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  • 【鏡石町】木賊正男町長インタビュー(2024.2)

    【鏡石町】木賊正男町長インタビュー(2024.2)

     1956年11月生まれ。須賀川高卒。鏡石町総務課長、教育課長兼公民館長、税務町民課長などを歴任。2022年5月の町長選で無投票初当選。 人口減少対策の受け皿をつくっていきたい。  ――昨年5月から新型コロナウイルスが5類感染症に移行されました。  「5類移行に伴い、町内の商工業者の経済活動にも明るい兆しが見え、制限されていた各種イベントもコロナ禍以前と同じ形で開催することができたので、賑わいが戻ってきたと実感しています」  ――昨年10月には健康福祉センター「ほがらかん」がオープンしました。  「町内の保健福祉施設が老朽化していたことに加え、類似施設の集約や、多目的に使用できる施設にすることを目的に整備を進めてきました。コンセプトの1つに『健康な笑顔が集う場所』があり、安心・安全なまちづくりに向けた福祉避難所としての機能も併せ持った施設となっています。オープンから3カ月でおよそ6000人の方々にご利用いただいています。館内には未就学児を対象とした子育て支援施設もあるため、子育て世代の多くの方々にご利用いただいています。  今後は各種イベント等での利用に加え、先日発生した能登半島地震のような非常時への備えとして、屋外街路灯の下に電源コンセントを設置してあるので、車で避難された方の電源確保やマンホールトイレ、シャワー室の設置など、災害時における一時避難所としての役割が見込まれます。近年は自然災害が多発しており、令和元年東日本台風の際、本町では成田地区の浸水被害があり、そうした経験も踏まえて利活用していく考えです」  ――今後の抱負。  「今年は駅東土地区画整理事業に注力したいと思っており、昨年第3工区の町の保留地の分譲が完了しました。個人所有の土地についても交渉を進めており、少しでも多くの方々に家を建てて住んでいただきたいと考えています。人口問題研究所が発表した2050年の推計によれば、鏡石町は現在の人口から約3000人減の9333人との結果でした。他自治体に比べて本町は人口減少率が低く、年少人口の比率が高いほか、高齢化率も低いので、今後を見据えて人口減少対策の受け皿をつくっていきたいと考えています。  遊水地整備事業についても、用地買収や宅地・建物の補償交渉が具体化しており、その中でも集団移転を希望する方と個人で移転する方がいますから、各々の希望に沿う形で地権者の皆様に寄り添って取り組んでいきます。  就任以来3つのS(スマイル・スピード・シンプル)を基本に町政執行に当たってきましたが、それには町の持っている情報を速やかに発信し、町民の皆様からの信頼を得ることが不可欠です。今後も町民の皆様の信頼を裏切ることなく取り組んでいきます」

  • 【鏡石町議会】が遊水地特別委設置を否決

    【鏡石町議会】が遊水地特別委設置を否決

     令和元年東日本台風に伴う水害を受け、国は「阿武隈川緊急治水対策プロジェクト」を進めており、その一環として、鏡石町、玉川村、矢吹町で阿武隈川遊水地整備事業が進められている。  総面積は約350㌶、貯水量は1500万から2000万立方㍍。用地は全面買収する。対象地の9割ほどが農地、1割弱が宅地。対象エリアの住民は移転を余儀なくされる。計約150戸が対象で、内訳は鏡石町と玉川村がそれぞれ60〜70戸、矢吹町が約20戸。  住民からしたら、もうそこに住めないだけでなく、営農ができなくなるわけだから、「補償はどのくらいなのか」、「暮らしや生業はどうなるのか」といった不安が渦巻いている。  そのため、鏡石町議会では「鏡石町成田地区遊水地整備事業調査特別委員会」を立ち上げ、同事業の調査・研究を行ってきた。  本誌では何度か同委員会を取材(傍聴)し、今年7月号に「鏡石町遊水地特別委が国・県に意見書提出」という記事を掲載した。  同町議の任期は9月3日までで、8月22日告示、27日投開票の日程で議員選挙が行われた。そのため、任期満了前、最後となる6月定例会で一区切りとし、意見書案をまとめて本会議に提出、採択された。これをもって同特別委は解散となった、  意見書の主な内容は、①遊水地事業区域の住民の高台移転のための支援、②移転に伴い生じる各種法令・規制の見直しや手続きの簡素化、③阿武隈川本川及び県管理支川の鈴川も含めた治水対策(特に、阿武隈川本川の河道掘削及び堤防強化)、④二度と水害(洪水被害・浸水被害)のないまちづくり・地域づくりを行うための支援、⑤遊水地事業関連施設の整備、⑥遊水地整備後の土地の有効利用のための支援など。  これを内閣総理大臣、国土交通大臣、衆議院議長、参議院議長、県知事、県議会議長に提出した。  一方で、同特別委の委員長を務めた吉田孝司議員は、「改選後も特別委を再度立ち上げ、引き続き、調査・研究していきたい」と述べていた。吉田議員は、遊水地の対象地区である成田地区出身で、自身の自宅も令和元年東日本台風で浸水被害を受けたほか、遊水地の対象エリアにもなっている。  実際、吉田議員は改選後の9月定例会で特別委設置案を提案した。しかし、賛成4、反対7で否決された。理由は、玉川村や矢吹町ではそうした動きがないこと、前任期の議会で一定の役割を終えたこと、あとは国に任せるべき、というものだったようだ。  ただ、ある関係者はこんな見解を示した。  「吉田議員は対象地区に自宅があり、住民の思いが分かるから、この問題に熱心に取り組んでいたが、吉田議員が中心となって国や県に要望するなど、目立った動きをしたことをよく思わない議員もいたように感じる。もう1つは、今改選では12人中6人が新人で、そのうちの5人が反対だった。よく分かっていない可能性もある。そういった理由から改選後の議会での特別委設置が否決されたのではないか」  改選前の特別委では、国(福島河川国道事務所)の担当者を呼び、直接見解を聞いたこともあった。そういった意味でも意義のあるものだったと言えるが、前出の関係者が語ったように、議会内の勢力争いが原因で否決されたのだとしたら、議員の存在意義が問われかねない。 あわせて読みたい 鏡石町遊水地特別委が国・県に意見書提出 2023年7月号 【鏡石町】遊水地で発生するポツンと一軒家 2023年4月号

