代で販売しているほか、町内のカフェや旅館、アクティビティー施設などで使ってもらっています。クセがなく飲みやすいので、食事、特に和食に合うと思います。商品の売り上げの一部は水質環境保全事業に寄付しています」(同) 今後は海外への販売も視野に入れている。ひしの実は、乾燥するとかなりの硬度になり、古くは忍者が敵の足元に撒き、動きを鈍らせるための道具「マキビシ」の元になっていたとも言われているという。ひしを撒くから「マキビシ」というわけ。 「どの国に、どんな形で売り出すかはまだこれからですが、海外で忍者人気は高いですから、マキビシエピソードと絡めて『ニンジャティー』といった形で売り出せば、海外の人にも興味を持ってもらえるのではないかと考えています」(同) このほか、郡山市の猪苗代湖畔に畑を借り、ひしの実を肥料化する取り組みも進めている。また、町内新町の空き店舗を借りて事務所兼店舗にしており、ひし茶の製造のほか、教育旅行・ツアー等の体験コンテンツ提供、そば店、そば打ち体験、夏季の日曜日限定のかき氷販売などを行っている。 これら事業は、新しいビジネスへの挑戦や、地域課題の解決に取り組むビジネスプランを表彰する「ふくしまベンチャーアワード2022」で優秀賞に輝いた。 議員になったきっかけ ひしの実 こうした事業を営むかたわら、議員に立候補しようと思ったきっかけは何だったのか。 「会社勤めをしていた時に、取引先企業の担当者が政財界とつながりがあり、私もそうした場に行くことがありました。その時は、議員になろうとかではなく、それまで縁遠かった議員について認識することができました。その後、会社を辞めて、地域おこし協力隊に応募した際、役場の課長さんの面接があったのですが、その時に『ここで、地域のためになる仕事がしたい』、『いずれは起業したいし、議員として地域のために働きたいと考えている』ということを伝えました。今年3月に地域おこし協力隊の任期が終わり、この機会だと思って立候補しました」 長友氏によると、県内他地域では地域おこし協力隊で移住し、後に起業するという事例が、もっと活発に行われているところもあるという。そのため、「議員として、地域おこし協力隊のさらなる活性化に加えて、自分が空き店舗を借りて事務所兼店舗にした経験から、空き家・空き店舗の有効活用、移住促進、統廃合によって空いた学校の有効活用などに取り組みたい」と意気込む。 9月は議員になって初めての定例会が行われる。そこで、一般質問デビューを果たすべく、いま(本誌取材時の8月下旬)は、数ある課題の中から何を取り上げるか、限られた時間で効率よく質問するためにはどうするか等々を思案中という。
新人でトップ当選を果たした深谷勝仁氏 本誌6月号に「須賀川市議選 異例の連続無投票が現実味」という記事を掲載した。任期満了に伴う須賀川市議選は、7月30日告示、8月6日投開票で行われたが、事前情報(6月号記事掲載時点)では、「無投票の可能性が高い」と言われていた。 前回(2019年8月)は、同市にとって、1954年の市制施行以来、初めての無投票で、市民からは「連続無投票は避けなければならない」、「無投票になった次は多くの候補者が出そうなものだが、そうならないのが問題だ」といった声が出ていた。 その後、7月3日に立候補予定者説明会が開かれ、それまで立候補の動きがなかった新人3陣営が出席。このうちの1人が正式に立候補表明したことから、定数24に25人(現職19人、新人6人)が立候補し、8年ぶりの選挙戦となった。 結果は別掲の通り。現職19人、新人5人の計24人が当選した。投票率は45・28%で、過去最低だった前々回の55・89%を10・61ポイント下回り、過去最低を更新した。 選挙結果(8月6日投開票、投票率45・28%)当 3141 深谷 勝仁 (39)無新当 1914 松川 勇治 (45)無新当 1640 鈴木 正勝 (70)公現当 1380 大河内和彦 (56)無現当 1334 深谷 政憲 (66)無現当 1278 大寺 正晃 (61)無現当 1206 溝井 光夫 (62)無現当 1203 佐藤 暸二 (67)無現当 1159 横田 洋子 (64)共現当 1078 鈴木 洋二 (64)無現当 1078 本田 勝善 (58)無現当 1072 浜尾 一美 (51)無現当 1067 五十嵐 伸 (60)無現当 1039 堂脇 明奈 (40)共現当 1016 大内 康司 (83)自現当 891 古川 達也 (50)無新当 881 市村 喜雄 (66)無現当 881 関根 篤志 (47)無新当 768 斉藤 秀幸 (47)無現当 767 石堂 正章 (65)無現当 722 柏村 修吾 (66)無新当 588 大柿 貞夫 (71)無現当 573 熊谷 勝幸 (52)無現当 516 小野 裕史 (54)無現 513 桜井 誠 (37)無新 この中で目に付くのが、新人でトップ当選を果たした深谷勝仁氏(39)。今回の当選者では最年少になる。 選挙戦となった直近3回の最多得票は2015年が2098票、2011年が2005票、2007年が2472票といずれも2000票から2500票の間。今回の深谷氏は3141票で、それらを大きく上回っている。今回2番目に得票が多かったのは新人の松川勇治氏(45)で1914票だから、2位に約1200票差を付けている。過去のトップ当選者との比較に加えて、今回の低投票率を考えると、深谷氏の得票がいかに多いかがうかがえよう。 深谷氏はどんな人物なのか。 本人のSNSなどに掲載されたプロフィールによると、1984年生まれ。須賀川高校(現・須賀川創英館)、東北文化学園大学医療福祉学部卒。2007年に市社会福祉協議会の職員となり、今年3月まで勤務した。 年度末に社協を辞め、4月以降は市議選の準備をしてきた格好だ。 過去に仕事上の付き合いがあったという市民はこう話す。 「深谷氏は、福祉を必要とする高齢者や障がい者、その家族などからの信頼が厚く、彼のことを悪く言う人は聞いたことがありませんね。そのくらい、誠実で人柄がいい。それに加えて『若さと実行力』というキャッチフレースが有権者に響いたのだと思います。社協職員の経験から、『社会的に弱い立場の人への支援』といったことも訴えており、それも共感を得たのでしょうね」 さらにある市民はこう語る。 「深谷氏の実家は、栄町にある『深谷石材店』で、そこは深谷氏の実兄が継いでおり、深谷氏自身もその近くに住んでいます。今回の選挙では、これまで栄町には議員がいなかったことから、『この地区から議員を出そう』と、町内会がかなり支援したようです(※編集部注・深谷氏の自宅は市内中山だが、栄町、中山などを含む複数大字の地区が新栄町町内会に該当する)。また、深谷氏は学生のころから熱心に野球に取り組んでおり、いまも『市町村対抗福島県軟式野球大会』に出場するなど、野球繋がりの支援も多かった。加えて、社協職員時代に、高齢者や障がい者、その家族などの評判も良かったから、そういった層も深谷氏に投票したと思われます。その結果、断トツの得票数になったものと思われます」 一方で、ある議員経験者は「ちょっと勝ち過ぎの感もある」と話す。 「表立っては言わなくても、深谷氏があれだけ票を取ったことで、自分の票が減ったとか、そういう思いを抱いている人もいると思う。もちろん、それはその人(票を減らした人)の問題なんですが、どうしても、こういう世界は、妬み嫉みがありますからね。まさか、議員活動を妨害されるようなことはないとは思いますが、ちょっとしたことで揚げ足を取られるようなこともあるかもしれない。深谷氏にはそういったことに気を付けつつ、萎縮することなく頑張ってほしいですね」 深谷氏に聞く 深谷氏に話を聞いた。なお、本誌が取材したのは8月22日で、議員任期がスタートする前だった。 ――議員を目指したきっかけは? 「社会福祉協議会に勤務していた時の最初のころは高齢者福祉、後半は障がい者福祉を担当していました。その中で、高齢者福祉、障がい者福祉ともに、まだまだ課題があると感じており、『福祉の充実』を図りたいというのが、議員を目指した一番の要因です」 ――3000票オーバーという得票についてはどう捉えているか。 