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土木建築業のマルト建設㈱(会津坂下町牛川字砂田565)が揺れている。社長と営業統括部長が県職員への贈賄容疑で逮捕されたが、同じタイミングで町内では、役場庁舎の移転候補地の一つに同社が関わっていることが判明。町と同社の間でそこに移転することが既に決まっているかのような密約説まで囁かれている。しかし取材を進めると、贈収賄事件も密約説も公になっていない真実が潜んでいることが分かった。 マルト建設は1971年設立。資本金9860万円。役員は代表取締役・上野清範、取締役・上野誠子、佐藤信雄、根本香織、鈴木和弘、棚木光弘、成田雅弘、馬場美則、監査役・上野巴、上野洋子の各氏。 土木建築工事業と砂・砂利採取業を主業とし、会津管内ではトップクラスの完工高を誇る。関連会社に不動産業のマルト不動産㈱(会津若松市、上野清範社長)、石油卸売業の宝川産業㈱(同市、根本香織社長)、測量・設計企画業の東北都市コンサル㈱(同市、鵜川壽雄社長)がある。 マルト建設が贈収賄事件の渦中にあるのは、地元紙等の報道で読者も周知のことと思う。1月23日、社長の上野清範氏(45)と、取締役で営業統括部長の棚木光弘氏(59)が逮捕された。両氏は県会津農林事務所発注の公共工事の入札で、同事務所農村整備課主査の寺木領氏(44)から設計金額を教えてもらった見返りに、飲食代やゴルフ代など約26万円相当の賄賂を供与したとされる。 報道によると、①寺木氏が賄賂を受けたのは2020年3月から22年4月ごろ、②マルト建設は会津農林事務所が19~22年度に発注した公共工事のうち17件を落札、③寺木氏が19~21年度に設計・積算を担当した工事は7件で、このうち同社が落札したのは1件、④寺木氏が教えたとされる入札情報が、自身の業務で知り得たのか、他の手段で入手したのかは分からない、⑤寺木氏は22年4月から県中農林事務所に勤務――等々が分かっている。 一方、分かっていない点もある。寺木氏から教えてもらった入札情報をもとに、マルト建設が落札した工事はどれか、別の言い方をすると、同社が供与した賄賂は、どの工事に対する見返りだったのかが判然としないことだ。 実際、寺木氏と上野氏の起訴後、福島民報は《(起訴状によると)12回にわたり、いわき市の宿泊施設など7カ所で飲食、宿泊、ゴルフ代など26万2363円分の接待》(2月14日付)と報じ、賄賂...
田村市が建設を計画している新病院の施工予定者が〝鶴の一声〟で変更された。市幹部などでつくる選定委員会は、公募型プロポーザルに参加した3社の中から鹿島建設を最優秀提案者に選んだが、白石高司市長の指示で次点者の安藤ハザマに覆ったのである。 「新病院の施工予定者が白石市長の指示で変更されたらしい」 そんなウワサを田村市内の自民党関係者から聞いたのは、2022年7月に行われた参院選の前だった。 新病院とは、田村地方の医療を支えるたむら市民病院(病床数32)の後継施設を指す。公には6月30日に市のホームページで「新病院の施工予定者選定に係る公募型プロポーザルの最優秀提案者に安藤ハザマ、次点者は鹿島建設」と発表され、7月4日付の福島建設工業新聞にも「新病院の施工予定者に安藤ハザマ」という記事が掲載された。 ところが実際の審査では、最優秀提案者に鹿島、次点者に安藤ハザマが選ばれていたというのだ。 「2022年6月、市幹部などでつくる選定委員会が白石市長に『審査の結果、鹿島に決まった』と報告した。しかし白石市長が納得せず、次点の安藤ハザマに変更するよう指示したというのです。選定委員会は『何のために審査したか分からない』と不満に思ったが、上から言われれば従うしかない」(市内の自民党関係者) 一度聞いただけではまさかとしか思えない話。だが、それはウワサでもまさかでもなく、事実だった。 市長の指示で施工予定者が突然覆される――そんなかつての〝天の声〟を彷彿とさせる出来事はなぜ起きたのか。 たむら市民病院は、同市船引町の国道288号沿いで診療を行っている。もともとは医療法人社団真仁会が大方病院という名称で運営していたが、院長が急死したため2019年7月に市が事業継承、公的医療機関として生まれ変わった。診療科目は内科、人工透析内科、外科など10科。運営は指定管理者制度で公益財団法人星総合病院(郡山市)に委託している。 市立病院の設置は、2005年に旧5町村が合併した田村市にとって悲願だった。しかし、事業継承した時点で建物の老朽化、必要な病床数の確保、救急受け入れなどの課題を抱えていた。そこで市は2020年3月に新病院建設基本計画を策定、現在地から北東1・3㌔の場所(船引町船引字屋頭清水地内)に新病院を建設する方針を打ち出した。 2020~21年度にかけて予定地の造成を行い、...
