【亀岡前衆院議員公選法違反問題】捜査機関の「本当の狙い」

【亀岡前衆院議員公選法違反問題】捜査機関の「本当の狙い」

 公職選挙法違反(寄付の禁止)の疑いで書類送検された前衆院議員・亀岡偉民氏(69)。送検前、次の衆院選も立候補する意向を周囲に伝えていた亀岡氏だが、政治生命は崖っぷちに立たされていると言っていい。

「再起は難しい」と落胆する支持者

亀岡前衆院議員
亀岡前衆院議員

 1月6日に開かれた福島市の新年市民交歓会は約700人が出席したが、その会場に亀岡氏の姿はなく、代わりに秘書が出席していた。

 昨年10月の衆院選(福島1区)で落選したため来賓としてひな壇に上がれないのは当然だが、これまで浪人中も大勢が集まる場には必ず顔を出していた亀岡氏。それを欠席したのは、年末に公選法違反の疑いで書類送検されたことと無関係ではない。

 昨年12月26日に配信された読売新聞オンラインはこう伝えている。

 《選挙区内の二十数団体に現金計24万円を寄付したとして、福島県警は26日、自民党の亀岡偉民・前衆院議員を公職選挙法違反(寄付の禁止)の疑いで福島地検に書類送検した。県警は起訴を求める「厳重処分」の意見を付けた。(中略)

 捜査関係者によると、亀岡氏は衆院選公示前の10月3~13日頃、福島市などで行われた神社の例大祭など六つの祭りで、町内会などの二十数団体に1万円や5000円を現金で寄付した疑い》

 六つの祭りは①飯坂八幡神社例大祭(福島市)、②湯野稲荷神社例大祭(同)、③松川提灯祭り(同)、④福島稲荷神社例大祭(同)、⑤二本松神社例大祭(二本松市)、⑥諏訪神社例大祭(同)とみられる。

 亀岡氏は書類送検の可能性が高まると、マスコミの取材に

 《「祭りの関係者に渡したお金は私個人が拠出したものではない」と話した。約20年前に文化・芸術の振興につながるよう、有志が集めた基金から出したと強調し「10年ほど前から管理していた人の遺志を引き継ぎ、届けているだけで問題はない」との認識を示した。「選挙違反になると分かっていたら絶対にしていない」》(福島民報昨年12月22日付)

 などと語った。亀岡氏が言う「基金」とは、芸術文化支援(メセナ)活動を展開し、同氏も所属する「福島メセナ協議会」が管理するお金とみられる。

 個人的に拠出したのではなく、メセナ活動の一環で渡したカネなので問題ない、というのが亀岡氏の見解だ。しかし、福島民友が昨年12月27日に配信した記事によると、

 《二本松市の祭り事務所には10月上旬の祭り初日に、亀岡元議員が1万円の入った本人名義ののし袋を持参。領収書を受け取って帰った。翌日には秘書とみられる男性が事務所を訪れ「昨日持参したのし袋を交換してほしい」と依頼。亀岡元議員名義ののし袋を回収し、持参した亀岡元議員が所属する「福島メセナ協議会」名義ののし袋と交換、領収書の宛名も変更してもらった》

 実際は個人的に拠出したのに「公選法違反になるかもしれない」とメセナ活動として渡したことに工作していたのである。

 書類送検後の亀岡氏の動静は分かっておらず、雲隠れが続いている。

 《亀岡氏の事務所には朝からスタッフが出入りし、対応に追われた。事務局によると、亀岡氏は電話でスタッフに対し「どんな感じか」と様子を気にするそぶりを見せるも、対応などの指示はなし。「本人への連絡はついたりつかなかったり」》(毎日新聞県版昨年12月27日付)

 こうした状況に《報道各社は26日午前から亀岡氏側に説明を求め、同日午後3時半ごろには、毎日新聞を含む県内の報道16社が加盟する福島県政記者クラブと社会記者クラブが連名で、亀岡氏側に説明の場を設けるか、公式な声明を発表することを求める申し入れ書を提出した。だが、亀岡氏は午後6時までに対応しなかった》(同)。