「正直、驚いています。喜びと同時に責任を感じます」 ――本誌取材では、若い世代、高齢者・障がい者福祉を必要としている人、その家族などに支持が広がったと聞いている。 「確かに、新聞等では『若い世代の票が入った』と書かれていましたが、実際にどうだったかは分析が追いついていません。ただ、私自身、小学生の娘が2人いますから、子育て世代や、高齢者・障がい者福祉を必要としている人たちの思いは受け止められると思っていますし、(任期スタート後は)そのための活動をしていきたいと思っています」 ――もう1つは、町内会の支援が大きかったとも聞いた。 「新栄町町内会では、(議員が誕生するのは)40年ぶりくらいだそうです。この地区では、JR須賀川駅西口開発(※深谷氏の地元は須賀川駅西側に当たり、須賀川駅は西側から駅に出入りすることができないため、西側に出入り口と駅前広場をつくる計画が進められている)などの動きもありますから、そういった点からも、町内会の皆様に応援していただけたのだと思います。そのほか、同級生、先輩・後輩にも支えていただきました」 ――当然、議会の常任委員会は、福祉関係を所管する委員会に所属したい? 「その辺はどうなんでしょうか。市議会は会派制ですから、会派で誰がどの委員会になるかということだと思います」 ――就任後すぐに9月定例会(※通常は9月中に行われるが、選挙があった年は9月末から10月にかけて行われる)が開かれることになるが、早速、一般質問をするか。 「その辺も、会派の構成などが決まってからですかね」 議員の任期は9月4日からスタートする。「若さと実行力」を売りにする深谷氏の今後に注目したい。
県発注工事を巡る贈収賄事件は8月、県中流域下水道建設事務所元職員と須賀川市の土木会社「赤羽組」元社長に執行猶予付きの有罪判決が言い渡された。9月13日には、公契約関係競売入札妨害罪に問われている大熊町の法面業者「東日本緑化工業」元社長に判決が下される。県警による贈収賄事件の検挙は、昨年9月に田村市の元職員らを逮捕したのを皮切りに市内の業者に及び、さらにその下請けに入っていた東日本緑化工業の元社長へと至った。業界関係者は、県警が「一罰百戒」の目的を達成したとして、捜査は一区切りを迎えたとみている。 「一罰百戒」芋づる式検挙の舞台裏 須賀川市にある赤羽組の事務所 郡山市にある東日本緑化工業の事務所 贈賄罪に問われた赤羽組(須賀川市)元社長の赤羽隆氏(69)には懲役1年、執行猶予3年の有罪判決。受託収賄罪などに問われた県中流域下水道建設事務所元職員の遠藤英司氏(60)には懲役2年、執行猶予4年の他、現金10万円の没収と追徴金約18万円が言い渡された。公契約関係競売入札妨害罪に問われている東日本緑化工業(大熊町)元社長の坂田紀幸氏(53)の裁判は、検察側が懲役1年を求刑し、9月13日に福島地裁で判決が言い渡される予定。 本誌は昨年から、田村市や県の職員が関わった贈収賄事件を業界関係者の話や裁判で明かされた証拠をもとにリポートしてきた。時系列を追うと、今回の県発注工事に絡む贈収賄事件の摘発は、田村市で昨年発覚した贈収賄事件の延長にあった。 福島県の発注工事では、入札予定価格と設計金額は同額に設定されている。一連の贈収賄事件の発端は設計金額を積算するソフトを作る会社の営業活動だった。積算ソフト会社は自社製品の精度向上に日々励んでいるが、各社とも高精度のため製品に大差はない。それゆえ、各自治体が発注工事の設計金額の積算に使う非公表の資材単価表は、自社製品を優位にするために「喉から手が出るほど欲しい情報」だ。 2021年6月、宮城県川崎町発注の工事に関連して謝礼の授受があったとして、同町建設水道課の男性職員(49)、同町内の建設業「丹野土木」の男性役員(50)、そして仙台市青葉区の積算ソフト会社「コンピュータシステム研究所」の男性社員(45)が宮城県警に逮捕された(河北新報同7月1日付より。年齢、役職は当時、紙面では実名)。町職員と丹野土木役員は親戚だった。 同紙の同年12月28日付の記事によると、この3人は受託収賄や贈賄の罪で起訴され、仙台地裁から有罪判決を受けた。判決では、同研究所の社員が丹野土木の役員と共謀し、町職員に単価表の情報提供を依頼、見返りに6回に渡って商品券計12万円分を渡したと認定された。1回当たり2万円の計算だ。 同紙によると、宮城県警が川崎町の贈収賄事件を本格捜査し始めたのは2021年5月。田村市で同種の贈収賄事件(詳細は本誌昨年12月号参照)が摘発されたのは、それから1年以上経った翌22年9月だった。 福島県警が、田村市内の土木会社「三和工業」役員のA氏(48)と、同年3月に同市を退職し民間企業に勤めていたB氏(47)をそれぞれ贈賄と受託収賄の疑いで逮捕した(年齢、肩書きは当時)。2人は中学時代の同級生だった。同研究所の営業担当社員S氏が「上司から入手するよう指示された単価表情報を手に入れられなくて困っている」とA氏に打ち明け、A氏がB氏に情報提供を働きかけた。 川崎町の事件と違い、同研究所社員は贈賄罪に問われていない。しかし、同研究所が交際費として渡した見返りが商品券で、1回当たり2万円だったように手口は全く同じだ。 裁判でB氏は、任意捜査が始まったのは2022年の5月24日と述べた。出勤のため家を出た時、警察官2人に呼び止められ、商品券を受け取ったかどうか聞かれたという。警察が同研究所を取り調べ、似たような事件が他でも起きていないか捜査の範囲を広げたと考えるのが自然だろう。 ある業界関係者は「県警は田村市の元職員を検挙し、元職員とつながりのあった業者、さらにその先の業者というように芋づる式に捜査の手を伸ばしたのだろう」とみている。 どういうことか。鍵を握るのは、田村市の贈収賄事件と、今回の県発注工事に絡む事件のどちらにも登場する市内の土木会社「秀和建設」である。 田村市の一連の贈収賄は、三和工業が贈賄側になった事件と、秀和建設が贈賄側になった事件があった。秀和建設のC社長(当時)は、市発注の除染除去物質端末輸送業務に関し、2019年6~9月に行われた入札で、当時市職員だったB氏に設計金額を教えてもらい、見返りに飲食接待したと裁判所に認定された(詳細は本誌1月号と2月号を参照)。 県発注工事をめぐる今回の事件では、県中流域下水道建設事務所職員(当時)の遠藤氏から設計金額を聞き出し元請け業者に教えたとして、東日本緑化工業社長(当時)の坂田氏が公契約関係競売入札妨害罪に問われている。その東日本緑化工業が設計金額を教えた元請け業者が秀和建設だった。 秀和建設は坂田氏を通じて設計金額=予定価格を知り、目当ての工事を確実に落札する。坂田氏が社長を務めていた東日本緑化工業は、その下請けに入り法面工事の仕事を得るという仕組みだ。 坂田氏と秀和建設のつながりは、氏が以前勤めていた郡山市の「福島グリーン開発」が資金繰りに困っていた時、秀和建設が援助したことから始まった。福島グリーン開発は2003年に破産宣告を受けたが、坂田氏は東日本緑化工業に転職した後、秀和建設との関係を引き継いだ。 坂田氏は今年8月に行われた初公判で「取り調べを受けてから1年近くになる」と述べているので、坂田氏に任意の捜査が入ったのは昨年8月辺り。田村市元職員のB氏が秀和建設のC氏から見返りに接待を受けたとして逮捕されたのが昨年9月、C氏が在宅起訴されたのが同10月だから、秀和建設と下請けの東日本緑化工業の捜査は呼応して行われていたと考えられる。 捜査はさらに県職員と赤羽組に波及する。坂田氏と県中流域下水道建設事務所職員だった遠藤氏、赤羽組元社長の赤羽氏は3人で会食する仲だった。警察が坂田氏を取り調べる中で、遠藤氏と赤羽氏の関係が浮上したと本誌は考える。裁判では、遠藤氏の取り調べが始まったのが今年3月と明かされたので、秀和建設→坂田氏→遠藤氏・赤羽氏の順に捜査が及んだのだろう。 杓子定規の「綱紀粛正」に迷惑 芋づる式検挙をみると、不正は氷山の一角に過ぎず、さらに摘発が進むのではと、入札不正に心当たりのあるベテラン公務員と業者は戦々恐々している様が想像できるが、前出の業界関係者は「『一罰百戒』の効果は十分にあった。県警本部長と捜査2課長も今年7〜8月に代わったので、継続性を考えると捜査は一段落したのではないか」とみる。 