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インタビュー

  • 【会津土建】菅家忠洋社長インタビュー

    【会津土建】菅家忠洋社長インタビュー

    かんけ・ただひろ 1979年5月生まれ。東京の大学を卒業後、海外留学を経て会津土建へ入社。翌年、子会社の㈱エマキへ出向。10年間IT事業の社長を務める。その後、会津土建へ戻り、取締役、常務取締役、副社長を歴任し、昨年6月に代表取締役社長に就任。   会津若松市の会津土建は大正15(1926)年に創業し、会津地方に根ざした総合建設業として成長を続けてきた。建設業界全体がさまざまな課題を抱える中で、先進的な取り組みへの挑戦を続けている。昨年6月に代表取締役社長に就任した菅家忠洋氏(44)に建設業界の現状、今後の経営ビジョンについてインタビューした。 効率化と新たな挑戦を心がけ成長を続けていく。  ――昨年6月8日付で会津土建の代表取締役社長に就任されました。  「私の祖父と父が歴代の社長なので、幼い頃から会社を引き継ぐことに漠然としたイメージはありました。実際に社長となって、もちろん仕事の重みや責任は感じていますが、不安やプレッシャーにさいなまれることはなく、やりがいを感じながら充実した日々を過ごしています。さまざまな方々とお会いする機会に恵まれ、物事に対する見識や感性が膨らみ、人との結びつきやご縁の尊さを実感しています。建設業という仕事自体にとても魅力を感じますし、人のため、社会のために貢献すべく、地域が活性化できるよう情熱をもってまちづくりに努めていきたいと存じます」  ――老舗総合建設会社として地域社会にどう貢献していく考えですか。  「当社は大正15年創業、まもなく100周年を迎える老舗の建設会社です。会社の歴史を十分に理解しながら、新たな伝統を創っていく所存です。現在の会津地域における建設業界を取り巻く環境や政治経済の状況を俯瞰的に捉え、何を成すべきか、深く考えながらも瞬時に見極め、判断していく必要があります。また、今までお付き合いいただいたお客様はもちろんのこと、新たにご縁をいただいた方々、協力会社、職人さん方とより一層の誠心誠意を込めてお付き合いをさせていただきたく存じます。私たち建設会社のミッションは、お客様の満足いく建物を提供すること、そして、安心で安全に生活ができる豊かなインフラを整備し、地域社会に還元することが最重要項目です。社会情勢が目まぐるしく変化する中、安全、品質、コスト、デザイン、付加価値、SDGsなどへのより一層の対応が求められています。今後、PPP(官民のパートナーシップによる公共サービスの提供手法)やPFI(公共施設等の建設・維持管理・運営等を民間の資金、経営能力、技術的能力を活用する手法)事業が推進されると想定し、異業種の方々との交流や連携による柔軟な発想と対応が大事です。そのためにも、私たちも理論に基づいた提言をしながら、発注者、施工業者、設計、学識者、専門機関など、さまざまな意見をまとめながら、産学官による垣根を超えたデザインビルドに取り組むべきだと思います。将来を見通しながら地域の皆さまが納得し、喜ばれる仕事を完遂することが弊社の社会的な役割であるとあらためて認識しています」 ICTとアナログの融合  ――先進的な取り組みについて。  「建設業界では少子高齢化による人手不足が深刻です。そのため、国土交通省は、最先端工法やICT技術を導入することで建設生産システムを向上し効率を良くする『i―Construction』を推進しています。建設現場のみならず、総務や経理の事務的なバックオフィスでも生産性や効率性の向上が図られています。現在は3次元データの活用を深化させ、建設現場をデジタルツインで作業効率を高める取り組みにも着手しています。  スケールの大きい土木現場を施工管理する大々的な建設DXからスマートフォンのアプリケーションに至るまで、会社にとって効果があり、社員の仕事が楽に、スムーズになるのであれば積極的に導入する考えです。時代の潮流に乗り、今後も新しいテクノロジーや大手ゼネコンの取り組み、海外の事例を含め、導入検討や内製化の研究に励む所存です。 一方で、私は何よりも『アナログ』なお付き合いを大切にしようと思っています。人様との信頼関係の構築には対面が不可欠です。『温故知新』を座右の銘に、老若男女問わず、真心と礼儀を尽くしたいと存じます。『デジタル』と『アナログ』それぞれの利点を見極めながら新旧融合を図り、相乗効果が発揮できるよう『機を見るに敏』を意識した対応に徹したいと思います」  ――建設業界の今後の見通しは。  「全国的にみれば、先の東京五輪、リニア中央新幹線の整備、大阪万博、東京の再開発事業など建設需要が旺盛となっています。一方で、本県に目を移せば東日本大震災から12年が経過し、イノベーション・コースト構想や一部まちづくりを残し、復旧・復興事業も終わりを迎え、大型事業も少ない状況です。建設業界はすでに縮小・淘汰の時代が到来したといっても過言ではなく、大都市と地方都市を比較すると経済格差を著しく感じます。これからは新規でゼロから建設するというよりも、既存の建造物・構造物の維持管理やメンテナンスに軸足が移っており、それに応じて業務内容も変化させていく必要があります。  今後は、既存の建設会社だけではなくハウスメーカー、設備会社など関連業種も含めれば競争相手が多く、生き残りは容易ではありません。そうした中で、当社の位置付けを見つめ直しながら、新たなチャレンジを始動していく覚悟が問われます。先行きが見えないことも多々ございますが、私たちが抱く既成概念をリセットし、どん欲に挑戦しながら新たな領域を切り開くことが生き残るポイントだと考えます。厳しい経済状況でも成長している企業が存在するのも事実です。成功事例から学びを得て、業務に反映できるものはぜひ取り入れていきます。激烈な競争を勝ち抜くためにも『メイドイン会津』の地元建設会社として、プライドを大切にしながら企業価値をさらに高め、皆さまから認めていただけるよう、誠心誠意努めていきます」  ――結びに今後の抱負を。  「これから未来の福島を創るにあたり、私たち建設業界は真価を試される大切なターニングポイントにあると思います。故郷のため、そして子どもたちのため、日々技術を磨き、研鑽を積みながら、新しい事業スタイルを常に学び、もう一段上の高みに会社をもっていきたいと強く願っています。その実現に向け、『企業は人なり』の精神をモットーに、社員ファーストで生き生きと働ける環境を提供し、福利厚生を充実させながら、優秀な人材をリクルートしていきます。  また、健康経営優良法人の認証取得や女性活躍社会の推進をはじめ、企業価値の向上に着手していきます。今までの建設会社のイメージを覆し、新4K(給与・休暇・希望・かっこいい)を実現し、魅力溢れる企業体質をもって、社会に貢献していきます。私自身、まだまだ若輩者ではありますが、夢と希望を持って成長していきます」

  • 【福島県木材協同組合連合会】鈴木裕一会長インタビュー

    【福島県木材協同組合連合会】鈴木裕一会長インタビュー

     すずき・ゆういち 1948年生まれ。平工業高卒。㈱赤井製材所会長、ダイテック代表取締役、協同組合いわき材加工センター理事長。2018年より福島県木材協同組合連合会長に就任。3期目。 全国有数の林業県として森林資源を有効活用していく  ――福島県木材協同組合連合会の沿革ならびに事業概要について。  「福島県内の各方部にあった木材業者による地区協同組合の活動の総合的な調整や、全県的な相乗効果を高めるため、1964(昭和39)年3月25日に当連合会が設立されました。その後、会員の相互扶助の精神に基づき、会員のために必要となる共同事業等に取り組みながら会員の自主的な経済活動を促進し、経済的地位の向上を図ることを目的に各種事業を展開してきました。  現在、県内における良質な木材の素材生産、流通、木材加工・販売事業者約230組合員により構成される協同組合23組合を会員とし、木材の利用促進活動、木材産業振興対策、木製品に関する証明、JAS製材品の普及、各種受託事業等に鋭意取り組んでいるところです」  ――本県の森林資源や森林産業の現状についてうかがいます。  「本県の森林面積は97万3000㌶で県土面積の約71%を占めています。うち人工林面積は33万4000㌶で、人工林率は34・3%となっています。太平洋戦争後、スギを主体に造林された森林資源は年々充実してきており、まさに利用期を迎えていると言っても過言ではありません。丸太の伐採を担う素材生産事業者と製材・加工事業者等の連携強化による利用促進の取り組みにより、丸太生産量は全国8位で、全国有数の林業県に位置づけられており、生産される製材品の約80%が関東圏を中心に出荷されています」  ――福島県産木材を住宅の新築・増改築に使用することで、さまざまな商品と交換可能なポイントが贈られる「ふくしまの未来を育む森と住まいのポイント事業」の概要と利用状況についてうかがいます。  「県産木材を積極的に使用した木造住宅を新築・増改築・購入した建築主に対して、本県産の農林水産物や商品券等と交換可能なポイントを交付する事業です。本県の豊かな森林環境を保全し、循環型社会の形成を図る狙いがあります。使用している構造用部材の木材使用量によって20万~50万のポイント数が決定され、さらに本県産木材のうち一定量の森林認証材を使用すると10万ポイントが加算されます。今年度の事業の詳細や募集期間(※予算がなくなり次第終了)に関しては当連合会のホームページを参考にしていただければ幸いです」  ――今年度の重点事業について。  「『伐って、使って、植えて、育てる』をスローガンに据え、森林資源の循環利用に向けた事業を一層推進していきます。また、『都市(まち)の木造化推進法』に基づき、商業施設や事業所等の非住宅分野における木材利用の促進をはじめ、大径材を活用した中高層建築物における木造化・木質化の促進に努めます」  ――今後の抱負を。  「木材業はかつて斜陽産業とみられていましたが、加工・管理技術の向上も相まって国内における国産木材のシェアは年々高まっています。環境保護に寄与するなど将来性のある産業なので、今後も業界の発展に一層尽力してまいります」

  • 【福島河川国道事務所】丸山和基所長インタビュー(2024.2)

    【福島河川国道事務所】丸山和基所長インタビュー(2024.2)

    まるやま・かずき 1981年生まれ。北海道大学工学部卒、同大学院工学研究科修了。国土交通省水管理・国土保全局水資源部水資源計画課総合水資源管理戦略室課長補佐などを経て、2022年5月から現職。  ――現在、工事が進められている福島西道路の整備状況について。  「福島西道路(Ⅱ期)は、福島市を南北に縦貫する国道4号の交通混雑や伏拝地区の急勾配区間における冬期のスタック車両による交通への影響などの課題解決に向けた延長約6・3㌔のバイパスです。現在、延長約1・8㌔の(仮)浅川トンネルの掘削工事、(仮)大森川橋の上部工架設工事、(仮)西ノ内こ道橋の下部工工事、松川地区の土工・構造物などの改良工事を進めているところです」  ――「阿武隈川緊急治水対策プロジェクト」の進捗状況と、遊水地の農業利活用について。  「令和元年東日本台風では、阿武隈川流域において既往最大の洪水により、堤防が決壊するなど各地で甚大な被害が発生したことから、ハード・ソフト両面の治水対策について10年間のプロジェクト『令和の大改修』を実施しています。河道掘削は今年度末で全体計画220万立方㍍のうち約170万立方㍍(約8割)の掘削を目指して工事を進めており、遊水地整備では用地協議や代替地整備、橋梁の架替等を実施しているところです。  また、遊水地の利活用については、有識者らによる利活用検討会の発足に向け調整を進めているところであり、農用地としての利用など地域の皆さまの意見も踏まえながら、持続可能で現実的な土地利用の実現に向け検討を進めてまいります」  ――国道399号伊達橋の今後の見通しについて  「伊達橋は、復旧に高い技術力を要することから国の権限代行で実施しているところですが、復旧工事には相当の期間を要することから、地域の交通確保のため橋長301㍍の仮橋を設置することとし、昨年10月29日に開通したところです。仮橋の設置については、関東地方整備局、北海道開発局が保有する応急組立橋を活用することにより早期開通に努めています。現在、既設上部工の撤去工事を実施中で、順次、下部工や上部工に着手する予定です」  ――その他重点事業について  「1つは『流域治水2・0』です。近年の気候変動を踏まえると、2040年頃には降雨量が約1・1倍、流量が約1・2倍となることから、流域治水の取り組みを加速化・深化させる『流域治水プロジェクト2・0』に取り組みます。併せて、地域の皆さまが、災害リスクを『自分ごと』として捉え、主体的に行動していただくとともに、みんなのためにとの考えで流域にも視野を広げていただけるように、流域治水の広報、リスク情報の提供、教育活動等にも取り組んでまいります。  もう1つは『福島北道路』です。福島市北部の国道4号における渋滞や事故などの課題解決を目的として、福島北道路の事業化に向けた調査を進めています。今年度は地域の皆さま方に、当該調査区間における課題等についてご意見を伺う予定としています。  これら社会資本の整備により『安全・安心で活力と魅力ある地域づくり』に貢献してまいりたいと考えておりますので、皆さま方のご理解とご協力を引き続きお願いいたします」  

  • 【福島県石油商業組合】中村謙信理事長インタビュー

    【福島県石油商業組合】中村謙信理事長インタビュー

     なかむら・けんしん 1960年生まれ。明治大卒。会津日石販売㈱代表取締役。2020年6月から福島県石油商業組合理事長を務める。  ――組合の主な取り組みについて。  「業務は多岐に渡りますが、一番の目的は県内の石油の安定供給です。中でも、災害時にはどのルートから的確に供給できるかが大きな課題となってきます。過去の震災において、建物の倒壊があった中、SS(ガソリンスタンド)は構造上、設備の損傷は少なかったものの、従業員も被災しており、なかなか人が集まらず営業がままならないケースや、一般の方や緊急車両を含め多くの方々が給油されたことにより、在庫の燃料が尽きて供給できない事態に見舞われるケースがありました。SSは大元の供給があって初めてお客様に燃料を供給できるので、そうした緊急事態の際、組合は各方面から情報を集め、行政との橋渡しの役割も担うので、平時だけでなく、災害時の安定供給を担うのが当組合の大きな役割であると考えています」  ――物流業界の「2024年問題」が課題となっていますが、石油業界への影響は。  「石油を運搬するタンクローリーのドライバーの労働環境は決して良好とは言えません。タンク容量が限られている中で効率良く運ぶためには、タンクに8割~満タンを入れることが不可欠ですが、近年は効率追求のため計画配送が主流で、各SSで少量のロットで配送してほしくても元売りから受け付けてもらえない実情があります。とはいえ、少量ロットでの配送は仕入れ単価が高くなる問題もあります。加えてトラックドライバーの時間外労働の上限規制、燃料自体の単価高騰など様々な問題が混在し、かなり複雑な様相を呈していると言えます」  ――水素ステーションの設置が進んでいます。  「水素ステーション設置のコストの高さに対して水素自動車の需要は伸びておらず、商売としてはまだ成り立っていないのが現状です。今後、水素自動車が普及していけば水素ステーションの増加は期待できますが、いまのところ見通しは立っていません」  ――今後の重点事業について。  「全国石油商業組合連合会ならびに当組合では、『満タン&灯油プラス1缶運動』を展開しています。これは車の燃料を満タンにし、灯油も1缶多めに備えておくことで、災害時のトラブル回避を呼び掛けるものです。先日の能登半島地震を見ると電気が寸断されて暖が取れない状況が起きていますが、石油は独立性、可搬性に優れたエネルギーですので少量であれば自家用車でも運搬ができ、車内暖房も利用できるので、災害時における利点は大いにあると見ています。  また、近年は合成燃料の開発も進んでおり、二酸化炭素の排出抑制に加え、既存のSS設備をそのまま利用できるので、導入コストを抑えることができます。  そうした中で、石油も含めたエネルギーが選択可能な社会になっていけばと考えています」

  • 【相馬商工会議所】草野清貴会頭インタビュー(2024.2)

    【相馬商工会議所】草野清貴会頭インタビュー(2024.2)

     くさの・きよたか 1946年生まれ。東京電機大学卒。草野建設代表取締役会長。2013年から相馬商工会議所常議員を務め、16年11月から会頭。現在3期目。  新型コロナウイルスは徐々に収まってきたが、円安、物価高、人手不足の影響は深刻さを増している。インバウンドで賑わう首都圏や有名観光地とは異なり、地方経済の回復はまだまだ遠い。加えて相馬市は、二度の福島県沖地震による被害からも完全に立ち直っていない。地元経済界の現状と今後を相馬商工会議所の草野清貴会頭に聞いた。 災い転じて福となるよう新たなことに挑戦していきたい。  ――新型コロナウイルスが昨年5月に5類に移行しました。  「昨年から祭りやイベントなどを従来通り実施していますが、コロナ前と比べても大盛況でした。スポーツ合宿で市内を訪れる人の数も戻っています。  コロナの影響を大きく受けた飲食店や宿泊業などは回復傾向にあります。飲食店は店ごとに差はありますが、コロナ前の7~8割まで回復しています。ただ、昨今の物価高を価格転嫁できておらず、それが雇用に支障を及ぼしており、経営は未だ不安定です。宿泊業は、人流は回復しているものの地震被害の復旧が完了済みの所とこれから建て替えを行う所があり、格差が見られます。地域全体では回復に至っておらず、イベントが行われても市内に宿泊できる場所が少ないのが現状です」  ――2021、22年に発生した福島県沖地震の影響は。  「地震で半壊以上となった市内の建物は2621件、うち公費解体は1176件に上ります。会員事業所も多くが被災しましたが、国・県に要望してグループ補助金が適用され再開に至った所もあります。しかし比較的大規模な宿泊施設はこれから着工となる所もあり、全体的に回復したとは言えません。  地震被害からの回復を目的に県内一斉に行われた宿泊県民割では、管内の宿泊施設の復旧が遅れたため、県に要望し『県民割相馬版』を実施しました。ほかにも15%割増プレミアム商品券や飲食マップ作成、ほろ酔いスタンプラリーや推奨物産品発掘事業『相馬逸品』など、地域経済回復のための事業に取り組んできました。  今後も行政、観光協会、漁協、農協など各種団体と連携し、地域経済浮揚に向け努力していきたい。また事業所に寄り添い、それぞれが抱える課題には伴走型支援を行うなど経営改善普及事業を積極的に進めていきたいと思います」  ――円高・物価高が大きな問題となっています。人手不足や後継者不在も深刻です。  「8割を超える事業所が異口同音に『物価高に対する価格転嫁ができず利益を見いだせない』『賃上げの意思はあるが余力がない』と述べています。中には『高齢化で廃業を検討せざるを得ない』などの声もあります。建設業や運送業からも『人手不足と資材・燃料高騰で業績が低迷している』との声が聞かれる中、4月からは運送業で年間残業時間上限960時間の規制が始まるため、業界の縮小も懸念されます。ただ一方では、価格転嫁をできている事業所もあり『新たなサービスや付加価値を付けて対応している』という意見も少なからずあるので、全体に波及させていきたいと思います。  後継者問題は、特に小規模事業所では深刻に捉えており、事業継続を断念するケースが多い。会議所としては、そういった事業所に積極的に相談するよう呼びかけながら、経営アドバイザー的な役割を果たしていきたいと思います」  ――国・県に望むことは。  「原油、原材料、資材価格の急激な高騰に対応するため、経営環境が逼迫している中小企業・小規模事業所の実態に沿った事業コストの負担軽減支援策を求めたい。また、エネルギー価格高騰の影響を受ける中小企業・小規模事業所に対する総合的な支援および原油価格高騰の影響を抑えるための総合的な対策を迅速かつ的確に実施していただきたい。  また公共事業を受注する際、受注から納品までの期限が長い事業については、当初の見積もり額から値上がりすることが想定されるため再見積もりを認めるなど、受注側に配慮した負担軽減支援策を実施するようお願いしたい」  ――昨年、福島第一原発で処理水海洋放出が行われました。  「幸い、管内で大きな影響は出ていません。日本商工会議所の小林健会頭が全国に呼びかけた『常磐ものの活用促進』により各地から多くのアプローチがあります。当会議所でも水産加工事業者と連携し情報発信を行っており、今後も地元水産物のPRに努めていきます」 人気を集める「福とら」  ――相馬沖で捕れる天然トラフグ「福とら」が人気を集めています。  「『「福とら」泊まって、食べてキャンぺーン』を展開中ですが、お陰様で大変好調です。『福とら』を取り扱う店舗も11に増えていますが、さらなる拡充に努めていきたい。また『福とら』との相乗効果でカレイやヒラメの人気も高まっており、直売所・浜の駅松川浦には週末になると多くの観光客が訪れています。 一方、課題としては他県に比べて水産加工品が少ないので、以前からアオサの加工品などの開発に取り組んでいます。アオサは健康食品として注目されており、現在四つの加工品が発売されています。今後もさらなる加工品開発に取り組んでいきたいと思います」  ――今年度取り組んでいる事業について。  「この間、相馬駅東改札口設置をJR東日本に要望してきましたが、常磐線を管理する水戸支社からは前向きな回答をいただいています。東側には法務局があり、以前から開発のための土地もあって、ようやく東口開発が進むと思います。  東北中央自動車道の開通により中通り方面とのアクセスは格段に向上しましたが、県立医大附属病院への救急搬送には伊達桑折ICで下りなければならず、さらなるアクセス向上が求められます。そこで、国道115号の改良を県に要望していますが、当会議所だけでなく原町、福島、会津若松、会津喜多方の各商工会議所や各種商工団体も加わったことで県にも前向きに検討していただいているので、引き続き改良実現を目指していきます。  また、相馬野馬追の開催時期が今年から5月に変更されます。周知活動はもちろんのこと、これまで以上の誘客につなげられるよう取り組んでいきたい」  ――最後に、今後の抱負をお聞かせください。  「観光をさらなる産業の柱とすべく『福とら』を生かした『新たな食文化の創造』『豊かな海と城下町の歴史を生かした交流事業』『音楽によるマチ起こし事業』など、これまでの基幹事業に文化事業を幅広く加え、新たなアイデアを駆使しながら交流人口拡大に取り組んでいきたい。近年多くの災いに襲われていますが、転じて福となるよう新たなことに挑戦していきたいです」

  • 【棚倉町】湯座一平町長インタビュー(2024.2)

    【棚倉町】湯座一平町長インタビュー(2024.2)

