いわき市職員と会社役員が交通事故トラブル

いわき市職員と会社役員が交通事故トラブル

 交通事故では、過失割合や示談金をめぐって加害者と被害者の間で意見が食い違うことがある。昨年12月7日、いわき市常磐関船町の丁字路信号で起きた交通事故もそうした事例の一つだ。

 右折レーンで2台の車が信号待ちしていたところ、後ろの車を運転していた市内の会社役員Aさんが不注意でブレーキから足を離し、クリープ現象で前の車に接触してしまった。

 双方ともほとんど損傷はなかったが、警察による現場検証の結果、前の車の後部バンパーにナンバープレートの跡が確認できたため、追突事故と扱われた。警察の調書には「時速約5㌔で追突」と記された。

 だが、追突された車のドライバーBさんはAさんにすごい剣幕で迫ったという。この間Aさんから相談を受けてきた知人はこう明かす。

 「『俺は海外旅行に行くことになっていたのにどうするんだ!』、『明日はタイヤ交換も予約したんだぞ!』、『こんなところでぶつけるって何考えてんだおめー!』とまくしたてられ、Aさんは恐怖を抱いたそうです」

 Aさんが運転していたのは社有車。当初「保険会社に対応を任せる」と話していたBさんだったが、8万円でバンパーを修理後、整形外科に行って全治2週間の診断(症状は頸椎捻挫=むち打ち損傷と思われる)を受け、警察に提出した。そのため事故は人身事故扱いとなり、Aさんには違反点数5点が加算された。

 そればかりかBさんはAさんが勤める会社の保険会社に対し、海外旅行のキャンセル料、旅先での宴会キャンセル料の支払いを求めたという。判例では結婚式直前の事故による新婚旅行キャンセル料などが損害として認められているが、Bさんの場合、損害とは認められなかったようだ。

 交通事故対応に振り回されたAさんは精神的苦痛で吐き気や頭痛を催すようになり、しばらく塞ぎがちになった。一時期はメンタルクリニックに通うほどだったが、一連の手続きの中でBさんがいわき市職員であることを知って、その対応に疑問を抱くようになったという。

 「交通事故の被害者になったからと言って、市民である加害者を罵倒し、過剰とも言える損害賠償を求めるのか。地方公務員法第33条に定められている『信用失墜行為』に当たるのではないか」(同)

 Aさんらは、いわき市役所職員課に連絡し、Bさんが市職員であることを確認した。だが、情報提供に対する礼と「職員課人事係で共有を図る」という報告があっただけで、その後のアクションはないという。

 当事者であるBさんは事故をどう受け止めているのか。自宅を訪ねたところ、次のように話した。

 「後ろからドーン!と突っ込まれて『むち打ち』になり、いまも通院していますよ。海外旅行は韓国の友人を訪ねる予定が控えていました。結局キャンセル料を支払ってもらえないというので、旅行には行きましたよ。……あの、これ以上は話す義務もないので取材はお断りします」

 時速5㌔での追突を「ドーン!と突っ込まれた」と表現しているほか、けがした状態で韓国旅行に行っても問題はなかったのかなど気になる点はいくつもあったが、曖昧な返答のまま取材を断られてしまった。

 いわき市職員課人事係では「事故の件は把握しているが、公務外での事故なので当事者間での話し合いに任せている。言葉遣いが乱暴になった面はあったかもしれないが、事故直後ということもあり、信用失墜行為には当たらないと考えている」とコメントした。

 Aさんらは事故を起こしたことを反省しつつも、モヤモヤが続いている様子。こうしたトラブルを避けるためにも、運転には気を付けなければならないということだ。

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