不安材料多い相馬玉野メガソーラー計画

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不安材料多い相馬玉野メガソーラー計画(2021年8月号)

(2021年8月号)

 相馬市玉野地区で、県内最大級のメガソーラー計画が進められている。計画地は主に山林のため、発電所建設(太陽光パネル設置)に当たっては大規模な林地開発を伴う。そのため、近隣住民や下流域の住民からは、「大規模開発により、山の保水力が失われてしまう。近年は、各地で洪水・土砂災害などが頻発しており、周辺・下流域でそうした災害が起きるのではないか」といった不安の声が聞かれる。さらに、同事業用地の所有者は、2021年7月に発生した静岡県熱海市の土砂災害とも関係しているという。

【静岡県熱海市】土砂災害との意外な接点

 相馬市玉野地区のメガソーラー計画について、本誌が最初に報じたのは2017年4月号「相馬市玉野地区に浮上したメガソーラー計画 災害・水資源枯渇を懸念する一部住民」という記事だった。

 当時、地元住民は本誌取材にこう話していた。

 「メガソーラーの計画地は、いまから25年ほど前のバブルのころにゴルフ場計画が持ち上がったところです。当時、地元の地権者がゴルフ場設置を計画していた会社に土地を売り、開発が進められようとしていたが、地元農家からは反対の声が上がり、そうこうしているうちにバブルが崩壊してゴルフ場計画はなくなりました。その後は同用地の所有者が何度か変わり、その度にさまざまな計画が浮上しましたが、結局、どれも実現しませんでした」

 そうした中で浮上したのがメガソーラー計画だった。以下は、本誌2017年4月号記事より。

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 地元住民によると、メガソーラーの計画地は、同地区スゲカリ地内にある山林。面積は約230㌶と、かなり広大な敷地である。

 不動産登記簿謄本を確認すると、同所はもともとは東京在住の個人が所有していたが、2002年に東京国税局の差押を経て、2011年8月、同国税局の公売によって麦島善光氏が取得している。

 麦島氏はグループ企業10社(※当時)からなるZENホールディングス(東京都千代田区)のオーナーのようだが、同社のHPを見ると「2015年3月の株主総会で、麦島善光はZENグループのすべての役職から退くことになった」旨の社報が出ていた。

 その後、麦島氏は2016年9月に「相馬伊達太陽光発電所」、「相馬玉野地区活性化機構」という2つの合同会社を立ち上げ、その代表社員に就いている。いずれも、本社は東京都千代田区だが、前出の地元住民によると、「同社は最近、玉野地区の空き家を借り、現地事務所を設けました。ただ、人が常駐しているわけではないようです」とのこと。

 両社の商業登記簿謄本を見ると、資本金はいずれも100万円。役員(業務執行社員)は両社とも代表社員の麦島氏のほか、櫻井修氏が就いている。事業目的は、相馬伊達太陽光発電所が発電プラント(風力発電、太陽光発電、燃料電池、バイオマス発電、その他の自然エネルギー発電)に関する事前調査、計画、設計、関連資材調達・販売、土木工事、建設、運転、保守点検事業、売電事業など、相馬玉野地区活性化機構が地域活性化事業、地域再生事業、雇用促進を図るための事業など。

 なお、代表社員である麦島氏の住所は静岡県熱海市になっている。これは前述・ZENホールディングスの研修センターと同じ住所だから、同グループの役職をすべて辞めたといっても、同グループオーナーであることには違いはないようだ。

 要するに、麦島氏はこれまで率いてきたグループ企業の経営を後進に委ね、自身は新会社を立ち上げてメガソーラー事業に乗り出したということだろう。

 ちなみに、ZENグループは、建設業や住宅販売、マンション・賃貸住宅・貸店舗などの管理、フィットネスクラブの運営などを行っている会社がメーンで、太陽光発電所の実績があるかは定かでない。少なくとも、同グループのホームページを見る限りでは、そうした実績は見当たらない。

 3月上旬、東京の相馬伊達太陽光発電所本社に電話をすると、電話口の男性は「相馬伊達太陽光発電所」ではなく、別の名称を名乗った。そこで、記者が「そちらは相馬伊達太陽光発電所ではないのですか」と聞くと、「相馬伊達太陽光発電所もこちらです」と答えた。どうやら、同じグループ内の別の事業所との兼用事務所のようだ。