とりわけ、県に与えた効果は絶大だったようだ。「綱紀粛正」が杓子定規に進められ、業者からは県に対しての不満が漏れている。 「県土木部の出先機関に打ち合わせに出向くと職員から『部屋に入らないで』『挨拶はしないで』と言われる。疑いを招くような行動は全て排除しようとしているのだろうが、おかげで十分なコミュニケーションが取れず、良い仕事ができない。現場の職員が判断するべき些細な内容もいちいち上司に諮るので、1週間で終わる仕事が2週間かかり、労力も時間も倍だ。急を要する災害復旧工事が出たら、一体どうなるのか」(前出の業界関係者) この1年間で、県土木部では出先機関の職員2人が贈収賄事件に絡み有罪判決を受けた。県職員はまさに羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹いている。県は不祥事防止対策として、警察官や教員を除く職員約5500人に「啓発リーフレット」を配り、コンプライアンス順守を周知するハンドブックを必携させたが、効果は未知数だ。 実際、いま管理職に就く世代は、業者との関係性が曖昧だった。60歳の遠藤氏は「入庁当初の1990年ごろは、県職員が受注業者と私的に飲むのは厳しく制限されていなかった」と法廷で振り返っていた。赤羽氏が「後継者を見つけてほしい」との趣旨で退職を控える遠藤氏に現金10万円を渡していたことからも、県職員が昵懇の業者に入札に関わる非公開情報を教える関係は代々受け継がれていたようだ。 ただ遠藤氏も、見境なく設計金額を教えていたわけではない。「設計金額を教えてほしい」と単刀直入に聞きに来る一見の業者がいたが、「初対面で教えろとは常識がない。何を言っているんだ」と思い断ったという。 では逆に、教えていた赤羽組と東日本緑化工業は遠藤氏にとってどのような業者だったのか。遠藤氏は、自身が入札を歪めたことは許されることではないとしつつ、「手抜き工事が横行していた時代に、信頼と実績のある業者に頼むようになった」と法廷で理由を語った。 遠藤氏と9歳年上の赤羽氏は、熱心で優秀な仕事ぶりから初対面で互いに好印象を持ち、兄弟のような関係を築いた。東日本緑化工業の坂田氏とは、前述のように赤羽氏を交えて会食する仲であり、遠藤氏は坂田氏に有能な人物との印象を抱いていた。 東日本緑化工業のオーナー家である千葉幸生社長(坂田氏が社長を辞任したのに伴い会長から就任。現在大熊町議5期)は、浜通り以外でも営業を拡大しようと、2003年に破産宣告を受けた福島グリーン開発から坂田氏を引き取り、郡山支店で営業に据えた。おかげで中通り、会津地方でも売り上げが増えたという。同社の破産手続きを一人で完遂した坂田氏の手腕も評価していた。坂田氏を代表取締役社長にしたのは、事業承継を考えてのことだった。 見せしめの効果は想像以上 公務員だった遠藤氏は、丁寧な仕事ぶりと人柄を熟知する赤羽氏、坂田氏に「良い工事をしてもらいたいから」と便宜を図ったのか。それとも、赤羽氏から接待を受けていることに引け目を感じた見返りだったのか。何が非公開情報を教えるきっかけになったかは分からない。言えるのは、事件の時点では、清算できないほど親密な関係になっていたということだ。 今回の摘発は、コンプライアンス重視が叫ばれる昨今、捜査の目が厳しくなり、県・市職員と受注業者の近すぎる関係にメスが入ったということだろう。 公務員は摘発を恐れ、仕事が円滑に進まないくらいに「綱紀粛正」に励んでいる。一方、業者は有罪判決を受けた結果、公共工事の入札で指名停止となり、最悪廃業となるのを恐れている。公務員と業者、双方への見せしめ効果は想像以上に大きかった。前出の業界関係者が「一罰百戒」と形容し、警察・検察が十分目的を果たしたと考える所以だ。 あわせて読みたい 裁判で分かった福島県工事贈収賄事件の動機【赤羽組】【東日本緑化工業】 収まらない福島県職員贈収賄事件【赤羽組】【東日本緑化工業】
南会津郡選挙区(定数1)では現職引退に伴い、新人同士の選挙戦になる見通し。前回選挙で現職に数十票差まで迫った野党系候補のほか、立憲民主党から鞍替えした自民党推薦候補が名乗りを上げている。 自治労出身候補者との新人対決 渡部英明氏 大桃英樹氏 南会津郡選挙区は定数1。対象となる町村は下郷町、南会津町、只見町、檜枝岐村。6月1日現在の選挙人名簿登録者数は2万0854人。 同選挙区の現職は星公正氏(70、3期)。南会津町の建設会社・星組(現在は大富士土建工業、福南建設と合併し、「南総建」となっている)の元社長で、自民党所属。今年2月に今期限りでの引退を表明した。 現時点で立候補を表明しているのは2人。 1人目は、前回2019年の県議選に立候補し、星氏に74票差(8263票)で敗れた新人の渡部英明氏(56)だ。 南会津町出身、会津高卒。田島町(南会津町)役場に勤めながら、自治労福島県本部書記次長、連合福島南会津地区連合会議長を歴任。早期退職し、立憲民主党、国民民主党、社民党の推薦を受け県議選に挑んだ。 落選後は次期県議選でのリベンジに向け準備しつつ、同町田島地区の自宅に行政書士事務所を立ち上げた。 4人の子どものうち、3人が同町内の企業に勤める。4月には、その1人で長男の渡部裕太氏(31)が南会津町議選に立候補し、得票数1538票でトップ当選を果たした(88頁からの記事参照)。自宅近くに設けた選挙事務所はそのまま父親の選挙事務所として使われる予定だ。 「親子で議員職を独占し、互いの選挙活動を応援し合う姿勢を見て、シラける人も増えそうだ」(町内の経営者)と懸念する向きもあるが、渡部英明氏は「支持者からネガティブな声は聞こえていない。息子と二馬力で地域を盛り上げたい」と意気込みを示す。 2人目は、新人で元南会津町議の大桃英樹氏(48)だ。 南会津町出身。喜多方高卒、米テンプル大学JAPAN(=日本校)中退。旧南郷村職員(南会津町職員)を経て、2011年に36歳で南会津町議選初当選、連続3期務めた。今年4月の町議選立候補を見送り、星氏引退に伴い自民党南会津総支部が実施した県議選公認候補の公募に応募。同党から推薦を受ける形で、7月に立候補を表明した。 同選挙区内で話題になっているのがこの大桃氏の経歴だ。 実は大桃氏、4年前の町議選に国民民主党から立候補し、その後は立憲民主党党員として活動してきた人物なのだ。特に旧福島4区選出の小熊慎司衆院議員(55、4期、立憲民主党)を応援し、行動を共にしてきた。それが一転して自民党推薦候補となったため、与野党双方から反発の声が上がっている。 「町内の立憲民主党関係者は〝裏切り行為〟に呆れているし、自民党南会津総支部の各地区の責任者からも『応援する気になれない』という声が漏れ聞こえる」(会津地方の選挙事情に詳しいジャーナリスト) 大桃氏に関しては、南会津町長選にも立候補の意思を示して翻すなど、周囲を翻弄するような言動が目立ち、公私ともにさまざまなウワサが流れていた。自民党南会津総支部内で反発の声が上がった背景にはそうした事情もあるのだろう。 「自民党南会津総支部で会合をやったとき、座長を務めていた菅家一郎衆院議員(68、4期、自民党)が『自民党員が誰も出ないっていうんだから大桃君でいいんじゃないか』と詳しい事情も知らないのに話した。さすがに各地区の責任者が激怒して、一斉に帰ってしまったらしい」(同) そんな声を吹き飛ばすように、大桃氏は8月6日、SNSに菅家氏とのツーショット写真をアップ。お盆期間には菅家氏と共に新盆の支持者宅をあいさつ回りするなど、支持拡大に奔走している。 なぜ立憲民主党を離党して自民党から立候補しようと考えたのか。本誌取材に対し大桃氏はこう語った。 「前回、今回と県議選立候補を希望し、小熊さんに相談して調整してもらっていたが、渡辺英明氏が連合福島の推薦で立候補する関係上、立憲民主党から『(県議選での立候補は)あきらめてください』と言われていた。やむなく2月末ごろに離党し、無所属でも立候補する覚悟を決めていたところ、自民党関係者を通じて星氏からお声がけいただき、公募に申し込んだのです」 小熊氏に相談しても立候補の道が開けず、失意の離党をした直後に自民党からスカウトされた、と。 