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ひきち・まこと 1959年12月生まれ。東北学院大法学部卒。国見町総務課長兼町民相談室長などを歴任。2020年3月に退職後、同年11月の国見町長選で初当選。 ――町長就任から2年4カ月経過しました。 「この間、新型コロナ感染症をはじめ、2021、22年に発生した震度6強を超える福島県沖地震、基幹産業である農業に被害を与えた凍霜害と降雹、昨年の過疎指定、昨今の物価高騰など、難しいかじ取りを強いられた2年4カ月でした。その都度、適切に判断しながら町民の生活支援と不安払しょくに努めてきました」 ――昨年3月16日に発生した本県沖地震の復旧状況について。 「昨年の地震による被害は一昨年に比べ甚大でした。全壊から一部損壊までの被害棟数は1500以上と前年の地震の2倍強で、生活再建の予算確保は至上命題でした。この間、できる限りの対策を講じたつもりです。町職員の高い危機対応意識で地震翌日には被災・罹災証明の受付窓口を開設しました。また、交流・連携を深める北海道ニセコ町、岩手県平泉町、栃木県茂木町、岐阜県池田町に救援依頼をしたところ、ブルーシートや土嚢袋など応急資材の提供や職員の派遣など迅速に対応していただきました。一昨年の地震の教訓から通常業務と地震対応業務の両立が図られたのだと思います。一方で、住家・非住家の公費解体に伴う国の災害査定に時間を要したり、建築業界の慢性的な人手不足や資材不足などの影響があったりして、丸1年が経過しても応急処置が施されたままの住宅があります。地震被害からの復旧はまだ道半ばで、生活再建支援に引き続き注力する考えです」 ――保・幼・小・中一貫教育を柱とする「くにみ学園構想」の進捗状況について。 「この構想は、第6次国見町総合計画と国見町過疎地域持続的発展計画に基づいて整備を進めたいと考えた、くにみ学園の基本理念をまとめたものです。町の将来や存続に関わる重要な事業に位置づけられます。現在、本町には保育所1所、幼稚園1園、小学校1校、中学校1校がありますが、町内に分散・点在しています。2014年度から取り組んできた『国見学園コミュニティ・スクール』事業では地域住民の協力を得ながら、自ら学ぶ力や郷土愛を育む教育を展開してきましたが、この10年で急激に少子化が進んだうえ、社会環境の変化による学力の二極化や運動能力の低下、支援が必要な子どもたちの増加などが顕著になっています。これらの課題を踏まえ、保・幼・小・中を1つに集約し、子育てと教育の充実、機能強化を図ることが同構想の基本理念です。くにみ学園構想は、教育と子育て施策の核となるものですから、議会も含め町民の皆さまとの対話を通して、基本構想への理解・共感を得ていきたいと考えています」
ふじわら・いちじ 1946年10月生まれ。法政大学法学部卒(通信課程)。川俣町収入役、済生会川俣病院事務長などを歴任し、2021年2月の川俣町長選で初当選。 ――原発事故に伴う山木屋地区への避難指示が解除されてから丸6年経過します。 「コロナ禍で開催見送りとなっていた『八坂神社の三匹獅子舞』など地区の伝統行事が復活しているほか、近年では移住する新規就農の若者も増えています。 水田の水を凍らせたスケートリンクとして知られる『かわまた田んぼリンク』が、山木屋に移住した新規就農者(大学院生)の2人が代表となる形でオープンしました。会員の高齢化により昨年解散した地元団体から運営を引き継いでくれました。新たな地域活性化の拠点として注目が集まっています。このほか、復興拠点商業施設『とんやの郷』で、地元住民の皆さんが組織したNPO法人が、毎月第1日曜日に『おきがるマルシェ』を開催するなど、にぎわいが生まれています。 一方で、避難解除後に山木屋地区へ戻ったのは160世帯332人(帰還率50%)、うち65%以上が高齢者です。引き続き帰還支援を継続していきますが、新たに人を呼び込む方にも注力していきたいと考えています」 ――ふくしま復興再生道路である国道114号山木屋工区の工事が完了しました。 「山木屋地区は町の中心部から約11㌔離れていますが、トンネルが開通したことでアクセスが大幅に向上し、町としての一体感が高まりました。浜通りと県都・福島市を結ぶ道路として、流通面などで大きな役割を果たすものと見ています」 ──新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが5類に引き下げとなりますが、今後の対応について。 「希望者へのワクチン接種を継続しつつ、慎重に事態を見極めていきます。マスクの着用は、基本的に個人の判断に委ねることになりますが、捉え方には個人差があると思うので、柔軟に対応していきます。コロナ禍で開催を見合わせていたフォルクローレの音楽祭『コスキン・エン・ハポン』は今年通常開催の予定です。新たなスタートを踏み出す1年にしたいと考えています」 ――その他重点事業について。 「4月から開園する『かわまた認定こども園』は0~5歳までのお子さんが対象です。子育て世代の負担軽減のため、給食費を無償にします。2023年度中の保育料完全無償化も目指しており、子育てしやすい環境を実現して若年層の移住増加につなげていく考えです。 また、食品スーパーのいちい(福島市)と協定を交わし、本町の廃校を利用したベニザケの養殖事業が進められています。2026(令和8)年の事業化を目指しており、地域振興に貢献することを期待しています」
たかはし・ひろし 1954年生まれ。日大工学部卒。西郷村建設課長などを歴任。2015年の村議選で初当選。村議1期を経て、2018年2月の村長選で初当選。昨年2月に再選。 ――人口増加率は県内トップクラスです。 「村内に東北新幹線新白河駅、東北自動車道白河ICを有し、首都圏や地方都市へのアクセスが良く、地理的な利便性が高いことも一つの要因になっていると考えていますが、それに加えて、『コロナを克服』、『子育て支援の充実』、『学校教育の支援の充実』、『高齢者健康長寿支援』、『やりがいと魅力ある産業の振興』、『災害に強いむらづくり』の6つの目標を掲げ、職員一丸となって取り組みを進めています。 中でも、子育て支援や教育面での充実は、若い世代の移住・定住を促進して人口を維持していくために重視しています。出産祝い金の支給や、原油価格・物価高騰に対する特別給付金の支給により、子育て世帯の経済的負担を軽減するなど、安定した生活を送れるよう支援をしました。また、子育て支援センター内に子ども家庭総合支援拠点を設置し、妊娠期から子育て期に渡る切れ目のない支援体制を構築し、母子健康の保持促進に努めています。学校教育については、小・中学校に入学した児童・生徒に入学祝い金を支給、中学生の修学旅行の補助、さらには子どもたちが将来、国際的に活躍できるよう英語力をつけてほしいという思いから、ALTやタブレット端末を活用した英語教育に力を入れ、児童・生徒の学びの意欲の向上に努めています。令和5(2023)年度からは、村内の小中学生の給食費の無料化を実施します」 ――学校給食センター、役場庁舎の整備が計画されています。 「学校給食センターは、7割程度の進捗状況で計画通りに進んでおり、令和5(2023)年度2学期から使用開始となる見込みです。新庁舎整備事業については計画通り、令和7(2025)年度の開庁を目指して本体工事に着手していきたいと考えています」 ――今後の抱負を。 「第2期村人口ビジョンの人口推計では、他自治体と同様に人口が減少していく見込みですが、様々な取り組みを重ねていくことで人口の流入と定住促進を図り、人口減少を最小限に食い止め、村民の皆さんがいつまでも幸せに住み続けられる村をつくりあげていきたいと思います。本村は『2022年度自治体四季報全国自治体経営ランキング』において、全国1741自治体の中で2位になりました。一方で、まだまだ課題も多くあります。村民の皆様よりご意見、ご指摘を賜りながら『村民が主役で未来を築く』を念頭に、『未来へ限りなく前進する西郷村』、『選ばれる西郷村』、『誇れる西郷村』を実現できますよう鋭意努力していきます」
せきね・まさお 1955年12月生まれ。東白農商(現・修明)高校卒業。鮫川村議4期。2019年8月の同村長選で初当選を果たす。 ――新型コロナウイルス感染症の5類引き下げ方針を見据えた施策について。 「この3年間は村内の各行事やイベントなどの中止・延期を余儀なくされました。また、集落内の事業や伝統祭事も開催できず、地域の絆や交流が希薄になりつつあります。これらの繋がりを元に戻すための地域力再生を図ると同時に、物価高騰等で低迷している産業の振興と担い手育成に全力を注ぎます」 ――環境公社設立の進捗状況について。 「遊休農地の管理や、公道沿いの支障木伐採など『美しい鮫川村』を維持すべく環境公社設立の準備を進めてきました。それに当たり、村内各事業所を訪問して課題を聞き取りした結果、①既存の建設業者や林業者の業務を奪うことにならないか、②シルバー人材センターとの連携を図るべきではないか、③公社設立後の収益事業と社員の人件費の確保等に困難はないか、などの課題が浮き彫りになりました。さらに各事業所では人材不足が深刻化していることから、まずは『特定地域づくり事業協同組合』の設立が最優先であると判断しました。組合設立に当たり、県から認可されるまでには、申請要件をクリアしなければならないため、一定の時間が必要です。加えて、関心を寄せる農家や事業所の理解を得るため、丁寧な説明会を開催しているところです」 ――国道289号のバイパス開通の効果と利活用策について。 「今年3月4日に村民待望の国道289号『渡瀬バイパス』が全面開通しました。この路線は新潟市といわき市を結ぶため、経済物流、観光振興、緊急医療対応に繋がる重要路線です。また、バイパス化により、本村随一の観光地である鹿角平観光牧場に接する路線となったことで、キャンパーを含む観光客の増大、いわき市や茨城県から村中心部の直売所『手まめ館』など観光地への集客数が膨らみ、本村や近隣町村への大きな経済効果が見込めると期待しています」 ――1期目を振り返って。 「『地域づくりは人づくり』をテーマに、青少年・女性を含む村民の提案やアイデアが生かせる村づくりを目指してきました。さらに『若者未来創出会議』や『中高生未来ジュク』、『農業者担い手会議』等を開催してきましたが、担い手たちが自主的に活動を発案するなど、具体的な成果が着実に表れ始めています。 さらに今年度は『村づくり推進室』を庁舎内に新設するなど、『公共施設中長期整備計画の素案づくり』、『移住定住子育て支援』、『村民の健康づくりと福祉の充実』、『観光資源の活用と産業の振興』、『自主財源の確保』の6つの重点施策に基づいて各事業を推進します」
よしだ・えいこう 1963年12月生まれ。浪江町出身。双葉高卒。県議を5期務め、自民党県連幹事長、県議会議長などを歴任。昨年7月の浪江町長選で初当選を果たした。 ――昨年7月に町長に就任しました。 「首長の仕事は想像以上に忙しいですね。職員とのチームワークも良くなっており、日々の行政執行は良い形でできています。当町は復興という大きなミッションがあります。前町長が行ってきた施策により、成熟しつつある分野と新たな分野がありますが、いずれも芽を出し始めており、民間企業からも多くの興味を示していただいています」 ――帰還困難区域の津島、末森、室原3地区内に設定された特定復興再生拠点区域の避難指示が3月31日、解除されます。 「3つの拠点に共通する産業は農業です。将来を見据えた農業の再建を進めるために、大規模化や効率化など、外部からの投資が活発化することを期待しています。 住民帰還に関しては、町民の5割以上が避難先で新たな居を構えていることや、帰還することの経済的な不安なども踏まえ、バランスよく考えていかなければなりません。ただ、この半年間、帰還意欲の高まりを感じています。福島国際研究教育機構(F―REI)やJR浪江駅周辺整備計画などの復興プランが表に出てきて、故郷とともに復興を肌で感じたい町民が多くなっているからだと思います」 ――F―REIと浪江駅周辺整備計画について。 「F―REIは浪江町だけのものではありません。浜通り全体として、研究者の方々の住みやすい環境を整えることが大切だと考えています。社会環境の変化や人口減少の時代を担う〝次の世代〟が競争力を持てる技術力や仕組みが必要であり、同機構にはその牽引役を担ってほしいです。浪江駅周辺整備事業は同機構におけるフロントの役割を担っています。復興まちづくりのためにこうした事業を成功させるには、周辺自治体を含めた国・県と町の協働(協同)が不可欠です」 ――育苗施設が供用を開始しました。 「既に稼働している『カントリーエレベーター』と育苗施設の完成によって、育苗から収穫後の乾燥までが担保されました。さらなる水田の利活用を促進するため、6次化を考えていかなければならないと思います。町の新たな特産品であるタマネギや花卉など、水稲以外にも多様化が必要だと思っています」 ――今後の抱負。 「今後、民間が投資しやすい環境を整え、経済の活性化を図っていきたい。現在、当町の町民は町内外にお住まいですが、興味を持っていただけることが、われわれにとって刺激になっています。町民が復興を支援できる・応援したくなるような町をつくっていくことが使命だと思っています」
ふるかわ・しょうへい 1953年11月生まれ。喜多方工業高(現喜多方桐桜高)卒。アルス古川㈱相談役。会津坂下町議を連続5期、議長を6年務める。現在1期目。 ──町長就任から1年半が経過しました。 「『次世代に繫ぐまちづくり』に全力で取り組んできました。この間、切れ目のない伴走型の子育て支援として、不妊治療の検査に対する上限5万円の補助制度を創設しました。健康づくり事業では、阿賀川の支川の旧鶴沼川が国土強靭化の一環で堤塘(堤防)が舗装されたのでウオーキングコースとして整備しました。道の駅あいづ湯川・会津坂下西側の河川敷までの延長を検討しており、相乗効果を期待しています」 ──役場新庁舎整備事業の進捗について。 「まず第一に質の高い住民サービスを継続的に提供する拠点であるとの考えから、町民の安全・安心の確保や災害時における円滑な復旧・復興の拠点となりうる場所に建設するべきだと考えています。そのため、30年後を見据えて、町民の声やアンケート結果等を判断材料にしながら、2月22日の議会全員協議会において、建設場所を旧坂下厚生総合病院跡地へ変更することを発表しました。 今後、本町が会津西部地区の中核としての機能を果たせるよう、周辺地域との一体的な利活用を図るのに加えて、現役場庁舎周辺の利活用についても、町民の皆様や専門家のご意見を賜り、人が集まり、賑わいを創出する空間として整備していく考えです。今年度から新庁舎建設計画の具現化に向けて、基本構想・基本計画策定を進めていきます」 ──5月8日をめどに新型コロナウイルスの5類引き下げの方針が打ち出されましたが、これを見据えてどのような施策に取り組んでいきますか。 「関連する町の施策の総点検を進めています。特に感染防止の観点から中止を余儀なくされてきた各種事業についても、入念な準備のもと、町内へにぎわいと活気を呼び込んでいきたいです。また、高齢者の皆様の外出自粛による体力低下や孤立の集中的改善に向け、集いの場として各地区サロンを活用しながら、楽しく健康づくりに努めていきます」 ──今後の重点事業について。 「町の課題である財政健全化に引き続き取り組むのはもちろん、“人口が減少しても活力があり町民一人ひとりが生きがいを持てる持続可能なまち”を実現するため、令和4年度から『交流人口対策』『関係人口対策』『定住人口対策』の3つの人口対策に取り組んできました。 令和5年度からはそれらに『少子化対策』を加えた4つの人口対策を重点事業とした過疎対策事業を実施し、若者世代、子育て世代が住みやすく、町民の皆様が輝ける住み続けたいまちを目指してまいります」
原発事故に伴う風評被害や、水害などの自然災害、コロナ禍での米価下落、さらには燃料高騰など、農業を取り巻く環境は厳しさを増している。昨年6月にJA福島五連会長に就任した管野啓二会長に、それら課題への対応や、「第41回JA福島大会」で決議された3カ年基本方針の進捗状況などについて話を聞いた。 かんの・けいじ 1952年生まれ。福島県農業短期大学校卒。JAたむら代表理事組合長、JA福島さくら代表理事専務、代表理事組合長を務め、昨年6月の総会でJA福島五連会長に選任された。 ――昨年6月の総会で会長に選任されてから8カ月ほどが経過しました。この間を振り返って、率直な感想をお聞かせください。 「仕事にも慣れてきて、落ち着いてきました。その中で感じたこととして、本県における最も大きな課題は、農業産出額を大震災・原発事故前の実績である2330億円に追いつくことだと再認識しています」 ――2021年11月に開かれた「第41回JA福島大会」では、農業総生産額の減少対策、農業者の高齢化・担い手の減少対策、風評払拭対策などを含む、2022年度から2024年度までの3カ年の基本方針が決議されました。それら事業・取り組みなどの進捗状況はいかがでしょうか。 「同大会の決議では『園芸ギガ団地構想』を柱に据え、2024年度までに各JAが1団地を形成できるよう取り組んでいます。 主な作物はきゅうり、ピーマン、トマト、ほうれん草、宿根カスミソウなどで、『もうかる農業の実現』がコンセプトです。 これらの品目について、2022年度の実績を振り返ると、昭和村のカスミソウの販売額は6億円を超えたほか、南郷トマトの販売額は11億円でした。また、夏秋きゅうりにおいて福島県は全国一の産地に成長しており、多くの品目で実績を残しています。 園芸ギガ団地構想によって、そういった実績をさらに加速できるようにしていきたいです。 担い手の減少対策は、新規就農者をいかに確保していくかが大きなテーマで、これまで我々JAは新規就農者に対して一元的な窓口対応ができる組織が欲しいと県に要望してきました。 先日、県の予算が開示され、4月から『福島県農業経営・就農支援センター』という名称でスタートすることが正式に決まりました。新規就農といっても、都会からUターンして就農する、親元で就農しながら新しい栽培品目を自分で開拓して始める、親が高齢になり後継者として代々受け継いできたものを継続する、などさまざまなパターンがあります。 同センターはそういった方々の相談や悩みに合わせたサポートをワンフロアで行うことが狙いです。栽培品目は何にするのか、そもそも農業のノウハウがあるのか、ノウハウがあったとしても資金繰りや雇用の対策ができているか、県と連携してサポートしていきます。 原発事故の避難指示が出された被災12市町村の農業復興については、震災による営農休止面積1万7298㌶のうち7369㌶が再開し、営農再開率は42・6%になっています。避難指示解除が早かった町村の再開率は高い一方で、やっと解除になった大熊町や双葉町などはこれから営農再開を目指していくことになります。特に双葉町では、トマトの施設栽培を目指しており、浜風ほうれん草の栽培も検討しています」 風評払拭に努める ――東日本大震災・原発事故から間もなく丸12年が経過します。この間、福島県の農業は、いわゆる風評被害に苦しめられ、品目によっては未だに影響が出ているものもあると聞きますが、現在の県産農畜産物の市場評価についてはどう見ますか。また、「JAグループ福島東京電力原発事故農畜産物損害賠償対策福島県協議会」の原発賠償の状況についてうかがいます。 「原発賠償については、今年1月末時点で請求額が3567億円に対し、合意額(受取額)が3481億円で、賠償率は97・58%となっています。 県産農産物の市場評価については、明確に評価が低くなっていると言えるのはコメと牛肉です。米価は全国的に若干上がっていますが、県産米はまだまだ評価が低く、もっと努力していかなければならないと感じています。牛肉についても、品質のランク付けと価格単価のランク付けにギャップがある状況です。 県知事とともに、トップセールスなど風評被害の払しょくに向けてPRしていますが、依然としてリスクがあるとネガティブに捉えられていることは消せない事実です」 ――東京電力福島第一原発で保管されているALPS処理水の海洋放出が今春に迫っています。県内農業分野への影響についてはどう考えていますか。 「国民理解の醸成と責任ある風評抑止対策を前提として考えれば、やむを得ないと捉えています。しかし、いわゆる風評被害が発生してしまった場合は、いままで同様賠償を前提に国や東電と話し合いを続けます」 ――長引く新型コロナ、物価高、燃料費高騰が深刻な問題になっていますが、農産物の需要・価格(特に米価)にも影響は出ているのでしょうか。出ている場合は具体的な影響と対策・支援などについて。 「ものすごく値上がりしています。高騰対策として国が予算を組んでおり、値上がりした分の約7割は補填される仕組みになっています。現在、秋肥に対する助成の申請が進んでおり、今年春に作付けする分の肥料も取りまとめを行っていきます。 施設園芸においては、ハウス内で使用する燃料高騰への対応も国が打ち出していますので、それに対する助成申請も支援していきます。 畜産については、飼料の値上がりが起きています。配合飼料には価格安定基金というものがあり、値上がりした分の8割は補填を受けられますが、値上がりが大きすぎてその上限を超えてしまっています。こちらに関しても国が特別に対策を打ち出しており、対応いただいています。しかし、それ以外の牧草やワラなどの粗飼料には国が関与している制度がないので、牛などを飼育している経営者は危機を感じており、自給飼料が少ない経営は完全に赤字経営になっています。 そういった国の制度が行き届かないところを何とかしていただきたいと要望したいです」 ――今後の抱負は。 「暗い話ばかりになってしまいましたが、第一はギガ団地構想などの計画をスケジュール通りに進めることです。 また、毎年のように地震や水害、霜害・雹(ひょう)害などの自然災害が頻発していますが、今年はそういったことが起こらないことを願いながら、これまで以上の対策を練っていきたいと考えています」