 記者が「相馬市玉野地区でメガソーラーを計画していると聞いたのだが詳細を教えてもらえないか」と尋ねると、「まだ、マスコミに公表できる段階ではないので。ただ、近々発表できるようになると思いますので、そういう状況になりましたら、こちらからご連絡します」との返答だった。そこで、本誌の電話番号と記者の名前を伝え電話を切った。

 このため、その時点では詳しい計画概要などを聞くことはできなかったが、前出の地元住民によると、昨年(2016年)11月に開かれた住民説明会では、①山林を開発して太陽光発電所にすること、②敷地面積は約230㌶だが、実際に開発する(太陽光パネルを設置する)のは約130㌶になること、③発電量は60~80メ  ガ㍗になること、④発電した電力は伊達市の変電所に送ること、⑤2018年から工事をスタートし、2021年の発電開始を目指していること、⑥発電期間は20年間を想定していること――等々の説明があったという。運営会社の名称が「相馬伊達」とされているのは④が理由と思われる。

 (中略)それからほどなくして、3月15日からは同計画の開発に当たっての環境影響評価方法書の縦覧が始まった。これを受け、地元紙などでも、同計画の存在が報じられることになった。

 環境影響評価方法書を見ると、ある程度の計画概要が見えてくる。同方法書によると、事業実施区域の面積は230・44㌶で、このうち、太陽光パネルを設置するのは約162・52㌶。残りは残置森林が約46・78㌶、防災調整池が12・52㌶、管理用道路が8・62㌶。発電規模は約8万3000㌔㍗(83メ  ガ㍗)だが、「今後の詳細な事業計画検討で変動する可能性がある」とされている。

 前出の地元住民の話では、昨年11月の説明会の際、事業者からは「太陽光パネルが設置されるのは約130㌶になる」旨の説明があったとのことだが、今回示された環境影響評価方法書では太陽光パネルを設置するのは約162㌶となっており、当初説明より規模が拡大していることが分かる。

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地元住民は賛否両論

 当初説明や環境影響評価方法書などでは、「2018年から工事をスタートし、2021年の発電開始を目指している」とされていたが、現時点では発電はおろか、工事もスタートしていない。それは、事業主体、計画に何度も変更があったためだが、その詳細は後述する。

 当時の地元住民への説明会では、同計画におおむね賛同の声が上がったという。その理由の1つとして、事業者(相馬伊達太陽光発電所)から地元住民に対して「用地を拡大したいため、用地周辺の地権者に協力(賃借)をお願いしたい」との申し出があったことが挙げられよう。

 対象地の多くは農地だが、地区内では耕作放棄地が増えている。原発事故後、同地区の酪農家が「原発事故さえなかったら」といった書き置きを残して自殺したが、ただでさえ農家の高齢化といった問題があった中、原発事故により営農環境はさらに厳しくなっていた。近年は相馬福島道路が全線開通し、同地区にインターチェンジが開設されるなど、利便性が向上した一方、2017年3月には玉野小・中学校がともに閉校するなど、地域の活力が失われていたのは間違いない。

 IC開設、小・中学校閉校は、最初にメガソーラー計画の話が出た後のことだが、いずれにしても、営農環境は厳しい状況になっている中、耕作せず(できず)に遊ばせている農地を借りてくれる(地代が得られる)のであればありがたいといった感じだったのだろう。

 一方で、山林(森林)には、山地災害の防止、洪水の緩和、水資源の涵養といった機能があるが、大規模開発に伴い、土砂災害や水資源枯渇などの事態を招くのではないか、との理由から反対意見も聞かれた。

広範囲の説明会開催

説明会の様子

 その後、2018年1月に地元住民を対象とした説明会が開催された。事業者はその席に〝ビジネスパートナー〟を連れてきた。当時、説明会に参加した地元住民はこう話していた。

 「事業者(相馬伊達太陽光発電所の担当者)は外国人の〝ビジネスパートナー〟を連れてきて、一緒に(メガソーラー事業を)やる、と。ちなみに、事業者はその〝ビジネスパートナー〟のことを『共同事業主』というフレーズを使って紹介していました」

 その共同事業主はTOTAL(トタル)という会社。説明会当日、出席者に配られた資料によると、《TOTAL(トタル)社は、世界有数の多国籍エネルギー企業で、総従業員数9万8000人、世界130カ国で事業を展開している。子会社および関連会社を併せた規模は、いわゆる国際石油メジャーの中で世界第4位》と紹介されていた。

