【猪苗代町・飛び地メガソーラー】自営線「未接続」を認めた事業者

本誌先月号に「猪苗代町・飛び地メガソーラーが認定取り消し」という記事を掲載した。FIT認定が失効した飛び地メガソーラーの事業者は西郷村でもメガソーラーの設置を進めているが、施工業者の経営破綻で工事が中断している。先月号では事業者からコメントを得られなかったが、東京都内にある事務所を訪問し、担当者と接触する機会を得た。

猪苗代町の林の中にある2枚の太陽光パネル

飛び地メガソーラーは、正式名称を「BluePower(ブルーパワー)猪苗代発電所」(以下、ブルーパワー猪苗代と略)という。

飛び地とは、猪苗代町に2枚のパネルを置き(種地)、そこから3㌔離れた会津若松市に大量のパネルを並べ(飛び地)、両所を自営線と呼ばれる電線でつなぐことで同一のメガソーラーと見なすことに由来する。離れてはいるが電線でつながっているので一体、という理屈だ。

異例ではあるが違法ではない設置方法(※1)は、猪苗代町の住所で再生可能エネルギー固定価格買い取り制度(FIT)の認定を受けたものの、何らかの事情で一帯にパネルを設置できなくなったため、遠く離れた会津若松市に大量のパネルを設置し、自営線でつなぐことで高値のFIT認定を生かそうとした、いわば苦肉の策なのだ。

※1=2020年からは同一と見なせない距離の飛び地メガソーラーは設置が認められていない。

ブルーパワー猪苗代は猪苗代町に置かれた2枚のパネル(種地)と会津若松市のゴルフ場跡地に設置された大量のパネル(飛び地)で構成される。

猪苗代町の林の中にある2枚の太陽光パネル

大量のパネルが設置されているゴルフ場跡地は出入口がフェンスで閉ざされ、中に入れない

だが、ブルーパワー猪苗代は昨年7月にFIT認定が失効していたことが資源エネルギー庁の失効等認定情報照会で判明している。

筆者は昨年11月、東北経済産業局エネルギー対策課の千葉雅幸課長を取材した。千葉課長は「個別の事案には答えられない」として一般的な話に終始したが、そこから見えてきたのはブルーパワー猪苗代が以下の状況に置かれている可能性だ。

①ブルーパワー猪苗代は飛び地メガソーラーとして稼働することを条件にFIT認定を受け、2024年1月に運転開始したが、その後、種地と飛び地が自営線でつながっていないことが判明。認定計画に沿った発電をしていなかったため、国から認定取り消しの行政処分を受けた。

②認定取り消しとなったメガソーラーは国に廃止届を提出し、施設をどう処理するのかを報告する義務がある。そのうえで、施設は全て撤去しなければならない。

③廃止届の提出は法律で定められているため、FIT認定無しで運転することは認められない。

つまり、ブルーパワー猪苗代は1年半稼働しただけで閉鎖、撤去を迫られているものとみられる。

ブルーパワー猪苗代を設置したのは再エネ事業などを行うブルーキャピタルマネジメント(東京都港区、原田秀雄社長。以下ブルー社と略)だが、運転開始前に売却され、現在の事業者はCEISIEC合同会社(東京都千代田区、代表社員・NSC一般社団法人、業務執行者・本間理志氏)となっている。

ブルー社は全国でメガソーラーの開発を行っていたが、設置場所に予定していたゴルフ場の運営会社が相次いで破綻したり、住民との対立で設置計画を断念したり、施工業者から工事代金未払いで提訴されるなど複数のトラブルを抱えている。決算は赤字に陥り、経営不振が叫ばれている。昨年1月には貸金会社の申し立てにより、本社ビルが東京地裁から強制競売開始決定を受けた。猪苗代町の箕輪スキー場を運営する第三セクターの親会社でもあったが撤退し、2024年冬季、同スキー場は休業した(※2)。原田社長は元地上げ屋としてネット記事に報じられたこともある。

