「道の駅ふくしま」が成功した理由

「道の駅ふくしま」が成功した理由

 福島市大笹生に道の駅ふくしまがオープンして間もなく1年が経過する。この間、県内の道の駅ではトップクラスとなる約160万人が来場し、当初設定していた目標を大きく上回った。好調の要因を探る。

オープン1年で160万人来場

「道の駅ふくしま」オープン1年で160万人来場
週末は多くの来場者でにぎわう

 福島市西部を走る県道5号上名倉飯坂伊達線。土湯温泉や飯坂温泉、高湯温泉、磐梯吾妻スカイライン、あづま総合運動公園などに向かう際に使われる道路で、沿線には観光果樹園が多いことから「フルーツライン」と呼ばれている。

 そのフルーツライン沿いにある同市大笹生地区に、昨年4月27日、市内2カ所目となる「道の駅ふくしま」がオープンした。

「道の駅ふくしま」地図



 施設面積約2万7000平方㍍。駐車場322台(大型36台、小型276台、おもいやり5台、二輪車4台、大型特殊1台)。トイレ、農産物・物産販売コーナー、レストラン・フードコート、多目的広場、屋内子ども遊び場、ドッグラン、防災倉庫などを備える。道路管理者の県と、施設管理者の市が一体で整備に当たった。事業費約35億円。

 3月中旬の週末、同施設に足を運ぶと、多くの来場者でにぎわっていた。駐車場を見ると、約6割が県内ナンバー、約4割が宮城、山形など近県ナンバー。

 「年間の売り上げ約8億円、来場者数約133万人を目標に掲げていましたが、おかげさまで売り上げ10億円、来場者数160万人を達成しました(3月中旬現在)」

 こう語るのは、指定管理者として同施設の運営を受託する「ファーマーズ・フォレスト」(栃木県宇都宮市)の吉田賢司支配人だ。

「ファーマーズ・フォレスト」(栃木県宇都宮市)の吉田賢司支配人
吉田賢司支配人

 同社は2007年設立、資本金5000万円。代表取締役松本謙(ゆずる)氏。民間信用調査機関によると、22年3月期の売上高30億5600万円、当期純利益1554万円。

 「道の駅うつのみや ろまんちっく村」(栃木県宇都宮市)、「道の駅おおぎみ やんばるの森ビジターセンター」(沖縄県大宜見村)、農水産業振興戦略拠点施設「うるマルシェ」(沖縄県うるま市)などの交流拠点を運営している。3月には2026年度開業予定の「(仮称)道の駅こうのす」(埼玉県鴻巣市)の管理運営候補者に選定された。

 同社ホームページによると、このほか、道の駅内の自社農場などの経営、クラインガルテン・市民農園のレンタル、地域プロデュース・食農支援事業、地域商社事業、着地型旅行・ツーリズム事業、ブルワリー事業、企業経営診断・コンサルティング事業を手掛ける。

 本誌昨年3月号では、施設概要や同社の会社概要を示したうえで、「かなりの〝やり手〟だという評判だが、それ以上の詳しいことは分からない」という県内道の駅の駅長のコメントを紹介。競争が激しく、赤字に悩む道の駅も多いとされる中、指定管理者に選定された同社の手腕に注目したい――と書いたが、見事に目標以上の実績を残した格好だ。

 ちなみに2021年の「県観光客入込状況」によると、県内道の駅の入り込みベスト3は①道の駅伊達の郷りょうぜん(伊達市)131万人、②道の駅国見あつかしの郷(国見町)129万人、③道の駅あいづ湯川・会津坂下(湯川村)98万人。

 新型コロナウイルスの感染拡大状況や統計期間が違うので、一概に比較できないが、間違いなく同施設は県内トップクラスの入り込みだ。

 吉田支配人がその要因として挙げるのが、高規格幹線道路・東北中央自動車道大笹生インターチェンジ(IC)の近くという好立地だ。

 2017年11月に東北中央道大笹生IC―米沢北IC間が開通。21年3月には相馬IC―桑折ジャンクション間(相馬福島道路)が全線開通し、浜通り、山形県から福島市にアクセスしやすくなった。

モモのシーズンに来場者増加

モモのシーズンに来場者増加

 国・県・沿線10市町村の関係者で組織された「東北中央自動車道(相馬~米沢)利活用促進に関する懇談会」の資料によると、特に同施設開業後は福島大笹生IC―米沢八幡原IC間の1日当たり交通量が急増。平日は2021年6月8700台から22年6月9900台(12%増)、休日は21年6月1万0700台から22年6月1万3700台(30%増)に増えていた。

