浪江町社会福祉協議会】パワハラと縁故採用が横行

【 浪江町社会福祉協議会 】パワハラと縁故採用が横行 浪江町社協が入る「ふれあいセンターなみえ」

 浪江町社会福祉協議会が、組織の統治・管理ができないガバナンス崩壊にある。一職員によるパワハラが横行し、休職者が出たが、事務局も理事会も対処できず指導力のなさを露呈。事務局長には縁故採用を主導した疑惑もあり、専門家は「福祉という公的な役割を担う組織のモラル崩壊は、サービスを受ける住民への不利益につながる」と指摘する。

ガバナンス崩壊で住民に不利益

 2022年6月、浪江町に複合施設「ふれあいセンターなみえ」がオープンした。JR浪江駅に近く、帰還した町民の健康増進や地域活性化を図る役割が期待されている。敷地面積は約3万平方㍍。デイサービスなどの福祉事業を担うふれあい福祉センターが入所し、福祉関連の事業所が事務所を置いている。福祉センター以外にも、壁をよじ登るボルダリング施設や運動場、図書室がある。

 福祉センターは社会福祉法人の浪江町社会福祉協議会(浪江町社協)が指定管理者を務めている。業務を開始して3カ月以上が経った福祉センターだが、ピカピカの新事務所に職員たちは後ろめたさを感じていた。開設に尽力した人物が去ってしまったからだ。

 「指定管理者認定には、40代の男性職員が町と折衝を重ねてきました。今業務ができるのも彼の働きがあってこそです。ところが、彼はうつ病と診断され休職しています。10月に辞めると聞きました。今は代わりに町職員が出向しています。病気の理由ですか? 事務局の一職員からのパワハラがひどいんです。これは社協の職員だったら誰もが知っていることです」(ある職員)

 パワハラの実態に触れる前に、浪江町社協が町の代わりに住民の福祉事業の実務を担う公的な機関であることを明らかにせねばならない。それだけ役割が重要で、パワハラが放置されれば休職・退職者が続出し、せっかく帰還した住民に対するサービス低下も免れないからだ。

 社協は福祉事業を行う社会福祉法人の形態の一つ。社会福祉法人は成り立ちから①民設民営、②公設民営、③公設公営の三つに分けられ、社協は国や行政が施設を建設し、運営委託する点で③に含まれる。職員も中枢メンバーは設置自治体からの出向が多く、行政の外郭団体である。

 浪江町社協の2021年度の資金収支計算書では、事業活動収入は計2億2400万円。うち、最も多いのが町や県からの受託金収入で1億5300万円(約68%)。次が町などからの補助金で4460万円(約19%)となっている。22年度の町の予算書によると、同社協には3788万円の補助金が交付されている。法人登記簿によると、同社協は1967(昭和42)年に成立。資産の総額は4億7059万円。現在の理事長は栃本勝雄氏(浪江町室原)で2022年6月20日に就任した。

 前理事長は吉田数博前町長(同町苅宿)が兼ねていた。予算上も人員上も自治体とは不可分の関係から、首長が理事長を務めるのは小規模町村では珍しくない。吉田前町長も慣例に従っていた(2022年5月の町議会第2回臨時会での吉田数博町長の答弁より)。ただ、首長が自治体と請負契約がある法人の役員に就くことを禁じた地方自治法第142条に反するおそれがあり、社会福祉法人としての独立性を保つ観点から、近年、自治体関係者は役員に就かせない流れにある。同社協も吉田数博町長が引退するのに合わせ、2022年度から理事長を町長以外にした。

 同社協の本所は前述・福祉センター内にある浪江事務所。原発災害からの避難者のために福島市、郡山市、いわき市に拠点があり、東京にも関東事務所を置く。職員は震災後に増え、現在は50人ほどいる。

事務局長「職員からの報告はない」

【浪江町】複合施設「ふれあいセンターなみえ」
【浪江町】複合施設「ふれあいセンターなみえ」

 問題となっているパワハラの加害者は、浪江事務所に勤める女性職員だという。この女性職員は、会計を任されていることを笠に着て同僚職員を困らせているようだ。例えば、職員が備品の購入や出張の伺いを立てる書面を、上司の決裁を得て女性職員に提出しても「何に必要なのか」「今は購入できない」などの理由を付けて跳ね返すという。人格を否定する言葉で罵倒することもあるそうだ。

