2026年4月28日、本誌は、谷賢一氏(以下「谷氏」といいます。)による本誌に対する同年4月27日付「公開質問状」[1](以下「本質問状」といいます。)を受領しましたので、本日、必要と思料する範囲でご回答します。
第1 レイプ被害の存否に関する質問に対する回答
1. はじめに
2022年12月、谷氏が主宰する劇団(以下「本件劇団」といいます。)の劇団員であった大内彩加氏(以下「大内氏」といいます。)が谷氏からレイプ被害及びセクハラ被害(以下「本件性被害」と総称します。)を受けた旨を告発し、谷氏に対する損害賠償請求訴訟[2]を提起しました(以下「別件訴訟」といいます。)。
本誌が2023年2月及び7月に別件訴訟に関する記事(以下「本件記事」と総称します。)を公開したところ、2024年12月、谷氏は、本件記事が名誉毀損に該当するとして、本誌に対する損害賠償請求等訴訟[3](以下「本件訴訟」といいます。)を提起しました。本誌は全面的に争っており、本件訴訟は現在も係属中です。
本件訴訟において、本誌は、レイプ被害を含む本件性被害が存在したと考えられる旨を一貫して主張しており、訴訟当事者である谷氏も本誌の主張を理解しているはずです。しかし、本質問状においてレイプ被害の存否についての本誌の認識を改めて質問しておられるので、本誌の主張の概略を改めてご説明しつつ以下のとおり回答します。
質問1(レイプ被害の存否に関する本誌の認識)
本誌は、レイプ被害が存在したと考えるに足りる十分な根拠があると認識しており、本件訴訟においても一貫してその旨を主張しています。
まず、最重要な点として、2018年7月に「劇団の主宰者である谷氏(当時36歳の既婚男性)が相当に酔っ払った状態で深夜に11歳年下の劇団員である大内氏(当時25歳の未婚女性)の自宅に赴き、そのベッドの上で抱きついた」という事実については当事者間に争いがありません。
その上で、上記事実を含む同日の経緯(ストーリー)について、以下のとおり、谷氏と大内氏の主張が異なっています。
【谷氏の主張】
大内氏から(飲み会の後は)自宅に「泊まってってください」と言われていたので予定どおり大内氏の自宅へ赴いた。自宅では大内氏から「ベッドで一緒に寝ましょう」といわれたからベッドに入った。抱きついたのは「ネタ」に過ぎず性行為はなかった。
【大内氏の主張】
谷氏を自宅に誘ったことなどない。(飲み会の後で)酔っ払った谷氏が自宅に行きたいと強く要望し、拒絶しても聞く耳を持たず埒が明かないので渋々それを受け入れたところ、同意などしていないのにベッドの上で抱きつかれ、性行為を強要された。
このように経緯(ストーリー)に関する双方の主張が真っ向から対立している場合には、いずれのストーリーが「動かし難い事実」と整合するかという観点から事実認定を行うのが一般的です。
本件における「動かし難い事実」としては、例えば、大内氏が、谷氏が自宅に来た際に、(先に帰宅していた)別の劇団員に対して「谷さんを連れて帰ってほしかったと今切に思っているよ」というLINEを送信したことや、翌朝に同劇団員に対して「自分が汚すぎてもういやだ」や「私この先ダルカラで仕事取っても身体使ったとか思われてしまうんかな」というLINEを送信したこと等が挙げられます(本件訴訟ではこれらを含む全部で12個の「動かし難い事実」を指摘しています)。そして、これらの事実は前述の大内氏の主張と重要な点で整合する一方、谷氏の主張とは重要な点で整合しませんので、本誌は、大内氏の主張が信用できる(つまり、レイプ被害は存在した)と主張しています。
詳細については別紙1(本件訴訟の本誌準備書面(3)の抜粋)の第3(11頁~24頁)をご参照ください。「動かし難い事実」との整合という観点以外の本誌がレイプ被害が存在したと考える根拠についても別紙1に記載されています。
