【会津土建】菅家忠洋社長インタビュー

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【会津土建】菅家忠洋社長インタビュー

かんけ・ただひろ 1979年5月生まれ。東京の大学を卒業後、海外留学を経て会津土建へ入社。翌年、子会社の㈱エマキへ出向。10年間IT事業の社長を務める。その後、会津土建へ戻り、取締役、常務取締役、副社長を歴任し、昨年6月に代表取締役社長に就任。 

 会津若松市の会津土建は大正15(1926)年に創業し、会津地方に根ざした総合建設業として成長を続けてきた。建設業界全体がさまざまな課題を抱える中で、先進的な取り組みへの挑戦を続けている。昨年6月に代表取締役社長に就任した菅家忠洋氏(44)に建設業界の現状、今後の経営ビジョンについてインタビューした。

効率化と新たな挑戦を心がけ成長を続けていく。

 ――昨年6月8日付で会津土建の代表取締役社長に就任されました。

 「私の祖父と父が歴代の社長なので、幼い頃から会社を引き継ぐことに漠然としたイメージはありました。実際に社長となって、もちろん仕事の重みや責任は感じていますが、不安やプレッシャーにさいなまれることはなく、やりがいを感じながら充実した日々を過ごしています。さまざまな方々とお会いする機会に恵まれ、物事に対する見識や感性が膨らみ、人との結びつきやご縁の尊さを実感しています。建設業という仕事自体にとても魅力を感じますし、人のため、社会のために貢献すべく、地域が活性化できるよう情熱をもってまちづくりに努めていきたいと存じます」

 ――老舗総合建設会社として地域社会にどう貢献していく考えですか。

 「当社は大正15年創業、まもなく100周年を迎える老舗の建設会社です。会社の歴史を十分に理解しながら、新たな伝統を創っていく所存です。現在の会津地域における建設業界を取り巻く環境や政治経済の状況を俯瞰的に捉え、何を成すべきか、深く考えながらも瞬時に見極め、判断していく必要があります。また、今までお付き合いいただいたお客様はもちろんのこと、新たにご縁をいただいた方々、協力会社、職人さん方とより一層の誠心誠意を込めてお付き合いをさせていただきたく存じます。私たち建設会社のミッションは、お客様の満足いく建物を提供すること、そして、安心で安全に生活ができる豊かなインフラを整備し、地域社会に還元することが最重要項目です。社会情勢が目まぐるしく変化する中、安全、品質、コスト、デザイン、付加価値、SDGsなどへのより一層の対応が求められています。今後、PPP(官民のパートナーシップによる公共サービスの提供手法)やPFI(公共施設等の建設・維持管理・運営等を民間の資金、経営能力、技術的能力を活用する手法)事業が推進されると想定し、異業種の方々との交流や連携による柔軟な発想と対応が大事です。そのためにも、私たちも理論に基づいた提言をしながら、発注者、施工業者、設計、学識者、専門機関など、さまざまな意見をまとめながら、産学官による垣根を超えたデザインビルドに取り組むべきだと思います。将来を見通しながら地域の皆さまが納得し、喜ばれる仕事を完遂することが弊社の社会的な役割であるとあらためて認識しています」

ICTとアナログの融合

 ――先進的な取り組みについて。

 「建設業界では少子高齢化による人手不足が深刻です。そのため、国土交通省は、最先端工法やICT技術を導入することで建設生産システムを向上し効率を良くする『i―Construction』を推進しています。建設現場のみならず、総務や経理の事務的なバックオフィスでも生産性や効率性の向上が図られています。現在は3次元データの活用を深化させ、建設現場をデジタルツインで作業効率を高める取り組みにも着手しています。

 スケールの大きい土木現場を施工管理する大々的な建設DXからスマートフォンのアプリケーションに至るまで、会社にとって効果があり、社員の仕事が楽に、スムーズになるのであれば積極的に導入する考えです。時代の潮流に乗り、今後も新しいテクノロジーや大手ゼネコンの取り組み、海外の事例を含め、導入検討や内製化の研究に励む所存です。
 一方で、私は何よりも『アナログ』なお付き合いを大切にしようと思っています。人様との信頼関係の構築には対面が不可欠です。『温故知新』を座右の銘に、老若男女問わず、真心と礼儀を尽くしたいと存じます。『デジタル』と『アナログ』それぞれの利点を見極めながら新旧融合を図り、相乗効果が発揮できるよう『機を見るに敏』を意識した対応に徹したいと思います」

 ――建設業界の今後の見通しは。

 「全国的にみれば、先の東京五輪、リニア中央新幹線の整備、大阪万博、東京の再開発事業など建設需要が旺盛となっています。一方で、本県に目を移せば東日本大震災から12年が経過し、イノベーション・コースト構想や一部まちづくりを残し、復旧・復興事業も終わりを迎え、大型事業も少ない状況です。建設業界はすでに縮小・淘汰の時代が到来したといっても過言ではなく、大都市と地方都市を比較すると経済格差を著しく感じます。これからは新規でゼロから建設するというよりも、既存の建造物・構造物の維持管理やメンテナンスに軸足が移っており、それに応じて業務内容も変化させていく必要があります。

 今後は、既存の建設会社だけではなくハウスメーカー、設備会社など関連業種も含めれば競争相手が多く、生き残りは容易ではありません。そうした中で、当社の位置付けを見つめ直しながら、新たなチャレンジを始動していく覚悟が問われます。先行きが見えないことも多々ございますが、私たちが抱く既成概念をリセットし、どん欲に挑戦しながら新たな領域を切り開くことが生き残るポイントだと考えます。厳しい経済状況でも成長している企業が存在するのも事実です。成功事例から学びを得て、業務に反映できるものはぜひ取り入れていきます。激烈な競争を勝ち抜くためにも『メイドイン会津』の地元建設会社として、プライドを大切にしながら企業価値をさらに高め、皆さまから認めていただけるよう、誠心誠意努めていきます」

 ――結びに今後の抱負を。

 「これから未来の福島を創るにあたり、私たち建設業界は真価を試される大切なターニングポイントにあると思います。故郷のため、そして子どもたちのため、日々技術を磨き、研鑽を積みながら、新しい事業スタイルを常に学び、もう一段上の高みに会社をもっていきたいと強く願っています。その実現に向け、『企業は人なり』の精神をモットーに、社員ファーストで生き生きと働ける環境を提供し、福利厚生を充実させながら、優秀な人材をリクルートしていきます。

 また、健康経営優良法人の認証取得や女性活躍社会の推進をはじめ、企業価値の向上に着手していきます。今までの建設会社のイメージを覆し、新4K(給与・休暇・希望・かっこいい)を実現し、魅力溢れる企業体質をもって、社会に貢献していきます。私自身、まだまだ若輩者ではありますが、夢と希望を持って成長していきます」

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