 一方で、女性職員は自分の判断で備品を購入しているという。ある職員は、女性職員のデスクの周りを見たら、新品の機器が揃えられていたことに唖然とした。

 「彼女は勤務年数も浅いし、役職としては下から数えた方が早いんです。会計担当とはいえ、自由にお金を使える権限はありません。でも高圧的な態度を取られ、さらには罵倒までされるとなると、標的にはなりたくないので、誰も『おかしい』とは言えなくなりますね。発議を出すのが怖いと多くの職員が思っています」(ある職員)

 職員たちは職場に漂う閉塞感を吐露する。休職・退職が相次ぎ、現場の負担が増した時があった。当時は「あと1人欠けたら職場が回らなくなる」との思いで出勤していたという。次第に女性職員の逆鱗に触れず一日が終わることが目的になった。「いったい私たちは誰をケアしているんでしょうね」と悲しくなる時がある。

 休職し、退職を余儀なくされた男性職員は女性職員より上の役職だ。しかし、女性職員から高圧的な態度を取られ、部下からは「なぜ指導できないのか」と突き上げを食らい、板挟みとなった。この男性職員を直撃すると、

 「2021年春ごろから体に異変が起こり、不眠が続くようになりました。心療内科の受診を勧められ、精神安定剤と睡眠導入剤を処方されるようになり、今も通院しています」(男性職員)

 心ない言葉も浴びせられた。

 「2022年春に子どもの卒業式と入学式に出席するため有給休暇を取得しました。その後、出勤すると女性職員から『なんでそんなに休むの?』と聞かれ『子どもの行事です』と答えると『あんた、父子家庭なの?』と言われました」(同)

 子どもの行事に出席するのに母親か父親かは関係ない。他人が家庭の事情に言及する必要はないし、女性職員が嫌味を言うために放った一言とするならば、ひとり親家庭を蔑視している表れだろう。そもそも、有給休暇を取得するのに理由を明らかにする必要はない。

 筆者は浪江事務所を訪ね、鈴木幸治事務局長(69)=理事も兼務=にパワハラへの対応を聞いた。

 ――パワハラを把握しているか。

 「複数の職員から被害の訴えがあったと聞いてびっくりしています。そういうことがあるというのは一切聞いていません」

 ――ある職員は鈴木事務局長に直接被害を申し出、「対応する」との回答を得たと言っているが。

 「その件は、県社会福祉協議会から情報提供がありました。全事務所の職員に聞き取りをしなくてはならないと思っています」

 ――パワハラを把握していないという最初の回答と食い違うが。

 「パワハラを受けたという職員からの直接の報告は1人もいないということです。県社協からは情報提供を受けました。聞き取りをしますと職員たちには伝えました」

 ――調査は行ったのか。

 「まだです。前の事務所から移ったばかりなので。落ち着くまで様子を見ている状況です」

 加害者として思い当たる人物はいるかと尋ねると、「パワハラは当事者同士の言葉遣い、受け取り方によりますが、厳しい言い方があったのは確かで私も注意はしました。本人には分かってもらえたと思っています」と答えた。

 本誌は栃本勝雄理事長と吉田数博前理事長にパワハラを把握していたかについて質問状を送ったが、原稿締め切りまでに返答はなかった。

「事務局長や理事長の責任放棄」

 専門家はどう見るのか。流通科学大(神戸市)の元教授(社会福祉学)で近著に『社協転生―社協は生まれ変われるのか―』がある塚口伍喜夫氏(85)は「パワハラ」で収まる問題ではないという。

 「役職が下の職員が上司の決裁を跳ねのけているのなら、決裁の意味が全くないですよね。個人のパワハラというよりも、組織が機能していない方がより問題だと思います。改善されていないのであれば事務局長や理事長の責任放棄です」

 加えて、社協においても組織のガバナンス(管理・統治)の重要性を訴える。

 「組織のガバナンスとは、任されている立場と仕事を果たすための環境を保持していくことです。業務から私的、恣意的なことを排除し、利用者に最上のサービスを提供することが大切です」(塚口氏)

 事実、浪江町社協の職員たちはパワハラの巻き添えを食らわないよう自分のことに精いっぱいだ。利用者の方を向いて100%の仕事ができている状況とは言えない。

 事務局長と理事長の対応に実効性がないことは分かったが、鈴木事務局長をめぐっては「別の問題」が指摘されている。縁故採用疑惑だ。

 複数の職員によると、鈴木事務局長は知人の子や孫を、知人の依頼を受け積極的に職員に採用しているという。これまでに4人に上る。知人をつてに、人手不足の介護士や看護師などの専門職をヘッドハンティングしているなら分かるが、全員専門外で事務職に就いている。職員によると、採用を決めてから仕事を探して割り振るという本末転倒ぶりだ。