  • 【古川文雄】鏡石町議長の引退に驚き

    【古川文雄】鏡石町議長の引退に驚き

     鏡石町の古川文雄議長(3期)が8月22日告示、27日投開票の町議選に立候補せず引退するという。古川議長はまだ50歳と若く、町内では「将来の町長候補」とも言われている。さらに、6月には県町村議会議長会長に選任されたばかり。それだけに、町内では驚きの声が出ている。 町内では「次期町長候補」との呼び声  本誌7月号の情報ファインダーで鏡石町議選の情勢について伝えた。   ×  ×  ×  × 鏡石町議選で定数割れの懸念 任期満了に伴う鏡石町議選が8月22日告示、27日投開票の日程で行われるが、ある町民によると定員割れの可能性が出ているという。 「地元紙のマメタイムス(6月22日付)に『定員割れの可能性大』と報じられたのです。それを見て、そんな情勢になっているのかと驚きました」 『マメタイムス』(6月22日付)は「鏡石町議選告示まで2カ月 現職6人・新人2人が立候補の意向 動き鈍く定員割れの可能性大」との見出しで情勢を報じた。 それによると、定数12(欠員1)に対して、同日時点で立候補を予定しているのは現職6人と新人2人の計8人。残る現職5人は2人が引退濃厚で、もう1人も引退の意向。2人は態度を決めかねているという。情勢によっては、複数新人擁立の動きもあるようだが、「低調で定員割れの可能性も指摘されている」と伝えている。 ちなみに、本誌では込山靖子議員が渡辺定己議員(現在は辞職)から不適切な言動を受けたと訴え、昨年8月に政治倫理審査請求書を提出した件について、2月号「鏡石町議会政倫審が元議員の『不適正行為』を一部認定」という記事のほか、何度かその動きを報じてきた。 その中で、《込山議員は周囲に「もうウンザリ」と明かしているというから、今夏の町議選には立候補しない可能性もある》と書いた。 ただ、前述のマメタイムス記事では「(込山議員は)引退を撤回し、出馬の意向を固めた」と伝えられている。 同町6月定例会では、定員割れの可能性があることを見越してか、議員発議で定数を12から10に削減する条例改正案が提出された。ただ、採決の結果、賛成2、反対8の賛成少数で否決された。 告示まではまだ1カ月以上あるため、いまの情勢を踏まえて候補者が出てくる可能性もあり、動きが注目される。   ×  ×  ×  × 同記事では触れられなかったが、『マメタイムス』(6月22日付)によると現職議員の進退の詳細は以下の通り。 立候補の意向▽円谷寛議員、小林政次議員、橋本喜一議員、吉田孝司議員、角田真美議員、込山靖子議員 引退▽今泉文克議員、古川文雄議長 引退の意向▽菊地洋議員 流動的、進退を決めかねている▽畑幸一副議長、大河原正雄議員 この中で、気になるのが「引退」と報じられた古川文雄議長だ。 「古川議長はまだ50歳で年齢的にも若く、町内の一部関係者の間では『次期町長候補』とも言われています。それだけに、引退と報じられたのは意外というか、かなり驚きました」(ある町民) 古川議長は、岩瀬地方町村議会議長会長を務め、今年6月5日に開かれた県町村議会議長会の総会で会長に選任されたばかり。 その際、町内ではこんな声が出ていた。 「岩瀬地方町村議会議長会は、鏡石町と天栄村の2町村だけだから、両町村の議長が交互に会長に就く。県議長会長も各地区持ち回りだが、岩瀬地方の2町村交互に比べると、回ってくる確率は格段に下がる。そんな中で、今回、古川議長にいろいろな順番がすべて当たったことになる。そういう意味では『持っている』と言うことができるし、今後、本当に町長選に出るのかどうかは分からないが、もし出るとしたらその肩書きや、そこで得られた人脈などは間違いなくプラスになるだろう」 そんなことが囁かれていただけに、8月の町議選に立候補しないとの報道には驚いたというのだ。 ある議員は「町長選に向けて地ならしに入ったのでは」との見解を示した。 ただ、現職・木賊正男町長の任期は2026年6月までで、残り3年近くある。3年後の町長選を見据えて、今回の町議選を見送ったとは考えにくい。むしろ、次の町長選まで議員(議長)を続け、県町村議長会長の肩書きで動いた方が有利に働くと思われるのだが……。 ちなみに、前回(2019年8月)の町議選では524票を獲得、4番目の得票で当選している。それ以前の町議選でも上位で当選しており、選挙で苦労しているわけではない。そもそも町議選で苦労していたら、最初から「町長候補」とは言われないだろう。 古川議長に聞く 古川議長(「議会だより」より)  一方で、「自身が経営する会社で何かあったのではないか」との見方もある。 古川議長は左官工事業「村上工業所」(同町旭町)のオーナーで、自身が経営する会社で何かあった、あるいは経営に専念するためではないか、という見方だ。 民間信用調査会社によると、同社の直近5年の売上高、当期純利益は別表の通り。 村上工業所の業績 決算期売上高当期純利益2018年1億2100万円12万円2019年1億4400万円1195万円2020年1億3300万円△434万円2021年1億2500万円1622万円2022年1億3000万円566万円※決算期は3月。△はマイナス  2020年は434万円の損失を計上したが、それ以外は利益を確保しており、売上高も一定している。これを見る限りでは、会社の経営に専念するためではないか、という見方は説得力に欠ける。 こうして見ても、「次期町長候補」と言われた古川議長の引退は意外だが、実際のところはどうなのか。古川議長に話を聞いた。 ――古川議長が引退するとの報道を見たが。 「それは事実です」 ――辞めた後はどんなことを考えているのか。 「私もまだ50歳ですからね。いろいろと考えていますよ」 ――県町村議会議長会長に就いたばかりだが。 「ちょうど3カ月ですかね(※6月5日の総会で県町村議会議長会長に選任され、鏡石町議員の任期は9月3日まで)。任期満了後は自動失職の形になると思います」 ――町内では「次期町長候補」との見方もあり、それだけに今回の引退には驚きの声が出ている。 「私が(町長候補)ですか? まあ、さっきも言いましたけど、いろいろ考えているところです」 引退は事実とのことだが、今後については明言しなかった。「いろいろ考えている」とは何を指すのかも気になるところだ。

  • 鏡石町遊水地特別委が国・県に意見書提出

    鏡石町遊水地特別委が国・県に意見書提出

     令和元年東日本台風に伴う水害を受け、国は「阿武隈川緊急治水対策プロジェクト」を進めており、その一環として、鏡石町、玉川村、矢吹町で阿武隈川遊水地整備事業が進められている。 総面積は約350㌶、貯水量は1500万から2000万立方㍍。用地は全面買収し、対象地の9割ほどが農地、1割弱が宅地となっている。それらの住民は移転を余儀なくされる。計約150戸が対象で、内訳は鏡石町と玉川村が60〜70戸、矢吹町が約20戸。 住民からしたら、もうそこに住めないだけでなく、営農ができなくなるわけだから、「補償はどのくらいなのか」、「暮らしや生業はどうなるのか」といった不安が渦巻いている。 そのため、鏡石町議会では「鏡石町成田地区遊水地整備事業調査特別委員会」を立ち上げ、同事業の調査・研究を行ってきた。 本誌では今年4月号「遊水地で発生する〝ポツンと1軒家〟 取り残される世帯が議会に『陳情』」という記事をはじめ、何度か同特別委の調査・研究過程を紹介してきた。 同特別委は、6月14日に開かれた6月定例会本会議に「阿武隈川流域の治水対策を国と県に求める意見書」を提出し、採択された。これをもって、同特別委は解散となった、 意見書の主な内容(国・県への要望内容)は次の通り。 ①遊水地事業区域の住民の高台移転のための支援。 ②移転に伴い生じる各種法令・規制の見直しや手続きの簡素化。 ③阿武隈川本川及び県管理支川の鈴川も含めた治水対策(特に、阿武隈川本川の河道掘削及び堤防強化) ④二度と水害(洪水被害・浸水被害)のないまちづくり・地域づくりを行うための支援。 ⑤遊水地事業関連施設の整備。 ⑥遊水地整備後の土地の有効利用のための支援。 これを内閣総理大臣、国土交通大臣、衆議院議長、参議院議長、県知事、県議会議長に提出する。 同特別委の委員長を務めた吉田孝司議員は、遊水地の対象地区である成田地区出身で、自宅が令和元年東日本台風で浸水被害を受けたほか、遊水地の対象エリアにもなっている。そのため、誰よりも熱心にこの問題に取り組んできた自負があるようだ。 遊水地事業エリアの成田地区  同特別委での調査・研究を終えた吉田議員に話を聞いた。 「遊水地の問題は、完成するまでは土地買収や高台移転などの課題があり、完成後は平常時にそれをいかに有効活用するかなど、まだまだ課題が山積している。これで終わりではなく、まだ序の口にすぎない。また、最初から遊水地ありきではなく、まずは阿武隈川全川の河道掘削と堤防強化が大事で、それを踏まえての遊水地整備となるべきである。河道掘削と堤防強化を必ず先行させるべく、改選後も特別委員会を再度立ち上げ、引き続き、木賊正男町長を支えて、国としっかり対峙していきたい」 同町議の任期は9月3日までで、8月22日告示、27日投開票の日程で議員選挙が行われる。そのため、任期満了前の最後となる6月定例会で一区切りとし、改選後も特別委を再度立ち上げ、引き続き、調査・研究していきたいとの見解だ。 意見書にまとめた要望内容を実現させるまで、町・議会として、できることをしていく必要があろう。 あわせて読みたい 【鏡石町】遊水地で発生するポツンと一軒家