おかべ・みつのり 1959年1月生まれ。学校法人中央工学校卒。有限会社岡部設備工業取締役、株式会社トーホク・オカベ取締役を経て、2003年4月の町長選で初当選を果たした。現在5期目。 ――4月23日投開票の古殿町長選に、6選を目指して立候補することを表明しました。まずは立候補に至った経緯をお聞かせください。 「『5期で一区切り』と考えていましたが、後援会に相談したところ、『まだ若いんだからもう少し頑張ってみろ』と背中を押していただきました。あらためて熟慮した結果、町議会の昨年12月定例会で立候補を表明しました」 ――5期目の4年間を振り返って。 「令和元年東日本台風、新型コロナウイルスなど有事への対応に追われた印象が強いです。コロナ対策に関しては、感染対策の徹底やワクチン接種、各種支援などに全力で取り組み、不安払拭に努めてきたと自負しています。町民の皆さんにご協力いただいたこともあって、現在は感染状況がかなり落ち着きつつあり、重症化するケースも多くないようなので安堵しています」 ――昨年から祭りやイベントなども再開されるようになっていますが、古殿町ではいかがですか。 「できるだけ再開する方針を打ち出しています。昨年は、町が委託して古殿町商工会が主催している『憩いの森フェスタ』を実施しました。課単位の小規模な忘新年会に関しても、町職員には『自粛せずやってほしい』と話しています。町職員や町議が率先して経済を回す姿勢を示すことも必要だと思います」 ――人口減少が大きな課題となっています。町では体験宿泊施設を設けるなどして、移住定住人口の増加を目指しています。 「町民が案内人となって体験イベントを提供する取り組み〝フルドノタイム〟を昨年に引き続き実施する予定で、現在準備を進めています。27件のプログラムが行われる予定で、協力していただける町民には心から感謝しています。今後のまちの活性化につながっていくことを期待しています。 『大網庵』という茅葺屋根の古民家を改修して、宿泊・テレワーク需要に対応する施設を整備しました。利用者はまだ少ないですが徐々に増えています。このほか、『ふるさと工房おざわふぁーむ』など農業体験を受け入れている農業法人もあり、関係人口増加に貢献しています」 ――子育て支援・教育にも力を入れており、タブレット端末と電子黒板を導入しています。児童・生徒の反応は。 「新たな取り組みなので現場の反応を注視していましたが、ゲーム感覚で勉強できるのか、児童・生徒には大きな抵抗はなかったようです。むしろ指導する教員の方が付いていけない面があるようなので、ICTに精通している地域おこし協力隊を募集し、支援員として配置して、サポートをお願いしています。公共施設にはWi―Fi(公共無線LAN)が整備されています。自宅での学習も滞りなく進めるため、保護者の皆さんに意向調査を行ったうえで、インターネット環境整備へのご協力をお願いしているところです。 子育て支援策にも力を入れています。出産祝い金として第一子5万円、第二子10万円、第三子30万円、第四子以降50万円を支給しており、4月以降は、第三子も50万円に引き上げたいと考えています。 このほか、こども園の保育料や中学校までの給食費、高校生までの医療費を無料にしており、中学校までの各種検定試験費用、スポーツ活動で子どもたちにかかる交通費や宿泊費などの経費も町が負担しています」 ――高齢者が安心して暮らせる環境づくりについて。 「古殿町健康管理センター、古殿町社会福祉協議会と連携しながら、デイケアの利用など、高齢者の相談に応じる体制を構築しています。生活に支障が出てきた方の受け皿としては、社会福祉法人石川福祉会の特別養護老人ホーム『ふるどの荘』、旧大久田小学校舎を再利用した介護老人保健施設『大久田リハビリテーション・ケアセンター』があります。 旧鎌田小学校跡には、公募により高齢者向けグループホーム『けあビジョンホームふるどの』が入居しています。隣接地には、単身高齢者や高齢世帯を対象とした『古殿町高齢者居住施設』を整備し、家族が町外にいる高齢者世帯でも安心して暮らせる環境を整えています。 運転免許を返納した場合なども含め〝交通手段の確保〟が高齢者にとって大きな問題となっています。町では『へき地医療バス・福祉バス』を決まった時間に走らせていますが、さらに公共交通システムを充実させたいと考えており、デマンド交通を含めて研究しているところです。 併せて買い物難民の解消に向け、『道の駅ふるどの』を中心に配食サービスを展開したり、高齢者でも利用できるデジタル端末を配布する構想も検討しています。元気な高齢者が知識・技術を生かして活躍できる場も設けたいですね」 一次産業活性化が基本 ――6期目に実現したい施策を教えてください。 「本町の基幹産業は農林業であり、これら一次産業を活性化させる施策がまちづくりの基本と考えています。 具体的には、米価が下がっており、消費量も落ち込んでいるため、地元産米を学校給食として消費することで応援していきます。 本町の町土の約8割は森林が占めていますが、皆伐した後の対応については国・県による補助制度の対象となっています。森林環境譲与税も含め、補助制度を活用しながら林家が収入を得られる仕組みを確立したいですね。農業振興と交流人口増加につなげるべく、『道の駅ふるどの』の拡張も計画しています。 人口減少対策としては、住宅地の造成・整備を進めています。すでに6区画が分譲済みで、2軒の家が建っています。移住・定住も含めて、『これから暮らしていく場所』として、本町を選んでいただけるまちづくりを進めていきます。 そういう意味でも、重要になるのが教育環境の充実です。学校統合を進めた結果、町内の小中学校は古殿小学校・古殿中学校の2校になりました。今後、学力向上につなげていくにはどうすればいいか、ICT技術導入を進め、文部科学省の動向も見つつ、対応していきます。 高齢者福祉に関しては、先ほどもお話しした通り、どのような形でも町内で暮らせるように環境を充実していく考えです。 古殿町商工会、各事業所と一丸となって、町を元気にする施策を打ち出していきたいと思います」 ――町民に向けて一言。 「町民の皆さんにはさまざまな面でご意見・ご理解をいただきながら町政運営に取り組んできました。再び町政を預からせていただけるのであれば、『初心忘るべからず』という思いを持って頑張るので、よろしくお願いいたします」
たかまつ・ぎぎょう 1954年生まれ。大正大仏教学部卒。1995年から旧本宮町議。2007年から本宮市議、2011年1月の市長選で初当選。現在4期目。 ――無投票で4選されました。 「3期目に続いて4期目も無投票になり、これをどう捉えるかは有権者の皆さんがそれぞれ考えることだと思いますが、大きく分けて2つ言えると思います。1つは本宮市政に対して無関心な方の増加、もう1つは信任していただいたということです。どちらにしても、無投票で信任をいただいたことについては責任を重く感じています。また、政治や市政に全く関心がない市民がいることにも大きな責任を感じなければならないと思っています。いずれにしましても、無投票で4選を果たし、4年間の市政執行の機会をいただいたことについて、謙虚にその思いを受け止めながら一生懸命やっていきたいと考えています」 ――選挙後は人口減少対策を最優先課題に挙げていました。 「一言で『人口減少対策』と言っても難しい課題で、特効薬はありません。まずは市民サービスをバランスよく提供していくことによって住みよさや安心度、快適度、幸福度が生まれてくると思っています。子育てや教育面、学力向上などはもちろん、高齢福祉やインフラ整備など、一つひとつ丁寧に市民の方々の思いに寄り添った中で、バランスがとれた市民サービスをつくり上げていく必要があると思っています。 もう1つ、大切なのが発信力です。本宮市は住みやすくたくさんの方に住んでいただいています。そのことをしっかり発信していくことに加え、それをどこに発信するかも重要です。おかげ様でここ2年間は転出より転入が多く、社会動態は増加に転じていますが、県内の近隣自治体での人口移動では意味がありません。やはり首都圏や他県の方々にこの福島県、本宮市に住んでいただきたいと思っており、そのための施策を講じていきたいと思います。しっかりとした発信力を持ちつつどこに向けて発信していくかを重要視しながら、人口の減らない本宮市をつくっていきたいと思います」 ――以前から白沢地区の人口減少対策に取り組んでいます。 「様々な施策を展開してきましたが、なかなか実績として上がっていません。まずは焦らず白沢地区の良さを知ってもらう取り組みが必要と思い、交流人口や関係人口拡大に取り組んできました。白沢地区には岩角山や震災後にはプリンス・ウイリアムズ・パークが整備され、そういった白沢地区にある名所を生かしながらいい部分を発信してきました。 いま検討しているのがゲストハウスのような宿泊体験施設です。1週間ほどお試しで白沢地区に住んでいただき、白沢地区の住みよさを味わってほしいと思います。その宿泊体験で気に入っていただいた方に住居をどう提供していくかも大事ですが、せっかく農村に住むのだから、それぞれ古民家のような空き家に住みたい方、新居を建てるための土地が欲しい方、加えて農地も欲しい方など、好みがあると思います。その辺の思いを汲みながら、どう紹介していくかといったきめ細かいサービスを行うことが大切だと思います」 新たな公共交通を模索 ――子育て世代の転入を増やすうえでは教育面も重要です。 「教育環境は子育て世代にとって非常に大切です。家族で住むことになれば、高校進学のための学力を心配する方も多く、子育て世代へどう対応していくかというのは大事ですし、学力ばかりではなく体力向上も重要です。教育委員会でも、それぞれの学校において、課題を明確にしながらプログラムに沿って学力向上を目指す取り組みを行っています。 また、妊婦の方や出産後6カ月以内の産婦の方に向けて、市では『出産ママヘルプ事業』と銘打ち、家事や育児の支援が必要なご家庭に、ワンコインでヘルパーを派遣する事業を行っています。市内には子どもが遊べる場所が多く、いまは恵向公園の整備を行っており、子どもばかりでなく高齢者も楽しめる公園を提供できたらと思います。おかげさまで子育て世代の転入も増えていますが、今後も様々な施策を続けていきたいと思っています」 ――昨年からは定額タクシーの実証運行を行ってきました。 「市民の皆さんの様々な声を聞きながら、本宮市の新公共交通システムをつくりあげるべく取り組んでいますが、その1つが会員になれば定額料金で一般の小型タクシーを利用できる『まちタク』です。市内の一部の地域では、以前よりデマンドタクシーを行っていますが、行き先が限定されるなどサービスが行き届いていませんでした。そこで『まちタク』は、乗降できる施設を大幅に増やしました。また、いままでの巡回バスをコミュニティバスに変更するなど、市内の公共交通システムを大幅に変更する取り組みを行っています。これは福島大学の吉田樹准教授をアドバイザーに迎え、様々な年代の市民と一緒になってつくりあげています。実証運行を行っている『まちタク』は利用者の反応も良く、改善を加えながら10月1日を目標に新たな公共交通システムの一つとして導入を図りたいと思っています。 移動手段のない高齢者はもちろん、移住してきた方々には自家用車や免許を持たない方もいますから、そういった方々への一定の交通手段は確保できると思います。また、鉄道が運休した際の代替交通としてバスが活用されており、移動手段の選択肢の1つにこういった公共交通システムは必要と実感しています。当然、それを維持できる財政状況を守っていくことも必要です」 ――JR五百川駅周辺整備を進めています。 「駐停車場の整備工事が着工しました。駅前が狭く危険だったため、まずは安全な駐停車場の確保を目指しています。今後はJRとの協議でトイレやバリアフリー化の整備を随時進めていくことになります」 ――本宮インターチェンジ周辺の開発も進められています。 「五百川駅周辺整備や交通の利便性に加え、人を呼び込めるような施設を考えたとき、商業施設がいいのではと思い、様々な商業施設と交渉しています。ほかにも様々な企業と交渉を進めていますので、いい形にしていきたいと思います。完成すれば多くの人々が集まる場所になり、渋滞も予想されますので、そういった対策も合わせて進めていきたいと思います」 ――今後の抱負を。 「市民の皆様から4年間の舵取りを任されましたので、市民の方々と一緒になって元気な本宮市をつくる先頭に立っていきたいと思います。これまでの12年間は震災・原発事故や水害、地震、そして新型コロナウイルスなど市民の皆さんにも多くの苦労があったと思います。これからの4年間は市民の皆様が穏やかに過ごせて活気あるまちになるよう努力していきたいと思います」
こはた・ひろし 1960年生まれ。東大経済学部卒。自治省(現総務省)に入省し岡山県副知事、消防大学校長、復興庁福島復興局長などを歴任。現在市長2期目。 ――2022年度の除雪関連の予算を過去最大の8303万円に拡大しました。1月の大寒波の影響をお聞きします。 「昨季の大雪では、除雪に対し市民の皆様から厳しいご意見をいただきましたが、今季は教訓を生かした対応ができたと思います。必要な予算の確保はもちろん、除雪を体系的に行うためのマニュアルを作りました。市民の皆様にもメールで降雪・凍結情報を即時に知らせています。 隅々まで除雪するには市民の皆様の協力が必要です。小型除雪機の貸し出しはこれまでも行っていましたが、今季は台数を増やし、周知を図りました。その結果、貸出実績は以前に比べるとかなり増えました。 岡部など東部地区の関係者とは、除雪アダプト制度という決めた範囲を責任を持って除雪する協定を締結しました。ありがたいことに丁寧な作業のおかげで生活道路の除雪体制は改善が図れたと思います」 ――政府は5月8日から新型コロナウイルス感染症の位置付けを5類に引き下げると発表しました。3月13日からはマスクの着用が緩和されます。「出口」が見えてきた中で市の経済や観光振興についての施策をお聞きします。 「『出口』に至るためには何よりも感染防止を徹底していくことが必須です。世代別で死者数が最も多い高齢者の感染は何としても防がなければなりません。高齢者と面会する場合のマスク着用などは、これまでと変わらず続けなくてはならないと考えています。 経済活性化に関して言えば、心強いのは『道の駅ふくしま』という地域活性化の核ができたことです。年間の目標来場者数は133万人でしたが、オープンから約9カ月で150万人に達し、売り上げも11億円を超えました。冬季の来場者が減る傾向にあるので、引き続きイベントやツアーなどを仕掛けていきますが、今春には『周遊スポット魅力アップ支援事業』を活用したスポットが続々オープンします。例えば、温泉旅館であれば魅力ある露天風呂を、観光農園であればインスタスポットを作り、点ではなく面で福島市を巡る楽しみを創出する仕組みを整え、それを物販にもつなげていきます。 福島市は新商品が生まれる傾向が弱い印象があるので、道の駅をベースに事業者同士の連携を深めて商品を作り出し、併せて発信もするというアンテナショップの役目をより強めていきます。 ふるさと納税の返礼品はその一環であり、私としては福島市のPRにとどまらず、マーケティングという地域経済活性化に即効性のあるものとして考えています」 ――福島駅東口で行われている市街地再開発事業について、当初計画より事業費や市が負担する補助金が増え、今後の精査によってはさらに増える可能性が指摘されています。 「資材が高騰しており、事業費増は避けられません。ただ精査をすることで、増えるだけではなく減らせる部分も見つかります。事業費圧縮に努めることを肝に銘じて精査を続けています。 国などからの補助金は通常であれば定率なので、資材が高騰しても増えるわけではありません。市としてはその状況を考慮し、さらに補助金を要請していきます。ただ国も、再開発事業が止まれば都市としての魅力が低下すると強く懸念しているので、負担軽減に向けた制度を作っている途中です。 また、完成後の運営を効率的に行うことも非常に大事です。今のうちから運営母体を決めて、その上で大規模・国際的な会議の誘致活動をしていきます。かかる経費はできるだけ収益で賄っていける基盤を作りたいと思っています」 ――市が昨年9月に発表した中期財政収支の見通しも非常に厳しい状況です。市債残高は膨らみ、2026年度には財政調整基金と減債基金の残高がなくなり、財源不足を埋められず必要な予算が立てられなくなると試算されています。 「財政は厳しいですが、やるべき事業はやっておかないと、後々の負担は逆に増えてしまうと考えます。いま手を打たなかったことで、都市の魅力が下がり、人口減少がますます進んでしまうことも危惧されます。そうなれば活力が失われ、街としてもっと苦しい状態に追い込まれてしまう。必要な事業を先送りすることなく実施していくことが大事だし、私はその精神でこれまでも取り組んできました。 人も富も集中する東京は民間が都市の魅力向上を果たしてくれる面が強い。しかし地方は、行政が主導的な役割を果たしていかないと都市としての存在感が低下していきます。私はそういう意識で、これからも市政運営に努めていきたいと思います。そのためにも行財政改革や事業の取捨選択、デジタル化などを進めていきます。 一方、『稼ぐ』という点では福島市が開発した全国的にも珍しい『議会答弁検討システム』を売り出していきます。本来は民間が稼げるようにするのが一番なのですが、行政自らが『稼ぐ』ことを意識し、財政の持続可能性を達成したいです」 ――老朽化する消防本部、市立図書館など、市内には建て替えが必要な公共施設が多数あります。どのように対応していきますか。 「すべての施設を建て替えるのは財政状況を考えると困難です。再編統合や規模縮小など多少痛みを伴うこともあるかもしれません。 とりわけ消防本部は災害対策の要ですから、耐震面に大きな問題がある状況は1日でも早く解消しなければなりません。 これから本庁舎西側で市民センターの建設が本格化します。同センターには市民会館や中央学習センターを再編統合した機能が備わります。一方、消防本部は市民会館の跡地に建設する計画です。市立図書館も老朽化が著しいですが、新たな建設場所などは決まっていません。財政状況にもよりますが、まずは消防本部の建て替えを優先し、その後、市立図書館の建設に着手できるよう検討を進めたいと思います」 ――念願だった古関裕而さんの野球殿堂入りが実現しました。 「祝賀ムードを維持しながら古関裕而記念館での発信に努めていきます。野球殿堂入りの証しとなるレリーフを展示し、多くの方に見に来てもらえるようにしたいと思います。 野球の試合を県営あづま球場で開き、古関さん作曲の歌で応援合戦をするのも一つのアイデアだと思います。今回の野球殿堂入りを機に、福島市を野球の聖地の一つにできないかと密かに考えています。 古関さんの曲は親しみがあって心地よい、古びないメロディーです。世代を超えて古関さんへの愛着を継承できる仕掛けを街なかに作っていきたいと思います」
すだ・ひろゆき 1958年生まれ。宇都宮大農学部卒。福島県に入庁し県北農林事務所長などを歴任。2018年1月の伊達市長選で初当選、22年1月に再選。 ――2期目の市長選挙で公約に掲げた「安心・安全の確保」、「雇用の場の確保」、「子育て・教育の充実」、「健幸・福祉のまちづくり」の進捗状況についてお聞きします。 「『安心・安全の確保』については、1期4年の間に令和元年東日本台風が発生し、新型コロナウイルス感染症が感染拡大したのを受け、2期目でも最優先課題に位置付けました。 災害対策として大型排水ポンプ車を導入し、いつ水災害が発生しても速やかに出動できる体制を整備しました。この間、幸いにも出動する機会はありませんが、引き続き伊達市建設業協会と締結した『排水ポンプ車による緊急排水業務の支援に関する協定書』に基づいた機動的な対応をはじめ、職員も稼働に携われるよう訓練を進めていきます。 危機管理対策の一環としては『伊達市防災アプリ』の運用を始めたほか、雨量計や河川監視カメラを設置するなど、災害に関する情報収集や監視機能の強化を図っています。コロナ対策としては、重症化を防ぐ観点からワクチン接種が重要となります。集団接種は終了しましたが、伊達医師会との連携のもと市内の各医療施設で接種できる体制を整えており、接種機会の確保に取り組んでいます。 『雇用の場の確保』については、本市の基幹産業である農業の担い手確保が喫緊の課題です。この間、新規就農者の経済的負担軽減のため、農地の賃料補助や農業機械の購入補助、家賃・生活費の補助などきめ細かな支援策を展開してきました。一方で、本市は、モモ、キュウリ、製法確立100周年を迎えたあんぽ柿など全国に誇れる特産品があります。今後もブランド力の維持はもちろん、その裏付けとなる生産量をしっかり確保していくことが求められます。引き続きトップセールスやメディアを通した戦略的なPR活動を展開しながら販売促進の強化に努め、農業所得の向上につなげていきます。 若者定住の促進も見込んだ伊達市新工業団地も完成の運びとなり、販売面積の約9割が成約となっています。2024(令和6)から本格的に進出事業所が開業する見通しなので、雇用創出効果が期待できると思います。また、同年度には、大型商業施設『イオンモール北福島(仮称)』がオープン予定で、約3000人の雇用が見込まれるなど、多様な形の雇用の創出が期待されます。 『子育て・教育の充実』については、働く世代が子どもを安心して預けられる環境づくりが重要との観点から、市内3カ所に認定こども園を整備しました。放課後児童クラブや屋内遊び場などのさらなる充実を図るとともに、伊達小学校改築や霊山中学校の耐震化など子どもたちが安心・安全に学べる環境整備にも取り組んできました。そのほか、各児童・生徒へのタブレット端末の配布と各学校への大型電子黒板の導入、総合型地域スポーツクラブ設立による地域スポーツの充実を図ってきました。 『健幸・福祉のまちづくり』については、健康寿命の延伸がキーポイントです。本市では、運動習慣化支援として、地区集会所を拠点に参加者同士が交流しながら気軽に楽しく運動を行う『元気づくり会』事業を展開するなど、健康増進活動の定着を図ってきました。コロナ禍による影響で活動が制限された期間もありましたが、現在は130団体を数えるなど活発に展開しています」 ――政府では、5月8日より新型コロナウイルス感染症を感染症法の2類相当から5類に引き下げる方針を示しました。 「本市としては、引き下げ以降も引き続き感染防止対策は必要と考えています。政府には今後の感染状況を注視しながら国民が不安を覚えたり、医療現場が混乱することがないよう現場の声に耳を傾ける対応をお願いしたいと思います。そのほか、高齢者施設や医療施設のクラスター対策をはじめ、ワクチン接種の公費負担延長、コロナ禍で冷え込んだ地域経済の再生に向けた経済支援策の継続を切に願います」 ――コロナ禍により地域経済が疲弊する一方、最近は光熱費の高騰による影響が深刻です。市としてどのような対策を講じていますか。 「昨年7月から12月まで、プレミアム率40%の『伊達市プレミアム4応援券』を計5万3500セット(紙仕様、デジタル仕様)発行し、すでに完売しました(利用率99%)。消費喚起に加えて、物価高による影響も緩和できたと感じます。 一方、エネルギー価格や物価高騰の影響を受け、売り上げが前年の同じ月と比べ20%以上減少している市内中小企業には『伊達市中小企業エネルギー等高騰対策事業継続応援金(申請は2月15日終了、1事業所一律10万円)』を交付するなどタイムリーな経済対策を講じています」 ――国道349号整備の見通しについて。 「月舘、霊山、保原、梁川を南北に結ぶ幹線道路です。生活や物流のみならず、国道4号、東北自動車道、相馬福島道路の代替路線に位置付けられ、緊急搬送や災害物資輸送道路としても重要な機能を発揮します。現在、県境を接する宮城県丸森町では国直轄事業として鋭意整備が進められています(2024年度の開通予定)。本県側でも宮城県境から兜町までの300㍍区間が一体的に整備されており、兜町以南の2・2㌔区間はルート検討に向けた測量調査業務が実施されています。本県側も遅れることのないよう、県や関係機関に早期着工を強く働き掛けていきます」 ――2023年度の重点事業についてうかがいます。 「防災体制のさらなる整備をはじめ、現在改修を進める伊達市保健センターへの子どもの養育相談や発達教育支援の集約化、イオンモール北福島内のアンテナショップ出店に向けた検討・準備、商店街活性化に向けた新規事業や起業の支援、行政手続きのオンライン化、デジタル弱者対策、集落支援員の配置による地域問題の相談や問題の共有化、アプリを活用したマイナンバーカードの普及とさらなる行政事務等の効率化を図ります。 伊達市では、10年後の本市のあるべき姿を実現するための指針として伊達市第三次総合計画を策定しました。計画期間は2023(令和5)年から2032(令和14)年の10年間で、将来像として『人と緑と歴史が結び合うひかり輝く田園空間・伊達市』と定めました。お互いを思いやるやさしい人間性を象徴する『人』、農業や豊かな自然を象徴する『緑』、そして、伊達氏発祥の地、北畠顕家が国府を開いた霊山などを象徴する『歴史』。これら3つの宝を守り伸ばしながら、本市が光り輝く田園都市となるようまちづくりを進めていきます」
