新聞部数減を補う福島県からの受託事業

新聞部数減が続く中、様々な部署に社員を多く抱える新聞社は購読料以外の収入源の確保が必須だ。福島民報と福島民友の2紙体制の福島県は競争しつつ協調しながら、自治体の広告やPR業務を獲得している。本誌は福島県に情報公開請求し、2022~24年度に地元2紙が受託した事業を調査した。2紙ともPR事業を受注する際に対価を得て社説や一般記事まで広告化し、報道機関としての矜持を失った契約を結んでいることが分かった。懐事情を慮る。

民報・民友に「広告化」した記事が散見

本誌は2025年3月号と8月号に検証記事「福島県の新聞部数減を読み解く」を掲載した。新型コロナ禍を経て24万部だった福島民報は4万部(約17%)減り、17万部だった福島民友は3万部(約20%)減らした。全国紙は5000~1万部減り、割合では各紙約30%の減少だった。

公開されている直近の部数は次ページの一覧表のとおり。2025年4月時点の販売報告部数は、福島民報が19万5601部、福島民友は13万5041部。全国紙は1~3万台に落ち込んでいる。多くの社員を抱える新聞社は別の収入源を確保しなければならない。重要性が高まるのが自治体から受託する広告やPR業務だ。

福島県内の日刊紙販売報告部数 市・郡別2025年4月(出典:日本ABC協会レポ-ト)

合計福島民報福島民友読売新聞朝日新聞毎日新聞日経新聞産経新聞その他
福島県4140911956011350412974930248996799642734787
市部計3466351525811185092695327993900485722328695
郡部計67456430201653227962255963139240692
いわき市742792750625700765583052721169061092
福島市6936130466228475396578419562047578287
郡山市649322753421184661053881605213143050
会津若松市261121110994961702224055480218029
須賀川市163776046665815391440317312641
白河市152236620652639210293392535113
南相馬市152588830418577755444626511289
伊達市14322826345234525092432408210
喜多方市1313659915087684894232200453
二本松市1261475133378453797181220684
相馬市86753328374678934215115152116
本宮市836838573295318545170156261
田村市7978551818841861668910530
伊達郡9542548530192453351732254713
西白河郡802452631132900191173278816
石川郡73943763278532825077127631
田村郡6998468415832012759512238
大沼郡684149481230195274877730
東白川郡60233317195132719561130393
南会津郡5882394914541321618978181
河沼郡495033251081133234538737
耶麻郡47643448826149174638321
双葉郡3539222886515113633712134
岩瀬郡22561675440469050
相馬郡124393516635301324634
安達郡

本誌は地元2紙が2022~24年度に県から受託した業務に関する書類を県に情報公開請求して入手し分析した。巨大事業で様相がほかの事業と大きく異なったのが、民報が3年連続で受注している「ふくしまの漁業の魅力体感・発信事業」だ。事業費は2022年度が1億1999万円、23年度が1億9800万円、24年度が1億0147万円。公募型プロポーザルで受注した。

「オールメディアによる漁業の魅力発信事業」と銘打たれ、福島民報を窓口に福島民友、福島テレビ、福島放送、福島中央テレビ、テレビユー福島、ふくしまFM、ラジオ福島の地元メディア8社が参画する。 

「漁業の魅力発信」が求められたのは、福島第一原子力発電所とそこに溜まった放射性物質を含む汚染水を2023年夏に基準値以下に薄めて「処理水」として流した際に風評被害が再燃するのを危惧したからだ。処理水放出は今も続くが、賛否が巻き起こっている。

新聞、テレビは報道機関であり、権力監視やニュースという社会課題(必要だが誰かにとっては都合の悪い情報)を伝えるのが本来の役目。依頼者の要望を受けてプラスの情報を伝える広報業務を担うと役割が相反する場面がある。収益のために県から請け負ったPR業務一辺倒になれば、県との癒着を深め、報道の役割を曲げかねない。

これについて、本誌は2023年7月号「県庁と癒着する地元『オール』メディア」と同年12月号「福島民報社が手掛けた県事業11件」(いずれも牧内昇平氏執筆)で、民報が自ら受託した事業を社説や一般記事を装ってPRしていることを問題視した。

