悪評絶えない山本幸一郎【浪江町】副議長

悪評絶えない山本幸一郎【浪江町】副議長

 本誌2022年8月号に掲載したのは「山本幸一郎浪江町副議長に怪文書 家業の建設会社急成長に疑惑の目」という記事。内容は編集部宛てに届いた山本氏への批判メールの内容を検証し、本人に直撃したもの。

議員の資質が問われる〝傍若無人ぶり〟

 公職選挙法第92条の2では、自治体議員がその自治体から仕事を請け負う会社の役員に就くことを禁じている(兼業禁止)。そのため、山本氏は家業の建設会社・平成建設の役員から退いている。ただ、実際は副議長の立場を利用して多くの仕事を得ており、会社は急成長している。7月の町長選で新町長となった元県議・吉田栄光氏とは仲が良く、その威光もあって、ゼネコンの下請けに入っている――。以上がメールの概要だ。

 実際、平成建設はここ数年業績を伸ばしている(別表参照)。震災・原発事故前の売上高は1億2000万円前後だったが、近年は数億円規模となっており、2020年12月期には売上高14億0400万円、当期純利益1億1600万円を計上。安藤・間が元請けの農地除染や被災建物解体工事に下請けとして入っているほか、町発注の農業用施設保全整備工事を元請けで受注していた。

平成建設の業績



 山本氏はどう受け止めるのか。本人を直撃すると、「議員の立場を利用して入札情報を得たわけではなく、誰でも入手できる形で情報を得たに過ぎない」と主張した。

 そのほかメールで指摘されていた点については、「大手ゼネコンから浪江町復興事業協同組合に打診があり、複数社で請け負っている」、「事情が分からない役場職員に対しては、怒ってしまうというかつい大きな声でやり取りしてしまう」、「町長選では吉田栄光氏の選対幹事長を務めた。町長選も意識して送信されたメールかもしれない」と話していた。

 そのため、記事では、「町内で存在感を増す山本氏に対し、敵意を抱く人物がメールを送ったのではないか」と書いた。

 ところが、その後、過去に取材したことのある複数の浪江町民や浜通りの建設業界関係者から「山本氏は役場職員だけでなく、同業者に対しても乱暴な言動を見せたり、強引に仕事を取ることがあるので嫌われている。何件もトラブルになっている」と指摘が入ったのだ。

 ある町民はこう話す。

 「いま、この地域には復興関連で大手ゼネコンをはじめ、他地区からさまざまな業者が入っているが、地域の実情を知らない人は、『議員』『副議長』という肩書きを持つ山本氏を信用して近づいてくる。山本氏(平成建設)はそれでパイプを作り、大手ゼネコンの復興事業の下請けに入って、かなりの仕事を得たのは間違いない。本人はそのつもりはないかもしれないが、『議員』『副議長』という肩書きがなければそれは叶わなかったでしょう。南相馬市内の飲み屋で、山本氏と大手ゼネコンの現地所長クラスが飲み歩いている姿を何度も見かけた。そういう意味では、『議員』『副議長』の肩書きを使って、平成建設の営業活動をしていると捉えられても仕方がないでしょうね」

同業者から多数の〝被害〟報告

 一方、浜通りの建設業界関係者は次のように証言する。

 「記事にあったように、山本氏は気性や口調が荒く、同業者に対しても義理を欠く対応を取ることがある。それでも、町内では相応の影響力があり、今回、親しい吉田栄光氏が町長になったことで、さらに力を持つことになった。皆、それぞれの仕事や生活があるから、不満に思っていてもなかなか言い出せないのです。だから、『政経東北』に告発した人に対しては、匿名とはいえ、『勇気あるな』『よく言ってくれた』という人が多かったのです」

平成建設の事務所
平成建設の事務所

 平成建設と過去に仕事をしたことがある複数の建設業界関係者に当たったところ、「詳細に記すと誰が言ったか分かり、仕事の上で不利益になることが予想されるため、記事で具体的に書かないでほしい」という人がほとんどだった。

 ただ、彼らの話を統合すると、「この仕事を手伝ってほしい」とか、「あそこの現場に何人か人を出してほしい」ということがあり、正式に契約書を交わさずに仕事に入った後、トラブルに巻き込まれたケースが多々あったようだ。