評価下げた菅家氏と小熊氏 菅家一郎氏 小熊慎司氏 大桃氏は渡部恒三氏が唱えていた二大政党制の実現を目指し、小熊氏と行動してきたが、ここ数年は立憲民主党が打ち出す野党共闘路線に違和感を抱いていたという。同党所属のまま人口減少・少子高齢化が急速に進む南会津地域を振興していけるのか不安を抱いているタイミングで県議選立候補の断念要請が重なり、離党を決意した。 大桃氏によると、地元自民党支持者の反応は「応援の声も多くいただいているが、『俺は認めないよ』という方もいる」。同町内では以前から「与党県議がいれば大規模公共事業を南会津地域に持ってくる可能性が高まる。星氏の後継者を探すべきだ」という声が聞かれていた。与党支持者の受け皿としてそれなりに支持が広まっていくかもしれない。 なお県内の国民民主党関係者によると、大桃氏をめぐっては、「小熊氏のアイデアで、まずは無所属で立候補し、後から国民民主党入りする動きがあった。国民民主党の役員らは本気で準備していたが、ふたを開けてみたら小熊氏は全く動いておらず、本人にも話が届いていなかった。自民党に公募を出していた話を知って愕然とした」という話があったとか。振り回された格好の国民民主党関係者は小熊氏に強い不信感を抱き、周囲に不満を漏らしている。前出・菅家氏といい、小熊氏といい、今回の県議選でそろって評価を落とした格好だ。 同選挙区の課題は人口減少と少子高齢化、産業振興に尽きる。コロナ禍と原油・物価高騰はあらゆる業界に打撃を与えており、民間企業は青息吐息の状態。こうした中、地域活性化の道筋を付けるべく、県執行部にさまざまな意見を出して改善を促す県議が求められる。 渡部氏、大桃氏ともにインフラ整備や観光振興、人口減対策などを訴えるが、どこまで実現できるのか。 渡部氏、大桃氏とも大票田である南会津町田島地区在住。 渡部氏は前回の県議選で只見町と檜枝岐村で苦戦した。星氏が社長を務めていた星組との結び付きが強いエリアだったためとみられ、ここをどう攻略できるかが渡部氏にとって鍵になる。一方の大桃氏は父親が南会津地方広域市町村圏組合消防本部で消防長を務め、出身は旧南郷村という点がプラスに働きそう。 元役場職員同士の対決となる見通しだが、今後さらなる新人が立候補する可能性もある。支持が入り乱れる激戦を制するのは誰か。
須賀川市・岩瀬郡選挙区(定数3)は、立憲民主党の現職宗方保氏が引退し、その後継者と、自民党の現職2人、共産党候補の4人で争う構図が予想され、激戦区と言える。 「共産候補も侮れない」との声も 渡辺康平氏 水野透氏 現在、同選挙区の現職は、宗方保氏(県民連合、6期)、水野透氏、渡辺康平氏(ともに自民党、1期)の3人。前回(2019年11月10日投開票)は、それまで5期務めていた自民党の重鎮・斎藤健治氏が引退したこともあり、6人が立候補する激戦だった。斎藤氏の引退を受け、自民党は新人2人の公認候補を擁立したが、同選挙区で自民公認候補が2人になるのは初めてだった。そのため、「宗方氏は安泰としても、自民党公認候補の2人がどれだけ得票できるか、場合によっては他候補が〝漁夫の利〟を得る可能性もあるのでは」との見方もあった。 ただ、結果は宗方氏と自民党公認の新人2人が当選した(前回の投票結果は別掲の通り)。 今回は、早い段階で現職の水野氏と渡辺氏が自民党公認での立候補が決まり、共産党も前回選挙に立候補した丸本由美子氏を擁立することを決めていた。 一方、宗方氏は「今期限りで引退する可能性が高い」(ある関係者)と言われていたものの確定的な情報はなかった。ただ、ある陣営の関係者は、5月ごろの時点で「宗方氏が出るにしても、引退するにしても、玄葉光一郎衆院議員の意向を汲んだ人が出てくるのは間違いない。ですから、すでに立候補を決めている自民党の現職2人と共産党の丸本氏、そこに宗方氏、もしくはその後継者(玄葉衆院議員の意向を汲んだ人)を加えた4人の争いになると思って準備をしている」との見方だった。 その後、宗方氏は6月4日に会見を開き、今期限りで引退する意向を表明した。地元紙報道によると「自分にできることを全うし、東奔西走の毎日だった。今後は一市民として発想力と行動力を持って地域貢献したい」(福島民友6月5日付より)と述べたという。 宗方氏の後継者については、当初から玄葉氏の秘書・吉田誠氏の名前が挙がっており、宗方氏の引退表明から約2週間後の6月19日に、立憲民主党公認で立候補することを表明した。 吉田氏について、須賀川市・岩瀬郡の有権者はこう話す。 「宗方氏が須賀川市のまちなか(旧市内)出身なのに対し、吉田氏は旧市内より人口が少ない東部地区出身だから、その辺がどうか。一方で、自民党の水野氏と地盤がかぶるところもあるから、その影響も気になるところです」(須賀川市民) 「人柄はいいと思うが、知名度としてはそこまでではないと思う。まあ、玄葉さんとその支持者が本気になってやるでしょうから、有力であるのは間違いないでしょうけど」(岩瀬郡の住民) 大方の見方では、「自民党の現職2人と吉田氏の3人が有力だろう」とのこと。ただ、「共産党の丸本氏も、昨夏の参院選に比例で立候補し落選したものの、(同じく比例で立候補して当選した)岩渕友氏とタッグを組んで顔と名前を売った。処理水放出など、自民党にとっては逆風もあるから、丸本氏も侮れないと思う」と見る向きもある。 吉田氏が宗方氏のごとく強さを発揮するのか、自民党は2議席を維持できるのか、共産党の議席奪取はあるのか等々が見どころだ。
昨年に引き続き、今年も始まった県のクリエイター育成事業。国内トップクリエイターが師範、地元クリエイターが塾生となる道場「誇心館」では、クリエイティブ力の強化を目指した稽古が今年度いっぱい行われる。ただ、昨年度の成果発表はよく分からないうちに終わり、成果品はウェブや県庁の一角などで発表されたものの、税金を使って地元クリエイターを育成するという名目を踏まえると、事業の成果と反省点が見えにくいのは解せない。 塾生の生の声を反省材料にすべき 内堀雅雄知事 箭内道彦氏(誇心館HPより) 公式ホームページによると、誇心館の狙いは《県内クリエイターのクリエイティブ力を強化し、様々なコンテンツを連携して制作するとともに、それらを活用して情報発信を行うことで、本県の魅力や正確な情報を県内外に広く発信し、風評払拭・風化防止や本県のブランド力向上を図るため、県内クリエイターを育成する》というもの。 昨年度から始まった誇心館の館長は「福島県クリエイティブディレクター」の箭内道彦氏で、その下に国内の著名なクリエイター4人が師範として就いている(別掲)。公募により塾生に選ばれた県内在住クリエイター26人(10~70代)が各師範のもと来年1月まで月1回程度の講義や実習に取り組む。2月には修了式と成果発表が予定されている。 氏名主な仕事など館長箭内道彦(郡山市出身)クリエイティブディレクタータワーレコード「NO MUSIC,NO LIFE.」など。県クリエイティブディレクター師範石井麻木写真家写真展「3.11からの手紙/音の声」を開催。県「来て。」ポスター審査員師範小杉幸一アートディレクター、クリエイティブディレクター県「ふくしまプライド。」「来て。」NHK「ちむどんどん」ロゴなど師範並河進コピーライター、クリエイティブディレクター電通ソーシャル・デザイン・エンジン代表。県「ふくしま 知らなかった大使」など師範半沢健フォトグラファー、ムービーカメラマン東京を拠点に幅広いジャンルで活躍中。県「ふくしまプライド。」TVCMカメラマン敬称略 昨年度は師範6人、塾生62人(稽古を全て受講し、修了書を受け取ったのは49人)だったので、それと比べると今年度は規模が小さくなった印象を受ける。しかし、公表されている情報や、本誌が情報開示請求で県から入手した昨年度事業の公文書を見ていくと、予算規模は昨年度が5530万円、その後、1200万円増額されて計6730万円。今年度は6820万円。つまり、今年度は昨年度より師範、塾生とも減ったのに、予算は増えている、と。同事業の受託者は昨年度、今年度とも山川印刷所(福島市)。 今年度の誇心館は、8月9日に入塾式と初稽古があった。 《入塾式では、箭内さんが「福島で生きる皆さんだからこそ乗せられるものがある。