     1961年生まれ。福島大経済学部卒。2012年9月の棚倉町長選で初当選。2020年8月の町長選で無投票での3選を果たした。 健康づくり、教育、観光・農業振興を推進する。  ――昨年5月8日から新型コロナウイルス感染症が2類相当から5類に引き下げとなりました。町内の状況はいかがでしょうか。  「5類感染症への移行後は、各種イベントやさまざまな活動が再開されるなど、ようやくコロナ禍前の日常生活に戻ってきたと実感しています。コロナ感染が落ち着きを見せる一方で、原油高、物価高騰による影響が地域経済に影を落としている現状です。本町ではこの間、町民の生活支援や経済対策の一環として、昨年8月と12月に『たなぐら応援クーポン券』を発行し、町内における消費喚起ならびに地域経済の活性化に努めました。  また、『一番お金がかかるのは高校生』との声を踏まえ、新たに『高校生等生活応援給付金』事業を展開し、1人当たり年6万円の給付を実施しながら支援に努めました」  ――2024年度の重点事業について。  「まずは健康づくりです。『健幸なまちづくり』をスローガンに老若男女が希望と生きがいを持ち、健康で活動的に暮らせるまちの実現に向け取り組みます。妊娠期から寄り添った伴走型支援に努め、子育て世帯の孤立・孤独化を防ぎ、子育てに寛容な育児リテラシーを醸成し、『産み育てやすい』『子育てが楽しい』と思えるまちづくりを目指します。また、健診受診率の向上をはじめ、『歩く』健康づくり事業を推進し、健康寿命の延伸を図ります。  次に教育です。引き続きキャリア教育を推進するとともに、タブレットを用いた学習教材の活用やICT環境の整備を行い、一人ひとりに合わせた学習を進めます。今年度は新たに、子どもの夢やチャレンジを支援する『こども未来応援事業』を実施していきます。  観光振興では、2025年度に棚倉城築城400年の節目を迎えるにあたり、プレイベントの実施をはじめ、さまざまな観光施策を展開し、交流人口の拡大を図ります。また、棚倉町歴史的風致維持向上計画に掲げる棚倉城跡周辺道路整備や棚倉城下道路整備、馬場都々古別神社門前環境整備を進め、観光資源の高質化に注力します。  農業振興では、推奨園芸作物推進事業として実施するイチゴ、トマト種子補助にキュウリを加え、農家の皆さまが安定的に経営できるよう県やJAなどと連携強化を図り経済的・技術的な支援を継続して実施します。また、農地利用地域計画を策定します」  ――新年の抱負を。  「本年は辰年です。龍が天に昇るような勢いのある1年となるよう、町民の皆さまとともに『チームたなぐら』をさらに上昇気流に乗せたいと考えますので、皆さまのお力添えを賜りますようお願いいたします」

  • 【小野町】村上昭正町長インタビュー(2024.2)

    【小野町】村上昭正町長インタビュー(2024.2)

     1955年生まれ。日大東北工業(現・日大東北)高卒。2004年から小野町議を4期務め、その間、議長を歴任。2021年3月の町長選で初当選。 健康で安心して生活できる町を目指す。  ――間もなく県道36号小野―富岡間が全線開通します。  「全線開通により双葉郡へのアクセスの利便性が増し、小野ICは双葉郡と県中、県南を結ぶ交通の要衝となることから、その優位性を生かしたまちづくりに取り組みます。人、物、情報を還流させ、関係人口や交流人口を増やすため、小野IC周辺近くの国道349号沿いに新庁舎の建設を計画しています。また、防災拠点やターミナル的な物流関係施設、さらには大規模店舗などの誘致活動を進めていこうと考えています。さらに、小野高校が数年後には統合されますので、現在、空き校舎や施設の有効活用などの検討を進めていますが、ICからの導線も考える必要があり、街中の活性化も含めた『(仮称)インターチェンジ未来タウン構想』を策定しているところです」  ――いまお話にあった新庁舎整備について。  「令和9年の開庁に向けて計画を進めており、今年度内に用地交渉を終え、来年度に基本設計に取り掛かる予定です。新庁舎は、防災機能や保健センター機能を併せ持つ複合施設となります。災害時には、防災機能を集約した防災管理室で災害対応にあたるほか、町民の皆さんの避難所となるような設備の充実も図ります。さらに、新庁舎周辺に消防署小野分署や防災公園を設置することで、防災機能の強化を図りたいと考えています」  ――児童館の建設を進めています。  「少子化が進む中、未来を担う子どもたちの健全な育成は、重要な政策課題と捉えています。そのため、廃園となった保育園・幼稚園の跡地に、子どもの活動場所として児童クラブや放課後子ども教室、一時預かり保育などの機能を備えた『(仮称)おのまち児童館』の建設を進めており、令和7年度の開所を目指しています。子どもの安全な遊び場の整備に加え、子ども食堂なども開設することとしており、保護者の皆様からは大きな期待が寄せられています」  ――今後の抱負。  「町の現状をしっかり捉え、持続可能なまちづくりを町民の皆様と進めていきます。また、後継者不足などから農業離れが顕著になっており、農林業改革は待ったなしです。耕作放棄地の活用策について、大学機関やJAなどの協力を得て検討していくほか、新規就農者や研修制度の充実を図り、農家民泊や農家レストランなどの副業についての研究にも取り組みます。そのほか、起業家育成の支援体制整備、外国人との多文化共生の推進、発酵のまちづくりなどにも取り組みます。現在住んでいる方々が、健康で安心して生活できる町を目指し、あらゆる政策を講じていきます」

  • 【鏡石町】木賊正男町長インタビュー(2024.2)

    【鏡石町】木賊正男町長インタビュー(2024.2)

     1956年11月生まれ。須賀川高卒。鏡石町総務課長、教育課長兼公民館長、税務町民課長などを歴任。2022年5月の町長選で無投票初当選。 人口減少対策の受け皿をつくっていきたい。  ――昨年5月から新型コロナウイルスが5類感染症に移行されました。  「5類移行に伴い、町内の商工業者の経済活動にも明るい兆しが見え、制限されていた各種イベントもコロナ禍以前と同じ形で開催することができたので、賑わいが戻ってきたと実感しています」  ――昨年10月には健康福祉センター「ほがらかん」がオープンしました。  「町内の保健福祉施設が老朽化していたことに加え、類似施設の集約や、多目的に使用できる施設にすることを目的に整備を進めてきました。コンセプトの1つに『健康な笑顔が集う場所』があり、安心・安全なまちづくりに向けた福祉避難所としての機能も併せ持った施設となっています。オープンから3カ月でおよそ6000人の方々にご利用いただいています。館内には未就学児を対象とした子育て支援施設もあるため、子育て世代の多くの方々にご利用いただいています。  今後は各種イベント等での利用に加え、先日発生した能登半島地震のような非常時への備えとして、屋外街路灯の下に電源コンセントを設置してあるので、車で避難された方の電源確保やマンホールトイレ、シャワー室の設置など、災害時における一時避難所としての役割が見込まれます。近年は自然災害が多発しており、令和元年東日本台風の際、本町では成田地区の浸水被害があり、そうした経験も踏まえて利活用していく考えです」  ――今後の抱負。  「今年は駅東土地区画整理事業に注力したいと思っており、昨年第3工区の町の保留地の分譲が完了しました。個人所有の土地についても交渉を進めており、少しでも多くの方々に家を建てて住んでいただきたいと考えています。人口問題研究所が発表した2050年の推計によれば、鏡石町は現在の人口から約3000人減の9333人との結果でした。他自治体に比べて本町は人口減少率が低く、年少人口の比率が高いほか、高齢化率も低いので、今後を見据えて人口減少対策の受け皿をつくっていきたいと考えています。  遊水地整備事業についても、用地買収や宅地・建物の補償交渉が具体化しており、その中でも集団移転を希望する方と個人で移転する方がいますから、各々の希望に沿う形で地権者の皆様に寄り添って取り組んでいきます。  就任以来3つのS(スマイル・スピード・シンプル)を基本に町政執行に当たってきましたが、それには町の持っている情報を速やかに発信し、町民の皆様からの信頼を得ることが不可欠です。今後も町民の皆様の信頼を裏切ることなく取り組んでいきます」

  • 【星北斗】参議院議員インタビュー(2024.2)

    【星北斗】参議院議員インタビュー(2024.2)

     ほし・ほくと 1964年郡山市生まれ。安積高校、東邦大学医学部卒。医師。医系技官として旧厚生省に入省。退官後の現在、星総合病院理事長。2022年の参院選で初当選。  派閥の政治資金パーティー問題で大揺れの自民党。国民の視線が厳しさを増す中、岸田文雄総裁を先頭にどこまで改革が進むのか注目されるが、そうした状況を本県選挙区選出で無派閥の星北斗参院議員(59)=1期=はどう見ているのか。政治不信を解消する方策と合わせ、自身が今後とるべき行動を率直に語っていただいた。  ――初当選から約1年半が経過しましたが、この間を振り返って。  「昨年の通常国会では何度も質問に立たせていただきました。いくつか印象に残っているのは、感染症関連の法案審議で、私が経験したコロナ対応などをベースに質問を行い、それが制度に反映されたことと、福島復興再生特措法関連の審議で、特定帰還居住区域に帰ってきた被災者が農業を生業としている場合、農地だけでなく水路、取り付け道路、周辺山林の一部も農業に必要であれば除染の対象になるという明確な答弁をいただけたことです。これらの質問は医療従事者や被災者など現場から寄せられた声がヒントになりました。県議や県幹部の皆さんに相談したり、情報をいただけたりしたことで中身の濃い質問にすることもできました。一回生ではありますが、県民のお役に立つ仕事ができて嬉しく思っています。  一方、昨年の臨時国会では厚生労働委員会理事として、野党の先生方との交渉の一端を担わせていただきました。人脈が広がった点では非常に良い経験でしたが、半面、ほとんど質問できなかったので、1月26日から始まる通常国会ではあらためて質問に立ちたいと考えています」  ――派閥の政治資金パーティー問題に国民は憤っています。無派閥の星議員はどう見ていますか。  「私は派閥のプラス面とマイナス面を見極めたいと考え、入会のお誘いはいただいたもののこの間、無派閥の立場をとってきました。そうした中で今回の問題が起こり、現在は無派閥の先輩議員や一回生議員らと『無派閥や一回生だからこそできること・やるべきことがあるのではないか』と議論を重ねています。  派閥と聞いて真っ先に思い浮かぶのはパーティーですが、大臣や副大臣など人事の推薦が行われたり、内規で定めている定年制が有名無実化されているといった報道も見聞きします。そうした中で、私のような一回生が口を挟んで大丈夫なのかと心配する声もあれば、黙って見過ごすのか、無派閥だからこそはっきり物を言うべきではないかという声もいただいています。私は県民に選んでいただき、県民の負託にこたえるため参院議員になりました。であるならば、言うべきことは言わなければならないという立場から、今の自分に何ができるのか先輩議員らと具体的な行動に移すための準備を進めているところです。  私は社会人として三十数年過ごし、その間にはグループに属したり、今現在グループを率いる立場にもいます。とかく政治の世界は特別と言われますが、だからこそ国民が政治から離れていっている面は否めないと思います。私は政治家の保守本流ではありませんが、長く社会人として過ごしてきた自分をベースに、投票してくださる皆さんの立場に立った行動をとっていきたい」  ――何に手を付け、それによってどう変わったかがはっきり見えないと国民は納得しないと思います。  「岸田総裁はパーティーや人事推薦制度をやめる方針を示していますが、派閥そのものをなくすべきという意見もあります。一方で政策集団としての派閥は必要という声もあります。私は参議院なので普段、衆議院の先生方と会うことがなく、厚生労働委員会以外の先生方と接する機会も少ない。そういう意味では、派閥は人の輪を広げるのに有効だし、政治家としての心構えなど先輩議員から教えていただけることも多々あるので、まずはお金の問題を決着させ、人事推薦制度を改めるなどしてから今後の派閥のあり方を考えるべきだと思います。個人的には派閥=悪という考えは持っていません」  ――自民党の支持率が下がるのは当然ですが、野党の支持率も上がっていません。国民の政治そのものに対する不信を政治家は深刻に受け止めるべきだと思います。  「正直〝場外乱闘〟が多すぎると思います。Xやユーチューブで『説明不足だ』『無知だ』といった発信をよく見かけますが、非常に子どもっぽく感じるし、多くの国民は呆れているのではないでしょうか。  政治家が議論を闘わせる場は国会であり〝場外乱闘〟は慎むべきです。議論の中身も週刊誌報道をあげつらうのではなく、この法律・予算をどうしていくのか国民生活に資することを論じるべきです。さらにテレビ中継が入る予算委員会も国民受けを狙ったパフォーマンスではなく、その名の通り予算をめぐる真摯な議論に努めるべきです。ただ誤解されては困りますが、皆さんが見る機会の少ない各種委員会では専門性の高い議論が行われていることを付言したいと思います。  もう一つ大切なのは、質問や議論の中身を国民に知っていただく努力を国会議員自らがすることです。例えば、ネットで私の名前を検索すれば質問している場面が動画で全て出てきます。過去の議事録も検索できます。それを全ての国民に見ていただくことは不可能だが、国会議員がぜひご覧くださいと積極的に発信すれば、興味のある国民は見ると思うのです。私も、そうやって見ていただいた医療従事者から『いい質問をしてくれてありがとう』『動画を見るまでどんな活動をしているか分からなかった』と言っていただき、一定の手ごたえを感じています。マスコミに報じていただく場合もありますが、切り取られた報じ方をされると無用な誤解を招くことがありますからね。  国政報告も、大勢集めて派手なパーティーを開くのではなく、十数人のミニ集会を各地で行えば、私の考えを理解していただけると同時に、皆さんの思いに直接触れることができます。お互いの絆も深まります。政治を身近に感じていただかないことには信頼回復にはつながらないと思います」  ――新型コロナが収束してきた中で、今後はコロナで得られた知見を新たな感染症対策に生かす取り組みが求められます。  「例えば今回の能登半島地震でも避難所に感染症チームが派遣され、コロナの知見を生かした取り組みが展開されています。医療機関も次に何かが起きた時、自身の役割を都道府県と事前に協議することが法律に明記されました。  さらに感染症の専門家が不足した経験から、県独自に必要な予算を確保し、昨年9月から感染症に特化した看護師の育成事業が県主導のもと民間病院で始まっています。福島方式とも呼べるこの取り組みは、全国から注目を集めています」  ――最後に県民にメッセージを。  「私のモットーは、特定の誰かのためではなく、私を国政に送り出してくださった県民の皆さんを思いながら議員活動するということです。そうした姿を知っていただくためにも、これから多くの皆さんと対話をさせていただきたいと思います」

  • 【亀岡偉民】衆議院議員インタビュー(2024.2)

    【亀岡偉民】衆議院議員インタビュー(2024.2)

     かめおか・よしたみ 1955年生まれ。作新学院高、早稲田大卒。現在5期目。この間復興副大臣などを歴任し、現在、政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会委員長を務める。  自由民主党福島県連は昨年11月に総務会を開き、新会長に亀岡偉民衆院議員(68、5期、比例東北)を選出した。内閣支持率の低迷が続き、派閥の政治資金パーティーの裏金疑惑も浮上する中で、どのように信頼回復を果たしていく考えなのか。亀岡衆院議員に今後の抱負について語っていただいた。(取材日・1月6日)  ――自民党県連の新会長に就任した経緯と新会長就任の抱負について。  「昨年10月に県議選を終えたのを機に、県連内で体制を新しくしようとの声が上がりました。そうした中で、前会長の根本匠先生(衆院議員、9期、福島2区選出)から『よろしく頼む』と言われて、お受けしました。県議選の時点で有権者から『増税』と言われるなど、政権与党へのイメージが悪かったのは事実であり、自民党がこれから変わるというイメージを持たせる必要がありました。  抱負は、これからいかに自民党の信頼を取り戻すか、ということに尽きます。『自民党だから応援する』ではなく、『こんな取り組みをしている自民党だから応援したい』と言ってもらえる党にすることが大事です。私たちは『原点に立ち返ろう』と呼びかけ合い、『地方から信頼を得られる自民党にしていくために、いま地元で何をすべきか一緒に考えていきましょう』と党内、県連内で話し合っています。  昨今の政策は大都市中心、大企業中心に偏りがちな面がありますが、地方は中小企業、個人事業主の方が多い。地方から景気を回復させるためには、この方たちを助ける必要があります。与党としてスタートアップ事業などに予算を付けているので、これら事業を活用していただき、実績を積み上げることで、信頼回復につなげていきたいと考えています」  ――衆院選小選挙区の区割りが改定されました。亀岡議員が地盤とする福島1区は福島市、二本松市、伊達市、本宮市、伊達郡、安達郡という構成になります。新たに地盤に加わった地域の課題解決に向けて、どう貢献していく考えですか。  「本宮市は令和元年東日本台風で被害を受けましたが、早急に復旧して中心市街地の開発に取り組んでいます。来春には全国初となる24時間営業の水素ステーションが開設される予定で、最先端を走っています。商工団体と行政が連携を密にし、官民一体で課題解決に取り組んでいる印象があります。同市の高松義行市長と、隣接する大玉村の押山利一村長からは『人口増を目指す』という積極的な目標を聞いて感嘆しました。市町村の取り組みを国がバックアップしたらもっと効果を出せるのではないか、と希望が湧きました。  新たにご縁が生まれた地域ですが、父・亀岡高夫(元建設大臣、農林水産大臣)を知っている方も多く、とても温かい環境に置いていただいたと思っています。  ただ、選挙の区割りに関しては有権者の戸惑いを感じます。政治家はその選挙区の代表として国会に行っているのだから、機械的に区割りを決めるのではなく、まず当事者である政治家の意見を聞くべきだったと思います。1票の格差が2倍以上で違憲状態となるから是正しなければならないとのことですが、大都市と地方の不均衡状態を考えると、人口に基づく区割りには違和感を抱きます。『地方と大都市の1票の格差は違憲ではない』と明記するよう、憲法改正を働きかけるのが地方選出国会議員としての責務と考えています」  ――今後の新型コロナウイルスへの対応と、アフターコロナを見据えた戦略についてうかがいます。  「コロナ禍で商売が立ち行かなくなる人が多く出ました。与党自民党では新たな分野へのチャレンジやスタートアップを支援する事業に予算を付けてきたので、今こそ活用してほしい。国が商売の継続を支援し、地方から新たに起業する流れが活発になってほしいですね。  借金返済を迫られると、再起しようとする気持ちを失ってしまうのは事実です。そのため金利の据え置きを再延長できる仕組みを検討して、返せる時に返してもらうやり方で、事業者の方には経営に専念していただき、地方の経済を立て直していくことが大事だと思います」  ――東京電力福島第一原発で増え続ける放射性トリチウムなどを含んだ水(処理水)の海洋放出が始まりました。放出後の本県の風評問題についてどう捉えていますか。  「結果的に、福島県沖の水産物の値段は下がりませんでした。日本中の方に買い支えていただいたおかげです。一方で、県内では風評の影響でインバウンド客が1人も来なくなった地区があり、観光業には大きな打撃となりました。単なる風評被害ではなく『政治的風評被害』と呼ぶべき状況になっています。  やめさせるには風評の元となっている処理水のタンクをどうにかしなければなりません。もし、福島県民がこぞって『タンクを全部なくさない限り風評はなくならない』と考え、双葉町や大熊町のために処理水放出を受け入れていたら、国内で反対の声が上がることはなかっただろうし、諸外国が反対できる状況にもならなかったのではないでしょうか。県内で反対の声が上がったから、日本を批判するための外交に使われた感があります。反対ではなく、どのようにして、タンクが置かれている双葉町、大熊町を守り、復興につなげていけるかが重要だと思います。反対のための反対は止めるべきだし、前に進むためにも、県民の理解を得られるように努力を続けていくしかありません」  ――自民党安倍派・二階派における政治資金パーティーをめぐる裏金問題の影響で、岸田内閣の支持率が低下しています。  「県連会長として、県内の自民党国会議員に聞き取りしましたが、裏金作りは誰も行っていません。パーティー券販売分の一部を受け取る仕組みが慣例としてあり、『収支報告書に書かないでくれ』と言われていたのでどう記載するか会計担当者が苦慮していた実態はありましたが、裏金にした人は1人もいません。  裏金が何を指すのか明確でないままに『裏金問題』と報道されたダメージはものすごく大きいです。『裏金』と言われたものは慣例に起因し、記載が曖昧だったためではないでしょうか。政治資金規正法ができたときに、古くからの慣例を切り替えられなかったかことが問題につながっていると捉えています。  これから検察がどのような捜査をするかは分かりませんが、『裏金』と事実でないことを報道するとしたら大きな問題だと思います。ただ、政治家としては『駄目なものは駄目』としっかり正していきましょうという思いがあります。早く襟を正すことが大事だと考えています」  ――有権者へのメッセージを。  「異常な物価高の中、国民の皆さんに安心してもらえる環境をつくることが私の役目だと考えます。バラマキではなく、理解を得ながら『一緒に頑張りましょう』と並走できる体制で取り組まなければなりません。国民の皆様にはもう一度元気を持ってもらえる政策をつくりながら、政治も進めていくことを示していきたい。地方から経済再生につながる取り組みを進めていきます」

  • 【福島県建設業協会】長谷川浩一会長インタビュー(2024.2)

    【福島県建設業協会】長谷川浩一会長インタビュー(2024.2)

     はせがわ・こういち 1962年生まれ。法政大卒。堀江工業(いわき市)社長。2019年5月に県建設業協会会長に就き、現在3期目。  ――新年の抱負について、お聞かせください。  「令和6年能登半島地震により被害に遭われた皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。被災地の1日も早い復興を、心よりお祈り申し上げます。  近年、自然災害の大規模化やインフラの老朽化が進む中、危機管理を担う地域建設業の役割は一層重要度を増しております。災害から県民の生命・財産を守っていくためには、我々が『地域の守り手』としての責務をしっかりと担えるよう、組織体制と経営基盤の一層の強化を図っていかなければなりません。  本年も県土の復興と建設産業の発展に全力を尽くしていきたいと考えています」  ――建設業においては、時間外労働の上限規制が適用され、労働環境の変革が求められる「2024年問題」が課題となっています。この問題にどのように取り組んでいくお考えですか。  「本年4月からは時間外労働時間の削減と週休2日制も含めた働き方改革を推進しなければなりません。本協会では研修会などを通じ、会員の働き方改革を支援してきましたが、課題も残っています。発注者には、施工時期の平準化、適正な予定価格の設定及び工期はもちろん、書類の簡素化や工事検査の効率化、建設DXの活用などを要望しながら、受発注者が連携して、あらゆる観点から労働時間の削減に向けた取り組みを推進していきたいと考えています」  ――2024年度の重点事業について。  「建設業界の働き方改革が問われる1年になるのではないかと考えています。  労働時間の削減に向けて課題となっていた問題点が現場での施工を通じて、あらためて浮き彫りになってくると考えています。会員の意見を集めながら課題解決に向けた取り組みを推進していきたいと考えています。  一方で、昨今の自然災害の発生を踏まえると、本年も想定外の災害が発生することが懸念されます。現在進められている防災・減災、国土強靭化関連事業を円滑に推進することで、災害に強い県土づくりに貢献するとともに、災害発生時には、県の『指定地方公共機関』としての役割が果たせるよう連絡体制の強化や、大規模災害時の広域的支援に備えた資材備蓄の充実など、災害に備えた組織強化に努めていきます。  また、担い手の確保・育成に向けては、新4Kの魅力を積極的に発信していきます。昨年は職業体験イベントを通じ、小中学生やその保護者に対して『建設業の面白さや楽しさ』を伝えることができました。今後も幅広い世代に対して、入職促進に向けた広報活動を展開していきたいと考えています。  人材の育成についても、土木初任者研修をはじめとした各種研修を開催するなど、会員企業の技術者の育成を継続的に支援していきます」

  • 【福島県商工会連合会】轡田倉治会長インタビュー(2024.2)

    【福島県商工会連合会】轡田倉治会長インタビュー(2024.2)