しらいし・たかし 1960年生まれ。田村市(旧船引町)出身。上武大学商学部卒。同市議1期を経て2021年4月の同市長選で初当選を果たした。 ――市内ではコロナの出口戦略に向け、特に観光面で明るい材料が散見されます。 「昨年行った『たむらの桜88撰総選挙』が好評を得、愛称が『田村の美桜88景』に決まり、今年はフォトスタンプラリーを行います。88カ所は1年では回りきれないので、数年かけて回ることでリピーターになっていただく狙いがあります。併せて桜ウオークも開催する予定となっています。 第2回クワガタサミットも開催します。昨年開いた第1回サミットには全国から昆虫好きの方々が集まり大好評をいただきました。全国には昆虫でまちおこしを行っている地域が多くあるので、昆虫の聖地を目指した協議会を立ち上げようと準備を進めています。昆虫は良好な自然環境の象徴という意味で復興をアピールする材料にもなり得るので、いずれは世界サミットを開催したい希望も持っています。 今年はあぶくま洞が開洞50周年を迎え、9月の秋まつりでイベントを行います。また、あぶくま洞は『恋人の聖地』認定を受けていますが、福島市の四季の里も認定され県内2カ所となったので、両施設でさまざまな連携を図り、PRに努めていきたいです」 ――常葉町地内に整備中の東部産業団地に工場進出が決定しました。 「2区画あるうち、昨年1社の進出が決定しました。残り1区画もご検討いただいている企業があるので、早期に決定できるよう引き続き営業活動に注力します」 ――移住・定住に向け田村市・東京リクルートセンターや田村サポートセンターを開設しましたが、その効果は。 「令和3年度は移住相談が86件寄せられ、5世帯12人が市内に移住されました。4年度は12月現在で相談237件、10世帯16人が移住されました。移住希望者の中には仕事を探している方もいるので、市では独自の創業・起業支援としてキッチンカー移住チャレンジ事業を行っています。キッチンカーを無償で用意し、商品開発や出店支援を行うもので、3月には市内のイベントでカレー、ハンバーガー、パンケーキのキッチンカーがデビューします。食材も地元産にこだわり、農産物の6次化につながることも期待しています。 以前、この地域は葉タバコ栽培が盛んでしたが、現在、市場は縮小しています。そこでサツマイモ栽培に力を入れ、一昨年にはサツマイモ貯蔵施設が完成・稼働しました。同施設には東北でも珍しいキュアリング設備があり、サツマイモを貯蔵するだけでなく食味向上も図れるので、昨今のサツマイモブームにのって葉タバコに代わる農産物栽培と6次化につなげていきたいです」 ――たむら市民病院の新病院建設をめぐり、市議会内に百条委員会が設置され調査が続いています(※白石市長へのインタビューは2月13日に行った)。 「公共事業の役割は、社会資本を整備することと地域経済を活性化させることだと思います。この二つの観点から、私は最優秀提案者に安藤ハザマを選びました。 プロポーザル委員会は最優秀提案者に鹿島を選びました。しかし両社の企画案を比べると、安藤ハザマの方が建設費が安く、地域貢献度も高かった。さらに多数決では、委員7人のうち4人が同社を選んでいた。にもかかわらず、その後の話し合いで鹿島が選ばれました。 もちろん、プロポーザル委員会は理由があって鹿島を選んだのでしょうが、市民から直接選ばれた立場である市長としては、市民にとって良い選択、すなわち将来に負担(借金)を残さないためには少しでも建設費が安い方がいいし、多くの地域貢献がもたらされる方がいいと判断しました。また、市民や市議会から『なぜこの業者を選んだのか』と問われた時、明確に説明できる材料がある方を選んだ方が余計な疑いを招かなくて済む、とも考えました。 今回、市議会内に百条委員会が設置され、(同委員会による)証人喚問では事実のみを丁寧に述べさせていただいたつもりです」 ――元職員が逮捕・起訴された贈収賄事件をめぐっては市発注の入札に市内の業者が関与していたことが明らかになりました。 「今回の事態を深刻に受け止め、こういったことが二度と起きないような組織体制を構築すべきと考え、副市長を先頭に綱紀粛正を図っているところです。 ただ、言葉で言うだけでは実現は難しいので、全職員を対象にコンプライアンス研修を行い、全庁が同じ方向を向いて仕事を行えるよう倫理観の向上に努めているところです。また、各所属長に依頼し、職員への聞き取りやシステム・パスワード管理に関する調査を行いました。これにより現状を把握するとともに、改善が必要と認められた部分はその都度改善を行うようにしています」 ――屋根工事などにトラブルが発生し、事業が中断していた屋内遊び場の進捗状況について。 「多くの市民の方にご心配をいただきましたが、建築主体工事は、ほぼ完了し、現在は内装や遊具設置、外構工事などを行っています。3月下旬には完成し、4月末のオープンに向けて運営業者に委託し進めていきます」 ――昨年11月、JR東日本の2021年度収支で磐越東線のいわき―小野新町間が6億9000万円の赤字という報道がありました。 「報道後すぐに小野・三春両町長と話し合いを持ちましたが、沿線自治体という点では郡山・いわき両市や県との協力も不可欠です。ただ、ある一定の区間が赤字だからといって全線が不要かというと、それは乱暴な考え方だと思います。 磐越東線は三十数年前も廃止対象となり、田村青年会議所を中心に存続運動が展開された経緯があります。市内には実に六つの駅が存在しますが、同線は市民にとっても貴重な移動手段であり、地域公共交通体系の根幹となる要素ですので、存続に向けた取り組みをしっかりと行っていきたい」 ――最後に、令和5年度の重点事業について。 「五つの政策枠を設けます。一つ目は豊かなふるさと実現枠。この中には新病院建設、健康長寿サポート事業、ムシムシランド移設などが含まれます。二つ目は地域創生枠。移住定住対策や産業振興、少子化対策などを行います。三つ目は新生活創造枠。昨年立ち上げたオンラインショップの運営やDXの推進などを図っていきます。四つ目は復旧・復興枠。都路町の複合商業施設の建設を進め、林業推進などにも努めます。五つ目は危機管理枠。自主防災組織を構築し、有事の際は機能できる体制にしていきたいです」
こざくら・あきら 1941年生まれ。㈱桜交通、㈱さくら観光代表取締役。県交通安全協会副会長を経て、2015年6月から現職。 ――昨年11月に福島市で高齢運転者による死亡事故が発生しました。交通安全の呼びかけに加え、高齢者が運転免許証を自主返納しやすい環境づくりが求められます。 「高齢者によるアクセルとブレーキの踏み間違いなど運転操作ミスによる重大交通事故が全国的に発生している中、県内でも昨年11月、福島市内の90代の男性が運転する車両が歩道の女性をはねるなどし、5人を死傷させる事故が発生しました。 昨年、県内で運転免許証を自主返納された65歳以上の方は約6000人います。これらの情勢を踏まえ、当協会では県トラック協会の協賛を受け、昨年12月15日から65歳以上の高齢運転者が運転免許証を返納する際に、長きにわたる安全運転に敬意を表すべく『運転卒業証書』を交付しています。同事業開始から本年1月末までに382人の方に運転卒業証書を交付しております。今後も同事業を通じて運転免許証を返納しやすい環境づくりを進めるとともに、高齢化社会を地域全体で支える機運を盛り上げるべく努めていきます」 ――協会では、3人1チームで互いに無事故・無違反を目指す「セーフティチャレンジ事業」に取り組まれていますが、昨年の実施状況についてお聞きします。 「2015年から8年連続で2万チーム、6万人を超えるドライバーが参加しています。昨年の参加者は前年比でわずかに下回ったものの、2万1269チーム、6万3807人の参加をいただきました。高齢運転者の事故防止を目的としたシルバー枠も、昨年は2020チームが参加しています。 無事故・無違反達成チームは1万9131チームで、達成率89・9%と前年を1・6ポイント上回り、過去最高となりました。一方、ドライバーの参加率は依然として全体の5%程度ですので、多数のドライバーにぜひ参加してほしいと思います」 ――来年度の重点事業について。 「昨年は、県警をはじめ、各交通関係団体と連携して交通安全運動を推進した結果、交通事故発生件数2702件(前年比マイナス295件)、死者数47人(同マイナス2人)、傷者数3132人(同マイナス314人)であり、すべての項目で対前年比減少を達成しました。 特に死者数は現行の統計が始まった1948(昭和23)年以降最少となり、4年連続で最少を更新しました。一方、交通死亡事故発生状況を分析すると、①全死者数のうち高齢者が6割を占めるなど高齢者被害の割合が高い点、②歩行中や夜間の事故が多い点、③四輪車乗車中の死者のうち3割がシートベルト非着用である点――などが傾向として挙げられます。 当協会ではこれら傾向を踏まえ、本年も特別重点事項として『交通死亡事故の抑止』を掲げ、地区交通安全協会、関係機関・団体と協力しながら交通安全諸対策を推進していきます。特に高齢者の事故防止対策として、県警と連携し『ピカッと・カチッと大作戦』を展開し、夜光反射材やシートベルト着用などの促進活動に注力するほか、『ドライバー総参加のセーフティチャレンジ事業』による県民の安全運転・事故防止への意識高揚を図っていく所存です」
よしだ・のぶあき いわき市出身。秋田大卒。1990年に福島県庁入庁。道路管理課長、道路計画課長などを経て、昨年4月から現職。 ――近年はインフラや建造物の維持管理やメンテナンスも重要な業務となっています。 「インフラの多くは高度経済成長期に建設され、建設後50年を経過する施設が増加していることから、日常の維持管理、老朽化対策による予防保全の取り組みは非常に重要となっております。道路については、利用者の安全な通行に備えるため、毎日パトロールするとともに、特に橋梁、トンネル等の構造物は、長寿命化修繕計画に基づき、計画的な点検・診断・措置・記録によるメンテナンスサイクルの取り組みを進めております。令和4年度は14橋の補修工事を行い、来年度も同数程度の補修工事を行う予定で、引き続き計画的に修繕を進め、安定した施設の機能確保に努めてまいります」 ――令和元年東日本台風からの復興状況について。 「令和元年東日本台風で甚大な浸水被害があった夏井川及び好間川については、浸水被害の解消に向けて重点的に取り組んでおり、災害復旧に流下能力を高めるための改良を加えた災害復旧助成事業により、夏井川は新川合流部から小川地区までの14・9㌔、好間川は夏井川合流部から常磐自動車道いわき中央IC付近までの6・6㌔について整備を進めております。令和3年度までに破堤箇所の復旧、狭窄部や堆砂の著しい区間の河道掘削を行い、令和4年度からは本格的な河道掘削、護岸、堤防強化のための舗装工事を推進しております。 また、夏井川、好間川の改良復旧区間を除いた河川、海岸、砂防、道路及び橋梁の公共土木施設の被災箇所222箇所については、令和4年度末には全ての箇所で完了を見込んでおります」 ――小名浜道路をはじめとした各種道路事業の進捗について。 「小名浜道路は、『ふくしま復興再生道路』に位置づけられ、いわき市泉町からいわき市山田町に至る全長8・3㌔、4つのICを有する無料の自動車専用道路です。重要港湾小名浜港と常磐自動車道を直結することにより、広域物流ネットワークの強化や小名浜周辺地域の産業振興・観光を支援することを目的としたもので、常磐自動車道から小名浜港までの所要時間がこれまでの半分の15分程度でアクセスが可能となります。 現在は、全9区間で工事の最盛期を迎えており、4つのICの形が確認できるまでに進みました。また、本年1月には、(仮)小名浜IC工事で、常磐自動車道に交差する高架橋を架けるなど、令和4年度末で、全13橋のうち8橋が完成を予定しており、早期完成に向けて引き続き工事を進めてまいります。 また、小名浜港周辺から小名浜道路を経由して中通りへのアクセス機能の向上を図るため、いわき上三坂小野線の小名浜道路の終点(仮)山田ICから遠野町方面に至る3・5㌔区間について、現道拡幅を計画的に実施してまいります」 ――防災事業の進捗について。 「気候変動等により、頻発化・激甚化する自然災害から、住民の命、暮らし、財産を守るため、計画的に防災・減災、国土強靱化5か年加速化対策を活用した事業に取り組んでおります。 令和4年度は、水災害対策として河道掘削及び伐木、堤防強化、土砂災害防止のための砂防事業、道路の落石対策等を実施しており、令和5年度につきましても引き続き防災対策を加速してまいります。 また、流域のあらゆる関係者が協働して、水災害を軽減させる流域治水プロジェクトを夏井川、鮫川及び藤原川の3河川で策定しており、プロジェクトに基づき河川監視カメラの設置による情報伝達の向上や出前講座による防災意識の向上等、実効性のある取り組みを一層推進することでハード及びソフト対策が一体となって、流域全体で被害を軽減させる防災対策を一層推進してまいります」
むらかみ・てるまさ 1955年生まれ。日大東北工業(現・日大東北)高卒。2004年から小野町議を4期務め、その間、議長を歴任。2021年3月の町長選で初当選。 ――新型コロナウイルスの影響について。 「医療機関や福祉施設でのクラスターの発生、地域経済の停滞など、さまざまな面で影響がありましたが、感染対策徹底に向けた広報活動や事業者支援などの経済対策により、町民の安全・安心と経済活動の維持に取り組んできました。一方で、コロナ禍の中、町民の皆さんに少しでも笑顔を取り戻してもらうため、昨年10月には感染対策を徹底したうえで3年ぶりに『ふれあいフェスタ』を開催し、さらに今年1月には20歳の集いを催したところです。新たな変異株発生など、まだまだ油断できない状況ではありますが、引き続き感染対策の徹底を図りながら、イベントの開催や観光客の誘客などにより、町のにぎわいを取り戻していきたいと考えています」 ――昨年には認定こども園が開園しました。 「町として初の公私連携幼保型認定こども園となりますが、保護者の皆さんに安心と信頼をいただけるよう、当面は町職員の派遣を行うとともに、子育て担当課との定期的な打ち合わせの実施などさまざまな連携を行い、お子さんが心豊かにたくましく成長できるよう支援していきます」 ――町民の健康増進の取り組みについて。 「昨年は、ウオーキングコースマップの作成や『ふれあいフェスタ』での健康関連ブースの設置などに取り組みましたが、今年は健康と食を融合させたイベントの開催を検討しています。また、新たなウオーキングコースマップの作成や運動器具の増設、健康づくり講演会の開催など、健康増進に向けた意識の醸成に取り組んでいきます」 ――地域連携の強化について。 「田村地方において、さまざまな連携をしていますが、特に観光面では、田村地方の観光協会の連絡協議会が発足する運びとなっているので、今までとは違う魅力的な観光PRが展開されることを期待しています。また、現在、ふくしま復興再生道路として県道吉間田滝根線の整備が進んでいますが、開通されれば、浜通りと中通りを結ぶ重要な路線となり、新たな地域間交流が期待されますので、双葉郡との地域連携についても検討していきたいと思います」 ――最後に今後の抱負を。 「地域の活性化です。人口減少と少子高齢化、さらに新型コロナウイルスの影響により、地域活動の維持が難しくなっています。地域づくり協議会の活用などによる新たな地域づくりに向けて、町民の皆さんの理解を得ながら将来に向けた改革を進めていきます。 また、昨年、JR東日本から磐越東線小野新町―いわき駅間において厳しい経営状況にあることが示されたところですが、生活や地域振興のうえで欠かせない路線ですので、田村地方はもちろん、いわき市や郡山市とも連携して存続を訴えていきたいと思います。さらに県立小野高校の統合が決定されましたが、その影響が最小限で済むよう、空き校舎を活用した地域振興対策などの検討を進めていきます。 地域の活性化には、移住人口や交流人口を増やしていく必要があります。空き家についてホームページ上で公開するなどして利活用を進めていくほか、町の魅力をさまざまなツールを活用して発信することで、町に少しでも興味を持ってくれる人を増やしていきたいと考えています」
組織改革進めながら難局乗り越える ふじた・みつお 1953年生まれ。中央大卒。藤田建設工業㈱取締役会長。福島県中小企業家同友会副理事長を経て2017年4月から同理事長。2021年4月から現職。 ――昨年11月25日に開催された臨時総会で次年度の新会長に会津支部代表理事の齋藤記子さんが選出されました。理事長職4年と会長職2年の6年間を振り返って率直な感想を。 「福島同友会の理事長職や会長職だけでなく全国組織である中同協で副会長という役目をいただいたりと、さまざまなことで勉強させていただける機会がありました」 ――印象に残っている活動は。 「1つは福島同友会の1年間の学びを収録した年誌『PAGE』を毎年発行できたことです。これほどの内容やボリュームの冊子を毎年発行しているのは、全国の同友会の中でも北海道と福島くらいです。先に発行していた北海道同友会の冊子を見て、ぜひ福島でも作りたいと思い、当時の北海道同友会の副会長にお願いして実現した取り組みでした。4月に第5号が発行予定です。会員に限らず各自治体や金融機関などにもお配りしているので、同友会の活動を多くの人に知ってもらえるいい機会になっています。 2つは組織改編を行ったことです。全国の中同協の会議に参加する中で、全国の各同友会のほとんどが代表理事制を敷いており、福島だけこのまま理事長制でいいのかなという思いがありました。議論を重ねて改革し、理事長制から代表理事制に変えることができました。代表理事制のメリットは、複数人の合議制で、意思決定をするのであれば、代表理事、副代表理事と段階を踏んで代表理事になる仕組みなので、組織の安定化が図れます。また県中県南・県北・会津・浜の4エリアを代表する方に代表理事を担っていただくことで各エリアの活動が活発化し、エリア間の連携も強化されました。 3つは2021年に中小企業問題全国研究集会を福島で開催できたことです。ただコロナや地震の影響でオンライン開催となってしまったのは心残りですね」 ――会長になる斎藤記子代表理事に期待することは。 「まずは齋藤記子さんに会長職を引き受けていただいて本当によかったと思っています。齋藤さんとは委員会や理事会で一緒に活動する機会が多くありました。そんな中で、齋藤さんのスバっと物事の本質を突く発言や、持ち前の明るい性格に触れ、素晴らしい人だなと感じていました。 齋藤さんが経営する会社は介護関係の事業ですが、介護保険法ができる以前から、家庭の介護に問題意識を持って取り組んでいたようです。『チャレンジャーだな』と思います。県の人事委員長を務めるなど、各方面での人脈が広いので、同友会の活動で必ずプラスになると思います。同友会のお母さん役として、若い人たちをうまくリードしていってほしいです」 新会長の運営に期待 ――長引く新型コロナ、物価高、燃料費高騰が深刻な問題になっていますが、会員企業にはどのような影響が出ていますか。 「大変な影響を受けています。特に飲食業界や旅館・ホテル関係の会員はコロナによって大きく売り上げを落としました。ただそうした大変な状況でも、飲食業界でいえば、大家に値下げ交渉したり、弁当を売るなどの業態シフトを行ったりして、『いい会社』をつくろうと元気に活動を続けています。 ただ、物価高においては、中小企業はなかなか価格転嫁できない立場なので厳しい状況です。燃料費高騰に関しても、電気を多く使う工場系の会員は、電気代が4割強も値上げしたことによる影響で、待ったなしの状況です。 ただ、時代が大きく変わっている今こそ、新たなビジネスチャンスが生まれ、それにうまく対応できた人が生き残っていくのだと思います。そういう意味では、同友会の会員同士で勉強しながら、少しでも経営のヒントが得られればいいですね」 ――2023年の抱負。 「個人としては、齋藤さんに会長職を引き受けていただいたので、静かにフェードアウトして、相談役という立場から何かあれば手助けできればと思っています。 同友会としては、会長が代わり、代表理事も多く入れ替わるので、齋藤記子〝色〟でスムーズに運営していければいいですね。 今後は各支部の下部組織の適正化をしていきたいと思っています。参考にしているのは、愛知同友会が組織運営のルールとして定めている『支部の下部組織の地区会の規模は100人以内とする』というものです。 常日頃活動する基礎組織は、顔と名前が一致するくらいの人数で行うのが適正だと思っています。会員数の多い支部にはそれなりのメリットもありますので、もちろん各支部はそのままとして、その下部組織の適正化を進めていきたいです。組織活性化委員会にて侃侃諤諤に議論を重ねており、2年後から実行していきたいと考えています」