 当時、本誌が調べたところ、同社はフランス・パリに本社があり、2016年の営業実績は、日本円で売上高約17兆9640億円、営業利益約1兆1468億円、当期純利益約9960億円となっていた。

 実際に、相馬市玉野地区での事業に携わるのは、同社グループの日本支社のようで、同社グループでは石川県七尾市(27メガ㍗)、岩手県宮古市(25メガ㍗)などで太陽光発電事業を展開しており、ほかにも日本国内での事業展開を計画していた。

 「説明会には、同社の担当者2人が出席し、1人はフランス人、もう1人は日本人でした。ただ、説明会では相馬伊達太陽光発電所とTOTALのどちらが開発行為を行うのか、具体的な運営はどういった形になるのか等々の詳細は明かされませんでした」(前出の地元住民)

 もっとも、この地元住民によると、「TOTALの関係者が来たのはその時だけだった」という。

 「いつの間にか、同社との共同事業は頓挫したようです」(同)

 その後は、仙台市のクラスターゲートという会社が同計画に携わるようになり、行政手続きや周辺住民への根回しなどの矢面に立つようになった。

 一方で、そのころになると、玉野地区の住民だけでなく、市街地などそのほかの地区の住民も、同計画に関心を寄せるようになった。計画地周辺は玉野川が流れ、宇田川と合流して市街地方面へと流れていく。つまり、下流域に住む人たちが不安を抱くようになったということだ。これは、令和元年東日本台風による被害も関係していよう。この水害で市内の1000戸以上が浸水被害を受け、上流で山林が伐採されると、同様の大雨などの際、さらに大きな被害になるのではないか、として同計画に関心を寄せるようになったのだ。

 こうした事情もあり、2020年1月には、玉野地区だけでなく、ほかの地区の住民も交えた説明会が開催された。これを主催したのは「相馬市民の会」という住民団体で、同会はもともと、宇田川上流で産業廃棄物処分場の計画があり、それを阻止するために結成された住民団体。処分場計画は同会の反対運動によって白紙撤回されたが、宇田川上流では幾度となくそうした計画が浮上しており、またいつ同様の計画が持ち上がるか分からない、といった判断から存続しているようだ。

 その説明会で、事業者側として対応に当たったのがクラスターゲートの担当者だった。

 「説明会では、安全面に関する質問が相次ぎましたが、事業者からはまともな回答が得られなかった。そのため、『またこうした説明会の場を設けて、きちんと説明してほしい』ということになりました」(説明会に出席した地元住民)

2回目の広範囲説明会

 ただその後、新型コロナウイルスの感染拡大により、なかなかそうした場を設ける機会がなかった。

 ようやく、2回目の説明会が開催されたのは2021年7月15日だった。

 その席で説明に当たったのは、クラスターゲートの担当者ではなく、「GSSGソーラージャパンホールディングス2」という会社の担当者だった。同社はアメリカ・コロラド州に拠点を置く太陽光発電事業者「GSSG Solar」の日本法人。

 当日配布された資料によると、事業区域面積は約122㌶で、うち森林面積が約117㌶、開発行為にかかる森林面積が約82㌶、発電容量は約82メガ㍗、最大出力60メガ㍗、太陽光パネル設置枚数16万6964枚、開発行為の期間は2023年12月まで、となっている。事業区域は、1号から7号までの各ブロックに分かれており、主な部分は相馬福島道路と国道115号の交差地点の北側。太陽光パネルが設置されたエリアはフェンスで覆い、その外側の周囲30㍍は残置森林とするほか、各ブロックに調節池(調整池)を設置するという。この内容で行政手続きを進めていることも明かされた。

 こうした説明の後、質疑応答の時間が設けられたのだが、住民側からは「2019年の台風では設計基準とされている雨量を超えたが、この計画で本当に大丈夫なのか」、「土砂災害などが起きた場合、事業者はどこまで補償できるのか」、「事業終了後、ソーラーパネルは撤去するとしても、切り開かれた山林の保水力が戻るわけではないので、調整池は残さなければならないと思うが、誰が維持・管理するのか」等々、やはり安全面に関する質問が相次いだ。

