【鏡石町】政治倫理審査後も続く議会の騒動

【鏡石町】政治倫理審査後も続く議会の騒動

込山靖子議員が渡辺定己元議員から不適切な言動を受けたと訴え、政治倫理審査会(政倫審)を設置して審査が行われた問題は、昨年12月に政倫審が報告書をまとめたことで、一応の決着を見たと思われていた。ところが、3月上旬、渡辺元議員が反論文を関係各所に送付したことで、新たな問題が生まれようとしている。

「不適切」認定された元議員が反論

込山靖子議員
渡辺定己元議員

 込山議員は昨年8月19日付で古川文雄議長に政治倫理審査請求書を提出した。同請求書は込山議員を含む7人の議員の連名で、渡辺議員から受けた16項目に及ぶ不適切な言動が綴られている。

 それから4日後の同23日付で渡辺議員は古川議長に辞職願を提出し、受理された。辞職理由は「健康上の問題」だった。

 この経過だけを見ると、政倫審請求を受け、渡辺議員が逃げ出したように映る。実際、そう捉えている関係者もいるが、その前に渡辺議員は入院しており、「このままでは迷惑をかける」、「治療に専念したい」といった考えから辞職したようだ。

 これを受け、町議会事務局は県町村議会議長会に対して「政倫審請求書提出後に辞職した議員について、審査することは可能か」等々の問い合わせをしていた。このため、その後の動きに時間を要したが、県町村議会議長会の顧問弁護士から「今回のケースでは辞職した渡辺元議員の審査を行うことが可能である」旨の回答があったという。

 ある議員はこう解説する。

 「条例文の解釈では、要件を満たした状況で、議長に政倫審請求書を提出し、それが受理された段階で『政倫審は立ち上がっている』ということになる。つまり、昨年8月19日に政倫審請求書を提出した時点で、政倫審は発足している、と。その4日後に渡辺議員が辞職したが、町議会事務局が県町村議会議長会の顧問弁護士に確認したところでは、『審査を行うことは可能で、渡辺元議員への招致要請もできる。ただし、強制はできない』とのことでした」

不適切行為を一部認定

 こうした確認を経て、昨年10月、政倫審委員として、畑幸一議員(副議長)、大河原正雄議員、角田真美議員の議員3人と、門脇真弁護士(郡山さくら通り法律事務所)、佐藤玲子氏(町人権擁護委員)、村越栄子氏(町民生児童委員)の民間人3人の計6人が選任された。委員長には門脇弁護士が就いた。

 政倫審は昨年11月14日、29日、12月20日と計3回開催され、3回目で報告書をまとめて古川議長に提出した。それによると、審査対象は「渡辺元議員の込山議員に対する行為がセクシャルハラスメント行為、パワーハラスメント行為、議会基本条例第7条第1号(町民の代表として、その品位または名誉を損なう行為を禁止し、その職務に関し不正の疑惑を持たれるおそれのある行為をしないこと)に違反するか否か」である。

 審査結果は次の通り。

   ×  ×  ×  ×

 本件審査請求の対象とされる行為のうち、委員会の会議中に、審査対象議員(渡辺元議員)が審査請求代表者(込山議員)に依頼して、審査対象議員の足に湿布を貼ってもらった行為は、審査会の調査によって認定することができる。そして、特段やむを得ない事情も認められない本件当時の状況を踏まえると、当該行為は、議案等の審査等を責務とする委員会活動中における町民の代表者としてふさわしい行為とは言えず、町民の代表者としての品位を損なう行為であり、条例第7条第1号に違反するとの結論に至った。

 なお、本件審査請求の対象とされる行為のうち、審査対象議員個人の行為とはいえない行為及び当事者間の金銭請求の当否を求めることにほかならない行為については審査不適との結論に至った。

 また、その他の行為については審査会の調査によっても真偽不明であり、その存否について判断できないとの結論に至った。

   ×  ×  ×  ×

 この結果を受け、当時の本誌取材に込山議員は次のように述べた。

 「(政倫審の報告書は)形式的なものでしかなかったが、一応『不適切』と認められた部分もありますし、町民の中には『もっとやるべきことがあるのではないか』といった声もあるので、私としてはこれで良しとするしかないと思っています。ほかの議員からは(もっと厳しく審査・追及すべきという意味で)『納得できない』といった意見も出ました。そうした発言で救われた部分もある」

