コロナで3割減った郡山のスナック

コロナで3割減った郡山のスナック

 新型コロナ感染が日本で拡大してから3年近くが経った。2022年初めまでは緊急事態宣言、まん延防止等重点措置が発令され、営業を自粛した飲食店には売り上げ実績の一部が補償された。昨年末は制限のない初めての忘年会シーズンを迎えたが、夜の街の客足はどうなったか。酒類を提供し、接待を伴うことから特に影響が大きいスナックやバー、クラブの店舗数を電話帳で比較した。初回は郡山市。

「2次会なし」で客の奪い合い勃発

 民間信用調査会社の東京商工リサーチ郡山支店が昨年12月、忘・新年会を実施するかについて県内に本社を置く企業にアンケートを行ったところ、回答企業の約8割が「実施しない」と答えた。同月1~8日までインターネットで実施し、80社が回答した。以下は福島民報12月14日付より。

 ・緊急事態宣言・まん延防止等重点措置に関係なく、「無条件で開催しない」と答えた企業は77・50%で10月の前回調査57・14%から20・36㌽上昇。

 ・同社郡山支店の担当者は「感染者が増減を繰り返し、ピークが見えない状況で会合開催のハードルが上がっている」と分析する。

 NHK(同16日配信)は、「10月後半から新型コロナの感染者が急拡大したことが飲み会自粛につながった。職場単位の大勢でなく、少人数での飲み会が主流になるとみられる」と担当者の見解を紹介している。

 開催すると答えた企業でも、そのうち60%以上が2次会を自粛するか、人数を制限するとしている。アンケートからは、新型コロナで大規模な宴会が激減したうえ、「飲み会離れ」が進んでいる実態が見えてきた。

 本誌は2005年7月号「2年間で270軒も閉店した福島の飲食店事情」で福島市のバー、スナックの衰退を書いた。飲み慣れた世代が高齢となり、退職や病気で店に行かなくなった。若年世代は会社で飲みに行く習慣に抵抗があり、客数増加は見込めないと分析した。

【郡山市】平日は人通りがまばらな陣屋の繁華街
平日は人通りがまばらな陣屋の繁華街

 「飲み会離れ」は全国的な傾向だが、福島県は事情が少し違う。記事掲載後も東日本大震災・原発事故で経済が落ち込み、確かに客足は減った。「復興バブル」で建設業・除染作業員が県内に進出し、浜通りと中通りの夜の街は一時活気を取り戻したが、復興バブルの終焉が徐々に訪れていたところに新型コロナの影響が直撃した。

 新型コロナ拡大から約3年が経ち、夜の街を探る必要がある。2005年の記事では、NTT「タウンページ」の01年と03年の飲食業の掲載数を比較し、閉店数を推計した、今回もその手法を使う。固定電話を置かず、携帯電話やSNSでやり取りする店舗も増えているので正確ではないが、目安にはなるだろう。電話帳記載の店舗が減るということは、老舗が減ったということでもある。

 初回は「商都」郡山市を調べる。県が2022年8月に公表した「2019年度市町村民経済計算」によると、市町村内総生産=市町村ごとの経済規模は同市が一番大きい。トップ3は、①郡山市1兆3600億円(県全体の17・1%)、②いわき市1兆3500億円(同17・0%)、③福島市1兆1400億円(同14・4%)だ。

 「タウンページ」(2021年10月現在)によると、飲食店関係の掲載数は多い順に次の通り。業種は電話帳の記載に基づく。10店未満の専門店は省略した。

飲食店(居酒屋、食堂の一部重複)195店

スナック 159店

居酒屋 136店

ラーメン店 72店

食堂 69店

レストラン(ファミレス除く) 48店

焼肉・ホルモン料理店 46店

うどん・そば店 42店

バー・クラブ 42店

すし店(回転ずし除く) 40店

中華・中国料理店 39店

焼き鳥店 32店

日本料理店 29店

イタリア料理店 15店

割烹・料亭 12店

うなぎ料理店 10店

とんかつ店 10店


 重複もあるので、概算で約計900店舗。スナック、居酒屋が圧倒的に多い。接待を伴う飲食店として、特に新型コロナで影響を受けたスナック、バー・クラブの数を調べた。新陳代謝の盛んな業界だから、減少が多くても、新規参入が同じくらいあれば問題はない。新型コロナが襲う2年前の「タウンページ」(2019年11月時点)と比べてみた。

