Category

二本松商工会議所

  • 【二本松商工会議所】菅野京一 会頭インタビュー(2023.12)

    【二本松商工会議所】菅野京一 会頭インタビュー(2023.12)

     すげの・きょういち 1954年2月生まれ。福島大経済学部卒。糸屋ニット・菅野繊維代表取締役。二本松商工会議所副会頭2期を経て昨年11月から現職。  新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、経済活動の制限や各種イベントの中止・規模縮小などを余儀なくされたほか、原材料・燃料費高騰や人手不足など、地方経済を取り巻く環境は厳しい。そんな中、地域経済のかじ取り役である商工会議所では各種課題にどう向き合っているのか。二本松商工会議所の菅野京一会頭にインタビューした。 管内の魅力をもう一度見直していきたい  ――新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが「5類」になりました。これを受け、各種イベントなども通常開催されるようになっていますが、管内の動きについて。  「二本松の提灯祭りは管内の大きなイベントの1つで、コロナ禍以降は中止や規模縮小、アルコール販売禁止などの規制の中での開催を余儀なくされましたが、今年は規制がなくなり盛況でした。ほかにも、8月には各地の夏祭りが通常開催され、想像以上の盛況ぶりでした。多くの人がこういったイベントを待ち望んでいたことを実感しました。もちろん、コロナが完全に消滅したわけではありませんが、5類に移行したことで、イベント等が通常開催され、まちが活性化していると思います。  二本松の菊人形は昨年と比べ1割増の観光客が訪れました。以前から『菊のまち二本松』のPRのため、女性会を中心にJR上野駅や市内各店舗などには『菊手水』の設置や各家の軒先でも菊が飾られ、観光客を迎えています。昨年開館した城報館でも物品の販売を行いましたが、市が菊人形来場者への1割引補助を行ったところ大好評でした。  また、来年の1月には菓子博、2月には酒まつりが行われます。両イベントも規制をなくしコロナ禍前と同規模で行う予定です」  ――円安や燃料高が深刻な課題となっています。  「燃料・物価高は、当然大きな問題ですが、それ以上に管内では人手不足が深刻です。家族経営のような小規模事業者は別にして、どの会員企業に聞いても、やはり人手不足が一番深刻な課題であるとの話が出ます。そんな中、会員企業によっては外国人研修生を迎えて補っている企業もあります。  会議所としては、市と合同で意見交換をしながら人手不足に向けた課題解決を図っています。特に、地元の若者がこの地域に残って、地元企業で働いてほしいという思いから、高校生に対する研修制度などのカリキュラムを少しでも設けていただければ、若者の興味も地元に向けられるのではないのかと思います。市内には認知度は高くないものの、世界に誇れるような企業が多いのです。これまで、企業ガイドブックといったパンフレット配布を行ってきましたが、今後は映像でまとめたDVDなどを各学校に配布することを考えています。やはり、実際の映像を、自分の目で見てもらった方がより説得力があるでしょうからね。ほかにも、企業説明会などを実施し、会議所として少しでも人手不足解消に向けた活動を行っていきたいと思っています。  また、市内では空き店舗利用が多く、伝統的に菓子店が多いので空き店舗を利用した菓子店がオープンするなどしています。とはいえ、まだまだ空き店舗が目立つ状況ですから、さらなる対策を講じていきたい。  今年からインボイス制度がはじまりましたが、会議所では説明会を常時開催しています。会員企業には零細企業も多く、猶予制度の中身等を理解していない企業も少なくありませんので、丁寧な説明を続けていきたいと思います」  ――国・県に望みたいことは。  「安達太良山のくろがね小屋は閉鎖されたままになっています。県でも2025年の完成を目指すことになっていますが、建設に向けては資材をヘリコプター輸送しなければならないなどの問題があります。中通りでも有数の日本百名山の1つでもあり、観光資源でもありますから、トイレの問題はもちろん、登山者や観光客の安全を守るという意味でも早期の建設をお願いしたいと思います」  ――現在の重点事業について。  「会議所が果たすべき役割の原点に立ち返り『会員と共に一歩前へ! ~信頼される「地域総合経済団体」を目指して~』を基本行動に据え、施策事業を実行するとともにさらなる組織強化に努めていきます。  特に人口減少や高齢化などの事業者が抱える社会構造的な課題に対して、『地元事業者の経営基盤の強化』と『持続性のある地域の活性化』を活動計画の柱として、各種事業を展開していきたいと思っています。  具体的には、巡回相談・専門相談を各種経営支援事業の核として、会員企業の実態とニーズに即した支援を寄り添いながら実施していきます。また、IT化によるDX支援など、経営の効率化と生産性の向上につながる支援や働き方改革、社会保障などの諸制度に対して、即応できる体制の強化を図り、労働環境改善、健康経営を進めていきます。  また、会議所だけの事業ではありませんが菊人形が今年で67回目を迎え70回の節目が迫っています。東日本で菊人形を開催しているのは二本松市だけで、70年の長い間継続したことは誇りであり、技術継承も必要だと思います。二本松の菊人形は、菊栄会が中心になって行われていますが、次の80、90周年を見据えて、会議所としても、例えば体験型の催しなど、70周年に向けた提案を行っていきたいと思います」  ――今後の抱負。  「就任直後も話したようにオール二本松で当たっていきたいと思います。そういう意味では、常議員をはじめ、会員企業の皆さんには積極的に参加していただき感謝しかありません。夏祭りや酒祭りといったイベントにしても、会員企業と一緒になってもっとアイデアをひねりながら、さらにいいイベントにしていきたいと思います。  二本松市は、すごくいいところがたくさんあるにもかかわらず、地元住民が知らないことも多くあります。もう一度、二本松市の魅力を再発見する取り組みを進めていきながら、インバウンドにつなげていきたいと思います。いまは円安の影響で外国人観光客が多く国内に訪れています。市内でもエビスサーキットには多くの外国人が訪れるなど地盤はあると思います。以前からインバウンドに向けた取り組みを行ってきましたが、あらためて、市内にインバウンド観光客が訪れる仕組みづくりを進めていきたいと思います。  来年1月には岳温泉のあづま館がグランドオープンします。岳温泉の各旅館もコロナ禍の影響で苦労していますが、あづま館はサウナ施設をオープンさせるなど、頑張ってくれています。市内の観光名所である岳温泉は安達太良山とセットで大きな魅力の1つです。そういった管内の魅力をもう一度見直していきたいと思います」

