福島空港で全日空が起こした問題は、一歩間違えば大きな事故になっていた可能性があるにもかかわらず地元メディアの扱いは小さい。以下は10月26日付福島民友より。
《(国土交通省は)福島空港で全日空の整備担当者が機体のタイヤの空気圧が下がっているのに規定に違反して交換せず、社内への報告も怠っていたとして、同社を厳重注意》した。《9月7日の福島発大阪(伊丹)行き全日空1698便ボンバルディアDHC8―400型の出発前整備で、担当者が右主脚にある二つのタイヤのうち一つの空気が抜けて圧が基準を下回っているのを確認した。全日空の規定では交換が必要だったが予備のタイヤがなく、担当者は加圧して同機を出発させた》《福島から連絡を受けた大阪の整備担当者が到着後にタイヤを交換したが、両方の担当者とも相手が報告していると考えたため、社内の手続きに基づいた報告をしなかった》
福島空港で大阪行きの飛行機を頻繁に利用しているという郡山市内の会社社長はこう話す。
「正直、ゾッとしました。全日空は『空気圧が低くても直ちに安全に影響はない』と言うが、着陸時にタイヤが破裂したら機体はどうなっていたのか。安全が担保されていない飛行機なんて怖くて乗れません」
福島空港は福島と大阪(伊丹)を結ぶ定期便が1日4往復あり、全日空が2便、アイベックスエアラインズが2便運航。各地と結んでいた定期便が次々と廃止されていく中、大阪便は同空港開港時から継続する中核路線だ。直近10年間の大阪便の利用者数は別表の通りで2020、21年度はコロナの影響で減ったが、22年度は回復している。
2013年度 | 137,700人 |
2014年度 | 151,000人 |
2015年度 | 171,900人 |
2016年度 | 169,400人 |
2017年度 | 177,300人 |
2018年度 | 182,500人 |
2019年度 | 177,400人 |
2020年度 | 54,200人 |
2021年度 | 54,800人 |
2022年度 | 114,100人 |
一方、大阪便には課題もあり、県空港交流課は昨年4月に発表した福島空港利用促進アクションプランの中で①大阪側からの利用が少ない、②他空港に比べビジネス利用が少なく、季節変動の影響を受けにくいベースとなり得る利用者が少ない、③午前の便が少なく乗継利用もしづらい、④利用圏域住民が仙台空港、新潟空港に流れていると指摘。これらの課題を克服することで、コロナ前の利用状況以上への回復と年間利用者数18万2000人という中期目標を掲げている。
全日空のタイヤ問題は、この目標達成に取り組む最中に起きたわけ。
「タイヤ問題が軽く扱われるようだと、利用者は『全日空も県も安全を軽視している』と不信感を募らせると思う。少なくとも私は、福島空港の利用を当面控えるつもり」(前出・会社社長)
国交省航空局は全日空に対し、10月25日付文書で以下のような「厳重注意」を行った。
《当該行為はこれらの規定(※航空法に基づく全日空の各規定)に違反した行為である。また、当該整備従事者は、大阪基地から作業基準に従った整備措置を実施するよう指示されたにもかかわらず、福島空港に予備タイヤの配置がなかったことから当該行為に至っており、当該整備従事者が意図的に違反行為を行ったものと認められる》《貴社における安全管理システムが十分に機能していないものと認められる》
気になるのは、内堀雅雄知事がこの問題に一切コメントせず、知事定例会見でも質問するメディアが皆無だったことだ。福島空港の利用促進は県政の最重要施策の一つだが、その前提には安全・安心の確保が欠かせない。「予備タイヤがない」などという信じられないミスが起きないよう、県は全日空に厳重に抗議すべきではないか。
※県土木部空港施設室に「県から全日空に抗議したり、知事からコメントが発表されることはないのか」と尋ねると「機体に関する問題に県が申し入れ等をすることはない。知事コメントも出していない。国交省が厳重注意し、全日空が再発防止に努めていることは承知している」とのことだった。