【只見町】駅前複合施設整備の課題

【只見町】駅前複合施設整備の課題

 只見町は現在、駅前複合施設の整備を計画している。まだ構想段階だが、端的に言うと「道の駅のようなもの」らしい。そう聞いて思い出したのが、数年前、同町では道の駅整備計画があり、「基本計画」の作成まで至ったが、その後は動きがない。基本計画ができていた道の駅整備が〝凍結〟状態になり、いまになって「道の駅のようなもの」を整備することになった背景を探った。

道の駅計画〝凍結〟で類似施設に切り替え

【只見町】駅前複合施設整備 地図

 ある町民はこう話す。

 「今年の年賀の交歓会で、渡部勇夫町長が『駅前複合施設を実現したい』旨を語っていたそうです。議員や商工会関係者などは昨年夏ぐらいの時点で、ある程度の構想は明かされていたそうですが、私はその話を聞いて初めて知りました。一体、どういう施設になるのか」

 同町の今年度当初予算には、「只見駅前複合施設設計委託料」として6270万円が計上されている。一方で、本誌が入手した資料(基本的な構想の概要版)には次のように記されている。

 「只見町は2022年のJR只見線の全線再開通や、2026年秋〜2027年夏ごろ開通予定の国道289号八十里越など、交通環境の大きな転換点を迎えようとしています。しかしながら、近年は新型コロナウイルスのまん延、急激な人口減少による地域活力の停滞など、生活サービス基盤の持続にも影響を及ぼしています。複合施設は、こうした変化を絶好の機会と捉える一方、従来の観光拠点に加え、町民の生活基盤や賑わい、子育てなどの機能を新たに付加した複合施設の整備を目指します」

 計画地は只見駅前広場で、施設の機能は以下の通り。

 ①観光情報発信・誘客促進施設▽情報発信の強化、観光誘客を推進するための立ち寄り拠点機能
 ②町民生活の支援施設▽町民の生活サービスの基盤を維持する生活用品(食料品、薬、日用品等)が購入できる機能
 ③子育て・コミュニティー交流施設▽子どもから大人まで世代間交流や町民と観光客が交流できる賑わい機能
 ④持続可能な地域振興施設▽ユネスコエコパークの理念に基づく、自然を生かした誘客拠点機能
 ⑤アウトドアフィールド拠点施設▽本町の自然豊かなフィールドを活用した体験型観光を展開する拠点機能

 この基本的な構想を示す概要には「道の駅基本計画を踏襲し……」といった文言が出てくる。

道の駅はどうなった?

 確かに、以前、同町では道の駅整備計画があった。2018年ごろから検討を開始し、2019年には基本構想、2020年には基本計画が策定されたが、コロナ禍の影響もあり、その後は進展がなかった。そうした折、道の駅に類似するような駅前複合施設の整備計画が持ち上がったのである。

 町によると、「道の駅整備を断念したわけではない」としつつ、「町民の生活基盤整備の方が喫緊の課題」として駅前複合施設整備を優先させたということのようだ。

 というのは、現在、町内では生活に密着した食料品、日用品などが購入できるところが非常に限られている。加えて、食事ができるようなところも少ない。

 一方、道の駅は24時間365日利用できるトイレ・休憩施設が必須になるが、同町でいまのような冬季にそれが必要かと言うと、必ずしもそうとは限らない。

 そのため、道の駅のもう1つの大きな機能である道路・地域情報の発信などのほか、町民が日々の生活で必要なものを調達できる機能を備えた施設整備を優先すべき、といった判断から駅前複合施設の整備を計画しているということだ。

 要するに、道の駅の機能から「24時間365日利用できるトイレ・休憩施設」という部分を弱くし、代わりに町民向けの「生活サービスの基盤を維持する生活用品(食料品、薬、日用品等)が購入できる機能」を備えた施設ということになる。

 町では同計画について、昨年夏ごろから商工会関係者と話し合いを行ってきた。生活用品販売や飲食店のテナントとして入ってもらえるところはあるか、といった交渉のためだが、現時点ではまだそれが決まっていない。これらは同施設の肝になる部分のため、そのパートナーさえ見つかれば一気に進んでいくだろうが、手を上げてくれるところを探すのに苦労しているようだ。それでも、理想は町内事業者に担ってもらうことで、ヒアリング・交渉を続けている状況。

 町では2026年秋〜2027年夏ごろとされる国道289号八十里越の開通までには実現したい意向だが、果たしてどうなるか。

 ところで、同町はアウトドア総合メーカーのモンベル(大阪市)と包括連携協定を結んでいる。同社は4月に県内初となる直営店と、アウトドア拠点施設を4月25日に三春町にオープンする予定。施設名は「アウトドアヴィレッジ三春」で、東北最大級の売り場面積となることもあり話題を集めている。

 只見町の駅前複合施設計画でも「ユネスコエコパークの理念に基づく、自然を生かした誘客拠点機能」、「自然豊かなフィールドを活用した体験型観光を展開する拠点機能」を想定しており、そういった部分に関してはモンベルの協力を得たい意向。そうなれば話題性はつくれるだろう。

 その早期実現のためにも、前述したように肝となる食料品・日用品を取り扱うテナントを見つけられるかがポイントになる。

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