湯川村でも起きていた議員ハラスメント

湯川村でも起きていた議員ハラスメント

役場職員の4分の1近くが議員からハラスメントを受けていた――そんな驚きの調査結果を湯川村議会が公表した。いったいどんな内容だったのか、結果報告書を読み解く。

職員調査で分かった「レベルの低さ」

湯川村役場
湯川村役場

調査はハラスメント条例制定に当たり湯川村議会が実施したもの。他市町村で議員によるハラスメントが問題になったこともあって、あらためてハラスメント対策を徹底する方針を決め、議会改革特別委員会を設置。まず実態を把握するべく、役場職員・議員にアンケート調査を実施したところ、職員の24%が「議員からハラスメントを受けたことがある」と回答した(下のグラフ参照)。


回答者数は議員9人(定数9)、職員106人中84人。全体の回答率は87・7%にのぼった。ハラスメントへの関心の高さに加え「最近は村外出身の職員が増えており、しがらみがなく意見を言える人が多い」(ある村民)という事情も関係しているかもしれない。

ハラスメントの内訳(複数回答可)は、パワハラが「威圧的・高圧的、理不尽に罵倒」17件、「無視」8件、「人格を否定・個人を攻撃」7件、「理不尽な要求」6件、「優遇させようとする趣旨の要求」3件、「大声で叱責・長時間の叱責」2件。

セクハラは「身体に触れられた」、「プライベートな話を他の職員の前でされた」、「容姿についてからかわれた」、「『彼氏(または彼女)がいるか』、『早く結婚しろ』と言われた」各1件。アルハラは「酔ったうえでの迷惑行為」、「2次会に行くことを強要」各2件。

自由記述欄には「人格や職務を否定するような発言がしばしばある」、「まるで自分たちが特権階級とでも言わんばかり」、「湯川村の議会は周辺市町村職員間においてもあまり評判がよいとは言えない」など職員による率直な意見が並んだ。

自由記述欄の主な意見

○「職員なのにそんなことも知らないのか」「それでもプロか」「職務怠慢だ」「懲戒に値する」「否決だ」など、人格や職務を否定するような発言がしばしばある。「パクるぞ」など職員をあたかも犯罪者のような言い方をする議員がいて耳を疑った。

○行政側の資料を提出要求され、まだ公表できる段階ではないとお断りしたところ激怒され、上役に言い再要求された。高圧的な態度で要求してくるのはいかがなものか。

○湯川村の議会は周辺市町村職員間においてもあまり評判がよいとは言えない。優秀な出身者ほど湯川村を受験せずに周辺市町村に流れてしまっている要因の一つと考えられる。

○現在まで議員は職員よりも上という認識があり、今後議員・職員双方が意識を変える必要がある。本会議等で恫喝ともとれる場面が見られ、揚げ足を取るような質問ではなく建設的な意見・質問・話し方で協力してより良い村づくりをしたい。

気になるのは、議員同士のハラスメントに関する指摘も目立つこと。「本会議等で恫喝とも取れる場面がある」、「同じ議員に高圧的な発言をされ、悩んでいる議員を見て心配になる」など、明らかに特定の議員を想定して書かれていた。

読者の中には「議員がちょっと高圧的な言動をしてくることぐらい我慢すればいいのに」と考える人もいるかもしれないが、それで職員の意欲や仕事の効率が低下したり、休職・退職につながることがあれば、村にとって大きな損失となる。

「誰にも相談しなかった」と回答したのは延べ37件に上り、その理由としては「相談しても解決しないと思った」といった意見が挙げられた。「本来提供したい資料でも難癖をつけられることを恐れ、出すのを躊躇してしまう」という意見もあり、職務・議論を進めるうえでハラスメントがマイナスに作用していることがうかがえる。被害者の尊厳や人権、健康を守るのはもちろん、公共の利益という視点からも、ハラスメント行為はなくすべきということだ。

住民の代表である議員は、行政や職員の働きぶりを監視し、議会を通して改善を求める役割を担う。だが、自分が職員の上の立場にいると錯覚し、恐怖や萎縮を与える言動をしているのだとしたら、正す必要がある。

意識改革の必要性

こうした調査結果を当事者である議員らはどう受け止めているのか。高倉好博議長はこうコメントした。

「調査結果は2月の議会全員協議会で委員長から報告されました。まず80%超の回答率に驚いたし、あいさつもせず執務室に入り込んで資料を出すよう要求するなどの指摘に関しては議員から『この指摘は本当なのか』と驚く声も上がりました。1人の議員の行為を指しているのか、複数のことを指しているのか分かりませんが、この結果をしっかり受け止めて改善していきます」

議会では2月24日にハラスメントの研修会を実施し、その報告書も村HPにアップしている。研修を真摯に受け止めたという内容の一方で、恨み節のような意見も散見された。

《長年の慣習や通例で行ってきた議会活動や議員活動が、現代の社会では受け入れ難い事があることに気付かされました》

《パワハラ・セクハラも昔は普通にしていたことが今では訴えられる》

《人と接するときは行動・言動に気を付けていかなければならないと思う。極端にいえば接しない、話さないという対応になってしまう》

議会では今後も継続的に調査や研修を行う方針を示しているが、まずは前時代的な価値観を現代社会に合わせてアップデートし、意識改革を進めていくことが必要になる。

役場内の事情に詳しい人物はこのように語る。

「一部議員がいきなり執務室に入ってきて、大声で行政文書を見せるよう求めるため、現場職員は精神的に参っていた。今回の調査結果を踏まえ、議会事務局を通して要望するように変更したところ、かなり改善されたそうです。もともと対立が激しい議会ということもあって、議員同士が厳しい言葉を投げかけたり、裏で悪評を流す行為が横行していた。多くの村民はそうしたレベルの低いやり取りに呆れていたが、今回の調査ですべて明らかにされた。どの議員がハラスメント行為をしたのか、調べて名前を出してほしいぐらいです」

議会でのハラスメントといえば、2023年7月に会津美里町議による職員へのパワハラ行為が目に余るとして、町が議会に抗議したことがあった。翌24年に行われた調査では町職員の27%が「議員からハラスメントを受けたことがある」と回答した。回答率は37%。

西会津町では秦貞継副議長(当時)によるハラスメント行為で不信任決議が議決され、最終的に副議長を辞職したこともあった(本誌2024年10月号など参照)。

こうなると、会津地方の市町村議会共通の課題に思えてくる。他市町村でも調査すれば、似たような実態が出てくるのかもしれない。

ちなみに調査結果は2月中旬に同村ウェブサイトで公表され、本誌3月号「情報ファインダー」でも第一報を載せたが、その後、テレビや地元紙などで報じられた気配はない。議会として、呆れた実態を積極的に開示し、自ら変えていく姿勢が求められよう。

湯川村のハラスメント実態調査アンケート結果が公表されているページ。自由記述欄には30件超の意見が記されている


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