田村市で起きた一連の贈収賄事件。受託収賄・加重収賄の罪に問われている元職員は、市内の業者に公共工事に関する情報を漏らし、見返りに金品や接待を受けていた。本誌は先月号【第1弾】田村市・元職員「連続収賄事件」の真相で、元職員が漏らした非公開の土木事業単価表が積算ソフト会社に流れたと見立てていたが、裁判では社名が明かされ仮説が裏付けられた。調べると、仙台市に本社があるこの会社は宮城県川崎町でも全く同じ手口で贈収賄事件を起こしていた。予定価格の漏洩が常態化していた田村市は、規範意識の低さを積算ソフト会社に付け込まれた形だ。 元職員への賄賂の経路は、贈った市内の土木建築会社ごとに「三和工業ルート」と「秀和建設ルート」に分かれる。本稿では執筆時点の2022年11月下旬、福島地裁で裁判が進行中で、同30日に役員に判決が言い渡される予定の「三和工業ルート」について書く。 「三和工業ルート」は単価表をめぐる事件だった。公共工事の入札に当たり、事業者は資材単価を工事に合わせて積算し、入札金額を弾き出す。この積算根拠となるのが、県が作成し、一部を公表している単価表だ。実物をざっと見ると半分以上が非公表となっている。ただし都道府県が市町村に単価表を提供する際は、すべての単価が明示されている。 問題は、不完全な単価表しか見られない業者だ。これを基に他社より精度の高い積算をしなければ落札できない。そこで、事業者は専門の業者が作成する積算ソフトを使ってシミュレーションする。積算ソフト会社にとっては、精度を上げれば製品の信頼度が上がり、商品(積算ソフト)が売れるので、完全な情報が載っている非公表の単価表は「のどから手が出るほど欲しい情報」なのだ。 一方で、三和工業は堅実で業績も安定しており、自社の落札のために単価表入手という危ない橋を渡ることは考えにくい。こうした理由から、本誌は先月号で、積算ソフト会社が三和工業役員に報酬をちらつかせて単価表データの入手を働きかけ、役員が元市職員からデータを漏洩させたと見立てた。果たして裁判で明らかとなった真相は、見立て通り、積算ソフト会社社員の「依頼」が発端だった。 11月9日の「三和工業ルート」初公判では、元市職員の武田護被告(47)=郡山市=と同社役員の武田和樹被告(48)=同=が出廷した。2人は旧大越町出身で中学時代の同級生。和樹被告は大学卒...
「城報館」低迷の責任を部下に押し付ける三保市長 二本松市役所で産業部長によるパワハラ・モラハラが横行している。被害者が声を上げないため公には問題になっていないが、部下の課長2人が2年連続で出先に異動し、部内のモチベーションは低下している。昨今は「ハラスメントを許さない」という考えが社会常識になっているが、三保恵一市長はこうした状況を見過ごすのか。そもそも、三保市長自身にもパワハラ疑惑が持ち上がっている。(佐藤仁) まずは産業部内で起きている異変を紹介したい。同部は農業振興、商工、観光の3課で組織されるが、舞台となったのは観光課である。 2021年4月から観光課長に就いたA氏が、1年で支所課長として異動した。その後任として22年4月から就いたB氏も半年後に病休となり、11月に復職後は住民センター主幹として異動した。課長から主幹ということは降格人事だ。 B氏の後任は現在も決まっておらず、観光課長は空席になっている。 菊人形、提灯祭り、岳温泉など市にとって観光は主要産業だが、観光行政の中心的役割を担う観光課長が短期間のうちに相次いで異動するのは異例と言っていい。 原因は、荒木光義産業部長によるハラスメントだという。 「荒木部長の言動にホトホト嫌気が差したA氏は、自ら支所への異動を願い出た。『定年間近に嫌な思いをして仕事をするのはまっぴら。希望が通らなければ辞める』と強気の姿勢で異動願いを出し、市に認めさせた。これに対し、B氏は繊細な性格で、荒木部長の言動をまともに受け続けた結果、心身が病んだ。問題は1カ月の病休を経て復職後、主幹として異動したことです。職員の多くは『被害者が降格し、加害者がそのまま部長に留まっているのはおかしい』と疑問視しています」(市役所関係者) 荒木部長のハラスメントとはどういうものなのか。取材で判明した主な事例を挙げると①感情の浮き沈みが激しく、機嫌が悪いと荒い口調で怒る。②指導と称して部下を叱責する。いじめの部類に入るような言い方が多々みられる。③陰口が酷く、他者を「奴ら」呼ばわりする。④自分だけのルールを市のルールや世間の常識であるかのように押し付け、部下が反論すると叱責する。⑤部下が時間をかけて作成した資料に目を通す際、あるいは打ち合わせで部下が内容を説明する際、自分の意図したものと違っていると溜息をつく。⑥「なぜこんなこともできない」と面...