  • 【鏡石町】遊水地で発生するポツンと一軒家

     国が鏡石町、玉川村、矢吹町で進めている阿武隈川遊水地計画。対象地域の住民は全面移転を余儀なくされるため、さまざまな不安が渦巻く。このため、鏡石町議会では「鏡石町成田地区遊水地整備事業調査特別委員会」を立ち上げ、同事業の調査・研究を行っている。今年2月には同計画対象地域の隣接地の住民から議会に陳情書が提出され、同委員会で審議された。 取り残される世帯が議会に「陳情」  令和元年東日本台風被害を受け、国は「阿武隈川緊急治水対策プロジェクト」を進めており、遊水地計画はその一環として整備されるもの。鏡石町、玉川村、矢吹町の3町村にまたがり、総面積は約350㌶、貯水量は1500万から2000万立方㍍。用地は全面買収し、対象地の9割ほどが農地、1割弱が宅地となっている。それらの住民は移転を余儀なくされる。計約150戸が対象で、内訳は鏡石町と玉川村が60〜70戸、矢吹町が約20戸。 住民からしたら、もうそこに住めないだけでなく、営農ができなくなるわけだから、「補償はどのくらいなのか」、「暮らしや生業はどうなるのか」といった不安がある。 中には、以前の本誌取材に「補償だけして『あとは自分で生活再建・営農再開してください』という形では納得できない。もし、そうなったら〝抵抗〟(立ち退き拒否)することも考えなければならない」と話す人もいたほど。 そのため、鏡石町議会では遊水地計画の調査・研究をしたり、国や町執行部に提言をしていくことを目的に、昨年6月に「鏡石町成田地区遊水地整備事業調査特別委員会」を立ち上げた。委員は議長を除く全議員で、委員長には計画地の成田地区に住所がある吉田孝司議員が就いた。 3月10日に開かれた同委員会では、2月16日に計画対象区域の隣接地の住民から議会に出された陳情書について審議された。 陳情者は滝口孝行さんで、陳情内容はこうだ。 ○滝口さんの自宅は阿武隈川の支流である鈴川と諏訪池川が合流する地点の付近(内側)にある。洪水の危険性があるにもかかわらず、遊水地の事業範囲から除外されており、遊水池整備後も水害の心配が残る。 ○遊水地ができれば、自宅の目の前に高い塀(堤防=計画では最大6㍍)ができ、これまでの美しい田園風景が損なわれる。そのような場所で生活しなければならないのは大きなストレスになる。 こうした事情から、事業範囲を変更してほしい、すなわち「自分のところも計画地に加えるなどの対応をしてほしい」というのが陳情の趣旨である。 写真は同委員会の資料に本誌が注釈を加えたもの。  遊水地の対象地域のうち、真ん中よりやや上の左側が住宅密集地となっており、そこから100㍍ほど離れたところに滝口さんの自宅がある。これまでは「集落からちょっと離れた家」だったが、遊水地内の住宅が全面移転すると、〝ポツンと一軒家〟になってしまう。 加えて、遊水地は周囲堤で囲われるため、自宅の目の前に大きな壁ができることになる。「これまでの田園風景から一変し、そんなところで生活していたら、頭がおかしくなってしまいそう」というのが滝口さんの思いだ。 しかも、滝口さんの自宅は阿武隈川の支流である鈴川と諏訪池川が合流する地点の付近(内側)にあり、常に水害の危険がある。 国は追加の考えナシ 鏡石町成田地区  3月10日の委員会に参考人として出席した滝口さんの説明によると、令和元年東日本台風時の被害は「床下浸水だった」とのこと。 ただ、議員からは「『昭和61(1986)年8・5水害』の時は床下浸水だったところが、今回の水害ではほとんどが床上浸水だった。水害の規模はどんどん大きくなっているから、(滝口さんの自宅が)今回は床下浸水だったからといって、今後も安全とは限らない」として、滝口さんを救済すべきとの意見が出た。 遊水地の計画地である成田地区に自宅があり、同委員会委員長の吉田議員によると、「成田地区では以前からこの件が問題になっていた」という。すなわち、「滝口さんだけが取り残されるような形になるが、それでいいのか」ということが問題視されていたということだ。 実際、吉田議員は昨年10月21日に開かれた同委員会で、滝口さんの自宅の状況を説明し、「当人がどう考えているかを考慮しなければならない」と述べていた。 ただ、その時点では「直接、滝口さんの意向を聞きに行こうとしたところ、稲刈りなどの農繁期で忙しいため、すぐには難しいと言われ、いま(委員会開催時の昨年10月21日時点で)はまだ話を聞けていない」とのことだったが、「滝口さんのことも考える必要があると思っています」と述べていた。 その後、滝口さんから今回の陳情書が提出されたわけ。 実は、昨年10月21日の委員会には国土交通省福島河川国道事務所の担当者が出席していた。その際、滝口さんが取り残される問題に話が及んだが、福島河川国道事務所の担当者は「同地(滝口さんの自宅敷地)を計画地に追加する考えはない」と答弁していた。 1人の陳情では弱い 木賊正男町長  そうした経過もあってか、滝口さんの陳情の審議に当たっては、議員から「滝口さん1人(個人)の陳情では国の意向は変えられない。成田地区全体でこの件を問題視しているのであれば、成田地区の総意としてこういう意見がある、といった形にできないか」との意見が出た。 見解を求められた木賊正男町長は次のように答弁した。 「昨年6月の町長就任以降、説明会等での対象地域の皆さんの要望や、国との協議の中で、1世帯(滝口さん)だけが残るのは、町としても避けなければならないと考えていた。どんな手立てがあるのか検討していきたい」 最終的には、町として、あらためて成田行政区や今回の遊水地計画を受けて結成された地元協議会の意向を聞く、ということが確認され、滝口さんの陳情は継続審査とされた。 委員会後、滝口さんに話を聞くと次のように述べた。 「基本的には、陳情書(委員会で説明したこと)の通りで、私自身はそういったいろいろな不安を抱えているということです」 当然、国としては必要以上の用地を買い上げる理由はない。しかし、水害のリスクが残る場所で、1軒だけが取り残されるような形になるわけだから、町として何ができるかを考えていく必要があろう。 もう1つ付け加えると、原発事故の区域分けの際も感じたが、「机上の線引き」が対象住民の分断を招いたり、大きなストレスを与えることを国は認識すべきだ。

  • 【鏡石町】政治倫理審査後も続く議会の騒動

    【鏡石町】政治倫理審査後も続く議会の騒動

    込山靖子議員が渡辺定己元議員から不適切な言動を受けたと訴え、政治倫理審査会(政倫審)を設置して審査が行われた問題は、昨年12月に政倫審が報告書をまとめたことで、一応の決着を見たと思われていた。ところが、3月上旬、渡辺元議員が反論文を関係各所に送付したことで、新たな問題が生まれようとしている。 「不適切」認定された元議員が反論 込山靖子議員 渡辺定己元議員  込山議員は昨年8月19日付で古川文雄議長に政治倫理審査請求書を提出した。同請求書は込山議員を含む7人の議員の連名で、渡辺議員から受けた16項目に及ぶ不適切な言動が綴られている。 それから4日後の同23日付で渡辺議員は古川議長に辞職願を提出し、受理された。辞職理由は「健康上の問題」だった。 この経過だけを見ると、政倫審請求を受け、渡辺議員が逃げ出したように映る。実際、そう捉えている関係者もいるが、その前に渡辺議員は入院しており、「このままでは迷惑をかける」、「治療に専念したい」といった考えから辞職したようだ。 これを受け、町議会事務局は県町村議会議長会に対して「政倫審請求書提出後に辞職した議員について、審査することは可能か」等々の問い合わせをしていた。このため、その後の動きに時間を要したが、県町村議会議長会の顧問弁護士から「今回のケースでは辞職した渡辺元議員の審査を行うことが可能である」旨の回答があったという。 ある議員はこう解説する。 「条例文の解釈では、要件を満たした状況で、議長に政倫審請求書を提出し、それが受理された段階で『政倫審は立ち上がっている』ということになる。つまり、昨年8月19日に政倫審請求書を提出した時点で、政倫審は発足している、と。その4日後に渡辺議員が辞職したが、町議会事務局が県町村議会議長会の顧問弁護士に確認したところでは、『審査を行うことは可能で、渡辺元議員への招致要請もできる。ただし、強制はできない』とのことでした」 不適切行為を一部認定  こうした確認を経て、昨年10月、政倫審委員として、畑幸一議員(副議長)、大河原正雄議員、角田真美議員の議員3人と、門脇真弁護士(郡山さくら通り法律事務所)、佐藤玲子氏(町人権擁護委員)、村越栄子氏(町民生児童委員)の民間人3人の計6人が選任された。委員長には門脇弁護士が就いた。 政倫審は昨年11月14日、29日、12月20日と計3回開催され、3回目で報告書をまとめて古川議長に提出した。それによると、審査対象は「渡辺元議員の込山議員に対する行為がセクシャルハラスメント行為、パワーハラスメント行為、議会基本条例第7条第1号(町民の代表として、その品位または名誉を損なう行為を禁止し、その職務に関し不正の疑惑を持たれるおそれのある行為をしないこと)に違反するか否か」である。 審査結果は次の通り。   ×  ×  ×  × 本件審査請求の対象とされる行為のうち、委員会の会議中に、審査対象議員(渡辺元議員)が審査請求代表者(込山議員)に依頼して、審査対象議員の足に湿布を貼ってもらった行為は、審査会の調査によって認定することができる。そして、特段やむを得ない事情も認められない本件当時の状況を踏まえると、当該行為は、議案等の審査等を責務とする委員会活動中における町民の代表者としてふさわしい行為とは言えず、町民の代表者としての品位を損なう行為であり、条例第7条第1号に違反するとの結論に至った。 なお、本件審査請求の対象とされる行為のうち、審査対象議員個人の行為とはいえない行為及び当事者間の金銭請求の当否を求めることにほかならない行為については審査不適との結論に至った。 また、その他の行為については審査会の調査によっても真偽不明であり、その存否について判断できないとの結論に至った。   ×  ×  ×  × この結果を受け、当時の本誌取材に込山議員は次のように述べた。 「(政倫審の報告書は)形式的なものでしかなかったが、一応『不適切』と認められた部分もありますし、町民の中には『もっとやるべきことがあるのではないか』といった声もあるので、私としてはこれで良しとするしかないと思っています。ほかの議員からは(もっと厳しく審査・追及すべきという意味で)『納得できない』といった意見も出ました。そうした発言で救われた部分もある」 要は「納得したわけではないが、これで矛を収めるしかない」との見解だったのである。 これで一応の決着を見たと思われたが、3月上旬、渡辺元議員が「当事者として今・真実を語る!!」と題した反論文を関係各所に送付した。 本誌も渡辺元議員を取材してそれを受け取り、話を聞いた。一方で、込山議員からも政倫審請求書を提出した直後や、政倫審の結果が出た後に話を聞いているが、双方の主張は180度異なっている。 すなわち、込山議員は「選挙期間中、あるいは当選後の議員活動の中で、渡辺議員からこんなことを言われた」、「こんなことをされた」と訴え、それに対し、渡辺元議員は「それは違う。実際はこうだった」と主張しているのだ。 ほとんどが2人のときの出来事で、客観的な判断材料があるわけではない。そのため、どこまで行っても、水掛け論になってしまう。 実際、先に紹介した政倫審の報告書でも、大部分は「真偽不明で、その存否について判断できない」とされている。唯一、認定されたのは、委員会の会議中に、渡辺議員(当時)が込山議員を呼びつけ、足に湿布を貼らせたという行為。これはほかの議員も見ていた場でのことのため、関係者に確認し「間違いなくそういうことがあった」と認定され、「町民の代表としての品位、名誉を損なう行為」とされたのだ。 政倫審後に反論の理由  一方で、政倫審は渡辺元議員に説明、資料提出、政倫審への出席を求めたが、渡辺元議員はいずれの対応もしなかった。にもかかわらず、ここに来て、反論文を関係各所に送付したのはなぜか。渡辺元議員は次のように説明した。 「今回の件は、(議会内の対立構造の中で)私を貶めようというのが根底にあったのです。だから、相手にするつもりもなかったし、『人の噂も75日』というから黙っていました。ただ、『謝罪しろ』とか、あまりにも騒ぎ立てるので、黙っていられなくなった」 政倫審の結果が出た後、議会内では「不適切と認められた部分について、公開の場(議場)で、渡辺元議員に謝罪を求めるべき」との意見が出た。渡辺元議員の「『謝罪しろ』と騒ぎ立てるので黙っていられなくなった」とのコメントはそのことを指している。なお、3月議会最終日の3月17日、議員から「鏡石町議会として元鏡石町議会議員・渡辺定己氏に公開の議場での謝罪を求める決議(案)」が出されたが、否決された。 一方で、「不適切」と認定された湿布を貼らせた行為については、渡辺元議員はこう説明した。 「私が医師から受けた診断は狭窄症で、時折、極度の神経痛が襲う。あの時(委員会中に込山議員に湿布を貼らせた時)は本当に辛かった。一部は自分で湿布を貼ったが、それ以上は自分でできず、うずくまっていたところに、ちょうど込山議員が目に入り、貼ってくれ、と頼んだ」 「その点については反省し、謝罪もした」という渡辺元議員。ただ、込山議員は「謝罪は受けていない。委員会という執行部やほかの議員が見ている場で、込山議員はオレ(渡辺元議員)の子分だということを示したかったからとしか思えない」と語っていた。 いずれにしても、このことが政倫審で「町民の代表としての品位、名誉を損なう行為」と認められたことだけは事実として残っている。 込山議員は、現職議員の死去に伴い、昨年5月の町長選と同時日程で行われた町議補選(欠員2)に立候補し初当選した。補選に当たり、込山議員に「議員をやってみないか」と打診し、選挙活動の指南・手伝いをしたのが渡辺元議員だった。そういう関係性からスタートして、今回のような事態になった。この補選を巡り、渡辺元議員は「選挙費用を立て替えた。その分を返還してほしい」、込山議員は「私の知らないところで勝手にいろいろされた」といったトラブルも発生している。 込山議員は「最初は(渡辺元議員を)尊敬できる人だと思って、いろいろ勉強させてもらおうと思ったが、実際は全然違った」と言い、渡辺元議員は「(込山議員を)自分の後継者になってもらいたいと思い、目をかけたが裏切られた思いだ」と明かす。 出口の見えない抗争はさらに続くのか。 あわせて読みたい 【鏡石町議会】不適切言動の責任を問われる渡辺定己元議員

