郡山市の「ビッグアイ」は、JR郡山駅西口に位置する地上24階・地下1階、高さ133㍍の複合ビルで、2001年4月のオープンから25周年を迎える。地方都市において、駅前再開発事業の走りとも言える同施設は、この四半世紀で何をもたらしたのか。
止まらない「駅前から郊外へ」の流れ

施設の構成は立面図の通り。1〜5階が商業施設「モルティ」、6〜7階が各種証明書の発行や戸籍などの届出ができる「郡山市民サービスセンター」、展示室や各種コーナーを備えた「郡山市民ふれあいプラザ」、会議室などを備えた「郡山市民交流プラザ」で構成される「市民プラザ」、8〜14階が定時制と通信制課程がある県立郡山萌世高等学校、15〜19階が「事務所施設」(オフィスエリア)、20〜24階が高さ世界一としてギネス認定されたプラネタリウムがある「郡山市ふれあい科学館『スペースパーク』」となっている。
もともと同所には、百貨店のそごうが出店する計画を示しており、地元関係者らは同店を核とした駅前再開発を進めたい意向だった。それが1980年前半のこと。しかし、1985年に百貨店を核とする再開発計画に慎重だった青木久氏が市長に当選。市として都市計画の見直しを行い、これを受け、そごうが出店計画を白紙撤回した。その後、さまざまな案が浮上した中、1990代後半までに、商業施設だけでなく公共施設や教育施設が入居する複合施設を建設することが決まった。
地元関係者の中には、いまだに「あの時、そごうが出店していたらどうなっていただろうか」という人もいる。そごうの当初計画が実現していたら、1980年代後半ごろにオープンし、その後、そごうは2000年に事実上の倒産に至ったから、その前後に撤退することになっただろう。当然、その後に「跡地はどうするか」といった議論になり、10年遅れでビッグアイの縮小版のような施設が建設されたかもしれない。
それはともかく、そうしてビッグアイは、郡山駅西口再開発事業の核として建設され、2001年4月に開業(※ふれあい科学館はそこから半年遅れでの開業)した。同施設の所有者は「ビッグアイ管理組合」で、郡山市、福島県、商業施設と事務所施設の各区画の所有者などが同組合の構成メンバーとなる。市民サービスセンターがある6〜7階と、ふれあい科学館がある20~24階が郡山市、県立高校がある8〜14階が県の持ち分ということになる。

25年も経てば、修繕が必要な部分が出てくると思われるが、市都市政策課によると「基本的には、それぞれの持ち分のところは、所有者が修繕費用を捻出することになり、エレベーターなどの共有部分と言えるところは、管理組合で『中期修繕計画』を作成して、協議制のような形で対応することになる」という。
運営会社の経営状況