会津若松市の元職員による巨額公金詐取事件。その額は約1億7700万円というから呆れるほかない。 巨額公金詐取事件を起こしたのは障がい者支援課副主幹の小原龍也氏(51)。小原氏は2022年11月7日付で懲戒免職になっているため、正確には元職員となる。 発覚の経緯は2022年6月13日、2021年度の児童扶養手当支給に係る国庫負担金の実績報告書を県に提出するため、小原氏の後任となったこども家庭課職員が関係書類やシステムデータを確認したところ、実際に振り込んだ額とシステムデータに不整合があることを見つけたことだった。 内部調査を進めると、2021年度の児童扶養手当支給に複数の不整合があることが分かった。また小原氏の業務用パソコンからは、同年度の子育て世帯への臨時特別給付金について小原氏名義の預金口座に振込依頼していたデータや、重度心身障がい者医療費助成金をめぐり小原氏が給付事務を担当していた07~09年度に詐取していたことをうかがわせるデータも見つかった。市は会津若松署に報告し今後の対応を相談する一方、金融機関に小原氏名義の預金口座の照会を行うなど、詐取の証拠集めを2カ月かけて進めた。 市は2022年8月8日、小原氏に事情聴取した。最初は「分からない」「覚えていない」と非協力的な姿勢を見せていたが、集めた証拠類を示すと児童扶養手当と子育て世帯への臨時特別給付金を詐取したことを認めた。 小原氏は動機について「不正に振り込む方法を思い付いた。魔が差した」と語り、使途は「生活していく中で自然に使った」と説明したが、続く同9、10、15日に行った事情聴取では「親族の借金を肩代わりし返済に苦労していた」「競馬や宝くじに使った」「車のローンの返済に充てた」と次第に変化していった。 市は事情聴取と並行し、詐取された公金の回収に取り組んだ。預金口座からの振り込みに加え、生命保険の解約や車の売却といった保有財産の換価を行い、2022年11月8日現在、約9100万円を回収した。 2022年9月8日には小原氏に対する懲戒審査委員会を開き、懲戒免職が妥当と判断されたが、引き続き事情聴取と公金回収を進めるため、小原氏の職員としての身分を当面継続することとした。 小原氏は2022年10月7日、市に誓約書を提出した。内容は児童扶養手当(約1億1070万円)、子育て世帯への臨時特別給付...
賄賂を渡した田村市内業者の思惑 田村市で起きた一連の贈収賄事件。逮捕・起訴された元職員は、市内の業者に公共工事に関する情報を漏らし、見返りに金品を受け取っていたが、情報を漏らしていた時期が本田仁一前市長時代と重なるため、一部の市民から「本田氏と何らかの関わりがあったのではないか」と疑う声が出ている。真相はどうなのか。 まずは元職員の逮捕容疑を新聞記事から説明する。 《県が作成した公共工事などの積算根拠となる「単価表」の情報を業者に提供した謝礼にギフトカードを受け取ったとして、県警捜査2課と田村署、郡山署は24日午前、元田村市技査で会社員、武田護容疑者(47)=郡山市富久山町福原字泉崎=を受託収賄の疑いで逮捕した。また、贈賄の疑いで、田村市の土木工事会社「三和工業」役員、武田和樹容疑者(48)=郡山市開成=を逮捕した。 逮捕容疑は、護容疑者が、市生活環境課原子力災害対策室で業務をしていた2020年2月から翌年5月までの間、和樹容疑者から単価表の情報提供の依頼を受け、情報を提供した謝礼として、14回にわたり、計14万円相当のギフトカードを受け取った疑い。和樹容疑者は、情報を受けた謝礼として護容疑者にギフトカードを贈った疑い》(福島民友2022年9月25日付) 両者は旧大越町出身で、中学校まで同級生だった(この稿では、両者を「容疑者」ではなく「氏」と表記する)。 武田護氏が武田和樹氏に漏らした単価表とは、県が作成した公共工事の積算根拠となる資料。県内の市町村は、県からこの資料をもらい公共工事の価格を積算している。 県のホームページを見ると土木事業単価表、土木・建築関係委託設計単価表、建築関係事業単価表が載っているが、例えば「令和4年度土木事業単価表」は994頁にも及んでおり、生コンクリート、アスファルト合材、骨材、再生材、ガソリン・軽油など、さまざまな資材の単価が県北(1~6地区)、県中(1~4地区)、県南(1~3地区)、喜多方(1~3地区)、会津若松(1~4地区)、南会津(1~3地区)、相双(1~5地区)、いわき(1~2地区)と地区ごとに細かく示されている。 ただ単価表を見ていくと、一般鋼材、木材類、コンクリート製品、排水溝、管類、交通安全施設資材、道路用防護柵、籠類など複数の資材や各種工事の夜間単価で「非公表」と表示されている。ざっと見て1000頁近い単価表の...
任期満了に伴う玉川村長選は4月18日告示、同23日投開票の日程で行われる。現職・石森春男氏は昨年12月議会で今期限りでの引退を表明しており、村内では「石森村長を支持していたグループと、その対立グループの双方が候補者を立てる可能性が高い」との見方がもっぱらだ。 石森春男村長(71、4期)は昨年12月議会の一般質問への答弁で、今期限りでの引退を表明した。 石森村長は「村政の課題を考えると、新たな視点で行政を推進することが大事であり、後進に道を譲りたい。後継者は考えていない」(福島民友昨年12月13日付)と述べた。 石森村長は1951年生まれ。同村出身。須賀川(現須賀川創英館)高卒。1971年に村役場職員となり、企画財政課長、農業委員会事務局長などを経て、2007年の村長選で初当選。4期のうち、選挙戦になったのは2015年のみで、それ以外はすべて無投票当選だった。 石森村長をめぐっては、こんな憶測も流れている。 「同村唯一の女性議員である林芳子議員に石森村長が暴言を吐いたという。内容は女性を軽視するようなものだったとか。そうした問題があり、今回、引退を表明したのではないか」(ある村民) 林議員はいわゆる反村長派議員で、議会のたびに石森村長(執行部)に厳しい質問をぶつけてきた。その林議員に石森村長が女性を軽視するような暴言を吐いたというのだ。 どういった状況で、どんな言葉を発したのかは分かっていないが、林議員と近い議員(反村長派議員)によると、「当人(林議員)から、そういったことがあったとは聞いている」という。内容・程度はともかく、そうしたことがあったのは間違いなさそう。もっとも、それが石森村長引退のきっかけになったかは不明。 村長選をめぐっては、1月23日時点で表立った動きはない。ただ、村内では「誰もが納得するような候補者が出てきたら別だが、石森村長を支持していたグループと、その対立グループの双方が候補者を擁立する可能性が高い」との見方がもっぱらだ。つまりは、新人同士の一騎打ちになるのではないか、と。前述したように1月23日時点で表立った動きはないが、チラホラと名前は挙がっている。 「石森村長を支持していたグループ」で、名前が挙がっているのが小針竹千代議員と大和田宏議員の2人である。 「小針議員と大和田議員は奥さんの関係で、親戚筋に当たるため、双方の調整が必要になり...
