青木フルーツ「上場」を妨げる経営課題【郡山市】

青木フルーツ「上場」を妨げる経営課題

(2022年4月号)

 2022年1月、地元紙に青木フルーツホールディングス(以下、青木フルーツと略)の株式上場をめぐる記事が掲載された。同社の上場は以前から取り沙汰されており、特段驚きはないが、そのたびに注目されるのが同社の経営状態だ。すなわち、地元経済人の間では「とても儲かっているとは思えないのに、どうやって上場するのか教えてほしい」と冷ややかな見方をする人が少なくないのだ。

青木代表がひた隠す過去の挫折

青木代表がひた隠す過去の挫折【青木信博氏】
青木信博氏

 2022年1月5日付の福島民報に次のような記事が掲載された。

 《青木フルーツホールディングス(HD)=本社・郡山市=は年内の東京証券取引所への株式上場を目指し、最終調整に入った。東証が4月に実施する市場再編後の「スタンダード市場」を想定している。青木信博会長兼社長が4日、福島民報社の取材に答えた(後略)》

 青木信博氏(74)は新年の挨拶のため福島民報を訪れ、その席で上場が話題となり記事になった模様。

 ただ不思議なのは、同日付の福島民友が「青木フルーツと農業・食品産業技術総合研究機構が共同開発した新品種のイチゴを使ったジュースの販売を年末から始める」とだけ報じ、上場には一切触れていないことだ。同じ日に挨拶に行った福島民報では上場が話題となり、福島民友では話題にならない、ということがあるのだろうか。

 さらに不思議なのは、福島民報が1月8日付の紙面に再び青木氏のインタビューを掲載したことだ。その中で、上場に向けた現状を問われた青木氏はこのように答えている。

 「2021年8月、社内に上場準備部を設けた。2022年は課題を一つ一つクリアしながら、数年先の上場申請に必要な監査法人の監査や証券会社の審査、証券取引所の審査に向けた準備を本格化していく」

 5日付では「年内の株式上場を目指し最終調整に入った」となっていたのに、8日付では「数年先の上場申請」と大きく後退している。

 ここからどんなことが推察できるか。一つは、上場の見通しがないのに青木氏が「年内」と口走り、それが記事になったため、慌てて「数年先」と訂正したこと。福島民報が勝手に「年内」と書くとは思えないので、1月8日付のインタビューは青木氏側から申し入れたのだろう。

 もう一つは、福島民友でも上場話が出たが、同紙は真に受けず記事にしなかったこと。青木フルーツの上場話は今回が初めてではないが、一向に実現していないため、福島民友は青木氏から上場の話題が出てもスルーした可能性がある。

 要するに「上場したいが、いつになるか分からない」――これが、青木フルーツの上場をめぐる見通しなのではないか。

 言うまでもないが、株式上場は簡単なことではない。市場区分によって上場審査基準は異なるが、株主数は何人以上、流通株式数は何万単位以上、時価総額は何億円以上、純資産は何億円以上、最近何年間の利益・売上高は何億円以上等々、さまざまな基準をクリアし、上場会社監査事務所の監査や証券会社・証券取引所の審査を受けなければならない。そのコストは膨大になる。

 こうした基準を青木フルーツに当てはめたとき、地元経済人は「今の経営状態で上場は無理」と一斉に口にするのだ。

 「詳しい決算の数字までは分かりませんよ。でも、上場できるほど大儲けしているようには見えないし、新型コロナの影響もかなり受けたはずだ。華々しく出店したと思ったら閉店することも多く、急拡大・自転車操業の印象は拭えない」(郡山市内の飲食業関係者)