     くつわた・くらじ 1942年生まれ。岩瀬村商工会・岩瀬商工会の会長を6期務める。2012年5月から現職。現在4期目。2021年6月から全国商工会連合会副会長。 伴走型支援で経営安定化を後押し  ――コロナ禍が収束に向かう一方で、円安、原油高、物価高騰による地域経済の低迷が顕著となっています。会員事業所の現況についてうかがいます。  「新型コロナウイルス感染症の法的位置付けが昨年5月8日以降、季節性インフルエンザと同等の5類に引き下げとなって以降、人の動きも戻ってきたように実感しています。また、インバウンドの回復も相まって会津地域など観光地がある商工会地区などでは多くの来訪者で賑わっているようです。  しかし、本県の商工会地区の多くは農村・山間部にあるため、都市部に比べ少子高齢化による人口減少によって消費需要が低迷している現状にあります。  また、コロナ禍における『ゼロゼロ融資』の返済時期も重なり資金繰りに苦慮している事業者も出始めています。さらには原油高、物価高、特に『人手が足りない』という悩みの声が数多く聞かれ、事業継続にも支障をきたすなど、非常に心配しています。  これらを踏まえ、当連合会では、事業環境の変化に対応し、生産性向上に向けた経営改善の取り組みに尽力します。具体的には、人手による労力を設備や機械で補完し、デジタル化、人工知能(AI)等技術を活用することで経営効率の向上を図っていきます。今後は、国・県などにおける助成金の活用を含め、より一層の相談支援体制の強化に努めていく考えです」  ――2023年10月から、消費税の仕入れ税額控除の方式としてインボイス制度が導入されました。適格請求書発行事業者になると年間売り上げが1000万円以下であっても免税事業者にはならず消費税の申告義務が生じます。連合会としての対応と、会員事業所への影響についてうかがいます。  「小規模事業者、特に個人事業者の場合、事務処理量の増大に加え、新たな税負担が発生することから、事業者の中には廃業を考えるケースも見られ、看過できない状況にあります。2月、3月はインボイス制度導入後初となる確定申告を迎えますが、混乱が生じる可能性もあり注視しています。  当連合会の上部組織である全国商工会連合会として、同制度施行後の経過措置も含め、中小・小規模事業者に対し複数年度にわたり支援する万全の体制構築の実現に向け、組織一丸となって要望活動を展開しています。この間、商工会職員は、同制度の開始前から現在に至るまで懇切丁寧に説明を重ねてきましたが、確定申告を控える中、これからの申告業務などに対しても事業者に寄り添った支援に注力しなければならないと考えます」 ECサイトが好評  ――震災・原発事故からまもなく13年を迎えます。原発被災地における商工会の現況についてうかがいます。  「被災地域における各商工会の事業再開率は久之浜町(いわき市)100%、広野町97・1%、楢葉町92・4%(地元再開率75・8%)、富岡町92・9%(同54%)、大熊町77・8%(同25・3%)、双葉町73・9%(同25・4%)、浪江町77・3%(同36・3%)、小高(南相馬市)67・3%(同41・8%)、飯舘村73%(同41・7%)、川内村96・4%、葛尾村100%、都路町(田村市)97・2%、川俣町100%、鹿島(南相馬市)96%となっています。  特に、原発事故の被害が甚大だった大熊町、双葉町では、特定復興再生拠点区域内の避難指示が解除されましたが、医療機関の施設再開に年数を要すことから、帰還に躊躇してしまうことがあるようです。当連合会でも、引き続き被災自治体と連携を図りながら、住民と事業者の帰還はもちろん、避難先での事業継続と安定を支援していかなければならないと考えます」  ――2024年度の重点事業と活動方針についてうかがいます。  「アフターコロナを見据えた経営支援として、ECサイト『シオクリビト』による通販事業の充実・強化を図っていきます。今般『売りはモノではなくヒト』をコンセプトに、福島の面白い生産者100人の思いを掲載した『シオクリビト図鑑』を発行しました。同事業は大変好評なので、今後もさらに充実・発展させながら、消費喚起やビジネスチャンスにつなげていきたいと考えます。また、懸案である事業承継をはじめ、創業支援にも鋭意努めていきます」  ――今後の抱負を。  「当連合会は、徹底した伴走型支援を大きな柱に据えた支援を展開しています。職員が積極的に会員事業者に出向くスタイルを貫徹するなど、しっかり寄り添った支援体制を構築しながら中小・小規模事業者の経営安定化・事業継続を強力に後押ししています。おかげさまで『商工会の職員は非常に良くやってくれている』、『よく指導支援していただき助かっている』との声も寄せられています。今後もこの方針を堅持しながら会員事業所から信頼される商工会を目指していきます」

  • 【福島県中小企業家同友会】齋藤記子会長インタビュー(2024.2)

    【福島県中小企業家同友会】齋藤記子会長インタビュー(2024.2)

     さいとう・のりこ 1952年生まれ。(株)cluster取締役会長。福島県中小企業家同友会会津地区会長、同副理事長、同代表理事を経て、2023年4月から現職。 組織強化と会員との信頼構築に挑む  ――新会長に就任して1年が経過しました。  「北海道・東北ブロックでは女性初の会長職ということもあり、重責に押しつぶされそうなときもありました。ただ、藤田光夫前会長に推薦していただいたからには、『何らかの役に立ちたい』という思いでやってきました。時間が経つにつれて、私自身の役目も見えてきて、『決断』、『責任』、『調和』が大事だと思うようになりました。物事についての判断はそれぞれの支部長や代表理事にお任せしています。私はそういった情報を受けて、同友会としてどのような形で進むか、あるいは取りやめるかの『決断』をすることが役目だと思っています。また、同友会では、『深める、進む、新しい』の3つのシンカというスローガンを掲げていますが、理事会などの会合で1人の強い意見で物事が決まっていくのではなく、それぞれが忌憚のない意見を言える雰囲気づくりに努めて『調和』を重んじるのも私の役目です」  ――県内経済の状況について。  「飲食業界をはじめとする中小企業の経営環境の厳しさについて、いろんな方面から話を聞いています。都会には大企業があって、人が多く集まってくるので、景気がよくなれば従業員に還元という形で、給料を上げることができるでしょう。ただ、地方の中小企業ではそう簡単にはいきません。多くの経営者が、日々の仕事に対し給料アップという分かりやすい形でモチベーションを上げたいと思っています。しかし、そのための原資がなければやろうと思ってもできません。どんな商売も単価を上げれば客が減るかもしれず、人口減少でそもそものパイが少なくなっている。そういったところが地方の中小企業の悩みだと思います」  ――同友会や会員の企業で新しい取り組み、頑張っている企業などあれば教えてください。  「会員が経営している喜多方市の橋谷田商店と荒川産業が、県内で発生した古紙を再利用したトイレットペーパー『フクメグリ』を開発し、コープあいづのスーパー全8店舗で売り出しました。こういった先駆的な取り組みを会員同士がコラボレーションしてできていることは喜ばしいです。会津支部では『食と農と工芸委員会』を設けており、さまざまな業種によるコラボレーションが実現可能となっていますが、そうした点は同友会の魅力でもあります」 会員2500名を目指す  ――物価高や燃料高騰など、常に変化が求められる時代ですが、企業や経営者に求められる資質とは何だと思いますか。  「同友会は全国的に『決して悪徳商人にはならない』との声明を出しております。個人的に重んじているのは『職業倫理』です。皆で同じ仕事をするときに、どういう気持ちで向き合うのか。具体的には『値段が高いのに製品の質が悪い』、『サービス単価が高いのに対応が良くない』とならないようにすることを心がけています。  私が経営しているのは福祉事業と介護事業なので、守秘義務を守ることや誠実さが求められます。スタッフは利用者さんに目を向け、管理者がスタッフに目を向けていれば、虐待などさまざまな問題も起きにくいと思っています。もっと言えば、刑事の勘ではないですが、最初の動作や言動でその人の性質は分かるものです。『この人に任せてはまずいな』と思えばすぐに担当から外れていただくなどの対応をしています」  ――今年の抱負を。  「引き続き同友会の組織強化を図っていきます。『支部の下部組織の地区会の規模を100人以内にする』ことによって、会員一人ひとりの顔が見える組織になり、退会者が出にくくなるというデータに基づき、組織改編を行っていきたいと考えています。区切り方としては、距離なのか、地区ごとなのか、というのは各地域の地域性に合わせて進めていきます。どういった改革を行っていくのか、また事業費をどのように運用していくかを具現化していけるよう引き続き取り組んでいきます。  また全体としては、会員が現在1861名ですが、将来的に2500名を目指していきます。そのために私が重要だと考えているのは、同友会事務局の立ち位置です。単なる事務ではなく一緒に創り上げていく『パートナー』だということを浸透させていきたいです。会員を増やすことや、新入会員へのフォローなどは、事務局の協力が欠かせません。また、業務や運営にどういった課題があるかを吸い上げるために、事務局員に対して面談を進めています。いろんな角度からの意見を聞いて、事務局とのパートナーシップを強化し、同友会の運営を行っていきます。  自分の身の丈を知っているので、背伸びせず、周りの方々に協力してもらいながら取り組んでいければと思っています」

  • 【白河商工会議所】鈴木俊雄会頭インタビュー(2024.2)

    【白河商工会議所】鈴木俊雄会頭インタビュー(2024.2)

    すずき・としお 1947年生まれ。国立平工業高等専門学校中退。アクティブワン代表取締役。2013年から白河商工会議所副会頭、22年11月から現職。  新型コロナウイルスの感染拡大はひと段落したものの、円安や原油価格・物価高騰、人手不足により、中小・小規模事業所は厳しい状況に置かれている。インボイス制度や電子帳簿保存法への対応にも追われている。白河商工会議所の鈴木俊雄会頭(アクティブワン代表取締役)に管内の現状と今後の展望について語ってもらった。 課題に直面する会員事業所の自己変革・生産性向上を支援。  ――新型コロナウイルスが5類に移行しましたが、管内の現状は。  「特に影響が大きかったのは飲食業ですが、コロナ前の水準に戻りつつあります。イベントに関しては、昨年から白河だるま市が通常開催となりましたが、大勢の人出でにぎわい、今年は昨年を上回る見込みです。  一方で、各事業所が営業時間やスタッフ配置を見直して生き残りを図っていたところに急激に客足が戻ってきたので、飲食店は人手不足となり、大人数での宴会を断っている店もあります。運転手不足で帰りのタクシーや代行業者を探すのも一苦労の状況で、飲酒運転増加につながることが懸念されています」  ――円安や燃料高・物価高も企業経営に大きな影響を与えています。  「ロシアのウクライナ侵攻など外的要因もあるので、ある程度やむを得ない面があります。政府では原油・物価高騰に対応した補助金を設けたほか、取引先との取引適正化を図る『パートナーシップ構築宣言』を推進しています。会員事業所の中にも大手企業とのパートナーシップ宣言に着手したところがありますが、経費増分をすべて吸収する取引金額に設定するのはなかなか難しいと思います。  1月1日からは電子帳簿保存法の猶予期間が終了し、電子データは保存要件に従った形で保存することが求められるようになりました。インボイス制度すら対応できていない会員事業所も多い中、本業以外に対応しなければならないことがありすぎて付いていくのは容易でありません。当会議所としても会員事業所に寄り添いながらサポートしています」  ――中小・小規模事業所にとっては人手不足も大きな課題です。  「当会議所の管内には大手企業の工場が多く進出していますが、それらの企業は政府が掲げる賃上げ政策、働き方改革を忠実に実行しており、人手不足の中でもそれなりに従業員を確保しているように見えます。  問題は、経営的にそうした対策を講じる余裕がなく、大手企業に求職者を取られてしまう中小・小規模事業所です。当会議所で会員事業所にアンケート調査を行ったところ、新入社員の定着率は5年間で53%でした。新入社員の半分が、より良い条件を求めて、5年以内に離職していることになります。  政府は『成長と分配の好循環』を掲げ、賃上げ政策や働き方改革を進めていますが、賃上げは売り上げが上がり、利益が確保されて初めて実行できるもの。政府が掲げている方針は順序が逆なのです。無理やり賃上げすることでデフレから脱却できる可能性は生まれるかもしれませんが〝痛み〟は伴うでしょう。  加えてコロナ禍前後で経済構造が大きく変わってしまい、ビジネス形態や社会環境も様変わりしました。だからこそ中小・小規模事業所は現状維持でなく、生産性向上や自己変革を必須の課題として取り組んでいく必要があります」 人手不足解消に注力  ――会員事業所の人手不足を解消するための施策は。  「人手不足対策に関しては、就職を希望する高校生を対象とした就職説明会を続けています。また、進学で市外に出て行った学生が就職活動する際、無料通信アプリ『LINE』を使って地元企業の就職情報、地元情報にアクセスできる仕組みを作りました。『LINE』アカウントに登録した人には地元産の生活用品を贈呈しています。最近は学生の家族が登録するケースも増えています。  管内には製造業が多いですが、市では今後、研究開発拠点の誘致を目指しています。当会議所としてもそうした拠点が増えていき、多様な人材が集まることを期待しています」  ――今後の重点事業について。  「本年4月1日から『中心市街地活性化基本計画』が第4期目に入ります。中心市街地には白河市立図書館や白河文化交流館コミネス、マンションなどが建設され、他自治体からの視察者も多いです。  一方で中心市街地の課題となっているのは駐車場不足です。車社会の地方において駐車場が整備されていなければ、顧客が足を運ぶことはありません。商店街に並ぶ空き家・空き店舗を駐車場にする方法も考えられますが、そうなると今度は駐車場しかないまちになってしまいます。  中心市街地はただ人が住める場所というだけではなく、歴史・伝統・文化が息づく環境での生活を通して、文化的な価値を共有できることが重要だと考えます。そのためにはただ活性化させるだけでなく、中心市街地が持つべき機能を一から考える必要があります。  観光拠点としては、今年から小峰城の清水門を復元するプロジェクトが本格的にスタートします。その一方で、市は南湖公園の活性化を進めており、昨今は宮城・仙台育英が夏の甲子園で優勝したのをきっかけに白河の関跡も脚光を浴びています。これら観光資源を生かして地域経済活性化につなげていきたいですね。  昨年、当会議所内に『道の駅検討特別委員会』を立ち上げました。詳細な整備計画などは決まっていませんが、実現するとなれば主力商品となる地場産品や地元農産物が必要になります。整備が決まってから準備し始めたのでは遅いので、6次化商品の開発などをこれから検討していきたいと考えています。  このほか、地域内のIT企業やシステムエンジニアとの連携を図る組織作りの準備を進め、会員事業所のデジタル化を応援する取り組みも併せて進めていきます」  ――今後の抱負。  「コロナ禍がひと段落し、経済は間違いなく好転していますが、先ほどもお話しした通り、中小・小規模事業所はさまざまな課題に直面しています。当会議所でも新しい制度への対応に追われていますが、それでも『できることは何でもやろう』という合言葉を掲げ、役職員一丸となってさまざまな事業に取り組んでいきたいと思います。  日経平均株価が33年ぶりに3万6000円台の高値となりましたが、かつての好景気とは異なり、中小・小規模事業所の厳しい経営環境は変わりません。しかしながら、愚痴ばかり言っていても始まりません。与えられた環境の中でも生き残りをかけて自己変革を果たし、生産性向上を目指し、従業員の働きがいや生きがいなどを大切にする企業へと変貌していかなければなりません。当会議所としてはそのために必要な支援を全力で進めていきます」

  • 【須賀川信用金庫】伊藤平男理事長インタビュー

    【須賀川信用金庫】伊藤平男理事長インタビュー

    いとう・ひらお 1958年生まれ。1980年に須賀川信用金庫入庫。同信金理事、常務理事を経て、昨年6月から現職。須賀川創英館高校同窓会会長、須賀川市卓球協会会長、須賀川市体育協会副会長などを務める。  ――昨年6月に新理事長に就任しました。  「本部の経営企画部門に長く勤務しており、前理事長・前々理事長のもとで、経営について指導を受けてきました。理事長就任後、総代を中心に150件ほど挨拶回を行い、お客様から『信用金庫らしく、地元に密着した経営を継続してください』との声を多く聞きました。新理事長として当金庫の方針である『創業の趣意を体し地縁性金融機関として地域の発展に奉仕する』を実践すべく、地域のお客様の声を聞き、地域に根差した信用金庫として地域を支える使命感を感じていますし、須賀川信用金庫理事長の責任の重大さを再認識しているところです。  また、職員にとって安心して働けて、働き甲斐のある職場にすべく、健康状態、家族の状況、金融収支状況などの聞き取りを、私が全職員個別に行いました。職員が安心して働きやすい職場にすることが地域に役立つための条件の一つだと考え、現在努力しているところです。さらに、先人たちが築いた信用・信頼を崩すことなく、高い使命感と強い責任感、変わらぬ道徳観を持ち、役職員が一致団結して一歩ずつ前進していきたいと思います」  ――原料高や人材不足といった問題が深刻化しています。  「理事長就任後の挨拶回りで、取引先の経営状況や経済環境、物価高騰による価格転嫁の状況などを聞き取りしたところ、比較的規模の大きい企業はエネルギー価格・原材料の価格転嫁ができていますが、小規模企業は価格転嫁されにくい状況にあることが分かりました。特にエネルギー価格の転嫁は、部品一つに対していくらにするのが妥当なのかを説明するのが難しいとのことでした。  取引先のヒアリングと財務調査の結果、現段階では当金庫の取引先は比較的安定した経営がなされておりコロナ禍の収束に伴って地域経済も少しずつ回復傾向に向かうと見ています。今後とも常にお客様の状況を把握し、売り上げ回復に向けた対話や具体的な支援をしていきます」  ――今年は創立110周年を迎えます。  「創立110周年は途中経過の位置付けで、創立100周年時のような大々的な記念行事は実施しませんが、現在取り扱っている記念懸賞品付定期預金や10月に予定している須賀川広域消防組合への救急車1台の寄贈、創立110周年記念コンサート、記念旅行やゴルフコンペ、ロゴ入り名刺による活動、記念品の贈呈等のイベントを企画しています」  ――昨年からインボイス制度がスタートしました。  「昨年4月の当金庫のアンケート調査では、取引先の課税事業者の約40%が対応済みとの回答で、現時点では課税事業者のほとんどが登録を申請していると見ています。一方で、家族経営、小規模事業者はインボイス制度への理解が浅いことから当金庫では会計バンク㈱の請求書サービス『スマホインボイスFin Fin』の顧客紹介業務を昨年7月から実施しており、渉外担当者を中心に紹介業務の勉強会を実施して対応しています」  ――今後の抱負。  「地域貢献など、信用金庫本来の使命を果たし、地域に根差した経営に徹して地域経済を守っていきたい。また、職員が十分に能力を発揮でき、やりがい・働きがいのある安心して働くことのできる職場づくりに努めます。もう一つは、業務内容の見直しを図るとともに、DXの推進等によって生産性の向上や、経営基盤の強化・充実を図り、持続可能な経営体質を確立することに注力していきたいと思っています」

  • 【湯川村】佐野盛至村長インタビュー

    【湯川村】佐野盛至村長インタビュー

    さの・せいし 1957年1月生まれ。東京農業大短大農業科卒。湯川村総務課長、産業建設課長などを歴任。村議1期を経て、2023年10月の村長選で初当選。 「住んでみたい」と思える村を創造することが私の使命。  ――10月の湯川村長選で初当選しました。  「前回と同じ顔ぶれによる一騎打ちの選挙戦となり、77票差で当選することができました。前回村長選での落選後、村内をくまなく回り、世代を問わず地域住民との対話を重ね、要望を選挙公約に反映させてきました。今回の当選は、その選挙公約と後援会活動をはじめとする草の根運動が評価された結果と受け止めています」  ――村長就任の抱負について。  「『豊かで希望がもてる湯川村に生まれ変わりましょう!!』をスローガンに掲げました。本村は、県下一おいしいお米がとれるコメどころ、名刹・勝常寺や年間100万人以上が訪れる『道の駅あいづ湯川・会津坂下』を有する、誇れる村です。さらに、子育て支援、教育環境の整備、高齢者が暮らしやすい社会の構築、活力ある産業の創出を実現し、『住み続けたい』、『住んでみたい』と思える〝湯川村〟へと生まれ変わることが私の使命と強く認識しています。地域住民の力と私の行政経験を生かし『新生・湯川村』の創造に向け邁進していきます」  ――選挙戦では6つの公約を掲げました。  「1つは『結婚・子育て支援』です。仲人ボランティアによる結婚支援、小中学校の学校給食費無償化・保育料無料化の実現、18歳までの医療費無料の継続、在宅育児支援手当の支給制度の創設に取り組みます。2つは『教育環境の整備』です。笈川・勝常両小学校の児童数減少、校舎やプールの老朽化を踏まえ、小学校の統合を含め、地域住民と議論を深め、あるべき姿を見出したいと考えています。また、受験対策や補習も対応できる村営学習サポート塾の開設、犯罪を抑止し子どもの命を守るため保育所、幼稚園、小・中学校への防犯カメラ設置を進めます。3つは『高齢者支援』です。交通費負担の軽減と移動の不安をなくすための新たな交通システム導入をはじめ、近隣のスーパーなどと連携した移動販売事業や宅配事業、買物代行事業などの支援策を検討し、高齢者の暮らしを守ります。4つは『地域産業の振興』です。スマート農業の推進・支援、道の駅を最大限活用した地域振興、会津湯川ファームの運営を支援し、雇用確保と税収増加を図ります。5つは『住民活動の推進』です。自分ができることを生かせるボランティア団体に参加し、生きがいをもって活動できるようボランティア団体の育成・活動支援に注力します。結びに『移住・定住の促進』です。交通網に恵まれ、下水道100%整備済みの環境をアピールし、子育て支援と教育環境の充実を図り、移住・定住を促進する所存です」

  • 【会津若松商工会議所】澁川惠男会頭インタビュー(2024.1)

    【会津若松商工会議所】澁川惠男会頭インタビュー(2024.1)