県会津農林事務所発注の公共工事の入札で、設計金額を教えた見返りに賄賂を受け取ったとして、県警本部捜査2課、郡山・会津坂下両署は1月23日、収賄の疑いで県職員の寺木領容疑者、贈賄の疑いで会津坂下町の土木建築会社・マルト建設の社長上野清範容疑者、同社営業部長棚木光弘容疑者を逮捕した。 地元紙などの報道によると、寺木容疑者は2019年4月から22年3月まで同事務所に勤務し農業土木工事の設計・積算を行っていたが、そこで知り得た情報を上野・棚木両容疑者に教え、謝礼として飲食、宿泊、ゴルフ代など26万円相当の賄賂を受け取ったとされる。一方、マルト建設が同じ期間に同事務所発注の公共工事を落札したのは17件だが、寺木容疑者が設計・積算を直接担当したのはその中の1件だけだった。県警は、寺木容疑者が自分の担当以外の入札情報を何らかの方法で入手し、同社側に教えていたとみて調べを進めている。 地元ジャーナリストによると「マルト建設は、農業土木分野では地元で後発だったが、農林事務所とパイプをつくるなどして、今ではトップを争う位置にいる」。逮捕された棚木容疑者は社内で官公庁発注工事を担当し、以前は別の農業土木会社に勤務していた。 「私は会津農林事務所幹部と業者連中のつながりを疑ったことがあるが、今回の事件が別の展開を見せるのか注目している」(同) 同社と言えば、上野容疑者の父で元社長の清隆氏(2008年死去)も1999年に当時の会津農地事務所が発注した農業土木工事に絡む贈賄事件で逮捕され、懲役1年執行猶予3年の有罪判決を受けたが、農林事務所とのパイプづくりは昔も今も行われていたことになる。 誤解だった旧坂下厚生病院跡地〝密約説〞
本誌2月号に「二本松市役所に蔓延する深刻なパワハラ」という記事を掲載したが、その中で問題視した産業部長が筆者の電話取材を受けた直後に辞表を提出、2月号発売直前に退職した。記事ではその経緯に触れることができなかったため、続報する。(佐藤仁)
田村市の一連の贈収賄事件に関わったとして受託収賄と加重収賄の罪に問われた元市職員に執行猶予付きの有罪判決が言い渡された。賄賂を贈った市内の土木建築業の前社長にも執行猶予付きの有罪判決。事件に関わる裁判は終結したが、有罪となったのは氷山の一角に過ぎない。「不正入札の常態化」を作り上げた歴代の首長と後援業者、担当職員の責任が問われる。 元市職員の武田護氏(47)=郡山市在住、旧大越町出身=は二つの贈収賄ルートで罪に問われていた。贈賄業者別に一つは三和工業ルート、もう一つは秀和建設ルートだ。 三和工業ルートで、護氏は同社役員(当時)武田和樹氏(48)=同、執行猶予付き有罪判決=に県が作成した非公開の資材単価表のデータを提供した見返りに商品券を受け取っていた。単価表は入札予定価格を設定するのに必要な資料で、全資材単価が記された単価表は、受注者側からすると垂涎ものだ。 近年は民間業者が販売する積算ソフトの性能が向上し、個々の業者が贈賄のリスクを犯して入手するほどの情報ではなかったため、当初から背後にソフト制作会社の存在が囁かれていたが、主導していたのは仙台市に本社がある㈱コンピュータシステム研究所だった。営業担当者が和樹氏を通して、同氏と中学時代からの友人である護氏からデータを得ていた。和樹氏は、同研究所から見返りに1件につき2万円分の商品券を受け取り、護氏と折半していた。ただ、同研究所と和樹氏の共謀は成立せず、贈賄側は和樹氏だけが有罪となった。 求人転職サイトを覗くと、同研究所の退職者を名乗る人物が「会社ぐるみで非公開の単価表の入手に動いていたが、不正を行っていたことを反省していない」と「告発」している。本誌は同社に質問状を送ったが「返答はしない」との回答を寄せたこと、昨年12月号の記事「積算ソフト会社の『カモ』にされた市と業者」に対して抗議もないことから、会社ぐるみで不正を行い、入手した単価表のデータを自社製品に反映させていた可能性が高い。「近年は積算ソフトの性能が上がっている」と言っても、こうした業者の「営業努力」の結果に過ぎない面もある。 もう一つの秀和建設ルートは、市発注の除染除去物端末輸送業務の入札で起こった。武田護氏は同社の吉田幸司社長(当時)とその弟と昵懇になり、2019年6月から9月に行われた入札で予定価格を教えた。見返りに郡山市の飲食店で総額約30万円...
