【福島市】メガソーラー事業者の素顔

【福島市】メガソーラー事業者の素顔

 福島市西部で進むメガソーラー計画の関係者が、思わぬ形で週刊誌に取り上げられた。中国系企業「上海電力日本」が発電所を整備する際、必ず関わっている人物なのだという。予定地の周辺住民は不安を口にしている。

週刊新潮が報じた「上海電力」との関係

週刊新潮が報じた「上海電力」との関係

 本誌昨年12月号で「福島市西部で進むメガソーラー計画の余波」という記事を掲載した。同市西部の福島西工業団地近くの土地を太陽光発電事業者が狙っているというもの。

 最初に浮上したのは、福島先達山太陽光発電事業の事業者による変電所計画。しばらくして立ち消えになったが、別の発電事業者がすぐそばの民有地を取得し、開閉所の設置を予定していることが分かった。

 《発電事業者は合同会社開発72号(東京都)で、福島市桜本地区であづま小富士第2太陽光発電事業を進めている。営農事業者は営農法人マルナカファーム(=丸中建設の関連会社、二本松市)。開閉所を含む発電設備の建設、運転期間中の保守・維持管理はシャープエネルギーソリューション(=シャープの関連会社、大阪府八尾市)が請け負う。

 発電所の敷地面積は約70㌶で、営農型太陽光発電を行う。最大出力約4万6000㌔㍗。今年7月に着工し、2024年3月に完工予定となっている。事業期間は約16年。

 開閉所は20㍍×15㍍の敷地に建設される。変圧器や昇圧器は併設しないため、恒常的に音が出続けるようなことはないという。発電所から開閉所までは特別高圧送電線のケーブルを地下埋設してつなぐ》(本誌昨年12月号記事より)

 ところが、これらの計画について発電事業者側がおざなりな説明で一方的に進めようとしたため、周辺住民が反発。

 開閉所につなぐ送電線は直前で地下から地上に出し、近くにある鉄塔から農地をまたぐ電線に接続する計画となっている。そのため、生活空間への影響を懸念する地権者や住民が計画変更を求めたが、開発72号は一度計画変更すると固定価格買い取り制度(FIT)の権利が失われることから応じなかった。

 そこで、地元町内会は資源エネルギー庁に対し、3月28日付で、発電事業者への指導を求める125人分の要望署名を提出した。

 そうした中で、さらに住民の不信感を増幅させる出来事があった。発電事業者である開発72号の代表者・戸谷英之氏と執行社員・石川公大氏が、『週刊新潮』が掲載した「上海電力」関連記事の中で繰り返し登場していたのだ。

 上海電力(正式名称・上海電力股份有限公司)は、中国の国有発電会社「国家電力投資集団」の傘下企業で、石炭火力発電を中心にガス、風力、太陽光発電を手掛けている。

 日本法人の上海電力日本(東京都千代田区、施伯红代表)は2013年9月に設立され、日本でのグリーンエネルギー(太陽光・太陽熱、風力、水力等)発電事業への投資、開発、建設、運営、メンテナンス、管理、電気の供給及び販売に関する事業を展開している。中国資本企業ではあるが、2015年8月に経団連に加入している。

 『週刊新潮』の記事は、上海電力日本の子会社によるメガソーラーが山口県岩国市の海上自衛隊岩国航空基地の近くに整備されていることに触れたうえで、中国政府に近い企業に基幹インフラ事業を任せる危うさを指摘する内容だった(『週刊新潮』10月27日号)。

『週刊新潮』の記事
『週刊新潮』の記事

 上海電力が進出する際の手口は、「合同会社」の転売を繰り返すというものだが、そこに出てくるのが前出・戸谷氏だ。

 不動産登記簿によると、2020年12月28日、SBI証券が同発電所の土地に根抵当権を設定した。債務者はRSM清和コンサルティング内に事務所を構える合同会社開発77号。この会社の代表社員が戸谷英之氏だ。記事によると、RSM清和監査法人の代表社員である戸谷英之氏と同姓同名だという。

 メガソーラー発電事業者・合同会社東日本ソーラー13には当初、一般社団法人開発77号(合同会社77号の親会社)が加入していたが、同年9月9日、合同会社SMW九州が合同会社東日本ソーラーに加入し、入れ替わるように一般社団法人77号が退社した。この合同会社SMW九州の現在の代表者は施伯红氏。上海電力日本の代表取締役だ。

 要するに、戸谷氏の会社が、上海電力日本の進出の手引き役になっていると指摘しているわけ。

 『週刊新潮』今年5月18日号では、北海道の航空自衛隊当別分屯基地に近い石狩市厚田区で進められている風力発電計画においても、全く同じスキームが採用されていることが報じられており、戸谷氏のほか、石川氏の名前も出てくる。

 本誌2021年4月号で、宮城県丸森耕野地区でメガソーラー計画に対する反対運動が展開されたことをリポートした。用地交渉担当の事業統括会社社長が住民の賛同を広げるため行政区長に金を渡そうとしたとして、贈賄容疑で逮捕された経緯があったが、ここで事業者となっている合同会社開発65号の代表者も戸谷氏だった。

 今年に入ってからは宮城県登米市に建設が予定されていたバイオガス発電所計画をめぐり、事業者が経産省に提出していた食品メーカーとの覚書を偽造していたことが発覚し、計画中止となった。事業者・合同会社開発73号の代表者は戸谷氏だ。

根強い地元住民の不信感

開閉所予定地
開閉所予定地

 これらの会社の電話番号はアール・エス・アセットマネジメント(東京都)というエネルギーファンドの資産運用管理会社と同じ番号で、関連会社だと思われる。上海電力日本との関係は判然としないが、ずさんな計画に関わっていたのは確かだ。

 たたでさえ、地元住民はメガソーラーやその関連設備が整備されることで、自然環境維持や防災などの面で影響を受けないか、不安視しているのに、投機目的丸出しのペーパーカンパニーでは不安が募るばかり。だからこそ、福島市桜本地区の住民も反対しているのだ。

 地元住民が反対していることについてどう受け止めているのか、開発72号に連絡したが、期日までに返答はなかった。

 地元町内会の代表者は「発電事業所は10年ほど前に権利を取得し、1㌔㍗36円という高い金額で売電できるので、住民の反対を押し切ってでも期限のうちに計画を進めたいのだと思います。そうした意向を受けてか、発電設備の建設を担うシャープエネルギーソリューションも地元住民の反対を押し切り、すでに工事に着手している。彼らは『地元住民に話をすればそれで了承を得た』と思っている節があります。農地への地上権設定にあっさり許可を出した市(木幡浩市長)にも、住民として協力できない意向を示す反対署名を提出する予定です」と語る。

 地元住民の不信感は相当強い状況。過去の事例のように開発72号は上海電力日本など他社に売却する狙いがあるのか。同地区の住民ならず、その動向を注視しておく必要がある。

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