伴走型支援で信頼される商工会へ くつわた・くらじ 1942年生まれ。岩瀬村商工会・岩瀬商工会の会長を6期務める。2012年5月から現職。現在4期目。2021年6月から全国商工会連合会副会長。 ――新型コロナウイルスの影響はいかがでしょうか。 「商工会の会員は小規模事業所が多くを占めており、大変厳しい経営を強いられています。少子高齢化による購買力の低下をはじめ、後継者難、頻発する自然災害、ALPS処理水の海洋放出による風評被害の懸念、さらにはウクライナ侵攻に端を発した電気・ガスの高騰や物価高にも大いに苦しんでおり、全業種にさまざまな影響を及ぼしております。今年は、いわゆるコロナ融資の返済時期を迎えますが、売り上げが持ち直せない中、非常に心配しています。一方、巣ごもり需要や円安需要を受けた事業所もありますが、そうした事業所は人手不足に苦慮するなどの課題を抱えています」 ――10月から、消費税の仕入れ税額控除の方式としてインボイス制度が導入されます。適格請求書発行事業者になると年間売り上げが1000万円以下であっても免税業者にはならず消費税の申告義務が生じます。 「当連合会において最も悩ましい問題です。免税事業者を中心に制度内容について理解が進んでいないのではないかと危惧しています。特に、個人事業主は高齢の方が多く、新たに発生する事務処理などで、大きな負担となっているのが実情です。 現在、県内88商工会で相談窓口を設置し、巡回指導の強化、広報媒体による周知活動、講習会も開催しているほか、個別に税理士などの専門家派遣をして周知に努めています。 全国商工会連合会では、国に対し政府主導による同制度の周知を十分に行うとともに、免税事業者が取引先との関係から排除されることがないよう、万全の支援策を講じています。さらに制度施行後も中小・小規模事業者への複数年にわたる支援措置を要望するなど積極的に活動を展開しています。同制度の施行を機に、免税事業者が廃業せざるを得ない状況は避けなければならないので、職員による徹底した指導に努めながら、事業継続につなげていきたいと考えます」 ――震災・原発事故から間もなく12年目を迎えます。会員事業所の現状は。 「被災地の商工会管内別事業再開率は、久ノ浜町98・1%、広野町97・2%、楢葉町91・7%、富岡町92・9%(地元再開率50・7%)、川内村95・6%、葛尾村100・0%、大熊町75・7%(同18・3%)、双葉町69・6%(同19・2%)、浪江町73・4%(同32・9%)、鹿島96%、小高70・5%(同45・4%)、飯舘村76・2%(同43・3%)、都路村97・3%、川俣町100・0%となっています。 特に、原発事故の被害が甚大だった大熊町、双葉町では将来の地域を支える若い世代の帰還が進んでいない状況です。当連合会でも、引き続き被災自治体と連携を図りながら、住民と事業者の帰還はもちろん、避難先での事業継続と安定を支援していかなければならないと考えます。また、新たに起業を志す若年層の受け入れ環境を整備するなど被災地活性化にも寄与したいと考えます。 一方、東電による賠償打ち切りによって事業継続を断念せざるを得ない事業者が増えることを懸念しています。東電に対しては、原発被災地の支援を継続するよう強く訴えかけていく考えです」 ECサイトを充実・強化 ――2023年度の重点事業は。 「1つは、『アフターコロナを見据えた経営の支援』として、ECサイト『シオクリビト』による通販事業の充実・強化を図っていきます。同事業は大変好評なので、今後はさらに発展させながら、消費喚起や需要掘り起こしを促進させ販路開拓支援の拡充に努めます。また、DXによる新たな顧客の創出と経営効率化の支援をはじめ、さまざまな経営リスク対策としての『ビジネス総合保険』等の推奨にも取り組みます。 2つは、『資金繰り支援』です。コロナ禍の救済措置である〝ゼロゼロ融資〟の元金返済が本格化し、利払いも始まる中、返済に不安を抱える事業者を支援するため、商工会相談窓口を開設し対応しています。併せて日本政策金融公庫等による低金利特別融資枠の取扱期間延長とともに、借り換えや融資時要件の変更、返済猶予を含めた支援策について国、金融機関に強く要望します。 3つは、『事業承継・創業支援の推進』です。日本政策金融公庫や福島県中小企業診断協会との経営支援に関する情報共有・連携強化を図りながら、マッチング支援、金融支援、経営改善・経営革新支援を展開します。事業承継問題は喫緊の課題なので、引き続き注力していきます」 ――今後の抱負を。 「当連合会は、徹底した伴走型支援を大きな柱に据えています。職員が積極的に会員事業者に出向くスタイルを貫くなど、しっかり寄り添った支援体制を構築しています。おかげさまで『商工会の職員は非常に良くやってくれている』との声も寄せられています。今後もこの方針を堅持しながら会員事業所から信頼される商工会を目指していきます」 https://f.do-fukushima.or.jp/
まるやま・かずき 1981年生まれ。北海道大学工学部卒、同大学院工学研究科修了。国土交通省水管理・国土保全局水資源部水資源計画課総合水資源戦略室課長補佐などを経て、昨年5月から現職。 令和元年東日本台風での水害を受け、福島河川国道事務所では〝令和の大改修〟と呼ばれる10カ年計画「阿武隈川緊急治水対策プロジェクト」を実施している。昨年5月に赴任した同国道事務所の丸山和基事務所長に、プロジェクトの進捗状況に加え、管内の道路事業やその他の重点事業等について話を聞いた。 ――昨年、事務所長として赴任されました。福島県、東北地方の勤務は初めてとのことですが、管内の印象はいかがでしょうか。 「福島県には大変温かい人柄の方が多く、海や山や湖など豊かな自然に囲まれ、空気も美味しいと感じています。福島県は北海道、岩手県に続いて3番目に広い都道府県なので、まだ訪問できていない地域もありますが、これから時間をかけて足を運んで地域への理解を一層深めていきたいと考えています」 ――〝令和の大改修〟と呼ばれ、令和10(2028)年度までの計画で事業が進められている「阿武隈川緊急治水対策プロジェクト」の進捗状況はいかがでしょうか。 「阿武隈川緊急治水対策プロジェクトでは、阿武隈川本川・支川における抜本的な治水対策を実施しているところです。現在の進捗状況は、被災した80個所の施設復旧が完了しています。 また、河川の水位を下げて水を流れやすくする河道掘削については、全体計画約220万立方㍍のうち、6割にあたるおよそ130万立方㍍(昨年9月末時点)の掘削が完了しています。 遊水地整備につきましては、鏡石町・矢吹町・玉川村の沿川自治体で住民説明会を行っており、昨年からは用地協議に着手したところです」 ――遊水地整備について、対象となる地元住民の反応はいかがでしょうか。 「先述の通り、遊水地整備に関しては住民説明会を実施しており、令和2年からこれまでに6回の説明会を開催しました。遊水地整備の必要性や効果、範囲や規模について住民の皆さまにお伝えし、ご理解とご協力をお願いしているところです。 住民の皆さまの中には遊水地の必要性や、より安全な場所に移転していただくことに対してご理解いただいている方もいらっしゃいます。 とはいえ、約150戸の家屋移転や約300㌶という広大な農地を住民の方々からご提供いただくことになるので、移転先の確保や生業の継続、これからの生活に関する住民の皆様の声をしっかりと受け止め、それを可能な限り事業計画に反映させ、住民の皆さまの意向に寄り添いながら整備を進めていきたいと考えています」 伊達橋早期復旧を目指す ――現在国道13号バイパス福島西道路のⅡ期工事が進められていますが、事業の進捗と開通による効果についてうかがいます。 「現在、事業区間である松川町浅川―大森間で地盤改良工事や橋梁工事を行っており、延長約1・8㌔の『浅川トンネル(仮称)』の工事にも着手していく予定です。用地買収やトンネル工事が順調に進んだ場合、令和8年度の開通を予定しています。 Ⅱ期工事区間の整備により、国道4号を回避する緩勾配のトンネル区間を含む新たなルートが形成されます。それによって国道4号の交通分散が図られ、交通渋滞の緩和につながるだけでなく、交通事故や冬期スタックの減少が期待されるのに加えて、災害に強い道路ネットワークの構築にもつながると見ています。さらには、福島市中心部から救急医療を担う福島県立医科大学付属病院へのアクセス性が向上し、救命率の向上が見込まれるなど、医療面での貢献も期待できます。今後とも地域の皆さまの事業へのご理解とご協力をいただきながら、早期開通に向け努めていきます」 ――その他の重点事業についてはいかがでしょうか。 「気候変動により、20世紀末と比較して今世紀までに2~4度の気温上昇が予想されています。これに伴い、降雨量、洪水発生リスクの増大が懸念されており、仮に2度上昇した場合でも、洪水の発生頻度はこれまでの2倍になると予測されています。 こういった気候変動への備えとして、現在当事務所で取り組んでいる令和の大改修はスピード感を持って進めることはもとより、自治体や企業、住民といったあらゆる関係者が協働し、流域全体で行う治水対策、『流域治水』が重要となってきます。当事務所をはじめとした河川管理者による治水対策だけでなく、被害対象を減少させるための対策、被害軽減のための対策をあらゆる関係者で取り組むことにより、地域の特性に応じた治水対策を実施していくことが不可欠となってきます。 現在実施している河川整備に加えて、田んぼダムや街中での雨水貯留施設整備といった流域での貯留対策、さらに、利水ダムの事前放流、避難に資する情報発信の強化など、水害に強いまちづくりとして、関係各所の皆さまと連携して流域治水の取り組みを進めていくことが重要であると考えています。 また、阿武隈川の支川である荒川は、12年連続で『水質が最も良好な河川』に選ばれており、流域の皆さまの河川愛護意識の高揚、官民一体での水質改善の取り組みの賜物であると実感しています。今後も流域の皆さまと協働し、良好な河川環境の保全に努めていきます。 道路事業では、令和4年3月16日に発生した福島県沖地震により被災した国道399号伊達橋の災害復旧を、福島県知事より要請を受け、国の権限代行として実施しています。これまで詳細調査を行った後に、地域交通確保のため、仮橋設置工事に着手しました。今後は被災した既存の橋桁の撤去工事、新設する橋桁の工事、下部工補強工事を進めていく手順になっており、地域の皆さまのご理解とご協力を得ながら、早期復旧に取り組んでいきます」 ――今後の抱負を。 「近年は豪雨・豪雪や大規模地震といった自然災害が激甚化・頻発化しており、地域の安全・安心確保のためにも、防災・減災に加えて国土強靭化の推進や、災害発生時の迅速な対応に備えていきます。 また、建設産業への対応ですが、建設産業は当事務所にとって事業推進のパートナーであるとともに、大規模災害時には最前線で活躍する『地域の安全・安心の担い手』であると考えています。そのため、建設産業の魅力向上・人材確保に向けてDⅩ推進や働き方改革・生産性向上について官民一体となって取り組んでいく所存です。 すべての取り組みに共通することとして、地域の期待に応えられるよう職員一丸で対応し、活力ある地域づくりに貢献できるようにしていきます」
すずき・としお 1947年生まれ。国立平工業高等専門学校中退。アクティブワン代表取締役。2013年から白河商工会議所副会頭、昨年11月から現職。 白河商工会議所は昨秋の役員改選で、新会頭に鈴木俊雄氏(アクティブワン代表取締役)を選任した。鈴木氏は改選前まで副会頭を務めており、昇格という格好になる。就任間もない鈴木会頭に、今後の抱負や新型コロナウイルス感染症の会員事業所への影響、そのほかの課題などについて話を聞いた。 ――昨年11月に新会頭に就任しました。 「副会頭を9年間務めましたが、会頭という立場は階段を数段駆け上がったような大きな重みを感じています。会頭に就任してから数カ月が経過しましたが、会頭は全ての場面で表に立つ立場ですから、あらためて責任を実感しています。一方で副会頭を長らく経験してきたこともあり、他会議所等の人脈や経験もありますので、それを生かしながら進めていきたいと思います」 ――新型コロナの影響について。 「国内で感染予防を徹底しても海外から多くの観光客が移動すれば防ぎようがありません。そういった意味で集団免疫が出来るまでは仕方ないと感じています。スペイン風邪など、いままでの感染症の歴史を見ると、終息までに3年程度を要しています。しかもスペイン風邪の流行時はワクチンがありませんでした。それにもかかわらず3年で終息しています。今回は、ワクチンを接種して感染のスピードを緩やかにしつつも、結果的に3年が経過しています。集団免疫が出来つつありますが、それが出来上がるまでは感染が広がるのはやむを得ないと思います。ワクチンを接種し、重症化リスクを下げていくことで、積極的に経済活動を再開させていくべきだと思います。 そのためにも、まちなかの賑わいづくりに欠かせない事業所支援は必要です。会議所としても県や市に働きかけ様々な支援策を講じています。最近では、当会議所と大信・表郷・ひがし商工会が市の委託事業により『しらかわ生活応援クーポン』を配布しました。これは250円クーポンが12枚つづり(3000円分)になったもので、500円以上の買い物や飲食で使用でき、市民の皆さんにも好評を得ています。 それでも県内は震災復興が8合目を迎えた矢先で、加えて一昨年、昨年と大きな地震が発生し、被害を受けた事業所も多いのが現状です。そのため、こういった支援策を講じても、コロナ禍で3年が経過したことで飲食店をはじめとする小規模・中小企業事業者の多くは、限界を迎えています。加えて、今後、コロナウイルス支援対策で受けた融資制度の返済が始まればさらに苦しい状況に立たされます。国では返済期間の延長を考えてくれていますが、もともとあった後継者問題や、ロシアのウクライナへの侵略戦争に伴う影響、急激な円安による諸物価の高騰といった問題も出てきています。 会議所としては、先ほど話したクーポン事業等をはじめ、職員による補助金申請サポートといった支援策を講じているものの、会議所単独で行えることには限界がありますから、国や県にはさらなる支援策の拡充を望みたいと思います。 そんな中、国では防衛費の増額による増税やプライマリーバランスを黒字化するといった報道が出ていますが、いまこそ経済支援に目を向けるべきだと思います」 市街地活性化に努める ――白河だるま市が今年は通常開催されるなど、コロナ対策によって中止していたイベント等も再開しつつあります。 「だるま市は3年振りに開催されることになったほか、イベント等も再開され、今後の経済活動の活性化には期待したいと思います。一方で、伝統的な祭りなどはコロナ禍によって人材や資金不足に陥っています。今後はそういった祭りを観光資源として生かせないか、議論していきたいと思います」 ――国道294号バイパスが間もなく全線開通を迎えます。利便性が向上する一方で、中心市街地への影響が懸念されます。 「今回のバイパス開通は会議所としても何度となく要望してきたものです。東北自動車道白河スマートICから市内に入り、国道289号まで一直線で行けるため、慢性的だった交通渋滞の解消、商工業の物流面、観光面に与える影響は大きく、期待を寄せています。今後この道路をどう生かしていくべきか問われると思います。 白河市や西白河・東白川地域等を加えた県南地域の人口は約13・5万人ですが、製造品出荷額等は約9380億円で県内ではいわき地域とほぼ一緒です。いわき市の人口は33万人以上と県内でも大きな都市ですが、その地域と製造品出荷額等が同じということはそれだけ白河地域にまだポテンシャルがある証拠だと思います。とはいえ、管内事業所は人材不足に苦しんでいます。そのためには他地域から人材を集める必要があり、寮などの整備議論も進んでいます。半面、若者がそういった企業に就職するため、地元の商店街や農家では後継者問題を抱えているのが現状です。そういったバランスを見ていかないとまちづくりはうまくいかないと思います。 一方で、田町や横町などの商店街はバイパス開通によってすでに影響を受け、さらにストロー現象の影響も懸念されます。また、本町地域には銀行の白河支店がありますが、二年後には、店舗を閉めて郊外に新たな店舗を建設します。旧店舗の利活用を含めて中心市街地活性化を進めていきたいと思います。 まちなかの事業者は高齢化が進んでいます。空き店舗になった建物は相続などが発生し所有権などの問題があるだけでなく、空き店舗とは言っても、併設する住宅部分には住民が住んでいるなど、空き店舗の有効活用は簡単ではありません。それでも、楽市白河が手掛けている賃貸マンション『レジデンス楽市』は好評で、現在は満室になっていることからも分かるように、街なかで暮らしたいと思う住民もいます。確かに白河駅まで徒歩3分で、買い物などにも不自由しません。医療体制も充実しており、運転免許返納後は街なかに住みたいと思う高齢者が増加するかもしれません。そういう意味では、いままでの考え方ではなく、環境を整えつつ歴史と文化の香りがする中心市街地に住んでみたいと思われる街にしていくべきだと思っています。市でも歴史的風致維持向上計画を立案し、古い歴史的建造物を保存し利活用していく考えです」 ――今後の抱負。 「白河市は県南地域の中核都市と言われますが、県内の7つの生活圏の一つとして、今後どのように成長していくかということを考えながら職務に当たっていきたいと思います。とはいえ、私一人で出来ることには限りがありますから、会議所役員の皆さんや職員と一緒になって取り組んでいきたいと思います」
ほし・ほくと 1964年郡山市生まれ。安積高、東邦大医学部卒。医師。医系技官として旧厚生省に入省。退官後の現在、星総合病院理事長、県医師会副会長を務める。 昨年7月の参議院選挙福島県選挙区で初当選した星北斗氏(58、自民)は医師であり、病院経営者である立場から新型コロナウイルスの出口戦略を描き、政策に反映させようと奔走している。だが、内閣支持率は低迷しているのが現状だ。岸田文雄政権に苦難が待ち構える中、与党の一員として政権運営をどう捉えるのか。単刀直入に聞いた。 ――あらためて、初当選を果たした選挙戦を振り返ってどのような思いですか。 「大きく感じたことが三つあります。一つ目は『福島県は本当に広いんだなあ』ということ。二つ目は自分が身を置く医療界というのは、数ある業界の中の一つに過ぎないのだということ。農林水産業、商工業含めてあらゆる方々が苦心されているのを目の当たりにして感じました。三つ目は希望の持てる発見ですが、小さな町村の首長が元気で積極的ということ。それぞれの地域が独自性を打ち出し、魅力的な場所にしようと努力されています。広い県内を回り、そのことを強く認識しました。 参議院議員としてさまざまな立場の声を聞き、国政に反映させる責任は非常に重いですが、同時にやりがいを感じています」 ――新型コロナウイルス感染拡大が依然収束しませんが、今後の対応と出口戦略についてうかがいます。 「新型コロナウイルスはBA・5に変異が進み非常に感染しやすくなっています。ただ、ワクチン接種と治療薬の環境は整ってきています。あとは重症化対応のために医療をどう集約するかでしょう。政治判断や法の整備が必要になると思います。一般医療への影響を防ぐためにどうするか、出口戦略を今年度中に見いださなくてはなりません。 感染拡大の真っ只中に出口戦略を大々的に訴えるのはいかがなものかとの指摘もありますが、今真剣に考えておかなければなりません。感染が落ち着いてからだと、どうしても希望的観測が頭をよぎるからです。 2類相当から5類に変える場合には、国が一方的に決めるだけではだめです。国民が『これならいける』と納得する安心領域に入らないといけません。経済との天秤にかけるのではなく、自分の生活の中で新型コロナを5類の感染症として受け入れられるかどうか。そうでなければ出口は見えないと思います。 一般医療に感染を持ち込まないため、既にある発熱外来のような仕組みは5類になったとしても続けていく必要があるでしょう。新型コロナへの感染が疑われたら医療にアクセスできる仕組みはできています。環境が整っていれば『インフルエンザと同等』とあえて強弁しなくてもいいのではと思います。 5類になれば新型コロナの治療費や検査費が自己負担になることについては『自分を守るための出費』という考えが国民の間に一定程度浸透していると思います。例えばインフルエンザのワクチンは、重症化のリスクがある高齢者や子ども、あるいはエッセンシャルワーカーの方は接種するという考え方が定着しています。新型コロナのワクチンも全国民ということではなく、必要な方が必要に応じて接種する方向に徐々に変わっていくと見ています。 一方、自己負担についても全額負担してもらうのか、国が一部を補助するのかという方法論は検討の余地があります。補助の割合も半額なのか、2、3割なのかといった議論が必要で、国民の納得が得られる形にしなければなりません。治療費の補助は上限を決めるが、薬は無料といった柔軟策もあり得るでしょう。丁寧な議論を経ず、単に2類相当から5類に下げるだけではハレーションは大きくなると思います。国として丁寧な制度設計と準備、広報が必要です」 ――東京電力福島第一原発で増え続けるトリチウムなどを含んだALPS処理水の海洋放出をめぐり、安全性への懸念や風評被害を心配する声が未だに後を絶ちません。 「私は、科学的安全性に対する懸念はないと思っています。ただし、風評はどこまで行ってもなくなりません。漁業者らのために買い上げや基金を整えるほかに、多くの方々の意識を変えていく取り組みが必須です。そのためには、多くの方に福島第一原発を訪れてほしいと思います。敷地内に林立する大量の処理水タンクは、帰還が進む地域に暗い影を落としています。タンクの撤去なくして復興はないと思います。これだけのタンクをこのままにしておいていいのかという視点が必要です。 少なくとも、科学的安全性を私たち県民が受け入れなければ海外の人たちが納得しません。安全性だけで物事が動くとは思いませんし、漁業者の方々の心配する気持ちも分かります。ただ、自信を持って県産品を輸出するためには、国は手間と時間を惜しんではいけないと思います」 ――岸田内閣の支持率が低迷しています。とりわけ昨年末に浮上した防衛戦略と、それに伴う増税の考え方には多くの批判が上がりました。 「言葉を選ばずに言うと、私は自民党・岸田内閣に対する期待の大きさの裏返しと捉えています。事実、自民党の支持率自体は下がっていません。ウクライナ侵攻や台湾有事への懸念などを受け、防衛費増加の考え方は国民的コンセンサスが得られつつありました。そうした中で浮上した増税について、まだまだ国民の理解が進んでいないのであれば、それは説明不足だったという批判は真摯に受け入れなければなりません。ただ旧統一教会問題に関しても、熱心に野党との協議を重ね、100点とは言えなくてもスピーディーに解決への道筋を付けました。国会の短期決戦の中で岸田首相は並々ならぬ決意があったと思います。その過程で避けては通れぬ増税の話が出たので、期待がマイナスに変わったのではないでしょうか。 防衛費のために国債を発行し、将来世代にツケを回すのは正しい判断ではありません。それをしないための増税です。復興特別所得税の一部が充てられる点についても、内実は復興の財源が減るわけでなく『切り捨て』ではありません。説明を尽くしていくしかないでしょう。おそらく、衆院選後に発表するのは国民を欺くようで、岸田首相はできなかったのだと思います。真面目さの表れと捉えています」 ――今後の抱負を。 「5年半後の参院選で圧倒的に勝つ、これに尽きます。勝つことが目的ではありません。得票数・得票率は選んでくれた方に対する責任をどう果たしたかが表れる指標になるからです。有権者の方から『星北斗にもう一回やらしてみっぺ』と言われるように、何ができるかを常に考えていきます。 自民党は水平な組織です。1期生だろうが参議院議員だろうが、現場の実情に詳しく、アイデアがあれば政策に反映してくれます。そういう党の環境を最大限活用します。任期の6年間は第2期復興・創生期間の折り返しです。震災・原発事故で避難された皆さんが帰ってこられるまち、住みよいまちにするため首長や地元の方々と取り組んでいきます。次の選挙で相手陣営に『あいつには勝てない』と言われるような、替えの利かない国会議員を目指します」
