すげの・きょういち 1954年2月生まれ。福島大経済学部卒。糸屋ニット・菅野繊維代表取締役。二本松商工会議所副会頭2期を経て昨年11月から現職。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、経済活動の制限や各種イベントの中止・規模縮小などを余儀なくされたほか、原材料・燃料費高騰や人手不足など、地方経済を取り巻く環境は厳しい。そんな中、地域経済のかじ取り役である商工会議所では各種課題にどう向き合っているのか。二本松商工会議所の菅野京一会頭にインタビューした。
管内の魅力をもう一度見直していきたい
――新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが「5類」になりました。これを受け、各種イベントなども通常開催されるようになっていますが、管内の動きについて。
「二本松の提灯祭りは管内の大きなイベントの1つで、コロナ禍以降は中止や規模縮小、アルコール販売禁止などの規制の中での開催を余儀なくされましたが、今年は規制がなくなり盛況でした。ほかにも、8月には各地の夏祭りが通常開催され、想像以上の盛況ぶりでした。多くの人がこういったイベントを待ち望んでいたことを実感しました。もちろん、コロナが完全に消滅したわけではありませんが、5類に移行したことで、イベント等が通常開催され、まちが活性化していると思います。
二本松の菊人形は昨年と比べ1割増の観光客が訪れました。以前から『菊のまち二本松』のPRのため、女性会を中心にJR上野駅や市内各店舗などには『菊手水』の設置や各家の軒先でも菊が飾られ、観光客を迎えています。昨年開館した城報館でも物品の販売を行いましたが、市が菊人形来場者への1割引補助を行ったところ大好評でした。
また、来年の1月には菓子博、2月には酒まつりが行われます。両イベントも規制をなくしコロナ禍前と同規模で行う予定です」
――円安や燃料高が深刻な課題となっています。
「燃料・物価高は、当然大きな問題ですが、それ以上に管内では人手不足が深刻です。家族経営のような小規模事業者は別にして、どの会員企業に聞いても、やはり人手不足が一番深刻な課題であるとの話が出ます。そんな中、会員企業によっては外国人研修生を迎えて補っている企業もあります。
会議所としては、市と合同で意見交換をしながら人手不足に向けた課題解決を図っています。特に、地元の若者がこの地域に残って、地元企業で働いてほしいという思いから、高校生に対する研修制度などのカリキュラムを少しでも設けていただければ、若者の興味も地元に向けられるのではないのかと思います。市内には認知度は高くないものの、世界に誇れるような企業が多いのです。これまで、企業ガイドブックといったパンフレット配布を行ってきましたが、今後は映像でまとめたDVDなどを各学校に配布することを考えています。やはり、実際の映像を、自分の目で見てもらった方がより説得力があるでしょうからね。ほかにも、企業説明会などを実施し、会議所として少しでも人手不足解消に向けた活動を行っていきたいと思っています。
また、市内では空き店舗利用が多く、伝統的に菓子店が多いので空き店舗を利用した菓子店がオープンするなどしています。とはいえ、まだまだ空き店舗が目立つ状況ですから、さらなる対策を講じていきたい。
今年からインボイス制度がはじまりましたが、会議所では説明会を常時開催しています。会員企業には零細企業も多く、猶予制度の中身等を理解していない企業も少なくありませんので、丁寧な説明を続けていきたいと思います」
――国・県に望みたいことは。
「安達太良山のくろがね小屋は閉鎖されたままになっています。県でも2025年の完成を目指すことになっていますが、建設に向けては資材をヘリコプター輸送しなければならないなどの問題があります。中通りでも有数の日本百名山の1つでもあり、観光資源でもありますから、トイレの問題はもちろん、登山者や観光客の安全を守るという意味でも早期の建設をお願いしたいと思います」
――現在の重点事業について。
「会議所が果たすべき役割の原点に立ち返り『会員と共に一歩前へ! ~信頼される「地域総合経済団体」を目指して~』を基本行動に据え、施策事業を実行するとともにさらなる組織強化に努めていきます。
特に人口減少や高齢化などの事業者が抱える社会構造的な課題に対して、『地元事業者の経営基盤の強化』と『持続性のある地域の活性化』を活動計画の柱として、各種事業を展開していきたいと思っています。
具体的には、巡回相談・専門相談を各種経営支援事業の核として、会員企業の実態とニーズに即した支援を寄り添いながら実施していきます。また、IT化によるDX支援など、経営の効率化と生産性の向上につながる支援や働き方改革、社会保障などの諸制度に対して、即応できる体制の強化を図り、労働環境改善、健康経営を進めていきます。
また、会議所だけの事業ではありませんが菊人形が今年で67回目を迎え70回の節目が迫っています。東日本で菊人形を開催しているのは二本松市だけで、70年の長い間継続したことは誇りであり、技術継承も必要だと思います。二本松の菊人形は、菊栄会が中心になって行われていますが、次の80、90周年を見据えて、会議所としても、例えば体験型の催しなど、70周年に向けた提案を行っていきたいと思います」
――今後の抱負。
「就任直後も話したようにオール二本松で当たっていきたいと思います。そういう意味では、常議員をはじめ、会員企業の皆さんには積極的に参加していただき感謝しかありません。夏祭りや酒祭りといったイベントにしても、会員企業と一緒になってもっとアイデアをひねりながら、さらにいいイベントにしていきたいと思います。
二本松市は、すごくいいところがたくさんあるにもかかわらず、地元住民が知らないことも多くあります。もう一度、二本松市の魅力を再発見する取り組みを進めていきながら、インバウンドにつなげていきたいと思います。いまは円安の影響で外国人観光客が多く国内に訪れています。市内でもエビスサーキットには多くの外国人が訪れるなど地盤はあると思います。以前からインバウンドに向けた取り組みを行ってきましたが、あらためて、市内にインバウンド観光客が訪れる仕組みづくりを進めていきたいと思います。
来年1月には岳温泉のあづま館がグランドオープンします。岳温泉の各旅館もコロナ禍の影響で苦労していますが、あづま館はサウナ施設をオープンさせるなど、頑張ってくれています。市内の観光名所である岳温泉は安達太良山とセットで大きな魅力の1つです。そういった管内の魅力をもう一度見直していきたいと思います」