【福島成蹊学園】本田哲朗理事長兼校長インタビュー

経歴

ほんだ・てつろう 1953年生まれ。東京理科大卒、同理学専攻科修了。古川商業(現古川学園)教頭、福島成蹊高教頭、福島成蹊中・高校長などを歴任。今年3月、両校長兼学校法人福島成蹊学園理事長に就任。

 学校法人福島成蹊学園の新理事長に、同法人が運営する福島成蹊中学・高校の本田哲朗校長が就任した。理事長就任後も校長を兼務する。同校は近年、県内トップクラスの進学実績を残しており、今春も東大をはじめとした難関大合格者を輩出した。新理事長に今後の抱負や私学教育の強み、福島県教育の課題について語ってもらった。

 ――3月16日付で福島成蹊中学・高校の校長兼務で理事長に就任されました。

 「21年前に教頭として着任し、男女共学化と特進コースの強化・刷新を自分の使命と捉えて取り組みました。特に男子を受け入れるに当たり、医学部、理学部などを目指す傾向を踏まえ、理系科目の強化に注力しました。着任5年後に開校した新生・福島成蹊中高一貫コースはかねてから構想してきた事業で、紆余曲折はありましたが、目覚ましい進学実績を積み上げ、軌道に乗ったと実感しています。今般、諸般の事由により理事長職を兼任する運びとなりました。これまで本校を選んでいただいた多くの生徒・卒業生には心から感謝致すとともに、本学園のさらなる発展に向け尽力する所存です」

 ――理事長就任の抱負を。

 「開学以来110年の歴史を持つ私立学校であることを踏まえ、諸先輩方の意思を継承しながらも、永続性を大切にし、次世代の生徒に的確に教育・指導できる私学として、存続を図っていく考えです。そのためにも、地域の期待や要望に真摯に向き合い、応える必要があります。

 充実した高校生活と多様な進路先に対応するため、6年間教育の中高一貫コースと、3年間教育の普通、文理選抜、特進各コース、計4コース制を展開しています。今後もより魅力的で質の高い教育を提供しなければならないと考えています。卒業時の進路実現は生徒の将来を大きく左右することを肝に銘じ、生徒一人ひとりの自己実現に向けしっかりとサポートする考えです」

 ――公教育と私学教育の違いとは。

 「本学園で言えば、文部科学省の標準単位で授業を実施しているのが普通コースです。その他の3コースは大学進学を志望する生徒が多く、難解な入試問題を理解するためにはそれ相応の時間が必要になることから、目的に応じて単位を増やし、丁寧な指導に努めています。文科省主導で進められてきた教育改革により、学ぶべきことは先のゆとり教育時代の1・3~1・4倍のボリュームになっているにもかかわらず、授業時間は増えていない実態があり、実質的に生徒の負担増を招いています。小中学校での理解が浅いまま進学し、結果的に授業についていけない層を生み出す構造に陥りやすい、と。私学のメリットは臨機応変に対応できることです。生徒の現状、適性、習熟度に寄り添いながらフレキシブルな教育・指導に努めています」

「人間力」を重視した教育

 ――どのような学校教育・人材育成を展開していく考えでしょうか。

 「いずれのコースも、校訓である『桃李不言下自成蹊』を体現できるようになることが目標で、〝篤実な人格の陶冶(とうや)〟が教育目標の本質です。学習以外にも、海外研修旅行、国際理解教育講演会、文化的講演会、芸術鑑賞などの学校行事が組み込まれており、学園祭である桃李祭、生徒会を中心とする自治活動、クラブ活動に注力している生徒も多いです。そうした体験を通して、人としての総合力、ひいては現在よく用いられる『人間力』を身に付けさせ、生徒自身が自律・自立することに重きを置いています。自立した人間が社会に貢献でき、他者への思いやりの気持ちを持てると確信しています。

 また、生徒に対しさまざまな活動の場を提供し、自分に対する認識を深めたり、自己変革する機会を積極的に与えています。実際に、こうした機会で身に付いた力が、大学合格実績や各種クラブの活躍・戦績に反映されていると実感しています」

 ――2023年度における大学合格実績の評価について。

 「おかげさまで、近年の中では好成績であったと総括しています。中高一貫コースでは、東大に2名(理科Ⅲ類、同Ⅱ類)、京大に1名(理学部理学科)、一橋大に1名(ソーシャル・データサイエンス学科)、東北大に1名(医学部保健学科)合格しました。いずれも超難関国立大学です。

 医学部医学科では、慶応義塾大医学部医学科2名、国際医療福祉大医学部医学科2名(うち1名は成績上位20位以内のS特待生)、東北医科薬科大医学部医学科2名(いずれも特待生)が合格しました。防衛医科大学校医学部医学科にも3名合格し、本県の合格者を独占しました。ちなみに、宮城県全体の合格者数も3名です。

 特進コースでは、東北大医学部保健学科、東京学芸大など、国公立大学合格率が延べ100%を達成し、躍進を果たしました。

 文理選抜コースでは、福島大12名、山形大4名、都留文科大3名、県立医科大看護学部・同保健学部各2名など延べ38名が国公立大学に合格しています。合格率36%は公立他校に引けを取らない実績です。特に中高一貫、特進両コースの結果は本校ならではの指導が奏功したと言っても過言ではありません。本校の教職員の指導力に全幅の信頼を置いていますし、誇りに思っています」

 ――福島県における教育の現状と課題についてうかがいます。

 「進学実績は各都道府県・各学校の〝教育力〟のバロメーターであることは否定できません。長年、本県の進学実績を分析していますが、他県と比較して誇れる数字ではありません。一例を挙げれば、英語力(高3の英検準2級取得レベル全国46位)や数学的リテラシーは著しく劣っています。本県教育は保守的で変化を求めない風潮が色濃く、俯瞰的に捉えるのが苦手だと思います」

 ――小・中学生の子どもを持つ保護者に向けて訴えたいことは。

 「東大理科Ⅲ類の合格者は98名で、その出身校は開成、灘など全国トップクラスの進学校で占められています。それらの生徒の多くは、小学校卒業時点で全国上位5000名以内の子どもたちで構成されています。そうした中で、本校から合格者を輩出できたということは、本校の教育・カリキュラムにより有名進学校のレベルに追いつき、追い抜くことができたということを如実に証明しています。注目してほしいのは、有名進学校だけが超難関大学を独占しているわけではない点です。

 これは一例に過ぎません。子どもの潜在能力・可能性は計り知れないモノがあります。本校の教育にはそのポテンシャルを大きく伸ばす環境が整っています。ぜひ本校の取り組みに関心を持っていただき、われわれとともにお子様の明るい未来を創造していければ幸甚です」

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