  • 【鏡石町】木賊正男町長

    【鏡石町】木賊正男町長インタビュー

    町民と共に個性ある地域づくりを進めていく とくさ・まさお 1956年11月生まれ。須賀川高卒。鏡石町総務課長、教育課長兼公民館長、税務町民課長などを歴任。2022年5月の町長選で無投票初当選。  ──町長就任から半年以上経過しました。まずは現在の率直な思いをお聞かせください。 「前町長から引き継いだ事業に無我夢中で取り組み、町民の皆さまの幸せの実現のために奔走した半年間でした。 昨年は本町の町制施行60周年の節目であり、記念式典(10月)をはじめ、全国田んぼアートサミット(7月)、鏡石駅伝・ロードレース大会(11月)、ふくしま駅伝(同)など多くのイベントが開催されました。 9月には就任後初めてとなる定例会の招集があり、主要な議題を無事に議決いただきました。本町出身の方で結成される『東京かがみいし会』の総会も3年ぶりに開催でき、さらに県選出国会議員の皆さまに本町の重点事業に関する要望活動を実施するなど、さまざまな活動に注力できたと考えています。 職員として勤めていた頃との景色の違いを強く感じています。町民の皆さまからの信頼に背くことなく町政に取り組む所存です」 ──物価高や燃料価格の高騰が続いていますが、町民への支援について。 「昨年7月に生活困窮者への支援として国・県の補助金を活用した定額給付を実施したほか、9月には施設園芸農家への燃料費一部助成を行いました。低所得者への影響を考慮して、定額給付金として一律5万円を支給しました。 加えて町内の中小企業・小規模事業者を対象に上限10万円の支援金を給付し、昨年12月には経済活性化策としてプレミアム商品券の第2弾を発行いたしました。プレミアム率は25%で、1万8000セットが完売し、総額9000万円分の経済効果が見込まれています。第1弾で約2億円の効果が得られたこともあり、年末年始に緊急的に実施しました。 新型コロナウイルス感染拡大による輸入飼料の高騰も課題です。畜産農家に対しては家畜一頭当たり2万円の支援金を給付するなど、営農継続のための補助金を給付する支援策を実施してきました」 ──今後の重点事業について。 「まずは昨年4月に策定された第六次総合計画を実現するため、各種事業を進めていくことが重要です。そうすることで、他の自治体と比べ個性ある地域が作られ、町民の皆さまにとって誇りの持てる自慢の町になっていくものと考えています。 今から40年前、鳥見山公園に唱歌『牧場の朝』の歌碑が建立されたのをきっかけに『牧場の朝』のまちづくりが始まりました。40年間のさまざまな事業を振り返りながら、個性ある地域づくりについて町民の皆さまと一緒に考えていきたいと思います」 鏡石町のホームページ 掲載号:政経東北【2023年2月号】

  • 【鏡石町議会】「会派制廃止」の裏話

    【鏡石町議会】「会派制廃止」の裏話

     鏡石町議会昨年12月議会で、議員発議で議会基本条例の一部改正案が提出された。同町の議会基本条例は2018年4月に施行され、その第6条に「会派制を敷く」旨が規定されているが、改正案はその削除を求めるものだった。  提案理由は「(同町議会は)議員定数が12人と比較的少数であり、この中で会派制を設けることは、むしろ議員間の分断をきたし、議会の公正かつ健全な運営に資するものではないと思われる。そのため、会派制を削除・撤廃すべき」というもの。  採決の結果、賛成多数で可決された。これに伴い、「会派制を敷く」旨が規定されている議会基本条例の第6条が削除された。  ある関係者によると、「会派制は、もともとは(2018年の議会基本条例制定時に)遠藤栄作町長を支えるというか、コントロールするために設けられたもの」という。  当時、遠藤町長を支える(この関係者に言わせると、コントロールを目論む)一派は7人おり、それら議員で「鏡政会」という会派を立ち上げた。代表には当時議長だった渡辺定己議員が就いた。同町の議員定数は12だから過半数を占める。  それ以外の5人は「野党」の立場で、それぞれ無会派(1人会派)という状況だった。  つまり、「7対5」(議場では議長は採決に加わらないため「6対5」)の構図の中で、会派制が生まれたというのである。  ただその後、2019年8月の町議選と、昨年5月の町長選・町議補選(同時選挙)を経て、状況が変わった。  まず、町長選では遠藤氏が引退し、代わって元役場総務課長の木賊正男氏が無投票で当選した。それによって、議会は「与党(町長派)」、「野党(反町長派)」といった括りはなくなった。それまで「野党」といった立場だった議員も、ひとまずは木賊町長を支える、あるいは見定めるといった立場に変わったのだ。  一方、議会は本選・補選を経て、鏡政会のメンバーは5人になった。さらに、本誌昨年10月号で伝えた渡辺議員(前出)が込山靖子議員に不適切な言動を取ったとされる問題があり、ともに鏡政会のメンバーだった渡辺議員が辞職、込山議員が離脱したことで、現在は3人になった。残りの7人は無会派(1人会派)で、「会派制の意味を成していない」状況になった。言い換えると、過去の決定を覆せる議会構成になったということでもある。  こうして、議会基本条例の一部改正(会派制の廃止)が行われたわけだが、提案理由にもあったように、そもそも定数12の町(議会)で会派を置くこと自体が稀なケースである。議員は「○○派」、「××派」といった括りなく、町のため、町民のために議会でどういった意思表示をするか、どのような議員活動をすべきか、を考えて行動すればいい。

