新型コロナウイルス感染症に伴う各種制限がなくなり、経済が再始動し始めている。その一方で、円安や物価高、燃料・原材料費の高騰、人手不足など、企業・地域経済を取り巻く環境は厳しさを増している。そんな中、県内経済界の動きはどうか。須賀川商工会議所の菊地大介会頭(㈱あおい代表取締役)に話を聞いた。
――管内の情勢について。
「全国的な課題ですが、管内でも人手不足が大きな問題となっています。それでも他地域に比べるとまだマシな方だと思いますが、今年の大きな課題の1つだと思います。加えて賃上げも大きな課題です。賃上げしないと人手不足解消につながらず、企業の維持にも影響してきます。そういう意味で人手不足と賃上げは相関しているので賃上げをどのようなタイミングで先行していくかが重要です。これまで地方の中小企業はなかなか賃上げに踏み切れていませんでしたが、いよいよ踏み切らなければいけない時に来ていると思います。ある意味企業間の競争になるかもしれません。また、この人手不足問題にはIT化やDX化も絡んできますから、今年は歴史的に大きな転換の年になっていくと思います」
――各企業は物価高による価格転嫁に苦労しています。
「日本商工会議所の統計では賃上げを考えている事業者は全体の6割ほどでした。ただ、そこが難しいところで価格転嫁の前に物価が高騰しており、ここでも賃上げをどこで踏み切っていくのかが問われます。世界的な経済の歴史を見ると、本来は賃金が上昇し、所得が上がった状況で、後付けで価格転嫁、すなわち物価高騰が起きてきました。それが今回の日本の場合、物価高が先行しており、その中で賃上げをしていかなければならず、なかなか価格転嫁に踏み切れていません。国内経済は30年間に渡ってこれが続いてきた歴史があります。それを模索していた中、昨年、政府が賃上げを実行すると明言しました。今後も賃上げに関する様々な国の制度が発表されると思います。そういった意味で各会員事業者も賃上げを決断せざるを得ないと思います」
――うつくしま・ちゅらしま交流・福島空港利用促進連絡会の会長も兼任されています。
「1月に沖縄県から約50名の関係者が集まり、市内で総会を開きました。沖縄県の方々は2泊3日で総会への参加のほか、県内各地を見学していただきレセプションという形で意見交換も行いました。来年は沖縄県で行います。最終的には沖縄直行便の再開を目標に、そういった地道な交流を続けていければと思っています。こういった地道な積み重ねがないと、なかなか直行便の復活は難しいのが現状です。まずは地元同士の盛り上がりを航空会社に見ていただくことが重要だと思います。
また、台湾便は4月以降もチャーター便の就航継続が決まりました。まずは4月に発生した台湾地震の復興支援、そしてインバウンドの模索を図っていきたいと思います。さらには半導体などビジネス面での利用にもつながればと思います」
観光面の意識転換
――円谷プロとのまちづくりも行われています。
「令和5年4月に須賀川市と円谷プロで10年間のまちづくり提携協定が結ばれ、市と円谷プロとの間で様々な計画が進んでいるようですので、協力できる部分は協力しながら、今後に期待したいと思います」
――令和7年に須賀川駅東西自由通路が完成予定となっています。
「今後の駅前の賑わい創出に向けて重要な事業で、現在も駅周辺の若手を中心に検討が行われています。賑わい創出に加えてタクシーやバスといった駅からの二次交通のアクセスも検討していきたいと思います」
――市で進めてきた「牡丹台アメニティ地区」の整備計画が一時停止するとの発表がありました。
「会議所はオブザーバーとして関わっていますが、市の判断での一時停止のため、会議所としてはそれに準じていくことになります。一時停止であって中止ではありませんので今後を見守っていきたいと思います」
――交流人口拡大に向けた取り組みについて。
「管内の観光は夏の花火大会や秋の松明明かしなどの祭りが中心になっているほか、昨今はウルトラマンを中心とした観光客も訪れていますが、観光面の意識を変えていきたいと思っています。今後、国内は観光産業が伸びると思っています。国は2030年までに約6000万人の外国人観光客を呼び込むと謳っています。管内は空港があり、駅前も新しくなるなど交通アクセスに恵まれている地域です。外国人観光客はもちろん、国内観光に目を向けても体験型など観光の在り方は変化しています。そういう意味で、宿泊にこだわるのではなく1〜2時間程度の時間でも滞在していただき、満足してもらえる材料を生み出していきたいと思います。そのためにも、もう一度管内の観光分野の掘り起こしを行っていきたいと思います。また、翻訳ツールなどの研修会も併せて進めていきたいと思っています」
――国・県に要望したいことは。
「せっかく台湾チャーター便の継続が決定したので、空港からの利便性の向上を県に要望しています。また、福島空港周辺にはスポーツエリアがありますから、合宿誘致など、もっと有効に使う仕組みを県に提案しています」
――そのほかの重点事業について。
「少子化が進み人手不足問題が深刻化する中、会員の多くが中小企業である商工会議所ですが、IT化、DX化はまだ進んでいません。ただ一言で『IT』『DX』と言っても分かりづらい面があるのも事実です。そこで、例えばラインアプリだったら、国内で約9600万ダウンロードされており、公式アカウントも当たり前になりました。高齢者であっても、コロナ過で離れた家族と連絡をとる手段としてラインを使用している方も多くなりました。グループラインを利用して連絡をとることでもDX化になります。そういったことが当たり前になる仕組みづくりを進めていきたいと思っています。
また、4月から翠ヶ丘公園内のカフェやサウナは現金決済をなくし、ライン決済だけにしました。注文もラインで行うことで人件費の縮小につながっています。海外からの観光客に県内の不満を聞くと、電子マネーを使用できるところが少ないとの声を耳にしますので、そういった整備も併せて進めていきたいと思っています」
――今後の抱負。
「管内はアクセスの良さといった地の利があると思っています。それを生かしながらもっと経済を発展させていきたいと思います」