     しぶかわ・ともお 1947年生まれ。会津高、日大商学部卒。澁川問屋会長。会津若松商工会議所副会頭などを経て、2016年から現職。現在3期目。  会津若松市は城下町の強みをインバウンドにつなげる一方、小中学校と地元企業をつなぐマッチングサービスや地域発キャッシュレス決済の導入でデジタル技術の恩恵を地方に還元するなど歴史と進取を両立している。国際競争力の高いスノーリゾートにも選定され、宿泊拠点の役割も期待されている。会津若松商工会議所の澁川惠男会頭に経済飛躍の鍵を聞いた。 民間の力こそが地域の未来を拓く。  ――新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが引き下げられて7カ月以上になりました。  「コロナ禍により老舗料亭や観光ホテルの経営破綻があり、管内はダメージを受けました。感染収束後の消費回復を期待していましたが、物価高の影響は大きいです。当商工会議所の退会理由のトップは『廃業』です。中小企業の経営者は高齢の方も多く、後継者がいないというのが主な理由です。コロナ禍からの回復が十分でないうちに物価高が追い打ちをかけて廃業が加速していくのを懸念しています。  明るい兆しはあります。行動制限のない忘新年会シーズンを迎え、飲食業界は予約が相次いでいるようです。感染拡大前の水準に戻りつつある事業所もあります」  ――昨年7月から市内の小中学校と企業をつなぐマッチングサービス「まちスク会津」を用いた実証実験が始まっています。  「まちスク会津は教育支援と地域活性化を両立します。子どもたちにとっては、地域企業・人材と触れ合う機会を増やすことで、企業の認知度向上や地域への理解、魅力発見などにつながります。教育支援を希望する登録企業が増え、本サービスを通して学校と企業の新たなマッチングが生まれており好評です。  今後は当商工会議所で実施している『ジュニアインターンシップ(職場体験)』との連携に加え、サービス充実のために、地域企業・人材の参画を広く呼び掛けます。会津の次代を担う子どもたちが地域を深く知り、将来は地元への就職やUターンにつながってほしいです」  ――観光庁の「国際競争力の高いスノーリゾート形成促進事業」に会津若松市、磐梯町、北塩原村が会津磐梯地域として県内で唯一選ばれました。  「冬季の誘客は会津地方の長年の課題でした。今シーズンは磐梯町と北塩原村のスキー場が連結し、国内最大級のスノーリゾートが誕生しました。南半球のスキーヤー・スノーボーダーが良質な雪を求めて裏磐梯を訪れてきましたが、この流れが会津地方に波及するでしょう。  インバウンドが集中する東京・京阪神間を『ゴールデンルート』と呼びます。東北は対抗軸の『ダイヤモンドルート』を掲げ各自治体や経済団体が盛り上げてきました。今こそ、それを再燃させる時です。  スノーリゾートでは、会津若松は魅力ある宿泊や飲食を提供するベースタウンの役割があります。観光客は国・地域によって食事や宗教、生活様式がさまざまです。違いに対応し、受け入れのレベルを上げる必要があります。当商工会議所はこれまでにも訪日客への対応を学ぶ各種セミナーを開いてきました。会員事業所には観光、旅客、宿泊の事業者がいます。意見を聞きながら今後は業種に特化したセミナーにするなどしてより充実させます。  今年度、会津大学の留学生を対象に市内の観光スポットを巡るモニターツアーを実施しました。鶴ヶ城登閣、弓道や抹茶、赤べこの絵付けなどの体験型コンテンツを通じて会津の魅力を聞きました。素材は十分に魅力的ですが、多言語表記が少ないなどの課題が浮き彫りになりました。改善策を行政に提案し、訪れる全ての方に優しい環境につなげます」  ――「会津コイン」を用いたデジタル商品券事業が始まりました。  「会津コインは会津若松市が進める『スマートシティ』の取り組みの一環です。国は2025年6月までにキャッシュレス決済比率を4割程度にする目標を掲げています。キャッシュレスは増加傾向ですが、既存のキャッシュレス決済はお金の他、マーケティングに活用できる利用者情報などが地域を出てしまうのが課題でした。そこで地域のみで流通する通貨を導入して情報が地域に残るようにしたのが会津コインです。  商品券はこれまで紙ベースでしたが、今回初めてスマホを使ったデジタル形式にしています。当商工会議所やスマートシティAiCTに入居する企業でつくる『AiCTコンソーシアム』などで構成する実行委員会が事業を行っています。当初会津コインが使えるのは6店舗だけでしたが、プレミアムポイント事業の実施で400店舗を超えました。ただ、店舗の加盟申請や消費者の利用設定の手順が複雑な点は否めず、特に高齢の方からさまざまな意見を頂戴しました。市と決済事業者と共に対応を検討したいです。  プレミアム事業が終了した後、どこまで会津コインを利用してもらえるか、事業所に継続していただけるか不安な点はあります。利用者情報を個人が特定されない形に処理して会津コイン参加店舗に提供し、経営に生かしてもらうなどの仕組みづくりが急務です。再生可能エネルギーへのポイント付与構想など、持続可能な開発を進めるインセンティブも有効でしょう。商店街や飲食店業種単位でイベントに活用するなど様々なアイデアに挑戦することで利用が増えていくと思います」 急務の再開発  ――市街地の再開発について。  「中心市街地から大型店が撤退したままの現状に非常に危機感を持っています。都市の活況のバロメーターと言える地価公示や路線価は、昨年は福島、郡山、いわきの県内主要都市の商業地は軒並み前年比プラスになっている一方、会津若松はマイナスに沈んでいます。  当商工会議所は昨年度、再開発に向けた意見を取りまとめ、神明通りや駅前周辺、旧県立病院跡地などの利活用について市に提言しました。多くの利害関係があること、市の財政的な課題もあり、一足飛びに実現しない現状は理解しています。ただ、その中でも中心市街地の再開発は早急に取り組むべきです。まちのシンボルである神明通りはその最たるもの。個性豊かな店を集積したり、インフラなど不足する要素を分析して早めに手立てを考えていきたいです」  ――抱負を教えてください。  「地方は人口減少に伴う縮む経済に直面しています。地域の活力を維持し、若者が住み続けたい、また多くの観光客が訪れたいまちにできるかどうかはここ数年で決まってしまうのではないかと危機感を持っています。会頭就任以来、民間の挑戦こそが地域の未来を切り拓いていく大きな力になると訴えています。危機的な状況だからこそ、この思いを新たにし、徹底した事業所支援を通じて足腰の強い会津若松経済の実現に向けて取り組んでいきます」

  • 【大熊町】吉田淳町長インタビュー

    【大熊町】吉田淳町長インタビュー

     よしだ・じゅん 1956年1月生まれ。大熊町出身。法政大学経営学部卒。1979年に大熊町職員となり、教育総務課長、総務課長などを歴任。2016年1月に副町長となり、2019年11月の町長選で初当選。2023年に再選を果たす。  ――昨年11月12日投開票の町長選を振り返って。  「前回は新人同士の選挙戦でしたが、今回は現職として選挙戦に臨み、表現として適切かどうか分かりませんが、相手候補の動きが見えづらく苦労した点もありました。結果的には全体の約9割の票をいただき、当選できたことは一定の信任が得られたと思っています」  ――2022年に特定復興再生拠点区域の避難指示が解除されました。  「震災前、町の中心地だった下野上地区を含む860㌶が待望の解除となりました。帰還した住民からはスーパーなど買い物環境の整備を求める声が多数あります。以前、町内にはスーパーが3店舗ありました。買い物環境整備には喫緊の課題として取り組んでいます。医療面では、診療所はあるものの週2日だけなので充実を求める声が出ています。県では県立大野病院の後継病院を開院するとの方針を打ち出しており、医療体制の拡充を進めていきます。  特定復興再生拠点区域より前に避難解除された大川原地区は、役場周辺を中心に環境が整い、今後は大野駅周辺整備を進めていきます。駅前に産業交流施設を建設し、周辺には帰還した方や働く人のために商業施設整備を進めています。それに先駆けて3月には50戸の住宅団地が2つ完成するほか、元々あった民間アパートを町が補助を行いリフォームして約200室整備しました。  こうして、さまざまな環境整備を進めていますが、まずは居住人口を増やさなければなりません。加えて、昨今は国の復興事業の関係で学生が訪れるなど関係人口も増えていますので、そういった大熊町に関心を示してくれる人を増やしていきたい。働く場所も必要になりますから、工業団地への企業誘致なども進めていきます」  ――2023年6月に、福島復興再生特別措置法が改正され、特定復興再生拠点区域から外れたところのうち、帰還意向のある住民が帰還できるよう必要な個所の除染を行い、特定帰還居住区域として定めることで、避難解除を目指す方針が示されました。  「新しい方針のもと、下野上1区を特定帰還居住区域に指定して国から認定を受けました。今年度内にも除染に着手してほしいと要望を出しています。  町内には21行政区ありますが、そのうち帰還困難区域を抱える行政区は下野上1区を含めて10行政区あります。残りの9行政区においても下野上1区に遅れることなく、特定帰還居住区域への指定、除染、解除を目指して国に要望を行っています。町としても、町民の意見を聞きながら、次の除染エリアの選定を検討しています。新しい方針では、1人でも帰還したい住民がいれば除染を行うこととされていますので、なるべく広い区域を住めるエリアとして取り戻したいと思っています」  ――休止している県立大野病院が現在地で建て替えられ、2029年度の開院を目指す方針が示されました。  「県立大野病院は、町内だけの施設ではなく、相双地区の拠点病院に位置付けられていますから、1日も早い開院を目指して整備してほしいと思います。また、先ほどもお話ししましたように、帰還した住民からも近くに病院があってほしいと、医療体制の充実を願う声が出ています。町民の中には、帰還するかどうか迷っている方も多数おり、そういう方々の判断材料という点でも、病院の有無は大きな要素となります。同病院の存在は双葉郡をはじめ、相双地域全体の大きな問題でもありますから、1日でも早い整備をお願いしたいと思います」  ――教育施設「学び舎ゆめの森」の新校舎が完成し、2学期から使用されています。  「震災・原発事故から12年が経ち、ようやく子どもたちの声が聞こえるようになりました。同施設では認定こども園と義務教育施設が一体となっており、0歳から15歳までが保育・授業を受けています。最初は園児・児童・生徒数は計26人でしたが、同施設で行っている新しい教育方針が保護者の間で関心を集め、若い世代が移住して入園・入学する園児・児童・生徒が増加し、まもなく40人を超える勢いです。9月には12年ぶりに運動会が開催され、園児・児童・生徒や保護者以外に地域住民も参加して盛大に行われました。  資材不足の関係で完成が当初予定から遅れ、2学期から新校舎での保育・授業がスタートしましたが、校舎完成前の1学期は町役場や交流施設などを活用し、分散して授業が行われました。不便だった分、工夫しながら学習に取り組み、さらには、学校関係者以外の人とも関わることができたことは、子どもたちにとっていい経験になったと思っています。  新校舎完成後は校舎のつくりや独自の教育プログラムが評判を呼び、視察が増えています。新校舎での授業がスタートした8月から数カ月で視察者は1000人を超えました。また、『グリーン留学』という体験入園・入学プログラムも用意していますので、帰還や定住人口増加の起爆剤につなげていきたいと思います」  ――「長者原じゃんがら念仏踊り」が震災後はじめて町内で披露されました。  「『長者原じゃんがら念仏踊り』と『熊川稚児鹿舞』は町の無形文化財に指定されています。そのうちの一つであるじゃんがら念仏踊りがようやく町内で再開できたことは、区長をはじめ地元の方々に本当に感謝したいと思います」  ――今後の重点事業について。  「まずは避難解除された特定復興再生拠点区域内の環境整備をしっかりと進めていきます。それを経て、特定帰還居住区域の整備へと、1歩ずつ進んでいきたいと思います」  ――今後の抱負。  「先ほども話したように、まずは居住人口を増やしていきたい。震災前は約1万1500人でしたが、現在は住民登録している居住者が600人超、住民登録していない居住者が400人超ほどおり、合わせて1100人が町内で暮らしています。町ではそれを4000人にすることを目指しています。そのためには町に訪れる関係人口を増やすことが必要だと思います。その中で住んでみたい方がいればお試し住宅を利用していただき、子育て世代であれば学び舎ゆめの森を見ればきっと気に入っていただけると思います。働く場所も工業団地の整備を進めており、そこで働く方に町内に住んでいただくための住宅整備も進めています。こうして、様々な事業を行いながら人口増加に向けた取り組みを行っていきたいと思っています。また、戻れない住民の絆の維持のための取り組みも継続して進めていきます」

  • 【福島商工会議所】渡邊博美会頭インタビュー(2023.12)

    【福島商工会議所】渡邊博美会頭インタビュー(2023.12)

     わたなべ・ひろみ 1946年生まれ。福島大経済学部卒業後、福島ヤクルト販売入社。2012年に福島商工会議所副会頭。13年11月に会頭就任。現在4期目を務める。  福島商工会議所は職員らの力を結集し、渡邊博美会頭の下、伴走型支援で会員事業所の経営環境の足腰強化に力を入れている。経済に打撃を与える慢性的な人手不足と資材高騰は福島駅前東口再開発に影響し、建設費用が増加。完成が1年延期され2027年度の予定になった。「福島駅東西エリア一体化推進協議会」会長も務める渡邊氏に再開発の行方などを聞いた。 足腰の強い経営環境を共に目指していく  ――新型コロナウイルスが感染症法上の5類に引き下げ後、福島わらじまつりが通常開催されるなど新型コロナ禍前の活気が戻ってきました。現況を教えてください。  「わらじまつりは今年、まず6月に青森市で行われた東北絆まつりに参加しました。賑わいを見て、福島のイベントも賑わうぞと期待が膨らみました。祭りは参加者が熱狂し、笑顔が観客に伝播します。その光景が復活したのは感慨深いものです。7月末に『ふくしま花火大会』があり、熱気が高まったまま、8月3、4日のわらじまつりで最高潮となりました。大相撲の福島巡業が4日に行われたため、福島市の夏は例年にない盛り上がりでした。  福島駅東口の再開発工事中は賑わい創出のため駅前通りやまちなか広場では週末に各種イベントが開かれて盛況です。県立医大保健科学部と福島学院大学の駅前キャンパスがあるため、多くの若者がイベントに関わっています。学生ならではの自由な視点には目を見張るものがあり、若手も参入しやすい雰囲気が生まれています。これらを起爆剤に、来年はもっと魅力のある街になるよう盛り上げていきます」  ――円安と物価高が深刻な問題となっています。人手不足や後継者問題も深刻です。会員事業所からはどのような声がありますか。  「人手不足は日本を覆う問題です。福島県は特に女性の生産年齢人口の流出が全国と比べて高いというデータがあります。要因は様々ですが、女性が魅力を感じる産業を用意できていないという点で、我々経営者にも責任があると感じています。働く場所としてもそうだし、結婚し子育てをする場として不安を感じ、学校を出ると福島を離れてしまう。  価格転嫁について会員事業所を調査していますが、問題なく行っているという事業所はまずありません。燃料費の高騰が特に打撃で、賃金を上げて今いる従業員を雇用し続けられるよう経営者は奮闘しています」  ――資材価格高騰で福島駅東口再開発が1年先送りとなりました。会頭自身も「福島駅東西エリア一体化推進協議会」の会長を務めていますが会議所ではどのような対応をしていきたいですか。  「百貨店の中合が閉店してから福島駅前の歴史あるランドマークが無くなってしまいました。特に私ども高齢者は駅前が一番賑わっていた時代が頭に残っていますから衝撃は大きかった。当会議所には往時の駅前の活気を知る方たちから、なぜ中合を閉めるのかと惜しむ声が聞こえてきました。地方都市では、駅前の活気は衰退し、賑わいは駅の中だけに収まってしまいました。  福島市は東北新幹線の駅があり、交通の便では恵まれています。行政施設とコンベンション施設が駅前に集まると都市機能が向上します。さらに大切なのは、医大保健科学部、福島学院大のキャンパスがあり、近くに大原綜合病院が位置している点です。再開発地区には既に暮らしに密接な教育機関や病院があります。東京や仙台などの大都市では地代が高い分、行政や教育、医療機関の集約は困難でしょう。その点で福島市は再開発で機能を集約しやすい強みがある。自家用車を持っていなくても誰もが暮らしやすい街になる可能性を秘めています。  ただ、資材価格高騰が建設に影響を与えています。完成後も維持費を考える必要があります。そして、暮らす人にとって一番良い方策を考えねばなりません。私は今、関係者に建設中の今こそ、腹を割って話そうと言っています。  資材価格高騰によるコスト上昇や地方の再開発事業の難しさをみると、予算や持続可能性に厳しい部分があるのであれば、福島に住む人にとって一番いいやり方を駅西口と一体化して考える必要があります。後世に悔いが残らぬように、知恵を絞るのは今しかできません。見栄や他の都市に負けたくないという発想ではなく、自分たちのためになる形を追求したいです。  東北中央道ができたことで、福島市には相馬市や山形県米沢市からも訪れるようになりました。福島の魅力は分析すればたくさんあるはずです。構造物だけどんどん造って、継続できませんでしたでは済みません。行政とまちづくりセンター、当会議所で連携を密にして取り組んでいきます」  ――福島市出身の作曲家、故・古関裕而さんが野球殿堂入りしました。街づくりにどうつなげますか。  「古関先生をモデルにしたテレビドラマで火が付き、記念の音楽祭や作曲賞の創設、夫人の金子さんの出身地である愛知県豊橋市とのつながりが生まれました。豊橋市の方たちには花火大会でも筒花火を披露していただきました。  野球のオール早慶戦を11月26日に行いました。早稲田大と慶応大の応援歌をどちらも古関先生が作曲している縁からです。現役生やOBが試合をし、市や当会議所も準備に関わりました。応援合戦は盛り上がりました。古関先生の縁で福島に若い人が来てくれた。試合後も果物や温泉を楽しんで、福島の魅力を知っていただいたようです。福島の魅力はたくさんありますが、古関先生はそれらをつなぐ要です」  ――今年度取り組んでいる重点施策について。  「激変する経営環境に対応できる、足腰の強い経営ができるよう企業や商店の伴走型支援に取り組んでいきます。具体的には人手不足や資材高騰、デジタル移行に対応します。セミナーで一方的に教えるだけではなく、職員が赴いて親身に対応できるよう、商工会議所では人づくりを進めています。来年のカレンダーを配る時期ですが、会員事業所には職員が直接回って配り、ネット環境の整備や人手の確保、新商品開発に使える便利な制度を紹介するなど対面であらゆる相談に乗っています。若手職員が出向くことで気兼ねなく相談できるとの声があります。  浮かび上がった課題は、当会議所の各種委員会で共有して解決策を編み出します。いくつかの委員会では女性や会議所議員になってから1年以内の若手メンバーを委員長に据え新しい風を取り込んでいます。多種多様な意見をまとめていくのは並大抵ではありませんが、その分チャレンジングな発想が生まれます。時代の変化に合わせて新たな経営視点を会員事業所と一緒に磨き上げていきたいです」

  • 【二本松商工会議所】菅野京一 会頭インタビュー(2023.12)

    【二本松商工会議所】菅野京一 会頭インタビュー(2023.12)

     すげの・きょういち 1954年2月生まれ。福島大経済学部卒。糸屋ニット・菅野繊維代表取締役。二本松商工会議所副会頭2期を経て昨年11月から現職。  新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、経済活動の制限や各種イベントの中止・規模縮小などを余儀なくされたほか、原材料・燃料費高騰や人手不足など、地方経済を取り巻く環境は厳しい。そんな中、地域経済のかじ取り役である商工会議所では各種課題にどう向き合っているのか。二本松商工会議所の菅野京一会頭にインタビューした。 管内の魅力をもう一度見直していきたい  ――新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが「5類」になりました。これを受け、各種イベントなども通常開催されるようになっていますが、管内の動きについて。  「二本松の提灯祭りは管内の大きなイベントの1つで、コロナ禍以降は中止や規模縮小、アルコール販売禁止などの規制の中での開催を余儀なくされましたが、今年は規制がなくなり盛況でした。ほかにも、8月には各地の夏祭りが通常開催され、想像以上の盛況ぶりでした。多くの人がこういったイベントを待ち望んでいたことを実感しました。もちろん、コロナが完全に消滅したわけではありませんが、5類に移行したことで、イベント等が通常開催され、まちが活性化していると思います。  二本松の菊人形は昨年と比べ1割増の観光客が訪れました。以前から『菊のまち二本松』のPRのため、女性会を中心にJR上野駅や市内各店舗などには『菊手水』の設置や各家の軒先でも菊が飾られ、観光客を迎えています。昨年開館した城報館でも物品の販売を行いましたが、市が菊人形来場者への1割引補助を行ったところ大好評でした。  また、来年の1月には菓子博、2月には酒まつりが行われます。両イベントも規制をなくしコロナ禍前と同規模で行う予定です」  ――円安や燃料高が深刻な課題となっています。  「燃料・物価高は、当然大きな問題ですが、それ以上に管内では人手不足が深刻です。家族経営のような小規模事業者は別にして、どの会員企業に聞いても、やはり人手不足が一番深刻な課題であるとの話が出ます。そんな中、会員企業によっては外国人研修生を迎えて補っている企業もあります。  会議所としては、市と合同で意見交換をしながら人手不足に向けた課題解決を図っています。特に、地元の若者がこの地域に残って、地元企業で働いてほしいという思いから、高校生に対する研修制度などのカリキュラムを少しでも設けていただければ、若者の興味も地元に向けられるのではないのかと思います。市内には認知度は高くないものの、世界に誇れるような企業が多いのです。これまで、企業ガイドブックといったパンフレット配布を行ってきましたが、今後は映像でまとめたDVDなどを各学校に配布することを考えています。やはり、実際の映像を、自分の目で見てもらった方がより説得力があるでしょうからね。ほかにも、企業説明会などを実施し、会議所として少しでも人手不足解消に向けた活動を行っていきたいと思っています。  また、市内では空き店舗利用が多く、伝統的に菓子店が多いので空き店舗を利用した菓子店がオープンするなどしています。とはいえ、まだまだ空き店舗が目立つ状況ですから、さらなる対策を講じていきたい。  今年からインボイス制度がはじまりましたが、会議所では説明会を常時開催しています。会員企業には零細企業も多く、猶予制度の中身等を理解していない企業も少なくありませんので、丁寧な説明を続けていきたいと思います」  ――国・県に望みたいことは。  「安達太良山のくろがね小屋は閉鎖されたままになっています。県でも2025年の完成を目指すことになっていますが、建設に向けては資材をヘリコプター輸送しなければならないなどの問題があります。中通りでも有数の日本百名山の1つでもあり、観光資源でもありますから、トイレの問題はもちろん、登山者や観光客の安全を守るという意味でも早期の建設をお願いしたいと思います」  ――現在の重点事業について。  「会議所が果たすべき役割の原点に立ち返り『会員と共に一歩前へ! ~信頼される「地域総合経済団体」を目指して~』を基本行動に据え、施策事業を実行するとともにさらなる組織強化に努めていきます。  特に人口減少や高齢化などの事業者が抱える社会構造的な課題に対して、『地元事業者の経営基盤の強化』と『持続性のある地域の活性化』を活動計画の柱として、各種事業を展開していきたいと思っています。  具体的には、巡回相談・専門相談を各種経営支援事業の核として、会員企業の実態とニーズに即した支援を寄り添いながら実施していきます。また、IT化によるDX支援など、経営の効率化と生産性の向上につながる支援や働き方改革、社会保障などの諸制度に対して、即応できる体制の強化を図り、労働環境改善、健康経営を進めていきます。  また、会議所だけの事業ではありませんが菊人形が今年で67回目を迎え70回の節目が迫っています。東日本で菊人形を開催しているのは二本松市だけで、70年の長い間継続したことは誇りであり、技術継承も必要だと思います。二本松の菊人形は、菊栄会が中心になって行われていますが、次の80、90周年を見据えて、会議所としても、例えば体験型の催しなど、70周年に向けた提案を行っていきたいと思います」  ――今後の抱負。  「就任直後も話したようにオール二本松で当たっていきたいと思います。そういう意味では、常議員をはじめ、会員企業の皆さんには積極的に参加していただき感謝しかありません。夏祭りや酒祭りといったイベントにしても、会員企業と一緒になってもっとアイデアをひねりながら、さらにいいイベントにしていきたいと思います。  二本松市は、すごくいいところがたくさんあるにもかかわらず、地元住民が知らないことも多くあります。もう一度、二本松市の魅力を再発見する取り組みを進めていきながら、インバウンドにつなげていきたいと思います。いまは円安の影響で外国人観光客が多く国内に訪れています。市内でもエビスサーキットには多くの外国人が訪れるなど地盤はあると思います。以前からインバウンドに向けた取り組みを行ってきましたが、あらためて、市内にインバウンド観光客が訪れる仕組みづくりを進めていきたいと思います。  来年1月には岳温泉のあづま館がグランドオープンします。岳温泉の各旅館もコロナ禍の影響で苦労していますが、あづま館はサウナ施設をオープンさせるなど、頑張ってくれています。市内の観光名所である岳温泉は安達太良山とセットで大きな魅力の1つです。そういった管内の魅力をもう一度見直していきたいと思います」