  • 【鏡石町】木賊正男町長インタビュー(2024.2)

     1956年11月生まれ。須賀川高卒。鏡石町総務課長、教育課長兼公民館長、税務町民課長などを歴任。2022年5月の町長選で無投票初当選。 人口減少対策の受け皿をつくっていきたい。  ――昨年5月から新型コロナウイルスが5類感染症に移行されました。  「5類移行に伴い、町内の商工業者の経済活動にも明るい兆しが見え、制限されていた各種イベントもコロナ禍以前と同じ形で開催することができたので、賑わいが戻ってきたと実感しています」  ――昨年10月には健康福祉センター「ほがらかん」がオープンしました。  「町内の保健福祉施設が老朽化していたことに加え、類似施設の集約や、多目的に使用できる施設にすることを目的に整備を進めてきました。コンセプトの1つに『健康な笑顔が集う場所』があり、安心・安全なまちづくりに向けた福祉避難所としての機能も併せ持った施設となっています。オープンから3カ月でおよそ6000人の方々にご利用いただいています。館内には未就学児を対象とした子育て支援施設もあるため、子育て世代の多くの方々にご利用いただいています。  今後は各種イベント等での利用に加え、先日発生した能登半島地震のような非常時への備えとして、屋外街路灯の下に電源コンセントを設置してあるので、車で避難された方の電源確保やマンホールトイレ、シャワー室の設置など、災害時における一時避難所としての役割が見込まれます。近年は自然災害が多発しており、令和元年東日本台風の際、本町では成田地区の浸水被害があり、そうした経験も踏まえて利活用していく考えです」  ――今後の抱負。  「今年は駅東土地区画整理事業に注力したいと思っており、昨年第3工区の町の保留地の分譲が完了しました。個人所有の土地についても交渉を進めており、少しでも多くの方々に家を建てて住んでいただきたいと考えています。人口問題研究所が発表した2050年の推計によれば、鏡石町は現在の人口から約3000人減の9333人との結果でした。他自治体に比べて本町は人口減少率が低く、年少人口の比率が高いほか、高齢化率も低いので、今後を見据えて人口減少対策の受け皿をつくっていきたいと考えています。  遊水地整備事業についても、用地買収や宅地・建物の補償交渉が具体化しており、その中でも集団移転を希望する方と個人で移転する方がいますから、各々の希望に沿う形で地権者の皆様に寄り添って取り組んでいきます。  就任以来3つのS(スマイル・スピード・シンプル)を基本に町政執行に当たってきましたが、それには町の持っている情報を速やかに発信し、町民の皆様からの信頼を得ることが不可欠です。今後も町民の皆様の信頼を裏切ることなく取り組んでいきます」

  • 【鏡石町議会】が遊水地特別委設置を否決

     令和元年東日本台風に伴う水害を受け、国は「阿武隈川緊急治水対策プロジェクト」を進めており、その一環として、鏡石町、玉川村、矢吹町で阿武隈川遊水地整備事業が進められている。  総面積は約350㌶、貯水量は1500万から2000万立方㍍。用地は全面買収する。対象地の9割ほどが農地、1割弱が宅地。対象エリアの住民は移転を余儀なくされる。計約150戸が対象で、内訳は鏡石町と玉川村がそれぞれ60〜70戸、矢吹町が約20戸。  住民からしたら、もうそこに住めないだけでなく、営農ができなくなるわけだから、「補償はどのくらいなのか」、「暮らしや生業はどうなるのか」といった不安が渦巻いている。  そのため、鏡石町議会では「鏡石町成田地区遊水地整備事業調査特別委員会」を立ち上げ、同事業の調査・研究を行ってきた。  本誌では何度か同委員会を取材(傍聴)し、今年7月号に「鏡石町遊水地特別委が国・県に意見書提出」という記事を掲載した。  同町議の任期は9月3日までで、8月22日告示、27日投開票の日程で議員選挙が行われた。そのため、任期満了前、最後となる6月定例会で一区切りとし、意見書案をまとめて本会議に提出、採択された。これをもって同特別委は解散となった、  意見書の主な内容は、①遊水地事業区域の住民の高台移転のための支援、②移転に伴い生じる各種法令・規制の見直しや手続きの簡素化、③阿武隈川本川及び県管理支川の鈴川も含めた治水対策(特に、阿武隈川本川の河道掘削及び堤防強化)、④二度と水害(洪水被害・浸水被害)のないまちづくり・地域づくりを行うための支援、⑤遊水地事業関連施設の整備、⑥遊水地整備後の土地の有効利用のための支援など。  これを内閣総理大臣、国土交通大臣、衆議院議長、参議院議長、県知事、県議会議長に提出した。  一方で、同特別委の委員長を務めた吉田孝司議員は、「改選後も特別委を再度立ち上げ、引き続き、調査・研究していきたい」と述べていた。吉田議員は、遊水地の対象地区である成田地区出身で、自身の自宅も令和元年東日本台風で浸水被害を受けたほか、遊水地の対象エリアにもなっている。  実際、吉田議員は改選後の9月定例会で特別委設置案を提案した。しかし、賛成4、反対7で否決された。理由は、玉川村や矢吹町ではそうした動きがないこと、前任期の議会で一定の役割を終えたこと、あとは国に任せるべき、というものだったようだ。  ただ、ある関係者はこんな見解を示した。  「吉田議員は対象地区に自宅があり、住民の思いが分かるから、この問題に熱心に取り組んでいたが、吉田議員が中心となって国や県に要望するなど、目立った動きをしたことをよく思わない議員もいたように感じる。もう1つは、今改選では12人中6人が新人で、そのうちの5人が反対だった。よく分かっていない可能性もある。そういった理由から改選後の議会での特別委設置が否決されたのではないか」  改選前の特別委では、国(福島河川国道事務所)の担当者を呼び、直接見解を聞いたこともあった。そういった意味でも意義のあるものだったと言えるが、前出の関係者が語ったように、議会内の勢力争いが原因で否決されたのだとしたら、議員の存在意義が問われかねない。 あわせて読みたい 鏡石町遊水地特別委が国・県に意見書提出 2023年7月号 【鏡石町】遊水地で発生するポツンと一軒家 2023年4月号

