いわき信組「顧客口座偽造」の衝撃

いわき信組「顧客口座偽造」の衝撃

 昨年11月に発覚したいわき信用組合(いわき市、本多洋八理事長)の不正融資問題。2008年7月、当時最大の融資先だった企業の資金繰りを支援するため、旧経営陣が同企業の役員の家族に貸し出したように装い、迂回融資をしていた。2011年の震災・原発事故で融資先が一時営業休止するまで続き、融資総額は10億円を超える。

店舗数15店
組合員4万1810人
出資金158億6494万円
預金2041億6148万円
貸出金1215億0862万円
自己資本229億0761万円

 昨年10月、不正融資を隠蔽しているというⅩ(旧ツイッター)での投稿について、全国信用協同組合連合会から連絡があり、その後の内部調査で事実と判明した。

 併せて元職員による4500万円の横領を旧経営陣が隠蔽したことや、元職員が金庫から現金20万円を着服していたことも公表された。

 当時の江尻次郎理事長は2004年から18年間務め、2022年に会長に就任したが、問題の発覚により昨年11月1日付で辞任した。

 一連の不祥事を受けて同信組は利害関係のない弁護士や公認会計士で構成される第三者委員会を設置し、調査を進めていた。

 そうした中、5月19日付の朝日新聞が新たに報じたのが「顧客口座偽造」疑惑だ。

 預金者の名義を使って口座開設書類を偽造し勝手に別の口座を作り、その口座へ融資を行う形で資金を流出させていた。資金は大口取引先への融資が不良債権化したことを隠す目的で、返済の肩代わりに使っていたという。融資は1口座あたり数百万円から数千万円で、同信組内では「B資金」と呼ばれていた。

 昨年11月の不正発覚後、一部の組合員が架空融資の証拠の保全を福島地裁いわき支部に申し立て、今年2月に同支部が同信組本店に入って検証。関係書類を確認し、証拠として保全する手続きを取った。その証拠に含まれていたB資金のリストには2024年秋時点で約90口座、計17億円超が記されており、架空融資に使われた印鑑90本も保管されていたという。

 自分の口座が使われていることを知らない預金者も多かったようで、朝日新聞記事では2009年に亡くなった男性が昨年10月、債務への返済資金として3950万円の融資を受けたことになっていた事例も紹介された。目的こそ違うが、他人になりすまし代金をだまし取る詐欺師のような手口が、公益性の高い金融機関で展開されていたことになる。

 同信組には震災後の2012年に国の公的資金と信用組合の全国組織による資金支援、合わせて200億円が投入されたが、その後、架空融資を相次いで取り消していたことが分かっている。江尻元会長は組合員から私文書偽造などの疑いがあるとする告発状を福島地検いわき支部に提出され、銀行法違反や協同組合による金融事業に関する法律違反の疑いでも告発状が提出された。組合員からは「地元の金融機関の不祥事にショックを受けた」、「あきれてしまう」という声が聞かれる。

 5月30日には第三者委員会の会見が開かれ、調査結果が公表される。締め切りの都合上、この稿で会見の様子は伝えられないが、どこまで踏み込んだ調査結果が公表され、その結果を踏まえて金融庁がどのように対処するのか。「信用」を掲げた金融機関が組織的に口座を偽造し、架空融資で不良債権を隠すという異例な事態だけに、かなり厳しい処分が予想される。

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