 「最初に言っていた条件と違うとか、最初に話していた以上の仕事をやらされることになったとか、そういった事例がよく知られている。近隣の土建業者はみな直接的に関わるのを避け、陰で愚痴を言い合っている」(建設業界関係者)

 8月上旬には編集部宛てに新たな匿名投書も寄せられた。

 《記事では山本氏が「父が半年前に倒れてからは私が金勘定を担当するようになった」と話していたが、実際はその前からすべての実権を握っている。仕事の打ち合わせから段取りなどすべて行っていた》

 《山本氏は役場、業界関係者に対し、気に入らないことがあればすぐに声を荒げて恫喝し詰め寄ってくるので、関係者の間では山本氏に会わないようにするのが基本。会社に乗り込み暴言、恫喝等、日常的に行っている》

 まるで〝被害者の会〟でも組織されたような勢いで本誌に寄せられる山本氏関連の情報の数々。要するに、「町内で存在感を増している山本氏」に敵意を抱いて怪文書メールが送られたわけではなく、もともと評判が悪い人物だったわけ。

 山本氏は1968年4月生まれ。浪江町出身で、大堀小学校、浪江中学校、双葉高校卒。2007年に平成建設社長に就任。2009年、浪江町議選で初当選したのに伴い社長を退任。山本氏の妻・博美氏が社長を務め、山本氏は同社社員となっている。もっとも、山本氏が経営を取り仕切っているのは周知の事実だ。

 山本氏の父親・幸男氏は山本牧場(同町末森地区=原発事故で帰還困難区域に指定)を経営するかたわら、同町議を8期務め、議長経験もある。

 町内のある議員経験者は山本親子をこう評価する。

 「幸男さんは3回も議長不信任案が出されるなど、議会のトラブルメーカー的存在として取り沙汰されることが多かった。幸一郎くんはそこまで目立ってはいないが、〝瞬間湯沸かし器〟で、納得できないことがあるとすぐ大声を出す。〝ヤンチャ〟な武勇伝も知られています」

 山本氏が毎年参加している相馬野馬追の騎馬会や、大手ゼネコン事務所などでも大声を出し机をひっくり返して暴れていた――という目撃談も複数の町民から得られた。

 「よく知られているのは、町内某企業の創立記念パーティーの二次会で、知人に暴力を振るった事件です。周囲に人がいる中だったのでウワサになり、『月刊タクティクス』に匿名で書かれました」(ある町民)

 町議4期目。副議長を務めるベテラン議員だが、同僚町議からは「議員という立場をわきまえない言動が多くて敬遠されている」、「政治的行動を共にする同士はいない」という本音が聞かれる。

農地取得と競走馬施設の関係

 そんな山本氏にとって強い味方となっているのが吉田栄光氏だ。子どものころから親密で、町長選では山本氏が吉田氏の選対幹事長を務めた。2人の関係を象徴すると言われているのが、同町末森・大堀地区で整備が計画されている競走馬施設(本誌9月号既報)だ。

 民間事業者主体の計画とされているが、吉田氏が誘致に前向きだったとされており、「吉田町長の息子らが経営するランドビルドという会社が運営に携わるらしい」(前出・ある町民)と言われている。

 一方、山本氏は帰還困難区域の末森地区や大堀地区などで営農意思がない農家から農地を取得している(本誌8月号既報)。そのため「吉田氏を通して施設が整備されることを知った山本氏が、周辺施設なども想定して土地を先行取得しているのだろう」という見方が広まっているのだ。

 吉田氏に事実関係を確認したところ、「競走馬施設の計画が浮上しているのは事実であり、とても期待している。ただ具体的な段階ではないし、(吉田氏の子どもの会社は)運営に携わるというものではなく、お手伝いした程度」とコメントした。

 ランドビルドの吉田学人氏にコメントを求めるとこう話した。

 「私が乗馬を趣味としていることを知って、先方から相談を受けたのです。地域のためになる事業と感じたので、ほかの人を紹介するなどしてお手伝いしましたが、運営などに携わる予定はありません。そのようなウワサが出ているのは承知していましたが、事業主は全く別の方なので、どう対応すればいいか困惑していました」