 ならば青木フルーツは今、どのような経営状態にあるのか。その中身を見る前に、まずは同社と青木氏の歴史をひも解く必要がある。

 青木フルーツの出発点は1924年に青木氏の祖父・松吉氏が創業したバナナ問屋の青木商店。1970年、郡山市富久山町久保田(かつての郡山市総合地方卸売市場)にバナナセンターを開設し、次第に業容を拡大。平成の時代に入るころには同社のほか、マルケイ青果市場、福島県中央青果、信栄物産、青木、エフディーエス、果鮮、アケボノ、丸大商事の各社で青果物の卸・仲卸・小売業を手掛ける「青木グループ」を形成するまでに成長した。年商はグループ全体で60億円超に上った。

 これらグループ会社を、青木氏は3代目として父・三郎氏から引き継ぐ一方、郡山市教育委員、郡山青年会議所専務理事、県中小企業家同友会副理事長、県倫理法人会初代会長などの公的要職を多数歴任した。東北大学経済学部卒業で、当時の青木久市長や増子輝彦衆院議員の選挙で会計責任者を務めるなど政治にもかかわり、一時は「郡山市長候補」に名前が挙がったこともあった。

 まさに〝飛ぶ鳥を落とす勢い〟だった青木氏に異変が起きたのは2002年、郡山市が東北自動車道郡山南インターチェンジの近くに開設した新しい卸売市場にグループ会社を入場させる前後だった。

新市場をめぐるトラブル

新市場をめぐるトラブル【本宮ファクトリー】
本宮ファクトリー

 当初の計画では、マルケイ青果市場や福島県中央青果など郡山市と須賀川市の五つの卸売会社が大同団結し、新卸売会社・県中青果を設立して入場するはずだった。ところが、このうちの1社が自己破産し、残る4社間で県中青果の株式をめぐるトラブルが起こるなど深刻な仲違いが発生。結局、県中青果は解散し、青木グループはマルケイ青果市場が福島県中央青果の営業権を継承して新市場に入場することになった。
 その一方で青木氏は、新市場入場を機にグループ各社を独立させ、健全経営できる体制をつくることを目指した「青木グループ再構築事業」なる計画を打ち出した。ただ、その原資となる資金(計3億5000万円)はすべてマルケイ青果市場が負担する内容となっていた。

 実は、青木氏は経済人仲間と株式投資に失敗し、その際の借金を連帯保証したため2億数千万円の負債を背負っていた。グループの財務を管理し、青木家の資産管理会社でもある青木商店も数億円の負債を抱えていた。自前で資金調達する余力がなく、自己破産も覚悟していた青木氏には、マルケイ青果市場から資金を引き出すしか方法がなかった。要するに「グループの再構築」と言いながら、実際は同社を使って「自身の再構築」を図ろうとしていたのだ。

 しかし結局、グループの再構築は進まず、青木氏はマルケイ青果市場と交わしていた株式買い戻しの約束も反故にし、最後は新市場に姿を見せなくなった。その過程では、同社が青木氏を再起させようと手を差し伸べたこともあったが、青木氏の家族に抵抗されて上手くいかず、その後は同社が青木氏を提訴するなど、両者の関係は泥沼化していった(詳細は本誌2003年8月号「青木信博・青木グループ代表が郡山経済界から退いたワケ」を参照)。

 青木氏は近年、経営の成功者として各地で講演しているが、こうした挫折を語っているのだろうか。

 ちなみに、講演会などで紹介されている経歴を見ると「1972年、青木商店入社、専務取締役就任」の後、いきなり「2002年、フルーツバーAOKI1号店開店」となっており、この間の30年が〝空白〟になっている。新市場入場をめぐるトラブルは、今の青木氏にとって消し去りたい過去なのだろう。

 対外的には「54歳でフルーツ文化創造企業を目指して一念発起」とうたっている青木氏だが、現実には青木家の原点である青木商店から再起を図るしか術がなかった。

 ただ、そこからの再起は素直に評価しなければならない。経歴にもあるように2002年、さまざまなフルーツを使い、店頭で注文を受けてから搾り立てのジュースを提供する「フルーツバーAOKI」1号店を郡山市のうすい百貨店内にオープンすると、「果汁工房果林」「Wonder Fruits」「V2&M」という四つの店舗形態で全国に出店、その数は20年で約200店舗にまで成長した。