 スナック 47店減少、新掲載は5店。

 バー・クラブ 5店減少、新掲載は1店。

 バー・クラブは約1割減、スナックは約3割減少している。業種や店名を変えた可能性もある。念のため、郡山駅西口の繁華街、駅前と大町に住所があるスナック21店舗に電話をかけた。うち1店舗は営業中。残りの20店は「おかけになった電話番号は現在使われておりません」とのアナウンスが流れた。電話番号を変えたか固定電話の契約を終えたということ。閉店の可能性が高い。下記は2年の間に電話帳から消えたスナック一覧表。

■コロナ前(2019年)から現在(2021年)までの間に電話帳から消えたスナック

【陣屋】アイギー、明日香、アンク、アンナ、夜上海、我愛你、笑顔、オリーブ、カラオケスナック風の歌がきこえる、絹、Club Vanilla、スナック桜子、Chil、瓶、プティ、桃色うさぎ

【駅前2】絹の家、Nori、花華ふぁふぁ

【大町】こいこい、TELLME、ぶす

【その他】
アグライア(朝日)、壱番館(大槻)、イマージュ(朝日)、うさぎ屋薇庵(中町)、小山田壱番館(大槻)、カトリーヌ(菜根)、カミニート(堤下)、ギャップ(中町)、ケイズ・フォー(Ks4fth・中町)、コパン(中町)、サラン韓国スナック(朝日)、スナック華(久留米)、すなっく英の妹(島)、スナックピュア(安積)、スナック福(大槻)、スナックモナリザ(菜根)、スナックやすらぎ(富久山)、スナック夢(朝日)、セカンドハウス(桑野)、SoL(朝日)、たつみ(堂前)、だんらん(麓山)、紬の里(堂前)、ポセイドン(堤下)、美郷(七ッ池)

 現在営業している店はどのような状況か。郡山一の繁華街「陣屋」に絞って調査した。陣屋通りの付近で、住所で言えば駅前1丁目に当たる。

感染防止で常連客のみ

 前出の東京商工リサーチのアンケートから分かるように、飲み会自体が減り、客層は団体や企業関係から個人グループが主体になっている。週末の金、土曜日はそれなりに人が入っていると想定して、忘年会シーズンの12月17日(土)、開店準備の時間を見計らって午後6~8時の間に電話した。ランダムに22店舗にかけると、いずれも回線は生きていた。6軒が電話に出たので、客の入り具合や経営状況を聞いた。

 あるスナックのママAは語る。

 「コロナがはやってからもう3年になりますでしょ。まあ何とかやってるって感じね。一番頭を悩ませているのが家賃と人件費です。売り上げが減ったからといって安くはなりません」

 あるキャバクラの店長の話。

 「まん延防止などが出されることはなくなったが、体感としては昨年よりもお客様は減っています。平日は人が出歩かず、ひっそりとしていますよ。金、土は人が入るといっても平日と比べてマシという程度です。会社の忘年会の2次会、3次会で利用する方が多かったのですが団体客は少ないですね。一グループ多くて3、4人程度です。なじみのお客様に支えられている状態です。営業時間を短くしたり、女の子の出勤を調整している店はあると聞きますが、幸いウチは例年並みの出勤調整に抑えられています」

 別のスナックのママBはこう打ち明ける。

 「11月から忘年会の予約が入っているのが当たり前だったんですよ。1次会は食事をして、2、3次会でなじみの店でカラオケ、というのがコロナ前の流れでした。2次会は今まずないでしょう。感染を恐れて歌う人も減っているので、カラオケは飲み会の必須ではなくなりましたね。団体は常連さんがゴルフのコンペ後に利用するくらいです」

 ママBは、行き場のないいらだちを筆者に向けた。

 「雑誌の取材ですか。本当だったら土曜の夜8時に応じるなんてできないんですよ。つまり……そう、ヒマってことです。雑誌だったら宣伝でもしてもらいたいもんだわ。いつまで店を続けられそうかって? そんなの分かりません!」