 各温泉街などで、おすすめの観光スポットとして同施設を宿泊客に紹介し、積極的に誘導を図っている効果も大きいようだ。

 「特にモモが出荷される夏季は来場者が増え、当初試算していた以上のお客様に支持していただきました。ただ、18時までの営業時間の間は最低限の品ぞろえをしておく必要があるので、今年は品切れを起こさないようにしなければならないと考えています」(吉田支配人)

 モモを求める来場者でにぎわうとなると、気になるのは近隣で営業する果樹園との関係だが、吉田支配人は「最盛期には、観光農園協会加入の果樹園の方に施設前の軒下スペースを無料でお貸しして出店してもらい、施設内外で販売しました。シーズン中の週末、実際にフルーツラインを何度か車で走ったが、にぎわっている果樹園も多かった。相乗効果が得られたと思います」と説明する。

 ただ、福島市観光農園協会にコメントを求めたところ、「オープンして1年も経たないので影響を見ている状況」(高橋賢一会長)と慎重な姿勢を崩さなかった。おそらく2年目以降は、道の駅ばかりに客が集中する、もしくは道の駅に訪れる客が減ることを想定しているのだろう。そういう意味では、2年目の今夏が〝正念場〟と言えよう。

 約500平方㍍の農産物・物産販売コーナーには果物、野菜、精肉、鮮魚、総菜、スイーツ、各種土産品、地酒などが並ぶ。売り場の構成は約4割が農産物で、約6割がそれ以外の商品。農産物に関しては、オープン前から地元農家を一軒ずつ訪ね出荷を依頼してきた経緯があり、現在の登録農家は約250人(野菜、果物、生花、加工品など)に上る。

 特徴的なのは福島市産にこだわらず、県内産、県外産など幅広い農産物をそろえていることだ。

 「地場のものしか扱わない超ローカル型の道の駅もありますが、福島県の県庁所在地なので、初めて来県した人が〝浜・中・会津〟を感じられるラインアップにしています」と吉田支配人は語る。

 売り場を歩いていると「なんだ、よく見たら県外産のトマトも並んでいるじゃん」とツッコミを入れる家族連れの声が聞かれたが、その一方で「福島に来たら必ずここに寄って、県内メーカーのラーメン(生めん)を買って帰る」(東京から訪れた来場者)という人もおり、福島市の特産品にこだわらず買い物を楽しんでいる様子がうかがえた。

 網羅的な品ぞろえの背景には、福島市産のものだけでは広い売り場が埋まらなかったという事情もあると思われるが、同施設ではその点を強みに変えた格好だ。

 もっとも、仮に奥まった場所にある道の駅で同じ戦略を取ったら「どこでも買える商品ばかりで、ここまで来た意味がない」と評価されかねない。同施設ならではの戦略ということを理解しておく必要があろう。

 吉田支配人によると、平日は新鮮な野菜や弁当・総菜を求める市内からの来場者、土日・休日は市外からの観光客が多い。道の駅は地元住民の日常使いが多い「平日タイプ」と、週末のまとめ買い・レジャー・観光などでの利用が多い「休日タイプ」に大別されるが、「うちはハイブリッド型の道の駅です」(同)。

オリジナルスイーツを開発

オリジナルスイーツを開発
人気を集めるオリジナルスイーツ

 そんな同施設の特色と言えるのはスイーツだ。専属の女性パティシエを地元から正社員として採用。春先に吾妻小富士に現れる雪形「雪うさぎ(種まきうさぎ)」をモチーフとしたソフトクリームや旬の果物を使ったパフェなどを販売しており、休日には行列ができる。

 チーズムースの中にフルーツを入れ、求肥で包んだオリジナルスイーツ「雪うさぎ」はスイーツの中で一番の人気商品となった。その開発力には吉田支配人も舌を巻く。

 同施設では70人近いスタッフが働いているが、本社から来ているのは吉田支配人を含む2、3人で、残りは100%地元雇用。県外に本社を置く同社が地元農家などの信頼を得て、幅広い品ぞろえを実現している背景には、情報収集・コミュニケーションを担う地元スタッフの存在があるのだ。

 もっと言えば、それらスタッフの9割は女性で、売り場は手作りの飾り付けやポップな手書きイラストで彩られており、これも同施設の魅力につながっている。売り場に展示されたアニメキャラや雪うさぎのイラストの写真が、来場者によりSNSに投稿され、話題を集めた。