  • 【会津土建】菅家忠洋社長インタビュー

    かんけ・ただひろ 1979年5月生まれ。東京の大学を卒業後、海外留学を経て会津土建へ入社。翌年、子会社の㈱エマキへ出向。10年間IT事業の社長を務める。その後、会津土建へ戻り、取締役、常務取締役、副社長を歴任し、昨年6月に代表取締役社長に就任。   会津若松市の会津土建は大正15(1926)年に創業し、会津地方に根ざした総合建設業として成長を続けてきた。建設業界全体がさまざまな課題を抱える中で、先進的な取り組みへの挑戦を続けている。昨年6月に代表取締役社長に就任した菅家忠洋氏(44)に建設業界の現状、今後の経営ビジョンについてインタビューした。 効率化と新たな挑戦を心がけ成長を続けていく。  ――昨年6月8日付で会津土建の代表取締役社長に就任されました。  「私の祖父と父が歴代の社長なので、幼い頃から会社を引き継ぐことに漠然としたイメージはありました。実際に社長となって、もちろん仕事の重みや責任は感じていますが、不安やプレッシャーにさいなまれることはなく、やりがいを感じながら充実した日々を過ごしています。さまざまな方々とお会いする機会に恵まれ、物事に対する見識や感性が膨らみ、人との結びつきやご縁の尊さを実感しています。建設業という仕事自体にとても魅力を感じますし、人のため、社会のために貢献すべく、地域が活性化できるよう情熱をもってまちづくりに努めていきたいと存じます」  ――老舗総合建設会社として地域社会にどう貢献していく考えですか。  「当社は大正15年創業、まもなく100周年を迎える老舗の建設会社です。会社の歴史を十分に理解しながら、新たな伝統を創っていく所存です。現在の会津地域における建設業界を取り巻く環境や政治経済の状況を俯瞰的に捉え、何を成すべきか、深く考えながらも瞬時に見極め、判断していく必要があります。また、今までお付き合いいただいたお客様はもちろんのこと、新たにご縁をいただいた方々、協力会社、職人さん方とより一層の誠心誠意を込めてお付き合いをさせていただきたく存じます。私たち建設会社のミッションは、お客様の満足いく建物を提供すること、そして、安心で安全に生活ができる豊かなインフラを整備し、地域社会に還元することが最重要項目です。社会情勢が目まぐるしく変化する中、安全、品質、コスト、デザイン、付加価値、SDGsなどへのより一層の対応が求められています。今後、PPP(官民のパートナーシップによる公共サービスの提供手法)やPFI(公共施設等の建設・維持管理・運営等を民間の資金、経営能力、技術的能力を活用する手法)事業が推進されると想定し、異業種の方々との交流や連携による柔軟な発想と対応が大事です。そのためにも、私たちも理論に基づいた提言をしながら、発注者、施工業者、設計、学識者、専門機関など、さまざまな意見をまとめながら、産学官による垣根を超えたデザインビルドに取り組むべきだと思います。将来を見通しながら地域の皆さまが納得し、喜ばれる仕事を完遂することが弊社の社会的な役割であるとあらためて認識しています」 ICTとアナログの融合  ――先進的な取り組みについて。  「建設業界では少子高齢化による人手不足が深刻です。そのため、国土交通省は、最先端工法やICT技術を導入することで建設生産システムを向上し効率を良くする『i―Construction』を推進しています。建設現場のみならず、総務や経理の事務的なバックオフィスでも生産性や効率性の向上が図られています。現在は3次元データの活用を深化させ、建設現場をデジタルツインで作業効率を高める取り組みにも着手しています。  スケールの大きい土木現場を施工管理する大々的な建設DXからスマートフォンのアプリケーションに至るまで、会社にとって効果があり、社員の仕事が楽に、スムーズになるのであれば積極的に導入する考えです。時代の潮流に乗り、今後も新しいテクノロジーや大手ゼネコンの取り組み、海外の事例を含め、導入検討や内製化の研究に励む所存です。 一方で、私は何よりも『アナログ』なお付き合いを大切にしようと思っています。人様との信頼関係の構築には対面が不可欠です。『温故知新』を座右の銘に、老若男女問わず、真心と礼儀を尽くしたいと存じます。『デジタル』と『アナログ』それぞれの利点を見極めながら新旧融合を図り、相乗効果が発揮できるよう『機を見るに敏』を意識した対応に徹したいと思います」  ――建設業界の今後の見通しは。  「全国的にみれば、先の東京五輪、リニア中央新幹線の整備、大阪万博、東京の再開発事業など建設需要が旺盛となっています。一方で、本県に目を移せば東日本大震災から12年が経過し、イノベーション・コースト構想や一部まちづくりを残し、復旧・復興事業も終わりを迎え、大型事業も少ない状況です。建設業界はすでに縮小・淘汰の時代が到来したといっても過言ではなく、大都市と地方都市を比較すると経済格差を著しく感じます。これからは新規でゼロから建設するというよりも、既存の建造物・構造物の維持管理やメンテナンスに軸足が移っており、それに応じて業務内容も変化させていく必要があります。  今後は、既存の建設会社だけではなくハウスメーカー、設備会社など関連業種も含めれば競争相手が多く、生き残りは容易ではありません。そうした中で、当社の位置付けを見つめ直しながら、新たなチャレンジを始動していく覚悟が問われます。先行きが見えないことも多々ございますが、私たちが抱く既成概念をリセットし、どん欲に挑戦しながら新たな領域を切り開くことが生き残るポイントだと考えます。厳しい経済状況でも成長している企業が存在するのも事実です。成功事例から学びを得て、業務に反映できるものはぜひ取り入れていきます。激烈な競争を勝ち抜くためにも『メイドイン会津』の地元建設会社として、プライドを大切にしながら企業価値をさらに高め、皆さまから認めていただけるよう、誠心誠意努めていきます」  ――結びに今後の抱負を。  「これから未来の福島を創るにあたり、私たち建設業界は真価を試される大切なターニングポイントにあると思います。故郷のため、そして子どもたちのため、日々技術を磨き、研鑽を積みながら、新しい事業スタイルを常に学び、もう一段上の高みに会社をもっていきたいと強く願っています。その実現に向け、『企業は人なり』の精神をモットーに、社員ファーストで生き生きと働ける環境を提供し、福利厚生を充実させながら、優秀な人材をリクルートしていきます。  また、健康経営優良法人の認証取得や女性活躍社会の推進をはじめ、企業価値の向上に着手していきます。今までの建設会社のイメージを覆し、新4K(給与・休暇・希望・かっこいい)を実現し、魅力溢れる企業体質をもって、社会に貢献していきます。私自身、まだまだ若輩者ではありますが、夢と希望を持って成長していきます」

  • 【福島県木材協同組合連合会】鈴木裕一会長インタビュー

     すずき・ゆういち 1948年生まれ。平工業高卒。㈱赤井製材所会長、ダイテック代表取締役、協同組合いわき材加工センター理事長。2018年より福島県木材協同組合連合会長に就任。3期目。 全国有数の林業県として森林資源を有効活用していく  ――福島県木材協同組合連合会の沿革ならびに事業概要について。  「福島県内の各方部にあった木材業者による地区協同組合の活動の総合的な調整や、全県的な相乗効果を高めるため、1964(昭和39)年3月25日に当連合会が設立されました。その後、会員の相互扶助の精神に基づき、会員のために必要となる共同事業等に取り組みながら会員の自主的な経済活動を促進し、経済的地位の向上を図ることを目的に各種事業を展開してきました。  現在、県内における良質な木材の素材生産、流通、木材加工・販売事業者約230組合員により構成される協同組合23組合を会員とし、木材の利用促進活動、木材産業振興対策、木製品に関する証明、JAS製材品の普及、各種受託事業等に鋭意取り組んでいるところです」  ――本県の森林資源や森林産業の現状についてうかがいます。  「本県の森林面積は97万3000㌶で県土面積の約71%を占めています。うち人工林面積は33万4000㌶で、人工林率は34・3%となっています。太平洋戦争後、スギを主体に造林された森林資源は年々充実してきており、まさに利用期を迎えていると言っても過言ではありません。丸太の伐採を担う素材生産事業者と製材・加工事業者等の連携強化による利用促進の取り組みにより、丸太生産量は全国8位で、全国有数の林業県に位置づけられており、生産される製材品の約80%が関東圏を中心に出荷されています」  ――福島県産木材を住宅の新築・増改築に使用することで、さまざまな商品と交換可能なポイントが贈られる「ふくしまの未来を育む森と住まいのポイント事業」の概要と利用状況についてうかがいます。  「県産木材を積極的に使用した木造住宅を新築・増改築・購入した建築主に対して、本県産の農林水産物や商品券等と交換可能なポイントを交付する事業です。本県の豊かな森林環境を保全し、循環型社会の形成を図る狙いがあります。使用している構造用部材の木材使用量によって20万~50万のポイント数が決定され、さらに本県産木材のうち一定量の森林認証材を使用すると10万ポイントが加算されます。今年度の事業の詳細や募集期間(※予算がなくなり次第終了)に関しては当連合会のホームページを参考にしていただければ幸いです」  ――今年度の重点事業について。  「『伐って、使って、植えて、育てる』をスローガンに据え、森林資源の循環利用に向けた事業を一層推進していきます。また、『都市(まち)の木造化推進法』に基づき、商業施設や事業所等の非住宅分野における木材利用の促進をはじめ、大径材を活用した中高層建築物における木造化・木質化の促進に努めます」  ――今後の抱負を。  「木材業はかつて斜陽産業とみられていましたが、加工・管理技術の向上も相まって国内における国産木材のシェアは年々高まっています。環境保護に寄与するなど将来性のある産業なので、今後も業界の発展に一層尽力してまいります」

  • 【福島河川国道事務所】丸山和基所長インタビュー(2024.2)

    まるやま・かずき 1981年生まれ。北海道大学工学部卒、同大学院工学研究科修了。国土交通省水管理・国土保全局水資源部水資源計画課総合水資源管理戦略室課長補佐などを経て、2022年5月から現職。  ――現在、工事が進められている福島西道路の整備状況について。  「福島西道路(Ⅱ期)は、福島市を南北に縦貫する国道4号の交通混雑や伏拝地区の急勾配区間における冬期のスタック車両による交通への影響などの課題解決に向けた延長約6・3㌔のバイパスです。現在、延長約1・8㌔の(仮)浅川トンネルの掘削工事、(仮)大森川橋の上部工架設工事、(仮)西ノ内こ道橋の下部工工事、松川地区の土工・構造物などの改良工事を進めているところです」  ――「阿武隈川緊急治水対策プロジェクト」の進捗状況と、遊水地の農業利活用について。  「令和元年東日本台風では、阿武隈川流域において既往最大の洪水により、堤防が決壊するなど各地で甚大な被害が発生したことから、ハード・ソフト両面の治水対策について10年間のプロジェクト『令和の大改修』を実施しています。河道掘削は今年度末で全体計画220万立方㍍のうち約170万立方㍍(約8割)の掘削を目指して工事を進めており、遊水地整備では用地協議や代替地整備、橋梁の架替等を実施しているところです。  また、遊水地の利活用については、有識者らによる利活用検討会の発足に向け調整を進めているところであり、農用地としての利用など地域の皆さまの意見も踏まえながら、持続可能で現実的な土地利用の実現に向け検討を進めてまいります」  ――国道399号伊達橋の今後の見通しについて  「伊達橋は、復旧に高い技術力を要することから国の権限代行で実施しているところですが、復旧工事には相当の期間を要することから、地域の交通確保のため橋長301㍍の仮橋を設置することとし、昨年10月29日に開通したところです。仮橋の設置については、関東地方整備局、北海道開発局が保有する応急組立橋を活用することにより早期開通に努めています。現在、既設上部工の撤去工事を実施中で、順次、下部工や上部工に着手する予定です」  ――その他重点事業について  「1つは『流域治水2・0』です。近年の気候変動を踏まえると、2040年頃には降雨量が約1・1倍、流量が約1・2倍となることから、流域治水の取り組みを加速化・深化させる『流域治水プロジェクト2・0』に取り組みます。併せて、地域の皆さまが、災害リスクを『自分ごと』として捉え、主体的に行動していただくとともに、みんなのためにとの考えで流域にも視野を広げていただけるように、流域治水の広報、リスク情報の提供、教育活動等にも取り組んでまいります。  もう1つは『福島北道路』です。福島市北部の国道4号における渋滞や事故などの課題解決を目的として、福島北道路の事業化に向けた調査を進めています。今年度は地域の皆さま方に、当該調査区間における課題等についてご意見を伺う予定としています。  これら社会資本の整備により『安全・安心で活力と魅力ある地域づくり』に貢献してまいりたいと考えておりますので、皆さま方のご理解とご協力を引き続きお願いいたします」  

  • 【福島県石油商業組合】中村謙信理事長インタビュー

     なかむら・けんしん 1960年生まれ。明治大卒。会津日石販売㈱代表取締役。2020年6月から福島県石油商業組合理事長を務める。  ――組合の主な取り組みについて。  「業務は多岐に渡りますが、一番の目的は県内の石油の安定供給です。中でも、災害時にはどのルートから的確に供給できるかが大きな課題となってきます。過去の震災において、建物の倒壊があった中、SS(ガソリンスタンド)は構造上、設備の損傷は少なかったものの、従業員も被災しており、なかなか人が集まらず営業がままならないケースや、一般の方や緊急車両を含め多くの方々が給油されたことにより、在庫の燃料が尽きて供給できない事態に見舞われるケースがありました。SSは大元の供給があって初めてお客様に燃料を供給できるので、そうした緊急事態の際、組合は各方面から情報を集め、行政との橋渡しの役割も担うので、平時だけでなく、災害時の安定供給を担うのが当組合の大きな役割であると考えています」  ――物流業界の「2024年問題」が課題となっていますが、石油業界への影響は。  「石油を運搬するタンクローリーのドライバーの労働環境は決して良好とは言えません。タンク容量が限られている中で効率良く運ぶためには、タンクに8割~満タンを入れることが不可欠ですが、近年は効率追求のため計画配送が主流で、各SSで少量のロットで配送してほしくても元売りから受け付けてもらえない実情があります。とはいえ、少量ロットでの配送は仕入れ単価が高くなる問題もあります。加えてトラックドライバーの時間外労働の上限規制、燃料自体の単価高騰など様々な問題が混在し、かなり複雑な様相を呈していると言えます」  ――水素ステーションの設置が進んでいます。  「水素ステーション設置のコストの高さに対して水素自動車の需要は伸びておらず、商売としてはまだ成り立っていないのが現状です。今後、水素自動車が普及していけば水素ステーションの増加は期待できますが、いまのところ見通しは立っていません」  ――今後の重点事業について。  「全国石油商業組合連合会ならびに当組合では、『満タン&灯油プラス1缶運動』を展開しています。これは車の燃料を満タンにし、灯油も1缶多めに備えておくことで、災害時のトラブル回避を呼び掛けるものです。先日の能登半島地震を見ると電気が寸断されて暖が取れない状況が起きていますが、石油は独立性、可搬性に優れたエネルギーですので少量であれば自家用車でも運搬ができ、車内暖房も利用できるので、災害時における利点は大いにあると見ています。  また、近年は合成燃料の開発も進んでおり、二酸化炭素の排出抑制に加え、既存のSS設備をそのまま利用できるので、導入コストを抑えることができます。  そうした中で、石油も含めたエネルギーが選択可能な社会になっていけばと考えています」

  • 【相馬商工会議所】草野清貴会頭インタビュー(2024.2)

     くさの・きよたか 1946年生まれ。東京電機大学卒。草野建設代表取締役会長。2013年から相馬商工会議所常議員を務め、16年11月から会頭。現在3期目。  新型コロナウイルスは徐々に収まってきたが、円安、物価高、人手不足の影響は深刻さを増している。インバウンドで賑わう首都圏や有名観光地とは異なり、地方経済の回復はまだまだ遠い。加えて相馬市は、二度の福島県沖地震による被害からも完全に立ち直っていない。地元経済界の現状と今後を相馬商工会議所の草野清貴会頭に聞いた。 災い転じて福となるよう新たなことに挑戦していきたい。  ――新型コロナウイルスが昨年5月に5類に移行しました。  「昨年から祭りやイベントなどを従来通り実施していますが、コロナ前と比べても大盛況でした。スポーツ合宿で市内を訪れる人の数も戻っています。  コロナの影響を大きく受けた飲食店や宿泊業などは回復傾向にあります。飲食店は店ごとに差はありますが、コロナ前の7~8割まで回復しています。ただ、昨今の物価高を価格転嫁できておらず、それが雇用に支障を及ぼしており、経営は未だ不安定です。宿泊業は、人流は回復しているものの地震被害の復旧が完了済みの所とこれから建て替えを行う所があり、格差が見られます。地域全体では回復に至っておらず、イベントが行われても市内に宿泊できる場所が少ないのが現状です」  ――2021、22年に発生した福島県沖地震の影響は。  「地震で半壊以上となった市内の建物は2621件、うち公費解体は1176件に上ります。会員事業所も多くが被災しましたが、国・県に要望してグループ補助金が適用され再開に至った所もあります。しかし比較的大規模な宿泊施設はこれから着工となる所もあり、全体的に回復したとは言えません。  地震被害からの回復を目的に県内一斉に行われた宿泊県民割では、管内の宿泊施設の復旧が遅れたため、県に要望し『県民割相馬版』を実施しました。ほかにも15%割増プレミアム商品券や飲食マップ作成、ほろ酔いスタンプラリーや推奨物産品発掘事業『相馬逸品』など、地域経済回復のための事業に取り組んできました。  今後も行政、観光協会、漁協、農協など各種団体と連携し、地域経済浮揚に向け努力していきたい。また事業所に寄り添い、それぞれが抱える課題には伴走型支援を行うなど経営改善普及事業を積極的に進めていきたいと思います」  ――円高・物価高が大きな問題となっています。人手不足や後継者不在も深刻です。  「8割を超える事業所が異口同音に『物価高に対する価格転嫁ができず利益を見いだせない』『賃上げの意思はあるが余力がない』と述べています。中には『高齢化で廃業を検討せざるを得ない』などの声もあります。建設業や運送業からも『人手不足と資材・燃料高騰で業績が低迷している』との声が聞かれる中、4月からは運送業で年間残業時間上限960時間の規制が始まるため、業界の縮小も懸念されます。ただ一方では、価格転嫁をできている事業所もあり『新たなサービスや付加価値を付けて対応している』という意見も少なからずあるので、全体に波及させていきたいと思います。  後継者問題は、特に小規模事業所では深刻に捉えており、事業継続を断念するケースが多い。会議所としては、そういった事業所に積極的に相談するよう呼びかけながら、経営アドバイザー的な役割を果たしていきたいと思います」  ――国・県に望むことは。  「原油、原材料、資材価格の急激な高騰に対応するため、経営環境が逼迫している中小企業・小規模事業所の実態に沿った事業コストの負担軽減支援策を求めたい。また、エネルギー価格高騰の影響を受ける中小企業・小規模事業所に対する総合的な支援および原油価格高騰の影響を抑えるための総合的な対策を迅速かつ的確に実施していただきたい。  また公共事業を受注する際、受注から納品までの期限が長い事業については、当初の見積もり額から値上がりすることが想定されるため再見積もりを認めるなど、受注側に配慮した負担軽減支援策を実施するようお願いしたい」  ――昨年、福島第一原発で処理水海洋放出が行われました。  「幸い、管内で大きな影響は出ていません。日本商工会議所の小林健会頭が全国に呼びかけた『常磐ものの活用促進』により各地から多くのアプローチがあります。当会議所でも水産加工事業者と連携し情報発信を行っており、今後も地元水産物のPRに努めていきます」 人気を集める「福とら」  ――相馬沖で捕れる天然トラフグ「福とら」が人気を集めています。  「『「福とら」泊まって、食べてキャンぺーン』を展開中ですが、お陰様で大変好調です。『福とら』を取り扱う店舗も11に増えていますが、さらなる拡充に努めていきたい。また『福とら』との相乗効果でカレイやヒラメの人気も高まっており、直売所・浜の駅松川浦には週末になると多くの観光客が訪れています。 一方、課題としては他県に比べて水産加工品が少ないので、以前からアオサの加工品などの開発に取り組んでいます。アオサは健康食品として注目されており、現在四つの加工品が発売されています。今後もさらなる加工品開発に取り組んでいきたいと思います」  ――今年度取り組んでいる事業について。  「この間、相馬駅東改札口設置をJR東日本に要望してきましたが、常磐線を管理する水戸支社からは前向きな回答をいただいています。東側には法務局があり、以前から開発のための土地もあって、ようやく東口開発が進むと思います。  東北中央自動車道の開通により中通り方面とのアクセスは格段に向上しましたが、県立医大附属病院への救急搬送には伊達桑折ICで下りなければならず、さらなるアクセス向上が求められます。そこで、国道115号の改良を県に要望していますが、当会議所だけでなく原町、福島、会津若松、会津喜多方の各商工会議所や各種商工団体も加わったことで県にも前向きに検討していただいているので、引き続き改良実現を目指していきます。  また、相馬野馬追の開催時期が今年から5月に変更されます。周知活動はもちろんのこと、これまで以上の誘客につなげられるよう取り組んでいきたい」  ――最後に、今後の抱負をお聞かせください。  「観光をさらなる産業の柱とすべく『福とら』を生かした『新たな食文化の創造』『豊かな海と城下町の歴史を生かした交流事業』『音楽によるマチ起こし事業』など、これまでの基幹事業に文化事業を幅広く加え、新たなアイデアを駆使しながら交流人口拡大に取り組んでいきたい。近年多くの災いに襲われていますが、転じて福となるよう新たなことに挑戦していきたいです」

  • 【棚倉町】湯座一平町長インタビュー(2024.2)