ひきち・まこと 1959年12月生まれ。東北学院大法学部卒。国見町総務課長兼町民相談室長などを歴任。2020年3月に退職後、同年11月の国見町長選で初当選。 ――町長就任から2年4カ月経過しました。 「この間、新型コロナ感染症をはじめ、2021、22年に発生した震度6強を超える福島県沖地震、基幹産業である農業に被害を与えた凍霜害と降雹、昨年の過疎指定、昨今の物価高騰など、難しいかじ取りを強いられた2年4カ月でした。その都度、適切に判断しながら町民の生活支援と不安払しょくに努めてきました」 ――昨年3月16日に発生した本県沖地震の復旧状況について。 「昨年の地震による被害は一昨年に比べ甚大でした。全壊から一部損壊までの被害棟数は1500以上と前年の地震の2倍強で、生活再建の予算確保は至上命題でした。この間、できる限りの対策を講じたつもりです。町職員の高い危機対応意識で地震翌日には被災・罹災証明の受付窓口を開設しました。また、交流・連携を深める北海道ニセコ町、岩手県平泉町、栃木県茂木町、岐阜県池田町に救援依頼をしたところ、ブルーシートや土嚢袋など応急資材の提供や職員の派遣など迅速に対応していただきました。一昨年の地震の教訓から通常業務と地震対応業務の両立が図られたのだと思います。一方で、住家・非住家の公費解体に伴う国の災害査定に時間を要したり、建築業界の慢性的な人手不足や資材不足などの影響があったりして、丸1年が経過しても応急処置が施されたままの住宅があります。地震被害からの復旧はまだ道半ばで、生活再建支援に引き続き注力する考えです」 ――保・幼・小・中一貫教育を柱とする「くにみ学園構想」の進捗状況について。 「この構想は、第6次国見町総合計画と国見町過疎地域持続的発展計画に基づいて整備を進めたいと考えた、くにみ学園の基本理念をまとめたものです。町の将来や存続に関わる重要な事業に位置づけられます。現在、本町には保育所1所、幼稚園1園、小学校1校、中学校1校がありますが、町内に分散・点在しています。2014年度から取り組んできた『国見学園コミュニティ・スクール』事業では地域住民の協力を得ながら、自ら学ぶ力や郷土愛を育む教育を展開してきましたが、この10年で急激に少子化が進んだうえ、社会環境の変化による学力の二極化や運動能力の低下、支援が必要な子どもたちの増加などが顕著になっています。これらの課題を踏まえ、保・幼・小・中を1つに集約し、子育てと教育の充実、機能強化を図ることが同構想の基本理念です。くにみ学園構想は、教育と子育て施策の核となるものですから、議会も含め町民の皆さまとの対話を通して、基本構想への理解・共感を得ていきたいと考えています」
ふじわら・いちじ 1946年10月生まれ。法政大学法学部卒(通信課程)。川俣町収入役、済生会川俣病院事務長などを歴任し、2021年2月の川俣町長選で初当選。 ――原発事故に伴う山木屋地区への避難指示が解除されてから丸6年経過します。 「コロナ禍で開催見送りとなっていた『八坂神社の三匹獅子舞』など地区の伝統行事が復活しているほか、近年では移住する新規就農の若者も増えています。 水田の水を凍らせたスケートリンクとして知られる『かわまた田んぼリンク』が、山木屋に移住した新規就農者(大学院生)の2人が代表となる形でオープンしました。会員の高齢化により昨年解散した地元団体から運営を引き継いでくれました。新たな地域活性化の拠点として注目が集まっています。このほか、復興拠点商業施設『とんやの郷』で、地元住民の皆さんが組織したNPO法人が、毎月第1日曜日に『おきがるマルシェ』を開催するなど、にぎわいが生まれています。 一方で、避難解除後に山木屋地区へ戻ったのは160世帯332人(帰還率50%)、うち65%以上が高齢者です。引き続き帰還支援を継続していきますが、新たに人を呼び込む方にも注力していきたいと考えています」 ――ふくしま復興再生道路である国道114号山木屋工区の工事が完了しました。 「山木屋地区は町の中心部から約11㌔離れていますが、トンネルが開通したことでアクセスが大幅に向上し、町としての一体感が高まりました。浜通りと県都・福島市を結ぶ道路として、流通面などで大きな役割を果たすものと見ています」 ──新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが5類に引き下げとなりますが、今後の対応について。 「希望者へのワクチン接種を継続しつつ、慎重に事態を見極めていきます。マスクの着用は、基本的に個人の判断に委ねることになりますが、捉え方には個人差があると思うので、柔軟に対応していきます。コロナ禍で開催を見合わせていたフォルクローレの音楽祭『コスキン・エン・ハポン』は今年通常開催の予定です。新たなスタートを踏み出す1年にしたいと考えています」 ――その他重点事業について。 「4月から開園する『かわまた認定こども園』は0~5歳までのお子さんが対象です。子育て世代の負担軽減のため、給食費を無償にします。2023年度中の保育料完全無償化も目指しており、子育てしやすい環境を実現して若年層の移住増加につなげていく考えです。 また、食品スーパーのいちい(福島市)と協定を交わし、本町の廃校を利用したベニザケの養殖事業が進められています。2026(令和8)年の事業化を目指しており、地域振興に貢献することを期待しています」
たかはし・ひろし 1954年生まれ。日大工学部卒。西郷村建設課長などを歴任。2015年の村議選で初当選。村議1期を経て、2018年2月の村長選で初当選。昨年2月に再選。 ――人口増加率は県内トップクラスです。 「村内に東北新幹線新白河駅、東北自動車道白河ICを有し、首都圏や地方都市へのアクセスが良く、地理的な利便性が高いことも一つの要因になっていると考えていますが、それに加えて、『コロナを克服』、『子育て支援の充実』、『学校教育の支援の充実』、『高齢者健康長寿支援』、『やりがいと魅力ある産業の振興』、『災害に強いむらづくり』の6つの目標を掲げ、職員一丸となって取り組みを進めています。 中でも、子育て支援や教育面での充実は、若い世代の移住・定住を促進して人口を維持していくために重視しています。出産祝い金の支給や、原油価格・物価高騰に対する特別給付金の支給により、子育て世帯の経済的負担を軽減するなど、安定した生活を送れるよう支援をしました。また、子育て支援センター内に子ども家庭総合支援拠点を設置し、妊娠期から子育て期に渡る切れ目のない支援体制を構築し、母子健康の保持促進に努めています。学校教育については、小・中学校に入学した児童・生徒に入学祝い金を支給、中学生の修学旅行の補助、さらには子どもたちが将来、国際的に活躍できるよう英語力をつけてほしいという思いから、ALTやタブレット端末を活用した英語教育に力を入れ、児童・生徒の学びの意欲の向上に努めています。令和5(2023)年度からは、村内の小中学生の給食費の無料化を実施します」 ――学校給食センター、役場庁舎の整備が計画されています。 「学校給食センターは、7割程度の進捗状況で計画通りに進んでおり、令和5(2023)年度2学期から使用開始となる見込みです。新庁舎整備事業については計画通り、令和7(2025)年度の開庁を目指して本体工事に着手していきたいと考えています」 ――今後の抱負を。 「第2期村人口ビジョンの人口推計では、他自治体と同様に人口が減少していく見込みですが、様々な取り組みを重ねていくことで人口の流入と定住促進を図り、人口減少を最小限に食い止め、村民の皆さんがいつまでも幸せに住み続けられる村をつくりあげていきたいと思います。本村は『2022年度自治体四季報全国自治体経営ランキング』において、全国1741自治体の中で2位になりました。一方で、まだまだ課題も多くあります。村民の皆様よりご意見、ご指摘を賜りながら『村民が主役で未来を築く』を念頭に、『未来へ限りなく前進する西郷村』、『選ばれる西郷村』、『誇れる西郷村』を実現できますよう鋭意努力していきます」
せきね・まさお 1955年12月生まれ。東白農商(現・修明)高校卒業。鮫川村議4期。2019年8月の同村長選で初当選を果たす。 ――新型コロナウイルス感染症の5類引き下げ方針を見据えた施策について。 「この3年間は村内の各行事やイベントなどの中止・延期を余儀なくされました。また、集落内の事業や伝統祭事も開催できず、地域の絆や交流が希薄になりつつあります。これらの繋がりを元に戻すための地域力再生を図ると同時に、物価高騰等で低迷している産業の振興と担い手育成に全力を注ぎます」 ――環境公社設立の進捗状況について。 「遊休農地の管理や、公道沿いの支障木伐採など『美しい鮫川村』を維持すべく環境公社設立の準備を進めてきました。それに当たり、村内各事業所を訪問して課題を聞き取りした結果、①既存の建設業者や林業者の業務を奪うことにならないか、②シルバー人材センターとの連携を図るべきではないか、③公社設立後の収益事業と社員の人件費の確保等に困難はないか、などの課題が浮き彫りになりました。さらに各事業所では人材不足が深刻化していることから、まずは『特定地域づくり事業協同組合』の設立が最優先であると判断しました。組合設立に当たり、県から認可されるまでには、申請要件をクリアしなければならないため、一定の時間が必要です。加えて、関心を寄せる農家や事業所の理解を得るため、丁寧な説明会を開催しているところです」 ――国道289号のバイパス開通の効果と利活用策について。 「今年3月4日に村民待望の国道289号『渡瀬バイパス』が全面開通しました。この路線は新潟市といわき市を結ぶため、経済物流、観光振興、緊急医療対応に繋がる重要路線です。また、バイパス化により、本村随一の観光地である鹿角平観光牧場に接する路線となったことで、キャンパーを含む観光客の増大、いわき市や茨城県から村中心部の直売所『手まめ館』など観光地への集客数が膨らみ、本村や近隣町村への大きな経済効果が見込めると期待しています」 ――1期目を振り返って。 「『地域づくりは人づくり』をテーマに、青少年・女性を含む村民の提案やアイデアが生かせる村づくりを目指してきました。さらに『若者未来創出会議』や『中高生未来ジュク』、『農業者担い手会議』等を開催してきましたが、担い手たちが自主的に活動を発案するなど、具体的な成果が着実に表れ始めています。 さらに今年度は『村づくり推進室』を庁舎内に新設するなど、『公共施設中長期整備計画の素案づくり』、『移住定住子育て支援』、『村民の健康づくりと福祉の充実』、『観光資源の活用と産業の振興』、『自主財源の確保』の6つの重点施策に基づいて各事業を推進します」
よしだ・えいこう 1963年12月生まれ。浪江町出身。双葉高卒。県議を5期務め、自民党県連幹事長、県議会議長などを歴任。昨年7月の浪江町長選で初当選を果たした。 ――昨年7月に町長に就任しました。 「首長の仕事は想像以上に忙しいですね。職員とのチームワークも良くなっており、日々の行政執行は良い形でできています。当町は復興という大きなミッションがあります。前町長が行ってきた施策により、成熟しつつある分野と新たな分野がありますが、いずれも芽を出し始めており、民間企業からも多くの興味を示していただいています」 ――帰還困難区域の津島、末森、室原3地区内に設定された特定復興再生拠点区域の避難指示が3月31日、解除されます。 「3つの拠点に共通する産業は農業です。将来を見据えた農業の再建を進めるために、大規模化や効率化など、外部からの投資が活発化することを期待しています。 住民帰還に関しては、町民の5割以上が避難先で新たな居を構えていることや、帰還することの経済的な不安なども踏まえ、バランスよく考えていかなければなりません。ただ、この半年間、帰還意欲の高まりを感じています。福島国際研究教育機構(F―REI)やJR浪江駅周辺整備計画などの復興プランが表に出てきて、故郷とともに復興を肌で感じたい町民が多くなっているからだと思います」 ――F―REIと浪江駅周辺整備計画について。 「F―REIは浪江町だけのものではありません。浜通り全体として、研究者の方々の住みやすい環境を整えることが大切だと考えています。社会環境の変化や人口減少の時代を担う〝次の世代〟が競争力を持てる技術力や仕組みが必要であり、同機構にはその牽引役を担ってほしいです。浪江駅周辺整備事業は同機構におけるフロントの役割を担っています。復興まちづくりのためにこうした事業を成功させるには、周辺自治体を含めた国・県と町の協働(協同)が不可欠です」 ――育苗施設が供用を開始しました。 「既に稼働している『カントリーエレベーター』と育苗施設の完成によって、育苗から収穫後の乾燥までが担保されました。さらなる水田の利活用を促進するため、6次化を考えていかなければならないと思います。町の新たな特産品であるタマネギや花卉など、水稲以外にも多様化が必要だと思っています」 ――今後の抱負。 「今後、民間が投資しやすい環境を整え、経済の活性化を図っていきたい。現在、当町の町民は町内外にお住まいですが、興味を持っていただけることが、われわれにとって刺激になっています。町民が復興を支援できる・応援したくなるような町をつくっていくことが使命だと思っています」
ふるかわ・しょうへい 1953年11月生まれ。喜多方工業高(現喜多方桐桜高)卒。アルス古川㈱相談役。会津坂下町議を連続5期、議長を6年務める。現在1期目。 ──町長就任から1年半が経過しました。 「『次世代に繫ぐまちづくり』に全力で取り組んできました。この間、切れ目のない伴走型の子育て支援として、不妊治療の検査に対する上限5万円の補助制度を創設しました。健康づくり事業では、阿賀川の支川の旧鶴沼川が国土強靭化の一環で堤塘(堤防)が舗装されたのでウオーキングコースとして整備しました。道の駅あいづ湯川・会津坂下西側の河川敷までの延長を検討しており、相乗効果を期待しています」 ──役場新庁舎整備事業の進捗について。 「まず第一に質の高い住民サービスを継続的に提供する拠点であるとの考えから、町民の安全・安心の確保や災害時における円滑な復旧・復興の拠点となりうる場所に建設するべきだと考えています。そのため、30年後を見据えて、町民の声やアンケート結果等を判断材料にしながら、2月22日の議会全員協議会において、建設場所を旧坂下厚生総合病院跡地へ変更することを発表しました。 今後、本町が会津西部地区の中核としての機能を果たせるよう、周辺地域との一体的な利活用を図るのに加えて、現役場庁舎周辺の利活用についても、町民の皆様や専門家のご意見を賜り、人が集まり、賑わいを創出する空間として整備していく考えです。今年度から新庁舎建設計画の具現化に向けて、基本構想・基本計画策定を進めていきます」 ──5月8日をめどに新型コロナウイルスの5類引き下げの方針が打ち出されましたが、これを見据えてどのような施策に取り組んでいきますか。 「関連する町の施策の総点検を進めています。特に感染防止の観点から中止を余儀なくされてきた各種事業についても、入念な準備のもと、町内へにぎわいと活気を呼び込んでいきたいです。また、高齢者の皆様の外出自粛による体力低下や孤立の集中的改善に向け、集いの場として各地区サロンを活用しながら、楽しく健康づくりに努めていきます」 ──今後の重点事業について。 「町の課題である財政健全化に引き続き取り組むのはもちろん、“人口が減少しても活力があり町民一人ひとりが生きがいを持てる持続可能なまち”を実現するため、令和4年度から『交流人口対策』『関係人口対策』『定住人口対策』の3つの人口対策に取り組んできました。 令和5年度からはそれらに『少子化対策』を加えた4つの人口対策を重点事業とした過疎対策事業を実施し、若者世代、子育て世代が住みやすく、町民の皆様が輝ける住み続けたいまちを目指してまいります」
原発事故に伴う風評被害や、水害などの自然災害、コロナ禍での米価下落、さらには燃料高騰など、農業を取り巻く環境は厳しさを増している。昨年6月にJA福島五連会長に就任した管野啓二会長に、それら課題への対応や、「第41回JA福島大会」で決議された3カ年基本方針の進捗状況などについて話を聞いた。 かんの・けいじ 1952年生まれ。福島県農業短期大学校卒。JAたむら代表理事組合長、JA福島さくら代表理事専務、代表理事組合長を務め、昨年6月の総会でJA福島五連会長に選任された。 ――昨年6月の総会で会長に選任されてから8カ月ほどが経過しました。この間を振り返って、率直な感想をお聞かせください。 「仕事にも慣れてきて、落ち着いてきました。その中で感じたこととして、本県における最も大きな課題は、農業産出額を大震災・原発事故前の実績である2330億円に追いつくことだと再認識しています」 ――2021年11月に開かれた「第41回JA福島大会」では、農業総生産額の減少対策、農業者の高齢化・担い手の減少対策、風評払拭対策などを含む、2022年度から2024年度までの3カ年の基本方針が決議されました。それら事業・取り組みなどの進捗状況はいかがでしょうか。 「同大会の決議では『園芸ギガ団地構想』を柱に据え、2024年度までに各JAが1団地を形成できるよう取り組んでいます。 主な作物はきゅうり、ピーマン、トマト、ほうれん草、宿根カスミソウなどで、『もうかる農業の実現』がコンセプトです。 これらの品目について、2022年度の実績を振り返ると、昭和村のカスミソウの販売額は6億円を超えたほか、南郷トマトの販売額は11億円でした。また、夏秋きゅうりにおいて福島県は全国一の産地に成長しており、多くの品目で実績を残しています。 園芸ギガ団地構想によって、そういった実績をさらに加速できるようにしていきたいです。 担い手の減少対策は、新規就農者をいかに確保していくかが大きなテーマで、これまで我々JAは新規就農者に対して一元的な窓口対応ができる組織が欲しいと県に要望してきました。 先日、県の予算が開示され、4月から『福島県農業経営・就農支援センター』という名称でスタートすることが正式に決まりました。新規就農といっても、都会からUターンして就農する、親元で就農しながら新しい栽培品目を自分で開拓して始める、親が高齢になり後継者として代々受け継いできたものを継続する、などさまざまなパターンがあります。 同センターはそういった方々の相談や悩みに合わせたサポートをワンフロアで行うことが狙いです。栽培品目は何にするのか、そもそも農業のノウハウがあるのか、ノウハウがあったとしても資金繰りや雇用の対策ができているか、県と連携してサポートしていきます。 原発事故の避難指示が出された被災12市町村の農業復興については、震災による営農休止面積1万7298㌶のうち7369㌶が再開し、営農再開率は42・6%になっています。避難指示解除が早かった町村の再開率は高い一方で、やっと解除になった大熊町や双葉町などはこれから営農再開を目指していくことになります。特に双葉町では、トマトの施設栽培を目指しており、浜風ほうれん草の栽培も検討しています」 風評払拭に努める ――東日本大震災・原発事故から間もなく丸12年が経過します。この間、福島県の農業は、いわゆる風評被害に苦しめられ、品目によっては未だに影響が出ているものもあると聞きますが、現在の県産農畜産物の市場評価についてはどう見ますか。また、「JAグループ福島東京電力原発事故農畜産物損害賠償対策福島県協議会」の原発賠償の状況についてうかがいます。 「原発賠償については、今年1月末時点で請求額が3567億円に対し、合意額(受取額)が3481億円で、賠償率は97・58%となっています。 県産農産物の市場評価については、明確に評価が低くなっていると言えるのはコメと牛肉です。米価は全国的に若干上がっていますが、県産米はまだまだ評価が低く、もっと努力していかなければならないと感じています。牛肉についても、品質のランク付けと価格単価のランク付けにギャップがある状況です。 県知事とともに、トップセールスなど風評被害の払しょくに向けてPRしていますが、依然としてリスクがあるとネガティブに捉えられていることは消せない事実です」 ――東京電力福島第一原発で保管されているALPS処理水の海洋放出が今春に迫っています。県内農業分野への影響についてはどう考えていますか。 「国民理解の醸成と責任ある風評抑止対策を前提として考えれば、やむを得ないと捉えています。しかし、いわゆる風評被害が発生してしまった場合は、いままで同様賠償を前提に国や東電と話し合いを続けます」 ――長引く新型コロナ、物価高、燃料費高騰が深刻な問題になっていますが、農産物の需要・価格(特に米価)にも影響は出ているのでしょうか。出ている場合は具体的な影響と対策・支援などについて。 「ものすごく値上がりしています。高騰対策として国が予算を組んでおり、値上がりした分の約7割は補填される仕組みになっています。現在、秋肥に対する助成の申請が進んでおり、今年春に作付けする分の肥料も取りまとめを行っていきます。 施設園芸においては、ハウス内で使用する燃料高騰への対応も国が打ち出していますので、それに対する助成申請も支援していきます。 畜産については、飼料の値上がりが起きています。配合飼料には価格安定基金というものがあり、値上がりした分の8割は補填を受けられますが、値上がりが大きすぎてその上限を超えてしまっています。こちらに関しても国が特別に対策を打ち出しており、対応いただいています。しかし、それ以外の牧草やワラなどの粗飼料には国が関与している制度がないので、牛などを飼育している経営者は危機を感じており、自給飼料が少ない経営は完全に赤字経営になっています。 そういった国の制度が行き届かないところを何とかしていただきたいと要望したいです」 ――今後の抱負は。 「暗い話ばかりになってしまいましたが、第一はギガ団地構想などの計画をスケジュール通りに進めることです。 また、毎年のように地震や水害、霜害・雹(ひょう)害などの自然災害が頻発していますが、今年はそういったことが起こらないことを願いながら、これまで以上の対策を練っていきたいと考えています」