 客には来てほしいが感染を広めてはならないというジレンマがある。 ママCは、

 「うちは新規のお客様は断っています。常連さんとその紹介のあった方だけです。『感染者が出た店』となるのが一番怖い。自分も感染したくはない。濃厚接触者になっただけでお店に出られなくなるし、店を数日閉めているとウワサになる。今来てくれるお客様を手放さないように、細々とでも営業するしかないんでしょうね」

 電話調査とは別に、県内で飲食店を経営し、業界事情に詳しい男性に話を聞いた。

 「繁華街に構える店は家賃が重い負担となってのしかかっています。逆に言えば『家賃さえ下がれば何とかやっていける』という人もいる。潰れない飲食店というのは、住宅街にある町中華のように、住居と一体になった手持ちの物件で営業している店でしょうね」

 2次会以降がなくなったことは、スナックの概念にも変化を起こしているという。

 「スナックと居酒屋が合体した『イナック』が登場しています。ご飯ものを充実させて、客単価を上げています。2軒目、3軒目に行く客が見込めないので、誰もが1軒目の店になろうと少ないパイの取り合いになっている」(同)

「業種転換したい」

 郡山社交飲食業組合・組合長の太田和彦さん(67)=味の串天=は、「組合は約50年前にできましたが、郡山の飲食業も長い時間をかけて廃業、新規開店が繰り返されました。新しい店は組合に入らないところも多い。現在の加盟事業者は14店舗です」と明かす。

 うち12店舗がバーやスナック。新型コロナ後は深夜12時前に店を閉める店が増えたという。

 「バーやスナックに限りませんが、組合員は私を筆頭に高齢化しています。コロナ禍がきっかけで閉店を考える店もある。スナックの経営者からは『業種転換をしたいがどうしたらいいか』との相談もあります。ここに来てガス代と電気代は値上げ、ビールの仕入れ値も昨年10月に値上がりしました。提供する値段はそうそう上げられません。夜の飲食業はお酒の注文が入って利益が出る仕組みなので、どの店も痛いです」(同)

 酒の席で同じ職場の者同士が打ち解ける「飲みにケーション」という言葉も死語になりつつある。新型コロナ拡大が拍車をかけた。

 婚活事業などを手がけるタメニー(東京)が昨年11月に会社員の20~39歳の未婚男女2400人に行ったアンケートでは、社内でどのような方法でコミュニケーションを取っているか聞いている。飲み会は8・2%で8位。Eメールのやり取りよりも下だ。

①直接対面での会話53・4%

②通話での会話25・1%

③ウェブミーティング17・0%

④定例ミーティング16・6%

⑤チャットツール15・9%

⑥Eメール13・3%

⑦1対1のミーティング8・5%

⑧飲み会8・2%

 以下、ランチ会や社内イベントなどが続く。

 「どんな方法でコミュニケーションを取るといいと思いますか」との理想的な方法を調べた質問でも、飲み会は6・9%(8位)で現実の順位と大きな変わりはない。中堅社員がこのような意識ということは、将来的に会社の飲み会は消滅するだろう。中小民間では賃金が上がらないにもかかわらず、物価高が続いている。消費者の財布の紐は固い。

非正規雇用女性の働き口

 キャバクラやスナックなどの店が減ることは貧困問題の深刻化にもつながる。水商売は、家族を養わなければならない女性に比較的高い収入を保障し、セーフティネットの役割も果たしてきた。詳しい統計はないが、ネットでキャバクラやスナックの求人欄を見ると、「シングルマザー歓迎」「寮・託児所完備」を押し出している店が多いことから、業界もシングルマザーを積極的に受け入れていることが分かる。

 背景には、女性の正社員が男性と比べて少なく、男女の賃金格差が生まれてしまうという事情がある。シングルマザーが昼のパートなど非正規雇用で稼いだだけでは家族を食べさせていけない。

 新型コロナが蔓延し始めた2020年には「女性店員が子どもへの感染を恐れ出勤を控える動きもあった」と県内のキャバクラ経営者は語る。キャバクラやスナックが減り、働き口が減った後、彼女たちは別の仕事に行ってしまったのか。その収入で暮らしていけるのか。飲食業が潰れるということは、別のところにしわ寄せが行くということでもある。

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