     1961年生まれ。福島大経済学部卒。2012年9月の棚倉町長選で初当選。2020年8月の町長選で無投票での3選を果たした。 健康づくり、教育、観光・農業振興を推進する。  ――昨年5月8日から新型コロナウイルス感染症が2類相当から5類に引き下げとなりました。町内の状況はいかがでしょうか。  「5類感染症への移行後は、各種イベントやさまざまな活動が再開されるなど、ようやくコロナ禍前の日常生活に戻ってきたと実感しています。コロナ感染が落ち着きを見せる一方で、原油高、物価高騰による影響が地域経済に影を落としている現状です。本町ではこの間、町民の生活支援や経済対策の一環として、昨年8月と12月に『たなぐら応援クーポン券』を発行し、町内における消費喚起ならびに地域経済の活性化に努めました。  また、『一番お金がかかるのは高校生』との声を踏まえ、新たに『高校生等生活応援給付金』事業を展開し、1人当たり年6万円の給付を実施しながら支援に努めました」  ――2024年度の重点事業について。  「まずは健康づくりです。『健幸なまちづくり』をスローガンに老若男女が希望と生きがいを持ち、健康で活動的に暮らせるまちの実現に向け取り組みます。妊娠期から寄り添った伴走型支援に努め、子育て世帯の孤立・孤独化を防ぎ、子育てに寛容な育児リテラシーを醸成し、『産み育てやすい』『子育てが楽しい』と思えるまちづくりを目指します。また、健診受診率の向上をはじめ、『歩く』健康づくり事業を推進し、健康寿命の延伸を図ります。  次に教育です。引き続きキャリア教育を推進するとともに、タブレットを用いた学習教材の活用やICT環境の整備を行い、一人ひとりに合わせた学習を進めます。今年度は新たに、子どもの夢やチャレンジを支援する『こども未来応援事業』を実施していきます。  観光振興では、2025年度に棚倉城築城400年の節目を迎えるにあたり、プレイベントの実施をはじめ、さまざまな観光施策を展開し、交流人口の拡大を図ります。また、棚倉町歴史的風致維持向上計画に掲げる棚倉城跡周辺道路整備や棚倉城下道路整備、馬場都々古別神社門前環境整備を進め、観光資源の高質化に注力します。  農業振興では、推奨園芸作物推進事業として実施するイチゴ、トマト種子補助にキュウリを加え、農家の皆さまが安定的に経営できるよう県やJAなどと連携強化を図り経済的・技術的な支援を継続して実施します。また、農地利用地域計画を策定します」  ――新年の抱負を。  「本年は辰年です。龍が天に昇るような勢いのある1年となるよう、町民の皆さまとともに『チームたなぐら』をさらに上昇気流に乗せたいと考えますので、皆さまのお力添えを賜りますようお願いいたします」

  • 【小野町】村上昭正町長インタビュー(2024.2)

     1955年生まれ。日大東北工業(現・日大東北)高卒。2004年から小野町議を4期務め、その間、議長を歴任。2021年3月の町長選で初当選。 健康で安心して生活できる町を目指す。  ――間もなく県道36号小野―富岡間が全線開通します。  「全線開通により双葉郡へのアクセスの利便性が増し、小野ICは双葉郡と県中、県南を結ぶ交通の要衝となることから、その優位性を生かしたまちづくりに取り組みます。人、物、情報を還流させ、関係人口や交流人口を増やすため、小野IC周辺近くの国道349号沿いに新庁舎の建設を計画しています。また、防災拠点やターミナル的な物流関係施設、さらには大規模店舗などの誘致活動を進めていこうと考えています。さらに、小野高校が数年後には統合されますので、現在、空き校舎や施設の有効活用などの検討を進めていますが、ICからの導線も考える必要があり、街中の活性化も含めた『(仮称)インターチェンジ未来タウン構想』を策定しているところです」  ――いまお話にあった新庁舎整備について。  「令和9年の開庁に向けて計画を進めており、今年度内に用地交渉を終え、来年度に基本設計に取り掛かる予定です。新庁舎は、防災機能や保健センター機能を併せ持つ複合施設となります。災害時には、防災機能を集約した防災管理室で災害対応にあたるほか、町民の皆さんの避難所となるような設備の充実も図ります。さらに、新庁舎周辺に消防署小野分署や防災公園を設置することで、防災機能の強化を図りたいと考えています」  ――児童館の建設を進めています。  「少子化が進む中、未来を担う子どもたちの健全な育成は、重要な政策課題と捉えています。そのため、廃園となった保育園・幼稚園の跡地に、子どもの活動場所として児童クラブや放課後子ども教室、一時預かり保育などの機能を備えた『(仮称)おのまち児童館』の建設を進めており、令和7年度の開所を目指しています。子どもの安全な遊び場の整備に加え、子ども食堂なども開設することとしており、保護者の皆様からは大きな期待が寄せられています」  ――今後の抱負。  「町の現状をしっかり捉え、持続可能なまちづくりを町民の皆様と進めていきます。また、後継者不足などから農業離れが顕著になっており、農林業改革は待ったなしです。耕作放棄地の活用策について、大学機関やJAなどの協力を得て検討していくほか、新規就農者や研修制度の充実を図り、農家民泊や農家レストランなどの副業についての研究にも取り組みます。そのほか、起業家育成の支援体制整備、外国人との多文化共生の推進、発酵のまちづくりなどにも取り組みます。現在住んでいる方々が、健康で安心して生活できる町を目指し、あらゆる政策を講じていきます」

  • 【鏡石町】木賊正男町長インタビュー(2024.2)

     1956年11月生まれ。須賀川高卒。鏡石町総務課長、教育課長兼公民館長、税務町民課長などを歴任。2022年5月の町長選で無投票初当選。 人口減少対策の受け皿をつくっていきたい。  ――昨年5月から新型コロナウイルスが5類感染症に移行されました。  「5類移行に伴い、町内の商工業者の経済活動にも明るい兆しが見え、制限されていた各種イベントもコロナ禍以前と同じ形で開催することができたので、賑わいが戻ってきたと実感しています」  ――昨年10月には健康福祉センター「ほがらかん」がオープンしました。  「町内の保健福祉施設が老朽化していたことに加え、類似施設の集約や、多目的に使用できる施設にすることを目的に整備を進めてきました。コンセプトの1つに『健康な笑顔が集う場所』があり、安心・安全なまちづくりに向けた福祉避難所としての機能も併せ持った施設となっています。オープンから3カ月でおよそ6000人の方々にご利用いただいています。館内には未就学児を対象とした子育て支援施設もあるため、子育て世代の多くの方々にご利用いただいています。  今後は各種イベント等での利用に加え、先日発生した能登半島地震のような非常時への備えとして、屋外街路灯の下に電源コンセントを設置してあるので、車で避難された方の電源確保やマンホールトイレ、シャワー室の設置など、災害時における一時避難所としての役割が見込まれます。近年は自然災害が多発しており、令和元年東日本台風の際、本町では成田地区の浸水被害があり、そうした経験も踏まえて利活用していく考えです」  ――今後の抱負。  「今年は駅東土地区画整理事業に注力したいと思っており、昨年第3工区の町の保留地の分譲が完了しました。個人所有の土地についても交渉を進めており、少しでも多くの方々に家を建てて住んでいただきたいと考えています。人口問題研究所が発表した2050年の推計によれば、鏡石町は現在の人口から約3000人減の9333人との結果でした。他自治体に比べて本町は人口減少率が低く、年少人口の比率が高いほか、高齢化率も低いので、今後を見据えて人口減少対策の受け皿をつくっていきたいと考えています。  遊水地整備事業についても、用地買収や宅地・建物の補償交渉が具体化しており、その中でも集団移転を希望する方と個人で移転する方がいますから、各々の希望に沿う形で地権者の皆様に寄り添って取り組んでいきます。  就任以来3つのS(スマイル・スピード・シンプル)を基本に町政執行に当たってきましたが、それには町の持っている情報を速やかに発信し、町民の皆様からの信頼を得ることが不可欠です。今後も町民の皆様の信頼を裏切ることなく取り組んでいきます」

  • 【星北斗】参議院議員インタビュー(2024.2)

     ほし・ほくと 1964年郡山市生まれ。安積高校、東邦大学医学部卒。医師。医系技官として旧厚生省に入省。退官後の現在、星総合病院理事長。2022年の参院選で初当選。  派閥の政治資金パーティー問題で大揺れの自民党。国民の視線が厳しさを増す中、岸田文雄総裁を先頭にどこまで改革が進むのか注目されるが、そうした状況を本県選挙区選出で無派閥の星北斗参院議員(59)=1期=はどう見ているのか。政治不信を解消する方策と合わせ、自身が今後とるべき行動を率直に語っていただいた。  ――初当選から約1年半が経過しましたが、この間を振り返って。  「昨年の通常国会では何度も質問に立たせていただきました。いくつか印象に残っているのは、感染症関連の法案審議で、私が経験したコロナ対応などをベースに質問を行い、それが制度に反映されたことと、福島復興再生特措法関連の審議で、特定帰還居住区域に帰ってきた被災者が農業を生業としている場合、農地だけでなく水路、取り付け道路、周辺山林の一部も農業に必要であれば除染の対象になるという明確な答弁をいただけたことです。これらの質問は医療従事者や被災者など現場から寄せられた声がヒントになりました。県議や県幹部の皆さんに相談したり、情報をいただけたりしたことで中身の濃い質問にすることもできました。一回生ではありますが、県民のお役に立つ仕事ができて嬉しく思っています。  一方、昨年の臨時国会では厚生労働委員会理事として、野党の先生方との交渉の一端を担わせていただきました。人脈が広がった点では非常に良い経験でしたが、半面、ほとんど質問できなかったので、1月26日から始まる通常国会ではあらためて質問に立ちたいと考えています」  ――派閥の政治資金パーティー問題に国民は憤っています。無派閥の星議員はどう見ていますか。  「私は派閥のプラス面とマイナス面を見極めたいと考え、入会のお誘いはいただいたもののこの間、無派閥の立場をとってきました。そうした中で今回の問題が起こり、現在は無派閥の先輩議員や一回生議員らと『無派閥や一回生だからこそできること・やるべきことがあるのではないか』と議論を重ねています。  派閥と聞いて真っ先に思い浮かぶのはパーティーですが、大臣や副大臣など人事の推薦が行われたり、内規で定めている定年制が有名無実化されているといった報道も見聞きします。そうした中で、私のような一回生が口を挟んで大丈夫なのかと心配する声もあれば、黙って見過ごすのか、無派閥だからこそはっきり物を言うべきではないかという声もいただいています。私は県民に選んでいただき、県民の負託にこたえるため参院議員になりました。であるならば、言うべきことは言わなければならないという立場から、今の自分に何ができるのか先輩議員らと具体的な行動に移すための準備を進めているところです。  私は社会人として三十数年過ごし、その間にはグループに属したり、今現在グループを率いる立場にもいます。とかく政治の世界は特別と言われますが、だからこそ国民が政治から離れていっている面は否めないと思います。私は政治家の保守本流ではありませんが、長く社会人として過ごしてきた自分をベースに、投票してくださる皆さんの立場に立った行動をとっていきたい」  ――何に手を付け、それによってどう変わったかがはっきり見えないと国民は納得しないと思います。  「岸田総裁はパーティーや人事推薦制度をやめる方針を示していますが、派閥そのものをなくすべきという意見もあります。一方で政策集団としての派閥は必要という声もあります。私は参議院なので普段、衆議院の先生方と会うことがなく、厚生労働委員会以外の先生方と接する機会も少ない。そういう意味では、派閥は人の輪を広げるのに有効だし、政治家としての心構えなど先輩議員から教えていただけることも多々あるので、まずはお金の問題を決着させ、人事推薦制度を改めるなどしてから今後の派閥のあり方を考えるべきだと思います。個人的には派閥=悪という考えは持っていません」  ――自民党の支持率が下がるのは当然ですが、野党の支持率も上がっていません。国民の政治そのものに対する不信を政治家は深刻に受け止めるべきだと思います。  「正直〝場外乱闘〟が多すぎると思います。Xやユーチューブで『説明不足だ』『無知だ』といった発信をよく見かけますが、非常に子どもっぽく感じるし、多くの国民は呆れているのではないでしょうか。  政治家が議論を闘わせる場は国会であり〝場外乱闘〟は慎むべきです。議論の中身も週刊誌報道をあげつらうのではなく、この法律・予算をどうしていくのか国民生活に資することを論じるべきです。さらにテレビ中継が入る予算委員会も国民受けを狙ったパフォーマンスではなく、その名の通り予算をめぐる真摯な議論に努めるべきです。ただ誤解されては困りますが、皆さんが見る機会の少ない各種委員会では専門性の高い議論が行われていることを付言したいと思います。  もう一つ大切なのは、質問や議論の中身を国民に知っていただく努力を国会議員自らがすることです。例えば、ネットで私の名前を検索すれば質問している場面が動画で全て出てきます。過去の議事録も検索できます。それを全ての国民に見ていただくことは不可能だが、国会議員がぜひご覧くださいと積極的に発信すれば、興味のある国民は見ると思うのです。私も、そうやって見ていただいた医療従事者から『いい質問をしてくれてありがとう』『動画を見るまでどんな活動をしているか分からなかった』と言っていただき、一定の手ごたえを感じています。マスコミに報じていただく場合もありますが、切り取られた報じ方をされると無用な誤解を招くことがありますからね。  国政報告も、大勢集めて派手なパーティーを開くのではなく、十数人のミニ集会を各地で行えば、私の考えを理解していただけると同時に、皆さんの思いに直接触れることができます。お互いの絆も深まります。政治を身近に感じていただかないことには信頼回復にはつながらないと思います」  ――新型コロナが収束してきた中で、今後はコロナで得られた知見を新たな感染症対策に生かす取り組みが求められます。  「例えば今回の能登半島地震でも避難所に感染症チームが派遣され、コロナの知見を生かした取り組みが展開されています。医療機関も次に何かが起きた時、自身の役割を都道府県と事前に協議することが法律に明記されました。  さらに感染症の専門家が不足した経験から、県独自に必要な予算を確保し、昨年9月から感染症に特化した看護師の育成事業が県主導のもと民間病院で始まっています。福島方式とも呼べるこの取り組みは、全国から注目を集めています」  ――最後に県民にメッセージを。  「私のモットーは、特定の誰かのためではなく、私を国政に送り出してくださった県民の皆さんを思いながら議員活動するということです。そうした姿を知っていただくためにも、これから多くの皆さんと対話をさせていただきたいと思います」

  • 【亀岡偉民】衆議院議員インタビュー(2024.2)

     かめおか・よしたみ 1955年生まれ。作新学院高、早稲田大卒。現在5期目。この間復興副大臣などを歴任し、現在、政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会委員長を務める。  自由民主党福島県連は昨年11月に総務会を開き、新会長に亀岡偉民衆院議員(68、5期、比例東北)を選出した。内閣支持率の低迷が続き、派閥の政治資金パーティーの裏金疑惑も浮上する中で、どのように信頼回復を果たしていく考えなのか。亀岡衆院議員に今後の抱負について語っていただいた。(取材日・1月6日)  ――自民党県連の新会長に就任した経緯と新会長就任の抱負について。  「昨年10月に県議選を終えたのを機に、県連内で体制を新しくしようとの声が上がりました。そうした中で、前会長の根本匠先生(衆院議員、9期、福島2区選出)から『よろしく頼む』と言われて、お受けしました。県議選の時点で有権者から『増税』と言われるなど、政権与党へのイメージが悪かったのは事実であり、自民党がこれから変わるというイメージを持たせる必要がありました。  抱負は、これからいかに自民党の信頼を取り戻すか、ということに尽きます。『自民党だから応援する』ではなく、『こんな取り組みをしている自民党だから応援したい』と言ってもらえる党にすることが大事です。私たちは『原点に立ち返ろう』と呼びかけ合い、『地方から信頼を得られる自民党にしていくために、いま地元で何をすべきか一緒に考えていきましょう』と党内、県連内で話し合っています。  昨今の政策は大都市中心、大企業中心に偏りがちな面がありますが、地方は中小企業、個人事業主の方が多い。地方から景気を回復させるためには、この方たちを助ける必要があります。与党としてスタートアップ事業などに予算を付けているので、これら事業を活用していただき、実績を積み上げることで、信頼回復につなげていきたいと考えています」  ――衆院選小選挙区の区割りが改定されました。亀岡議員が地盤とする福島1区は福島市、二本松市、伊達市、本宮市、伊達郡、安達郡という構成になります。新たに地盤に加わった地域の課題解決に向けて、どう貢献していく考えですか。  「本宮市は令和元年東日本台風で被害を受けましたが、早急に復旧して中心市街地の開発に取り組んでいます。来春には全国初となる24時間営業の水素ステーションが開設される予定で、最先端を走っています。商工団体と行政が連携を密にし、官民一体で課題解決に取り組んでいる印象があります。同市の高松義行市長と、隣接する大玉村の押山利一村長からは『人口増を目指す』という積極的な目標を聞いて感嘆しました。市町村の取り組みを国がバックアップしたらもっと効果を出せるのではないか、と希望が湧きました。  新たにご縁が生まれた地域ですが、父・亀岡高夫(元建設大臣、農林水産大臣)を知っている方も多く、とても温かい環境に置いていただいたと思っています。  ただ、選挙の区割りに関しては有権者の戸惑いを感じます。政治家はその選挙区の代表として国会に行っているのだから、機械的に区割りを決めるのではなく、まず当事者である政治家の意見を聞くべきだったと思います。1票の格差が2倍以上で違憲状態となるから是正しなければならないとのことですが、大都市と地方の不均衡状態を考えると、人口に基づく区割りには違和感を抱きます。『地方と大都市の1票の格差は違憲ではない』と明記するよう、憲法改正を働きかけるのが地方選出国会議員としての責務と考えています」  ――今後の新型コロナウイルスへの対応と、アフターコロナを見据えた戦略についてうかがいます。  「コロナ禍で商売が立ち行かなくなる人が多く出ました。与党自民党では新たな分野へのチャレンジやスタートアップを支援する事業に予算を付けてきたので、今こそ活用してほしい。国が商売の継続を支援し、地方から新たに起業する流れが活発になってほしいですね。  借金返済を迫られると、再起しようとする気持ちを失ってしまうのは事実です。そのため金利の据え置きを再延長できる仕組みを検討して、返せる時に返してもらうやり方で、事業者の方には経営に専念していただき、地方の経済を立て直していくことが大事だと思います」  ――東京電力福島第一原発で増え続ける放射性トリチウムなどを含んだ水(処理水)の海洋放出が始まりました。放出後の本県の風評問題についてどう捉えていますか。  「結果的に、福島県沖の水産物の値段は下がりませんでした。日本中の方に買い支えていただいたおかげです。一方で、県内では風評の影響でインバウンド客が1人も来なくなった地区があり、観光業には大きな打撃となりました。単なる風評被害ではなく『政治的風評被害』と呼ぶべき状況になっています。  やめさせるには風評の元となっている処理水のタンクをどうにかしなければなりません。もし、福島県民がこぞって『タンクを全部なくさない限り風評はなくならない』と考え、双葉町や大熊町のために処理水放出を受け入れていたら、国内で反対の声が上がることはなかっただろうし、諸外国が反対できる状況にもならなかったのではないでしょうか。県内で反対の声が上がったから、日本を批判するための外交に使われた感があります。反対ではなく、どのようにして、タンクが置かれている双葉町、大熊町を守り、復興につなげていけるかが重要だと思います。反対のための反対は止めるべきだし、前に進むためにも、県民の理解を得られるように努力を続けていくしかありません」  ――自民党安倍派・二階派における政治資金パーティーをめぐる裏金問題の影響で、岸田内閣の支持率が低下しています。  「県連会長として、県内の自民党国会議員に聞き取りしましたが、裏金作りは誰も行っていません。パーティー券販売分の一部を受け取る仕組みが慣例としてあり、『収支報告書に書かないでくれ』と言われていたのでどう記載するか会計担当者が苦慮していた実態はありましたが、裏金にした人は1人もいません。  裏金が何を指すのか明確でないままに『裏金問題』と報道されたダメージはものすごく大きいです。『裏金』と言われたものは慣例に起因し、記載が曖昧だったためではないでしょうか。政治資金規正法ができたときに、古くからの慣例を切り替えられなかったかことが問題につながっていると捉えています。  これから検察がどのような捜査をするかは分かりませんが、『裏金』と事実でないことを報道するとしたら大きな問題だと思います。ただ、政治家としては『駄目なものは駄目』としっかり正していきましょうという思いがあります。早く襟を正すことが大事だと考えています」  ――有権者へのメッセージを。  「異常な物価高の中、国民の皆さんに安心してもらえる環境をつくることが私の役目だと考えます。バラマキではなく、理解を得ながら『一緒に頑張りましょう』と並走できる体制で取り組まなければなりません。国民の皆様にはもう一度元気を持ってもらえる政策をつくりながら、政治も進めていくことを示していきたい。地方から経済再生につながる取り組みを進めていきます」

  • 【福島県建設業協会】長谷川浩一会長インタビュー(2024.2)

     はせがわ・こういち 1962年生まれ。法政大卒。堀江工業(いわき市)社長。2019年5月に県建設業協会会長に就き、現在3期目。  ――新年の抱負について、お聞かせください。  「令和6年能登半島地震により被害に遭われた皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。被災地の1日も早い復興を、心よりお祈り申し上げます。  近年、自然災害の大規模化やインフラの老朽化が進む中、危機管理を担う地域建設業の役割は一層重要度を増しております。災害から県民の生命・財産を守っていくためには、我々が『地域の守り手』としての責務をしっかりと担えるよう、組織体制と経営基盤の一層の強化を図っていかなければなりません。  本年も県土の復興と建設産業の発展に全力を尽くしていきたいと考えています」  ――建設業においては、時間外労働の上限規制が適用され、労働環境の変革が求められる「2024年問題」が課題となっています。この問題にどのように取り組んでいくお考えですか。  「本年4月からは時間外労働時間の削減と週休2日制も含めた働き方改革を推進しなければなりません。本協会では研修会などを通じ、会員の働き方改革を支援してきましたが、課題も残っています。発注者には、施工時期の平準化、適正な予定価格の設定及び工期はもちろん、書類の簡素化や工事検査の効率化、建設DXの活用などを要望しながら、受発注者が連携して、あらゆる観点から労働時間の削減に向けた取り組みを推進していきたいと考えています」  ――2024年度の重点事業について。  「建設業界の働き方改革が問われる1年になるのではないかと考えています。  労働時間の削減に向けて課題となっていた問題点が現場での施工を通じて、あらためて浮き彫りになってくると考えています。会員の意見を集めながら課題解決に向けた取り組みを推進していきたいと考えています。  一方で、昨今の自然災害の発生を踏まえると、本年も想定外の災害が発生することが懸念されます。現在進められている防災・減災、国土強靭化関連事業を円滑に推進することで、災害に強い県土づくりに貢献するとともに、災害発生時には、県の『指定地方公共機関』としての役割が果たせるよう連絡体制の強化や、大規模災害時の広域的支援に備えた資材備蓄の充実など、災害に備えた組織強化に努めていきます。  また、担い手の確保・育成に向けては、新4Kの魅力を積極的に発信していきます。昨年は職業体験イベントを通じ、小中学生やその保護者に対して『建設業の面白さや楽しさ』を伝えることができました。今後も幅広い世代に対して、入職促進に向けた広報活動を展開していきたいと考えています。  人材の育成についても、土木初任者研修をはじめとした各種研修を開催するなど、会員企業の技術者の育成を継続的に支援していきます」

  • 【福島県商工会連合会】轡田倉治会長インタビュー(2024.2)

