田村市の「いわくつき産業団地」が完売

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田村市の〝いわくつき産業団地〟が完売

 道路舗装の大成ロテック(東京都新宿区)が田村市常葉町に整備中の東部産業団地(仮称)に進出する。3月31日、同社の西田義則社長と白石高司市長が基本協定を締結した。

 《民間企業として国内初の大型舗装実験走路を備えた研究施設を建設する。2023年度に着工し、24年度中の運用開始を目指す》《実験走路は1周約1・0㌔の楕円状で、トレーラーを自動運転させ、開発中のコンクリートやアスファルト舗装の耐久性などを調べる。トレーラーを監理する管理棟や車両の点検・整備を行うトラックヤードなども設ける》(福島民友4月1日付より)

 大成ロテックは同団地の二つある区画のうちA区画(約14・3㌶)に進出。残るB区画(約9・1㌶)には昨年10月、電子機器関連のヒメジ理化(兵庫県姫路市)が進出することが発表されているため、同団地はこれで完売したことになる。

 「これほど巨大な団地を、あんな辺ぴな場所につくって売れるのかと内心ヒヤヒヤしていました」

 と話すのは市役所関係者だ。

 同団地は県内でも数少ない大規模区画の企業用地を造成するため、本田仁一前市長時代に着工された。開発面積約42㌶で、事業費107億3800万円は福島再生加速化交付金と震災復興特別交付税から捻出されたが、設置場所については当初から疑問視する向きが多くあった。

 すなわち、同団地は田村市常葉町山根地区の国道288号沿いにあるが、①丘がいくつも連なっており、整地するには丘を削らなければならない、②大量の木を伐採しなければならない、という二つの大きな労力が要る場所だったのだ。

 なぜ、そのような場所が産業団地に選ばれたのか。当時、市は「復興の観点から浜通りと中通りの中間に当たる常葉町が最適と判断した」と説明したが、市民からは「常葉町は本田氏の地元。我田引水で選んだだけ」という不満が漏れていた。

 また設置場所だけでなく、造成工事を受注したのが本田氏の有力支持者である富士工業(と三和工業のJV)だったこと、整地前に行われた大量の木の伐採に本田氏の家族が経営する林業会社が関与していたことなども、同団地が歓迎されない要因になっていた。

 こうした疑惑を抱えた同団地の区画販売を、2021年の市長選で本田氏を破り初当選した前出・白石氏が引き継いだわけだが、区画が広すぎる、水の大量供給に不安がある、高速道路のICから距離がある等々の理由から販売に苦労するのではないかという見方が浮上していた。

 幸い、市の熱心な営業活動でヒメジ理化と大成ロテックの進出が決まり、これらの不安は一掃された形。とはいえ、解決しなければならない課題はまだ残っているのだという。

 「想定外の巨岩が地中に埋まっていて工事に時間がかかっている。岩は家1軒分よりも大きくて硬く、動かすのは不可能なため、壊して運び出すことになるようです」(前出・市役所関係者)

田村市の〝いわくつき産業団地〟が完売【敷地内に残された巨岩】
敷地内に残された巨岩

 実際、現地に行くと、国道288号からすぐ見える場所に、2階建ての住宅より大きな岩がむき出しで横たわっているのが分かる。これほどの巨岩を処理するのは確かに容易ではなさそう。

 ただ、市商工課によると「残る作業は舗装の一部や調整池の整備などで、これらを進めながら進出企業も必要な工事に着手する予定です」(担当者)と、巨岩の処理を行っても両社の操業スケジュールに影響は出ないとしている。

 疑惑にさいなまれた同団地の正常な稼働が待たれる。

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