なお、本質問状ではセクハラ被害については触れられていませんが、本誌としては、セクハラ被害についても、客観証拠及び多数の証言(陳述書)に基づき、存在したと認識しており、その旨も本件訴訟において十分に主張しているところです。詳細については別紙1の第4(25頁〜36頁)をご参照ください。
質問8(アモキサンに係る谷氏の主張に対する本誌の認識)
別件訴訟において、谷氏は、大量の飲酒及びアモキサンの服用によって性行為は不可能であったと主張し、これをレイプ被害が存在しなかったという主張の柱の一つとしていました。しかし、本誌はいずれの主張も失当であると考えており、本件訴訟においてもその旨を既に主張しています。
アモキサンについて、当時の医薬品添付文書によれば、「性欲減退」は発症確率が0.1%未満の極めて稀な副作用です。したがって、谷氏がアモキサンを服用していたからといって直ちに「性欲減退」の症状が発生していたとはいえません。同じ発症確率のカテゴリに「性欲亢進」も含まれていることからすれば、なおさらです。むしろ、谷氏について、アモキサンの服用中にも不適切な身体接触をうかがわせる出来事があった旨の関係者の証言が存在することからすれば、谷氏には「性欲亢進」の副作用の方が生じていた可能性も否定できないところです。
詳細については別紙1の3・3・(4)(23~24頁)をご参照ください。
質問6②及び質問7(別件訴訟における大内氏による主張の訂正について)
大内氏は、駒場東大前駅付近からタクシーで自宅に戻り、そこでレイプ被害に遭ったと主張しているところ、別件訴訟の審理中にGoogle Mapsのタイムライン機能により駒場東大前駅付近を離れた時刻と自宅に到着した時刻が明らかになったことから、①駒場東大前駅での滞在時間及び②自宅での劇団員へのLINE送付とレイプ被害の前後関係についての主張を訂正しています。
谷氏は、この点を捉えて、大内氏の証言が信用できないと主張していますが、本誌はそのようには考えておりません。客観証拠に基づき記憶を再整理することは一般的であるところ大内氏の訂正もその範疇であり、性被害の被害者においては特に時系列の記憶が混濁する傾向にあることや別件訴訟の提訴時点で本件性被害から3年以上もの期間が経過していることからすれば、上記の主張の訂正はいずれもレイプ被害の存否に関する大内氏の証言の信用性を失わせるものではないと考えています。
大内氏による別件訴訟における主張の訂正の理由については、大内氏が関連訴訟[4]において提出した陳述書の第3(6~8頁)に詳述されていますので、同氏の許諾の上、別紙2として当該陳述書を掲載します。これを読めば、大内氏による主張の訂正がレイプ被害の存在を否定するものではないことがお分かりいただけるかと思います。
質問9(本件記事を現在非公開としている理由)
本誌は、本件記事に違法性はないと考えていますので、本件記事の公開を継続することも選択肢の一つです。
しかし、谷氏から本件訴訟を提起され、本件記事の適法性についての判断は裁判所に委ねられることになりましたので、保守的な対応として、裁判所の判断が出るまでの間、本件記事を非公開化することとしました。
以上のとおり、本件記事の非公開化は、いかなる意味においても本件記事の違法性を認める趣旨ではありません。このことは、本件訴訟の弁論準備期日において、本誌代理人弁護士から谷氏代理人弁護士に対しても明確に伝えているところです。
補足
本誌は、以上のとおり、レイプ被害の存否に関する質問について回答しましたが、本来的には回答する必要がないものであるとも考えています。レイプ被害の存否については本件訴訟において明確な争点となっている以上、少なくとも、訴訟提起を選択し、裁判所にその判断を委ねた原告(谷氏)は裁判の場で主張を尽くすべきであり、裁判手続とは別に公開質問の形で同一争点について被告(本誌)に回答を求めることは、紛争を不用意に拡散させることに他ならず、妥当とはいえないからです。
