(2022年10月号)
郡山市の認可保育所「ヒューマニティー保育園」が委託費を不正受給していたとして、新規園児受け入れ半年間停止の行政処分を受けた。不正受領していた金額は約660万円に上り、市は返還を求めている。
〝投書攻撃〟を受けていた運営法人
ヒューマニティー保育園を運営しているのは一般社団法人ヒューマニティー幼保学園(瓜生麻美代表理事)。子どもの能力を開花させる教育法として話題になった「ヨコミネ式」を導入して人気を集めており、認可外保育所や学習塾なども運営する。
私立の認可保育所には市から委託費(運営費用)が支払われているが、同保育所では、非常勤の所長を常勤勤務として市に報告。加算分の受給要件を満たしていないにもかかわらず、2019年9月から21年3月にかけて、委託費659万8280円を不正に受給していた。
さらに昨年12月22日に行われた定期施設監査において、在籍していない保育士1人を「勤務していた」と偽って市に報告。虚偽の出勤簿や履歴書などを作成して提出していた。併せて同法人が運営する認可外保育施設などで使用する中古車2台(計65万円)を、同保育所の委託費で購入していたことも判明。市は同保育所への9月・10月分委託費から不正分を差し引く考え。
市は「昨年12月の定期施設監査の書類が偽造されていた」と外部から通報を受け、1月に特別監査を実施。この間、書類精査や関係者の聴取を行ってきた。市の聴き取りに対し、同保育所の関係者は「当初から不正の認識はあった。運営会社の指示を受けて行った」(NHKニュース)と語っていたというから、組織ぐるみだった可能性が高い。
同法人に関しては、匿名投書が連続で送られてきたとして、本誌2013年11月号で取り上げたことがある。内容はいずれも「保護者に説明がないまま新保育園建設が進められている」という不満を綴ったもので、「保育士の人数など、法律を無視した運営がなされている」など運営の怪しさを指摘する記述もあった。
当時の本誌取材に対し、園長代理を務めていた瓜生氏は「保護者にはきちんと説明しており、法律違反の点もない」、「(同法人の運営が)まるで不安要素だらけのように書かれているのは悪意を感じますね」と話し、「投書は外部から見たイメージだけで意図的に悪く書かれている。これ以上続くようであれば、差出人に対し法的手段を取ることも考えています」と息巻いていた。
同市保育課の担当者も「(当時、同法人が運営していたのは認可外保育所のみだったので)投書で苦情を言われても市としては対応しようがない」というスタンスだった。
だが結果的に、保育士の数を偽っていると指摘していた〝投書攻撃〟は事実だったことになる。
不正受給の件について、あらためて同法人に問い合わせたが、担当者はどの質問にも「市に報告し、この間報道されたことがすべてです」と答えるのみだった。記者が「2013年の取材当時も実は内部で不正が行われていたのではないか」と尋ねると「あの時点では間違いなく不正行為はしていなかった」と述べた。市は同法人が返金の意思を示していることから刑事告訴しない方針。不正受給の動機は分からずじまいだ。
9月下旬、同保育所を訪ねると静まり返っていた。新規園児受け入れ停止期間は来年3月末まで。保護者の反応は聞けなかったが、悪質な不正受給の実態を知って、退園する動きが出てきても不思議ではない。