復活した二本松駅前盆踊り

復活した二本松駅前盆踊り

 二本松市では2001年まで、駅前商店会主催で駅前盆踊りが行われていたが、時代の流れとともに参加者が減り、同年を最後に開催されなくなった。ただ、今年7月27日に二本松商工会議所青年部主催で「にほんまつの夏祭り 駅前盆踊り」が開催され、23年ぶりに駅前盆踊りが〝復活〟した。

周辺飲食店への波及効果も上々

二本松駅前盆踊りの様子
盆踊りの様子

 「今年から、また駅前盆踊りが行われるようになったんだよ」

 二本松市民からそんな話を聞いた際、記者は勘違いしていた。コロナ禍で休止していたものが再開されたのだとばかり思っていた。つまり、4、5年ぶりに開催されたということか、と思っていたのだ。ただ、よく聞くとそうではないらしい。

 かつて、二本松駅前では駅前商店会の主催で盆踊り大会が行われていた。ただ、1990年代後半には、それまで2日間にかけて行われていたものが1日になるなど規模が縮小された。最終的には、2001年を最後に開催されなくなった。時代の流れとともに参加者が減ったことなどが要因という。

 その後、震災・原発事故が起こり、同市は浪江町を中心に多数の避難者を受け入れた。そうした中で、二本松市の駅周辺の住民(商店主)らと、浪江町民の交流をかねて、駅前で盆踊りが行われたことはあったが、定期イベントとしては20年以上実施されなかった。

 それが今年、二本松商工会議所青年部主催で、駅前盆踊りが〝復活〟したのだ。もっとも、以前とは運営母体が違うので、新しいイベントとして実施されたというのが正確な表現になろう。

 同イベントの事務局を担った二本松商工会議所の担当者はこう話す。

 「もともと、青年部では霞ヶ城公園を会場に、盆踊りではなく、夏祭りを実施していました。ただ、街の賑わい創出のために駅前でイベントを開催したい、ということで、今年から駅前に場所を移して、『第1回にほんまつの夏祭り 駅前盆踊り』と、リニューアルして開催することになったのです」

 これまで霞ヶ城公園で開催されていた夏祭りの後継企画として、駅前に舞台を移し、盆踊りが行われたということ。盆踊りは、従来のものから、現代風にアレンジしたものなど、幅広い年代に楽しんでもらえるようにしたという。

 来場者は主催者発表で約7000人で、「うちわを3500用意したが、全部なくなった。そういった点からしても、想定していた以上に人が来たと言っていいでしょう」(ある関係者)。

課題は駐車場

盆踊り以外の催しも多数あった
盆踊り以外の催しも多数あった

 一方で、別の関係者はこう証言する。

 「正直、駐車場や会場設営などを考えたら、霞ヶ城公園で開催した方がラクです。ただ、賑わい創出や周辺への波及効果などを考えるならば、やはり駅前の方がいい。霞ヶ城公園では、そこでのイベントを楽しんだ後、市内の飲食店などに行くというのは考えにくいですからね。(今回のイベントが)『第1回』と銘打っている以上、来年以降も開催するのでしょう」

 青年部は1年で役員が変わるが、「今年の開催を踏まえ、どんな課題があったか、どうすればより人が集まり楽しんでもらえるか等々の引き継ぎをして、来年の開催に生かしていくということになると思います」(前出・事務局=二本松商工会議所の担当者)という。

 駅前の賑わい、周辺の飲食店への波及効果などはどうだったのか。

 「アンケート等を取ったわけではありませんが、会場周辺で知り合いの飲食店主らに話を聞いた限りでは、『売上が増えた』、『波及効果はあった』という声が多かったですね」(同)

 本誌が聞いたところ、昼の飲食店は「周辺に屋台(出店)が出た関係もあるのでしょうが、思ったほどではなかった」という。

 ただ、夜の飲食店は客が増えたようだ。

 「私は事情があって、その日は店を開けられなかったんですが、同じ建物内の人(店主)に聞いたら、『結構入ったよ。もったいなかったね』と言われました」(駅東側の飲食店主)

 「爆発的に増えたというわけではありませんが、普段よりお客さんが多かったのは間違いありません。やはり、夜の飲食店はコロナ禍でだいぶダメージを受けましたから、そういったイベントが開催され、人出が増えるのはありがたいですね」(駅前の飲食店主)

 一方で、駅前では駐車場が限られるという問題もある。クルマを止められるところはあまりなく、唯一、市民交流センターが近くにあるくらい。同施設は約120台が駐車可能だが、「市民交流センターの駐車場はずっと満車だった」(近隣の商店主)という。
 もっとも、当日は市役所や霞ヶ城公園からシャトルバスを運行し、特に問題などは発生しなかったようだ。それをより周知し、円滑に輸送するというのが来年以降の課題になろう。

 こうしたイベントは、立ち上げに知恵や労力を要する。その点では例年のイベントからの一新を決めた関係者らのエネルギーは素晴らしいが、それを今後長く続けていく、イベントを育てていく、という作業も、立ち上げと同等か、あるいはそれ以上に難しい作業になる。来年以降、より認知され、長く定着するイベントになるような工夫と同時に、周辺への波及効果もアップすれば成功事例と言えるだろう。

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