《オールメディア風評払拭事業が「聖域」であるべき報道の分野まで入り込んでいる(中略)権力とは一線を画すのが、権力を監視するウォッチドッグ(番犬)たる報道機関としての信頼を保つためのルール》

一方で、発注者である県にとって報道機関の原則は知ったことではない。金を払っているのだから持ち上げる記事だけを書いて「寝た子を起こさないでほしい」というのが本音だろう。報道機関としての矜持を保とうと一般記事で原発事故や廃炉に関するマイナス情報を伝え、PR業務一辺倒にならないようにしている民報の煮え切らない態度を県職員はこう評する。

「偏向報道の地元企業よりも公平なPR会社の方が理解している」(プロポーザルの審査員講評より)

報道スタンスは最終的にはそれぞれの社の問題。読者ができることは金の流れを追って内情を把握するぐらいだ。掲載した県から地元紙への主な受注事業一覧を見てほしい。

福島民報が県から受託した主な業務

2022年度

事業名発注元金額(円)備考
ふくしまの漁業の魅力体感・発信事業農林水産部119,999,0008社で受注
県政広報のための広告掲載知事公室27,912,500
いわきの強みを活かした持続可能な地域づくり事業いわき地方振興局11,330,000
ふくしまベンチャーアワード開催等事業商工労働部11,232,650
テレワークタウンしらかわ推進事業県南地方振興局9,699,800
「里山を自転車で楽しみながら健康になろう」事業いわき地方振興局9,500,000
フレイル対策の住民向け普及啓発業務委託保健福祉部8,850,006
ふくしまの心豊かな暮らしづくり推進事業(交流会・スタンプラリー)企画調整部7,425,550
食の担い手応援事業委託業務いわき地方振興局7,128,000
健康長寿ふくしまトップ会談等開催業務委託保健福祉部6,912,730
国際交流員による「ふくしまの今」発信事業生活環境部6,887,540
ふくしまチャレンジライフ推進事業(県南地方)県南地方振興局4,928,000
「健康的な食環境づくりを推進するためのトップ会談」開催業務保健福祉部4,831,338
がん検診キャンペーン事業業務保健福祉部4,749,800
ふるさとふくしま情報提供事業(地元紙ダイジェスト版の作成業務)企画調整部3,055,556
PCB廃棄物の期限内処理に向けた新聞広告掲載業務(2022年8月18日、12月22日掲載)生活環境部2,816,000
林業アカデミーふくしまにおける広報0401業務不明2,090,000
経営調査広報の新聞広告掲載企画調整部269,500予定価格

2023年度

事業名発注元金額(円)
ふくしまの漁業の魅力体感・発信事業農林水産部198,000,000
県政広報のための広告掲載知事公室27,912,500
マスメディア活用の「フレイル対策」普及啓発業務委託保健福祉部24,995,962
いわきの強みを活かした持続可能な地域づくり事業いわき地方振興局12,540,000
ふくしまベンチャーアワード開催等事業商工労働部11,231,000
しらかわスタイル関わりびと創出事業県南地方振興局9,597,500
ふくしまの心豊かな暮らしづくり推進事業(交流会・スタンプラリー)企画調整部8,272,000
いわき自転車合宿「聖地」化プロジェクト事業いわき地方振興局7,898,000
健康長寿ふくしまトップ会談等開催業務委託保健福祉部7,224,910
がん検診キャンペーン事業業務保健福祉部7,193,232
食の担い手応援事業委託業務いわき地方振興局6,930,000
国際交流員による「ふくしまの今」発信事業生活環境部6,062,870
高校生meet up ふくしま!プロジェクト実施業務県北地方振興局4,828,901
選挙啓発サポーターネットワーク事業業務委託選挙管理委員会4,003,890
健康的な食環境づくりセミナー開催業務保健福祉部3,935,525
ふるさとふくしま情報提供事業(地元紙ダイジェスト版の作成業務)企画調整部3,055,556
林業アカデミーふくしまにおける広報0501業務不明2,090,000
過疎・中山間地域振興事業(農林業体験ツアー運営)業務いわき農林事務所1,999,900
PCB廃棄物の期限内処理に向けた新聞広告掲載業務(2023年8月29日掲載)生活環境部1,551,000
県内外避難者等配布用新聞作成業務委託教育庁1,410,750
省エネ設備更新事業補助金広報(2024年1月22日掲載)商工労働部1,485,000
省エネ設備更新事業補助金広報(2024年2月16日掲載)商工労働部1,441,000
省エネ設備更新事業補助金広報(2024年3月6日掲載)商工労働部990,000