もっとも、谷氏は近時、レイプ被害を含む本件性被害がなかったことが裁判所に既に認定されているかのような言説を発信し、その理解を前提に本件性被害に言及した第三者に対して修正や謝罪を求めているようです。しかし、そもそも別件訴訟では、谷氏に対する大内氏の請求は棄却されたものではなく、むしろ谷氏が大内氏に対して一定の解決金を支払う内容で和解することによって終結しています[5]。
レイプ被害については、時効が成立し得ること等の事情を踏まえて、不法行為責任を追及するのは困難と判断されているのであり、その不存在が認定されたわけではありません。また、別件訴訟の裁判所による「立証に隘路がある」という評価についても、コンドーム等の直接証拠が現存していないことを含む立証上の困難があることを意味するにとどまり、レイプ被害の不存在を積極的に認定するものではありません。
また、セクハラ被害については、谷氏は自身の主宰する劇団の複数の劇団員の胸や尻を複数回にわたって触っていた事実の存在を自ら認めている上、裁判所も、大内氏の真摯な同意があったとは認め難く一定の不法行為責任が生じ得る行為であったと認定しています。
以上のとおり、谷氏の近時の発信には、別件訴訟における裁判所の判断内容について、本誌の理解とは異なる説明が含まれていると考えています。そのような状況において、本誌が本質問状に一切回答しない場合、本誌がレイプ被害ひいては本件性被害の不存在を認めたかのような誤解が生じるおそれがあると考え、今回に限り、回答することとした次第です。
以上のとおり、今回の回答は例外的な対応ですので、今後、同種の公開質問がなされた場合であっても、本誌としては原則として回答いたしません。
第2 本件傍聴記事に関する質問に対する回答
本質問状の質問のうち前記第1で回答したもの以外の質問は、いずれも本誌が2025年1月に公開した記事(以下「本件傍聴記事」といいます。)に関するものです。本件傍聴記事は、本誌の記者が別件訴訟の証人尋問を実際に傍聴し、その概要を記事にしたものです。
谷氏は、(本件記事を対象とする)本件訴訟も終盤に差し掛かった2026年4月、本件傍聴記事を対象とする新たな訴訟提起を検討中である旨を述べました。
本誌としては、本件傍聴記事についても違法性はないと考えておりますが、谷氏が提訴を予告している以上、本件傍聴記事については訴訟の場において必要に応じて認識を明らかにする所存ですので、谷氏からの公開質問に対して回答することはいたしません。
以上
[1] https://www.playnote.net/2026/04/28/public_questionnaire/
[2] 東京地方裁判所令和4年(ワ)第29876号
[3] 東京地方裁判所令和6年(ワ)第34626号
[4] 東京地方裁判所令和6年(ワ)第34625号
[5] 本誌は、本件訴訟において、谷氏が大内氏に対して和解金を支払った事実に係る当事者間の口外禁止条項の趣旨に鑑み、(本誌は第三者であって同義務の当事者ではないものの)谷氏が大内氏に対して解決金の支払を行った旨までは準備書面に明記していませんでした。しかし、その後に谷氏から提出された準備書面によれば「被告指摘のとおり、谷は大内氏和解金を支払っている。…当事者間の終結の仕方であるので守秘義務がかけてあるが、むしろきちんと責任を取るべき部分は取ったのであり、別にことさらに隠す意図もない(閲覧制限の申立ても行っていない。)」とのことであり、特段の配慮は不要とのことですので、本書のとおり記載する次第です。
別紙1PDF https://www.seikeitohoku.com/wp-content/uploads/2026/05/別紙1.pdf
別紙2PDF https://www.seikeitohoku.com/wp-content/uploads/2026/05/別紙2.pdf
別紙1と2のPDFを読み込めない方は下記をご参照ください。
別紙1


























別紙2



