  • 【二本松商工会議所】菅野京一 会頭インタビュー

    【二本松商工会議所】菅野京一 会頭インタビュー

     すげの・きょういち 1954年2月生まれ。福島大経済学部卒。糸屋ニット・菅野繊維代表取締役。二本松商工会議所副会頭2期を経て11月から現職。  2022年11月1日、二本松商工会議所の臨時議員総会が開かれ、新会頭に菅野京一副会頭(68、糸屋ニット・菅野繊維代表取締役)が選出された。コロナ禍、物価高、少子高齢化、後継者問題など、地方の中小企業は深刻な課題に直面している。そうした課題に対し、同商工会議所ではどう対応していく考えなのか。菅野新会頭に話を聞いた。  ――2022年11月に開かれた臨時議員総会で新会頭に選出されました。率直な感想は。  「二本松市は中核市である福島市や郡山市の中間地点に位置していますが、『二本松の提灯祭り』が毎年大いに盛り上がることからも分かる通り、郷土愛の強い地域で、100年続く会員事業所も少なくありません。私自身、故郷を離れて一度地元に帰ったとき、安達太良山を見て郷愁にかられ、あらためて郷土への誇りを感じた記憶があります。  だからこそ、まちを活性化していくには市外から移住してくる人や一度故郷を離れた若い力を積極的に受け入れ、活用していくことが重要です。そういう意味では会議所だけではなく、『オールにほんまつ』で盛り立てていくことが重要だと思います。  管内には安達太良山のほか、岳温泉、『二本松の提灯祭り』、『二本松の菊人形』など観光資源が多い。もっと言えば、坂道が多い地形など、地元に住んでいる人間にとって当たり前になっているものでも、十分観光資源になり得ます。市やさまざまな団体と連携し、地元の魅力を見つけて磨く作業を続けていきたいと思います」  ――新型コロナウイルスは感染拡大から3年以上経過しましたが、収束の見通しが立ちません。地方経済にも大きな影響を与えていますが、会員事業所の経営状況はいかがでしょうか。  「飲食業・宿泊業は特に厳しい状況にあります。今まで国や県から出ていた補助金がなくなり、補償も全くない中で店を閉めた所も少なくありません。これは会議所だけで解決できる課題ではありません。  当会議所ではコロナ対策を万全にして徐々に会合などを再開させたいと考えており、年始の賀詞交歓会はあだたら商工会と合同で3年ぶりに開催する予定です。ただ、県内では業績不振となった結婚式場が閉鎖しており、当管内でも大人数を収容できるコンベンション会場が少なくなっているのが悩みの種です」  ――コロナ禍や国際情勢の悪化で物価が高騰しています。会議所としてどのように対応していくべきだと思いますか。  「企業にとって電力値上げの影響は大きく、特に新電力に切り替えた事業所は苦しんでいます。会議所では経営指導に力を入れていますが、それで乗り切るのも限度があります。国には電気料金の負担軽減策の拡充を行ってほしいと思います。  今後、厳しい状況が続けば事業所をたたむケースが増えることも懸念されます。ただでさえ、中小企業は後継者問題を抱えています。昨今は銀行から送られる事業承継やM&Aの案内もよく目にするようになりました。子どもがいても、家業を引き継がず、自分自身で目標を持って別なことをするケースが増加しているようです。  