     くつわた・くらじ 1942年生まれ。岩瀬村商工会・岩瀬商工会の会長を6期務める。2012年5月から現職。現在4期目。2021年6月から全国商工会連合会副会長。 伴走型支援で経営安定化を後押し  ――コロナ禍が収束に向かう一方で、円安、原油高、物価高騰による地域経済の低迷が顕著となっています。会員事業所の現況についてうかがいます。  「新型コロナウイルス感染症の法的位置付けが昨年5月8日以降、季節性インフルエンザと同等の5類に引き下げとなって以降、人の動きも戻ってきたように実感しています。また、インバウンドの回復も相まって会津地域など観光地がある商工会地区などでは多くの来訪者で賑わっているようです。  しかし、本県の商工会地区の多くは農村・山間部にあるため、都市部に比べ少子高齢化による人口減少によって消費需要が低迷している現状にあります。  また、コロナ禍における『ゼロゼロ融資』の返済時期も重なり資金繰りに苦慮している事業者も出始めています。さらには原油高、物価高、特に『人手が足りない』という悩みの声が数多く聞かれ、事業継続にも支障をきたすなど、非常に心配しています。  これらを踏まえ、当連合会では、事業環境の変化に対応し、生産性向上に向けた経営改善の取り組みに尽力します。具体的には、人手による労力を設備や機械で補完し、デジタル化、人工知能(AI)等技術を活用することで経営効率の向上を図っていきます。今後は、国・県などにおける助成金の活用を含め、より一層の相談支援体制の強化に努めていく考えです」  ――2023年10月から、消費税の仕入れ税額控除の方式としてインボイス制度が導入されました。適格請求書発行事業者になると年間売り上げが1000万円以下であっても免税事業者にはならず消費税の申告義務が生じます。連合会としての対応と、会員事業所への影響についてうかがいます。  「小規模事業者、特に個人事業者の場合、事務処理量の増大に加え、新たな税負担が発生することから、事業者の中には廃業を考えるケースも見られ、看過できない状況にあります。2月、3月はインボイス制度導入後初となる確定申告を迎えますが、混乱が生じる可能性もあり注視しています。  当連合会の上部組織である全国商工会連合会として、同制度施行後の経過措置も含め、中小・小規模事業者に対し複数年度にわたり支援する万全の体制構築の実現に向け、組織一丸となって要望活動を展開しています。この間、商工会職員は、同制度の開始前から現在に至るまで懇切丁寧に説明を重ねてきましたが、確定申告を控える中、これからの申告業務などに対しても事業者に寄り添った支援に注力しなければならないと考えます」 ECサイトが好評  ――震災・原発事故からまもなく13年を迎えます。原発被災地における商工会の現況についてうかがいます。  「被災地域における各商工会の事業再開率は久之浜町(いわき市)100%、広野町97・1%、楢葉町92・4%(地元再開率75・8%)、富岡町92・9%(同54%)、大熊町77・8%(同25・3%)、双葉町73・9%(同25・4%)、浪江町77・3%(同36・3%)、小高(南相馬市)67・3%(同41・8%)、飯舘村73%(同41・7%)、川内村96・4%、葛尾村100%、都路町(田村市)97・2%、川俣町100%、鹿島(南相馬市)96%となっています。  特に、原発事故の被害が甚大だった大熊町、双葉町では、特定復興再生拠点区域内の避難指示が解除されましたが、医療機関の施設再開に年数を要すことから、帰還に躊躇してしまうことがあるようです。当連合会でも、引き続き被災自治体と連携を図りながら、住民と事業者の帰還はもちろん、避難先での事業継続と安定を支援していかなければならないと考えます」  ――2024年度の重点事業と活動方針についてうかがいます。  「アフターコロナを見据えた経営支援として、ECサイト『シオクリビト』による通販事業の充実・強化を図っていきます。今般『売りはモノではなくヒト』をコンセプトに、福島の面白い生産者100人の思いを掲載した『シオクリビト図鑑』を発行しました。同事業は大変好評なので、今後もさらに充実・発展させながら、消費喚起やビジネスチャンスにつなげていきたいと考えます。また、懸案である事業承継をはじめ、創業支援にも鋭意努めていきます」  ――今後の抱負を。  「当連合会は、徹底した伴走型支援を大きな柱に据えた支援を展開しています。職員が積極的に会員事業者に出向くスタイルを貫徹するなど、しっかり寄り添った支援体制を構築しながら中小・小規模事業者の経営安定化・事業継続を強力に後押ししています。おかげさまで『商工会の職員は非常に良くやってくれている』、『よく指導支援していただき助かっている』との声も寄せられています。今後もこの方針を堅持しながら会員事業所から信頼される商工会を目指していきます」

  • 【福島県中小企業家同友会】齋藤記子会長インタビュー(2024.2)

     さいとう・のりこ 1952年生まれ。(株)cluster取締役会長。福島県中小企業家同友会会津地区会長、同副理事長、同代表理事を経て、2023年4月から現職。 組織強化と会員との信頼構築に挑む  ――新会長に就任して1年が経過しました。  「北海道・東北ブロックでは女性初の会長職ということもあり、重責に押しつぶされそうなときもありました。ただ、藤田光夫前会長に推薦していただいたからには、『何らかの役に立ちたい』という思いでやってきました。時間が経つにつれて、私自身の役目も見えてきて、『決断』、『責任』、『調和』が大事だと思うようになりました。物事についての判断はそれぞれの支部長や代表理事にお任せしています。私はそういった情報を受けて、同友会としてどのような形で進むか、あるいは取りやめるかの『決断』をすることが役目だと思っています。また、同友会では、『深める、進む、新しい』の3つのシンカというスローガンを掲げていますが、理事会などの会合で1人の強い意見で物事が決まっていくのではなく、それぞれが忌憚のない意見を言える雰囲気づくりに努めて『調和』を重んじるのも私の役目です」  ――県内経済の状況について。  「飲食業界をはじめとする中小企業の経営環境の厳しさについて、いろんな方面から話を聞いています。都会には大企業があって、人が多く集まってくるので、景気がよくなれば従業員に還元という形で、給料を上げることができるでしょう。ただ、地方の中小企業ではそう簡単にはいきません。多くの経営者が、日々の仕事に対し給料アップという分かりやすい形でモチベーションを上げたいと思っています。しかし、そのための原資がなければやろうと思ってもできません。どんな商売も単価を上げれば客が減るかもしれず、人口減少でそもそものパイが少なくなっている。そういったところが地方の中小企業の悩みだと思います」  ――同友会や会員の企業で新しい取り組み、頑張っている企業などあれば教えてください。  「会員が経営している喜多方市の橋谷田商店と荒川産業が、県内で発生した古紙を再利用したトイレットペーパー『フクメグリ』を開発し、コープあいづのスーパー全8店舗で売り出しました。こういった先駆的な取り組みを会員同士がコラボレーションしてできていることは喜ばしいです。会津支部では『食と農と工芸委員会』を設けており、さまざまな業種によるコラボレーションが実現可能となっていますが、そうした点は同友会の魅力でもあります」 会員2500名を目指す  ――物価高や燃料高騰など、常に変化が求められる時代ですが、企業や経営者に求められる資質とは何だと思いますか。  「同友会は全国的に『決して悪徳商人にはならない』との声明を出しております。個人的に重んじているのは『職業倫理』です。皆で同じ仕事をするときに、どういう気持ちで向き合うのか。具体的には『値段が高いのに製品の質が悪い』、『サービス単価が高いのに対応が良くない』とならないようにすることを心がけています。  私が経営しているのは福祉事業と介護事業なので、守秘義務を守ることや誠実さが求められます。スタッフは利用者さんに目を向け、管理者がスタッフに目を向けていれば、虐待などさまざまな問題も起きにくいと思っています。もっと言えば、刑事の勘ではないですが、最初の動作や言動でその人の性質は分かるものです。『この人に任せてはまずいな』と思えばすぐに担当から外れていただくなどの対応をしています」  ――今年の抱負を。  「引き続き同友会の組織強化を図っていきます。『支部の下部組織の地区会の規模を100人以内にする』ことによって、会員一人ひとりの顔が見える組織になり、退会者が出にくくなるというデータに基づき、組織改編を行っていきたいと考えています。区切り方としては、距離なのか、地区ごとなのか、というのは各地域の地域性に合わせて進めていきます。どういった改革を行っていくのか、また事業費をどのように運用していくかを具現化していけるよう引き続き取り組んでいきます。  また全体としては、会員が現在1861名ですが、将来的に2500名を目指していきます。そのために私が重要だと考えているのは、同友会事務局の立ち位置です。単なる事務ではなく一緒に創り上げていく『パートナー』だということを浸透させていきたいです。会員を増やすことや、新入会員へのフォローなどは、事務局の協力が欠かせません。また、業務や運営にどういった課題があるかを吸い上げるために、事務局員に対して面談を進めています。いろんな角度からの意見を聞いて、事務局とのパートナーシップを強化し、同友会の運営を行っていきます。  自分の身の丈を知っているので、背伸びせず、周りの方々に協力してもらいながら取り組んでいければと思っています」

  • 【白河商工会議所】鈴木俊雄会頭インタビュー(2024.2)

    すずき・としお 1947年生まれ。国立平工業高等専門学校中退。アクティブワン代表取締役。2013年から白河商工会議所副会頭、22年11月から現職。  新型コロナウイルスの感染拡大はひと段落したものの、円安や原油価格・物価高騰、人手不足により、中小・小規模事業所は厳しい状況に置かれている。インボイス制度や電子帳簿保存法への対応にも追われている。白河商工会議所の鈴木俊雄会頭(アクティブワン代表取締役)に管内の現状と今後の展望について語ってもらった。 課題に直面する会員事業所の自己変革・生産性向上を支援。  ――新型コロナウイルスが5類に移行しましたが、管内の現状は。  「特に影響が大きかったのは飲食業ですが、コロナ前の水準に戻りつつあります。イベントに関しては、昨年から白河だるま市が通常開催となりましたが、大勢の人出でにぎわい、今年は昨年を上回る見込みです。  一方で、各事業所が営業時間やスタッフ配置を見直して生き残りを図っていたところに急激に客足が戻ってきたので、飲食店は人手不足となり、大人数での宴会を断っている店もあります。運転手不足で帰りのタクシーや代行業者を探すのも一苦労の状況で、飲酒運転増加につながることが懸念されています」  ――円安や燃料高・物価高も企業経営に大きな影響を与えています。  「ロシアのウクライナ侵攻など外的要因もあるので、ある程度やむを得ない面があります。政府では原油・物価高騰に対応した補助金を設けたほか、取引先との取引適正化を図る『パートナーシップ構築宣言』を推進しています。会員事業所の中にも大手企業とのパートナーシップ宣言に着手したところがありますが、経費増分をすべて吸収する取引金額に設定するのはなかなか難しいと思います。  1月1日からは電子帳簿保存法の猶予期間が終了し、電子データは保存要件に従った形で保存することが求められるようになりました。インボイス制度すら対応できていない会員事業所も多い中、本業以外に対応しなければならないことがありすぎて付いていくのは容易でありません。当会議所としても会員事業所に寄り添いながらサポートしています」  ――中小・小規模事業所にとっては人手不足も大きな課題です。  「当会議所の管内には大手企業の工場が多く進出していますが、それらの企業は政府が掲げる賃上げ政策、働き方改革を忠実に実行しており、人手不足の中でもそれなりに従業員を確保しているように見えます。  問題は、経営的にそうした対策を講じる余裕がなく、大手企業に求職者を取られてしまう中小・小規模事業所です。当会議所で会員事業所にアンケート調査を行ったところ、新入社員の定着率は5年間で53%でした。新入社員の半分が、より良い条件を求めて、5年以内に離職していることになります。  政府は『成長と分配の好循環』を掲げ、賃上げ政策や働き方改革を進めていますが、賃上げは売り上げが上がり、利益が確保されて初めて実行できるもの。政府が掲げている方針は順序が逆なのです。無理やり賃上げすることでデフレから脱却できる可能性は生まれるかもしれませんが〝痛み〟は伴うでしょう。  加えてコロナ禍前後で経済構造が大きく変わってしまい、ビジネス形態や社会環境も様変わりしました。だからこそ中小・小規模事業所は現状維持でなく、生産性向上や自己変革を必須の課題として取り組んでいく必要があります」 人手不足解消に注力  ――会員事業所の人手不足を解消するための施策は。  「人手不足対策に関しては、就職を希望する高校生を対象とした就職説明会を続けています。また、進学で市外に出て行った学生が就職活動する際、無料通信アプリ『LINE』を使って地元企業の就職情報、地元情報にアクセスできる仕組みを作りました。『LINE』アカウントに登録した人には地元産の生活用品を贈呈しています。最近は学生の家族が登録するケースも増えています。  管内には製造業が多いですが、市では今後、研究開発拠点の誘致を目指しています。当会議所としてもそうした拠点が増えていき、多様な人材が集まることを期待しています」  ――今後の重点事業について。  「本年4月1日から『中心市街地活性化基本計画』が第4期目に入ります。中心市街地には白河市立図書館や白河文化交流館コミネス、マンションなどが建設され、他自治体からの視察者も多いです。  一方で中心市街地の課題となっているのは駐車場不足です。車社会の地方において駐車場が整備されていなければ、顧客が足を運ぶことはありません。商店街に並ぶ空き家・空き店舗を駐車場にする方法も考えられますが、そうなると今度は駐車場しかないまちになってしまいます。  中心市街地はただ人が住める場所というだけではなく、歴史・伝統・文化が息づく環境での生活を通して、文化的な価値を共有できることが重要だと考えます。そのためにはただ活性化させるだけでなく、中心市街地が持つべき機能を一から考える必要があります。  観光拠点としては、今年から小峰城の清水門を復元するプロジェクトが本格的にスタートします。その一方で、市は南湖公園の活性化を進めており、昨今は宮城・仙台育英が夏の甲子園で優勝したのをきっかけに白河の関跡も脚光を浴びています。これら観光資源を生かして地域経済活性化につなげていきたいですね。  昨年、当会議所内に『道の駅検討特別委員会』を立ち上げました。詳細な整備計画などは決まっていませんが、実現するとなれば主力商品となる地場産品や地元農産物が必要になります。整備が決まってから準備し始めたのでは遅いので、6次化商品の開発などをこれから検討していきたいと考えています。  このほか、地域内のIT企業やシステムエンジニアとの連携を図る組織作りの準備を進め、会員事業所のデジタル化を応援する取り組みも併せて進めていきます」  ――今後の抱負。  「コロナ禍がひと段落し、経済は間違いなく好転していますが、先ほどもお話しした通り、中小・小規模事業所はさまざまな課題に直面しています。当会議所でも新しい制度への対応に追われていますが、それでも『できることは何でもやろう』という合言葉を掲げ、役職員一丸となってさまざまな事業に取り組んでいきたいと思います。  日経平均株価が33年ぶりに3万6000円台の高値となりましたが、かつての好景気とは異なり、中小・小規模事業所の厳しい経営環境は変わりません。しかしながら、愚痴ばかり言っていても始まりません。与えられた環境の中でも生き残りをかけて自己変革を果たし、生産性向上を目指し、従業員の働きがいや生きがいなどを大切にする企業へと変貌していかなければなりません。当会議所としてはそのために必要な支援を全力で進めていきます」

  • 【須賀川信用金庫】伊藤平男理事長インタビュー

    いとう・ひらお 1958年生まれ。1980年に須賀川信用金庫入庫。同信金理事、常務理事を経て、昨年6月から現職。須賀川創英館高校同窓会会長、須賀川市卓球協会会長、須賀川市体育協会副会長などを務める。  ――昨年6月に新理事長に就任しました。  「本部の経営企画部門に長く勤務しており、前理事長・前々理事長のもとで、経営について指導を受けてきました。理事長就任後、総代を中心に150件ほど挨拶回を行い、お客様から『信用金庫らしく、地元に密着した経営を継続してください』との声を多く聞きました。新理事長として当金庫の方針である『創業の趣意を体し地縁性金融機関として地域の発展に奉仕する』を実践すべく、地域のお客様の声を聞き、地域に根差した信用金庫として地域を支える使命感を感じていますし、須賀川信用金庫理事長の責任の重大さを再認識しているところです。  また、職員にとって安心して働けて、働き甲斐のある職場にすべく、健康状態、家族の状況、金融収支状況などの聞き取りを、私が全職員個別に行いました。職員が安心して働きやすい職場にすることが地域に役立つための条件の一つだと考え、現在努力しているところです。さらに、先人たちが築いた信用・信頼を崩すことなく、高い使命感と強い責任感、変わらぬ道徳観を持ち、役職員が一致団結して一歩ずつ前進していきたいと思います」  ――原料高や人材不足といった問題が深刻化しています。  「理事長就任後の挨拶回りで、取引先の経営状況や経済環境、物価高騰による価格転嫁の状況などを聞き取りしたところ、比較的規模の大きい企業はエネルギー価格・原材料の価格転嫁ができていますが、小規模企業は価格転嫁されにくい状況にあることが分かりました。特にエネルギー価格の転嫁は、部品一つに対していくらにするのが妥当なのかを説明するのが難しいとのことでした。  取引先のヒアリングと財務調査の結果、現段階では当金庫の取引先は比較的安定した経営がなされておりコロナ禍の収束に伴って地域経済も少しずつ回復傾向に向かうと見ています。今後とも常にお客様の状況を把握し、売り上げ回復に向けた対話や具体的な支援をしていきます」  ――今年は創立110周年を迎えます。  「創立110周年は途中経過の位置付けで、創立100周年時のような大々的な記念行事は実施しませんが、現在取り扱っている記念懸賞品付定期預金や10月に予定している須賀川広域消防組合への救急車1台の寄贈、創立110周年記念コンサート、記念旅行やゴルフコンペ、ロゴ入り名刺による活動、記念品の贈呈等のイベントを企画しています」  ――昨年からインボイス制度がスタートしました。  「昨年4月の当金庫のアンケート調査では、取引先の課税事業者の約40%が対応済みとの回答で、現時点では課税事業者のほとんどが登録を申請していると見ています。一方で、家族経営、小規模事業者はインボイス制度への理解が浅いことから当金庫では会計バンク㈱の請求書サービス『スマホインボイスFin Fin』の顧客紹介業務を昨年7月から実施しており、渉外担当者を中心に紹介業務の勉強会を実施して対応しています」  ――今後の抱負。  「地域貢献など、信用金庫本来の使命を果たし、地域に根差した経営に徹して地域経済を守っていきたい。また、職員が十分に能力を発揮でき、やりがい・働きがいのある安心して働くことのできる職場づくりに努めます。もう一つは、業務内容の見直しを図るとともに、DXの推進等によって生産性の向上や、経営基盤の強化・充実を図り、持続可能な経営体質を確立することに注力していきたいと思っています」

  • 【湯川村】佐野盛至村長インタビュー

    さの・せいし 1957年1月生まれ。東京農業大短大農業科卒。湯川村総務課長、産業建設課長などを歴任。村議1期を経て、2023年10月の村長選で初当選。 「住んでみたい」と思える村を創造することが私の使命。  ――10月の湯川村長選で初当選しました。  「前回と同じ顔ぶれによる一騎打ちの選挙戦となり、77票差で当選することができました。前回村長選での落選後、村内をくまなく回り、世代を問わず地域住民との対話を重ね、要望を選挙公約に反映させてきました。今回の当選は、その選挙公約と後援会活動をはじめとする草の根運動が評価された結果と受け止めています」  ――村長就任の抱負について。  「『豊かで希望がもてる湯川村に生まれ変わりましょう!!』をスローガンに掲げました。本村は、県下一おいしいお米がとれるコメどころ、名刹・勝常寺や年間100万人以上が訪れる『道の駅あいづ湯川・会津坂下』を有する、誇れる村です。さらに、子育て支援、教育環境の整備、高齢者が暮らしやすい社会の構築、活力ある産業の創出を実現し、『住み続けたい』、『住んでみたい』と思える〝湯川村〟へと生まれ変わることが私の使命と強く認識しています。地域住民の力と私の行政経験を生かし『新生・湯川村』の創造に向け邁進していきます」  ――選挙戦では6つの公約を掲げました。  「1つは『結婚・子育て支援』です。仲人ボランティアによる結婚支援、小中学校の学校給食費無償化・保育料無料化の実現、18歳までの医療費無料の継続、在宅育児支援手当の支給制度の創設に取り組みます。2つは『教育環境の整備』です。笈川・勝常両小学校の児童数減少、校舎やプールの老朽化を踏まえ、小学校の統合を含め、地域住民と議論を深め、あるべき姿を見出したいと考えています。また、受験対策や補習も対応できる村営学習サポート塾の開設、犯罪を抑止し子どもの命を守るため保育所、幼稚園、小・中学校への防犯カメラ設置を進めます。3つは『高齢者支援』です。交通費負担の軽減と移動の不安をなくすための新たな交通システム導入をはじめ、近隣のスーパーなどと連携した移動販売事業や宅配事業、買物代行事業などの支援策を検討し、高齢者の暮らしを守ります。4つは『地域産業の振興』です。スマート農業の推進・支援、道の駅を最大限活用した地域振興、会津湯川ファームの運営を支援し、雇用確保と税収増加を図ります。5つは『住民活動の推進』です。自分ができることを生かせるボランティア団体に参加し、生きがいをもって活動できるようボランティア団体の育成・活動支援に注力します。結びに『移住・定住の促進』です。交通網に恵まれ、下水道100%整備済みの環境をアピールし、子育て支援と教育環境の充実を図り、移住・定住を促進する所存です」

  • 【会津若松商工会議所】澁川惠男会頭インタビュー(2024.1)