 これに対し、事業者からは「問題のないように事業を進める」、「保険に入り、災害の際はそれで対応する」といった回答があったが、それで住民側の理解が得られたとは到底思えない。

 一方で、こんな指摘もあった。

 「最初にこの計画を立ち上げ、近隣住民にあいさつ・説明をして回っていたのは、土地所有者の麦島氏だった。その後、TOTALという会社が共同事業主として参加することになった。そうかと思ったら、今度はクラスターゲートという会社が入ってきて、前回の説明会は同社の担当者が受け答えをしていた。今日の説明会も、クラスターゲートの担当者が来るものだと思っていたが、また別の会社(GSSGソーラージャパン)が来た。これから開発行為が行われ、何十年と発電事業が続く中、こんなにコロコロ事業者が変わるようでは、とてもじゃないが信用できない」

 この指摘に対するGSSG担当者の回答を整理すると、以下のようなものだった。

 ○クラスターゲートは、GSSGの事業パートナーで、当初、GSSGには行政手続きや設計・開発などを自社で手がけるだけの体制が整っていなかったため、クラスターゲートに委託していた。

 ○ただ、この間、国内他所で実績を積み重ねる中、そうした体制が整ってきたので、GSSG主体で事業を進めることになった。クラスターゲートには後方支援をしてもらう。

 前段で本誌2017年4月号記事の一部を引用し、その中で直接的な事業者となる合同会社「相馬伊達太陽光発電所」の詳細について紹介した。説明会後、あらためて同社の商業登記簿を確認したところ、資本金や事業目的などに変化はなかったが、役員については大幅に変更があった。

 当初は、同社を立ち上げた麦島氏が代表社員、麦島氏のサポート役だった櫻井修氏が業務執行社員の役員2人体制だったが、両氏とも2018年12月28日付で「退社」となった。その代わりに同日付で、クラスターゲート職務執行者の大堀稔氏が代表社員となった。ただ、その大堀氏(クラスターゲート)も、2019年3月5日付で「退任」となり、同日付でGSSGソーラージャパンホールディングス2職務執行者のブルス・ダリントン氏が代表社員となり、同年8月14日付でGSSGソーラージャパンホールディングス2職務執行者のエドワーズ・ヤノ・ケヴィン・ギャレス氏に代表社員が変更となった。同日付で本店所在地も東京都千代田区から港区に移転となっている。

 GSSG担当者の説明と、相馬伊達太陽光発電所の商業登記簿を確認した限りでは、事業地の大部分の地権者であり、同計画を立案して国に固定価格買取制度の申請をしたのは麦島氏だが、GSSGに事業譲渡・事業地貸与した格好のようだ。事業主体はGSSGで、実際の運営は相馬伊達太陽光発電所が行い、林地開発許可申請も同社が行った。

 なお、説明会には事業地の地元地権者も参加しており、「玉野地区の振興のことも考えてほしい」旨の発言をし、安全面の不安を訴える住民と、ちょっとした言い合いになる場面もあった。メガソーラーが地区の振興につながるかどうかはともかく、そうして険悪な雰囲気になった中、同説明会を主催した相馬市民の会の〝長老〟的立場の人が「市民同士がいがみ合うのは、この説明会の意図するところではない」とたしなめた。同計画はそうした構図を生んでしまったという側面もある。

 いずれにしても、同説明会は住民側が納得する形では終わらず、その場で回答できなかったことは後に文書で相馬市民の会に回答すること、再度そうした説明会の場を設けることなどを約束して終了となった。

住民団体が申入書提出

 その4日後の7月19日、住民団体「相馬市民有志の会」(※説明会を主催した「相馬市民の会」とは別団体)が県に対して、「同事業には安全面で問題があるため、林地開発許可を行わないよう求める」とする申入書を提出した。

 同会の代表者は、原発事故の国・東電の責任を問う集団訴訟「生業訴訟」の原告団長でもある中島孝さん。

 中島さんに話を聞いた。

 「2019年の台風では、同計画の設計基準とされている雨量を超えたほか、事業終了後の調整池の問題もあります。というのは、最初の説明会のとき、事業者は発電期間は20年間で、その後、メンテナンスを行い、さらに20年間、最大40年間を見込んでいるとのことでしたが、事業期間が終わり、パネルを撤退した時点では、山は丸裸のまんまです。一度剥いてしまった山林が保水力を取り戻すには数十年、場合によっては100年かかると言われており、事業終了後も調整池は残さなければならない。事業期間中は定期的にえん堤の修繕・堆積土浚渫などを行うそうだが、事業終了後は誰がそれをやるのか。国の制度では、2022年度から事業期間中に売電収入から外部積み立てし、それを撤去費用に充てることになっていますが、調整池の保全管理費分も含むかどうかは不透明です。そういった面で、とにかく問題点が多過ぎる。将来的に、負の遺産になるかもしれないものは、地元住民として到底容認できないというのが申入書の趣旨です」

