【福島県商工会連合会】渡邊武会長インタビュー

【福島県商工会連合会】渡邊武会長インタビュー

わたなべ・たけし 1958年生まれ。東北工業大学建築学科卒。株式会社渡辺工務店代表取締役。2009年から伊達市商工会長を務め、今年5月の福島県商工会連合会通常総会で会長に選任された。福島県総合計画審議会委員、福島県中小企業振興審議会委員などの役職を兼務。

 福島県商工会連合会は5月24日、福島市で第64回通常総会を開き、新会長に渡邊武氏(伊達市商工会長)を選任した。前任の轡田倉治会長は4期12年と長らく務め、震災・原発事故後の各種対応に当たってきた。一方、現在はコロナ禍からの立て直しや、円安、原油高、物価高騰などの課題が横たわっている。早速、渡邊会長にインタビューし、地域経済の現状をどう見ているかや、前述の課題への対応、インボイス制度導入の影響、今後の抱負などを語ってもらった。

時代に合った商工会の在り方を示したい

 ──5月に任期満了に伴う役員改選で会長に就任されました。率直なご感想についてうかがいます。

 「過去4期12年間、前任の轡田倉治会長のもと、副会長として商工会連合会の活動に携わってきましたが、商工会が抱える問題や対応しなければいけない課題などが見える立場にあり、経済環境が激しく変化する中、商工会としてどのような姿で活動や事業を進めていかなければならないのか、そうしたディティールをしっかりと捉えていかなければなりません。次の世代に商工会としてのあるべき姿やビジョンを受け継いでいかなければいけません。そのためにも、この変革の時期に商工会として為すべきこと、取り組むべき課題に注力すること、そうした姿勢を貫くことが最重要課題と考えています」

 ――円安、原油高、物価高騰による地域経済の低迷が顕著となっています。会員事業所の現状について、どのように見ていますか。

 「県内88商工会管内の全ての事業所の状況を把握できているわけではありませんが、エネルギー等も含む物価高騰が経営に影響を与えているのは間違いないと見ています。商工会として会員事業所への支援は必要不可欠ですが、物価高騰による厳しい環境の要因として一番大きいのは、価格転嫁ができていないことにあります。そこに人口減少による需要の減少や人手不足といった要因も重なってさらに悪影響を与えているのも実情としてあります。その上で、賃金の改定も進めていかなければなりませんし、小規模事業者にとって大きな負担となっています。

 価格転嫁の円滑化に向けて、引き続き情報収集を行い、会員事業者からの相談対応やセミナーの実施など各種支援に努めています。また、パートナーシップ構築宣言の促進、関係団体との連携を強化して、様々な角度から課題解決に向けた糸口を模索しています」

 ――昨年10月から、消費税の仕入れ税額控除の方式としてインボイス制度が導入されました。適格請求書発行事業者になると年間売り上げが1000万円以下であっても免税事業者にならず、消費税の申告義務が生じます。この間、連合会としての同制度に対する対応をはじめ、会員事業所への影響について。

 「インボイスは、消費税制度において課税事業者及び免税事業者が存在し、一方では、軽減税率の適用事務処理があることで、以前よりも複雑になり、事業者の事務負担増が課題であります。そうした現場の事務負担の軽減に向けた会計ソフト(商工会クラウド会計MA1)の導入推進やオンラインセミナーの実施など、少しでも現場の負担が解消されるようIT化支援を行っています。

 また、全国連の『事業環境変化対応型支援事業』を活用して、新たな制度の導入に不安を抱いている事業者の方々に寄り添い、少しでも疑問や課題解決の一助となっていきたいと考えています」

 ――震災・原発事故から13年を迎えました。この間をあらためて振り返るとともに、被災地の会員事業所に対してどう向き合っていくお考えでしょうか。

 「徐々に解除されているとはいえ、帰還困難区域は未だに残っており、被災地区の商工会に対しても連合会として支援をしていかなければなりません。これまで国や東京電力に対して原子力損害賠償に関する要望活動を実施してきた経緯があり、そうした活動は今後も続けていく所存です。

 現在も事業活動が困難な被災地区の商工会とそれ以外の地域では状況が異なることもあり、地域の事情にあわせた対応を考えていかなければなりません」

 ──今年度の重点事業と活動方針について。

 「先般の総会において、今年度の事業計画の決定をいただき進めております。一番重要なのは、これまでも実施してきた『伴走型支援』です。今後もしっかりと取り組んでまいります。

 会長に就任して、スタートラインに立ったばかりなので、今後どうしていくべきかを商工会及び関係各所とも協議しながら諸事業に取り組んでいきます。その一環として、県内全商工会の巡回訪問を始めます。地域の状況を伺うとともに、商工会が地域の総合経済団体として、小規模事業者支援機関としての役割を果たすために、職員の確保を図り、職員の資質向上に努め、地域の拠り所である商工会館の機能を強化させて、地域経済の振興発展並びに商工会の組織基盤の充実強化に邁進する考えであります。

 会長の立場として、次世代にバトンを渡していくために何をしなければならないのか、時代に合った商工会の在り方を示したいと思います」

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