 疑惑は親族にまで及んだ。前理事長の吉田前町長の元には、2022年度初めに「鈴木事務局長が義理の弟を関東事務所の職員に据えているのはどういうことか」と告発する手紙が届いたという。当初は義弟が所有する茨城県内の物件を間借りして関東事務所にする案もあったとの情報もある。義兄が事務局長(理事)を務める社協から、義弟に賃料が払われるという構図だ。

 しかし、鈴木事務局長は「縁故採用はない」と否定する。

 「職員を募集しても、福祉施設には応募が少ない。『来てくれれば助かるんだが』と話し、『家族と相談して試験を受けるんだったら受けるように』と言っただけです」

 ――事務職は不足しているのか。

 「町からの委託事業が多いので、それに伴った形で採用しています。正職員ではありません。なかなか応募がないので、知り合いを頼って人材を集めるのが確実です。募集もハローワークを通して、面接も小論文も必ず私以外の職員を含めた3人で行います。ですから、頼まれたから採用したというのは違います」

 社協の意思決定は吉田前理事長を通して行ってきたと言う。

 「やっていいかどうかの判断は私でもできます。一人で決めているわけではないです。別の職員の反対を押し切ることはありません。『ここの息子さんです』『あそこのお孫さんです』ということはすべて吉田前理事長に前もって説明していました。私が勝手にやったことは一度もありません」

 ――介護士や看護師などの専門職は人手不足だが、その職種の採用を進めることはなかったのか。

 「それはしていません。その時は介護士が必要な仕事を町から請け負ってなかったので、そもそも必要なかったのです。7月からデイサービス施設などを開所したことにより、介護士が必要になりました。ただ、そのような(縁故採用)指摘を受けたことの重大性は認識しており、個人的に応募を呼び掛けるのは控えるつもりです」

 ――親族の採用については。

 「試験を受けてもらい、復興支援員として関東事務所に配置しています。募集をかけても人が集まらない中、妻の弟が仕事を辞めたと聞き、『試験を受けてみないか』と打診しました。一方的に採用したわけではなく、私以外の職員2人による面接で選びました」

 ――公募期間はいつからいつまでだったのか。

 「なかなか集まらなかったので、長い期間募集していました。ただ、町からは『急いで採用してほしい』と言われていました。詳しい期間は調べてみないと分かりません」

「縁故採用は組織の私物化の表れ」

 親族が所有する物件への関東事務所設置疑惑については、

 「義弟が茨城県取手市で物件を管理しているので、いい物件が見つからない場合は、そこに置くのも一つの方法だな、と。ただ、それはやっていません」

 ――交通の便が良い都心の方が避難者は利用しやすいのでは。

 「関東に避難している方は茨城県在住の方が多いんです。近い方がいいのかな、と。それと首都圏で事務所を借り上げると、細かい部分が多いんですね。不動産業者を通して物件を探したが、なかなか見つからなかった。そこで、もし義弟の物件が空いているならと思って。ただ、身内の不動産を借りたとなると、いろいろ言われそうなのでやめました」

 ――借りるのをやめたのは吉田前理事長の判断か。

 「私の判断です。上に決裁は上げていませんので」

 ――どうして都心の事務所になったのか。

 「もう1人の職員が埼玉県草加市在住なので、どちらも通える方がいいですし、茨城だけに集中するわけではないので、被災者と職員の両方が通いやすいように、アクセスの良い都心がいいかなと考えました。義弟の物件を一時考えたのも、不動産業者を通すより手続きが簡素で、借りやすいという利点がありました。仮に義弟の物件を選んだとして、他の物件と比べて1円でも多く払うということはありません」

 初めは「関東の避難者は茨城に多い」と答えていたが、いつの間にか「避難者は茨城だけに集中するわけではない」と矛盾をきたしている。

 前出・塚口氏に見解を聞いた。

 「公正に募って選別するというルートを踏むのが鉄則です。縁故採用が事実なら、組織を私物化した表れと言っていいでしょう。本来は誰がどこから見ても公正な採用方法が取られていると保証されなければなりません。それが組織運営の公正さに結びつきます。福祉事業は対人支援です。最上の支援は、絶えず検証しながら提供していくことが大事です。そこに私的なものや恣意的なものが混じってくると、良いサービスは提供できないと思います」

 ガバナンスがきちんとしていないと、福祉サービスにも悪影響が出るというわけだ。浪江町社協には、町や県から補助金が交付されている。町民や県民は同社協の在り方にもっと関心を持ってもいい。

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