 このフルーツバー事業を柱に、フルーツタルトを販売する「フルーツピークス」(一部店舗ではカフェを併設)を福島、宮城、茨城、埼玉、東京に計15店舗、さらに鮮度と熟度にこだわったフルーツを扱う「フルーツショップ青木」が計7店舗。これが、青木氏が手掛ける新たな事業となっている。

 これらの店舗展開を図るのが青木商店(郡山市八山田五丁目)で、法人設立は1950年。資本金1000万円。役員は代表取締役・青木大輔(青木氏の息子)、取締役・渡辺健史、渡辺隆弘、吉田雅則、監査役・黒田啓一の各氏。

 そして、同社に対する経営指導や資産管理、事務代行などを行う青木フルーツホールディングス(同)は2017年設立。資本金2300万円。役員は代表取締役・青木信博、取締役・吉田雅則、遠藤博、監査役・黒田啓一、山内賢二、高島泉の各氏。

 ホールディング会社をつくったことからも分かる通り、このころから青木氏は株式上場を強く意識し始めた。対外的に上場を口にしたのは2016年。「海外に出るときは日本国内で信用を得ていることが重要」として、将来的な海外展開と2018年度までに上場する方針を表明。このとき発表した2016年度から3カ年の中期経営計画で、店舗数を220店に増やす目標をほぼ達成し、2018年11月にはタイの首都バンコクに合弁現地法人「アオキフルーツタイランド」を設立、1号店となる「果林」も開業した。しかし、上場だけは果たせなかった。

 すると青木氏は2019年、新たな中期計画を発表し、2022年2月期の売上高を2019年2月期に比べ26%増の104億円、経常利益は同4倍の5億6000万円を目指すとした。店舗のスクラップ・アンド・ビルドが一巡し、大幅な利益増が見込めるという強気の戦略で、2021年度までの株式上場も目標に掲げられた。

 しかし2020年に発生した新型コロナウイルスで、飲食店はこの2年間、国・都道府県から休業や時短営業を迫られ続けた。自助努力ではどうにもならない経営環境では、青木フルーツの目標に狂いが生じるのはやむを得ない面がある。

高い借入金依存度

高い借入金依存度

 ただ、経営状態を詳細に見ていくと、新型コロナがなくても上場できたかは疑問が残る。

 決算を見ると(別表参照)、青木商店は売上高が70億~80億円台で推移しているが、当期純利益は黒字と赤字を行ったり来たりしている。2021年2月期は5億0200万円の大幅赤字だ。しかも、この赤字は日本政策金融公庫と商工中金が新型コロナの影響を受けた事業者向けに設けた危機対応融資(新型コロナ対策資本性劣後ローン)を使い数億円を充当したうえでの数字とみられ、財務内容は相当厳しい模様。一方、青木フルーツも売上高2億円前後で、2019年2月期は赤字。上場を目指す企業が頻繁に赤字を計上しているようでは話にならない。

青木フルーツホールディングス
売上高当期純利益
2018年600万円20万円
2019年1億6600万円▲240万円
2020年1億9700万円740万円
2021年2億4000万円――
※決算期は2月。▲は赤字。

青木商店
売上高当期純利益
2016年73億4100万円▲1億3200万円
2017年77億0900万円2000万円
2018年79億1900万円▲3300万円
2019年82億5600万円6900万円
2020年86億1400万円2600万円
2021年77億3000万円▲5億0200万円
※決算期は2月。▲は赤字。



 借入金への依存度も高い。本社がある土地は借地で、建物には日本政策金融公庫が極度額5000万円の根抵当権(2010年)、東邦銀行が5000万円の根抵当権(同年)を設定。2014年にふくしま産業復興企業立地補助金を使って本宮市荒井に新築した工場兼事務所(本宮ファクトリー)には、東邦銀行が8億円の抵当権(2013年)、日本政策金融公庫が1億2000万円の抵当権(2015年)を設定している。債務者はいずれも青木商店。