 山本氏に話があったのかどうかは判然としないが、競走馬施設の計画と山本氏の農地取得、タイミングが良すぎるのは事実だ。

 10月下旬、再び山本氏を直撃し悪評が相次いでいることに対し、意見を聞いた。

 まず大手ゼネコンの現地所長クラスと飲み歩いている点についてはこう話した。

 「年に数回飲みに行く友達グループの中に、大手ゼネコンの現地所長経験者がいるのは事実。ただ、いまはそのゼネコンの下請けに入っているわけではないし、自分が直接的に酒席に招くことはない」

 同業者とのトラブルに関しては、「そうしたトラブルになった記憶はない。特に思い当たらない」と語った。複数の業界関係者から話を聞いているが、事実ではないということか、それともより詳細に話せば記憶がよみがえることもあるのか。

 騎馬会や大手ゼネコン事務所で大暴れした――という話に関しては次のように答えた。

 「騎馬会の〝役付け〟をめぐり、声を荒げて異議を唱えるのはみんなやっていたこと。自分だけがことさら取り上げられるのは違和感がある。それに机をひっくり返して大暴れした記憶はない。誰かと勘違いしているのではないか」

 「大手ゼネコンに関しては除染漏れの個所があったので、呼びつけて怒鳴ったことが何度かある。事務所で大暴れした記憶はない」

 ウワサを否定する山本氏だが、町内某企業の創立記念パーティーの二次会で、知人に暴力を振るった点は「本当にあったことです」とあっさり認めた。

 「酒癖の悪い知人を諫める目的で叩いたらもみ合いになり、周りに止められた。事件化はしなかったが、議員という立場にありながら手を出したことを反省しています」(山本氏)

 競走馬施設用地の先行取得に関しては「同施設の計画が浮上したのは半年ほど前。うちの父親(幸男氏)が山本牧場付近の農地を取得し始めたのが3年前。計画に合わせて先行取得したわけではありません」とウワサを否定した。

 一方で、「計画地は山麓線(県道35号いわき浪江線)から1㌔ほど山側に入っていったところになる見込み。実はそちらにもわずかですが私の所有地が含まれています」と自ら明かした。競走馬施設に合わせて土地を先行取得したわけではないが、偶然所有地の一部が計画地に入っていた――山本氏はそう主張したいようだ。そう言いつつも計画地はしっかり把握していたわけで、意識はしていたのではないか。

「酒飲みに出かけるのはやめる」

「酒飲みに出かけるのはやめる」【山本幸一郎氏(浪江町議会HPより)】
山本幸一郎氏(浪江町議会HPより

 一通り話を聞いた後、山本氏は「自分が認めていないウワサまで誌面で紹介されるのは違和感がある」と語った。それならば、本人にとって都合のいい情報しか記事には書けないことになる。真面目に活動している議員であれば、これほどヘンなウワサが流れることはないだろう。怪文書が送られてきたという記事に対し、同業者から「勇気あるな」「よく言ってくれた」という声が上がるのはよほどのことだ。

 言葉の端々からいかにも相馬野馬追出場者らしい熱い性格で、仲間への面倒見のよさが伝わってくる。業界関係者もそのことは認める。しかし、それ以上に公人らしからぬ傍若無人ぶりが際立っている。

 「議員なのに建設会社の社長のようにふるまい、ゼネコンの現地所長と堂々と飲み歩く。そのことを指摘されれば〝いまは仕事をしていないゼネコン〟とうそぶく。公禄をはむ〝公人〟という自覚に欠けているのではないか」(建設業界関係者)

 山本氏に関する情報は現在進行形で寄せられている。一つは山本牧場の件だ。山本氏の父親・幸男氏が病気で倒れ、山本牧場において研究名目で飼われていた牛が殺処分された。それらの死体について、「家畜保健所に届け出せず牧場敷地内に埋めたのではないか」とウワサになった。

山本牧場
山本牧場



 ただ、家畜保健所に確認したところ、原発事故により指定された旧警戒区域において、原発事故発生当時生きていた牛は殺処分して敷地内に埋設するよう方針が示されており、それに基づいていたので問題がないことが分かった。「家畜保健所担当者の立ち合いのもと、埋めました」(山本氏)。

 このほか、下請け会社から出向している社員について、雇用の〝グレーさ〟を指摘する声もあった。

 山本氏は記者に対し「酒飲みは好きだが、友達グループと酒飲みに出かけるのはやめる。前回記事を受けて、職員に対し大声を出すのもやめた」と語った。どこまで真剣かは分からないが、周囲からは自分が想像している以上に冷ややかな目で見られていることを意識すべきだ。

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