ここからは3つのテーマに沿って、同施設について見ていきたい。
1つ目は運営会社の経営状況。同施設の運営を担っているのは郡山駅前再開発株式会社。市が筆頭株主の第三セクターである。とはいえ、資本金3億円に対して、市の出資は1億0200万円(出資比率34%)で、完全な行政依存というわけではない。
市公表の同社の決算資料によると、過去5年間の売上高、当期純利益は別表の通り。
ここ5年は黒字を計上しており、累積欠損もゼロ。ただ、2024年度は売り上げが4億円超減少した。受託収入の減少が要因という。
経営状況概要(2024年度)の「市の評価」には次のように記されている。
「当団体は20期連続で当期純利益の黒字を確保しており、安定した経営が行われている。(中略)また、コロナ禍前の水準までは未だ回復せず、電気代等水道光熱費の高騰の影響も大きく受けており、今後も経営状況の見通しが厳しい状況にあることから、更なるコスト管理の徹底を図りつつ、テナント構成の見直しや新規事業の開拓・空き店舗率の改善等による収益性の向上に努め、経営の健全化を図る必要がある」
同社に問い合わせたところ、担当者は「決算状況については市の公表の通りです」と話し、記者が「市の評価では『テナント構成の見直しや新規事業の開拓・空き店舗率の改善等による収益性の向上』が必要とされていたが」と尋ねると、次のように述べた。
「(モルティの)テナントについては、現在1割ほど空きがある状況です。その詳細(テナントが撤退した理由など)については契約の関係で、相手もあることなので話せませんが、秋口には埋まる見通しです」
当初はファッション系のテナントが多かったが、いまはサービス・カルチャー系が増えた。同社担当者によると「時代の流れと言いますか、そうならざるを得なかったという側面があります」とのこと。
ただ、ある関係者は「郊外型店舗には勝てない」との見解を語った。
「郊外型のショッピングモールなどは、例えばイオンなどのキーテナントがあり、そこに映画館や大型の飲食ゾーンなどがあったうえで、さまざまなテナントが入居しています。そういったところと比較した際に、消費者がどちらに行くか。大部分は郊外型ショッピングモールに行くでしょうから、厳しいのは当然だと思います」
市の評価では「テナント構成の見直しや新規事業の開拓・空き店舗率の改善等による収益性の向上」が指摘されていたが、簡単ではないこということだ。
市の関与度と街の声
2つ目は市の関与度、市への依存度について。
前述したように、市は管理組合の一員であり、運営会社(郡山駅前再開発)の筆頭株主でもある。出資金は1億0200万円で、そのほか、運営会社への貸付金もある。2024年度末で1460万円。2014年度末時点では1億6060万円だったから、徐々に減少していることがうかがえる。
一方で、運営会社は市から、「市民プラザ施設管理業務」、「郡山駅前広場管理業務」、「郡山駅前西口広場設備保守管理業務」、「郡山駅西口ロータリー混雑状況記録編集業務」、「駅前周辺カラス巡回、後追い業務」などの業務を請け負っている。それら業務や、随意契約業務の比率は、計上収益(売上高)の24・8%を占めている。2024年度の売上高は7億1870万円だから、約1億7800万円は市からの請負業務による収入ということになる。
この点について、市の評価では「法人の自主性をより保っていくことが必要」とされている。市都市政策課にも確認したが、要は市からの委託業務はこれまで通りやってもらうとして、商業施設等の売り上げが増えれば、その分、市からの業務の比率は下がるから、そうなるように努めていくべき、ということだ。
そのほか、運営会社の人員については、現在、役員・職員に市からの派遣、あるいは市職員退職者はいないという。
もし、何かあった際、市には建物の持ち分比率、あるいは運営会社の出資比率に応じて、責任が発生することになろう。ただ、少なくとも現状は市に大きな負担は生じていないと言えそう。
ただし、1つ注意が必要。20〜24階部分の郡山市ふれあい科学館は、市100%出資の公益財団法人・郡山市文化・学び振興公社が指定管理者となっている。同法人には市の出資金1億1000万円のほか、2024年度は市から補助金9138万円、業務委託料9418万円、指定管理料8億5608万円が支出された。同法人は市民文化センター、文学の森資料館、開成館、市男女共同参画センター、文化調査研究センターなどの運営も担っており、すべてが「ビッグアイ絡み」ではないが、少なくともふれあい科学館は行政依存で運営されていることになる。
3つ目は街の声。ビッグアイができ、街はどう変わったのか。
ある商店主はこう話す。
「中の人(テナント入居者)は大変でしょうけど、そりゃあ、ないよりはあった方がよかったでしょ。ただ、費用対効果という視点で見たらどうでしょうね。うーん……難しいところですね」
一方、ある事業主は「ビッグアイができたからといって何も変わらないですよ」と話した。
そのほか近隣商店などで話を聞いたが、代替わりがあったり、ビッグアイができてから商売を始めた等々の理由で「ビッグアイがなかった時代を知らないから、あれができてどう変わったと聞かれても……」という人が複数いた。
総じて言うと、あまりピンと来ていない、関心がないといったところか。言い換えると、さほど変化はない、あるいは「駅前から郊外へ」という流れを変えられるほどの施設ではない、ということだろう。
以上、ビッグアイについて見てきたが、今後の課題は、1つは「商業施設(モルティ)エリアを郊外型店舗に負けないだけの魅力ある構成にできるか」、2つは「『駅前』という価値を高められるか」3つは「今後さらに年月が経ち、建物の老朽化が顕著になってきた際、設備更新などのコストに耐えられるか」といったことが挙げられよう。どれも簡単な課題ではない。

























