にへい・せいいち 1953年生まれ。中央大学経済学部卒。1977年に福島民報社入社。2008年に退社後、ラジオ福島専務取締役、民報印刷代表取締役、道の駅猪苗代駅長などを務める。
――6月に行われた町長選で初当選を果たされました。選挙戦を振り返っての感想について。
「選挙に出るのは初めての経験で、3月下旬に出馬表明し、3カ月足らずの中で何もかも手探りの状態でのスタートでした。3月初めに前後公前町長が引退を表明され、紆余曲折の末、急遽私に白羽の矢が立ち、町民の方々からも今後の猪苗代町を憂える声をお寄せいただき、町の将来のためにも無投票という事態はあってはならないという思いから出馬を決意しました。
狭いコミュニィーの選挙では、地道に顔と名前を覚えてもらうことが先決なので、町内をくまなく歩いて様々な会合等に顔を出し、自己アピールすることに徹しました。3度目の出馬で知名度が高い候補者もいましたが、後援会の基盤を前後前町長から引き継ぐ形になったこともあり、役員の皆さまや支持者の方々からご指導・ご鞭撻を受けながら選挙戦に臨みました。そうしたこともあって、今回短期決戦で初当選という結果を得られたものと考えています」
――新聞社やラジオ局勤務に加え、前職は道の駅猪苗代の駅長を務められましたが、これらの経験を行政運営にどのように反映させていく考えですか。
「新聞社とラジオ局での勤務は畑が違うので行政に反映するという点では回答が難しいところですが、新聞社勤務では記者だけでなく管理・営業職も経験し、多くの経験を積んできたと思います。道の駅の勤務においても、スピード感を意識して職務を全うできたと実感しています。ですから、町長として行政運営に携わる立場においても、スピード感と責任感を持って取り組むことを心掛けたいと思っています。緊急の案件に関しては、トップダウン型で即座に実行できるような場合も時には必要になってくると考えます。
JR猪苗代駅を起点として町内や裏磐梯方面を走る磐梯東都バスが9月末で町内から撤退することになり、10月以降の路線バスの運用について現在協議を進めているところで、空白を生まないためにもスピード感と責任感を持ったうえで判断し、利用者の方々にご不便をおかけしないよう対処していきたい」
移住・定住促進に努める
――選挙戦では人口減少対策と産業振興が争点となりました。
「かつては全国で年間100万人を越えていた出生率が現在は80万人にまで低下し、これによって地方都市の少子高齢化が進行しているのは全国どの自治体も直面している問題と言えます。とはいえ、いち町村規模の自治体で出生率の向上や子どもの人口を増加させることはかなりの困難を伴います。であれば、こうした人口減少の中で行政が取り組むべきことは、いまいる町内の子どもたちが元気で明るく過ごせる、そして高齢者の方々に『猪苗代に住んで良かった』と思っていただけるようなまちづくりを進めるべきだと考えています。
私が生まれた1950年代は町の人口が約2万6000人でしたが、現在はその半分まで減少し、当時は人口のおよそ37%が15歳未満の子どもだったのに対して現在は10%程度にまで下がっています。本町では令和3年より出産手当を支給しており、第1子が5万円、第4子までで最大20万円を支給していますし、保育所の無料化に加え来年度からは小中学校の給食費が無料となるなど、福祉の向上に努めています。少子化というとマイナスな印象は拭えませんが、見方を変えれば子育て家庭への支援をより拡充できるという利点があります。全国的にも物価高騰に加えて収入の向上も見込めない中、少しでも子育て世代の費用負担を軽減したいという狙いがあり、それによって町民の皆さまにより良い暮らしを送っていただきたいと思っています。
令和4年度の道の駅猪苗代の来場者数は107万人を越え、売り上げも10億円近くまで到達するなど、本町の基幹産業である観光業が持つポテンシャルは高いと思っています。道の駅の好調の要因は磐梯山と猪苗代湖というロケーションに加えて高速道路を下りてすぐという好立地だと思います。町内には野口英世記念館をはじめ、観光資源がたくさんありますし、『はじまりの美術館』のようにまだまだ知られていない観光資源のピックアップに加えて、観光客の方々が好むようなおしゃれなカフェなどが点在しているので支援していきたい。それがモデルケースとなって地元の商店によい刺激を与えられるような形になればいいと思っています」
――選挙公約について。
「基幹産業である農業や観光業をはじめ、商業・工業をバランスよく発展させるため情報を収集・分析しつつ、町の豊かな自然・観光資源を生かす知恵を絞りだすほか、JR猪苗代駅周辺の整備、市街地の商店街再生についても地元の商工業者と協議して活路を見いだしていきます。
猪苗代町は『花のまち』『星のまち』『水のまち』『雪のまち』であることをアピールし、魅力を発信し続けることで、町民の方々にはいつまでも住み続けたいと思ってもらえるような、そして町外の方には住んでみたいと思ってもらえるようなまちづくりを進め、移住・定住促進に努めていきます。
また、前町長の任期中にこども園、小学校・中学校の建物・環境整備はほぼ完了しているので、ソフト面に注力し、教育や福祉を充実させていく考えです。特に町の未来を担う子どもたちへの支援や補助は一層重視し、健全な人材育成に取り組んでいく考えです。
少子高齢化が進む中で、子育て環境の整備はもちろん、高齢者の方々に生きがいを見いだしてもらえるような方策を打ち出していくことも不可欠です。今後も様々な社会的な負担の増加が見込まれる中においても、健全な財政を維持しつつ、町民の皆さまが安全・安心を肌で感じられるまちづくりを目指していきます」
――今後の抱負。
「町内の路線バスの見通しの確保や、統合により廃校となる施設の再利用策など、取り組まなければいけない課題は山積しています。一つ一つ着実に解決し、選挙戦で選んでいただいた方々の期待に応えるためにも、町民の皆さまから信頼を寄せていただける行政運営に努めます。
また、磐梯山周辺の自治体間の連携や耶麻郡町村会、会津地域全域での広域連携も重要になってくるので、本町の強みをアピールするだけでなく、苦手な部分は他自治体と協力・連携していきたい。他自治体の先進的な取り組みを、本町でも積極的に取り入れていきたいと考えています」