  • 【古川文雄】鏡石町議長の引退に驚き

     鏡石町の古川文雄議長(3期)が8月22日告示、27日投開票の町議選に立候補せず引退するという。古川議長はまだ50歳と若く、町内では「将来の町長候補」とも言われている。さらに、6月には県町村議会議長会長に選任されたばかり。それだけに、町内では驚きの声が出ている。 町内では「次期町長候補」との呼び声  本誌7月号の情報ファインダーで鏡石町議選の情勢について伝えた。   ×  ×  ×  × 鏡石町議選で定数割れの懸念 任期満了に伴う鏡石町議選が8月22日告示、27日投開票の日程で行われるが、ある町民によると定員割れの可能性が出ているという。 「地元紙のマメタイムス(6月22日付)に『定員割れの可能性大』と報じられたのです。それを見て、そんな情勢になっているのかと驚きました」 『マメタイムス』(6月22日付)は「鏡石町議選告示まで2カ月 現職6人・新人2人が立候補の意向 動き鈍く定員割れの可能性大」との見出しで情勢を報じた。 それによると、定数12(欠員1)に対して、同日時点で立候補を予定しているのは現職6人と新人2人の計8人。残る現職5人は2人が引退濃厚で、もう1人も引退の意向。2人は態度を決めかねているという。情勢によっては、複数新人擁立の動きもあるようだが、「低調で定員割れの可能性も指摘されている」と伝えている。 ちなみに、本誌では込山靖子議員が渡辺定己議員(現在は辞職)から不適切な言動を受けたと訴え、昨年8月に政治倫理審査請求書を提出した件について、2月号「鏡石町議会政倫審が元議員の『不適正行為』を一部認定」という記事のほか、何度かその動きを報じてきた。 その中で、《込山議員は周囲に「もうウンザリ」と明かしているというから、今夏の町議選には立候補しない可能性もある》と書いた。 ただ、前述のマメタイムス記事では「(込山議員は)引退を撤回し、出馬の意向を固めた」と伝えられている。 同町6月定例会では、定員割れの可能性があることを見越してか、議員発議で定数を12から10に削減する条例改正案が提出された。ただ、採決の結果、賛成2、反対8の賛成少数で否決された。 告示まではまだ1カ月以上あるため、いまの情勢を踏まえて候補者が出てくる可能性もあり、動きが注目される。   ×  ×  ×  × 同記事では触れられなかったが、『マメタイムス』(6月22日付)によると現職議員の進退の詳細は以下の通り。 立候補の意向▽円谷寛議員、小林政次議員、橋本喜一議員、吉田孝司議員、角田真美議員、込山靖子議員 引退▽今泉文克議員、古川文雄議長 引退の意向▽菊地洋議員 流動的、進退を決めかねている▽畑幸一副議長、大河原正雄議員 この中で、気になるのが「引退」と報じられた古川文雄議長だ。 「古川議長はまだ50歳で年齢的にも若く、町内の一部関係者の間では『次期町長候補』とも言われています。それだけに、引退と報じられたのは意外というか、かなり驚きました」(ある町民) 古川議長は、岩瀬地方町村議会議長会長を務め、今年6月5日に開かれた県町村議会議長会の総会で会長に選任されたばかり。 その際、町内ではこんな声が出ていた。 「岩瀬地方町村議会議長会は、鏡石町と天栄村の2町村だけだから、両町村の議長が交互に会長に就く。県議長会長も各地区持ち回りだが、岩瀬地方の2町村交互に比べると、回ってくる確率は格段に下がる。そんな中で、今回、古川議長にいろいろな順番がすべて当たったことになる。そういう意味では『持っている』と言うことができるし、今後、本当に町長選に出るのかどうかは分からないが、もし出るとしたらその肩書きや、そこで得られた人脈などは間違いなくプラスになるだろう」 そんなことが囁かれていただけに、8月の町議選に立候補しないとの報道には驚いたというのだ。 ある議員は「町長選に向けて地ならしに入ったのでは」との見解を示した。 ただ、現職・木賊正男町長の任期は2026年6月までで、残り3年近くある。3年後の町長選を見据えて、今回の町議選を見送ったとは考えにくい。むしろ、次の町長選まで議員(議長)を続け、県町村議長会長の肩書きで動いた方が有利に働くと思われるのだが……。 ちなみに、前回(2019年8月)の町議選では524票を獲得、4番目の得票で当選している。それ以前の町議選でも上位で当選しており、選挙で苦労しているわけではない。そもそも町議選で苦労していたら、最初から「町長候補」とは言われないだろう。 古川議長に聞く 古川議長(「議会だより」より)  一方で、「自身が経営する会社で何かあったのではないか」との見方もある。 古川議長は左官工事業「村上工業所」(同町旭町)のオーナーで、自身が経営する会社で何かあった、あるいは経営に専念するためではないか、という見方だ。 民間信用調査会社によると、同社の直近5年の売上高、当期純利益は別表の通り。 村上工業所の業績 決算期売上高当期純利益2018年1億2100万円12万円2019年1億4400万円1195万円2020年1億3300万円△434万円2021年1億2500万円1622万円2022年1億3000万円566万円※決算期は3月。△はマイナス  2020年は434万円の損失を計上したが、それ以外は利益を確保しており、売上高も一定している。これを見る限りでは、会社の経営に専念するためではないか、という見方は説得力に欠ける。 こうして見ても、「次期町長候補」と言われた古川議長の引退は意外だが、実際のところはどうなのか。古川議長に話を聞いた。 ――古川議長が引退するとの報道を見たが。 「それは事実です」 ――辞めた後はどんなことを考えているのか。 「私もまだ50歳ですからね。いろいろと考えていますよ」 ――県町村議会議長会長に就いたばかりだが。 「ちょうど3カ月ですかね(※6月5日の総会で県町村議会議長会長に選任され、鏡石町議員の任期は9月3日まで)。任期満了後は自動失職の形になると思います」 ――町内では「次期町長候補」との見方もあり、それだけに今回の引退には驚きの声が出ている。 「私が(町長候補)ですか? まあ、さっきも言いましたけど、いろいろ考えているところです」 引退は事実とのことだが、今後については明言しなかった。「いろいろ考えている」とは何を指すのかも気になるところだ。

  • 鏡石町遊水地特別委が国・県に意見書提出

     令和元年東日本台風に伴う水害を受け、国は「阿武隈川緊急治水対策プロジェクト」を進めており、その一環として、鏡石町、玉川村、矢吹町で阿武隈川遊水地整備事業が進められている。 総面積は約350㌶、貯水量は1500万から2000万立方㍍。用地は全面買収し、対象地の9割ほどが農地、1割弱が宅地となっている。それらの住民は移転を余儀なくされる。計約150戸が対象で、内訳は鏡石町と玉川村が60〜70戸、矢吹町が約20戸。 住民からしたら、もうそこに住めないだけでなく、営農ができなくなるわけだから、「補償はどのくらいなのか」、「暮らしや生業はどうなるのか」といった不安が渦巻いている。 そのため、鏡石町議会では「鏡石町成田地区遊水地整備事業調査特別委員会」を立ち上げ、同事業の調査・研究を行ってきた。 本誌では今年4月号「遊水地で発生する〝ポツンと1軒家〟 取り残される世帯が議会に『陳情』」という記事をはじめ、何度か同特別委の調査・研究過程を紹介してきた。 同特別委は、6月14日に開かれた6月定例会本会議に「阿武隈川流域の治水対策を国と県に求める意見書」を提出し、採択された。これをもって、同特別委は解散となった、 意見書の主な内容(国・県への要望内容)は次の通り。 ①遊水地事業区域の住民の高台移転のための支援。 ②移転に伴い生じる各種法令・規制の見直しや手続きの簡素化。 ③阿武隈川本川及び県管理支川の鈴川も含めた治水対策(特に、阿武隈川本川の河道掘削及び堤防強化) ④二度と水害(洪水被害・浸水被害)のないまちづくり・地域づくりを行うための支援。 ⑤遊水地事業関連施設の整備。 ⑥遊水地整備後の土地の有効利用のための支援。 これを内閣総理大臣、国土交通大臣、衆議院議長、参議院議長、県知事、県議会議長に提出する。 同特別委の委員長を務めた吉田孝司議員は、遊水地の対象地区である成田地区出身で、自宅が令和元年東日本台風で浸水被害を受けたほか、遊水地の対象エリアにもなっている。そのため、誰よりも熱心にこの問題に取り組んできた自負があるようだ。 遊水地事業エリアの成田地区  同特別委での調査・研究を終えた吉田議員に話を聞いた。 「遊水地の問題は、完成するまでは土地買収や高台移転などの課題があり、完成後は平常時にそれをいかに有効活用するかなど、まだまだ課題が山積している。これで終わりではなく、まだ序の口にすぎない。また、最初から遊水地ありきではなく、まずは阿武隈川全川の河道掘削と堤防強化が大事で、それを踏まえての遊水地整備となるべきである。河道掘削と堤防強化を必ず先行させるべく、改選後も特別委員会を再度立ち上げ、引き続き、木賊正男町長を支えて、国としっかり対峙していきたい」 同町議の任期は9月3日までで、8月22日告示、27日投開票の日程で議員選挙が行われる。そのため、任期満了前の最後となる6月定例会で一区切りとし、改選後も特別委を再度立ち上げ、引き続き、調査・研究していきたいとの見解だ。 意見書にまとめた要望内容を実現させるまで、町・議会として、できることをしていく必要があろう。 あわせて読みたい 【鏡石町】遊水地で発生するポツンと一軒家