福島だからこそのうれしいこと、楽しいことなどを発信していくことが大切だ」とあいさつし、内堀雅雄知事が「多様性のある福島は一言では言い表せない。どのように伝えれば心に響くかを学んでほしい」と激励した。 各師範のあいさつに続き、塾生代表の石井浩一さんが「仕事への向き合い方、心構えなどを誇心館で学びたい」と決意を述べた》(福島民友8月10日付) 内堀知事がわざわざ出席するくらいだから、県の力の入れようが伝わってくる。それもそのはず、誇心館は地元クリエイターの育成という側面のほかに、内堀氏が副知事時代から箭内氏と親しく付き合い、前回知事選の地元紙取材では「尊敬する人物」に箭内氏を挙げたほど、両氏の関係性が色濃く表れている。 「震災の風評払拭や福島の現状を知ってもらうため、内堀知事が箭内氏を頼るのは理解できる。ただ、両氏が親しい関係にあることを知る人は『二人の距離が近いからこそ始まった事業』とか『そもそも地元クリエイターの育成って税金を使ってやることなのか』と冷めた見方をしている」(某広告代理店の営業マン) とりわけ営業マンが驚いたと話すのが、前述の通り、誇心館の昨年度予算が5530万円から年度途中で1200万円増額され、計6730万円になったことだ。 「広報系予算が年度途中で増えるのは異例。少なくとも、私は経験したことがないし聞いたこともない。誇心館の県の窓口は知事直轄の広報課なので、内堀知事がOKすれば簡単に増額できる、ということなんでしょうか」(同) 県広報課によると、予算増額の理由は「作品の制作と情報発信にかかる費用を増やす必要があった」。足りなくなったからと簡単に増やせてしまうのは、両氏の関係性があるからこそと勘繰らずにはいられない。 本誌が情報開示請求で入手した昨年度事業の公文書に「収支報告書」があり、それを見ると、師範1人当たりの謝金は1回当たり2万5545円となっていた。 「昨年度の師範6人も国内トップクリエイターだったので、2万5000円が事実とすれば激安だ。6人は普段から箭内氏と一緒に仕事をしている〝箭内組〟の面々なので、箭内氏の頼みならと破格の謝金で引き受けたのか、それとも別途謝金を受け取っていたのか」(同) 営業マンによると、この手の事業では項目によって余裕を持たせた予算取りをするので、そこから別途謝金を捻出することは可能というが、県の事業でそのようなテクニックが使えるかは定かではないという。 今年度の謝金がいくらかは事業が全て終わらないと分からないが、昨年度より安いとは想像しにくい。もし高くなっていたら、昨年度は破格過ぎたということだろう。 ダブルスタンダード https://fukushima-creators-dojo.jp/achieve.html 昨年度と今年度の違いで言うと、前出・福島民友の記事にもあるように塾生(代表)の名前を最初から公開していることが挙げられる。 実は、情報開示請求で入手した昨年度事業の公文書では、塾生の名前が全て黒塗り(非開示)になっていた。入塾式と修了式で代表あいさつした塾生の名前も黒塗りだった。 ところが、誇心館の公式ホームページを見ると「2022年度の成果発表」という項目に、塾生の名前と顔写真、それぞれの感想が載っているのである。開示した公文書では名前を全て黒塗りにしておいて、ホームページでは名前だけでなく顔写真まで公開しているのは明らかなダブルスタンダードだ。 県広報課に、本誌に開示した公文書では塾生の名前を黒塗りにした理由を尋ねると、 「公文書は個人情報保護の観点から非開示にした。ホームページは本人の了承を得て開示している」 なんだか解せない。 昨年度の修了式は今年3月6日に行われ、成果品の展示会は同日と翌7日に福島市内で開かれたが、一般の人が見学する機会はほとんどなかったという。 「展示会初日は内堀知事が訪れ、マスコミ対象の公開が優先されたため、一般の人は夕方しか会場に入れなかった。翌日も半日しか開かれなかったので、いつの間にか始まり、いつの間にか終わった印象」(同) 展示会自体は閉鎖的に済ませてしまった感があるが、成果品はウェブで公開したり、新聞、ラジオ、各地の大型ビジョン、デジタル広告、県の公式SNSなどを通じて広く情報発信された。県庁の一角でも期間限定で展示が行われた。ただ、ユーチューブのように再生回数が表示されるならともかく、CMやラジオを見たり聞いたりした人がどれくらいいて、それによってどのような成果が得られたかは正直分かりにくい。 「注目を集めたのは、県が開発したイチゴのオリジナル品種『ゆうやけベリー』のパッケージを塾生が手がけたことくらい。各師範のもとでユニークな取り組みが行われたとは思うが、せっかく箭内氏が館長なのだから、全体で統一テーマを設定し、それに沿って各師範のもとで動画やCMなどを制作して発信すれば、費用対効果も上がり、多くの人の印象に残るPRができたのでは」(同) 県内の某クリエイティブディレクター(CD)も、誇心館の取り組みにこんな指摘をしている。 「クリエイターは自分のつくった作品を多くの人に見てもらうのが仕事。だから、多くのクリエイターが一堂に会し、共同で学びながら作品をつくり上げていく誇心館のやり方はちょっと……と本音を漏らす塾生も中にはいました」 某CDによると、塾生はプロ、学生、素人が入り混じり、年齢層も幅広かったため、能力やスキルに差が見られた。全員が塾生として純粋に講義を受けるだけならそれでも構わなかったが、連携して作品をつくるとなった時、携わる塾生が限られる現象が起きたという。 「誇心館はプロ志向に寄せて始まったので、作品づくりに携わる塾生も次第にプロが中心になっていったようです。ただ、彼らは自分の仕事をしながら塾生として作品づくりに臨み、しかも、講義の一環なので無報酬だったため『自分は何のためにやっているのか』と愚痴をこぼす塾生もいました」(同) それなら同業者(クリエイター)を集めて連携させるのではなく、メーカーや広告代理店などと引き合わせ、作品づくり=仕事に結び付けた方が、クリエイターにとってはありがたかったのかもしれない。 「クリエイターは自分の感性を大切にするので、他者と連携して作品をつくるのが不得手。だったら、自分の作品を世に出せるチャンスを与え、そこに競争性を持たせた方が地元クリエイターの育成につながるだろうし、多くのクライアントも関心を向けるのではないか」(同) 昨年度から始まった誇心館を進化させるには、塾生の生の声を生かすことが欠かせない。例えば全ての講義が終了後、塾生にアンケートを行い、良かった点を次年度に引き継ぐ一方、悪かった点を反省材料にすれば誇心館の取り組みもブラッシュアップされるはずだ。 成果を検証する気なし 福島県庁 ところが、当然やっているものと思われた塾生へのアンケートを、県広報課では「やっていない」というのである。県は6000万円以上の税金を使っておきながら、事業の成果を検証する気がないらしい。 本誌は、昨年度の塾生とコンタクトを取り、体験したからこそ感じた良かった点・悪かった点を聞かせてもらおうと考えた。ところが、何人かの塾生にメール等で取材を申し込んだものの、取材に応じる・応じない以前に、返事すら戻ってこないケースが相次いだ。返事は戻ってきたが「県を通した取材なら応じる」という塾生もいた。 そうした中、本誌の質問に答えてくれた塾生は、 「雲の上の存在のようなトップクリエイターと実際に意見を交わせるのは魅力的で、講師陣の感性や考え方に触れられたのは勉強になった」 と良かった点を語る一方、 「福島県の魅力が伝わるものを、それぞれの班の個性を生かしてつくり発表するというテーマ設定がなされたが、成果物へのイメージが見えにくく、アイデアを出すのに苦戦した。主催者側で具体的なテーマや課題を設けた方が、それぞれの塾生の特技を生かしたり、活発な意見のやりとりができたのではないか」 と改善点を挙げてくれた。「主催者側によるテーマ設定」の必要性は前出・営業マンも指摘していた。表面的な「勉強になった」という感想ではなく、厳しくてもためになる生の声を大切にしないと事業が進化することはないだろう。 2年目の誇心館がどんな成果をもたらし、地元クリエイターにどう評価されるのか。内堀知事と箭内氏の関係ばかりがクローズアップされるのではなく、多くの県民が「福島県にとって有益な事業」と実感できなければ、やる意味はない。 あわせて読みたい 【箭内道彦】福島県クリエイター育成事業「誇心館」が冷視されるワケ 「尊敬する人」に箭内道彦氏を挙げた内堀知事 箭内道彦氏の〝功罪〟