※2=箕輪スキー場については今号77ページ「今月のわだい」でリポートするなど、本誌で過去数回にわたり取り上げている。

そんなブルー社からブルーパワー猪苗代を取得したのがCEISIECだが、同社の実態はよく分かっていない。代表社員のNSC一般社団法人はCEISIECと同じ場所に事務所を置き、代表理事も同じ本間理志氏だ。本間氏の本業は税理士で、他のメガソーラー事業にも関与していることが分かっている。

ただ、閉鎖登記簿などを丹念に見ていくと薄っすらと見えてくるものもある。CEISIECが関わる会社やメガソーラーには度々「中川企画建設」が登場するのだ。

中川企画建設(大阪市中央区、中川廣次社長)は昨年10月、大阪地裁に会社更生法の適用を申請した。負債は222億円。経営破綻を報じた民間信用調査会社の記事には、メガソーラーの新規工事で売上高を大きく伸ばした一方、工事費の回収や施設の転売、権利移転でトラブルが生じていたと書かれている。複数の違法森林伐採が見つかって工事が中断し、その後FIT認定が失効した千葉県鴨川市のメガソーラーや、工事現場で土砂災害を起こした鹿児島県姶良市のメガソーラーなど、表面上に名前は出てこないが、それぞれの事業者の関連先としても取り沙汰されている。

筆者はこれまで、ブルー社、CEISIEC、中川企画建設に公式ホームページの問い合わせフォームから取材を申し込んできたが、一度も返答が寄せられたことはなかった。一方で、遠方を理由にどこも訪問したことがなかったため、1月中旬、都内にあるブルー社とCEISIECの事務所をアポなしで訪ねてみた。

「ブルー社とは係争中」

ブルー社は赤坂にビルを構えていた。ビルの正面から見える半地下には高級外車が並ぶ。受付は電話が一つだけ置かれ、そこから担当部署にかけて用件を伝えるようになっている。受付から先は扉で閉ざされ、室内の様子は一切うかがえない。

受話器を取り、総務部にかけると女性が出た。「御社が設置に関わった福島県猪苗代町のメガソーラーについてお尋ねしたい」と伝えると「取材は一切お断りしている」と電話を切られてしまった。

CEISIECは千代田区丸の内のビルの20階が本店住所になっているが、そのビルを訪ねると20階にCEISIECの看板はなかった。同社の関連会社が銀座のビルに集積しているので、そちらを訪ねてみると、そのビルの8階にCEISIECが入居していることが分かった。

エレベーターで8階まで上がる。目の前にガラス張りの事務所が現れた。CEISIECの看板もある。インターホンで取材に来た旨を伝えると男性が出てきた。「私はCEISIECの代理で色々な仕事をしている。担当者は打ち合わせ中。用件は必ず伝える」と言った。

それから1、2時間ほどしてCEISIECアセットマネジメント合同会社の岡林亜希良氏からメールが届いた。同社はブルーパワー猪苗代と西郷村で工事が中断している「ブルーパワー福島西郷」(※後述)の資産管理業務を請け負っているとメールにはある。やりとりはこのアドレスでお願いしたいというので、質問を投げ掛けたところ、期日までに返答が寄せられた。以下、岡林氏とのやりとりを紹介する。

――ブルーパワー猪苗代の設備IDの認定が無効になった原因は。

「猪苗代町の設備と会津若松市の設備が自営線でつながっていないまま売電を開始していたためです」

――飛び地メガソーラーは自営線でつなぐ必要があるが、それがつながっておらず、飛び地メガソーラーの要件を満たしていないため認定無効になった、と?