 筆者も書類送検直後と1月中旬の二度、亀岡事務所を訪問し、本人の取材機会をうかがったが「亀岡は事務所には来ない。たまに連絡がある程度。私たちも事の推移を見守るしかなくて……」(常駐の男性秘書)。

 気になることが二つある。

 一つは、昨年10月の衆院選で亀岡氏を退けた立憲民主党・金子恵美氏(59)は祭りに寄付をしていなかったのかということだ。

 「我々も『金子氏も当然寄付しているはず』とにらんだのですが」

 と話すのは、二本松市の自民党関係者である。

 「二本松神社例大祭で金子氏の祝電は披露されたが、亀岡氏の祝電は披露されなかったので『ちゃんと祝電を送ったのか』と亀岡氏に確認したのです。すると、亀岡氏は『祝電は送った。会費として1万円も払った』と言う。だから金子氏も絶対寄付したに違いないと思い、宮司に確認したが『金子氏からは一切もらっていない』とのことだった」(同)

 この関係者によると、亀岡氏は会費について「個人的に拠出しておらず、別口から出したので問題ない」と強調していたそうだが、気になる二つ目は、そのカネの出所である。

「河井事件があったのに」

 亀岡氏は自民党派閥の裏金問題で政治資金収支報告書(5年分)に計348万円の不記載・誤記載があった。その逆風下で衆院選に臨み、さらに過去2回の選挙は連続で比例復活していたため、党から比例重複立候補が認められない背水の陣を強いられた。

 「新選挙区になって、今まで寄付をもらっていた神社と今回初めて寄付をもらった神社があったことが事件発覚のきっかけになったのかもしれない」

 と推測するのは、政治学が専門の東北大学大学院情報科学研究科の河村和徳准教授である。

東北大学大学院情報科学研究科の河村和徳准教授
東北大学大学院情報科学研究科の河村和徳准教授

 「今まで寄付をもらっていた神社は、いつものことと何ら不思議に思わなかったでしょう。しかし、新しく1区に加わった二本松市や安達郡は、旧2区時代に根本匠衆院議員から寄付をもらっていなかったとすれば、亀岡氏が差し出した会費を見て『これはなんだ?』と違和感を覚えたはず。そこから通報につながった可能性もあります」(同)

 河村准教授は「そもそも自民党は河井克行・案里夫妻の大規模買収事件を経験しているのに、亀岡氏は選挙期間中に多方面に会費を払えばどうなるか想像できなかったのか」と首を傾げる。

 もっとも警察や検察の狙いは、ただ公選法違反で起訴することにとどまらないのではないかという。

 「警察・検察は派閥の裏金が(寄付の)原資になっているのではないかと疑っているのではないか。これまで多くの自民党議員が説明責任に追われてきたが、結局、裏金の使途ははっきりしていない。しかし、亀岡氏の寄付問題でその一端が明らかになるかもしれない」(同)

 要するに、亀岡氏は警察から狙い撃ちされた構図になっている、と。

 最後に河村准教授は「このまま説明責任を果たさない状態が続けば、県民から『やっぱりやましいんだ』と思われる可能性が高い。政治家として生きる道も断たれる」との見解を示した。

 実際に寄付金の原資が裏金と結びつくかどうかは分からないが、もし略式起訴され、罰金刑以上が確定した場合は原則5年間、公民権が停止され、その期間は立候補できなくなる。今年70歳になる亀岡氏の政治生命は崖っぷちに立たされていると言
っていい。

 前出・二本松の党関係者は「亀岡氏は7月に衆参同日選挙になることを見越し、そこで再起を図る意向を示していた。しかし、立候補は厳しそうですね」と肩を落とし、県北地方の古株の支持者も「もう無理。流石に誰も期待していないよ」とため息をついた。

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