商店街の空き店舗解消にも直結する重要な問題ですが、大胆な政策が無ければ解決しないと思います。一方であえて家業を継いで、時代に合わせた新しい形で経営する若手経営者もいます。会議所としてはさまざまな経営者のサポートを継続していきたいと考えています。  市外から移住者を受け入れ、まちを活性化させるためにも、特色を出すようにして、『この土地で商売をしたい』と思われる地域にしていかなければいけないと思います」  ――3選を果たした内堀雅雄知事に望むことは。  「真摯に県政に向き合っていると思うので、今の姿勢を崩さず続けてほしいですね。内堀知事は『オールふくしま』という言葉をよく使いますが、今後も県全体の発展に努めてほしいと思います」  ――「二本松の提灯祭り」、「二本松の菊人形」が3年振りに通常開催されるなど、今まで中止・延期になっていたイベントが復活しつつあります。今後、どのように観光振興を図っていくべきとお考えでしょうか。  「提灯祭りには予想以上に大勢の方が訪れ、露店も盛況でした。こういった行事やイベントが待ち望まれているとはっきり分かりました。  提灯祭りは観光振興という意味でも大事ですが、旧二本松市民にとって精神的支柱であり、祭りがないと活気が生まれません。経済効果も大きいので、たとえコロナ前と形は変わっても、継続していかなければならないと感じました。  菊人形も予想以上の盛況ぶりでした。〝お城山〟の紅葉が見ごろを迎え、菊が満開のタイミングで開催期間が終了したのが残念でした。  菊人形の季節には、寺社、事業所、店舗、住宅の前に、菊の鉢植えや菊の花を花器に浮かべた『菊手水』が飾られ、まち全体が菊の花に染まります。1本の茎から1000もの花を咲かせる千輪咲は、日本菊花全国大会で内閣総理大臣賞を獲得しています。  そういう意味で市を代表する行事であり、今後も『菊のまち』をアピールしていきたいと思います」 意見聞きながら舵取り  ――菊人形の会場近くの商店街もにぎわっていたようですね。  「空き店舗を活用した喫茶店や洋菓子店が開業しており、開催期間の週末は多くの来店客でにぎわっていました。SNSなども上手に活用してPRしていたようです。コロナ禍でインバウンド客は少なくなっていますが、海外まで情報が届けば需要の増大にもつながります。発信の重要性をあらためて感じました。  個々の事業所の発信をコーディネートして連携していけば、点同士がつながり、さらなるまちの活性化につながっていくと思います。喫茶店目当てで市内に訪れた観光客が、別な所に足を運ぶという展開も生まれるはずです。そうした考え方が今後は重要になると思います」  ――今後の抱負。  「3年間の任期がスタートしたばかりですが、会員事業所や市民の皆さんに『良くなった』と思われるような実績を残したいと思います。ある意味、激動の3年間になるかもしれません。  会頭に選出されましたが、私は一人で引っ張っていくタイプではないと思っています。皆さんの意見をとりまとめながら進む性格なので、意見を吸い上げながら、舵取りを行っていきたいと思います。  副会頭、議員、会議所職員には素晴らしい方が数多くいます。そういった方々と力を合わせて、これまでとは違う会議所を作り上げていきたいと思います」 二本松商工会議所ホームページ 政経東北【2022年12月号】