土木建築業のマルト建設㈱(会津坂下町牛川字砂田565)が揺れている。社長と営業統括部長が県職員への贈賄容疑で逮捕されたが、同じタイミングで町内では、役場庁舎の移転候補地の一つに同社が関わっていることが判明。町と同社の間でそこに移転することが既に決まっているかのような密約説まで囁かれている。しかし取材を進めると、贈収賄事件も密約説も公になっていない真実が潜んでいることが分かった。 マルト建設は1971年設立。資本金9860万円。役員は代表取締役・上野清範、取締役・上野誠子、佐藤信雄、根本香織、鈴木和弘、棚木光弘、成田雅弘、馬場美則、監査役・上野巴、上野洋子の各氏。 土木建築工事業と砂・砂利採取業を主業とし、会津管内ではトップクラスの完工高を誇る。関連会社に不動産業のマルト不動産㈱(会津若松市、上野清範社長)、石油卸売業の宝川産業㈱(同市、根本香織社長)、測量・設計企画業の東北都市コンサル㈱(同市、鵜川壽雄社長)がある。 マルト建設が贈収賄事件の渦中にあるのは、地元紙等の報道で読者も周知のことと思う。1月23日、社長の上野清範氏(45)と、取締役で営業統括部長の棚木光弘氏(59)が逮捕された。両氏は県会津農林事務所発注の公共工事の入札で、同事務所農村整備課主査の寺木領氏(44)から設計金額を教えてもらった見返りに、飲食代やゴルフ代など約26万円相当の賄賂を供与したとされる。 報道によると、①寺木氏が賄賂を受けたのは2020年3月から22年4月ごろ、②マルト建設は会津農林事務所が19~22年度に発注した公共工事のうち17件を落札、③寺木氏が19~21年度に設計・積算を担当した工事は7件で、このうち同社が落札したのは1件、④寺木氏が教えたとされる入札情報が、自身の業務で知り得たのか、他の手段で入手したのかは分からない、⑤寺木氏は22年4月から県中農林事務所に勤務――等々が分かっている。 一方、分かっていない点もある。寺木氏から教えてもらった入札情報をもとに、マルト建設が落札した工事はどれか、別の言い方をすると、同社が供与した賄賂は、どの工事に対する見返りだったのかが判然としないことだ。 実際、寺木氏と上野氏の起訴後、福島民報は《(起訴状によると)12回にわたり、いわき市の宿泊施設など7カ所で飲食、宿泊、ゴルフ代など26万2363円分の接待》(2月14日付)と報じ、賄賂...
田村市が建設を計画している新病院の施工予定者が〝鶴の一声〟で変更された。市幹部などでつくる選定委員会は、公募型プロポーザルに参加した3社の中から鹿島建設を最優秀提案者に選んだが、白石高司市長の指示で次点者の安藤ハザマに覆ったのである。 「新病院の施工予定者が白石市長の指示で変更されたらしい」 そんなウワサを田村市内の自民党関係者から聞いたのは、2022年7月に行われた参院選の前だった。 新病院とは、田村地方の医療を支えるたむら市民病院(病床数32)の後継施設を指す。公には6月30日に市のホームページで「新病院の施工予定者選定に係る公募型プロポーザルの最優秀提案者に安藤ハザマ、次点者は鹿島建設」と発表され、7月4日付の福島建設工業新聞にも「新病院の施工予定者に安藤ハザマ」という記事が掲載された。 ところが実際の審査では、最優秀提案者に鹿島、次点者に安藤ハザマが選ばれていたというのだ。 「2022年6月、市幹部などでつくる選定委員会が白石市長に『審査の結果、鹿島に決まった』と報告した。しかし白石市長が納得せず、次点の安藤ハザマに変更するよう指示したというのです。選定委員会は『何のために審査したか分からない』と不満に思ったが、上から言われれば従うしかない」(市内の自民党関係者) 一度聞いただけではまさかとしか思えない話。だが、それはウワサでもまさかでもなく、事実だった。 市長の指示で施工予定者が突然覆される――そんなかつての〝天の声〟を彷彿とさせる出来事はなぜ起きたのか。 たむら市民病院は、同市船引町の国道288号沿いで診療を行っている。もともとは医療法人社団真仁会が大方病院という名称で運営していたが、院長が急死したため2019年7月に市が事業継承、公的医療機関として生まれ変わった。診療科目は内科、人工透析内科、外科など10科。運営は指定管理者制度で公益財団法人星総合病院(郡山市)に委託している。 市立病院の設置は、2005年に旧5町村が合併した田村市にとって悲願だった。しかし、事業継承した時点で建物の老朽化、必要な病床数の確保、救急受け入れなどの課題を抱えていた。そこで市は2020年3月に新病院建設基本計画を策定、現在地から北東1・3㌔の場所(船引町船引字屋頭清水地内)に新病院を建設する方針を打ち出した。 2020~21年度にかけて予定地の造成を行い、...