 さらに2012年には、東邦銀行と日本政策投資銀行が共同出資した東日本大震災復興ファンド「ふくしま応援ファンド投資事業有限責任組合」から1億円の融資を受けた。秋田銀行と常陽銀行からも借り入れている模様で、長期借入金は10億円前後に上るとみられる。

 さまざまなフルーツを使って提供されるジュースは、Mサイズで300~400円台、フルーツの種類によっては600円台や1000円のものもあるが、健康志向の高まりで新型コロナの影響が和らげば売り上げが回復する見通しにあるという。ただ、本宮ファクトリーの償却負担が増加し、「フルーツピークス」では不採算店を多く抱え、原材料価格は上昇しているなど、決算を安定させるのに解決しなければならない課題はいくつもある。

 郡山市内のある経済人は青木フルーツの経営状態をこう評価する。

 「以前は軟調な収益性だったが、株式上場を意識し、東邦銀行から出向者を受け入れるようになってから収益性は改善されつつあるようだ。とはいえ赤字を計上しているようでは、上場を宣言されても誰も本気にしない。問題は借入金依存度の高さで、メーンバンクの同行から出向者が来ている限り資金調達が途絶えることはないだろうが、今の店舗拡大を続けているうちは(借入金依存度の高さは)変わらないのでは。店舗拡大が早くて社員教育が追いついていないことも悩みの種のようだ。従業員数2400人超とうたっているが、ほとんどはパートとアルバイトで、正社員はそのうちの1割超。パートとアルバイトが多ければ人件費は抑えられるが、店舗数ばかり意識して正社員の育成を怠れば、上場に耐え得る強い会社はつくれない」

スタンダード市場を視野!?

スタンダード市場を視野!?【(出所) 日本取引所グループHP】
(出所) 日本取引所グループHP

 冒頭の福島民報によると、青木フルーツが上場を目指すのは「スタンダード市場」だという。

 東京証券取引所には市場第一部、市場第二部、マザーズ、JASDAQ(スタンダード、グロース)という四つの市場区分があったが、2022年4月からプライム、スタンダード、グロースと三つの市場区分に再編され、上場各社は該当する市場区分に一斉に移行した。再編の背景には▽市場第二部、マザーズ、JASDAQの位置づけが重複し、市場第一部もコンセプトが不明確になっていた、▽新規上場基準よりも上場廃止基準が大幅に低いため、上場後も新規上場基準を維持する動機づけがない、▽他の市場区分から市場第一部に移行する際の基準が新規上場基準よりも緩いなどの理由があった。

 こうした中、三つの中で2番目となるスタンダード市場は、株主数400人以上、流通株式数2000単位以上、流通株式時価総額10億円以上、最近1年間の利益1億円以上、純資産額はプラスであること等々を新規上場基準としている。青木フル
ーツの今の経営状態では、数年先の上場も怪しく感じる。

 市場区分は異なるが2022年2月、東証のプロ投資家(特定投資家)向け市場「東京プロマーケット」に株式を上場した農業用資材販売のグラントマト(須賀川市)は、福島県が地元の上場企業を増やす目的で2016年度に創設した「福島県中小企業家株式上場支援補助金」に応募し、2016、2020年度と2回採択されている。同補助金はこれまで延べ7社が採択されているが、この中に青木フルーツの名前はない。

 青木氏の熱い思いとは裏腹に、上場のハードルは相当高そうな印象だが、青木フルーツではどのような戦略を練っているのか。3月中旬、青木フルーツに取材を申し込むと

 「現在、福島民報の記事以上の情報をお出しできる状況になく、適切な時期に弊社青木からご説明させていただきたい」(総務課担当者)

 挫折を経て、過去を〝清算〟したうえで上場を目指すなら、文句を言うつもりはない。しかし上場を公言するなら、それに見合った経営状態を維持しないと、地元経済界から応援する雰囲気は醸成されないのではないか。

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