  • 【二本松商工会議所】菅野京一 会頭インタビュー(2023.12)

     すげの・きょういち 1954年2月生まれ。福島大経済学部卒。糸屋ニット・菅野繊維代表取締役。二本松商工会議所副会頭2期を経て昨年11月から現職。  新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、経済活動の制限や各種イベントの中止・規模縮小などを余儀なくされたほか、原材料・燃料費高騰や人手不足など、地方経済を取り巻く環境は厳しい。そんな中、地域経済のかじ取り役である商工会議所では各種課題にどう向き合っているのか。二本松商工会議所の菅野京一会頭にインタビューした。 管内の魅力をもう一度見直していきたい  ――新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが「5類」になりました。これを受け、各種イベントなども通常開催されるようになっていますが、管内の動きについて。  「二本松の提灯祭りは管内の大きなイベントの1つで、コロナ禍以降は中止や規模縮小、アルコール販売禁止などの規制の中での開催を余儀なくされましたが、今年は規制がなくなり盛況でした。ほかにも、8月には各地の夏祭りが通常開催され、想像以上の盛況ぶりでした。多くの人がこういったイベントを待ち望んでいたことを実感しました。もちろん、コロナが完全に消滅したわけではありませんが、5類に移行したことで、イベント等が通常開催され、まちが活性化していると思います。  二本松の菊人形は昨年と比べ1割増の観光客が訪れました。以前から『菊のまち二本松』のPRのため、女性会を中心にJR上野駅や市内各店舗などには『菊手水』の設置や各家の軒先でも菊が飾られ、観光客を迎えています。昨年開館した城報館でも物品の販売を行いましたが、市が菊人形来場者への1割引補助を行ったところ大好評でした。  また、来年の1月には菓子博、2月には酒まつりが行われます。両イベントも規制をなくしコロナ禍前と同規模で行う予定です」  ――円安や燃料高が深刻な課題となっています。  「燃料・物価高は、当然大きな問題ですが、それ以上に管内では人手不足が深刻です。家族経営のような小規模事業者は別にして、どの会員企業に聞いても、やはり人手不足が一番深刻な課題であるとの話が出ます。そんな中、会員企業によっては外国人研修生を迎えて補っている企業もあります。  会議所としては、市と合同で意見交換をしながら人手不足に向けた課題解決を図っています。特に、地元の若者がこの地域に残って、地元企業で働いてほしいという思いから、高校生に対する研修制度などのカリキュラムを少しでも設けていただければ、若者の興味も地元に向けられるのではないのかと思います。市内には認知度は高くないものの、世界に誇れるような企業が多いのです。これまで、企業ガイドブックといったパンフレット配布を行ってきましたが、今後は映像でまとめたDVDなどを各学校に配布することを考えています。やはり、実際の映像を、自分の目で見てもらった方がより説得力があるでしょうからね。ほかにも、企業説明会などを実施し、会議所として少しでも人手不足解消に向けた活動を行っていきたいと思っています。  また、市内では空き店舗利用が多く、伝統的に菓子店が多いので空き店舗を利用した菓子店がオープンするなどしています。とはいえ、まだまだ空き店舗が目立つ状況ですから、さらなる対策を講じていきたい。  今年からインボイス制度がはじまりましたが、会議所では説明会を常時開催しています。会員企業には零細企業も多く、猶予制度の中身等を理解していない企業も少なくありませんので、丁寧な説明を続けていきたいと思います」  ――国・県に望みたいことは。  「安達太良山のくろがね小屋は閉鎖されたままになっています。県でも2025年の完成を目指すことになっていますが、建設に向けては資材をヘリコプター輸送しなければならないなどの問題があります。中通りでも有数の日本百名山の1つでもあり、観光資源でもありますから、トイレの問題はもちろん、登山者や観光客の安全を守るという意味でも早期の建設をお願いしたいと思います」  ――現在の重点事業について。  「会議所が果たすべき役割の原点に立ち返り『会員と共に一歩前へ! ~信頼される「地域総合経済団体」を目指して~』を基本行動に据え、施策事業を実行するとともにさらなる組織強化に努めていきます。  特に人口減少や高齢化などの事業者が抱える社会構造的な課題に対して、『地元事業者の経営基盤の強化』と『持続性のある地域の活性化』を活動計画の柱として、各種事業を展開していきたいと思っています。  具体的には、巡回相談・専門相談を各種経営支援事業の核として、会員企業の実態とニーズに即した支援を寄り添いながら実施していきます。また、IT化によるDX支援など、経営の効率化と生産性の向上につながる支援や働き方改革、社会保障などの諸制度に対して、即応できる体制の強化を図り、労働環境改善、健康経営を進めていきます。  また、会議所だけの事業ではありませんが菊人形が今年で67回目を迎え70回の節目が迫っています。東日本で菊人形を開催しているのは二本松市だけで、70年の長い間継続したことは誇りであり、技術継承も必要だと思います。二本松の菊人形は、菊栄会が中心になって行われていますが、次の80、90周年を見据えて、会議所としても、例えば体験型の催しなど、70周年に向けた提案を行っていきたいと思います」  ――今後の抱負。  「就任直後も話したようにオール二本松で当たっていきたいと思います。そういう意味では、常議員をはじめ、会員企業の皆さんには積極的に参加していただき感謝しかありません。夏祭りや酒祭りといったイベントにしても、会員企業と一緒になってもっとアイデアをひねりながら、さらにいいイベントにしていきたいと思います。  二本松市は、すごくいいところがたくさんあるにもかかわらず、地元住民が知らないことも多くあります。もう一度、二本松市の魅力を再発見する取り組みを進めていきながら、インバウンドにつなげていきたいと思います。いまは円安の影響で外国人観光客が多く国内に訪れています。市内でもエビスサーキットには多くの外国人が訪れるなど地盤はあると思います。以前からインバウンドに向けた取り組みを行ってきましたが、あらためて、市内にインバウンド観光客が訪れる仕組みづくりを進めていきたいと思います。  来年1月には岳温泉のあづま館がグランドオープンします。岳温泉の各旅館もコロナ禍の影響で苦労していますが、あづま館はサウナ施設をオープンさせるなど、頑張ってくれています。市内の観光名所である岳温泉は安達太良山とセットで大きな魅力の1つです。そういった管内の魅力をもう一度見直していきたいと思います」