田村市で起きた一連の贈収賄事件。受託収賄・加重収賄の罪に問われている元職員は、市内の業者に公共工事に関する情報を漏らし、見返りに金品や接待を受けていた。本誌は先月号【第1弾】田村市・元職員「連続収賄事件」の真相で、元職員が漏らした非公開の土木事業単価表が積算ソフト会社に流れたと見立てていたが、裁判では社名が明かされ仮説が裏付けられた。調べると、仙台市に本社があるこの会社は宮城県川崎町でも全く同じ手口で贈収賄事件を起こしていた。予定価格の漏洩が常態化していた田村市は、規範意識の低さを積算ソフト会社に付け込まれた形だ。 元職員への賄賂の経路は、贈った市内の土木建築会社ごとに「三和工業ルート」と「秀和建設ルート」に分かれる。本稿では執筆時点の2022年11月下旬、福島地裁で裁判が進行中で、同30日に役員に判決が言い渡される予定の「三和工業ルート」について書く。 「三和工業ルート」は単価表をめぐる事件だった。公共工事の入札に当たり、事業者は資材単価を工事に合わせて積算し、入札金額を弾き出す。この積算根拠となるのが、県が作成し、一部を公表している単価表だ。実物をざっと見ると半分以上が非公表となっている。ただし都道府県が市町村に単価表を提供する際は、すべての単価が明示されている。 問題は、不完全な単価表しか見られない業者だ。これを基に他社より精度の高い積算をしなければ落札できない。そこで、事業者は専門の業者が作成する積算ソフトを使ってシミュレーションする。積算ソフト会社にとっては、精度を上げれば製品の信頼度が上がり、商品(積算ソフト)が売れるので、完全な情報が載っている非公表の単価表は「のどから手が出るほど欲しい情報」なのだ。 一方で、三和工業は堅実で業績も安定しており、自社の落札のために単価表入手という危ない橋を渡ることは考えにくい。こうした理由から、本誌は先月号で、積算ソフト会社が三和工業役員に報酬をちらつかせて単価表データの入手を働きかけ、役員が元市職員からデータを漏洩させたと見立てた。果たして裁判で明らかとなった真相は、見立て通り、積算ソフト会社社員の「依頼」が発端だった。 11月9日の「三和工業ルート」初公判では、元市職員の武田護被告(47)=郡山市=と同社役員の武田和樹被告(48)=同=が出廷した。2人は旧大越町出身で中学時代の同級生。和樹被告は大学卒...
「城報館」低迷の責任を部下に押し付ける三保市長 二本松市役所で産業部長によるパワハラ・モラハラが横行している。被害者が声を上げないため公には問題になっていないが、部下の課長2人が2年連続で出先に異動し、部内のモチベーションは低下している。昨今は「ハラスメントを許さない」という考えが社会常識になっているが、三保恵一市長はこうした状況を見過ごすのか。そもそも、三保市長自身にもパワハラ疑惑が持ち上がっている。(佐藤仁) まずは産業部内で起きている異変を紹介したい。同部は農業振興、商工、観光の3課で組織されるが、舞台となったのは観光課である。 2021年4月から観光課長に就いたA氏が、1年で支所課長として異動した。その後任として22年4月から就いたB氏も半年後に病休となり、11月に復職後は住民センター主幹として異動した。課長から主幹ということは降格人事だ。 B氏の後任は現在も決まっておらず、観光課長は空席になっている。 菊人形、提灯祭り、岳温泉など市にとって観光は主要産業だが、観光行政の中心的役割を担う観光課長が短期間のうちに相次いで異動するのは異例と言っていい。 原因は、荒木光義産業部長によるハラスメントだという。 「荒木部長の言動にホトホト嫌気が差したA氏は、自ら支所への異動を願い出た。『定年間近に嫌な思いをして仕事をするのはまっぴら。希望が通らなければ辞める』と強気の姿勢で異動願いを出し、市に認めさせた。これに対し、B氏は繊細な性格で、荒木部長の言動をまともに受け続けた結果、心身が病んだ。問題は1カ月の病休を経て復職後、主幹として異動したことです。職員の多くは『被害者が降格し、加害者がそのまま部長に留まっているのはおかしい』と疑問視しています」(市役所関係者) 荒木部長のハラスメントとはどういうものなのか。取材で判明した主な事例を挙げると①感情の浮き沈みが激しく、機嫌が悪いと荒い口調で怒る。②指導と称して部下を叱責する。いじめの部類に入るような言い方が多々みられる。③陰口が酷く、他者を「奴ら」呼ばわりする。④自分だけのルールを市のルールや世間の常識であるかのように押し付け、部下が反論すると叱責する。⑤部下が時間をかけて作成した資料に目を通す際、あるいは打ち合わせで部下が内容を説明する際、自分の意図したものと違っていると溜息をつく。⑥「なぜこんなこともできない」と面...
