昨年10月30日未明、天栄村のリゾート施設「エンゼルフォレスト白河高原」(旧称:レジーナの森)のコテージ1棟が全焼し、宿泊していた20代女性が亡くなった。火災から2カ月以上経ち年も明けたが、昨年12月時点で火災原因に関する消防と警察の公式見解は「調査中」。マスコミも「警察は事件と事故の両面で捜査を続けている」との報道を更新していない。一方で同施設は消防や警察から「火災原因は事故の可能性が高い」と報告を受けたとし、「薪ストーブをはじめとする設備は火災原因とは認められないとのこと」と独自に発表。火災当日に宿泊し施設の対応に不満を持った客は、判然としない原因に戸惑っている。(小池航)
事業者エンゼルフォレストの顧客対応に不満の声


エンゼルフォレスト白河高原は、天栄村の羽鳥湖畔南部に位置するリゾート施設だ。リゾート専業の不動産業として創業した㈱エンゼルグループ(新潟県湯沢町)のグループ企業である㈱エンゼルホテルズ(東京都千代田区)が運営する。大自然の中で愛犬と過ごせるハイグレードな宿泊施設が強みで、天栄村と同種の施設が全国のリゾート地にある。
福島県民には旧称「レジーナの森」の方がなじみ深い。不動産の東京建物㈱(東京都中央区)がバブル期に人造湖や別荘などを造り、リゾート開発をしたが、2016年にエンゼルグループに譲渡した。
宿泊客1人が亡くなったコテージ火災はどこで起こったのか。図のガーデンテラスの1棟だ。宿泊者によると、施設はプロパンガスや薪ストーブを備える。ウッドデッキがあり、屋外では防火措置をしたうえで焚き火やバーベキューができる敷地があるという。
火災の初期の様子については、昨年10月31日付の福島民報が焼け跡の写真付きで詳しい。
コテージ全焼1遺体 天栄 宿泊の女性連絡取れず
30日午前1時45分ごろ、天栄村羽鳥字高戸屋のエンゼルフォレスト白河高原の木造平屋コテージ「ガーデンテラス」から火を出し、コテージと乗用車1台を全焼した。焼け跡から女性の遺体が発見された。須賀川署は、連絡が取れていない神奈川県の○さん(27)【本誌注:原文では実名】の可能性があるとみて身元の特定を急いでいる。夫の30代男性は左手甲と額にやけどを負った。
同署によると、夫婦は神奈川県からの宿泊客で、29日から施設を利用していた。現場近くの宿泊客から「コテージが燃えている」と通報があった。火は約1時間後に消し止められ、約53平方㍍を焼いた。乗用車に燃え移ったとみている。コテージ内にはまきストーブがあり、同署が詳しい出火原因を調べている
遺体の身元が宿泊者だと判明した続報が11月8日に出た。
遺体の身元判明 天栄のコテージ火災
天栄村羽鳥字高土屋(原文ママ)のエンゼルフォレスト白河高原のコテージで10月30日に起きた火災で、須賀川署は7日、焼け跡から見つかった遺体は宿泊客の神奈川県、○さん(27)【本誌注:原文では実名】だったと発表した。
司法解剖した結果、死因は急性一酸化炭素中毒だった。同署によると、○さんは当時、夫と2人で宿泊していた。事件と事故の両面で捜査を続けている
これ以降、コテージ火災に関する記事を本誌は確認できていない。
火災原因は「調査中」
火災には、天栄村を管轄する須賀川地方広域消防組合の9隊(車両9台)が出動し、火災覚知から約1時間後の午前2時49分に鎮火した。最寄りの消防署は湯本分遣所(地図参照)。グーグルマップの試算上は、同分遣所からエンゼルフォレスト白河高原まで最速で17分かかる。火災原因を調査する消防本部予防課によると、昨年12月17日時点で原因は「調査中」だという。火災の実況見分をした須賀川警察署も原因については同様に「調査中」とする。いずれも、それ以上のことは公表できないという。
一方、エンゼルフォレスト白河高原は、火災発生から11日後の11月10日に独自に火災原因を発表した。
先日お知らせいたしました当施設「グランピングガーデンテラス」における火災につきまして、その後の状況をご報告申し上げます。
消防および警察による現場検証の結果、今回の火災は事故である可能性が高いとの報告を受けました。なお、薪ストーブをはじめとする設備につきましては、火災の原因とは認められないとのことです。
また、この火災により、ご宿泊されていたお客様がお亡くなりになられました。ご遺族の皆様には謹んで哀悼の意を表しますとともに、心よりお悔やみ申し上げます。お客様ならびに近隣の皆様には、多大なるご心配とご迷惑をおかけいたしましたこと、重ねて深くお詫び申し上げます。
当社からは、以上をもちまして本件に関する最終的なご報告とさせていただきます。今後とも、安全管理の徹底に努めてまいりますので、何卒ご理解を賜りますようお願い申し上げます
原因は公的な調査機関が言うように「調査中」なのか。それとも施設が発表したように「設備以外の要因による事故の可能性が高い」と言ってよいのか。「原因は調査中」とする判然としない報道と、施設の断定調の見解でモヤモヤしているのが、エンゼルフォレスト白河高原のリピーター客、大和田兼次さん(仮名・50代)だ。首都圏在住で、火災があった日は現場近くのコテージに家族(愛犬も)と共に宿泊した。
「『叫び声が聞こえるので外の様子を見てきてほしい』と妻に起こされました。健康管理機能付きの腕時計を見ると、午前1時18分を示していた記憶があります。外に出ると別のコテージの窓からジェット噴射のように炎が外に吹き出ていました。全身に浴びた熱波に命の危険を感じ、着の身着のままで逃げました。寝ていた犬たちを起こして連れ出し、引火するといけないので自家用車を移動させました。消防車両が来るので障害になってはいけないと、また移動させ、施設のスタッフにも連絡しなきゃとまた走って何往復もしました。1時間半で4㌔くらいは走り回っていたのではないでしょうか」
