【根本匠】衆議院議員インタビュー(2024年8月)

【根本匠】衆議院議員インタビュー(2024年8月)

経歴

ねもと・たくみ 1951年生まれ。安積高校、東大経済学部卒。建設省大臣官房政策企画官を経て93年の衆院選で初当選。現在9期。安倍内閣では復興大臣や厚生労働大臣を務め、衆議院予算委員長など国会や党でも要職を歴任。

 自民党が政治資金パーティー問題で揺れている。4月に行われた三つの衆院補選や地方選挙は厳しい結果が続いた。国民からは政権交代を求める声も聞かれるが、対する野党はというと立憲民主党の支持率は伸び悩む。政治不信が高まる中、政治家の姿はどうあるべきかを自民党・根本匠衆院議員(73)=9期=に語ってもらった。

 ――派閥の政治資金問題を受け、自民党は国民の信頼回復に努める必要に迫られています。

 「問題の本質は、特定派閥の政治資金パーティー収入の還流分を含む不記載にあります。今、党のガバナンスや政治家のモラルが大きく問われています。国民は説明責任を果たすべき立場の政治家が何を語り、どう行動するか厳しい目を向けています。党は正すべきものは正すという姿勢で臨まなければなりません。前国会で政治資金規正法の改正が行われました。罰則強化も含め不十分だ
った法律を改正するのは当然です。ただ、それと同時に考えなければならないのは政治家としての生き方、志はどうあるべきかということです。システムに問題があればそれを正せば正常に機能します。しかし、システムを動かす人間に問題があったら正常なシステムも正しく機能しません。いくら政治資金規正法が改正されても、最後は政治家個々の生き方や志が大きく問われるのです。

 『政治とカネ』という言葉で一くくりにするのは簡単です。しかし、真面目にやっている政治家からすると(問題を起こした政治家と)同じような見方をされるのは残念でなりません。『政治にはお金がかかる』と言う人もいますが、そういう言い方は国民に誤解を与える恐れがあるのでこの際、何にお金がかかるのかはっきりさせるべきです。実際、広報活動費や事務所の維持運営費など、政治活動に伴う実務上の経費はかかるのです。特に私の場合、政策本位の政治活動をしているので、お金をめぐる問題に焦点が当たり、一方で日本にとっての重要な課題についての政策論が置き去りにされてしまっている現状は非常に不本意に感じます。

 とはいえ、自民党が国民の信頼回復に努めなければならないのは事実です。やるべきことは様々ありますが、私は『政策に一貫して取り組むことこそが政治家の王道である』と強く言いたいです。岸田内閣は多くの政策に取り組み成果を上げています。デフレからの完全脱却を目指す、賃上げで現役世代の所得を増やす、子ども未来戦略や異次元の少子化対策を進める、新たな農政にも挑む――挙げればキリがありません。私の信条でもある愚直に政策に取り組む、これこそが政治の信頼を取り戻す一番の近道と信じています」

 ――いくつかの派閥は解散されましたが、自民党議員の今後の政治活動はどうなっていくとお考えですか。

 「世論は自民党総裁である岸田文雄首相に、派閥の起こした問題への取り組みが十分でないと言います。しかし一般的にはあまり知られていないかもしれませんが、いくら総裁でも各派閥に対しては口を挟めない現実がありました。だから岸田総裁は自ら先頭に立って宏池会(岸田派)の解散を決め、他の派閥もそれに続かざるを得ないような状況をつくった。この点はきちんと評価されるべきです。派閥が起こした問題は派閥の責任者たる政治家が責任を果たさなければならないのです。

 一方、派閥が解散された以上は解党的出直しを図るため、派閥に代わる新たなガバナンスが必要です。派閥は中堅・若手にとって研修・教育の場であり、人材育成には欠かせない役割を担っていました。人事についても適材適所で公平に行われるよう派閥が調整役を務めていました。

 自民党は既に、政党では初めてのガバナンスコード(統治指針)を創設しました。このように新たなガバナンスを構築する一方で、政策を磨き上げる真の政策集団はあっていい。そもそも政治は国民のものです。だったら自民党は国民政党の原点に返り、新たなチャレンジをしていく必要があります。自民党は本来、国民とともにあり、常に進化する改革保守。責任政党です」

 ――衆院小選挙区の区割り改定で福島県の選挙区は5から4に減りました。根本衆院議員は新福島2区の支部長に就任されましたが、新しい選挙区を回ってみてどのような意見や要望が寄せられていますか。

 「旧2区時代に選挙区でなかった市町村を回ってみて率直に感じたのは、国政につながる政治がないことです。実際、有権者からは『10年前から要望しているのに(問題が)解消に向かわない』との声を何度も聞いています。時が止まったような状態がそこかしこにあります。直ちに〝政治を取り戻さなければならない〟と痛感しました。

 ここでは具体的に三つ挙げますが、まず、東北自動車道鏡石スマートICの『24時間化』を実現しました。また、調整区域の須賀川市滑川地区の産業団地化も、橋本克也市長はじめ地元にとって長年の要望だったにもかかわらず一向に動いていませんでしたが、私が地域未来投資促進法の活用や運用に知恵を出し、企業の工場進出を可能にしました。さらに、同じく長年動かなかった矢吹原土地改良区の渇水対策も、羽鳥湖ダムの堆積土砂の撤去、『日和田頭首工』の土砂除去の補助金の適用など、短期間のうちにできることについて関係省庁などと徹底的に政策論を展開し、問題の解決を図ってきました。〝そのとき、匠が動いた!〟ことにより、動かなかったものを動かしたのです。石川バイパスの整備なども含め、これまで新選挙区で動かした案件は20以上に上ります。

 私は課題解決型の政治家です。地元に貢献することも政治家の大きな役割です。日頃から政策本位の政治を進めていることがいかに大切かを有権者の皆さまには知っていただきたいと思います。政治への信頼回復は政治家の志、生き方にかかっていると思います」

 ――自民党東日本大震災復興加速化本部長を務めていますが、震災から13年が経過した中、本部長として注力している取り組みは。

 「私は安倍内閣の初代復興大臣・復興の司令塔として各省庁を動かし、福島県を含む被災地全体の復興を加速させ、復興に全精力を傾けました。福島県の内堀知事をはじめ被災地の首長からは、第二期復興・創生期間(令和7年度まで)後の復興財源確保を強く要望されています。これからの5年間はまさに正念場、これまで以上に力強く取り組みを進める必要があります。『復興加速化のための第13次提言』を近くとりまとめ、岸田首相に提出する予定です。この提言は、そのまま政府の復興関連施策に反映されますので、提言としての重みは他のいわゆる〝提言物〟とは比べものになりません。

 復興加速化本部長は、自民党の復興の司令塔です。本部長の私が先頭に立って、大臣・本部長としての経験と知恵を総動員し、各省庁を動かし、施策のブラッシュアップと復興財源の確保によって、福島の復興に魂を入れます。復興はまだまだ道半ばです。私は政治家として、復興を天命と捉えています。福島県の皆さまには、ふるさとの恵みを取り戻し新しい産業を興す、そのための挑戦を後押しすることをお約束します」

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