会津若松市の元職員による巨額公金詐取事件。その額は約1億7700万円というから呆れるほかない。 巨額公金詐取事件を起こしたのは障がい者支援課副主幹の小原龍也氏(51)。小原氏は2022年11月7日付で懲戒免職になっているため、正確には元職員となる。 発覚の経緯は2022年6月13日、2021年度の児童扶養手当支給に係る国庫負担金の実績報告書を県に提出するため、小原氏の後任となったこども家庭課職員が関係書類やシステムデータを確認したところ、実際に振り込んだ額とシステムデータに不整合があることを見つけたことだった。 内部調査を進めると、2021年度の児童扶養手当支給に複数の不整合があることが分かった。また小原氏の業務用パソコンからは、同年度の子育て世帯への臨時特別給付金について小原氏名義の預金口座に振込依頼していたデータや、重度心身障がい者医療費助成金をめぐり小原氏が給付事務を担当していた07~09年度に詐取していたことをうかがわせるデータも見つかった。市は会津若松署に報告し今後の対応を相談する一方、金融機関に小原氏名義の預金口座の照会を行うなど、詐取の証拠集めを2カ月かけて進めた。 市は2022年8月8日、小原氏に事情聴取した。最初は「分からない」「覚えていない」と非協力的な姿勢を見せていたが、集めた証拠類を示すと児童扶養手当と子育て世帯への臨時特別給付金を詐取したことを認めた。 小原氏は動機について「不正に振り込む方法を思い付いた。魔が差した」と語り、使途は「生活していく中で自然に使った」と説明したが、続く同9、10、15日に行った事情聴取では「親族の借金を肩代わりし返済に苦労していた」「競馬や宝くじに使った」「車のローンの返済に充てた」と次第に変化していった。 市は事情聴取と並行し、詐取された公金の回収に取り組んだ。預金口座からの振り込みに加え、生命保険の解約や車の売却といった保有財産の換価を行い、2022年11月8日現在、約9100万円を回収した。 2022年9月8日には小原氏に対する懲戒審査委員会を開き、懲戒免職が妥当と判断されたが、引き続き事情聴取と公金回収を進めるため、小原氏の職員としての身分を当面継続することとした。 小原氏は2022年10月7日、市に誓約書を提出した。内容は児童扶養手当(約1億1070万円)、子育て世帯への臨時特別給付...
賄賂を渡した田村市内業者の思惑 田村市で起きた一連の贈収賄事件。逮捕・起訴された元職員は、市内の業者に公共工事に関する情報を漏らし、見返りに金品を受け取っていたが、情報を漏らしていた時期が本田仁一前市長時代と重なるため、一部の市民から「本田氏と何らかの関わりがあったのではないか」と疑う声が出ている。真相はどうなのか。 まずは元職員の逮捕容疑を新聞記事から説明する。 《県が作成した公共工事などの積算根拠となる「単価表」の情報を業者に提供した謝礼にギフトカードを受け取ったとして、県警捜査2課と田村署、郡山署は24日午前、元田村市技査で会社員、武田護容疑者(47)=郡山市富久山町福原字泉崎=を受託収賄の疑いで逮捕した。また、贈賄の疑いで、田村市の土木工事会社「三和工業」役員、武田和樹容疑者(48)=郡山市開成=を逮捕した。 逮捕容疑は、護容疑者が、市生活環境課原子力災害対策室で業務をしていた2020年2月から翌年5月までの間、和樹容疑者から単価表の情報提供の依頼を受け、情報を提供した謝礼として、14回にわたり、計14万円相当のギフトカードを受け取った疑い。和樹容疑者は、情報を受けた謝礼として護容疑者にギフトカードを贈った疑い》(福島民友2022年9月25日付) 両者は旧大越町出身で、中学校まで同級生だった(この稿では、両者を「容疑者」ではなく「氏」と表記する)。 武田護氏が武田和樹氏に漏らした単価表とは、県が作成した公共工事の積算根拠となる資料。県内の市町村は、県からこの資料をもらい公共工事の価格を積算している。 県のホームページを見ると土木事業単価表、土木・建築関係委託設計単価表、建築関係事業単価表が載っているが、例えば「令和4年度土木事業単価表」は994頁にも及んでおり、生コンクリート、アスファルト合材、骨材、再生材、ガソリン・軽油など、さまざまな資材の単価が県北(1~6地区)、県中(1~4地区)、県南(1~3地区)、喜多方(1~3地区)、会津若松(1~4地区)、南会津(1~3地区)、相双(1~5地区)、いわき(1~2地区)と地区ごとに細かく示されている。 ただ単価表を見ていくと、一般鋼材、木材類、コンクリート製品、排水溝、管類、交通安全施設資材、道路用防護柵、籠類など複数の資材や各種工事の夜間単価で「非公表」と表示されている。ざっと見て1000頁近い単価表の...
任期満了に伴う玉川村長選は4月18日告示、同23日投開票の日程で行われる。現職・石森春男氏は昨年12月議会で今期限りでの引退を表明しており、村内では「石森村長を支持していたグループと、その対立グループの双方が候補者を立てる可能性が高い」との見方がもっぱらだ。 石森春男村長(71、4期)は昨年12月議会の一般質問への答弁で、今期限りでの引退を表明した。 石森村長は「村政の課題を考えると、新たな視点で行政を推進することが大事であり、後進に道を譲りたい。後継者は考えていない」(福島民友昨年12月13日付)と述べた。 石森村長は1951年生まれ。同村出身。須賀川(現須賀川創英館)高卒。1971年に村役場職員となり、企画財政課長、農業委員会事務局長などを経て、2007年の村長選で初当選。4期のうち、選挙戦になったのは2015年のみで、それ以外はすべて無投票当選だった。 石森村長をめぐっては、こんな憶測も流れている。 「同村唯一の女性議員である林芳子議員に石森村長が暴言を吐いたという。内容は女性を軽視するようなものだったとか。そうした問題があり、今回、引退を表明したのではないか」(ある村民) 林議員はいわゆる反村長派議員で、議会のたびに石森村長(執行部)に厳しい質問をぶつけてきた。その林議員に石森村長が女性を軽視するような暴言を吐いたというのだ。 どういった状況で、どんな言葉を発したのかは分かっていないが、林議員と近い議員(反村長派議員)によると、「当人(林議員)から、そういったことがあったとは聞いている」という。内容・程度はともかく、そうしたことがあったのは間違いなさそう。もっとも、それが石森村長引退のきっかけになったかは不明。 村長選をめぐっては、1月23日時点で表立った動きはない。ただ、村内では「誰もが納得するような候補者が出てきたら別だが、石森村長を支持していたグループと、その対立グループの双方が候補者を擁立する可能性が高い」との見方がもっぱらだ。つまりは、新人同士の一騎打ちになるのではないか、と。前述したように1月23日時点で表立った動きはないが、チラホラと名前は挙がっている。 「石森村長を支持していたグループ」で、名前が挙がっているのが小針竹千代議員と大和田宏議員の2人である。 「小針議員と大和田議員は奥さんの関係で、親戚筋に当たるため、双方の調整が必要になり...