「ご理解の通りです」

――自営線でつながっていなかったのはなぜか。ブルーパワー猪苗代はもともとブルー社が設置したが、同社が自営線でつなげず、CEISIECはその事実を知らずに瑕疵物件を買わされたということか。

「自営線でつながっていないことは把握しており、自営線を接続する工事は進めていました。現在、ブルーキャピタルマネジメントとの間で係争中につき、売電開始に至った経緯の詳細はコメントを控えさせていただきたい」

――東北経済産業局エネルギー対策課は、FIT認定が無効になったメガソーラーは稼働できず、施設は全て撤去してもらうと話している。

「これまでの買い取り価格を前提とした設計を見直し、他の方法で事業継続を検討しています」

――CEISIECの閉鎖登記簿の役員欄には中川企画建設の名前が出てくる。同社はブルーパワー猪苗代に関与しているのか。

「中川企画建設とは設備運営保守契約は結んでいるが、施工契約は結んでいません。ブルーキャピタルマネジメントが他社に施工を依頼し、弊社は完成後の施設を引き継いで運営管理をしています」

――CEISIECと中川企画建設の間に資本関係はあるのか。

「ありません」

――では、CEISIECの出資者は誰なのか。

「NSC一般社団法人です」

中川企画建設との関係

メール(文書)によるやりとりは相手の回答に疑問を感じた時、すぐに再質問、再々質問ができないのがもどかしい。岡林氏の回答で疑問に思った点は次の通り。

①ブルーパワー猪苗代は運転開始から認定無効になるまでの間、東北電力にFIT認定に基づく売電をしていたと思われるが、自営線でつながっていない状態、いわば認定計画とは異なる形で売電していたということは、その間の売電収入は返還義務が生じるのではないか。

②自営線の接続工事が終わるまでは運転開始を延期できたはずだが、延期しなかったのはなぜか。

③自営線の接続工事は、本来はブルーキャピタルマネジメントが行うはずだったのに、CEISIECが行う羽目になったのか。それが原因で訴訟になったのか。

④東北経済産業局エネルギー対策課は「撤去」としているのに、CEISIECは「他の方法で事業継続を検討中」と答えており、大きな乖離が見られる。

⑤CEISIECの複数の関連会社の役員に中川企画建設取締役の中川真太郎が就いていたが、同社の経営破綻後、中川氏が相次いで役員を退任している。同社と深い人的関係があったということではないか。

⑥CEISIECが関与するメガソーラーの多くには大手総合リース会社のJA三井リース(東京都中央区)が債権者として関わっている。同社の有価証券報告書を見ると、投資目的でCEISIECの有価証券1億円を所有していることが分かった。同社が出資者の1社であることは間違いなさそう。

不明な点はあらためて確認することにしたい。

工事中断が続く西郷村の現場

ブルーパワー福島西郷の敷地内に設置された調整池

CEISIECは西郷村でも「ブルーパワー福島西郷」を工事中で、計画では2024年度中に稼働させるはずだったが、施工していた中川企画建設の経営破綻により昨年10月から工事が中断している。

1月上旬、西郷村の工事現場を訪ねたが、雪深くて近付けなかった。調整池などを見ていると、三重ナンバーの白いバンに乗った男性がやって来た。男性は所属を明かさなかったが、施工者から頼まれて定期的にパトロールをしているという。

「工事再開時期は分からないが、完成は目指すと思います」(男性)

前出・CEISIECアセットマネジメントの岡林氏にブルーパワー福島西郷についても質問した。

――中断しているブルーパワー福島西郷の工事はどうなるのか。

「工事再開の時期は未定だが、現時点では2026年春頃を目指しています」

――工事中断の原因は。

「施工を委託した中川企画建設の経営破綻です。工事再開には新たな施工者を選定する必要があります」

――運転開始はいつ頃?

「2026年夏頃の運転開始を目指しているが、正式には未定です」

ブルーパワー福島西郷はFIT認定失効制度上、2023年3月末が運転を開始しなければならない期限とされる。間もなく3年が経過するが、認定失効を免れるために必要な手続きを行ったものとみられる。

こちらは中川企画建設の経営破綻をモロに受けた格好。まだまだ疑問点が多いCEISIECのメガソーラー。引き続き取材を進めていく。

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