 要は「納得したわけではないが、これで矛を収めるしかない」との見解だったのである。

 これで一応の決着を見たと思われたが、3月上旬、渡辺元議員が「当事者として今・真実を語る!!」と題した反論文を関係各所に送付した。

 本誌も渡辺元議員を取材してそれを受け取り、話を聞いた。一方で、込山議員からも政倫審請求書を提出した直後や、政倫審の結果が出た後に話を聞いているが、双方の主張は180度異なっている。

 すなわち、込山議員は「選挙期間中、あるいは当選後の議員活動の中で、渡辺議員からこんなことを言われた」、「こんなことをされた」と訴え、それに対し、渡辺元議員は「それは違う。実際はこうだった」と主張しているのだ。

 ほとんどが2人のときの出来事で、客観的な判断材料があるわけではない。そのため、どこまで行っても、水掛け論になってしまう。

 実際、先に紹介した政倫審の報告書でも、大部分は「真偽不明で、その存否について判断できない」とされている。唯一、認定されたのは、委員会の会議中に、渡辺議員(当時)が込山議員を呼びつけ、足に湿布を貼らせたという行為。これはほかの議員も見ていた場でのことのため、関係者に確認し「間違いなくそういうことがあった」と認定され、「町民の代表としての品位、名誉を損なう行為」とされたのだ。

政倫審後に反論の理由

 一方で、政倫審は渡辺元議員に説明、資料提出、政倫審への出席を求めたが、渡辺元議員はいずれの対応もしなかった。にもかかわらず、ここに来て、反論文を関係各所に送付したのはなぜか。渡辺元議員は次のように説明した。

 「今回の件は、(議会内の対立構造の中で)私を貶めようというのが根底にあったのです。だから、相手にするつもりもなかったし、『人の噂も75日』というから黙っていました。ただ、『謝罪しろ』とか、あまりにも騒ぎ立てるので、黙っていられなくなった」

 政倫審の結果が出た後、議会内では「不適切と認められた部分について、公開の場(議場)で、渡辺元議員に謝罪を求めるべき」との意見が出た。渡辺元議員の「『謝罪しろ』と騒ぎ立てるので黙っていられなくなった」とのコメントはそのことを指している。なお、3月議会最終日の3月17日、議員から「鏡石町議会として元鏡石町議会議員・渡辺定己氏に公開の議場での謝罪を求める決議(案)」が出されたが、否決された。

 一方で、「不適切」と認定された湿布を貼らせた行為については、渡辺元議員はこう説明した。

 「私が医師から受けた診断は狭窄症で、時折、極度の神経痛が襲う。あの時(委員会中に込山議員に湿布を貼らせた時)は本当に辛かった。一部は自分で湿布を貼ったが、それ以上は自分でできず、うずくまっていたところに、ちょうど込山議員が目に入り、貼ってくれ、と頼んだ」

 「その点については反省し、謝罪もした」という渡辺元議員。ただ、込山議員は「謝罪は受けていない。委員会という執行部やほかの議員が見ている場で、込山議員はオレ(渡辺元議員)の子分だということを示したかったからとしか思えない」と語っていた。

 いずれにしても、このことが政倫審で「町民の代表としての品位、名誉を損なう行為」と認められたことだけは事実として残っている。

 込山議員は、現職議員の死去に伴い、昨年5月の町長選と同時日程で行われた町議補選(欠員2)に立候補し初当選した。補選に当たり、込山議員に「議員をやってみないか」と打診し、選挙活動の指南・手伝いをしたのが渡辺元議員だった。そういう関係性からスタートして、今回のような事態になった。この補選を巡り、渡辺元議員は「選挙費用を立て替えた。その分を返還してほしい」、込山議員は「私の知らないところで勝手にいろいろされた」といったトラブルも発生している。

 込山議員は「最初は(渡辺元議員を)尊敬できる人だと思って、いろいろ勉強させてもらおうと思ったが、実際は全然違った」と言い、渡辺元議員は「(込山議員を)自分の後継者になってもらいたいと思い、目をかけたが裏切られた思いだ」と明かす。

 出口の見えない抗争はさらに続くのか。

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