犬はどこへ行った

叫び声の主は、取り乱していた男性だったと後になって気づいた。亡くなった女性の夫だ。
「自分のことに精いっぱいで何もできませんでした。亡くなった方とは数時間前に挨拶を交わしていただけにショック。ご夫婦は小型犬と一緒に泊まっていたはずですが、火が落ち着いた後になっても見掛けたり鳴き声を聞いたりはしませんでした。ニュースでは、犬については言及がなかったので、行方について考え込んでしまいます」(同)
大和田さんは、「サイレンや警告音、施設からの避難誘導が一切なかった」と施設の避難態勢に不満を述べる。案内もない状態で、寒空に放置され凍える思いをしたという。霜が降りる気温の中を裸足にサンダルという素足に近い状態で走り回ったので靴擦れができた。
コテージを離れ、フロント付近で待機していると、別の宿泊者から「案内がないので帰る」との声が聞こえるほど状況は混乱していたという。
警察・消防から事情聴取のため何度も呼ばれ、すべて終わったのは朝4時ごろだった。施設からの案内・安否確認・連絡はなかったという。
宿泊していた部屋は、火災コテージと間取りが同じだったため火災の調査に使われた。規制線が張られ消防隊員と警察官が5人ほど出入りしていたため、自分たちの宿泊先にもかかわらず休めなかった。「施設側からは代替室の案内もなかった」という。自らフロントに行き依頼したところ、案内された部屋はランクが落ちたが、問題は清掃前の部屋だったことだ。
再度フロントに申し出ると、別の部屋に案内された。ようやく落ち着けたのは午前4時半ごろ、火災鎮火から約1時間半が経っていた。部屋のランクが下がったことと、火災の影響でほとほと疲れ、本来の休息環境が提供されなかったことを鑑みて代替部屋と同じ安い料金を請求されることを期待したが、高い料金のままだったので釈然としなかったという。従業員の間で伝達事項に行き違いがあったらしく、交渉の結果、全額返金を受けた。
グーグルでエンゼルフォレスト白河高原を検索し、レビューを閲覧すると、大和田さんと同じように自分が目撃した火災を記録し、施設の対応に不満を述べる投稿を見つけた。それによると、午前1時半に、「ゴーゴーとまるで改造車が走る様な音がし」、外を見ると数軒先で火災が発生していたという。
「大きく燃えてその後車も爆発し火柱が7、8メートル立ちました。気温は0度くらいの中、皆さん外にでて大騒ぎでした。車に荷物を運び避難の準備をしました。山の中なので消防に通報してから消防車両到着まで30分以上かかり恐怖でいっぱいでした。フロントに近いコテージだったが宿のスタッフも1、2人しか来ず、なんの誘導もなかった」
この投稿者は、施設側が宿泊客に連絡の取れる電話番号を聞いていたので、「まずは近くの宿泊者に安否確認やゆっくり休めなかったことへの労いのような言葉をかけるべきです」と書いた。宿泊施設の責任の有無は置いておくとしても、一晩眠れなかった客になんのアクションもないことを残念に思ったという。
施設側の避難誘導は適切だったのか。質問しようとエンゼルフォレスト白河高原に電話すると、責任者が不在というので質問状をしたため問い合わせフォームで送った。その日のうちに、「HPに掲載されている情報が全てで、記載の通り、プライバシーの関係からそれ以上はお答え出来ません」とだけメールで回答が届いた。
「HPに掲載されている情報」とは、前出のホームページに掲載された火災についてのお知らせ。実質、「設備以外の要因による事故の可能性が高い」との見解以外は中身が乏しい。
「施設の設備に瑕疵はない」
火災現場のすぐそばに泊まった大和田さんは後日、施設の火災対応を問い合わせたという。すると、内部の記録を基に教えてくれた。
それによると、午前1時45分に現場近隣の宿泊客から宿直室(宿直者1人)に連絡があり、119番通報。同50分ごろ、宿直者が消火器を持って初期消火。午前2時ごろには、宿直者が館内放送で宿泊客へ避難を促し社員への緊急連絡を開始。同じく2時ごろ、天栄村の火災放送でコテージの火事を知った村内居住の社員2人が出社した。同10分には宿直者が現場付近の宿泊客にハンドマイクで駐車場への避難誘導を開始。同40分には社員2人が新たに出社し客への対応に当たった。最後に午前4時ごろ、責任者が到着し警察や消防の現場検証に対応したという。
さらに同施設が言うには、「警察や消防から施設の設備には出火原因となる瑕疵は認められず、宿泊客の誘導も含めて運営事業者の安全管理体制に法令違反や管理上の過失について特段の指摘はなかった」という。
大和田さんは反論する。
「午前1時50分に宿直者が消火器を持って初期消火したと言いますが、炎は写真のように燃え盛っていました。消火器で消せるはずがなく、適切な消火活動ではない」
最後に大和田さんは次のことを求めた。
「宿泊客が直火を使う施設がある以上、火災は他の宿泊施設よりも起こりやすいものとして最悪の事態を想定した対策を準備してほしかった。あの日は、それほど風は強くありませんでした。もし、強風が吹いていたら周囲の木や枯葉、はたまた私が宿泊していたコテージの軒先やウッドデッキに延焼したのではないかと考えています。エンゼルフォレスト白河高原はその人気ぶりから、土地を造成してグランピングができるコテージを増やしているそうです。ちょうど私が泊まった時も、工事業者がそのための作業をしていました。お客さんをたくさん招くのに応じて、安全もより高めてほしい」


