  • 【二本松商工会議所】菅野京一 会頭インタビュー

     すげの・きょういち 1954年2月生まれ。福島大経済学部卒。糸屋ニット・菅野繊維代表取締役。二本松商工会議所副会頭2期を経て11月から現職。  2022年11月1日、二本松商工会議所の臨時議員総会が開かれ、新会頭に菅野京一副会頭(68、糸屋ニット・菅野繊維代表取締役)が選出された。コロナ禍、物価高、少子高齢化、後継者問題など、地方の中小企業は深刻な課題に直面している。そうした課題に対し、同商工会議所ではどう対応していく考えなのか。菅野新会頭に話を聞いた。  ――2022年11月に開かれた臨時議員総会で新会頭に選出されました。率直な感想は。  「二本松市は中核市である福島市や郡山市の中間地点に位置していますが、『二本松の提灯祭り』が毎年大いに盛り上がることからも分かる通り、郷土愛の強い地域で、100年続く会員事業所も少なくありません。私自身、故郷を離れて一度地元に帰ったとき、安達太良山を見て郷愁にかられ、あらためて郷土への誇りを感じた記憶があります。  だからこそ、まちを活性化していくには市外から移住してくる人や一度故郷を離れた若い力を積極的に受け入れ、活用していくことが重要です。そういう意味では会議所だけではなく、『オールにほんまつ』で盛り立てていくことが重要だと思います。  管内には安達太良山のほか、岳温泉、『二本松の提灯祭り』、『二本松の菊人形』など観光資源が多い。もっと言えば、坂道が多い地形など、地元に住んでいる人間にとって当たり前になっているものでも、十分観光資源になり得ます。市やさまざまな団体と連携し、地元の魅力を見つけて磨く作業を続けていきたいと思います」  ――新型コロナウイルスは感染拡大から3年以上経過しましたが、収束の見通しが立ちません。地方経済にも大きな影響を与えていますが、会員事業所の経営状況はいかがでしょうか。  「飲食業・宿泊業は特に厳しい状況にあります。今まで国や県から出ていた補助金がなくなり、補償も全くない中で店を閉めた所も少なくありません。これは会議所だけで解決できる課題ではありません。  当会議所ではコロナ対策を万全にして徐々に会合などを再開させたいと考えており、年始の賀詞交歓会はあだたら商工会と合同で3年ぶりに開催する予定です。ただ、県内では業績不振となった結婚式場が閉鎖しており、当管内でも大人数を収容できるコンベンション会場が少なくなっているのが悩みの種です」  ――コロナ禍や国際情勢の悪化で物価が高騰しています。会議所としてどのように対応していくべきだと思いますか。  「企業にとって電力値上げの影響は大きく、特に新電力に切り替えた事業所は苦しんでいます。会議所では経営指導に力を入れていますが、それで乗り切るのも限度があります。国には電気料金の負担軽減策の拡充を行ってほしいと思います。  今後、厳しい状況が続けば事業所をたたむケースが増えることも懸念されます。ただでさえ、中小企業は後継者問題を抱えています。昨今は銀行から送られる事業承継やM&Aの案内もよく目にするようになりました。子どもがいても、家業を引き継がず、自分自身で目標を持って別なことをするケースが増加しているようです。  