セクハラの舞台となった陸上自衛隊郡山駐屯地【五ノ井里奈さん】

セクハラの舞台となった陸自郡山

(2022年10月号)

 陸上自衛隊郡山駐屯地に所属時、複数の男性隊員から性被害を受けていた元自衛官の五ノ井里奈さん(22)が8月31日、第三者委員会による公正な調査を求める要望書と約10万人の署名簿を防衛省に提出した。マスコミが一斉に報じ、大きな注目を集めることに。自衛隊の女性差別・パワハラ体質にメスが入るか。

「市民感覚」が試される検察審査会

 性被害の後に退職した五ノ井さんは、6月からネットを通じて被害を訴えていた。経緯は、本誌8月号「陸自郡山駐屯地で『集団セクハラ』 元自衛官の女性が決意の実名告発」で詳述している。

 五ノ井さんは、自衛隊内の捜査権限を持つ警務隊に強制わいせつ事件として被害届を出した。男性隊員3人が書類送検され、検察庁は今年5月31日付で嫌疑不十分で不起訴にしていた。河北新報9月1日付によると、五ノ井さんは検察官から「首を押さえる行為に関する証言はあったが、わいせつの証言は得られなかった」と説明されたという。加害者は、暴行は認めたが、五ノ井さんが尊厳を奪われたと最も問題視している性被害については認めなかったということだ。

 五ノ井さんは7月27日に都内で開いた記者会見で、「中隊内で隠ぺいや口裏合わせが行われていると、内部の隊員から聞いたので、ちゃんと第三者委員会を立ち上げ、公正な再調査をしてほしい」(『AERAdot.』7月27日配信)と組織を守るためにもみ消しが行われていることを指摘している。自浄作用は期待できない。

 世論を受けてトップが動いた。9月6日には、浜田靖一防衛相が全自衛隊を対象とした「特別防衛監察」の実施を表明。担当する防衛監察本部は防衛相直属の機関で、独立した立場で調査・報告を行う。

 郡山検察審査会は、検察が加害者3人を不起訴にしたことを審査員過半数の意見を得て「不当」と議決。議決書では、五ノ井さんの供述が唯一の証拠と指摘したうえで、不起訴の場合「被害者に泣き寝入りを強いる以上、被害者供述の信用性の判断をより慎重に行う必要がある」(福島民報9月10日付)とした。審査員11人は管内の有権者から選ばれる。県民の良識が少しでも反映される形。検察は再捜査し、起訴の可否を決める。不起訴の場合、審査会は強制的に起訴すべきかどうかを決めるが、決定には11人中8人以上の賛成が必要で、より市民感覚が試される。

 五ノ井さんは宮城県東松島市出身。小学校4年生の時に東日本大震災を経験し、救援活動する女性自衛官に憧れた。中学では柔道で宮城県大会を制した実力者だ。泣き寝入りせず被害を実名告発したことからも心身ともに強靭で、自衛隊が理想とする人物だろう。それが組織に潰された。

 女性差別とパワハラ体質は自衛隊全体の問題ではあるが、集団セクハラが常習化していた部隊を受け入れている県民の関心事は、「郡山駐屯地に固有の問題はなかったのか」ということだ。まずは、政府が早急に五ノ井さんの被害の救済を。真相解明は、刑事裁判という公開の場で行われるべきだ。

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