【伊達市】利用者が少ないレンタサイクル事業

【伊達市】利用者が少ないレンタサイクル事業

 市が行うサイクルツーリズム(サイクリングを通じた観光誘客)を厳しく監視する市民がいる。

税金の無駄と批判するサイクリスト

電動クロスバイクにまたがる筆者と完走記念にもらった桃ジュース
完走記念にもらった桃ジュース
完走記念にもらった桃ジュース

 昨年10月に伊達市が同市月舘町にオープンさせた「おての里きてみ~な」はサイクルツーリズムを目的とした簡易宿泊所。閉校した旧小手小学校の校舎を活用している。

 2017年に自転車活用推進法が施行され、国は自転車による観光地づくりを後押ししている。「きてみ~な」もその流れを受けて整備されたもので、オープン1カ月の訪問者は460人、宿泊者は65人と上々の滑り出しを見せている。

 ただ、そんな市のサイクルツーリズムを厳しく監視する人も……。市内在住の鈴木雅彦さん。鈴木さんは日常的にロードバイクにまたがるサイクリストだが、その目には「レンタサイクル事業が酷い」と映っている。

 市では訪れた人に各所を周遊してもらうため、2021年度からレンタサイクル事業を行っている。市内5カ所(まちの駅だて、保原総合公園、梁川総合支所、道の駅伊達の郷りょうぜん、つきだて花工房)で電動クロスバイクや2人乗りタンデム自転車などをレンタル。料金は1人乗りが1日500円(小学生は同300円)、2人乗りが同1000円となっている。

 しかし利用は低調で、鈴木さんが市に開示請求して入手した公文書によると2022年度のレンタル台数と売り上げは、まちの駅だて12台5800円、保原総合公園62台2万7400円、梁川総合支所40台1万8600円、道の駅32台1万4200円、つきだて花工房14台6000円、計160台7万2000円。1カ所につき1カ月2・7台しかレンタルされていなかったのだ。

 これに対し、市が購入した自転車は計65台730万円。1台11万円超とかなり高額だ。このほか市は、盗難防止などの観点からセコムのGPSを搭載しているが、鈴木さんが全国のレンタサイクル事業者14社に聞き取りをしたところ、GPSを通年で搭載している事業者はなく、通常は利用者の動態調査のため1~2週間程度搭載するだけだった。

 要するに、鈴木さんは「高額の自転車を大量購入したのに利用が少なく、無駄なGPSを搭載するのは税金の無駄遣い」と言いたいわけ。

 市が2022年10~12月にかけて行った「レンタサイクルDE伊達市を満喫キャンペーン」の成果も芳しくなかった。スマートフォンのサイクリングアプリと連動した五つのサイクリングコースを設けるなどして利用者増を目指したが、鈴木さんが入手した公文書によると、アプリを起動させるとカウントされるスタート数と実際にコースを完走した数が合わず(例えば10月24日はスタート数81、完走数12で完走率14・8%。11月14日はスタート数9、完走数12
で完走率133・3%)、実際にどれくらいの人がキャンペーンに参加したのか判然としないのだ。

 「民間では、もし成果が得られなければ問題点を洗い出し、改善して次年度に臨むが、伊達市は反省や改善をしているのか。無駄な税金の支出はやめてほしい」(鈴木さん)

 今年度も昨年9~11月に「伊達ぐるっとサイクリングキャンペーン」が展開されたが、筆者もキャンペーンの良し悪しを感じたいと思い10月中旬にまちの駅だてで電動クロスバイクをレンタルし、7㌔コースを実走してみた。電動アシスト機能のおかげで快適な走行を楽しめた半面、すぐ横を車が通り過ぎる怖さやコース設定の味気無さを感じた。キャンペーンでは霊山など紅葉が綺麗なコ
ースや20㌔以上の長距離コースもあり、そちらを走れば別の発見もあったのかもしれないが、永続的な観光事業にしていくためには実走者の感想をもとにブラッシュアップしていく作業が必要だ。

「熱意が足りない」

利用者が少ないレンタサイクル
利用者が少ないレンタサイクル

 実は、問題点を指摘しているのは鈴木さんだけではない。県北地方を拠点とする某サイクリストサークルのメンバーも2022年2月のブログで、同市月舘町に設置されたサイクリングロードの看板に疑問を呈しながらこんな感想を綴っている。

 《実はサイクルツーリズムを活用した地域作りという事で、昨年くらいまで県庁や市役所の職員さんに呼ばれては(中略)沢山の意見を伝えていた筈でした。結局、我々の意見はなーんにも活かされなかったのかなぁ》

 ブログを書いたメンバーにフェイスブックやメールで取材を申し込んだものの返答はなかったが、サイクリストの生の声はどんどん反映させるべきだろう。

 市商工観光課の佐藤陽一課長を取材すると、次のように話した。

 「鈴木さんからは当課にもさまざまなご指摘が寄せられています。この間の実績やアンケートで得られた意見をもとに、新年度からは事業内容や予算を見直す予定です。何度も見直しをかけながら、皆さんに喜ばれ、また来たい、乗ってみたいと思われる事業にしたいので、新年度以降の取り組みにご理解とご協力をいただきたい」

 昨年12月に開かれた第6回定例会議では中村正明議員(5期)の一般質問でこの間のイニシャルコストが約1000万円、ランニングコストが約900万円かかっていることが判明。「コストの割に利用が少ない。もっと利用してもらおうという熱意も足りない。次年度も継続するなら問題点を検証すべきだ」(中村議員)と厳しく質す場面もあった。

 冒頭の「きてみ~な」を生かしながら、サイクリストの聖地となるような事業が展開できるのか。2024年度は勝負の年になりそうだ。

佐藤 仁

さとう・じん

1972(昭和47)年生まれ。栃木県出身。
新卒で東邦出版に入社。

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