おかべ・みつのり 1959年1月生まれ。学校法人中央工学校卒。有限会社岡部設備工業取締役、株式会社トーホク・オカベ取締役を経て、2003年4月の町長選で初当選を果たした。現在5期目。 ――4月23日投開票の古殿町長選に、6選を目指して立候補することを表明しました。まずは立候補に至った経緯をお聞かせください。 「『5期で一区切り』と考えていましたが、後援会に相談したところ、『まだ若いんだからもう少し頑張ってみろ』と背中を押していただきました。あらためて熟慮した結果、町議会の昨年12月定例会で立候補を表明しました」 ――5期目の4年間を振り返って。 「令和元年東日本台風、新型コロナウイルスなど有事への対応に追われた印象が強いです。コロナ対策に関しては、感染対策の徹底やワクチン接種、各種支援などに全力で取り組み、不安払拭に努めてきたと自負しています。町民の皆さんにご協力いただいたこともあって、現在は感染状況がかなり落ち着きつつあり、重症化するケースも多くないようなので安堵しています」 ――昨年から祭りやイベントなども再開されるようになっていますが、古殿町ではいかがですか。 「できるだけ再開する方針を打ち出しています。昨年は、町が委託して古殿町商工会が主催している『憩いの森フェスタ』を実施しました。課単位の小規模な忘新年会に関しても、町職員には『自粛せずやってほしい』と話しています。町職員や町議が率先して経済を回す姿勢を示すことも必要だと思います」 ――人口減少が大きな課題となっています。町では体験宿泊施設を設けるなどして、移住定住人口の増加を目指しています。 「町民が案内人となって体験イベントを提供する取り組み〝フルドノタイム〟を昨年に引き続き実施する予定で、現在準備を進めています。27件のプログラムが行われる予定で、協力していただける町民には心から感謝しています。今後のまちの活性化につながっていくことを期待しています。 『大網庵』という茅葺屋根の古民家を改修して、宿泊・テレワーク需要に対応する施設を整備しました。利用者はまだ少ないですが徐々に増えています。このほか、『ふるさと工房おざわふぁーむ』など農業体験を受け入れている農業法人もあり、関係人口増加に貢献しています」 ――子育て支援・教育にも力を入れており、タブレット端末と電子黒板を導入しています。児童・生徒の反応は。 「新たな取り組みなので現場の反応を注視していましたが、ゲーム感覚で勉強できるのか、児童・生徒には大きな抵抗はなかったようです。むしろ指導する教員の方が付いていけない面があるようなので、ICTに精通している地域おこし協力隊を募集し、支援員として配置して、サポートをお願いしています。公共施設にはWi―Fi(公共無線LAN)が整備されています。自宅での学習も滞りなく進めるため、保護者の皆さんに意向調査を行ったうえで、インターネット環境整備へのご協力をお願いしているところです。 子育て支援策にも力を入れています。出産祝い金として第一子5万円、第二子10万円、第三子30万円、第四子以降50万円を支給しており、4月以降は、第三子も50万円に引き上げたいと考えています。 このほか、こども園の保育料や中学校までの給食費、高校生までの医療費を無料にしており、中学校までの各種検定試験費用、スポーツ活動で子どもたちにかかる交通費や宿泊費などの経費も町が負担しています」 ――高齢者が安心して暮らせる環境づくりについて。 「古殿町健康管理センター、古殿町社会福祉協議会と連携しながら、デイケアの利用など、高齢者の相談に応じる体制を構築しています。生活に支障が出てきた方の受け皿としては、社会福祉法人石川福祉会の特別養護老人ホーム『ふるどの荘』、旧大久田小学校舎を再利用した介護老人保健施設『大久田リハビリテーション・ケアセンター』があります。 旧鎌田小学校跡には、公募により高齢者向けグループホーム『けあビジョンホームふるどの』が入居しています。隣接地には、単身高齢者や高齢世帯を対象とした『古殿町高齢者居住施設』を整備し、家族が町外にいる高齢者世帯でも安心して暮らせる環境を整えています。 運転免許を返納した場合なども含め〝交通手段の確保〟が高齢者にとって大きな問題となっています。町では『へき地医療バス・福祉バス』を決まった時間に走らせていますが、さらに公共交通システムを充実させたいと考えており、デマンド交通を含めて研究しているところです。 併せて買い物難民の解消に向け、『道の駅ふるどの』を中心に配食サービスを展開したり、高齢者でも利用できるデジタル端末を配布する構想も検討しています。元気な高齢者が知識・技術を生かして活躍できる場も設けたいですね」 一次産業活性化が基本 ――6期目に実現したい施策を教えてください。 「本町の基幹産業は農林業であり、これら一次産業を活性化させる施策がまちづくりの基本と考えています。 具体的には、米価が下がっており、消費量も落ち込んでいるため、地元産米を学校給食として消費することで応援していきます。 本町の町土の約8割は森林が占めていますが、皆伐した後の対応については国・県による補助制度の対象となっています。森林環境譲与税も含め、補助制度を活用しながら林家が収入を得られる仕組みを確立したいですね。農業振興と交流人口増加につなげるべく、『道の駅ふるどの』の拡張も計画しています。 人口減少対策としては、住宅地の造成・整備を進めています。すでに6区画が分譲済みで、2軒の家が建っています。移住・定住も含めて、『これから暮らしていく場所』として、本町を選んでいただけるまちづくりを進めていきます。 そういう意味でも、重要になるのが教育環境の充実です。学校統合を進めた結果、町内の小中学校は古殿小学校・古殿中学校の2校になりました。今後、学力向上につなげていくにはどうすればいいか、ICT技術導入を進め、文部科学省の動向も見つつ、対応していきます。 高齢者福祉に関しては、先ほどもお話しした通り、どのような形でも町内で暮らせるように環境を充実していく考えです。 古殿町商工会、各事業所と一丸となって、町を元気にする施策を打ち出していきたいと思います」 ――町民に向けて一言。 「町民の皆さんにはさまざまな面でご意見・ご理解をいただきながら町政運営に取り組んできました。再び町政を預からせていただけるのであれば、『初心忘るべからず』という思いを持って頑張るので、よろしくお願いいたします」
たかまつ・ぎぎょう 1954年生まれ。大正大仏教学部卒。1995年から旧本宮町議。2007年から本宮市議、2011年1月の市長選で初当選。現在4期目。 ――無投票で4選されました。 「3期目に続いて4期目も無投票になり、これをどう捉えるかは有権者の皆さんがそれぞれ考えることだと思いますが、大きく分けて2つ言えると思います。1つは本宮市政に対して無関心な方の増加、もう1つは信任していただいたということです。どちらにしても、無投票で信任をいただいたことについては責任を重く感じています。また、政治や市政に全く関心がない市民がいることにも大きな責任を感じなければならないと思っています。いずれにしましても、無投票で4選を果たし、4年間の市政執行の機会をいただいたことについて、謙虚にその思いを受け止めながら一生懸命やっていきたいと考えています」 ――選挙後は人口減少対策を最優先課題に挙げていました。 「一言で『人口減少対策』と言っても難しい課題で、特効薬はありません。まずは市民サービスをバランスよく提供していくことによって住みよさや安心度、快適度、幸福度が生まれてくると思っています。子育てや教育面、学力向上などはもちろん、高齢福祉やインフラ整備など、一つひとつ丁寧に市民の方々の思いに寄り添った中で、バランスがとれた市民サービスをつくり上げていく必要があると思っています。 もう1つ、大切なのが発信力です。本宮市は住みやすくたくさんの方に住んでいただいています。そのことをしっかり発信していくことに加え、それをどこに発信するかも重要です。おかげ様でここ2年間は転出より転入が多く、社会動態は増加に転じていますが、県内の近隣自治体での人口移動では意味がありません。やはり首都圏や他県の方々にこの福島県、本宮市に住んでいただきたいと思っており、そのための施策を講じていきたいと思います。しっかりとした発信力を持ちつつどこに向けて発信していくかを重要視しながら、人口の減らない本宮市をつくっていきたいと思います」 ――以前から白沢地区の人口減少対策に取り組んでいます。 「様々な施策を展開してきましたが、なかなか実績として上がっていません。まずは焦らず白沢地区の良さを知ってもらう取り組みが必要と思い、交流人口や関係人口拡大に取り組んできました。白沢地区には岩角山や震災後にはプリンス・ウイリアムズ・パークが整備され、そういった白沢地区にある名所を生かしながらいい部分を発信してきました。 いま検討しているのがゲストハウスのような宿泊体験施設です。1週間ほどお試しで白沢地区に住んでいただき、白沢地区の住みよさを味わってほしいと思います。その宿泊体験で気に入っていただいた方に住居をどう提供していくかも大事ですが、せっかく農村に住むのだから、それぞれ古民家のような空き家に住みたい方、新居を建てるための土地が欲しい方、加えて農地も欲しい方など、好みがあると思います。その辺の思いを汲みながら、どう紹介していくかといったきめ細かいサービスを行うことが大切だと思います」 新たな公共交通を模索 ――子育て世代の転入を増やすうえでは教育面も重要です。 「教育環境は子育て世代にとって非常に大切です。家族で住むことになれば、高校進学のための学力を心配する方も多く、子育て世代へどう対応していくかというのは大事ですし、学力ばかりではなく体力向上も重要です。教育委員会でも、それぞれの学校において、課題を明確にしながらプログラムに沿って学力向上を目指す取り組みを行っています。 また、妊婦の方や出産後6カ月以内の産婦の方に向けて、市では『出産ママヘルプ事業』と銘打ち、家事や育児の支援が必要なご家庭に、ワンコインでヘルパーを派遣する事業を行っています。市内には子どもが遊べる場所が多く、いまは恵向公園の整備を行っており、子どもばかりでなく高齢者も楽しめる公園を提供できたらと思います。おかげさまで子育て世代の転入も増えていますが、今後も様々な施策を続けていきたいと思っています」 ――昨年からは定額タクシーの実証運行を行ってきました。 「市民の皆さんの様々な声を聞きながら、本宮市の新公共交通システムをつくりあげるべく取り組んでいますが、その1つが会員になれば定額料金で一般の小型タクシーを利用できる『まちタク』です。市内の一部の地域では、以前よりデマンドタクシーを行っていますが、行き先が限定されるなどサービスが行き届いていませんでした。そこで『まちタク』は、乗降できる施設を大幅に増やしました。また、いままでの巡回バスをコミュニティバスに変更するなど、市内の公共交通システムを大幅に変更する取り組みを行っています。これは福島大学の吉田樹准教授をアドバイザーに迎え、様々な年代の市民と一緒になってつくりあげています。実証運行を行っている『まちタク』は利用者の反応も良く、改善を加えながら10月1日を目標に新たな公共交通システムの一つとして導入を図りたいと思っています。 移動手段のない高齢者はもちろん、移住してきた方々には自家用車や免許を持たない方もいますから、そういった方々への一定の交通手段は確保できると思います。また、鉄道が運休した際の代替交通としてバスが活用されており、移動手段の選択肢の1つにこういった公共交通システムは必要と実感しています。当然、それを維持できる財政状況を守っていくことも必要です」 ――JR五百川駅周辺整備を進めています。 「駐停車場の整備工事が着工しました。駅前が狭く危険だったため、まずは安全な駐停車場の確保を目指しています。今後はJRとの協議でトイレやバリアフリー化の整備を随時進めていくことになります」 ――本宮インターチェンジ周辺の開発も進められています。 「五百川駅周辺整備や交通の利便性に加え、人を呼び込めるような施設を考えたとき、商業施設がいいのではと思い、様々な商業施設と交渉しています。ほかにも様々な企業と交渉を進めていますので、いい形にしていきたいと思います。完成すれば多くの人々が集まる場所になり、渋滞も予想されますので、そういった対策も合わせて進めていきたいと思います」 ――今後の抱負を。 「市民の皆様から4年間の舵取りを任されましたので、市民の方々と一緒になって元気な本宮市をつくる先頭に立っていきたいと思います。これまでの12年間は震災・原発事故や水害、地震、そして新型コロナウイルスなど市民の皆さんにも多くの苦労があったと思います。これからの4年間は市民の皆様が穏やかに過ごせて活気あるまちになるよう努力していきたいと思います」
こはた・ひろし 1960年生まれ。東大経済学部卒。自治省(現総務省)に入省し岡山県副知事、消防大学校長、復興庁福島復興局長などを歴任。現在市長2期目。 ――2022年度の除雪関連の予算を過去最大の8303万円に拡大しました。1月の大寒波の影響をお聞きします。 「昨季の大雪では、除雪に対し市民の皆様から厳しいご意見をいただきましたが、今季は教訓を生かした対応ができたと思います。必要な予算の確保はもちろん、除雪を体系的に行うためのマニュアルを作りました。市民の皆様にもメールで降雪・凍結情報を即時に知らせています。 隅々まで除雪するには市民の皆様の協力が必要です。小型除雪機の貸し出しはこれまでも行っていましたが、今季は台数を増やし、周知を図りました。その結果、貸出実績は以前に比べるとかなり増えました。 岡部など東部地区の関係者とは、除雪アダプト制度という決めた範囲を責任を持って除雪する協定を締結しました。ありがたいことに丁寧な作業のおかげで生活道路の除雪体制は改善が図れたと思います」 ――政府は5月8日から新型コロナウイルス感染症の位置付けを5類に引き下げると発表しました。3月13日からはマスクの着用が緩和されます。「出口」が見えてきた中で市の経済や観光振興についての施策をお聞きします。 「『出口』に至るためには何よりも感染防止を徹底していくことが必須です。世代別で死者数が最も多い高齢者の感染は何としても防がなければなりません。高齢者と面会する場合のマスク着用などは、これまでと変わらず続けなくてはならないと考えています。 経済活性化に関して言えば、心強いのは『道の駅ふくしま』という地域活性化の核ができたことです。年間の目標来場者数は133万人でしたが、オープンから約9カ月で150万人に達し、売り上げも11億円を超えました。冬季の来場者が減る傾向にあるので、引き続きイベントやツアーなどを仕掛けていきますが、今春には『周遊スポット魅力アップ支援事業』を活用したスポットが続々オープンします。例えば、温泉旅館であれば魅力ある露天風呂を、観光農園であればインスタスポットを作り、点ではなく面で福島市を巡る楽しみを創出する仕組みを整え、それを物販にもつなげていきます。 福島市は新商品が生まれる傾向が弱い印象があるので、道の駅をベースに事業者同士の連携を深めて商品を作り出し、併せて発信もするというアンテナショップの役目をより強めていきます。 ふるさと納税の返礼品はその一環であり、私としては福島市のPRにとどまらず、マーケティングという地域経済活性化に即効性のあるものとして考えています」 ――福島駅東口で行われている市街地再開発事業について、当初計画より事業費や市が負担する補助金が増え、今後の精査によってはさらに増える可能性が指摘されています。 「資材が高騰しており、事業費増は避けられません。ただ精査をすることで、増えるだけではなく減らせる部分も見つかります。事業費圧縮に努めることを肝に銘じて精査を続けています。 国などからの補助金は通常であれば定率なので、資材が高騰しても増えるわけではありません。市としてはその状況を考慮し、さらに補助金を要請していきます。ただ国も、再開発事業が止まれば都市としての魅力が低下すると強く懸念しているので、負担軽減に向けた制度を作っている途中です。 また、完成後の運営を効率的に行うことも非常に大事です。今のうちから運営母体を決めて、その上で大規模・国際的な会議の誘致活動をしていきます。かかる経費はできるだけ収益で賄っていける基盤を作りたいと思っています」 ――市が昨年9月に発表した中期財政収支の見通しも非常に厳しい状況です。市債残高は膨らみ、2026年度には財政調整基金と減債基金の残高がなくなり、財源不足を埋められず必要な予算が立てられなくなると試算されています。 「財政は厳しいですが、やるべき事業はやっておかないと、後々の負担は逆に増えてしまうと考えます。いま手を打たなかったことで、都市の魅力が下がり、人口減少がますます進んでしまうことも危惧されます。そうなれば活力が失われ、街としてもっと苦しい状態に追い込まれてしまう。必要な事業を先送りすることなく実施していくことが大事だし、私はその精神でこれまでも取り組んできました。 人も富も集中する東京は民間が都市の魅力向上を果たしてくれる面が強い。しかし地方は、行政が主導的な役割を果たしていかないと都市としての存在感が低下していきます。私はそういう意識で、これからも市政運営に努めていきたいと思います。そのためにも行財政改革や事業の取捨選択、デジタル化などを進めていきます。 一方、『稼ぐ』という点では福島市が開発した全国的にも珍しい『議会答弁検討システム』を売り出していきます。本来は民間が稼げるようにするのが一番なのですが、行政自らが『稼ぐ』ことを意識し、財政の持続可能性を達成したいです」 ――老朽化する消防本部、市立図書館など、市内には建て替えが必要な公共施設が多数あります。どのように対応していきますか。 「すべての施設を建て替えるのは財政状況を考えると困難です。再編統合や規模縮小など多少痛みを伴うこともあるかもしれません。 とりわけ消防本部は災害対策の要ですから、耐震面に大きな問題がある状況は1日でも早く解消しなければなりません。 これから本庁舎西側で市民センターの建設が本格化します。同センターには市民会館や中央学習センターを再編統合した機能が備わります。一方、消防本部は市民会館の跡地に建設する計画です。市立図書館も老朽化が著しいですが、新たな建設場所などは決まっていません。財政状況にもよりますが、まずは消防本部の建て替えを優先し、その後、市立図書館の建設に着手できるよう検討を進めたいと思います」 ――念願だった古関裕而さんの野球殿堂入りが実現しました。 「祝賀ムードを維持しながら古関裕而記念館での発信に努めていきます。野球殿堂入りの証しとなるレリーフを展示し、多くの方に見に来てもらえるようにしたいと思います。 野球の試合を県営あづま球場で開き、古関さん作曲の歌で応援合戦をするのも一つのアイデアだと思います。今回の野球殿堂入りを機に、福島市を野球の聖地の一つにできないかと密かに考えています。 古関さんの曲は親しみがあって心地よい、古びないメロディーです。世代を超えて古関さんへの愛着を継承できる仕掛けを街なかに作っていきたいと思います」
すだ・ひろゆき 1958年生まれ。宇都宮大農学部卒。福島県に入庁し県北農林事務所長などを歴任。2018年1月の伊達市長選で初当選、22年1月に再選。 ――2期目の市長選挙で公約に掲げた「安心・安全の確保」、「雇用の場の確保」、「子育て・教育の充実」、「健幸・福祉のまちづくり」の進捗状況についてお聞きします。 「『安心・安全の確保』については、1期4年の間に令和元年東日本台風が発生し、新型コロナウイルス感染症が感染拡大したのを受け、2期目でも最優先課題に位置付けました。 災害対策として大型排水ポンプ車を導入し、いつ水災害が発生しても速やかに出動できる体制を整備しました。この間、幸いにも出動する機会はありませんが、引き続き伊達市建設業協会と締結した『排水ポンプ車による緊急排水業務の支援に関する協定書』に基づいた機動的な対応をはじめ、職員も稼働に携われるよう訓練を進めていきます。 危機管理対策の一環としては『伊達市防災アプリ』の運用を始めたほか、雨量計や河川監視カメラを設置するなど、災害に関する情報収集や監視機能の強化を図っています。コロナ対策としては、重症化を防ぐ観点からワクチン接種が重要となります。集団接種は終了しましたが、伊達医師会との連携のもと市内の各医療施設で接種できる体制を整えており、接種機会の確保に取り組んでいます。 『雇用の場の確保』については、本市の基幹産業である農業の担い手確保が喫緊の課題です。この間、新規就農者の経済的負担軽減のため、農地の賃料補助や農業機械の購入補助、家賃・生活費の補助などきめ細かな支援策を展開してきました。一方で、本市は、モモ、キュウリ、製法確立100周年を迎えたあんぽ柿など全国に誇れる特産品があります。今後もブランド力の維持はもちろん、その裏付けとなる生産量をしっかり確保していくことが求められます。引き続きトップセールスやメディアを通した戦略的なPR活動を展開しながら販売促進の強化に努め、農業所得の向上につなげていきます。 若者定住の促進も見込んだ伊達市新工業団地も完成の運びとなり、販売面積の約9割が成約となっています。2024(令和6)から本格的に進出事業所が開業する見通しなので、雇用創出効果が期待できると思います。また、同年度には、大型商業施設『イオンモール北福島(仮称)』がオープン予定で、約3000人の雇用が見込まれるなど、多様な形の雇用の創出が期待されます。 『子育て・教育の充実』については、働く世代が子どもを安心して預けられる環境づくりが重要との観点から、市内3カ所に認定こども園を整備しました。放課後児童クラブや屋内遊び場などのさらなる充実を図るとともに、伊達小学校改築や霊山中学校の耐震化など子どもたちが安心・安全に学べる環境整備にも取り組んできました。そのほか、各児童・生徒へのタブレット端末の配布と各学校への大型電子黒板の導入、総合型地域スポーツクラブ設立による地域スポーツの充実を図ってきました。 『健幸・福祉のまちづくり』については、健康寿命の延伸がキーポイントです。本市では、運動習慣化支援として、地区集会所を拠点に参加者同士が交流しながら気軽に楽しく運動を行う『元気づくり会』事業を展開するなど、健康増進活動の定着を図ってきました。コロナ禍による影響で活動が制限された期間もありましたが、現在は130団体を数えるなど活発に展開しています」 ――政府では、5月8日より新型コロナウイルス感染症を感染症法の2類相当から5類に引き下げる方針を示しました。 「本市としては、引き下げ以降も引き続き感染防止対策は必要と考えています。政府には今後の感染状況を注視しながら国民が不安を覚えたり、医療現場が混乱することがないよう現場の声に耳を傾ける対応をお願いしたいと思います。そのほか、高齢者施設や医療施設のクラスター対策をはじめ、ワクチン接種の公費負担延長、コロナ禍で冷え込んだ地域経済の再生に向けた経済支援策の継続を切に願います」 ――コロナ禍により地域経済が疲弊する一方、最近は光熱費の高騰による影響が深刻です。市としてどのような対策を講じていますか。 「昨年7月から12月まで、プレミアム率40%の『伊達市プレミアム4応援券』を計5万3500セット(紙仕様、デジタル仕様)発行し、すでに完売しました(利用率99%)。消費喚起に加えて、物価高による影響も緩和できたと感じます。 一方、エネルギー価格や物価高騰の影響を受け、売り上げが前年の同じ月と比べ20%以上減少している市内中小企業には『伊達市中小企業エネルギー等高騰対策事業継続応援金(申請は2月15日終了、1事業所一律10万円)』を交付するなどタイムリーな経済対策を講じています」 ――国道349号整備の見通しについて。 「月舘、霊山、保原、梁川を南北に結ぶ幹線道路です。生活や物流のみならず、国道4号、東北自動車道、相馬福島道路の代替路線に位置付けられ、緊急搬送や災害物資輸送道路としても重要な機能を発揮します。現在、県境を接する宮城県丸森町では国直轄事業として鋭意整備が進められています(2024年度の開通予定)。本県側でも宮城県境から兜町までの300㍍区間が一体的に整備されており、兜町以南の2・2㌔区間はルート検討に向けた測量調査業務が実施されています。本県側も遅れることのないよう、県や関係機関に早期着工を強く働き掛けていきます」 ――2023年度の重点事業についてうかがいます。 「防災体制のさらなる整備をはじめ、現在改修を進める伊達市保健センターへの子どもの養育相談や発達教育支援の集約化、イオンモール北福島内のアンテナショップ出店に向けた検討・準備、商店街活性化に向けた新規事業や起業の支援、行政手続きのオンライン化、デジタル弱者対策、集落支援員の配置による地域問題の相談や問題の共有化、アプリを活用したマイナンバーカードの普及とさらなる行政事務等の効率化を図ります。 伊達市では、10年後の本市のあるべき姿を実現するための指針として伊達市第三次総合計画を策定しました。計画期間は2023(令和5)年から2032(令和14)年の10年間で、将来像として『人と緑と歴史が結び合うひかり輝く田園空間・伊達市』と定めました。お互いを思いやるやさしい人間性を象徴する『人』、農業や豊かな自然を象徴する『緑』、そして、伊達氏発祥の地、北畠顕家が国府を開いた霊山などを象徴する『歴史』。これら3つの宝を守り伸ばしながら、本市が光り輝く田園都市となるようまちづくりを進めていきます」