     しぶかわ・ともお 1947年生まれ。会津高、日大商学部卒。澁川問屋会長。会津若松商工会議所副会頭などを経て、2016年から現職。現在3期目。  会津若松市は城下町の強みをインバウンドにつなげる一方、小中学校と地元企業をつなぐマッチングサービスや地域発キャッシュレス決済の導入でデジタル技術の恩恵を地方に還元するなど歴史と進取を両立している。国際競争力の高いスノーリゾートにも選定され、宿泊拠点の役割も期待されている。会津若松商工会議所の澁川惠男会頭に経済飛躍の鍵を聞いた。 民間の力こそが地域の未来を拓く。  ――新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが引き下げられて7カ月以上になりました。  「コロナ禍により老舗料亭や観光ホテルの経営破綻があり、管内はダメージを受けました。感染収束後の消費回復を期待していましたが、物価高の影響は大きいです。当商工会議所の退会理由のトップは『廃業』です。中小企業の経営者は高齢の方も多く、後継者がいないというのが主な理由です。コロナ禍からの回復が十分でないうちに物価高が追い打ちをかけて廃業が加速していくのを懸念しています。  明るい兆しはあります。行動制限のない忘新年会シーズンを迎え、飲食業界は予約が相次いでいるようです。感染拡大前の水準に戻りつつある事業所もあります」  ――昨年7月から市内の小中学校と企業をつなぐマッチングサービス「まちスク会津」を用いた実証実験が始まっています。  「まちスク会津は教育支援と地域活性化を両立します。子どもたちにとっては、地域企業・人材と触れ合う機会を増やすことで、企業の認知度向上や地域への理解、魅力発見などにつながります。教育支援を希望する登録企業が増え、本サービスを通して学校と企業の新たなマッチングが生まれており好評です。  今後は当商工会議所で実施している『ジュニアインターンシップ(職場体験)』との連携に加え、サービス充実のために、地域企業・人材の参画を広く呼び掛けます。会津の次代を担う子どもたちが地域を深く知り、将来は地元への就職やUターンにつながってほしいです」  ――観光庁の「国際競争力の高いスノーリゾート形成促進事業」に会津若松市、磐梯町、北塩原村が会津磐梯地域として県内で唯一選ばれました。  「冬季の誘客は会津地方の長年の課題でした。今シーズンは磐梯町と北塩原村のスキー場が連結し、国内最大級のスノーリゾートが誕生しました。南半球のスキーヤー・スノーボーダーが良質な雪を求めて裏磐梯を訪れてきましたが、この流れが会津地方に波及するでしょう。  インバウンドが集中する東京・京阪神間を『ゴールデンルート』と呼びます。東北は対抗軸の『ダイヤモンドルート』を掲げ各自治体や経済団体が盛り上げてきました。今こそ、それを再燃させる時です。  スノーリゾートでは、会津若松は魅力ある宿泊や飲食を提供するベースタウンの役割があります。観光客は国・地域によって食事や宗教、生活様式がさまざまです。違いに対応し、受け入れのレベルを上げる必要があります。当商工会議所はこれまでにも訪日客への対応を学ぶ各種セミナーを開いてきました。会員事業所には観光、旅客、宿泊の事業者がいます。意見を聞きながら今後は業種に特化したセミナーにするなどしてより充実させます。  今年度、会津大学の留学生を対象に市内の観光スポットを巡るモニターツアーを実施しました。鶴ヶ城登閣、弓道や抹茶、赤べこの絵付けなどの体験型コンテンツを通じて会津の魅力を聞きました。素材は十分に魅力的ですが、多言語表記が少ないなどの課題が浮き彫りになりました。改善策を行政に提案し、訪れる全ての方に優しい環境につなげます」  ――「会津コイン」を用いたデジタル商品券事業が始まりました。  「会津コインは会津若松市が進める『スマートシティ』の取り組みの一環です。国は2025年6月までにキャッシュレス決済比率を4割程度にする目標を掲げています。キャッシュレスは増加傾向ですが、既存のキャッシュレス決済はお金の他、マーケティングに活用できる利用者情報などが地域を出てしまうのが課題でした。そこで地域のみで流通する通貨を導入して情報が地域に残るようにしたのが会津コインです。  商品券はこれまで紙ベースでしたが、今回初めてスマホを使ったデジタル形式にしています。当商工会議所やスマートシティAiCTに入居する企業でつくる『AiCTコンソーシアム』などで構成する実行委員会が事業を行っています。当初会津コインが使えるのは6店舗だけでしたが、プレミアムポイント事業の実施で400店舗を超えました。ただ、店舗の加盟申請や消費者の利用設定の手順が複雑な点は否めず、特に高齢の方からさまざまな意見を頂戴しました。市と決済事業者と共に対応を検討したいです。  プレミアム事業が終了した後、どこまで会津コインを利用してもらえるか、事業所に継続していただけるか不安な点はあります。利用者情報を個人が特定されない形に処理して会津コイン参加店舗に提供し、経営に生かしてもらうなどの仕組みづくりが急務です。再生可能エネルギーへのポイント付与構想など、持続可能な開発を進めるインセンティブも有効でしょう。商店街や飲食店業種単位でイベントに活用するなど様々なアイデアに挑戦することで利用が増えていくと思います」 急務の再開発  ――市街地の再開発について。  「中心市街地から大型店が撤退したままの現状に非常に危機感を持っています。都市の活況のバロメーターと言える地価公示や路線価は、昨年は福島、郡山、いわきの県内主要都市の商業地は軒並み前年比プラスになっている一方、会津若松はマイナスに沈んでいます。  当商工会議所は昨年度、再開発に向けた意見を取りまとめ、神明通りや駅前周辺、旧県立病院跡地などの利活用について市に提言しました。多くの利害関係があること、市の財政的な課題もあり、一足飛びに実現しない現状は理解しています。ただ、その中でも中心市街地の再開発は早急に取り組むべきです。まちのシンボルである神明通りはその最たるもの。個性豊かな店を集積したり、インフラなど不足する要素を分析して早めに手立てを考えていきたいです」  ――抱負を教えてください。  「地方は人口減少に伴う縮む経済に直面しています。地域の活力を維持し、若者が住み続けたい、また多くの観光客が訪れたいまちにできるかどうかはここ数年で決まってしまうのではないかと危機感を持っています。会頭就任以来、民間の挑戦こそが地域の未来を切り拓いていく大きな力になると訴えています。危機的な状況だからこそ、この思いを新たにし、徹底した事業所支援を通じて足腰の強い会津若松経済の実現に向けて取り組んでいきます」

  • 【大熊町】吉田淳町長インタビュー

     よしだ・じゅん 1956年1月生まれ。大熊町出身。法政大学経営学部卒。1979年に大熊町職員となり、教育総務課長、総務課長などを歴任。2016年1月に副町長となり、2019年11月の町長選で初当選。2023年に再選を果たす。  ――昨年11月12日投開票の町長選を振り返って。  「前回は新人同士の選挙戦でしたが、今回は現職として選挙戦に臨み、表現として適切かどうか分かりませんが、相手候補の動きが見えづらく苦労した点もありました。結果的には全体の約9割の票をいただき、当選できたことは一定の信任が得られたと思っています」  ――2022年に特定復興再生拠点区域の避難指示が解除されました。  「震災前、町の中心地だった下野上地区を含む860㌶が待望の解除となりました。帰還した住民からはスーパーなど買い物環境の整備を求める声が多数あります。以前、町内にはスーパーが3店舗ありました。買い物環境整備には喫緊の課題として取り組んでいます。医療面では、診療所はあるものの週2日だけなので充実を求める声が出ています。県では県立大野病院の後継病院を開院するとの方針を打ち出しており、医療体制の拡充を進めていきます。  特定復興再生拠点区域より前に避難解除された大川原地区は、役場周辺を中心に環境が整い、今後は大野駅周辺整備を進めていきます。駅前に産業交流施設を建設し、周辺には帰還した方や働く人のために商業施設整備を進めています。それに先駆けて3月には50戸の住宅団地が2つ完成するほか、元々あった民間アパートを町が補助を行いリフォームして約200室整備しました。  こうして、さまざまな環境整備を進めていますが、まずは居住人口を増やさなければなりません。加えて、昨今は国の復興事業の関係で学生が訪れるなど関係人口も増えていますので、そういった大熊町に関心を示してくれる人を増やしていきたい。働く場所も必要になりますから、工業団地への企業誘致なども進めていきます」  ――2023年6月に、福島復興再生特別措置法が改正され、特定復興再生拠点区域から外れたところのうち、帰還意向のある住民が帰還できるよう必要な個所の除染を行い、特定帰還居住区域として定めることで、避難解除を目指す方針が示されました。  「新しい方針のもと、下野上1区を特定帰還居住区域に指定して国から認定を受けました。今年度内にも除染に着手してほしいと要望を出しています。  町内には21行政区ありますが、そのうち帰還困難区域を抱える行政区は下野上1区を含めて10行政区あります。残りの9行政区においても下野上1区に遅れることなく、特定帰還居住区域への指定、除染、解除を目指して国に要望を行っています。町としても、町民の意見を聞きながら、次の除染エリアの選定を検討しています。新しい方針では、1人でも帰還したい住民がいれば除染を行うこととされていますので、なるべく広い区域を住めるエリアとして取り戻したいと思っています」  ――休止している県立大野病院が現在地で建て替えられ、2029年度の開院を目指す方針が示されました。  「県立大野病院は、町内だけの施設ではなく、相双地区の拠点病院に位置付けられていますから、1日も早い開院を目指して整備してほしいと思います。また、先ほどもお話ししましたように、帰還した住民からも近くに病院があってほしいと、医療体制の充実を願う声が出ています。町民の中には、帰還するかどうか迷っている方も多数おり、そういう方々の判断材料という点でも、病院の有無は大きな要素となります。同病院の存在は双葉郡をはじめ、相双地域全体の大きな問題でもありますから、1日でも早い整備をお願いしたいと思います」  ――教育施設「学び舎ゆめの森」の新校舎が完成し、2学期から使用されています。  「震災・原発事故から12年が経ち、ようやく子どもたちの声が聞こえるようになりました。同施設では認定こども園と義務教育施設が一体となっており、0歳から15歳までが保育・授業を受けています。最初は園児・児童・生徒数は計26人でしたが、同施設で行っている新しい教育方針が保護者の間で関心を集め、若い世代が移住して入園・入学する園児・児童・生徒が増加し、まもなく40人を超える勢いです。9月には12年ぶりに運動会が開催され、園児・児童・生徒や保護者以外に地域住民も参加して盛大に行われました。  資材不足の関係で完成が当初予定から遅れ、2学期から新校舎での保育・授業がスタートしましたが、校舎完成前の1学期は町役場や交流施設などを活用し、分散して授業が行われました。不便だった分、工夫しながら学習に取り組み、さらには、学校関係者以外の人とも関わることができたことは、子どもたちにとっていい経験になったと思っています。  新校舎完成後は校舎のつくりや独自の教育プログラムが評判を呼び、視察が増えています。新校舎での授業がスタートした8月から数カ月で視察者は1000人を超えました。また、『グリーン留学』という体験入園・入学プログラムも用意していますので、帰還や定住人口増加の起爆剤につなげていきたいと思います」  ――「長者原じゃんがら念仏踊り」が震災後はじめて町内で披露されました。  「『長者原じゃんがら念仏踊り』と『熊川稚児鹿舞』は町の無形文化財に指定されています。そのうちの一つであるじゃんがら念仏踊りがようやく町内で再開できたことは、区長をはじめ地元の方々に本当に感謝したいと思います」  ――今後の重点事業について。  「まずは避難解除された特定復興再生拠点区域内の環境整備をしっかりと進めていきます。それを経て、特定帰還居住区域の整備へと、1歩ずつ進んでいきたいと思います」  ――今後の抱負。  「先ほども話したように、まずは居住人口を増やしていきたい。震災前は約1万1500人でしたが、現在は住民登録している居住者が600人超、住民登録していない居住者が400人超ほどおり、合わせて1100人が町内で暮らしています。町ではそれを4000人にすることを目指しています。そのためには町に訪れる関係人口を増やすことが必要だと思います。その中で住んでみたい方がいればお試し住宅を利用していただき、子育て世代であれば学び舎ゆめの森を見ればきっと気に入っていただけると思います。働く場所も工業団地の整備を進めており、そこで働く方に町内に住んでいただくための住宅整備も進めています。こうして、様々な事業を行いながら人口増加に向けた取り組みを行っていきたいと思っています。また、戻れない住民の絆の維持のための取り組みも継続して進めていきます」

  • 【福島商工会議所】渡邊博美会頭インタビュー(2023.12)

     わたなべ・ひろみ 1946年生まれ。福島大経済学部卒業後、福島ヤクルト販売入社。2012年に福島商工会議所副会頭。13年11月に会頭就任。現在4期目を務める。  福島商工会議所は職員らの力を結集し、渡邊博美会頭の下、伴走型支援で会員事業所の経営環境の足腰強化に力を入れている。経済に打撃を与える慢性的な人手不足と資材高騰は福島駅前東口再開発に影響し、建設費用が増加。完成が1年延期され2027年度の予定になった。「福島駅東西エリア一体化推進協議会」会長も務める渡邊氏に再開発の行方などを聞いた。 足腰の強い経営環境を共に目指していく  ――新型コロナウイルスが感染症法上の5類に引き下げ後、福島わらじまつりが通常開催されるなど新型コロナ禍前の活気が戻ってきました。現況を教えてください。  「わらじまつりは今年、まず6月に青森市で行われた東北絆まつりに参加しました。賑わいを見て、福島のイベントも賑わうぞと期待が膨らみました。祭りは参加者が熱狂し、笑顔が観客に伝播します。その光景が復活したのは感慨深いものです。7月末に『ふくしま花火大会』があり、熱気が高まったまま、8月3、4日のわらじまつりで最高潮となりました。大相撲の福島巡業が4日に行われたため、福島市の夏は例年にない盛り上がりでした。  福島駅東口の再開発工事中は賑わい創出のため駅前通りやまちなか広場では週末に各種イベントが開かれて盛況です。県立医大保健科学部と福島学院大学の駅前キャンパスがあるため、多くの若者がイベントに関わっています。学生ならではの自由な視点には目を見張るものがあり、若手も参入しやすい雰囲気が生まれています。これらを起爆剤に、来年はもっと魅力のある街になるよう盛り上げていきます」  ――円安と物価高が深刻な問題となっています。人手不足や後継者問題も深刻です。会員事業所からはどのような声がありますか。  「人手不足は日本を覆う問題です。福島県は特に女性の生産年齢人口の流出が全国と比べて高いというデータがあります。要因は様々ですが、女性が魅力を感じる産業を用意できていないという点で、我々経営者にも責任があると感じています。働く場所としてもそうだし、結婚し子育てをする場として不安を感じ、学校を出ると福島を離れてしまう。  価格転嫁について会員事業所を調査していますが、問題なく行っているという事業所はまずありません。燃料費の高騰が特に打撃で、賃金を上げて今いる従業員を雇用し続けられるよう経営者は奮闘しています」  ――資材価格高騰で福島駅東口再開発が1年先送りとなりました。会頭自身も「福島駅東西エリア一体化推進協議会」の会長を務めていますが会議所ではどのような対応をしていきたいですか。  「百貨店の中合が閉店してから福島駅前の歴史あるランドマークが無くなってしまいました。特に私ども高齢者は駅前が一番賑わっていた時代が頭に残っていますから衝撃は大きかった。当会議所には往時の駅前の活気を知る方たちから、なぜ中合を閉めるのかと惜しむ声が聞こえてきました。地方都市では、駅前の活気は衰退し、賑わいは駅の中だけに収まってしまいました。  福島市は東北新幹線の駅があり、交通の便では恵まれています。行政施設とコンベンション施設が駅前に集まると都市機能が向上します。さらに大切なのは、医大保健科学部、福島学院大のキャンパスがあり、近くに大原綜合病院が位置している点です。再開発地区には既に暮らしに密接な教育機関や病院があります。東京や仙台などの大都市では地代が高い分、行政や教育、医療機関の集約は困難でしょう。その点で福島市は再開発で機能を集約しやすい強みがある。自家用車を持っていなくても誰もが暮らしやすい街になる可能性を秘めています。  ただ、資材価格高騰が建設に影響を与えています。完成後も維持費を考える必要があります。そして、暮らす人にとって一番良い方策を考えねばなりません。私は今、関係者に建設中の今こそ、腹を割って話そうと言っています。  資材価格高騰によるコスト上昇や地方の再開発事業の難しさをみると、予算や持続可能性に厳しい部分があるのであれば、福島に住む人にとって一番いいやり方を駅西口と一体化して考える必要があります。後世に悔いが残らぬように、知恵を絞るのは今しかできません。見栄や他の都市に負けたくないという発想ではなく、自分たちのためになる形を追求したいです。  東北中央道ができたことで、福島市には相馬市や山形県米沢市からも訪れるようになりました。福島の魅力は分析すればたくさんあるはずです。構造物だけどんどん造って、継続できませんでしたでは済みません。行政とまちづくりセンター、当会議所で連携を密にして取り組んでいきます」  ――福島市出身の作曲家、故・古関裕而さんが野球殿堂入りしました。街づくりにどうつなげますか。  「古関先生をモデルにしたテレビドラマで火が付き、記念の音楽祭や作曲賞の創設、夫人の金子さんの出身地である愛知県豊橋市とのつながりが生まれました。豊橋市の方たちには花火大会でも筒花火を披露していただきました。  野球のオール早慶戦を11月26日に行いました。早稲田大と慶応大の応援歌をどちらも古関先生が作曲している縁からです。現役生やOBが試合をし、市や当会議所も準備に関わりました。応援合戦は盛り上がりました。古関先生の縁で福島に若い人が来てくれた。試合後も果物や温泉を楽しんで、福島の魅力を知っていただいたようです。福島の魅力はたくさんありますが、古関先生はそれらをつなぐ要です」  ――今年度取り組んでいる重点施策について。  「激変する経営環境に対応できる、足腰の強い経営ができるよう企業や商店の伴走型支援に取り組んでいきます。具体的には人手不足や資材高騰、デジタル移行に対応します。セミナーで一方的に教えるだけではなく、職員が赴いて親身に対応できるよう、商工会議所では人づくりを進めています。来年のカレンダーを配る時期ですが、会員事業所には職員が直接回って配り、ネット環境の整備や人手の確保、新商品開発に使える便利な制度を紹介するなど対面であらゆる相談に乗っています。若手職員が出向くことで気兼ねなく相談できるとの声があります。  浮かび上がった課題は、当会議所の各種委員会で共有して解決策を編み出します。いくつかの委員会では女性や会議所議員になってから1年以内の若手メンバーを委員長に据え新しい風を取り込んでいます。多種多様な意見をまとめていくのは並大抵ではありませんが、その分チャレンジングな発想が生まれます。時代の変化に合わせて新たな経営視点を会員事業所と一緒に磨き上げていきたいです」

  • 【二本松商工会議所】菅野京一 会頭インタビュー(2023.12)

     すげの・きょういち 1954年2月生まれ。福島大経済学部卒。糸屋ニット・菅野繊維代表取締役。二本松商工会議所副会頭2期を経て昨年11月から現職。  新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、経済活動の制限や各種イベントの中止・規模縮小などを余儀なくされたほか、原材料・燃料費高騰や人手不足など、地方経済を取り巻く環境は厳しい。そんな中、地域経済のかじ取り役である商工会議所では各種課題にどう向き合っているのか。二本松商工会議所の菅野京一会頭にインタビューした。 管内の魅力をもう一度見直していきたい  ――新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが「5類」になりました。これを受け、各種イベントなども通常開催されるようになっていますが、管内の動きについて。  「二本松の提灯祭りは管内の大きなイベントの1つで、コロナ禍以降は中止や規模縮小、アルコール販売禁止などの規制の中での開催を余儀なくされましたが、今年は規制がなくなり盛況でした。ほかにも、8月には各地の夏祭りが通常開催され、想像以上の盛況ぶりでした。多くの人がこういったイベントを待ち望んでいたことを実感しました。もちろん、コロナが完全に消滅したわけではありませんが、5類に移行したことで、イベント等が通常開催され、まちが活性化していると思います。  二本松の菊人形は昨年と比べ1割増の観光客が訪れました。以前から『菊のまち二本松』のPRのため、女性会を中心にJR上野駅や市内各店舗などには『菊手水』の設置や各家の軒先でも菊が飾られ、観光客を迎えています。昨年開館した城報館でも物品の販売を行いましたが、市が菊人形来場者への1割引補助を行ったところ大好評でした。  また、来年の1月には菓子博、2月には酒まつりが行われます。両イベントも規制をなくしコロナ禍前と同規模で行う予定です」  ――円安や燃料高が深刻な課題となっています。  「燃料・物価高は、当然大きな問題ですが、それ以上に管内では人手不足が深刻です。家族経営のような小規模事業者は別にして、どの会員企業に聞いても、やはり人手不足が一番深刻な課題であるとの話が出ます。そんな中、会員企業によっては外国人研修生を迎えて補っている企業もあります。  会議所としては、市と合同で意見交換をしながら人手不足に向けた課題解決を図っています。特に、地元の若者がこの地域に残って、地元企業で働いてほしいという思いから、高校生に対する研修制度などのカリキュラムを少しでも設けていただければ、若者の興味も地元に向けられるのではないのかと思います。市内には認知度は高くないものの、世界に誇れるような企業が多いのです。これまで、企業ガイドブックといったパンフレット配布を行ってきましたが、今後は映像でまとめたDVDなどを各学校に配布することを考えています。やはり、実際の映像を、自分の目で見てもらった方がより説得力があるでしょうからね。ほかにも、企業説明会などを実施し、会議所として少しでも人手不足解消に向けた活動を行っていきたいと思っています。  また、市内では空き店舗利用が多く、伝統的に菓子店が多いので空き店舗を利用した菓子店がオープンするなどしています。とはいえ、まだまだ空き店舗が目立つ状況ですから、さらなる対策を講じていきたい。  今年からインボイス制度がはじまりましたが、会議所では説明会を常時開催しています。会員企業には零細企業も多く、猶予制度の中身等を理解していない企業も少なくありませんので、丁寧な説明を続けていきたいと思います」  ――国・県に望みたいことは。  「安達太良山のくろがね小屋は閉鎖されたままになっています。県でも2025年の完成を目指すことになっていますが、建設に向けては資材をヘリコプター輸送しなければならないなどの問題があります。中通りでも有数の日本百名山の1つでもあり、観光資源でもありますから、トイレの問題はもちろん、登山者や観光客の安全を守るという意味でも早期の建設をお願いしたいと思います」  ――現在の重点事業について。  「会議所が果たすべき役割の原点に立ち返り『会員と共に一歩前へ! ~信頼される「地域総合経済団体」を目指して~』を基本行動に据え、施策事業を実行するとともにさらなる組織強化に努めていきます。  特に人口減少や高齢化などの事業者が抱える社会構造的な課題に対して、『地元事業者の経営基盤の強化』と『持続性のある地域の活性化』を活動計画の柱として、各種事業を展開していきたいと思っています。  具体的には、巡回相談・専門相談を各種経営支援事業の核として、会員企業の実態とニーズに即した支援を寄り添いながら実施していきます。また、IT化によるDX支援など、経営の効率化と生産性の向上につながる支援や働き方改革、社会保障などの諸制度に対して、即応できる体制の強化を図り、労働環境改善、健康経営を進めていきます。  また、会議所だけの事業ではありませんが菊人形が今年で67回目を迎え70回の節目が迫っています。東日本で菊人形を開催しているのは二本松市だけで、70年の長い間継続したことは誇りであり、技術継承も必要だと思います。二本松の菊人形は、菊栄会が中心になって行われていますが、次の80、90周年を見据えて、会議所としても、例えば体験型の催しなど、70周年に向けた提案を行っていきたいと思います」  ――今後の抱負。  「就任直後も話したようにオール二本松で当たっていきたいと思います。そういう意味では、常議員をはじめ、会員企業の皆さんには積極的に参加していただき感謝しかありません。夏祭りや酒祭りといったイベントにしても、会員企業と一緒になってもっとアイデアをひねりながら、さらにいいイベントにしていきたいと思います。  二本松市は、すごくいいところがたくさんあるにもかかわらず、地元住民が知らないことも多くあります。もう一度、二本松市の魅力を再発見する取り組みを進めていきながら、インバウンドにつなげていきたいと思います。いまは円安の影響で外国人観光客が多く国内に訪れています。市内でもエビスサーキットには多くの外国人が訪れるなど地盤はあると思います。以前からインバウンドに向けた取り組みを行ってきましたが、あらためて、市内にインバウンド観光客が訪れる仕組みづくりを進めていきたいと思います。  来年1月には岳温泉のあづま館がグランドオープンします。岳温泉の各旅館もコロナ禍の影響で苦労していますが、あづま館はサウナ施設をオープンさせるなど、頑張ってくれています。市内の観光名所である岳温泉は安達太良山とセットで大きな魅力の1つです。そういった管内の魅力をもう一度見直していきたいと思います」