フルーツジュース店や洋菓子店などを全国展開する㈱青木商店(郡山市、1950年設立、資本金1000万円※)。同社は株式上場を長年の悲願としており、2017年には持ち株会社の青木フルーツホールディングス㈱(住所同、資本金2300万円)を設立した。
※法人登記簿によると青木商店の資本金は1000万円だが、HPにはなぜか「資本金等4500万円」と表記されている。こうした〝微妙な不正確さ〟が、青木氏が地元経済界からイマイチ信用されない要因なのかもしれない。
そんな両社の経営動向と、代表取締役を務める青木信博氏(75)の人物像は本誌昨年4月号「青木フルーツ『上場』を妨げる経営課題」という記事で詳報しているので参照されたい。この稿で取り上げるのは、3月1日付の地元紙で報じられた「両社の合併」についてである。
福島民友はこう伝えている。
《持ち株会社青木フルーツホールディングス(HD)は1日付で青木商店と合併する。青木商店が存続会社となり、同HD会長・社長の青木信博氏(75)が代表権のある会長に就く》《2月24日に開かれた同HDの臨時株主総会で合併の承認を受けた。同HDは合併について「組織再編を通じて経営の効率化を図るため」としている》
併せて、青木氏は同紙の取材に、タイの関連会社を新型コロナの影響で閉鎖したことも明かしている。
一般的に、持ち株会社は事業ごとに分かれた子会社を持ち、事業拡大やリスク分散を図るが、青木フルーツHDの場合は子会社が青木商店1社しかなく、持ち株会社としての存在意義は薄かったようだ。そもそも持ち株会社をつくる狙いは経営効率化なのに「両社を合併して経営効率化を図る」と言ってしまったら、青木フルーツHDの存在を自分から否定したことにならないか。
それはともかく、今後気になるのは持ち株会社をなくしたことで悲願の株式上場はどうなるのか、ということだ。これに関して青木氏は、福島民友の取材に「合併を機にスピードを上げて実現したい」と述べている。上場はあきらめないということだが、現実はどうなのか。
青木商店と青木フルーツHDはこれまで、三井住友信託銀行の証券代行部に株主名簿管理人を依頼していた。株主名簿管理人とは、株式に関する各種手続きや株主総会の支援などを代行する信託銀行や専門会社のこと。上場企業は会社法により株式事務の委託が義務付けられているため、青木商店は2014年から、青木フルーツHDは設立と同時に同行を株主名簿代理人に据えていた。
ところが青木商店の法人登記簿を見ると、今年1月12日付で株主名簿管理人を廃止している。これは何を意味するのか。
同行証券代行部に確認すると「青木商店に関する業務は取り扱っていない。ただ、青木フルーツHDに関する業務は現時点でも取り扱っている」と言う。記者が「青木フルーツHDは青木商店と合併し、既に解散している」と指摘すると「解散については把握していない。営業サイドと状況を確認し、必要があれば更新したい」と答えた。
青木商店にも問い合わせてみた。
「三井住友信託銀行とは青木フルーツHDが契約していたが、登記上は青木商店の株主名簿管理人にもなっていた。そこで、今回の合併を受けHDとしての契約は破棄し、青木商店の登記もいったん抹消して、同行には新たに青木商店として株主名簿管理人をお願いする予定です。株式上場は引き続き存続会社の青木商店で目指していきます」(総務部)
株式上場はあきらめない、とのこと。今後のポイントは上場に耐え得る決算(経営状態)を実現できるかどうかだが、せっかくつくった持ち株会社を解散する迷走ぶりを見せられると、悲願達成はまだまだ先のような気がしてならない。