二本松市の本多俊昭市議(63、4期)が所有地に廃棄物を運び込んで一部を焼却処分したとして、市の担当課から注意されていたことが分かった。本多市議は反省の意を示しているが、近隣住民はこの間の言動も含めてその対応に不信感を募らせており、議員辞職を求めている。 議員辞職を宣言もあっさり「撤回」 本多市議は福島農蚕高卒。同市南部の舘野原(杉田地区)在住で、農業に従事している。2022年6月の二本松市議選(定数22)では1470票を獲得して4位当選。令和創生の会に所属し、執行部(三保市政)を厳しく監視・追及するスタンスを貫いているが、ここ2年は1年に1回代表質問で登壇するだけで、一般質問はしていない。 そんな本多市議について、「所有地に廃棄物を不法投棄し、野焼きしていたとして近隣住民とトラブルになっている」とウワサが流れている。 真相を確認するため、市内で聞き込みをしたところ、本多市議とトラブルになっている近隣住民Aさんにたどり着いた。 Aさんはこのように明かす。 「同市箕輪の人通りのない場所に、本田市議が所有する農地がある。昨年6月ごろ、その場所に選挙で使った腕章や布団などを捨て始めた。隣接する私の土地にも侵入していたため、撤去を求めたのですが、少し場所をずらしただけで、その後も放置されたままになっていました」 しばらくすると、近くにあるAさんの自宅にスズメバチが飛んで来るようになった。「廃棄物に巣を作られてはたまらない」とAさんは3度にわたり市に「本多市議に撤去させてほしい」と相談。市が指導に入り、1カ月ほど経ったころ、その場でそれらの一部を燃やし始めたという。 布団などが仮置きされた本多市議の所有地 焼却している様子 「近隣に住む私に何の連絡もなく焼却し始めたので驚きました。幸い周辺の木には延焼しませんでしたが、危ない行為でした」(Aさん) 廃棄物処理法第5条では「土地又は建物の占有者は、その占有し、又は管理する土地又は建物の清潔を保つように努めなければならない」と定められており、行政機関では「廃棄物の一時保管」と称して廃棄物を放置したままにしないように呼びかけている。 また、同法第16条の2では、悪臭やダイオキシン類の発生原因となることから、災害ゴミの処分やどんど焼きなどの例外を除いて野外焼却を禁止している。市が配布しているチラシでも「地面の上で直接ゴミを燃やすこと」について「次のような焼却行為は法律に違反しますので罰せられることがあります」と注意を呼び掛けている。 本多市議は公職に就いているにもかかわらず、こうした違反行為を平然と行っていたわけ。なお、焼却されたのは一部で、残りは本多市議の別の所有地に移動されたという。 Aさんによると、本多市議は当初、誤りを認め、深く反省しているとして、市議会3月定例会終了後に議員辞職する考えを明かしていた。Aさんはトラブル防止のため、会話の様子を「秘密録音」し、記録に残していることを明かす。 「ところが、3月定例会終了後に電話すると『弁護士に相談したら不法投棄に当たらないし、議員を辞職する必要はないと言われたので、議員活動を続ける』と、あっさり前言撤回したから呆れました。こういう人物の言うことは信用できないし、議員にはふさわしくないと思いますよ」(Aさん) 本多市議を直撃 本多市議は近隣住民のこうした声をどのように受け止めているのか。舘野原の自宅を訪ねたところ、本人が取材に応じた。 ――自分の所有地に廃棄物を捨て、その場で燃やしていたと聞いた。 「廃棄物ではなく、自宅の片付けで出た不要物をごみに出す前に〝仮置き〟していた。ただ、一部を所有地で燃やしたのは事実だ」 ――廃棄物処理法で野焼きが禁止されていることを知らなかったのか。 「ちょっとした判断ミスで、深く認識せずにやった。反省して、弁護士の先生に相談したところ、『そこまでのアレじゃないし、深く考えない方がいい』とアドバイスされた。県の人権擁護委員会の先生、法徳寺の住職にも相談したが、『議員を辞めるまでには至らない』との意見をもらったので、議員活動を続けることにした」 ――いま思うことは。 「議員という立場上、その行動がいろいろな人に見られていることをあらためて自覚したうえで、引き続き議員活動に取り組んでいく」 同市生活環境課によると、Aさんからの連絡を受けて後日、同課職員が現地を確認し、本多市議に厳重注意を行ったという。そもそもごみに出す予定で〝野ざらし〟で農地に置いておいた不要物を「仮置きしていた」という言い分は苦しい。 現地は細い農道を通ってしか入れない場所にあり、ほとんど人通りがない。そんな土地で、公職に就く人が近隣住民に声もかけず自宅の不要物を焼却するのは、客観的に見ても異様に映る。「人の目がないところで何か不都合なものを処分しようとしているのではないか」、「所有地をごみ捨て場代わりに使っていたのではないか」と疑われても仕方ないだろう。 複数の関係者によると、狭い地域の話がウワサとなって市内に広まった背景には▽地縁団体などに推されない形で当選した本多市議と一部の地元住民との確執、▽議会で三保市政の批判を続けており、三保市長の支持者から敵視されている――といった事情も影響しているという。 本多市議とAさんは、土地境界線をめぐって以前からもめているようで、今回のトラブル発生後、逆にAさんが誤って本多市議の所有地の木を無断伐採していたことも発覚したという。そうした経緯もあってか、互いに感情的になっているように見える。 Aさんは廃棄物の撤去を求め、同市生活環境課と二本松署に連絡したが、動きは鈍く、現場を確認した様子は見られなかったという(※)。早い段階で行政機関が対応しなかったことが、結果的に事態を悪化させたとも考えられる。 本多市議は「近所付き合いもあるし、大ごとになればこちらも主張しなければならないことが出てくる。記事にはしてほしくない」と言うが、Aさんは逆に「この事実を多くの人に知ってほしい」と話している。議員として地元住民と良好な関係を築いていくことが求められるが、関係修復は容易でなさそうだ。 ※市生活環境課は「Aさんから通報を受けたので後日当事者(本多市議)に電話して注意した。所有地における廃棄物の捉え方については、グレーな面がある」、二本松署は「個別の案件についてはお答えできない」と回答している。
数年前から突如として囁かれるようになった玄葉光一郎衆院議員(59)の「知事転身説」。背景には野党暮らしが長くなり、このまま期数を重ねても出世の見込みが薄いため「政治家として新たなステージを目指すべきだ」という支持者の思いがある。内堀雅雄知事(59)の3期目の任期満了日は2026年11月11日。次の知事選まで3年余り、玄葉氏はいかに行動するのだろうか。本人に真意を聞いた。 首相になれない状況を悲嘆する支持者 玄葉氏の知事転身説を耳にするようになったのは、内堀氏が再選を果たした2018年の知事選が終わってからだろうか。 「内堀知事は2期目で復興の道筋をつけ、3期目を目指す気はないようだ」 こう訳知り顔で話す人に、筆者は何人も会ったが、では、その人たちが何か根拠があって話していたのかというとそうではない。政治談議は時に、あれこれ言い合うから盛り上がるわけで「誰かが『2期で終わるんじゃないか』と言っていた」「オレもそう思う」などと話しているうちにそれがウワサとなって広まり、いつの間にか「定説」として落ち着くのはよくあることだ。 ならば、内堀知事が2期8年で引退するとして「次の知事は誰?」となった時、多くの人が真っ先に思い浮かべたのが玄葉氏だったと推測される。 なぜか。 一般的に「次の市町村長は誰?」となれば、大抵は副市町村長、市町村議会議長、地元選出県議などの名前が挙がる。同じように「次の知事は誰?」となれば、副知事、官僚、国会議員などが有力候補になる。 消去法で見ていこう。 現在の鈴木正晃、佐藤宏隆両副知事は、総務部長などを歴任したプロパーで、優秀なのかもしれないが知名度はない。 