商店街の空き店舗解消にも直結する重要な問題ですが、大胆な政策が無ければ解決しないと思います。一方であえて家業を継いで、時代に合わせた新しい形で経営する若手経営者もいます。会議所としてはさまざまな経営者のサポートを継続していきたいと考えています。  市外から移住者を受け入れ、まちを活性化させるためにも、特色を出すようにして、『この土地で商売をしたい』と思われる地域にしていかなければいけないと思います」  ――3選を果たした内堀雅雄知事に望むことは。  「真摯に県政に向き合っていると思うので、今の姿勢を崩さず続けてほしいですね。内堀知事は『オールふくしま』という言葉をよく使いますが、今後も県全体の発展に努めてほしいと思います」  ――「二本松の提灯祭り」、「二本松の菊人形」が3年振りに通常開催されるなど、今まで中止・延期になっていたイベントが復活しつつあります。今後、どのように観光振興を図っていくべきとお考えでしょうか。  「提灯祭りには予想以上に大勢の方が訪れ、露店も盛況でした。こういった行事やイベントが待ち望まれているとはっきり分かりました。  提灯祭りは観光振興という意味でも大事ですが、旧二本松市民にとって精神的支柱であり、祭りがないと活気が生まれません。経済効果も大きいので、たとえコロナ前と形は変わっても、継続していかなければならないと感じました。  菊人形も予想以上の盛況ぶりでした。〝お城山〟の紅葉が見ごろを迎え、菊が満開のタイミングで開催期間が終了したのが残念でした。  菊人形の季節には、寺社、事業所、店舗、住宅の前に、菊の鉢植えや菊の花を花器に浮かべた『菊手水』が飾られ、まち全体が菊の花に染まります。1本の茎から1000もの花を咲かせる千輪咲は、日本菊花全国大会で内閣総理大臣賞を獲得しています。  そういう意味で市を代表する行事であり、今後も『菊のまち』をアピールしていきたいと思います」 意見聞きながら舵取り  ――菊人形の会場近くの商店街もにぎわっていたようですね。  「空き店舗を活用した喫茶店や洋菓子店が開業しており、開催期間の週末は多くの来店客でにぎわっていました。SNSなども上手に活用してPRしていたようです。コロナ禍でインバウンド客は少なくなっていますが、海外まで情報が届けば需要の増大にもつながります。発信の重要性をあらためて感じました。  個々の事業所の発信をコーディネートして連携していけば、点同士がつながり、さらなるまちの活性化につながっていくと思います。喫茶店目当てで市内に訪れた観光客が、別な所に足を運ぶという展開も生まれるはずです。そうした考え方が今後は重要になると思います」  ――今後の抱負。  「3年間の任期がスタートしたばかりですが、会員事業所や市民の皆さんに『良くなった』と思われるような実績を残したいと思います。ある意味、激動の3年間になるかもしれません。  会頭に選出されましたが、私は一人で引っ張っていくタイプではないと思っています。皆さんの意見をとりまとめながら進む性格なので、意見を吸い上げながら、舵取りを行っていきたいと思います。  副会頭、議員、会議所職員には素晴らしい方が数多くいます。そういった方々と力を合わせて、これまでとは違う会議所を作り上げていきたいと思います」 二本松商工会議所ホームページ 政経東北【2022年12月号】