  • 【鏡石町】遊水地で発生するポツンと一軒家

     国が鏡石町、玉川村、矢吹町で進めている阿武隈川遊水地計画。対象地域の住民は全面移転を余儀なくされるため、さまざまな不安が渦巻く。このため、鏡石町議会では「鏡石町成田地区遊水地整備事業調査特別委員会」を立ち上げ、同事業の調査・研究を行っている。今年2月には同計画対象地域の隣接地の住民から議会に陳情書が提出され、同委員会で審議された。 取り残される世帯が議会に「陳情」  令和元年東日本台風被害を受け、国は「阿武隈川緊急治水対策プロジェクト」を進めており、遊水地計画はその一環として整備されるもの。鏡石町、玉川村、矢吹町の3町村にまたがり、総面積は約350㌶、貯水量は1500万から2000万立方㍍。用地は全面買収し、対象地の9割ほどが農地、1割弱が宅地となっている。それらの住民は移転を余儀なくされる。計約150戸が対象で、内訳は鏡石町と玉川村が60〜70戸、矢吹町が約20戸。 住民からしたら、もうそこに住めないだけでなく、営農ができなくなるわけだから、「補償はどのくらいなのか」、「暮らしや生業はどうなるのか」といった不安がある。 中には、以前の本誌取材に「補償だけして『あとは自分で生活再建・営農再開してください』という形では納得できない。もし、そうなったら〝抵抗〟(立ち退き拒否)することも考えなければならない」と話す人もいたほど。 そのため、鏡石町議会では遊水地計画の調査・研究をしたり、国や町執行部に提言をしていくことを目的に、昨年6月に「鏡石町成田地区遊水地整備事業調査特別委員会」を立ち上げた。委員は議長を除く全議員で、委員長には計画地の成田地区に住所がある吉田孝司議員が就いた。 3月10日に開かれた同委員会では、2月16日に計画対象区域の隣接地の住民から議会に出された陳情書について審議された。 陳情者は滝口孝行さんで、陳情内容はこうだ。 ○滝口さんの自宅は阿武隈川の支流である鈴川と諏訪池川が合流する地点の付近(内側)にある。洪水の危険性があるにもかかわらず、遊水地の事業範囲から除外されており、遊水池整備後も水害の心配が残る。 ○遊水地ができれば、自宅の目の前に高い塀(堤防=計画では最大6㍍)ができ、これまでの美しい田園風景が損なわれる。そのような場所で生活しなければならないのは大きなストレスになる。 こうした事情から、事業範囲を変更してほしい、すなわち「自分のところも計画地に加えるなどの対応をしてほしい」というのが陳情の趣旨である。 写真は同委員会の資料に本誌が注釈を加えたもの。  遊水地の対象地域のうち、真ん中よりやや上の左側が住宅密集地となっており、そこから100㍍ほど離れたところに滝口さんの自宅がある。これまでは「集落からちょっと離れた家」だったが、遊水地内の住宅が全面移転すると、〝ポツンと一軒家〟になってしまう。 加えて、遊水地は周囲堤で囲われるため、自宅の目の前に大きな壁ができることになる。「これまでの田園風景から一変し、そんなところで生活していたら、頭がおかしくなってしまいそう」というのが滝口さんの思いだ。 しかも、滝口さんの自宅は阿武隈川の支流である鈴川と諏訪池川が合流する地点の付近(内側)にあり、常に水害の危険がある。 国は追加の考えナシ 鏡石町成田地区  3月10日の委員会に参考人として出席した滝口さんの説明によると、令和元年東日本台風時の被害は「床下浸水だった」とのこと。 ただ、議員からは「『昭和61(1986)年8・5水害』の時は床下浸水だったところが、今回の水害ではほとんどが床上浸水だった。水害の規模はどんどん大きくなっているから、(滝口さんの自宅が)今回は床下浸水だったからといって、今後も安全とは限らない」として、滝口さんを救済すべきとの意見が出た。 遊水地の計画地である成田地区に自宅があり、同委員会委員長の吉田議員によると、「成田地区では以前からこの件が問題になっていた」という。すなわち、「滝口さんだけが取り残されるような形になるが、それでいいのか」ということが問題視されていたということだ。 実際、吉田議員は昨年10月21日に開かれた同委員会で、滝口さんの自宅の状況を説明し、「当人がどう考えているかを考慮しなければならない」と述べていた。 ただ、その時点では「直接、滝口さんの意向を聞きに行こうとしたところ、稲刈りなどの農繁期で忙しいため、すぐには難しいと言われ、いま(委員会開催時の昨年10月21日時点で)はまだ話を聞けていない」とのことだったが、「滝口さんのことも考える必要があると思っています」と述べていた。 その後、滝口さんから今回の陳情書が提出されたわけ。 実は、昨年10月21日の委員会には国土交通省福島河川国道事務所の担当者が出席していた。その際、滝口さんが取り残される問題に話が及んだが、福島河川国道事務所の担当者は「同地(滝口さんの自宅敷地)を計画地に追加する考えはない」と答弁していた。 1人の陳情では弱い 木賊正男町長  そうした経過もあってか、滝口さんの陳情の審議に当たっては、議員から「滝口さん1人(個人)の陳情では国の意向は変えられない。成田地区全体でこの件を問題視しているのであれば、成田地区の総意としてこういう意見がある、といった形にできないか」との意見が出た。 見解を求められた木賊正男町長は次のように答弁した。 「昨年6月の町長就任以降、説明会等での対象地域の皆さんの要望や、国との協議の中で、1世帯(滝口さん)だけが残るのは、町としても避けなければならないと考えていた。どんな手立てがあるのか検討していきたい」 最終的には、町として、あらためて成田行政区や今回の遊水地計画を受けて結成された地元協議会の意向を聞く、ということが確認され、滝口さんの陳情は継続審査とされた。 委員会後、滝口さんに話を聞くと次のように述べた。 「基本的には、陳情書(委員会で説明したこと)の通りで、私自身はそういったいろいろな不安を抱えているということです」 当然、国としては必要以上の用地を買い上げる理由はない。しかし、水害のリスクが残る場所で、1軒だけが取り残されるような形になるわけだから、町として何ができるかを考えていく必要があろう。 もう1つ付け加えると、原発事故の区域分けの際も感じたが、「机上の線引き」が対象住民の分断を招いたり、大きなストレスを与えることを国は認識すべきだ。

  • 【鏡石町】政治倫理審査後も続く議会の騒動

    込山靖子議員が渡辺定己元議員から不適切な言動を受けたと訴え、政治倫理審査会(政倫審)を設置して審査が行われた問題は、昨年12月に政倫審が報告書をまとめたことで、一応の決着を見たと思われていた。ところが、3月上旬、渡辺元議員が反論文を関係各所に送付したことで、新たな問題が生まれようとしている。 「不適切」認定された元議員が反論 込山靖子議員 渡辺定己元議員  込山議員は昨年8月19日付で古川文雄議長に政治倫理審査請求書を提出した。同請求書は込山議員を含む7人の議員の連名で、渡辺議員から受けた16項目に及ぶ不適切な言動が綴られている。 それから4日後の同23日付で渡辺議員は古川議長に辞職願を提出し、受理された。辞職理由は「健康上の問題」だった。 この経過だけを見ると、政倫審請求を受け、渡辺議員が逃げ出したように映る。実際、そう捉えている関係者もいるが、その前に渡辺議員は入院しており、「このままでは迷惑をかける」、「治療に専念したい」といった考えから辞職したようだ。 これを受け、町議会事務局は県町村議会議長会に対して「政倫審請求書提出後に辞職した議員について、審査することは可能か」等々の問い合わせをしていた。このため、その後の動きに時間を要したが、県町村議会議長会の顧問弁護士から「今回のケースでは辞職した渡辺元議員の審査を行うことが可能である」旨の回答があったという。 ある議員はこう解説する。 「条例文の解釈では、要件を満たした状況で、議長に政倫審請求書を提出し、それが受理された段階で『政倫審は立ち上がっている』ということになる。つまり、昨年8月19日に政倫審請求書を提出した時点で、政倫審は発足している、と。その4日後に渡辺議員が辞職したが、町議会事務局が県町村議会議長会の顧問弁護士に確認したところでは、『審査を行うことは可能で、渡辺元議員への招致要請もできる。ただし、強制はできない』とのことでした」 不適切行為を一部認定  こうした確認を経て、昨年10月、政倫審委員として、畑幸一議員(副議長)、大河原正雄議員、角田真美議員の議員3人と、門脇真弁護士(郡山さくら通り法律事務所)、佐藤玲子氏(町人権擁護委員)、村越栄子氏(町民生児童委員)の民間人3人の計6人が選任された。委員長には門脇弁護士が就いた。 政倫審は昨年11月14日、29日、12月20日と計3回開催され、3回目で報告書をまとめて古川議長に提出した。それによると、審査対象は「渡辺元議員の込山議員に対する行為がセクシャルハラスメント行為、パワーハラスメント行為、議会基本条例第7条第1号(町民の代表として、その品位または名誉を損なう行為を禁止し、その職務に関し不正の疑惑を持たれるおそれのある行為をしないこと)に違反するか否か」である。 審査結果は次の通り。   ×  ×  ×  × 本件審査請求の対象とされる行為のうち、委員会の会議中に、審査対象議員(渡辺元議員)が審査請求代表者(込山議員)に依頼して、審査対象議員の足に湿布を貼ってもらった行為は、審査会の調査によって認定することができる。そして、特段やむを得ない事情も認められない本件当時の状況を踏まえると、当該行為は、議案等の審査等を責務とする委員会活動中における町民の代表者としてふさわしい行為とは言えず、町民の代表者としての品位を損なう行為であり、条例第7条第1号に違反するとの結論に至った。 なお、本件審査請求の対象とされる行為のうち、審査対象議員個人の行為とはいえない行為及び当事者間の金銭請求の当否を求めることにほかならない行為については審査不適との結論に至った。 また、その他の行為については審査会の調査によっても真偽不明であり、その存否について判断できないとの結論に至った。   ×  ×  ×  × この結果を受け、当時の本誌取材に込山議員は次のように述べた。 「(政倫審の報告書は)形式的なものでしかなかったが、一応『不適切』と認められた部分もありますし、町民の中には『もっとやるべきことがあるのではないか』といった声もあるので、私としてはこれで良しとするしかないと思っています。ほかの議員からは(もっと厳しく審査・追及すべきという意味で)『納得できない』といった意見も出ました。そうした発言で救われた部分もある」 要は「納得したわけではないが、これで矛を収めるしかない」との見解だったのである。 これで一応の決着を見たと思われたが、3月上旬、渡辺元議員が「当事者として今・真実を語る!!」と題した反論文を関係各所に送付した。 本誌も渡辺元議員を取材してそれを受け取り、話を聞いた。一方で、込山議員からも政倫審請求書を提出した直後や、政倫審の結果が出た後に話を聞いているが、双方の主張は180度異なっている。 すなわち、込山議員は「選挙期間中、あるいは当選後の議員活動の中で、渡辺議員からこんなことを言われた」、「こんなことをされた」と訴え、それに対し、渡辺元議員は「それは違う。実際はこうだった」と主張しているのだ。 ほとんどが2人のときの出来事で、客観的な判断材料があるわけではない。そのため、どこまで行っても、水掛け論になってしまう。 実際、先に紹介した政倫審の報告書でも、大部分は「真偽不明で、その存否について判断できない」とされている。唯一、認定されたのは、委員会の会議中に、渡辺議員(当時)が込山議員を呼びつけ、足に湿布を貼らせたという行為。これはほかの議員も見ていた場でのことのため、関係者に確認し「間違いなくそういうことがあった」と認定され、「町民の代表としての品位、名誉を損なう行為」とされたのだ。 政倫審後に反論の理由  一方で、政倫審は渡辺元議員に説明、資料提出、政倫審への出席を求めたが、渡辺元議員はいずれの対応もしなかった。にもかかわらず、ここに来て、反論文を関係各所に送付したのはなぜか。渡辺元議員は次のように説明した。 「今回の件は、(議会内の対立構造の中で)私を貶めようというのが根底にあったのです。だから、相手にするつもりもなかったし、『人の噂も75日』というから黙っていました。ただ、『謝罪しろ』とか、あまりにも騒ぎ立てるので、黙っていられなくなった」 政倫審の結果が出た後、議会内では「不適切と認められた部分について、公開の場(議場)で、渡辺元議員に謝罪を求めるべき」との意見が出た。渡辺元議員の「『謝罪しろ』と騒ぎ立てるので黙っていられなくなった」とのコメントはそのことを指している。なお、3月議会最終日の3月17日、議員から「鏡石町議会として元鏡石町議会議員・渡辺定己氏に公開の議場での謝罪を求める決議(案)」が出されたが、否決された。 一方で、「不適切」と認定された湿布を貼らせた行為については、渡辺元議員はこう説明した。 「私が医師から受けた診断は狭窄症で、時折、極度の神経痛が襲う。あの時(委員会中に込山議員に湿布を貼らせた時)は本当に辛かった。一部は自分で湿布を貼ったが、それ以上は自分でできず、うずくまっていたところに、ちょうど込山議員が目に入り、貼ってくれ、と頼んだ」 「その点については反省し、謝罪もした」という渡辺元議員。ただ、込山議員は「謝罪は受けていない。委員会という執行部やほかの議員が見ている場で、込山議員はオレ(渡辺元議員)の子分だということを示したかったからとしか思えない」と語っていた。 いずれにしても、このことが政倫審で「町民の代表としての品位、名誉を損なう行為」と認められたことだけは事実として残っている。 込山議員は、現職議員の死去に伴い、昨年5月の町長選と同時日程で行われた町議補選(欠員2)に立候補し初当選した。補選に当たり、込山議員に「議員をやってみないか」と打診し、選挙活動の指南・手伝いをしたのが渡辺元議員だった。そういう関係性からスタートして、今回のような事態になった。この補選を巡り、渡辺元議員は「選挙費用を立て替えた。その分を返還してほしい」、込山議員は「私の知らないところで勝手にいろいろされた」といったトラブルも発生している。 込山議員は「最初は(渡辺元議員を)尊敬できる人だと思って、いろいろ勉強させてもらおうと思ったが、実際は全然違った」と言い、渡辺元議員は「(込山議員を)自分の後継者になってもらいたいと思い、目をかけたが裏切られた思いだ」と明かす。 出口の見えない抗争はさらに続くのか。 あわせて読みたい 【鏡石町議会】不適切言動の責任を問われる渡辺定己元議員