官僚は、探せばいくらでも見つかるし、政治家転身への意欲を持つ官僚もいるが、内堀氏が総務省出身であることを踏まえると、2代続けて〝官僚知事〟は抵抗がある。 内堀雅雄知事 残る国会議員は元参院議員の増子輝彦氏(75)や荒井広幸氏(65)の名前を挙げる人もいたが、民間人としてすっかり定着し、年齢も加味すると現実的ではない。 というわけで現職の国会議員を見渡した時、多くの人が「最適」と考えたのが玄葉氏だったのだろう(誤解されては困るが、本誌は玄葉氏が知事に「適任」と言っているのではない。多くの人が「最適」と考える理由を探っているだけである)。 理由を探る前に、玄葉氏の政治家としてのルーツを辿る。 玄葉光一郎衆院議員 1964年、田村郡船引町(現田村市)に生まれた玄葉氏は、父方の祖父が鏡石町長、母方の祖父が船引町長、のちに結婚する妻は当時の佐藤栄佐久知事の二女と、幼少のころから政治と縁の深い家庭環境に身を置いてきた。 安積高校、上智大学法学部を卒業後は政治家を志し、松下政経塾に入塾(8期生)。4年間の研修・実践活動を経て1991年の福島県議選に立候補し、県政史上最年少の26歳で初当選を果たす。県議会では自民党に所属したが、わずか2年で県議を辞職。その年(93年)の衆院選に福島2区(中選挙区、定数5)から無所属で立候補し、並み居る候補者を退け3位で議員バッジを手にした。 当選後は自民党を離党、新党さきがけに所属した。以降は旧民主党、民主党、民進党、無所属(社会保障を立て直す国民会議)、立憲民主党と連続当選10回の議員歴は、民主党が一度は政権交代を果たし、玄葉氏も外務大臣や内閣府特命担当大臣、党政策調査会長などの要職を務めたものの、野党に身を置く期間が9割近くを占める。 それでも、選挙では無類の強さを発揮してきた。初めて小選挙区比例代表並立制が導入された1996年の衆院選こそ選挙区で荒井広幸氏に敗れ、比例復活当選に救われたが、次の衆院選で荒井氏とコスタリカを組む穂積良行氏を破り、次の次の衆院選で荒井氏も退けると、以降は対立候補を大差で退けてきた。もちろん玄葉氏の背後に、当時絶大な権勢を誇った岳父・佐藤栄佐久知事の存在があったことは言うまでもない。 しかし、栄佐久氏が県政汚職事件で失脚し、前々回、前回の衆院選では自民党の上杉謙太郎氏(48、2期、比例東北)に追い上げられたことからも分かるように、かつてのいかに得票数を増やすかという攻めの選挙から、近年はいかに得票数を減らさないかという守りの選挙に変わっていった。それもこれも野党議員では政府への陳情が通りにくい中、久しぶりに誕生した与党議員(上杉氏)に期待する有権者が増えていた証拠だろう。 旧福島3区では、選挙区は玄葉氏の名前を書くが、比例区は自民党に投票する、あるいは県議選や市町村議選は自民系の候補者を推すという〝ねじれ現象〟が長く続いている。原因は玄葉氏の政治家としての出発点が自民党で、佐藤栄佐久氏も同党参院議員を務めていたから。野党暮らしが長いとはいえ、支持者たちも元はと言えば自民党なのである。 そうした中で聞こえるのが「新党さきがけに行かず、自民党に留まっていれば……」と落胆する声だ。今の玄葉氏は、野党に身を置いたからこそ存在するわけで「たられば」の話をしても仕方ないのだが、根っこが自民党だけに残念がる人が多いのは理解できる。 なぜなら、仮に自民党で連続10回当選を重ねれば、主要閣僚はもちろん総理大臣に就いている可能性もあったからだ。来年還暦の玄葉氏はその若さも魅力になったはず。 ただ如何せん野党の身では、総理大臣は夢のまた夢。ならば政権交代を成し遂げるしかないが、政策の一致点が見いだせない野党はまとまる気配がない。玄葉氏が所属する立憲民主党も支持率が低迷し、野党第一党の座も危うい。選挙でも上杉氏に徐々に迫られている。 だから、支持者からは「このまま野党議員を続けていても展望が開けない」という本音が漏れるようになっていたし、それが次第に「いっそのこと、政治家として新たなステージを目指した方がいい」という期待へと変わっていったのだろう。 陳情受け付けに消極的 とはいえ、もし玄葉氏が知事選に立候補するとなった時、衆院議員としてどのような実績を残したかは冷静に見極める必要がある。 震災・原発事故当時、玄葉氏は外務大臣をはじめ民主党政権の中枢にいたが、地盤の旧3区をはじめ福島県に何をもたらしたか。玄葉氏はもともと、陳情をおねだりと評し「そういうことは避けた方がいい」と語っていた(※)。昔からの支持者も「玄葉君は若いころから(陳情の受け付けに)消極的だった」と認めている。 ※河北新報(2008年3月17日付)のインタビューで 「おねだり主義」という言葉を使っている。 上杉氏の支持者からはこんな皮肉も聞こえてくる。 「旧3区内を通る国道4号は片側1車線の個所が未だに残っている。それさえ解消できていない人が知事と言われても……」 旧3区の石川郡の政治関係者は、同郡が新2区に組み込まれたことでこんな体験をしたという。 「新2区から立候補を予定する自民党の根本匠衆院議員(72、9期)に『この道路をこうしてほしい』『あの課題を何とかしたい』とお願いしたら、その場から担当省庁に電話し即解決への道筋が示されたのです。実力者に陳情すればこんなに早く解決するのかと驚いたと同時に、根本氏も『石川郡はこんな些細な課題も積み残されているのか』と嘆いていました」 陳情を受け付けることは選挙区への我田引水ではなく、県民生活を良くするための手段だ。玄葉氏が知事になれば県民にとってプラスと感じられなければ、地元有権者の「衆院議員から知事になっても変わらないんじゃない?」との見方は払拭できないのではないか。 こうしたミクロの視点と同時にマクロの視点で言うと、東北大学大学院情報科学研究科(政治学)の河村和徳准教授は本誌昨年10月号の中でこのように語っていた。 「問題は玄葉氏が知事選に出るとなった時、自公政権と正面から交渉できるかどうかです。政権はおそらく、玄葉氏が知事選に出たら『野党系の玄葉氏とは交渉できない』とネガティブキャンペーンを展開するでしょう」 政権に近い内堀知事が、原発事故の海洋放出問題で国を一切批判しないのは周知の通り。野党系の玄葉氏が知事になった時、自公政権に言うべきことは言いつつ、福島県にとって有意義な予算や政策を引き出せるかどうかは、知事としての評価ポイントになる。 「次の展望」 結局、内堀氏は2022年の知事選で3回目の当選を果たしたが、既にこのころには玄葉氏の知事転身説は頻繁に聞かれるようになっていた。 本誌2021年12月号でもこのように書いている。 《玄葉氏をめぐっては、このまま野党議員を続けても展望がなく、衆院区割り改定で福島県が現在の5から4に減れば3区が再編対象となる可能性が高いため、「次の知事選に挑むのではないか」というウワサがまことしやかに囁かれている。 「玄葉は内堀雅雄知事の誕生に中心的役割を果たした。その内堀氏を押し退け、自分が知事選に出ることはあり得ない」(玄葉事務所)》 玄葉氏が内堀氏の知事選擁立に中心的役割を果たしたのは事実だ。内堀氏が初当選した2014年の知事選の出陣式ではこう挨拶している。 「内堀雅雄候補と私は14年来の付き合いであり、この間、内堀さんの安心感と信頼感を与える仕事ぶりを見てきた。3・11以降、内堀候補は副知事として最も適切なタイミングで最も適切な対応をとってきた。県職員、市町村長からも絶大な信頼を受けている。県民総参加で県政トップに内堀雅雄候補を推し上げ、復興を成し遂げてもらいたい」 これほど強いフレーズで支持を呼びかけた内堀氏を自ら押し退けて知事に就くことは、玄葉事務所も述べているように確かにあり得ない。 ただ、内堀氏が今期で引退するとなれば話は別だ。政治家が自らの進退を早々に第三者に告げることは考えにくいが、内堀氏と玄葉氏は共に1964年生まれの同級生であり、玄葉氏が「14年来の付き合い」と語っているように両者が親しい関係にあるなら、阿吽の呼吸で「私の次はあなた」「あなたの次は私」と意思疎通が図られても不思議ではない。 実際、玄葉氏が知事選立候補を決意したのではないかと思わせる出来事もあった。 