しらいし・たかし 1960年生まれ。田村市(旧船引町)出身。上武大学商学部卒。同市議1期を経て2021年4月の同市長選で初当選を果たした。 ――市内ではコロナの出口戦略に向け、特に観光面で明るい材料が散見されます。 「昨年行った『たむらの桜88撰総選挙』が好評を得、愛称が『田村の美桜88景』に決まり、今年はフォトスタンプラリーを行います。88カ所は1年では回りきれないので、数年かけて回ることでリピーターになっていただく狙いがあります。併せて桜ウオークも開催する予定となっています。 第2回クワガタサミットも開催します。昨年開いた第1回サミットには全国から昆虫好きの方々が集まり大好評をいただきました。全国には昆虫でまちおこしを行っている地域が多くあるので、昆虫の聖地を目指した協議会を立ち上げようと準備を進めています。昆虫は良好な自然環境の象徴という意味で復興をアピールする材料にもなり得るので、いずれは世界サミットを開催したい希望も持っています。 今年はあぶくま洞が開洞50周年を迎え、9月の秋まつりでイベントを行います。また、あぶくま洞は『恋人の聖地』認定を受けていますが、福島市の四季の里も認定され県内2カ所となったので、両施設でさまざまな連携を図り、PRに努めていきたいです」 ――常葉町地内に整備中の東部産業団地に工場進出が決定しました。 「2区画あるうち、昨年1社の進出が決定しました。残り1区画もご検討いただいている企業があるので、早期に決定できるよう引き続き営業活動に注力します」 ――移住・定住に向け田村市・東京リクルートセンターや田村サポートセンターを開設しましたが、その効果は。 「令和3年度は移住相談が86件寄せられ、5世帯12人が市内に移住されました。4年度は12月現在で相談237件、10世帯16人が移住されました。移住希望者の中には仕事を探している方もいるので、市では独自の創業・起業支援としてキッチンカー移住チャレンジ事業を行っています。キッチンカーを無償で用意し、商品開発や出店支援を行うもので、3月には市内のイベントでカレー、ハンバーガー、パンケーキのキッチンカーがデビューします。食材も地元産にこだわり、農産物の6次化につながることも期待しています。 以前、この地域は葉タバコ栽培が盛んでしたが、現在、市場は縮小しています。そこでサツマイモ栽培に力を入れ、一昨年にはサツマイモ貯蔵施設が完成・稼働しました。同施設には東北でも珍しいキュアリング設備があり、サツマイモを貯蔵するだけでなく食味向上も図れるので、昨今のサツマイモブームにのって葉タバコに代わる農産物栽培と6次化につなげていきたいです」 ――たむら市民病院の新病院建設をめぐり、市議会内に百条委員会が設置され調査が続いています(※白石市長へのインタビューは2月13日に行った)。 「公共事業の役割は、社会資本を整備することと地域経済を活性化させることだと思います。この二つの観点から、私は最優秀提案者に安藤ハザマを選びました。 プロポーザル委員会は最優秀提案者に鹿島を選びました。しかし両社の企画案を比べると、安藤ハザマの方が建設費が安く、地域貢献度も高かった。さらに多数決では、委員7人のうち4人が同社を選んでいた。にもかかわらず、その後の話し合いで鹿島が選ばれました。 もちろん、プロポーザル委員会は理由があって鹿島を選んだのでしょうが、市民から直接選ばれた立場である市長としては、市民にとって良い選択、すなわち将来に負担(借金)を残さないためには少しでも建設費が安い方がいいし、多くの地域貢献がもたらされる方がいいと判断しました。また、市民や市議会から『なぜこの業者を選んだのか』と問われた時、明確に説明できる材料がある方を選んだ方が余計な疑いを招かなくて済む、とも考えました。 今回、市議会内に百条委員会が設置され、(同委員会による)証人喚問では事実のみを丁寧に述べさせていただいたつもりです」 ――元職員が逮捕・起訴された贈収賄事件をめぐっては市発注の入札に市内の業者が関与していたことが明らかになりました。 「今回の事態を深刻に受け止め、こういったことが二度と起きないような組織体制を構築すべきと考え、副市長を先頭に綱紀粛正を図っているところです。 ただ、言葉で言うだけでは実現は難しいので、全職員を対象にコンプライアンス研修を行い、全庁が同じ方向を向いて仕事を行えるよう倫理観の向上に努めているところです。また、各所属長に依頼し、職員への聞き取りやシステム・パスワード管理に関する調査を行いました。これにより現状を把握するとともに、改善が必要と認められた部分はその都度改善を行うようにしています」 ――屋根工事などにトラブルが発生し、事業が中断していた屋内遊び場の進捗状況について。 「多くの市民の方にご心配をいただきましたが、建築主体工事は、ほぼ完了し、現在は内装や遊具設置、外構工事などを行っています。3月下旬には完成し、4月末のオープンに向けて運営業者に委託し進めていきます」 ――昨年11月、JR東日本の2021年度収支で磐越東線のいわき―小野新町間が6億9000万円の赤字という報道がありました。 「報道後すぐに小野・三春両町長と話し合いを持ちましたが、沿線自治体という点では郡山・いわき両市や県との協力も不可欠です。ただ、ある一定の区間が赤字だからといって全線が不要かというと、それは乱暴な考え方だと思います。 磐越東線は三十数年前も廃止対象となり、田村青年会議所を中心に存続運動が展開された経緯があります。市内には実に六つの駅が存在しますが、同線は市民にとっても貴重な移動手段であり、地域公共交通体系の根幹となる要素ですので、存続に向けた取り組みをしっかりと行っていきたい」 ――最後に、令和5年度の重点事業について。 「五つの政策枠を設けます。一つ目は豊かなふるさと実現枠。この中には新病院建設、健康長寿サポート事業、ムシムシランド移設などが含まれます。二つ目は地域創生枠。移住定住対策や産業振興、少子化対策などを行います。三つ目は新生活創造枠。昨年立ち上げたオンラインショップの運営やDXの推進などを図っていきます。四つ目は復旧・復興枠。都路町の複合商業施設の建設を進め、林業推進などにも努めます。五つ目は危機管理枠。自主防災組織を構築し、有事の際は機能できる体制にしていきたいです」
こざくら・あきら 1941年生まれ。㈱桜交通、㈱さくら観光代表取締役。県交通安全協会副会長を経て、2015年6月から現職。 ――昨年11月に福島市で高齢運転者による死亡事故が発生しました。交通安全の呼びかけに加え、高齢者が運転免許証を自主返納しやすい環境づくりが求められます。 「高齢者によるアクセルとブレーキの踏み間違いなど運転操作ミスによる重大交通事故が全国的に発生している中、県内でも昨年11月、福島市内の90代の男性が運転する車両が歩道の女性をはねるなどし、5人を死傷させる事故が発生しました。 昨年、県内で運転免許証を自主返納された65歳以上の方は約6000人います。これらの情勢を踏まえ、当協会では県トラック協会の協賛を受け、昨年12月15日から65歳以上の高齢運転者が運転免許証を返納する際に、長きにわたる安全運転に敬意を表すべく『運転卒業証書』を交付しています。同事業開始から本年1月末までに382人の方に運転卒業証書を交付しております。今後も同事業を通じて運転免許証を返納しやすい環境づくりを進めるとともに、高齢化社会を地域全体で支える機運を盛り上げるべく努めていきます」 ――協会では、3人1チームで互いに無事故・無違反を目指す「セーフティチャレンジ事業」に取り組まれていますが、昨年の実施状況についてお聞きします。 「2015年から8年連続で2万チーム、6万人を超えるドライバーが参加しています。昨年の参加者は前年比でわずかに下回ったものの、2万1269チーム、6万3807人の参加をいただきました。高齢運転者の事故防止を目的としたシルバー枠も、昨年は2020チームが参加しています。 無事故・無違反達成チームは1万9131チームで、達成率89・9%と前年を1・6ポイント上回り、過去最高となりました。一方、ドライバーの参加率は依然として全体の5%程度ですので、多数のドライバーにぜひ参加してほしいと思います」 ――来年度の重点事業について。 「昨年は、県警をはじめ、各交通関係団体と連携して交通安全運動を推進した結果、交通事故発生件数2702件(前年比マイナス295件)、死者数47人(同マイナス2人)、傷者数3132人(同マイナス314人)であり、すべての項目で対前年比減少を達成しました。 特に死者数は現行の統計が始まった1948(昭和23)年以降最少となり、4年連続で最少を更新しました。一方、交通死亡事故発生状況を分析すると、①全死者数のうち高齢者が6割を占めるなど高齢者被害の割合が高い点、②歩行中や夜間の事故が多い点、③四輪車乗車中の死者のうち3割がシートベルト非着用である点――などが傾向として挙げられます。 当協会ではこれら傾向を踏まえ、本年も特別重点事項として『交通死亡事故の抑止』を掲げ、地区交通安全協会、関係機関・団体と協力しながら交通安全諸対策を推進していきます。特に高齢者の事故防止対策として、県警と連携し『ピカッと・カチッと大作戦』を展開し、夜光反射材やシートベルト着用などの促進活動に注力するほか、『ドライバー総参加のセーフティチャレンジ事業』による県民の安全運転・事故防止への意識高揚を図っていく所存です」
よしだ・のぶあき いわき市出身。秋田大卒。1990年に福島県庁入庁。道路管理課長、道路計画課長などを経て、昨年4月から現職。 ――近年はインフラや建造物の維持管理やメンテナンスも重要な業務となっています。 「インフラの多くは高度経済成長期に建設され、建設後50年を経過する施設が増加していることから、日常の維持管理、老朽化対策による予防保全の取り組みは非常に重要となっております。道路については、利用者の安全な通行に備えるため、毎日パトロールするとともに、特に橋梁、トンネル等の構造物は、長寿命化修繕計画に基づき、計画的な点検・診断・措置・記録によるメンテナンスサイクルの取り組みを進めております。令和4年度は14橋の補修工事を行い、来年度も同数程度の補修工事を行う予定で、引き続き計画的に修繕を進め、安定した施設の機能確保に努めてまいります」 ――令和元年東日本台風からの復興状況について。 「令和元年東日本台風で甚大な浸水被害があった夏井川及び好間川については、浸水被害の解消に向けて重点的に取り組んでおり、災害復旧に流下能力を高めるための改良を加えた災害復旧助成事業により、夏井川は新川合流部から小川地区までの14・9㌔、好間川は夏井川合流部から常磐自動車道いわき中央IC付近までの6・6㌔について整備を進めております。令和3年度までに破堤箇所の復旧、狭窄部や堆砂の著しい区間の河道掘削を行い、令和4年度からは本格的な河道掘削、護岸、堤防強化のための舗装工事を推進しております。 また、夏井川、好間川の改良復旧区間を除いた河川、海岸、砂防、道路及び橋梁の公共土木施設の被災箇所222箇所については、令和4年度末には全ての箇所で完了を見込んでおります」 ――小名浜道路をはじめとした各種道路事業の進捗について。 「小名浜道路は、『ふくしま復興再生道路』に位置づけられ、いわき市泉町からいわき市山田町に至る全長8・3㌔、4つのICを有する無料の自動車専用道路です。重要港湾小名浜港と常磐自動車道を直結することにより、広域物流ネットワークの強化や小名浜周辺地域の産業振興・観光を支援することを目的としたもので、常磐自動車道から小名浜港までの所要時間がこれまでの半分の15分程度でアクセスが可能となります。 現在は、全9区間で工事の最盛期を迎えており、4つのICの形が確認できるまでに進みました。また、本年1月には、(仮)小名浜IC工事で、常磐自動車道に交差する高架橋を架けるなど、令和4年度末で、全13橋のうち8橋が完成を予定しており、早期完成に向けて引き続き工事を進めてまいります。 また、小名浜港周辺から小名浜道路を経由して中通りへのアクセス機能の向上を図るため、いわき上三坂小野線の小名浜道路の終点(仮)山田ICから遠野町方面に至る3・5㌔区間について、現道拡幅を計画的に実施してまいります」 ――防災事業の進捗について。 「気候変動等により、頻発化・激甚化する自然災害から、住民の命、暮らし、財産を守るため、計画的に防災・減災、国土強靱化5か年加速化対策を活用した事業に取り組んでおります。 令和4年度は、水災害対策として河道掘削及び伐木、堤防強化、土砂災害防止のための砂防事業、道路の落石対策等を実施しており、令和5年度につきましても引き続き防災対策を加速してまいります。 また、流域のあらゆる関係者が協働して、水災害を軽減させる流域治水プロジェクトを夏井川、鮫川及び藤原川の3河川で策定しており、プロジェクトに基づき河川監視カメラの設置による情報伝達の向上や出前講座による防災意識の向上等、実効性のある取り組みを一層推進することでハード及びソフト対策が一体となって、流域全体で被害を軽減させる防災対策を一層推進してまいります」
むらかみ・てるまさ 1955年生まれ。日大東北工業(現・日大東北)高卒。2004年から小野町議を4期務め、その間、議長を歴任。2021年3月の町長選で初当選。 ――新型コロナウイルスの影響について。 「医療機関や福祉施設でのクラスターの発生、地域経済の停滞など、さまざまな面で影響がありましたが、感染対策徹底に向けた広報活動や事業者支援などの経済対策により、町民の安全・安心と経済活動の維持に取り組んできました。一方で、コロナ禍の中、町民の皆さんに少しでも笑顔を取り戻してもらうため、昨年10月には感染対策を徹底したうえで3年ぶりに『ふれあいフェスタ』を開催し、さらに今年1月には20歳の集いを催したところです。新たな変異株発生など、まだまだ油断できない状況ではありますが、引き続き感染対策の徹底を図りながら、イベントの開催や観光客の誘客などにより、町のにぎわいを取り戻していきたいと考えています」 ――昨年には認定こども園が開園しました。 「町として初の公私連携幼保型認定こども園となりますが、保護者の皆さんに安心と信頼をいただけるよう、当面は町職員の派遣を行うとともに、子育て担当課との定期的な打ち合わせの実施などさまざまな連携を行い、お子さんが心豊かにたくましく成長できるよう支援していきます」 ――町民の健康増進の取り組みについて。 「昨年は、ウオーキングコースマップの作成や『ふれあいフェスタ』での健康関連ブースの設置などに取り組みましたが、今年は健康と食を融合させたイベントの開催を検討しています。また、新たなウオーキングコースマップの作成や運動器具の増設、健康づくり講演会の開催など、健康増進に向けた意識の醸成に取り組んでいきます」 ――地域連携の強化について。 「田村地方において、さまざまな連携をしていますが、特に観光面では、田村地方の観光協会の連絡協議会が発足する運びとなっているので、今までとは違う魅力的な観光PRが展開されることを期待しています。また、現在、ふくしま復興再生道路として県道吉間田滝根線の整備が進んでいますが、開通されれば、浜通りと中通りを結ぶ重要な路線となり、新たな地域間交流が期待されますので、双葉郡との地域連携についても検討していきたいと思います」 ――最後に今後の抱負を。 「地域の活性化です。人口減少と少子高齢化、さらに新型コロナウイルスの影響により、地域活動の維持が難しくなっています。地域づくり協議会の活用などによる新たな地域づくりに向けて、町民の皆さんの理解を得ながら将来に向けた改革を進めていきます。 また、昨年、JR東日本から磐越東線小野新町―いわき駅間において厳しい経営状況にあることが示されたところですが、生活や地域振興のうえで欠かせない路線ですので、田村地方はもちろん、いわき市や郡山市とも連携して存続を訴えていきたいと思います。さらに県立小野高校の統合が決定されましたが、その影響が最小限で済むよう、空き校舎を活用した地域振興対策などの検討を進めていきます。 地域の活性化には、移住人口や交流人口を増やしていく必要があります。空き家についてホームページ上で公開するなどして利活用を進めていくほか、町の魅力をさまざまなツールを活用して発信することで、町に少しでも興味を持ってくれる人を増やしていきたいと考えています」
組織改革進めながら難局乗り越える ふじた・みつお 1953年生まれ。中央大卒。藤田建設工業㈱取締役会長。福島県中小企業家同友会副理事長を経て2017年4月から同理事長。2021年4月から現職。 ――昨年11月25日に開催された臨時総会で次年度の新会長に会津支部代表理事の齋藤記子さんが選出されました。理事長職4年と会長職2年の6年間を振り返って率直な感想を。 「福島同友会の理事長職や会長職だけでなく全国組織である中同協で副会長という役目をいただいたりと、さまざまなことで勉強させていただける機会がありました」 ――印象に残っている活動は。 「1つは福島同友会の1年間の学びを収録した年誌『PAGE』を毎年発行できたことです。これほどの内容やボリュームの冊子を毎年発行しているのは、全国の同友会の中でも北海道と福島くらいです。先に発行していた北海道同友会の冊子を見て、ぜひ福島でも作りたいと思い、当時の北海道同友会の副会長にお願いして実現した取り組みでした。4月に第5号が発行予定です。会員に限らず各自治体や金融機関などにもお配りしているので、同友会の活動を多くの人に知ってもらえるいい機会になっています。 2つは組織改編を行ったことです。全国の中同協の会議に参加する中で、全国の各同友会のほとんどが代表理事制を敷いており、福島だけこのまま理事長制でいいのかなという思いがありました。議論を重ねて改革し、理事長制から代表理事制に変えることができました。代表理事制のメリットは、複数人の合議制で、意思決定をするのであれば、代表理事、副代表理事と段階を踏んで代表理事になる仕組みなので、組織の安定化が図れます。また県中県南・県北・会津・浜の4エリアを代表する方に代表理事を担っていただくことで各エリアの活動が活発化し、エリア間の連携も強化されました。 3つは2021年に中小企業問題全国研究集会を福島で開催できたことです。ただコロナや地震の影響でオンライン開催となってしまったのは心残りですね」 ――会長になる斎藤記子代表理事に期待することは。 「まずは齋藤記子さんに会長職を引き受けていただいて本当によかったと思っています。齋藤さんとは委員会や理事会で一緒に活動する機会が多くありました。そんな中で、齋藤さんのスバっと物事の本質を突く発言や、持ち前の明るい性格に触れ、素晴らしい人だなと感じていました。 齋藤さんが経営する会社は介護関係の事業ですが、介護保険法ができる以前から、家庭の介護に問題意識を持って取り組んでいたようです。『チャレンジャーだな』と思います。県の人事委員長を務めるなど、各方面での人脈が広いので、同友会の活動で必ずプラスになると思います。同友会のお母さん役として、若い人たちをうまくリードしていってほしいです」 新会長の運営に期待 ――長引く新型コロナ、物価高、燃料費高騰が深刻な問題になっていますが、会員企業にはどのような影響が出ていますか。 「大変な影響を受けています。特に飲食業界や旅館・ホテル関係の会員はコロナによって大きく売り上げを落としました。ただそうした大変な状況でも、飲食業界でいえば、大家に値下げ交渉したり、弁当を売るなどの業態シフトを行ったりして、『いい会社』をつくろうと元気に活動を続けています。 ただ、物価高においては、中小企業はなかなか価格転嫁できない立場なので厳しい状況です。燃料費高騰に関しても、電気を多く使う工場系の会員は、電気代が4割強も値上げしたことによる影響で、待ったなしの状況です。 ただ、時代が大きく変わっている今こそ、新たなビジネスチャンスが生まれ、それにうまく対応できた人が生き残っていくのだと思います。そういう意味では、同友会の会員同士で勉強しながら、少しでも経営のヒントが得られればいいですね」 ――2023年の抱負。 「個人としては、齋藤さんに会長職を引き受けていただいたので、静かにフェードアウトして、相談役という立場から何かあれば手助けできればと思っています。 同友会としては、会長が代わり、代表理事も多く入れ替わるので、齋藤記子〝色〟でスムーズに運営していければいいですね。 今後は各支部の下部組織の適正化をしていきたいと思っています。参考にしているのは、愛知同友会が組織運営のルールとして定めている『支部の下部組織の地区会の規模は100人以内とする』というものです。 常日頃活動する基礎組織は、顔と名前が一致するくらいの人数で行うのが適正だと思っています。会員数の多い支部にはそれなりのメリットもありますので、もちろん各支部はそのままとして、その下部組織の適正化を進めていきたいです。組織活性化委員会にて侃侃諤諤に議論を重ねており、2年後から実行していきたいと考えています」