 ただ、実はそうした申入書提出の前、ちょうど説明会が開催された7月15日に林地開発許可が下りたのだという。

 中島さんら関係者は「県は同日に説明会が開催されることを認識していた。にもかかわらず、その結果を見ずに、それと同じ日に許可を出すのは何か裏があるのではないか」と疑いの目を向けているようだ。

熱海土砂災害との関係

 一方で、申入書には「静岡県熱海市の豪雨による土砂崩落の土地所有者は、合同会社・相馬伊達太陽光発電所の創立者であり、玉野のメガソーラーを計画した麦島善光氏である」といった記述もある。

 7月3日、静岡県熱海市で豪雨による大規模な土砂災害が発生した。その崩落現場の土地の所有者が相馬伊達太陽光発電所の創立者であり、玉野のメガソーラーを計画した麦島氏なのだという。

 前段で本誌2017年4月号記事の一部を引用したが、その中に「(相馬伊達太陽光発電所の)代表社員である麦島氏の住所は静岡県熱海市になっている。これは前述・ZENホールディングスの研修センターと同じ住所」との記述がある。

 まさに、その場所が崩落現場周辺ということになる。

 『週刊新潮』(7月29日号)の特集「『殺人盛り土』2人のワル」という記事によると――

 ○土砂災害の原因は、逢初川上流の盛り土であることが徐々に分かってきたこと。

 ○急な斜面に産廃を含む土砂が遺棄され、今回の豪雨で一気に崩落したこと。

 ○そこからすると、天災ではなく人災の疑いが濃厚であること。

 ○その所有者が麦島氏であること。

 ○麦島氏は過去に脱税で逮捕され、懲役2年の実刑判決を受けたこと。

 ――等々が伝えられている。

 現時点では崩落原因とされる盛り土に違法性があったかどうかを断定するところまでは至っていないが、ほかにもネットメディアなどで、麦島氏の責任を問う記事が出ている。

 相馬市民有志の会では、前述した安全面の問題に加え、「そうした問題人物の手掛ける事業に行政として、開発許可を出すのが妥当なのか」といった意味で、申入書を提出したのだという。

 「県にはできる範囲で構わないので、回答してほしいと伝えてきましたが、(本誌取材時の7月26日時点で)まだ回答は来ていません」(中島さん)

 あらためて、県森林保全課に確認したところ、まず、県としては手続き上、要件を満たしていれば開発許可を出すことになる、といったスタンス。では、その「要件」の中に、「地元住民の理解」は含まれるのかということだが、その点については次のような説明だった。

 「地権者の同意は必要ですが、それ以外の地元住民の同意までは求めていません。ただ、絶対条件ではないものの、事業者には地元住民にきちんと説明するように、ということは伝えています」

 一方で、静岡県熱海市の土砂災害との関係についてだが、県森林保全課では、熱海市の土地所有者と、玉野地区のメガソーラー計画の事業地所有者が同一人物であることは認識していた。

 そこで、記者が「すでに開発許可は出ているそうだが、そういう人(問題人物と思しき人)が関わっているということで、開発許可を再考するということにはならないのか」と尋ねると、こう明かした。

 「許可申請者は別(GSSGの傘下のようになった相馬伊達太陽光発電所)ですし、(熱海市の件と同一人物が)所有者に名を連ねているのは承知していますが、それだけ、と言ったら何ですが……。そういうこと(開発許可を再考すること)にはならないと思います」

 確かに、事業主体は麦島氏から事業譲渡を受けた格好のGSSGだが、麦島氏が計画地のかなりの部分の土地を所有しているのは事実。同事業に関して、麦島氏がどの程度関わり、どれだけの権利・権限を残しているのかは不明だが、こうした構図を見ると、地元住民が不安に思うのは当然だろう。

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