「10増10減」で福島県の定数が4に減った 馬場雄基衆院議員 衆院小選挙区定数「10増10減」で福島県の定数が4に減ったことを受け、旧3区選出の玄葉氏は次の衆院選では新2区から立憲民主党公認で立候補する予定。しかしその前段には、旧2区を地盤とする馬場雄基衆院議員(30、1期、比例東北)との候補者調整が難航した経緯がある。 立憲民主党県連は党本部に対し、現職の両者を共に当選させる狙いから、同党では前例のないコスタリカ方式を採用するよう打診した。しかし、党本部はこれを見送り、玄葉氏を選挙区、馬場氏を比例東北ブロックの名簿1位で擁立する方針を決定したが、玄葉氏が一度はコスタリカを受け入れたことに、選挙通の間ではある憶測が広まった。 あらためてコスタリカ方式とは、同じ選挙区に候補者が2人(A氏、B氏)いた場合、A氏が選挙区、B氏が比例区で立候補したら、次の衆院選ではB氏が選挙区、A氏が比例区に交代で回る方式である。ただ、比例区は政党名での投票で、全国的な著名人でもない限り顔と名前を覚えてもらえないため、コスタリカの当事者たちは必ず、自分の名前を書いてもらえる選挙区からの立候補を強く望む。 前述・自民党の荒井広幸氏と穂積良行氏がコスタリカを組み、玄葉氏にことごとく敗れたのは、名前を書いてもらえない比例区に回っている間に、玄葉氏が顔と名前を有権者に浸透させたことが影響している。 そんなコスタリカ方式の弊害を身を持って知る玄葉氏が、馬場氏との間で受け入れたとなったから、選挙通たちは「玄葉氏は最初に選挙区から立候補し、あとは知事選に挑むので、結局、比例区から立候補する状況にならない。だからコスタリカを受け入れたのではないか」と深読みし、知事転身説がより色濃くなったのである。 当の玄葉氏はどのように考えているのか。本誌は衆院解散もあり得るとされていた6月上旬、本人に質問し、次のようなコメントを得た。 「確かに皆さんのところを回っていると『首相になれないなら知事選に』と言われます。ただ、今後どうしていくかはこれからの話。いずれにしても、まずは次の総選挙です。選挙区で勝たないと、自分にとっての『次の展望』はない。選挙区で必ず勝つ。そうでないと『次の展望』もないと思っています」 「私たちの政権が続いたり、現政権がブレる可能性があれば逆に(知事転身を)言われないのかもしれませんね。今はそういう政局じゃないから(知事選と)言われるのかな。ま、なんて言ったらいいのか。うーん、それ以上のことは触れない方がいいかもしれませんね。はい、これからしっかり考えます」 含みを持たせるような発言だが、周囲から知事転身を勧められていることは認めつつ、自ら「目指す」とは言わなかった。 新2区でも〝ねじれ現象〟 ちなみに本誌には、支持者や立憲民主党関係者から「本人から『知事を目指す』と挨拶された」「いや、本人が『目指す』と言ったことは一度もない」という話が度々伝わってくるが、真偽は定かではない。 「選挙区で必ず勝つ」と発言している通り、玄葉氏は今、新2区の中心都市である郡山市内を精力的に歩いている。さまざまなイベントや会合に顔を出し、各種団体や事業所からも「×回目の訪問を受けた」との話を頻繁に聞く。玄葉氏自身も「当選がおぼつかなかった初期の選挙時並みに選挙区回りをしている」と語っている。 玄葉氏は郡山市(旧2区)に縁がないわけではない。母校は安積高校なので同級生や先輩・後輩は大勢いる。佐藤栄佐久氏も同市出身で政界を離れて17年経つが、今も存在する支持者が玄葉氏を推すとみられる。経済人の中にも旧3区時代から支えてきた人たちが一定数いる。 同じく新2区から立候補を予定する根本匠氏はそうした状況に強い危機感を抱いており、同区は与野党の大臣経験者が直接対決する全国屈指の激戦区として注目されるのは確実だ。玄葉氏が本気で知事を目指すなら次の衆院選は負けられないが、根本氏も息子の拓氏にスムーズに地盤を引き継ぐため絶対に負けられない戦いとなる。 根本匠衆院議員 ある建設業者からはこんな本音も聞かれる。 「今までは無条件で根本先生を支持してきた。ウチの事務所にも根本先生のポスターが張ってあるしね。でも、玄葉氏が出るとなれば話は変わってくる。国政レベルで考えれば与党の根本先生を推した方が断然得策。しかし玄葉氏は、今は野党だが将来、知事になる可能性がある。いざ『玄葉知事』が誕生した時、あの時の衆院選で玄葉氏を応援しなかったとなるのは避けたいので、次の衆院選は、表向きは根本先生を支持しつつ玄葉氏への保険もかけておきたいという業者は多いと思う」 旧3区で見られる〝ねじれ現象〟が新2区でも起こりつつある。知事転身説の余波と言えよう。 あわせて読みたい 【玄葉光一郎】衆議院議員インタビュー 区割り改定に揺れる福島県内衆院議員
3自治体議員選に候補者擁立 福島市議選(定数35)は7月9日に投開票が行われ、現職29人、新人6人が当選した。46人(新人13人)が立候補したが、投票率は41・97%で過去2番目に低かった。 同市議選に合わせて、春ごろから市内でポスターやのぼりでの広報活動を強化していたのが参政党だ。 2020年設立。①子供の教育、②食と健康、環境保全、③国のまもり――の3つを重点政策に掲げる。ユーチューブ動画でファンを増やし、2022年の参院選比例代表で1議席を獲得。副代表兼事務局長の神谷宗幣氏(元吹田市議)が当選し、公職選挙法などで定められている政党要件を満たした。 コロナワクチンの効果に疑問を呈しているほか、「一部の勢力が世界を牛耳っている」とする陰謀論的な話もタブーにすることなく発信し、支持を集める。昨年の時点で党員・サポーターは10万人以上に達し、野党第一党の立憲民主党と肩を並べる。 福島市議選には元東邦銀行行員の渡辺学氏(49)を擁立し、7月1日には同市中心部のまちなか広場で街頭演説会を実施。神谷氏も駆けつけ、支持者など約120人が耳を傾けた。 3歳ぐらいの子どもを連れて会場に訪れた女性は「子どもに関する情報が欲しくて、教育や食の安全、健康などについて、ネットで調べていたところ、参政党の動画に行きついた。自分でもいろいろなことに疑問を持って調べるようになり、昨年の参院選前、党員になった」と話した。「友人から紹介され足を運んだ」という人もおり、口コミで支持者を増やしている様子もうかがえた。 本誌で連載中のジャーナリスト・畠山理仁さんはこう解説する。 「『入れたい政党がないから自分たちでつくる』というのが参政党の基本理念です。既存の政党には満足していなかった人、これまで政治との接点があまりなかった人からの支持を集めているのが特徴で、ボランティアの人たちが積極的に参加しています。街頭演説では候補者だけでなくボランティアの人たちもマイクを持って演説しています。かなり極端な主張も展開していますが、従来の政治が中心課題に据えてこなかった『食と健康』を柱にし、女性党員の比率が高いのも従来の政党とは一味違うところです。これまで社会において疎外感を覚えてきた人たち、居場所をなかなか見つけられなかった人たちが『参政党なら自由に言いたいことが言える』、『言いにくいことを言えるのは参政党だけ』と信じて集まってきているようです」 演説を終えた神谷氏に拡大戦略について尋ねたところ、「ネットでの支持者増加はひと段落し、いまは地域ごとに広まっている。予算的に多くの候補者を擁立できないので、都市部に候補者を固め比例区で当選を目指す戦略を取っている。その上で重要になるのが、全国の地方議員なんです」とあけっぴろげに語った。 福島市議選投開票の結果、渡辺氏の得票数は1548票で落選したが、最下位当選の三浦由美子氏の得票数は1617票だったので、わずか69票差だったことになる。 街頭演説途中、プラカードを掲げた男性が現れ、郡山市議選立候補予定者に対し、意見を述べるシーンがあったが、神谷氏はじめ、関係者が慌てる様子はなく、演説で「組織が拡大していく過程の中で文句を言われることも多い」と自らネタにした。ただ、今後深刻な問題に発展するケースも出てくるかもしれない。 参政党では7月30日投開票の西郷村議選、8月6日投開票の郡山市議選にも候補者を擁立。本稿を執筆している時点でこれら選挙の結果は分からないが、県内の選挙戦で姿を見る機会が増えそうだ。