 宮城県から友達とドライブに来た若い女性は「ホームページやSNSでチェックしたら、かわいい雰囲気の施設だと思ったのでドライブの目的地に選びました。お菓子を大量に買ってしまいました」と笑った。女性の視点での売り場作りが若い世代に届いていると言える。

 同社直営のレストラン「あづまキッチン」と3店舗のテナントによるフードコートも人気を集める。

 「あづまキッチン」では福島県産牛ハンバーグや伊達鶏わっぱ飯、地場野菜ピザなど、地元産食材を用いたメニューを提供する。窓際の席からは吾妻連峰が一望できるほか、個人用の電源付きコワーキングスペースが複数設置されているなど、多様な使い方に対応している。

 フードコートでは「海鮮丼・寿司〇(まる)」、「麺処ひろ田製粉所」、「大笹生カリィ」の3店舗が営業。地元産食材を使ったメニューや円盤餃子などのグルメも提供しており、週末には家族連れなどで満席になる。

 無料で利用できる屋内こども遊び場「ももRabiキッズパーク」の影響も大きい。屋内砂場や木で作られた大型遊具が設置されており、1日3回の整理券配布時間前には行列ができる。同じく施設内に設置されているドッグランも想定していた以上に利用者が訪れているとか。

 これら施設の利用を目当てに足を運んだ人が帰りに道の駅を利用したこともあり、年間来場者数が伸び続けて、目標を上回る実績を残すことができたのだろう。

 さて、東北中央道沿線には「道の駅伊達の郷りょうぜん」(伊達市、霊山IC付近)、「道の駅米沢」(山形県米沢市、米沢中央IC付近)が先行オープンしている。起点である相馬市から霊山IC(道の駅りょうぜん)まで約33㌔、そこから大笹生IC(道の駅ふくしま)まで約17㌔、さらにそこから米沢中央IC(道の駅米沢)まで約31㌔。車で数十分の距離に似た施設が並ぶわけだが、競合することはないのか。

 吉田支配人は、「道の駅ごとに特色が異なるためか、お客様は各施設を回遊しているように感じます。そのことを踏まえ、道の駅りょうぜん、道の駅米沢とは常に情報交換しており、『連携して何か合同企画を展開しよう』と話しています」と語る。

 本誌昨年3月号記事では、道の駅米沢(米沢市観光課)、道の駅りょうぜんとも「相乗効果を目指したい」と話していた。もちろん競合している面もあるだろうが、スタンプラリーなど合同企画を展開することで、より多くの来場者が見込めるのではないか。

課題は目玉商品開発と混雑解消

【課題は目玉商品開発と混雑解消】ももRabiキッズパーク
ももRabiキッズパーク

 同施設の担当部署である福島市観光交流推進室の担当者は「苦労した面もありましたが、概ね好調のまま1年を終えることができました。1年目は物珍しさで訪れた方もいるでしょうから、この売り上げ・入り込みを落とさないように運営していきたい」と話す。新規に160万人の入り込みを創出し、登録農家・加工業者の収入増につながったと考えれば、大成功だったと言えよう。

 来場者の中には「市内在住でドライブがてら訪れた。今回が2回目」という中年夫婦もいた。市内に住んでいるが、オープン直後の混雑を避け、最近になって初めて足を運んだという人は少なくなさそう。さらなる〝伸びしろ〟も期待できる。

 今後の課題は、ここでしか買えない新商品や食べられない名物メニューなどを生み出せるか、という点だろう。常にブラッシュアップしていくことで、訪れる楽しさが増し、リピーターが増えていく。

 道の駅りょうぜんでは焼きたてパンを販売しており、テナント店で販売されるもち、うどん、ジェラードなども人気だ。道の駅米沢では米沢牛、米沢ラーメン、蕎麦など〝売り〟が明確。道の駅ふくしまで、それに匹敵するものを誕生させられるか。

 繁忙期の駐車場確保、混雑解消も課題だ。臨時駐車場として活用されていた周辺の土地は工業団地の分譲地で、すでに進出企業が内定している。当面は利用可能だが、正式売却後に対応できるのか。オープン直後の混雑がいつまでも続くとは考えにくいが、再訪のカギを握るだけに、対応策を考えておく必要があろう。

 吉田支配人は東京出身。単身赴任で福島に来ている。県内道の駅の駅長で構成される任意組織「ふくしま道の駅交流会」にも加入し、研究・交流を重ねている。2年目以降も好調を維持できるか、その運営手腕に引き続き注目が集まる。

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