伴走型支援で信頼される商工会へ くつわた・くらじ 1942年生まれ。岩瀬村商工会・岩瀬商工会の会長を6期務める。2012年5月から現職。現在4期目。2021年6月から全国商工会連合会副会長。 ――新型コロナウイルスの影響はいかがでしょうか。 「商工会の会員は小規模事業所が多くを占めており、大変厳しい経営を強いられています。少子高齢化による購買力の低下をはじめ、後継者難、頻発する自然災害、ALPS処理水の海洋放出による風評被害の懸念、さらにはウクライナ侵攻に端を発した電気・ガスの高騰や物価高にも大いに苦しんでおり、全業種にさまざまな影響を及ぼしております。今年は、いわゆるコロナ融資の返済時期を迎えますが、売り上げが持ち直せない中、非常に心配しています。一方、巣ごもり需要や円安需要を受けた事業所もありますが、そうした事業所は人手不足に苦慮するなどの課題を抱えています」 ――10月から、消費税の仕入れ税額控除の方式としてインボイス制度が導入されます。適格請求書発行事業者になると年間売り上げが1000万円以下であっても免税業者にはならず消費税の申告義務が生じます。 「当連合会において最も悩ましい問題です。免税事業者を中心に制度内容について理解が進んでいないのではないかと危惧しています。特に、個人事業主は高齢の方が多く、新たに発生する事務処理などで、大きな負担となっているのが実情です。 現在、県内88商工会で相談窓口を設置し、巡回指導の強化、広報媒体による周知活動、講習会も開催しているほか、個別に税理士などの専門家派遣をして周知に努めています。 全国商工会連合会では、国に対し政府主導による同制度の周知を十分に行うとともに、免税事業者が取引先との関係から排除されることがないよう、万全の支援策を講じています。さらに制度施行後も中小・小規模事業者への複数年にわたる支援措置を要望するなど積極的に活動を展開しています。同制度の施行を機に、免税事業者が廃業せざるを得ない状況は避けなければならないので、職員による徹底した指導に努めながら、事業継続につなげていきたいと考えます」 ――震災・原発事故から間もなく12年目を迎えます。会員事業所の現状は。 「被災地の商工会管内別事業再開率は、久ノ浜町98・1%、広野町97・2%、楢葉町91・7%、富岡町92・9%(地元再開率50・7%)、川内村95・6%、葛尾村100・0%、大熊町75・7%(同18・3%)、双葉町69・6%(同19・2%)、浪江町73・4%(同32・9%)、鹿島96%、小高70・5%(同45・4%)、飯舘村76・2%(同43・3%)、都路村97・3%、川俣町100・0%となっています。 特に、原発事故の被害が甚大だった大熊町、双葉町では将来の地域を支える若い世代の帰還が進んでいない状況です。当連合会でも、引き続き被災自治体と連携を図りながら、住民と事業者の帰還はもちろん、避難先での事業継続と安定を支援していかなければならないと考えます。また、新たに起業を志す若年層の受け入れ環境を整備するなど被災地活性化にも寄与したいと考えます。 一方、東電による賠償打ち切りによって事業継続を断念せざるを得ない事業者が増えることを懸念しています。東電に対しては、原発被災地の支援を継続するよう強く訴えかけていく考えです」 ECサイトを充実・強化 ――2023年度の重点事業は。 「1つは、『アフターコロナを見据えた経営の支援』として、ECサイト『シオクリビト』による通販事業の充実・強化を図っていきます。同事業は大変好評なので、今後はさらに発展させながら、消費喚起や需要掘り起こしを促進させ販路開拓支援の拡充に努めます。また、DXによる新たな顧客の創出と経営効率化の支援をはじめ、さまざまな経営リスク対策としての『ビジネス総合保険』等の推奨にも取り組みます。 2つは、『資金繰り支援』です。コロナ禍の救済措置である〝ゼロゼロ融資〟の元金返済が本格化し、利払いも始まる中、返済に不安を抱える事業者を支援するため、商工会相談窓口を開設し対応しています。併せて日本政策金融公庫等による低金利特別融資枠の取扱期間延長とともに、借り換えや融資時要件の変更、返済猶予を含めた支援策について国、金融機関に強く要望します。 3つは、『事業承継・創業支援の推進』です。日本政策金融公庫や福島県中小企業診断協会との経営支援に関する情報共有・連携強化を図りながら、マッチング支援、金融支援、経営改善・経営革新支援を展開します。事業承継問題は喫緊の課題なので、引き続き注力していきます」 ――今後の抱負を。 「当連合会は、徹底した伴走型支援を大きな柱に据えています。職員が積極的に会員事業者に出向くスタイルを貫くなど、しっかり寄り添った支援体制を構築しています。おかげさまで『商工会の職員は非常に良くやってくれている』との声も寄せられています。今後もこの方針を堅持しながら会員事業所から信頼される商工会を目指していきます」 https://f.do-fukushima.or.jp/
まるやま・かずき 1981年生まれ。北海道大学工学部卒、同大学院工学研究科修了。国土交通省水管理・国土保全局水資源部水資源計画課総合水資源戦略室課長補佐などを経て、昨年5月から現職。 令和元年東日本台風での水害を受け、福島河川国道事務所では〝令和の大改修〟と呼ばれる10カ年計画「阿武隈川緊急治水対策プロジェクト」を実施している。昨年5月に赴任した同国道事務所の丸山和基事務所長に、プロジェクトの進捗状況に加え、管内の道路事業やその他の重点事業等について話を聞いた。 ――昨年、事務所長として赴任されました。福島県、東北地方の勤務は初めてとのことですが、管内の印象はいかがでしょうか。 「福島県には大変温かい人柄の方が多く、海や山や湖など豊かな自然に囲まれ、空気も美味しいと感じています。福島県は北海道、岩手県に続いて3番目に広い都道府県なので、まだ訪問できていない地域もありますが、これから時間をかけて足を運んで地域への理解を一層深めていきたいと考えています」 ――〝令和の大改修〟と呼ばれ、令和10(2028)年度までの計画で事業が進められている「阿武隈川緊急治水対策プロジェクト」の進捗状況はいかがでしょうか。 「阿武隈川緊急治水対策プロジェクトでは、阿武隈川本川・支川における抜本的な治水対策を実施しているところです。現在の進捗状況は、被災した80個所の施設復旧が完了しています。 また、河川の水位を下げて水を流れやすくする河道掘削については、全体計画約220万立方㍍のうち、6割にあたるおよそ130万立方㍍(昨年9月末時点)の掘削が完了しています。 遊水地整備につきましては、鏡石町・矢吹町・玉川村の沿川自治体で住民説明会を行っており、昨年からは用地協議に着手したところです」 ――遊水地整備について、対象となる地元住民の反応はいかがでしょうか。 「先述の通り、遊水地整備に関しては住民説明会を実施しており、令和2年からこれまでに6回の説明会を開催しました。遊水地整備の必要性や効果、範囲や規模について住民の皆さまにお伝えし、ご理解とご協力をお願いしているところです。 住民の皆さまの中には遊水地の必要性や、より安全な場所に移転していただくことに対してご理解いただいている方もいらっしゃいます。 とはいえ、約150戸の家屋移転や約300㌶という広大な農地を住民の方々からご提供いただくことになるので、移転先の確保や生業の継続、これからの生活に関する住民の皆様の声をしっかりと受け止め、それを可能な限り事業計画に反映させ、住民の皆さまの意向に寄り添いながら整備を進めていきたいと考えています」 伊達橋早期復旧を目指す ――現在国道13号バイパス福島西道路のⅡ期工事が進められていますが、事業の進捗と開通による効果についてうかがいます。 「現在、事業区間である松川町浅川―大森間で地盤改良工事や橋梁工事を行っており、延長約1・8㌔の『浅川トンネル(仮称)』の工事にも着手していく予定です。用地買収やトンネル工事が順調に進んだ場合、令和8年度の開通を予定しています。 Ⅱ期工事区間の整備により、国道4号を回避する緩勾配のトンネル区間を含む新たなルートが形成されます。それによって国道4号の交通分散が図られ、交通渋滞の緩和につながるだけでなく、交通事故や冬期スタックの減少が期待されるのに加えて、災害に強い道路ネットワークの構築にもつながると見ています。さらには、福島市中心部から救急医療を担う福島県立医科大学付属病院へのアクセス性が向上し、救命率の向上が見込まれるなど、医療面での貢献も期待できます。今後とも地域の皆さまの事業へのご理解とご協力をいただきながら、早期開通に向け努めていきます」 ――その他の重点事業についてはいかがでしょうか。 「気候変動により、20世紀末と比較して今世紀までに2~4度の気温上昇が予想されています。これに伴い、降雨量、洪水発生リスクの増大が懸念されており、仮に2度上昇した場合でも、洪水の発生頻度はこれまでの2倍になると予測されています。 こういった気候変動への備えとして、現在当事務所で取り組んでいる令和の大改修はスピード感を持って進めることはもとより、自治体や企業、住民といったあらゆる関係者が協働し、流域全体で行う治水対策、『流域治水』が重要となってきます。当事務所をはじめとした河川管理者による治水対策だけでなく、被害対象を減少させるための対策、被害軽減のための対策をあらゆる関係者で取り組むことにより、地域の特性に応じた治水対策を実施していくことが不可欠となってきます。 現在実施している河川整備に加えて、田んぼダムや街中での雨水貯留施設整備といった流域での貯留対策、さらに、利水ダムの事前放流、避難に資する情報発信の強化など、水害に強いまちづくりとして、関係各所の皆さまと連携して流域治水の取り組みを進めていくことが重要であると考えています。 また、阿武隈川の支川である荒川は、12年連続で『水質が最も良好な河川』に選ばれており、流域の皆さまの河川愛護意識の高揚、官民一体での水質改善の取り組みの賜物であると実感しています。今後も流域の皆さまと協働し、良好な河川環境の保全に努めていきます。 道路事業では、令和4年3月16日に発生した福島県沖地震により被災した国道399号伊達橋の災害復旧を、福島県知事より要請を受け、国の権限代行として実施しています。これまで詳細調査を行った後に、地域交通確保のため、仮橋設置工事に着手しました。今後は被災した既存の橋桁の撤去工事、新設する橋桁の工事、下部工補強工事を進めていく手順になっており、地域の皆さまのご理解とご協力を得ながら、早期復旧に取り組んでいきます」 ――今後の抱負を。 「近年は豪雨・豪雪や大規模地震といった自然災害が激甚化・頻発化しており、地域の安全・安心確保のためにも、防災・減災に加えて国土強靭化の推進や、災害発生時の迅速な対応に備えていきます。 また、建設産業への対応ですが、建設産業は当事務所にとって事業推進のパートナーであるとともに、大規模災害時には最前線で活躍する『地域の安全・安心の担い手』であると考えています。そのため、建設産業の魅力向上・人材確保に向けてDⅩ推進や働き方改革・生産性向上について官民一体となって取り組んでいく所存です。 すべての取り組みに共通することとして、地域の期待に応えられるよう職員一丸で対応し、活力ある地域づくりに貢献できるようにしていきます」
すずき・としお 1947年生まれ。国立平工業高等専門学校中退。アクティブワン代表取締役。2013年から白河商工会議所副会頭、昨年11月から現職。 白河商工会議所は昨秋の役員改選で、新会頭に鈴木俊雄氏(アクティブワン代表取締役)を選任した。鈴木氏は改選前まで副会頭を務めており、昇格という格好になる。就任間もない鈴木会頭に、今後の抱負や新型コロナウイルス感染症の会員事業所への影響、そのほかの課題などについて話を聞いた。 ――昨年11月に新会頭に就任しました。 「副会頭を9年間務めましたが、会頭という立場は階段を数段駆け上がったような大きな重みを感じています。会頭に就任してから数カ月が経過しましたが、会頭は全ての場面で表に立つ立場ですから、あらためて責任を実感しています。一方で副会頭を長らく経験してきたこともあり、他会議所等の人脈や経験もありますので、それを生かしながら進めていきたいと思います」 ――新型コロナの影響について。 「国内で感染予防を徹底しても海外から多くの観光客が移動すれば防ぎようがありません。そういった意味で集団免疫が出来るまでは仕方ないと感じています。スペイン風邪など、いままでの感染症の歴史を見ると、終息までに3年程度を要しています。しかもスペイン風邪の流行時はワクチンがありませんでした。それにもかかわらず3年で終息しています。今回は、ワクチンを接種して感染のスピードを緩やかにしつつも、結果的に3年が経過しています。集団免疫が出来つつありますが、それが出来上がるまでは感染が広がるのはやむを得ないと思います。ワクチンを接種し、重症化リスクを下げていくことで、積極的に経済活動を再開させていくべきだと思います。 そのためにも、まちなかの賑わいづくりに欠かせない事業所支援は必要です。会議所としても県や市に働きかけ様々な支援策を講じています。最近では、当会議所と大信・表郷・ひがし商工会が市の委託事業により『しらかわ生活応援クーポン』を配布しました。これは250円クーポンが12枚つづり(3000円分)になったもので、500円以上の買い物や飲食で使用でき、市民の皆さんにも好評を得ています。 それでも県内は震災復興が8合目を迎えた矢先で、加えて一昨年、昨年と大きな地震が発生し、被害を受けた事業所も多いのが現状です。そのため、こういった支援策を講じても、コロナ禍で3年が経過したことで飲食店をはじめとする小規模・中小企業事業者の多くは、限界を迎えています。加えて、今後、コロナウイルス支援対策で受けた融資制度の返済が始まればさらに苦しい状況に立たされます。国では返済期間の延長を考えてくれていますが、もともとあった後継者問題や、ロシアのウクライナへの侵略戦争に伴う影響、急激な円安による諸物価の高騰といった問題も出てきています。 会議所としては、先ほど話したクーポン事業等をはじめ、職員による補助金申請サポートといった支援策を講じているものの、会議所単独で行えることには限界がありますから、国や県にはさらなる支援策の拡充を望みたいと思います。 そんな中、国では防衛費の増額による増税やプライマリーバランスを黒字化するといった報道が出ていますが、いまこそ経済支援に目を向けるべきだと思います」 市街地活性化に努める ――白河だるま市が今年は通常開催されるなど、コロナ対策によって中止していたイベント等も再開しつつあります。 「だるま市は3年振りに開催されることになったほか、イベント等も再開され、今後の経済活動の活性化には期待したいと思います。一方で、伝統的な祭りなどはコロナ禍によって人材や資金不足に陥っています。今後はそういった祭りを観光資源として生かせないか、議論していきたいと思います」 ――国道294号バイパスが間もなく全線開通を迎えます。利便性が向上する一方で、中心市街地への影響が懸念されます。 「今回のバイパス開通は会議所としても何度となく要望してきたものです。東北自動車道白河スマートICから市内に入り、国道289号まで一直線で行けるため、慢性的だった交通渋滞の解消、商工業の物流面、観光面に与える影響は大きく、期待を寄せています。今後この道路をどう生かしていくべきか問われると思います。 白河市や西白河・東白川地域等を加えた県南地域の人口は約13・5万人ですが、製造品出荷額等は約9380億円で県内ではいわき地域とほぼ一緒です。いわき市の人口は33万人以上と県内でも大きな都市ですが、その地域と製造品出荷額等が同じということはそれだけ白河地域にまだポテンシャルがある証拠だと思います。とはいえ、管内事業所は人材不足に苦しんでいます。そのためには他地域から人材を集める必要があり、寮などの整備議論も進んでいます。半面、若者がそういった企業に就職するため、地元の商店街や農家では後継者問題を抱えているのが現状です。そういったバランスを見ていかないとまちづくりはうまくいかないと思います。 一方で、田町や横町などの商店街はバイパス開通によってすでに影響を受け、さらにストロー現象の影響も懸念されます。また、本町地域には銀行の白河支店がありますが、二年後には、店舗を閉めて郊外に新たな店舗を建設します。旧店舗の利活用を含めて中心市街地活性化を進めていきたいと思います。 まちなかの事業者は高齢化が進んでいます。空き店舗になった建物は相続などが発生し所有権などの問題があるだけでなく、空き店舗とは言っても、併設する住宅部分には住民が住んでいるなど、空き店舗の有効活用は簡単ではありません。それでも、楽市白河が手掛けている賃貸マンション『レジデンス楽市』は好評で、現在は満室になっていることからも分かるように、街なかで暮らしたいと思う住民もいます。確かに白河駅まで徒歩3分で、買い物などにも不自由しません。医療体制も充実しており、運転免許返納後は街なかに住みたいと思う高齢者が増加するかもしれません。そういう意味では、いままでの考え方ではなく、環境を整えつつ歴史と文化の香りがする中心市街地に住んでみたいと思われる街にしていくべきだと思っています。市でも歴史的風致維持向上計画を立案し、古い歴史的建造物を保存し利活用していく考えです」 ――今後の抱負。 「白河市は県南地域の中核都市と言われますが、県内の7つの生活圏の一つとして、今後どのように成長していくかということを考えながら職務に当たっていきたいと思います。とはいえ、私一人で出来ることには限りがありますから、会議所役員の皆さんや職員と一緒になって取り組んでいきたいと思います」
ほし・ほくと 1964年郡山市生まれ。安積高、東邦大医学部卒。医師。医系技官として旧厚生省に入省。退官後の現在、星総合病院理事長、県医師会副会長を務める。 昨年7月の参議院選挙福島県選挙区で初当選した星北斗氏(58、自民)は医師であり、病院経営者である立場から新型コロナウイルスの出口戦略を描き、政策に反映させようと奔走している。だが、内閣支持率は低迷しているのが現状だ。岸田文雄政権に苦難が待ち構える中、与党の一員として政権運営をどう捉えるのか。単刀直入に聞いた。 ――あらためて、初当選を果たした選挙戦を振り返ってどのような思いですか。 「大きく感じたことが三つあります。一つ目は『福島県は本当に広いんだなあ』ということ。二つ目は自分が身を置く医療界というのは、数ある業界の中の一つに過ぎないのだということ。農林水産業、商工業含めてあらゆる方々が苦心されているのを目の当たりにして感じました。三つ目は希望の持てる発見ですが、小さな町村の首長が元気で積極的ということ。それぞれの地域が独自性を打ち出し、魅力的な場所にしようと努力されています。広い県内を回り、そのことを強く認識しました。 参議院議員としてさまざまな立場の声を聞き、国政に反映させる責任は非常に重いですが、同時にやりがいを感じています」 ――新型コロナウイルス感染拡大が依然収束しませんが、今後の対応と出口戦略についてうかがいます。 「新型コロナウイルスはBA・5に変異が進み非常に感染しやすくなっています。ただ、ワクチン接種と治療薬の環境は整ってきています。あとは重症化対応のために医療をどう集約するかでしょう。政治判断や法の整備が必要になると思います。一般医療への影響を防ぐためにどうするか、出口戦略を今年度中に見いださなくてはなりません。 感染拡大の真っ只中に出口戦略を大々的に訴えるのはいかがなものかとの指摘もありますが、今真剣に考えておかなければなりません。感染が落ち着いてからだと、どうしても希望的観測が頭をよぎるからです。 2類相当から5類に変える場合には、国が一方的に決めるだけではだめです。国民が『これならいける』と納得する安心領域に入らないといけません。経済との天秤にかけるのではなく、自分の生活の中で新型コロナを5類の感染症として受け入れられるかどうか。そうでなければ出口は見えないと思います。 一般医療に感染を持ち込まないため、既にある発熱外来のような仕組みは5類になったとしても続けていく必要があるでしょう。新型コロナへの感染が疑われたら医療にアクセスできる仕組みはできています。環境が整っていれば『インフルエンザと同等』とあえて強弁しなくてもいいのではと思います。 5類になれば新型コロナの治療費や検査費が自己負担になることについては『自分を守るための出費』という考えが国民の間に一定程度浸透していると思います。例えばインフルエンザのワクチンは、重症化のリスクがある高齢者や子ども、あるいはエッセンシャルワーカーの方は接種するという考え方が定着しています。新型コロナのワクチンも全国民ということではなく、必要な方が必要に応じて接種する方向に徐々に変わっていくと見ています。 一方、自己負担についても全額負担してもらうのか、国が一部を補助するのかという方法論は検討の余地があります。補助の割合も半額なのか、2、3割なのかといった議論が必要で、国民の納得が得られる形にしなければなりません。治療費の補助は上限を決めるが、薬は無料といった柔軟策もあり得るでしょう。丁寧な議論を経ず、単に2類相当から5類に下げるだけではハレーションは大きくなると思います。国として丁寧な制度設計と準備、広報が必要です」 ――東京電力福島第一原発で増え続けるトリチウムなどを含んだALPS処理水の海洋放出をめぐり、安全性への懸念や風評被害を心配する声が未だに後を絶ちません。 「私は、科学的安全性に対する懸念はないと思っています。ただし、風評はどこまで行ってもなくなりません。漁業者らのために買い上げや基金を整えるほかに、多くの方々の意識を変えていく取り組みが必須です。そのためには、多くの方に福島第一原発を訪れてほしいと思います。敷地内に林立する大量の処理水タンクは、帰還が進む地域に暗い影を落としています。タンクの撤去なくして復興はないと思います。これだけのタンクをこのままにしておいていいのかという視点が必要です。 少なくとも、科学的安全性を私たち県民が受け入れなければ海外の人たちが納得しません。安全性だけで物事が動くとは思いませんし、漁業者の方々の心配する気持ちも分かります。ただ、自信を持って県産品を輸出するためには、国は手間と時間を惜しんではいけないと思います」 ――岸田内閣の支持率が低迷しています。とりわけ昨年末に浮上した防衛戦略と、それに伴う増税の考え方には多くの批判が上がりました。 「言葉を選ばずに言うと、私は自民党・岸田内閣に対する期待の大きさの裏返しと捉えています。事実、自民党の支持率自体は下がっていません。ウクライナ侵攻や台湾有事への懸念などを受け、防衛費増加の考え方は国民的コンセンサスが得られつつありました。そうした中で浮上した増税について、まだまだ国民の理解が進んでいないのであれば、それは説明不足だったという批判は真摯に受け入れなければなりません。ただ旧統一教会問題に関しても、熱心に野党との協議を重ね、100点とは言えなくてもスピーディーに解決への道筋を付けました。国会の短期決戦の中で岸田首相は並々ならぬ決意があったと思います。その過程で避けては通れぬ増税の話が出たので、期待がマイナスに変わったのではないでしょうか。 防衛費のために国債を発行し、将来世代にツケを回すのは正しい判断ではありません。それをしないための増税です。復興特別所得税の一部が充てられる点についても、内実は復興の財源が減るわけでなく『切り捨て』ではありません。説明を尽くしていくしかないでしょう。おそらく、衆院選後に発表するのは国民を欺くようで、岸田首相はできなかったのだと思います。真面目さの表れと捉えています」 ――今後の抱負を。 「5年半後の参院選で圧倒的に勝つ、これに尽きます。勝つことが目的ではありません。得票数・得票率は選んでくれた方に対する責任をどう果たしたかが表れる指標になるからです。有権者の方から『星北斗にもう一回やらしてみっぺ』と言われるように、何ができるかを常に考えていきます。 自民党は水平な組織です。1期生だろうが参議院議員だろうが、現場の実情に詳しく、アイデアがあれば政策に反映してくれます。そういう党の環境を最大限活用します。任期の6年間は第2期復興・創生期間の折り返しです。震災・原発事故で避難された皆さんが帰ってこられるまち、住みよいまちにするため首長や地元の方々と取り組んでいきます。次の選挙で相手陣営に『あいつには勝てない』と言われるような、替えの利かない国会議員を目指します」