派閥の政治資金パーティー裏金問題をめぐり、調査を進めてきた自民党は39人を処分した。処分対象となった菅家一郎衆院議員(68、4期)は真摯に反省し、説明責任を果たしながら、地元の課題解決に努めていく考えを示す。選挙区割り変更に伴い広大な選挙区となる新福島3区への対応も含め、菅家衆院議員にインタビューした。
――自民党における派閥の政治資金パーティー裏金問題で党役職停止6カ月の処分が下されました。
「この度は多くの国民、県民の皆さま方に、大変なご迷惑、ご心配をおかけしましたこと、心からお詫びを申し上げます。
所属する清和政策研究会(清和会)から5年間で総額1289万円の還付金を受領してきました。私の事務所では、すべて私名義の個人寄付として選挙区支部と後援会に入金し収支報告に記載していました。しかし、今般の修正に合わせて、還付金を清和会の名義に変更しました。以上のことから不記載ではございませんし、収入・支出の総額は同額であり、裏金は一切ございません。
派閥からの還付金は全額を事務所経費に充当し、さらに不足分を私個人からの寄付で賄ってきました。この度、党本部のリストに載った要因は、不記載による裏金ということではなく、本来、清和会名義で記載すべきところ、私個人の名義としたことが誤記載であると判断されたためです。誤記載である以上、配慮をいただきたいとお願いしましたが、結果として、党役職停止の処分が示されました。思うところもありますが、厳粛に受け止め、ご心配やご迷惑をお掛けしたことに対しあらためて心よりお詫び申し上げます。
一連の問題で政治不信を招いたことを真摯に反省し、説明責任をしっかり果たすとともに、地元の要望あるいは予算の確保を含め、山積する課題の解決に向けて、責任を持って結果を積み重ね信頼が得られるよう、全身全霊で努めていきます」
――本県衆院選挙区の区割り変更に伴い、県南地域を地盤とする上杉謙太郎衆院議員との候補者調整が行われた結果、新福島3区の支部長に就任しました。次回の総選挙では小選挙区での立候補となります。
「新3区は、私の地盤である会津地域に県南地域を加えた、県土の約48%の面積を占める広大な選挙区です。会津地域ではJR只見線の再開通をはじめ、国道401号博士トンネルの開通、会津縦貫道・磐越自動車道の整備に注力するなど地元のご要望に向き合いながら取り組んできました。今後も会津地域の発展に尽力するとともに、選挙区に加わる県南地域についても、上杉代議士との一層の連携強化を図りながら地元のご要望にしっかりお応えしなければならないと強く思います。
前回の総選挙では上杉代議士が県南地域で相手候補を上回る得票を獲得したことを踏まえ、現在、白河市の上杉謙太郎事務所内に私の事務所を構えるなど、上杉代議士と息の合った選挙活動を展開しているところです。昨年の県議会議員選挙では上杉代議士のご協力のもと自民党各支部長や役員の方々はじめ、党員の皆さま方とのコミュニケーションを積極的に図る機会となりました。今後も上杉代議士のお力添えを得ながら人脈・ネットワークの開拓に傾注し、独自の後援会の基盤強化を図っていく考えです」
――昨年8月24日から東京電力福島第一原発で増え続ける処理水の海洋放出が開始されましたが、中国では依然として日本産水産物の輸入を全面的に停止しています。
「日本では処理水における環境放出の規制基準を1㍑当たり6万ベクレル未満と定めていますが、海洋放出される際は同1500ベクレルまで希釈するので生態系や安全性をはじめ、科学的合理性の観点からも問題ないことが示されており、IAEA(国際原子力機関)など、国際機関の調査・分析・評価を受けています。環境省からも『厳格な安全基準に基づくモニタリングデータ結果からも現時点では海洋資源への影響はない』との報告を受けております。残念なのは、日本産水産物、本県産農林水産物に対する中国の輸入規制が未だに解除に至っていない点です。今後は、政府一丸となって厳しい安全基準をはじめ、モニタリング調査の結果などのデータを諸外国に丁寧に説明し、海洋資源はもちろん、人体にも影響がない科学的事実を粘り強く発信する必要があります。私自身、日本産、本県産の『安心・安全』の浸透は政治活動の大きな柱と位置付けており、海外とのコネクションを通じながら積極的に説明責任を果たしていく所存です」
――現在、精力的に取り組まれている活動について。
「1つは、メタバース(仮想空間)を活用した会津の魅力発信と交流人口創出です。この間、観光庁などに強く要請してきたことが奏功し、観光庁の令和5年度調査事業の予算を確保できました。3月からは、インターネット上に構築されたメタバース内に鶴ヶ城や七日町などの観光スポットを再現し、公開する取り組みがスタートしています。
会津観光の世界観を疑似体験していただくことで、その魅力を全世界に発信できるとともに、歴史的建造物の次世代への継承にもつながるものと考えます。同事業が成功すれば、今後は白河市を核にした県南地域にも応用できると思いますので、引き続き精力的に取り組む考えです。
2つは、ライフワークとして進めてきた『首都直下型地震対策バックヤード構想』です。本県、新潟県、栃木県、群馬県のネットワーク化を図り、平時は東京から地方への分散、緊急時は物資の供給や避難者の受け入れの役割を担います。東京一極集中の是正に伴う分散型国土の形成を図るとともに、ヒト・モノ・カネを本県に誘致することで地元の喫緊の課題である過疎化・少子高齢化の解決に向け鋭意努めていきます。
3つは、『J―クレジット制度(省エネ・再エネ設備の導入や森林管理等による温室効果ガスの排出削減・ 吸収量をクレジットとして認証する制度)』の推進による地元農林業の振興です。端的に言えば、CO2削減に貢献することで、農林業従事者の収入増につながる制度で、『脱炭素』がトレンドとなる中、森林や農地も同制度の対象になりました。
森林の場合、人工林、樹種によって異なるものの、1㌶5万円ほどの交付金が受けられます。水田の場合、水稲栽培における中干し期間の1週間延長で、10㌃3600円が交付されます。新選挙区の基幹産業は農林業ですが、米価が不安定な状況などもあって経営が厳しいという声が聞かれます。同制度をしっかり推進・普及させ、地元の農林業をしっかり守っていきたいと強く思います」
――有権者にメッセージを。
「まずは、このたびの不祥事につきまして、心からお詫びを申し上げる次第です。
地元である会津地域ならびに新たな選挙区となる県南地域の課題解決はもちろん、しっかり地元の要望を反映させた予算の確保に注力します。今後もより一層地域の切実な願いを真摯に受け止め、責任を持って政治活動に邁進する所存です。どうか皆さま方にはご理解とご協力を賜りますようお願いを申し上げます」