  • 【鏡石町】木賊正男町長インタビュー

    町民と共に個性ある地域づくりを進めていく とくさ・まさお 1956年11月生まれ。須賀川高卒。鏡石町総務課長、教育課長兼公民館長、税務町民課長などを歴任。2022年5月の町長選で無投票初当選。  ──町長就任から半年以上経過しました。まずは現在の率直な思いをお聞かせください。 「前町長から引き継いだ事業に無我夢中で取り組み、町民の皆さまの幸せの実現のために奔走した半年間でした。 昨年は本町の町制施行60周年の節目であり、記念式典(10月)をはじめ、全国田んぼアートサミット(7月)、鏡石駅伝・ロードレース大会(11月)、ふくしま駅伝(同)など多くのイベントが開催されました。 9月には就任後初めてとなる定例会の招集があり、主要な議題を無事に議決いただきました。本町出身の方で結成される『東京かがみいし会』の総会も3年ぶりに開催でき、さらに県選出国会議員の皆さまに本町の重点事業に関する要望活動を実施するなど、さまざまな活動に注力できたと考えています。 職員として勤めていた頃との景色の違いを強く感じています。町民の皆さまからの信頼に背くことなく町政に取り組む所存です」 ──物価高や燃料価格の高騰が続いていますが、町民への支援について。 「昨年7月に生活困窮者への支援として国・県の補助金を活用した定額給付を実施したほか、9月には施設園芸農家への燃料費一部助成を行いました。低所得者への影響を考慮して、定額給付金として一律5万円を支給しました。 加えて町内の中小企業・小規模事業者を対象に上限10万円の支援金を給付し、昨年12月には経済活性化策としてプレミアム商品券の第2弾を発行いたしました。プレミアム率は25%で、1万8000セットが完売し、総額9000万円分の経済効果が見込まれています。第1弾で約2億円の効果が得られたこともあり、年末年始に緊急的に実施しました。 新型コロナウイルス感染拡大による輸入飼料の高騰も課題です。畜産農家に対しては家畜一頭当たり2万円の支援金を給付するなど、営農継続のための補助金を給付する支援策を実施してきました」 ──今後の重点事業について。 「まずは昨年4月に策定された第六次総合計画を実現するため、各種事業を進めていくことが重要です。そうすることで、他の自治体と比べ個性ある地域が作られ、町民の皆さまにとって誇りの持てる自慢の町になっていくものと考えています。 今から40年前、鳥見山公園に唱歌『牧場の朝』の歌碑が建立されたのをきっかけに『牧場の朝』のまちづくりが始まりました。40年間のさまざまな事業を振り返りながら、個性ある地域づくりについて町民の皆さまと一緒に考えていきたいと思います」 鏡石町のホームページ 掲載号:政経東北【2023年2月号】

  • 【鏡石町議会】「会派制廃止」の裏話

     鏡石町議会昨年12月議会で、議員発議で議会基本条例の一部改正案が提出された。同町の議会基本条例は2018年4月に施行され、その第6条に「会派制を敷く」旨が規定されているが、改正案はその削除を求めるものだった。  提案理由は「(同町議会は)議員定数が12人と比較的少数であり、この中で会派制を設けることは、むしろ議員間の分断をきたし、議会の公正かつ健全な運営に資するものではないと思われる。そのため、会派制を削除・撤廃すべき」というもの。  採決の結果、賛成多数で可決された。これに伴い、「会派制を敷く」旨が規定されている議会基本条例の第6条が削除された。  ある関係者によると、「会派制は、もともとは(2018年の議会基本条例制定時に)遠藤栄作町長を支えるというか、コントロールするために設けられたもの」という。  当時、遠藤町長を支える(この関係者に言わせると、コントロールを目論む)一派は7人おり、それら議員で「鏡政会」という会派を立ち上げた。代表には当時議長だった渡辺定己議員が就いた。同町の議員定数は12だから過半数を占める。  それ以外の5人は「野党」の立場で、それぞれ無会派(1人会派)という状況だった。  つまり、「7対5」(議場では議長は採決に加わらないため「6対5」)の構図の中で、会派制が生まれたというのである。  ただその後、2019年8月の町議選と、昨年5月の町長選・町議補選(同時選挙)を経て、状況が変わった。  まず、町長選では遠藤氏が引退し、代わって元役場総務課長の木賊正男氏が無投票で当選した。それによって、議会は「与党(町長派)」、「野党(反町長派)」といった括りはなくなった。それまで「野党」といった立場だった議員も、ひとまずは木賊町長を支える、あるいは見定めるといった立場に変わったのだ。  一方、議会は本選・補選を経て、鏡政会のメンバーは5人になった。さらに、本誌昨年10月号で伝えた渡辺議員(前出)が込山靖子議員に不適切な言動を取ったとされる問題があり、ともに鏡政会のメンバーだった渡辺議員が辞職、込山議員が離脱したことで、現在は3人になった。残りの7人は無会派(1人会派)で、「会派制の意味を成していない」状況になった。言い換えると、過去の決定を覆せる議会構成になったということでもある。  こうして、議会基本条例の一部改正(会派制の廃止)が行われたわけだが、提案理由にもあったように、そもそも定数12の町(議会)で会派を置くこと自体が稀なケースである。議員は「○○派」、「××派」といった括りなく、町のため、町民のために議会でどういった意思表示をするか、どのような議員活動をすべきか、を考えて行動すればいい。