糾弾記事の裏で贋作絵画を担保に多額融資受けていた地元誌社長
いわき信組による247億円の不正融資は、外部専門家から構成される第三者委員会の調査によって判明した。だが、この時点で不正融資の全容が明らかになったわけではなかった。この時公表された調査報告書にも「使途不明金が8億5000万~10億円」とあるように、調査は不明な点を残したまま終了していた。そこで、いわき信組は再調査を進めるため、6月の総代会で就任した金成茂理事長のもと、新たな外部専門家による特別調査委員会を発足させた。
不正融資を指揮していたのは、問題が発覚する昨年10月まで会長を務めていた江尻次郎氏だ。江尻氏は11月1日に会長を辞任した直後から始まった第三者委員会の調査には応じなかったが、6月以降の特別調査委員会の調査には協力的だった。問題が社会を大きく揺るがしたことで、態度を改めたとみられる。
再調査の結果は10月31日に開かれたいわき信組の会見と、同じ日に公表された二度目の調査報告書で明らかになった。実行された不正融資は、5月に第三者委員会が発表した247億円から279億8400万円に増えるなど全容の把握が進んだことがうかがえた。だが、マスコミや世間の注目を集めたのは「反社会的勢力に9億4900万円が流出」していた事実だった。
では、一体誰に支払ったのか。調査報告書に登場するのが「Σ」(シグマ)という人物だ。
Σはいわき信組の大口融資先で、暴力団との関係は定かではないが、組合内では鈴木勇夫理事長(1992~2001年)の時代から「少なくとも暴力団関係者と親交を有する周辺者」と位置付けられていた。
調査報告書によると、Σに渡った資金は概ね次の通り。①鈴木理事長がΣから「右翼団体の街宣活動を止めるには解決料が必要」と脅され3億円を支払った。②江尻氏が同級生にラブホテルの購入資金や改修費用を水増し融資した後、戻させた水増し分の1億円をΣに支払った。③江尻氏がΣから不正融資の口止め料を要求され、市内の商業施設の駐車場で1億円を手渡しで支払った。④Σの子に水戸市内の飲食店テナントビル(担保評価額5400万円)の購入資金として3億円を融資する替わりに、Σから「いわき信組に対し今後一切金銭の要求をしない」という確認書を受け取った。
端的に言ってしまうと、Σは「猪狩秀孝」という男だ。
1992年、いわき信組は当時の江尻次郎総務課長と鈴木丈夫検査副部長が市内の土地取引をめぐり、組合員の建設会社社長から詐欺罪で刑事告訴される問題を抱えていた。この土地取引に絡んで、江尻氏と鈴木氏は不動産取引の資格を持たない猪狩氏に仲介手数料名目で3000万円が渡るよう工作したとされる。
猪狩氏については、匿名ではあるが他のマスコミも詳報しており、本誌が論じるのはここまでにしたい。この先は、調査報告書に書かれているのにマスコミが報じていない事実にスポットを当てる。
調査報告書の13~14ページには反社に資金提供した事例が次のように綴られている。
《勇夫氏(本誌注・鈴木勇夫元理事長)は、自治体や企業における不祥事追及等を主眼とする情報誌の関係者からも、勇夫氏をはじめとする当組合関係者による不正を暴く旨脅されて、1997年頃、担保価値不十分な絵画を担保とするなどして8億円の融資を実行したこともあった(当該融資は、全く元本回収が行われないまま、2004年までに全額償却された)》
ここも端的に言おう。「情報誌」とは月刊財界ふくしま(㈱財界二十一、福島市、高橋豊彦社長)のことで、その「関係者」とは融資が行われた当時社長だった竹内陽一氏(2020年8月死去)を指す。
(以下は『政経東北』12月号で)
