県会津農林事務所発注の公共工事の入札で、設計金額を教えた見返りに賄賂を受け取ったとして、県警本部捜査2課、郡山・会津坂下両署は1月23日、収賄の疑いで県職員の寺木領容疑者、贈賄の疑いで会津坂下町の土木建築会社・マルト建設の社長上野清範容疑者、同社営業部長棚木光弘容疑者を逮捕した。 地元紙などの報道によると、寺木容疑者は2019年4月から22年3月まで同事務所に勤務し農業土木工事の設計・積算を行っていたが、そこで知り得た情報を上野・棚木両容疑者に教え、謝礼として飲食、宿泊、ゴルフ代など26万円相当の賄賂を受け取ったとされる。一方、マルト建設が同じ期間に同事務所発注の公共工事を落札したのは17件だが、寺木容疑者が設計・積算を直接担当したのはその中の1件だけだった。県警は、寺木容疑者が自分の担当以外の入札情報を何らかの方法で入手し、同社側に教えていたとみて調べを進めている。 地元ジャーナリストによると「マルト建設は、農業土木分野では地元で後発だったが、農林事務所とパイプをつくるなどして、今ではトップを争う位置にいる」。逮捕された棚木容疑者は社内で官公庁発注工事を担当し、以前は別の農業土木会社に勤務していた。 「私は会津農林事務所幹部と業者連中のつながりを疑ったことがあるが、今回の事件が別の展開を見せるのか注目している」(同) 同社と言えば、上野容疑者の父で元社長の清隆氏(2008年死去)も1999年に当時の会津農地事務所が発注した農業土木工事に絡む贈賄事件で逮捕され、懲役1年執行猶予3年の有罪判決を受けたが、農林事務所とのパイプづくりは昔も今も行われていたことになる。 誤解だった旧坂下厚生病院跡地〝密約説〞
本誌2月号に「二本松市役所に蔓延する深刻なパワハラ」という記事を掲載したが、その中で問題視した産業部長が筆者の電話取材を受けた直後に辞表を提出、2月号発売直前に退職した。記事ではその経緯に触れることができなかったため、続報する。(佐藤仁)
田村市の一連の贈収賄事件に関わったとして受託収賄と加重収賄の罪に問われた元市職員に執行猶予付きの有罪判決が言い渡された。賄賂を贈った市内の土木建築業の前社長にも執行猶予付きの有罪判決。事件に関わる裁判は終結したが、有罪となったのは氷山の一角に過ぎない。「不正入札の常態化」を作り上げた歴代の首長と後援業者、担当職員の責任が問われる。 元市職員の武田護氏(47)=郡山市在住、旧大越町出身=は二つの贈収賄ルートで罪に問われていた。贈賄業者別に一つは三和工業ルート、もう一つは秀和建設ルートだ。 三和工業ルートで、護氏は同社役員(当時)武田和樹氏(48)=同、執行猶予付き有罪判決=に県が作成した非公開の資材単価表のデータを提供した見返りに商品券を受け取っていた。単価表は入札予定価格を設定するのに必要な資料で、全資材単価が記された単価表は、受注者側からすると垂涎ものだ。 近年は民間業者が販売する積算ソフトの性能が向上し、個々の業者が贈賄のリスクを犯して入手するほどの情報ではなかったため、当初から背後にソフト制作会社の存在が囁かれていたが、主導していたのは仙台市に本社がある㈱コンピュータシステム研究所だった。営業担当者が和樹氏を通して、同氏と中学時代からの友人である護氏からデータを得ていた。和樹氏は、同研究所から見返りに1件につき2万円分の商品券を受け取り、護氏と折半していた。ただ、同研究所と和樹氏の共謀は成立せず、贈賄側は和樹氏だけが有罪となった。 求人転職サイトを覗くと、同研究所の退職者を名乗る人物が「会社ぐるみで非公開の単価表の入手に動いていたが、不正を行っていたことを反省していない」と「告発」している。本誌は同社に質問状を送ったが「返答はしない」との回答を寄せたこと、昨年12月号の記事「積算ソフト会社の『カモ』にされた市と業者」に対して抗議もないことから、会社ぐるみで不正を行い、入手した単価表のデータを自社製品に反映させていた可能性が高い。「近年は積算ソフトの性能が上がっている」と言っても、こうした業者の「営業努力」の結果に過ぎない面もある。 もう一つの秀和建設ルートは、市発注の除染除去物端末輸送業務の入札で起こった。武田護氏は同社の吉田幸司社長(当時)とその弟と昵懇になり、2019年6月から9月に行われた入札で予定価格を教えた。見返りに郡山市の飲食店で総額約30万円...