2024年度

事業名発注元金額(円)備考
ふくしまの漁業の魅力体感・発信事業農林水産部101,475,000
県政広報のための広告掲載知事公室27,912,500
企業と連携した「フレイル対策」普及啓発業務委託保健福祉部24,683,080
ふくしまベンチャーアワード開催事業商工労働部11,231,000
健康長寿ふくしまトップセミナー等開催業務保健福祉部9,942,570
環境にやさしい農業拡大推進事業(消費拡大PR業務)業務委託農林水産部8,474,380見積額
ふくしまの心豊かな暮らしづくり推進事業(認知度向上・観戦促進)業務委託企画調整部7,595,500
オーダーメイド型企業間連携婚活イベント推進事業保健福祉部7,050,000見積額
おたねにんじん利用促進事業業務委託会津地方振興局5,734,400見積額
いわきの強みを活かした持続可能な地域づくり事業(進出企業の県外出身社員等とのエンゲージメント創出事業)いわき地方振興局5,214,000
国際交流員による「ふくしまの今」発信事業生活環境部5,133,000
県北で活躍する先輩とのリアルトーク実施業務県北地方振興局4,960,806
いわきの強みを活かした持続可能な地域づくり事業(サイクリングの「きっかけ」づくり事業)いわき地方振興局4,520,200
選挙啓発サポーターネットワーク事業業務委託選挙管理委員会4,005,100
選挙啓発サポーターネットワーク事業業務委託選挙管理委員会4,005,100
“合宿”による若者の交流人口拡大・地域振興事業(自転車合宿)いわき地方振興局3,360,000
国保健康づくり推進事業保健福祉部3,355,000
ふるさとふくしま情報提供事業(地元紙ダイジェスト版の作成業務)企画調整部3,055,556
ふくしまの酒PRのための新聞広告掲載業務観光交流局1,485,000

福島民友が県から受託した主な業務

2022年度

事業名 発注元 金額(円) 備考
県政広報のための広告掲載知事公室24,906,750
ふくしまっこ遊び力育成事業「ふくしま元気UPプロジェクト2022」保健福祉部17,033,500見積額
ふるさとふくしま情報提供事業(地元紙ダイジェスト版の作成業務)企画調整部3,055,556
PCB廃棄物の期限内処理に向けた新聞広告掲載業務生活環境部2,475,000
林業アカデミーふくしまにおける広報0402業務不明1,881,000
県内外避難者等配布用新聞作成業務教育庁1,399,970
経営調査広報の新聞広告掲載企画調整部220,000予定価格

2023年度

事業名発注元金額(円)備考
県政広報のための広告掲載知事公室24,906,750
「ふくしま推しの健活フェスタ」開催業務保健福祉部19,989,750
ふくしまっこ遊び力育成事業「ふくしま元気UPプロジェクト2023」保健福祉部12,941,500見積額
ふるさとふくしま情報提供事業(地元紙ダイジェスト版の作成業務)企画調整部3,055,556
林業アカデミーふくしまにおける広報0502業務不明1,881,000
PCB廃棄物の期限内処理に向けた新聞広告掲載業務生活環境部1,309,000
民間団体と連携した関係人口創出・拡大及び移住促進セミナー事業不明750,134
省エネ設備更新事業補助金広報(2024年1月22日広告)商工労働部1,375,000
省エネ設備更新事業補助金広報(2024年2月16日広告)商工労働部1,100,000
省エネ設備更新事業補助金広報(2024年3月4日広告)商工労働部1,045,000

2024年度

事業名発注元金額(円)備考
県政広報のための広告掲載知事公室24,906,750
プレコンセプションケア普及啓発業務不明16,272,564
南会津つながり深化事業南会津地方振興局6,399,278
狩猟魅力発信事業生活環境部4,498,725見積額
国保健康づくり推進事業保健福祉部3,058,000
ふるさとふくしま情報提供事業(地元紙ダイジェスト版の作成業務)企画調整部3,055,556
県内外避難者等配布用新聞作成業務教育庁1,718,200

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